(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係るセンサモジュールは、例えば車両に搭載されて、車輪の回転数やハンドルの回転角等を測定する車載センサ等として用いられる。このセンサモジュールは、本発明のモールド樹脂付きケーブルの一態様である。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るセンサモジュール1の外観を示す斜視図である。
図2は、センサモジュール1の構成例を示し、
図2(a)は上面図、
図2(b)は
図2(a)のA−A線断面図、
図2(c)は側面図である。なお、
図2(a)乃至(c)では、モールド樹脂3を二点鎖線で示している。
【0013】
センサモジュール1は、ケーブル2と、ケーブル2の長手方向の一端部をモールドするモールド樹脂3と、ケーブル2のモールド樹脂3内における先端部に接続されたセンサ4(
図2に示す)とを備えている。
【0014】
モールド樹脂3は、例えばナイロンやポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材料を用いて成形され、
図1に示すように、ケーブル2の長手方向に延びる円筒形状である。なお、モールド樹脂3は、必ずしも円筒形状である必要はなく、例えば角筒形状や先端部が丸みを帯びた砲弾形状であってもよい。
【0015】
本実施の形態では、モールド樹脂3は、ケーブル2の長手方向の一端部、及びセンサ4の全体をモールドしているが、これに限らず、例えばセンサ4がモールド樹脂3によってモールドされず外部に露出していてもよい。すなわち、モールド樹脂3は必ずしもケーブル2の端末をモールドしている必要はなく、ケーブル2の長手方向の一部をモールドしていればよい。
【0016】
センサ4は、例えば磁気を検出するホール素子等が搭載された測定部40と、測定部40の一端部に設けられた複数(本実施の形態では2つ)のリード端子41,42とを備えたホールスイッチである。なお、センサ4は、ホールスイッチやホールIC等の磁気を測定するものに限らず、モールド樹脂3に覆われた状態で物理量を測定できればよく、例えば温度の測定や振動の測定を目的とするものであってもよい。
【0017】
ケーブル2は、中心導体21a及び中心導体21aを被覆する絶縁体21bを有する第1の電線21、ならびに中心導体22a及び中心導体22aを被覆する絶縁体22bを有する第2の電線22、及び第1の電線21ならびに第2の電線22を被覆するシース23を備えている。第1及び第2の電線21,22は、モールド樹脂3側の端部においてシース23から突出している。すなわち、第1及び第2の電線21,22は、シース23から突き出た部分のうち、先端部を含む一部の領域がモールド樹脂3に覆われている。
【0018】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1の電線21のモールド樹脂3内における先端部では、絶縁体21bから露出した中心導体21aが、センサ4の一方のリード端子41に例えば半田付け等により接続されている。同様にして、第2の電線22のモールド樹脂3内における先端部では、絶縁体22bから露出した中心導体22aが、センサ4の他方のリード端子42に接続されている。
【0019】
本実施の形態では、センサモジュール1の端部における可撓性向上のため(つまり、ケーブル2に対してモールド樹脂3を容易に揺動又は屈曲可能とするため)、モールド樹脂3は、センサ4と共にシース23から突出した第1及び第2の電線21,22の先端部側の一部をシース23から離間した状態でモールドしている。したがって、シース23から突出した第1及び第2の電線21,22のうちモールド樹脂3でモールドされていない残りの部分は、外部に露出している。
【0020】
モールド樹脂3は、シース23から離間して、シース23よりも細径の第1及び第2の電線21,22の先端部側の一部に接触して設けられているため、ケーブル2に対してモールド樹脂3を容易に揺動又は屈曲させることが可能となる。
【0021】
上記に記載の通り、モールド樹脂3は、シース23から離間して、シース23よりも細径の第1及び第2の電線21,22の先端部側の一部に接触して設けられている。この場合、シース23にもモールド樹脂3を設ける場合と比較し、ケーブル2のモールド樹脂3と接触する表面積が小さくなる。このため、ケーブル2に引張力が加わった際の樹脂モールド3内に位置するケーブル2の先端部に作用する力が大きくなってしまう可能性がある。
