(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、通信の高速化及び大容量化に伴って、様々な分野において光学系デバイスの重要度が高まっている。その中でも、フォトカプラーは、入力された電気信号を発光素子で光に変換し、その光を受光素子に送ることによって信号を伝える、発光素子と受光素子とを組み合わせた装置である。フォトカプラーでは、発光素子からの光を効率よく受光素子に伝達させることが重要であるため、外部からの光を遮断すると共に、耐湿信頼性及び難燃性等を付与させるために二重構造を有することが多い。つまり、光伝達能を有する、すなわち透過性の高い一次封止樹脂で発光素子を封止し、続いて遮光性を有する二次封止樹脂で封止することが多い。従来、一次封止樹脂にはシリコーンゲル、二次封止樹脂にはエポキシ樹脂が用いられていた。一方、近年、低コスト化や外力からの素子の保護を目的に受光素子又は発光素子の周りのみをシリコーンゲルで封止し、次に一次封止樹脂にエポキシ樹脂を適用するものが多くなっている。
【0003】
フォトカプラーの効率は、CTR(Current Transfer Ratio)で表され、発光素子の電流と受光素子の起電力の比で求めることができる。高いCTR値を得るためには、700nm〜1,000nm付近の近赤外光での高い光透過率が必要である。
【0004】
特許文献1には、フォトカプラーに、信頼性及び光透過性に優れたエポキシ樹脂組成物を用いることが示されている。高いCTR値を得るためには、金属物質による光の吸収の低減と溶融球状シリカによる光の散乱が重要であると示されている。従来無機充填材として用いられてきた溶融球状シリカは、確かに光の散乱が増大することにより樹脂組成物の光透過性を向上させる。しかし、溶融シリカと芳香族を多く含むエポキシ樹脂や硬化剤といったレジン成分との屈折率が大きくかけ離れているため、これらを用いた樹脂組成物は十分な光透過性を得ることができない。
【0005】
特許文献2には、高い透過率を得るために、エポキシ樹脂組成物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂を併用し、硬化剤に酸無水物を用いる材料が開示されている。これによると無色透明性と高い流動性を得られるとの記載があるが、レジン成分のみの構成であり、吸水率が高く、耐湿信頼性が劣る。加えて、熱膨張量が多く、二次封止樹脂との熱膨張係数の不釣り合いによる不良が発生しやすくなったり、安定的に固形化及びタブレット化が難しかったりする問題もある。
【0006】
特許文献3には、成形性や低熱膨張率のために無機充填材を含有しても高い透過率を得るために、レジン成分と無機充填材との屈折率を近くしたものが開示されている。しかし、近年では発光素子の高出力化や使用環境の高温化のため、そもそも特許文献1〜3のように熱硬化性のエポキシ樹脂を使用した一次封止樹脂は劣化が激しく、着色等によりCTR値が低下して満足な結果が得られなくなってきている。
【0007】
特許文献4には付加反応型シリコーン成分と無機充填材の屈折率を近くしたものが例示されている。しかし、付加反応型シリコーン成分はメチレン鎖が多くなるため、難燃性は不十分なことがある。また、このような付加反応型シリコーン成分はゲルやゴム状のものが多く、無機充填材を含有すると熱膨張係数は低下するものの、その低下量は不十分であり、さらには成形の際に取り扱いが煩雑になるという不具合も生じる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0016】
(A)レジン状オルガノポリシロキサン
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)
(CH
3)
aSi(OR
1)
b(OH)
cO
(4−a−b−c)/2 (1)
(上記式(1)中、R
1は同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基である。a、b及びcは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表され、例えばテトラヒドロフラン等を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000のレジン状(即ち、分岐状又は三次元網状構造の)オルガノポリシロキサンであり、後述する(D)成分である縮合反応用の硬化触媒の存在下で、架橋構造を形成する。
【0017】
上記平均組成式(1)において、メチル基の含有量を示すaが0.8未満のオルガノポリシロキサンを含む組成物は、その硬化物が硬すぎて、耐クラック性に乏しい等の問題が生じやすくなり好ましくない。一方、aが1.5を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは固形化しにくくなり好ましくない。好ましくは、0.8≦a≦1.2、より好ましくは0.9≦a≦1.1である。
【0018】
上記平均組成式(1)において、アルコキシ基の含有量を示すbが0.3を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンの分子量が小さくなりやすく、耐クラック性が低下することが多い。好ましくは0.001≦b≦0.2であり、より好ましくは0.01≦b≦0.1である。
【0019】
上記平均組成式(1)において、Si原子に結合したヒドロキシル基の含有量を示すcが0.5を超えると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは、加熱硬化時の縮合反応により高い硬度を示す一方で耐クラック性に乏しい硬化物となりやすい。一方、cが0.001未満であると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる場合がある。好ましくは0.01≦c≦0.3であり、より好ましくは0.05≦c≦0.2である。cの値を制御するには、原料のアルコキシ基の完全縮合率を86〜96%にすることが好ましい。該完全縮合率が86%未満では融点が低くなり、96%を超えると融点が高くなりすぎる傾向にあるため好ましくない。
【0020】
以上のことから、上記平均組成式(1)において、好ましくは0.9≦a+b+c≦1.8であり、より好ましくは1.0≦a+b+c≦1.5である。
【0021】
上記平均組成式(1)中、R
1は炭素原子数1〜4の有機基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基が挙げられ、原料の入手が容易である点で、メチル基及びイソプロピル基が好ましい。
