特許第6403280号(P6403280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403280無線通信システム、中継局装置及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403280
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】無線通信システム、中継局装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/06 20090101AFI20181001BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20181001BHJP
   H04W 28/14 20090101ALI20181001BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20181001BHJP
【FI】
   H04W28/06
   H04W4/38
   H04W28/14
   H04W84/18 110
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-144041(P2015-144041)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-28434(P2017-28434A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃平
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光哉
(72)【発明者】
【氏名】バトウルジー ツェンドオチル
【審査官】 吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0076058(US,A1)
【文献】 特開2010−193303(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158688(WO,A1)
【文献】 特表2014−504461(JP,A)
【文献】 特開2009−278532(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムであって、
前記観測情報は、前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号を更に含み、
前記中継局装置は、
受信した前記観測情報を記憶するバッファと、
前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する中継局制御部と、
前記管理番号の組み合わせごとに、前記管理番号で特定される前記観測情報に含まれる測定値の時間的な相関を示す相関係数が記憶されている管理番号相関テーブルと、
前記中継局制御部により選択された前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する無線部と
を備え、
前記中継局制御部は、
自装置の前記バッファの使用量が一定以上になると、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち、前記管理番号相関テーブルにおける前記相関係数が所定値以上の前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、
無線通信システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
受信する前記観測情報に含まれる測定値の時系列データから前記管理番号の組み合わせごとの前記相関係数を算出し、前記管理番号相関テーブルを生成する演算部と、
前記演算部により生成された前記管理番号相関テーブルを前記中継局装置へ通知するサーバ制御部と
を備える、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記サーバ制御部は、
前記中継局装置それぞれにおける前記バッファの使用量を取得して前記中継局装置それぞれに通知し、
前記中継局制御部は、
自装置の前記バッファの使用量が予め定められた第1の閾値未満であり、かつ、他の前記中継局装置におけるバッファの使用量が前記第1の閾値以上である場合、前記サーバ装置宛に送信する前記観測情報の選択を行わない、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記サーバ制御部は、
経由する前記中継局装置ごとに前記観測情報の遅延時間を測定し、測定した前記中継局装置それぞれの遅延時間を前記中継局装置へ通知し、
前記中継局制御部は、
自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が予め定められた許容遅延時間以上である場合、前記バッファに記憶されている複数の前記観測情報を一度に選択して、選択した複数の前記観測情報を一つのパケットとして前記無線部に送信させる、
請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記中継局制御部は、
自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が前記許容遅延時間以上である場合又は前記許容遅延時間以上になると推定される場合に、前記相関係数が所定値以上の前記観測情報の組み合わせの一部を棄却する、
請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記バッファは、
記憶する前記観測情報が送信される確率の異なる複数のキューを有し、
前記中継局制御部は、
自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が前記許容遅延時間以上である場合又は前記許容遅延時間以上になると推定される場合に、送信される確率の高い前記キューより送信される確率の低い前記キューに前記観測情報が記憶されるように割り当てを変更する、
請求項4又は請求項5のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムにおける中継局装置であって、
前記観測情報は、前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号を更に含み、
受信した前記観測情報を記憶するバッファと、
前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する中継局制御部と、
前記管理番号の組み合わせごとに、前記管理番号で特定される前記観測情報に含まれる測定値の時間的な相関を示す相関係数が記憶されている管理番号相関テーブルと、
前記中継局制御部により選択された前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する無線部と
を備え、
前記中継局制御部は、
自装置の前記バッファの使用量が一定以上になると、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち、前記管理番号相関テーブルにおける前記相関係数が所定値以上の前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、
中継局装置。
【請求項8】
センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記観測情報は、前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号を更に含み、
前記中継局装置は、前記管理番号の組み合わせごとに、前記管理番号で特定される前記観測情報に含まれる測定値の時間的な相関を示す相関係数が記憶されている管理番号相関テーブルを備え、
前記中継局装置が、受信した前記観測情報をバッファに記憶させる第1のステップと、