【0022】
このため、本実施の形態では、
図2(b)に示すように、第1の電線21は、モールド樹脂3内における第1及び第2屈曲部211,212において屈曲されている。より具体的には、第1の電線21は、第1及び第2屈曲部211,212の他に、モールド樹脂3から導出された導出部213と、導出部213から第1屈曲部211に向かって延在する第1延在部214と、第2屈曲部212からセンサ4側に延在する第2延在部215と、第1及び第2屈曲部211,212の間をつなぐ延伸部216とを有している。
【0023】
図2(c)に示すように、第2の電線22は、第1の電線21と同様に、モールド樹脂3内における第1及び第2屈曲部221,222において屈曲され、第1及び第2屈曲部221,222の他に、導出部223と、第1及び第2延在部224,225と、延伸部226とを有している。
【0024】
第1及び第2の電線21,22の延伸部216,226は、導出部213,223との間に第1屈曲部211,221及び第1延在部214,224を介してモールド樹脂3内に位置し、導出部213,223の導出方向に対して交差する方向に延伸している。なお、延伸部216,226は、導出部213,223の導出方向に対して45°〜90°の角度で交差する方向に延伸していることが望ましい。すなわち、
図2(b)及び(c)における角度θが45°〜90°となることが望ましい。
【0025】
ここで、「導出方向」とは、第1及び第2の電線21,22のモールド樹脂3の端部からの引き出し方向を示し、例えばセンサモジュール1の使用態様によって導出部213,223が屈曲された場合における屈曲方向とは異なる。
【0026】
本実施の形態では、第1の電線21は、第1及び第2屈曲部211,212の2箇所において、第2の電線21,22は、第1及び第2屈曲部221,222の2箇所において、それぞれ屈曲されているが、これに限らず、第1及び第2の電線21,22は、モールド樹脂3内における少なくとも一箇所の屈曲部において屈曲されていればよい。
【0027】
ケーブル2において、モールド樹脂3から露出した第1及び第2の電線21,22に外部から導出方向の引張力Tが加わると、延伸部216,226において、伝達された引張力の一部が延伸方向(導出方向に交差する方向)に分散する。この延伸部216,226に分散して伝わる力の大きさは、角度θに応じて小さくなる。
【0028】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0029】
(1)ケーブル2(第1及び第2の電線21,22)は、モールド樹脂3内における第1屈曲部211,221及び第2屈曲部212,222において屈曲されているため、外部からケーブル2に導出方向の引張力が加わった場合においても、第1屈曲部211,221及び第2屈曲部212,222を介することにより、ケーブル2の先端側に作用する引張力が低減する。これにより、ケーブル2に対してモールド樹脂3を容易に揺動又は屈曲可能でありながらも、第1の電線21の中心導体21aとセンサ4のリード端子41との接続部分、及び第2の電線22の中心導体22aとセンサ4のリード端子42との接続部分のそれぞれに作用する引張力が抑制される。
【0030】
(2)導出部213,223の導出方向に対して交差する方向に延伸する延伸部216,226が、導出部213,223との間に第1屈曲部211,221を介してモールド樹脂3内に位置しているため、ケーブル2に加わった外部からの導出方向の引張力を延伸部216,226の全体で受けることにより、第1の電線21の中心導体21aとセンサ4のリード端子41との接続部分、及び第2の電線22の中心導体22aとセンサ4のリード端子42との接続部分に作用する引張力がより抑制される。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図3を参照して説明する。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るセンサモジュール10の構成例を示し、
図3(a)は上面図、
図3(b)は
図3(a)のB−B線断面図、
図3(c)は側面図である。なお、
図3(a)乃至(c)では、モールド樹脂3を二点鎖線で示している。
【0033】