【0022】
(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、GPC測定によるポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が500〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。該分子量が500未満であると、得られるレジン状オルガノポリシロキサンは固形化しにくく、該分子量が20,000を超えると、得られる組成物は粘度が高くなりすぎて流動性が低下して成形性が悪くなることがある。
なお、以下本発明において重量平均分子量は下記測定条件によりGPCで測定されたものである。
<分子量測定条件>
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.35mL/min
検出器:RI
カラム:TSK−GEL Hタイプ(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL
【0023】
上記平均組成式(1)で表される(A)成分は、一般にQ単位(SiO
4/2)、T単位(CH
3SiO
3/2)、D単位((CH
3)
2SiO
2/2)及びM単位((CH
3)
3SiO
1/2)の組み合わせで表現することができる。(A)成分をこの表現法で示した時、全シロキサン単位の総モル数に対して、T単位の含有モル数の比率が70モル%以上(70〜100モル%)であることが好ましく、75モル%以上(75〜100モル%)であることがより好ましく、80モル%以上(80〜100モル%)であることが特に好ましい。該T単位のモル比が70モル%未満では、得られる硬化物の硬度、密着性、外観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。なお、残部はM,D,Q単位でよく、全シロキサン単位に対するこれら単位の合計のモル比が30モル%以下(0〜30モル%)、特に0モル%を超え、30モル%以下であり、従ってT単位が100モル%未満であることが好ましい。
【0024】
上記平均組成式(1)で表される(A)成分は、下記一般式(3)で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
(CH
3)
nSiX
4−n (3)
(式中、Xは塩素等のハロゲン原子又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、nは0、1、2のいずれかである。)この場合、Xとしては、固体状のオルガノポリシロキサンを得る点からは、塩素原子またはメトキシ基であることが好ましい。
【0025】
上記式(3)で示されるシラン化合物としては、例えばメチルトリクロロシラン等のオルガノトリクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン;テトラクロロシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどが挙げられる。
【0026】
上記の加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよい。その中でも、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。また、例えば、加水分解性基としてクロロ基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩化水素ガス及び塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0027】
加水分解及び縮合の際に使用される水の量は、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(例としてクロロ基)の合計量1モルに対して、一般的には0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0モル〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性に優れ、その硬化物は強靭性に優れたものとなりやすい。
【0028】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、又はトルエン、キシレン等の芳香族化合物が好ましく、得られる組成物の硬化性および得られる硬化物の強靭性が優れたものとなる点で、イソプロピルアルコール、トルエン、又はイソプロピルアルコール・トルエン併用系がより好ましい。
【0029】
加水分解および縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜80℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化しにくく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0030】
(B)オルガノポリシロキサン
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は応力緩和や耐クラック性向上のために(B)成分として、下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有し、全シロキサン単位に対して0.5〜10モル%のシラノール基含有シロキサン単位を有し、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のシクロヘキシル基またはフェニル基を含むことを特徴とするオルガノポリシロキサンを含む。
【0032】
上記式(2)中、R
2は、互いに独立に、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基及びアリル基から選ばれる基である。R
2は、好ましくはメチル基又はフェニル基である。mは5〜50、好ましくは8〜40、より好ましくは10〜35の整数である。mが5未満では、得られる硬化物は耐クラック性に乏しくなりやすく、この硬化物を含む装置に反りを起こす場合がある。一方、mが50を超えると、得られる硬化物の機械的強度が不足する傾向にある。
【0033】
(B)成分は、上記式(2)で示されるD単位(R
22SiO
2/2)に加えて、上記式(2)に該当しないD単位(R