図3(a)乃至(c)において、第1の実施の形態に係るセンサモジュール1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本実施の形態に係るセンサモジュール10は、中心導体24a及び絶縁体24bを有する第1の電線24、ならびに中心導体25a及び絶縁体25bを有する第2の電線25、及び第1の電線24ならびに第2の電線25を被覆するシース23を備えたケーブル2と、ケーブル2の長手方向の一端部をモールドするモールド樹脂3と、ケーブル2のモールド樹脂3内における先端部に接続されたセンサ4とを備えている。
【0035】
このセンサモジュール10は、第1及び第2の電線24,25のモールド樹脂3内における構造が、第1の実施の形態に係る第1及び第2の電線21,22のモールド樹脂3内における構造と異なる。
【0036】
図3(b)に示すように、第1の電線24は、モールド樹脂3内における第1乃至第4屈曲部241〜244によって折り返すように蛇行している。
【0037】
より具体的には、第1の電線24は、第1乃至第4屈曲部241〜244の他に、モールド樹脂3から導出された導出部245と、導出部245から第1屈曲部241に向かって延在する第1延在部246aと、第2及び第3屈曲部242,243の間に延在する第2延在部246bと、第4屈曲部244からセンサ4側に延在する第3延在部246cと、第1及び第2屈曲部241,242の間をつなぐ第1延伸部247と、第3及び第4屈曲部243,244の間をつなぐ第2延伸部248とを有している。
【0038】
第1及び第2延伸部247,248は、導出部245の導出方向に対して交差する方向に延伸している。本実施の形態では、導出部245の導出方向に対して、第1延伸部247の交差方向と第2延伸部248の交差する方向とが対称である。すなわち、第1延伸部247の延伸方向と第2延伸部248の延伸方向とが交差している。
【0039】
第1延伸部247は、導出部245との間に、第1屈曲部241及び第1延在部246aを介してモールド樹脂3内に位置し、第2延伸部248は、導出部245との間に、第1乃至第3屈曲部241〜243、第1延伸部247、ならびに第1及び第2延在部246a,246bを介してモールド樹脂3内に位置している。
【0040】
前述の通り、第1の電線24は、第1乃至第4屈曲部241〜244によって折り返すように蛇行していることにより、第1延在部246aと第3延在部246cとが、延在方向に沿って並んで位置している。本実施の形態では、第1乃至第3延在部246a,246b,246cは互いに平行な方向に延在しているため、第1延在部246aの延在方向の延長上に第3延在部246cが位置している。
【0041】
図3(c)に示すように、第2の電線25は、第1の電線24と同様に、モールド樹脂3内における第1乃至第4屈曲部251〜254によって折り返すように蛇行している。
【0042】
より具体的には、第2の電線25は、第1乃至第4屈曲部251〜254の他に、モールド樹脂3から導出された導出部255と、導出部255から第1屈曲部251に向かって延在する第1延在部256aと、第2及び第3屈曲部252,253の間に延在する第2延在部256bと、第4屈曲部254からセンサ4側に延在する第3延在部256cと、第1及び第2屈曲部251,252の間をつなぐ第1延伸部257と、第3及び第4屈曲部253,254の間をつなぐ第2延伸部258とを有している。
【0043】
第1及び第2延伸部257,258は、第1の電線24の第1及び第2延伸部247,248と同様に、導出部255の導出方向に対して交差する方向に延伸している。第1延伸部257において導出部255の導出方向に対して交差する方向と、第2延伸部248において導出部255の導出方向に対して交差する方向とが、交差している。
【0044】
第1延伸部257は、導出部255との間に、第1屈曲部251及び第1延在部256aを介してモールド樹脂3内に位置し、第2延伸部258は、導出部255との間に、第1乃至第3屈曲部251〜253、第1延伸部257、ならびに第1及び第2延在部256a,256bを介してモールド樹脂3内に位置している。また、第3延在部256cは、第1延在部246aの延在方向の延長上に第3延在部246cが位置している。
【0045】
本実施の形態では、第1の電線24は、第1乃至第4屈曲部241〜244の4箇所によって、第2の電線25は、第1乃至第4屈曲部251〜254の4箇所によって、それぞれ折り返すように蛇行しているが、屈曲部の数については特に制限はない。また、第1及び第2の電線24,25はそれぞれ、第1屈曲部241,251及び第4屈曲部244,254の間を弧状に屈曲させてもよい。