2SiO
2/2)、並びにM単位(R
3SiO
1/2)及び/又はT単位(RSiO
3/2)を含んでいてよい。D単位:M単位:T単位のモル比はそれぞれ、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、これらの単位の合計は100)であることが硬化物特性から好ましい。ここでRはヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基又はアリル基を示す。これらに加えて、(B)成分はQ単位(SiO
4/2)を含んでもよい。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、式(2)のD単位(R
22SiO
2/2)、式(2)に該当しないD単位(R
2SiO
2/2)、M単位(R
3SiO
1/2)及び/又はT単位(RSiO
3/2)中に、シクロヘキシル基またはフェニル基を1分子中に少なくとも1個含む。
【0034】
(B)成分のオルガノポリシロキサン中の好ましくは30モル%以上(例えば、30〜90モル%)、特には50モル%以上(例えば、50〜80モル%)が、分子中でかかる一般式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン構造を形成していることが好ましい。また、(B)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。該分子量がこの範囲にあると、(B)成分は固体もしくは半固体状であり、得られる組成物の作業性、硬化性などから好適である。
【0035】
(B)成分は、上記各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で加水分解して縮合を行うことによって合成することができる。
【0036】
ここで、T単位(RSiO
3/2)の原料としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のトリクロロシラン類、これらそれぞれのトリクロロシラン類に対応するトリメトキシシラン類などのアルコキシシラン類を例示できる。
【0037】
上記式(2)の直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を形成するD単位(R
22SiO
2/2)の原料としては、
【0039】
(ここで、m=3〜48の整数(平均値)、n=0〜48の整数(平均値)、かつm+nが3〜48(平均値であり、各繰返し単位はブロックであってもランダムであってもよい))等を例示することができる。
【0040】
また、M単位、D単位等の原料としては、Me
2PhSiCl、Me
2ViSiCl、Ph
2MeSiCl、Ph
2ViSiCl、Me
2SiCl
2、MeEtSiCl
2、ViMeSiCl
2、Ph
2SiCl
2、PhMeSiCl
2等のモノ又はジクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するモノ又はジメトキシシラン類等のモノ又はジアルコキシシラン類を例示することができる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0041】
これらの原料となる化合物を、所定のモル比で組合せて、例えば以下のとおりに反応させることで(B)成分を得ることができる。フェニルメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル、及びトルエンを投入混合し、液中に混合シランを滴下し、30〜50℃で1時間共加水分解する。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水や25〜40℃でアンモニア等を触媒として用いた重合を行い、濾過、減圧ストリップをする。
【0042】
(B)成分には、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれる。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して0.5〜10モル%、好ましくは1〜5モル%程度含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R(HO)SiO
2/2単位、R(HO)
2SiO
1/2単位、R
2(HO)SiO
1/2単位が挙げられる(ここで、Rは、ヒドロキシル基以外の前記の基である)。該オルガノポリシロキサンはシラノール基を含有するので、上記式(1)で表されるヒドロキシル基を含む(A)成分のレジン状ポリオルガノシロキサンと縮合反応する。
【0043】
(B)成分の配合量は、好ましくは(A)成分と(B)成分の質量比が95:5〜70:30の範囲、より好ましくは90:10〜80:20の範囲となる量である。(B)成分の配合量が少なすぎると得られる組成物の連続成形性の向上効果が少なく、また得られる硬化物に低反り性や耐クラック性を達成しにくくなる。一方、(B)成分の配合量が多いと、得られる組成物の粘度が上昇しやすくなり、成形に支障をきたすことがある。
【0044】
(C)無機充填材
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物には無機充填材を配合する。このような無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン、チタン酸カリウム、ガラス粒子、ガラス繊維等の通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものが挙げられる。それらの中でも、シリコーン樹脂と無機充填材との屈折率が近い方が光取出し効率が優れることから、屈折率が1.35〜1.60、より好ましくは1.40〜1.55の無機充填材を用いることが好ましい。流動性の面から球状シリカやガラス粒子が望ましく、補強性の面から破砕シリカやガラス繊維が好ましい。特に、成形性、流動性、バリ、透過率の面からみて、溶融球状シリカが好ましい。
なお、本発明において、屈折率とは、JIS K 0062:1992に準拠した方法で、アッベ型屈折率計により、温度25℃で、波長589.3nmにおいて測定した値である。
【0045】
無機充填材の平均粒径は5〜40μmが好ましく、特に7〜35μmが好ましい。平均粒径が5μm未満では粘度が大きく上昇し、流動性が低下するだけなく、透過率の低下につながる。平均粒径が40μmより大きかったりするとバリが非常に多く発生してしまう。平均粒径が5〜40μmであるものは、市販されており、又は公知の方法により製造することができる。シリコーン樹脂組成物を高流動化するには、0.1〜3μmの微細領域、4〜8μmの中粒径領域、10〜50μmの粗領域のものを組み合わせて使用するのが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めたものである。
【0046】
(C)成分である無機充填材の配合量は、(A)及び(B)成分の総和100質量部に対し、300〜1200質量部、特に400〜1000質量部が好ましい。300質量部未満では、十分な強度を得ることができないおそれがあり、1200質量部を超えると、増粘による未充填不良や柔軟性が失われることで、素子内の剥離等の不良が発生する場合がある。なお、この(C)成分である無機充填剤の配合量は、組成物全体の10〜92質量%、特に50〜88質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0047】
(D)硬化触媒
(D)成分の硬化触媒は、上記(A)及び(B)成分である熱硬化性オルガノポリシロキサンの硬化に用いるための縮合触媒であり、(A)及び(B)成分の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。具体的には、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸等の酸性化合物類、有機酸亜鉛、ルイス酸触媒、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物等が好適に用いられ、具体的には安息香酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、エチルアセトアセテ−トアルミニウムジ(ノルマルブチレ−ト)、アルミニウム−n−ブトキシジエチルアセト酢酸エステル、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫等の有機金属縮合触媒が例示される。中でも、安息香酸亜鉛の使用が好ましい。
【0048】
硬化触媒の配合量は、上記(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.1〜1.6質量部である。配合量がかかる範囲を満たすと、得られるシリコーン樹脂組成物の硬化性が良好となり、安定したものとなる。
【0049】
(E)内部離型剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、内部離型剤を配合する。(E)成分は、成形時の離型性を高めるために配合するものであり、組成物全体に対して0.2〜5.0質量%含有するように添加するものである。該内部離型剤としては、天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸ワックスを代表とする合成ワックスなどがあるが、中でも融点が120〜140℃であるステアリン酸カルシウムやステアリン酸エステルを用いることが好ましい。
【0050】
本発明は、上記成分に加え、下記の任意の成分を配合することができる。
(F)カップリング剤
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、樹脂と無機充填材との結合強度を強くし、無機充填材とレジン成分との密着性を向上させ、成型物の強度を上げたり、二次封止用のエポキシ樹脂との接着強度を向上させたり、光の減衰を防止させするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができる。
【0051】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではないが、アミン系のシランカップリング剤のように150℃以上に放置した場合に樹脂が変色するものはあまり好ましくない。
【0052】
(F)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の総和に対して、0.1〜8.0重量%、好ましくは0.5〜6.0重量%添加することができる。0.1重量%未満であると、基材や二次封止樹脂への接着増強効果が望めず、また8.0重量%を超えると、粘度が極端に低下して、ボイドの原因になる可能性がある。
【0053】
その他の添加剤
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的でシリコーンパウダー、シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、光安定剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0054】
熱硬化性シリコーン組成物の製造方法
本発明の熱硬化性シリコーン組成物の製造方法としては、シリコーン樹脂、無機充填材、硬化触媒、内部離型剤、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して熱硬化性シリコーン樹脂組成物の成形材料とすることができる。本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度を超える温度での線膨張係数が30ppm/K以下、好ましくは25ppm/K以下であることが好ましい。
【0055】
封止材の成形方法
本発明に示すフォトカプラー用一次封止材の最も一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm
2、成形温度120〜190℃で成形時間60〜500秒、特に成形温度150〜185℃で成形時間30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で成形時間30〜600秒、特に成形温度130〜160℃で成形時間120〜300秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150〜185℃で0.5〜20時間行ってよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0057】
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
尚、以下本発明において重量平均分子量は下記測定条件によりGPCで測定されたものである。
<分子量測定条件>