【0046】
ケーブル2において、モールド樹脂3から露出した第1及び第2の電線24,25にそれぞれ外部から導出方向の引張力Tが加わると、第1延伸部247,257及び第2延伸部248,258において、伝達された引張力の一部が延伸方向(導出方向に交差する方向)に分散する。
【0047】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態の(1)及び(2)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。また、第1の電線24は、第1乃至第4屈曲部241〜244によって、第2の電線25は、第1乃至第4屈曲部251〜254によって、それぞれ折り返すように蛇行しているため、複数の延伸部(第1延伸部247,257及び第2延伸部248,258)を有することを可能にしながらも、センサモジュール10全体(特に、モールド樹脂3の厚さ)の大型化の抑制を図ることができる。
【0048】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0049】
[1]中心導体(21a,22a/24a,25a)及び当該中心導体(21a,22a/24a,25a)を被覆する絶縁体(21b,22b/24b,25b)を備えた電線(21,22/24,25)、及び当該電線(21,22/24,25)を被覆するシース(23)を備えたケーブル(2)と、シース(23)から突出した電線(21,22/24,25)の長手方向の一部を覆い、シース(23)から離間して設けられたモールド樹脂(3)と、を備え、電線(21,22/24,25)は、モールド樹脂(3)内における少なくとも一箇所の屈曲部(第1屈曲部211,221及び第2屈曲部212,222/第1乃至第4屈曲部241〜244,251〜254)において屈曲されているモールド樹脂付きケーブル(センサモジュール1,10)。
【0050】
[2]電線(21,22/24,25)は、モールド樹脂(3)から導出された導出部(213,223/245,255)の導出方向に対して交差する方向に延伸する延伸部(216,226/第1延伸部247,257及び第2延伸部248,258)が、導出部(213,223/245,255)との間に屈曲部(第1屈曲部211,221/241,251)を介してモールド樹脂(3)内に位置している、[1]に記載のモールド樹脂付きケーブル(センサモジュール1,10)。
【0051】
[3]延伸部(216,226/第1延伸部247,257及び第2延伸部248,258)は、導出方向に対して45°〜90°の角度で交差する方向に延伸している、[2]に記載のモールド樹脂付きケーブル(センサモジュール1,10)。
【0052】
[4]電線(21,22/24,25)は、複数の屈曲部(第1乃至第4屈曲部241〜244,251〜254)によって折り返すようにモールド樹脂(3)内で蛇行している、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のモールド樹脂付きケーブル(センサモジュール10)。
【0053】
[5]電線(21,22/24,25)のモールド樹脂(3)内における先端部に接続されたセンサ(4)をさらに備えた、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のモールド樹脂付きケーブル(センサモジュール1,10)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0055】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ケーブル2は、中心導体21a,22a及び絶縁体21b,22bを有する第1及び第2の電線21,22をシース23で被覆してなるものであったが、これに限らず、例えば絶縁体等を有することなく、導体及びシースからなるケーブルであってもよいし、3本以上の電線をシースで被覆してなるケーブルであってもよい。すなわち、センサモジュール1,10の用途に応じたケーブルを適用することが可能である。
【0056】
また、上記実施の形態では、モールド成形体付きケーブルの一態様としてセンサモジュール1,10について説明したが、これに限らず、例えばケーブルの先端に端子を接続することによりコネクタ等にもモールド成形体付きケーブルを適用することが可能である。