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.35mL/min
検出器:RI
カラム:TSK−GEL Hタイプ(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL
【0058】
(A)レジン状オルガノポリシロキサンの合成
[合成例1]
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で、水8質量部とイソプロピルアルコール60質量部との混合液を液中滴下した。内温−5〜0℃の範囲で5時間かけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから該混合液を室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。これに水25質量部を滴下後、得られた反応混合物を40〜45℃の範囲で60分間撹拌した。その後、該反応混合物に水200質量部を加えて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過及び減圧ストリップをすることにより、下記平均式(A−1)で示される無色透明の固体(融点76℃、重量平均分子量3,060、屈折率1.43)のレジン状オルガノポリシロキサン(A−1)36.0質量部を得た。
(CH
3)
1.0Si(OC
3H
7)
0.07(OH)
0.10O
1.4 (A−1)
【0059】
(B)オルガノポリシロキサンの合成
[合成例2]
フェニルメチルジクロロシラン100g(4.4モル%)、フェニルトリクロロシラン2,100g(83.2モル%)、Si数21個の両末端クロロ封鎖のジメチルポリシロキサンオイル2,400g(12.4モル%)、トルエン3,000gを混合し、水11,000g中に混合した上記シランを滴下し、30〜50℃の範囲で1時間共加水分解した。その後、30℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、ろ過、及び減圧ストリップをすることにより、無色透明な生成物(オルガノシロキサン(B−1))を得た。該シロキサン(B−1)はICIコーンプレートを用いた150℃での溶融粘度5Pa・sを有し、重量平均分子量50,000、屈折率1.49であった。
[(Me
2SiO)
21]
0.124(PhMeSiO)
0.044(PhSiO
1.5)
0.832 (B−1)
【0060】
(C)無機充填材
(C−1):溶融球状シリカ(商品名:RS−8225/53C、平均10μm、屈折率、1.46、(株)龍森製)
(C−2):ガラスフィラー(商品名:CF0093、平均10μm、屈折率1.50、日本フリット(株)製)
【0061】
(D)硬化触媒
(D−1):安息香酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)
(D−2):2−フェニルイミダゾール(商品名:2PZ、四国化成工業(株)製)
【0062】
(E)内部離型剤
(E−1):エステル系ワックス(商品名:カオーワックス220、花王(株)製)
(E−2):カルナバワックス(商品名:F1−100,大日化学工業(株)製)
【0063】
(F)カップリング剤
(F−1):3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−803、信越化学工業(株)製)
(F−2):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)
【0064】
(G)エポキシ樹脂
(G−1):トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(商品名TEPIC−s:日産化学(株)製)
(G−2):オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EOCN−1020−55、日本化薬(株)製)
(G−3):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンHP−7200、DIC(株)製)
【0065】
(H)フェノール樹脂
(H−1):ノボラック型フェノール樹脂(商品名:TD―2131、DIC(株)製)
【0066】
[実施例1〜2,比較例1〜8]
表1、2に示す配合(質量部)で、熱二本ロールにて製造し、冷却、粉砕して熱硬化性シリコーン及びエポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成につき、以下の諸特性を測定した。結果を表1、2に示す。
【0067】
スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm
2、成形時間120秒の条件で行った。
【0068】
光透過率、耐熱性試験
成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm
2、成形時間120秒の条件で、1辺50mm×厚さ0.35mmの硬化物を作成し、180℃×4時間の二次硬化を行い、エス・デイ・ジー(株)製X-rite8200を使用して740nmの光透過率を測定した。その後、175℃×300時間の熱処理を行い、同様にエス・デイ・ジー(株)製X-rite8200を使用して740nmの光透過率を測定した。
【0069】
難燃性試験
UL−94規格に基づき、1/8インチ厚の板を、成形温度175℃、成型圧力6.9N/mm
2、成型時間120秒の条件で成型し、180℃で4時間ポストキュアーした。ポストキュアーした試験片の難燃性を確認した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1のように、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂は、初期状態において高い透過率を有するとともに、耐熱性試験における熱処理後も初期状態の透過性とほとんど変わらないことから、長期使用での熱劣化による着色等の変色に対して優れた耐性を有していることが分かった。また、高い耐熱性、難燃性を有することから、例えばフォトカプラー一次封止用樹脂として有用であることがわかった。
【0073】
その一方、表2のように、熱硬化性エポキシ樹脂は無機充填材との屈折率の差が大きいことから初期の透過率が低いだけでなく、耐熱性が低く、難燃性も乏しいことから、一次封止用樹脂としてエポキシ樹脂のものよりも本願のシリコーン樹脂のものが優れていることがわかった。