前記中継局装置が、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する第2のステップと、
前記中継局装置が、前記第2のステップにおいて選択した前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する第3のステップと
を有し、
前記第2のステップでは、
自装置の前記バッファの使用量が一定以上になると、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち、前記管理番号相関テーブルにおける前記相関係数が所定値以上の前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、中継局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒトが持つ携帯電話サービスに加え、モノとモノが通信するいわゆるM2M(Machine to Machine)通信の需要が高まっている。M2M通信では、設置容易性や拡張性といった観点から、無線が使用されることが多い。無線を使ってモノとモノとが通信を行う場合、モノは電池駆動で動作することが想定され、かつ一度設置されると電池交換が難しいため、送信出力を抑えたり、無駄なパケットを送信しないなど低消費電力化が求められる。しかし、送信出力を抑えると通信距離が短くなるため、中継局を設置し、M2M通信を行う端末は中継局と通信を行い、中継局はネットワークに接続されたアクセスポイントと通信を行うことにより、消費電力を低減することが可能になる。
【0003】
このような技術は、非特許文献1や特許文献1などに記載されている。非特許文献1に記載の技術では、中継局において上限の集約待ち時間を設定し、待ち時間の間に発生したパケットを集約して送信をする。また、特許文献1に記載の技術では、中継局において受信した複数のセンサデータ系列の相関性の特異値分解を行って圧縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5270623号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】河合佑介、外4名、「無線センサネットワークにおけるデータ集約方式に関する考察」、マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2011)シンポジウム論文集、情報処理学会、平成23年7月、2011巻、p.871−877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中継局を用いた構成では、端末の消費電力を低減させるだけでなく、中継局の消費電力も低減させる必要がある。また、中継対象のセンサデータには多様なセンサで得られるデータが含まれる場合があり、センサの種別ごとに異なる要求を満たすことも求められる。また、中継対象のセンサデータには時間的・空間的に相関があるものもないものも混在しているため、毎回全てのセンサデータを送信あるいは圧縮する必要はない。さらに、センサ種別毎に異なるQoS(Quality of Service)や等級条件が設定されていることが想定される。非特許文献1に記載の技術は、中継局に単一の集約待ち時間を設定しているのみで、パケットごとに設定されている許容遅延量や周囲の中継局のバッファ使用量を考慮していないため、トラヒック量の変化に追随できないという問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、中継局が接続している端末の全てのセンサデータ系列を少なくとも最大周期分保持している必要があり記憶容量の大きいバッファが要求されるとともに、圧縮により誤差が生じるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、前述の事情を鑑みて考案されたものであり、センサで得られたセンサデータを含む観測情報のトラヒック量が増加した場合に観測情報の中継伝送に要する時間の増加を抑えることを可能にする無線通信システム、中継局装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムであって、前記中継局装置は、受信した前記観測情報を記憶するバッファと、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する中継局制御部と、前記観測情報が前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号の対ごとの相関係数であって管理番号で特定される前記センサの測定値における相関係数を示すテーブルが記憶されている記憶部と、前記中継局制御部により選択された前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する無線部とを備え、前記中継局制御部は、自装置の前記バッファに記憶されている前記観測情報が一定以上になると、前記テーブルにおける相関係数に基づいて相関の強い前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、無線通信システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信システムにおいて、前記サーバ装置は、受信する前記観測情報に含まれる測定値の時系列データから前記管理番号の対ごとの相関係数を算出し、前記テーブルを生成する演算部と、前記演算部により生成されたテーブルを前記中継局装置へ通知するサーバ制御部とを備える。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信システムにおいて、前記サーバ制御部は、前記中継局装置それぞれにおける前記バッファの使用量を取得して前記中継局装置それぞれに通知し、前記中継局制御部は、自装置の前記バッファの使用量が予め定められた第1の閾値未満であり、かつ、他の前記中継局装置におけるバッファの使用量が前記第1の閾値以上である場合、前記サーバ装置宛に送信する前記観測情報の選択を行わない。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信システムにおいて、前記サーバ制御部は、経由する前記中継局装置ごとに前記観測情報の遅延時間を測定し、測定した前記中継局装置それぞれの遅延時間を前記中継局装置へ通知し、前記中継局制御部は、自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が予め定められた許容遅延時間以上である場合、前記バッファに記憶されている複数の前記観測情報を一度に選択して、選択した複数の前記観測情報を一つのパケットとして前記無線部に送信させる。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信システムにおいて、前記中継局制御部は、自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が前記許容遅延時間以上である場合又は前記遅延時間が前記許容遅延時間以上になると推定される場合に、相関の強い前記観測情報の組み合わせの一部を棄却する。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信システムにおいて、前記バッファは、記憶する前記観測情報が送信される確率の異なる複数のキューを有し、前記中継局制御部は、自装置を経由する前記観測情報の遅延時間が前記許容遅延時間以上である場合又は前記遅延時間が前記許容遅延時間以上になると推定される場合に、送信される確率の高い前記キューより送信される確率の低い前記キューに前記観測情報が記憶されるように割り当てを変更する。
【0014】
また、本発明の一態様は、センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムにおける中継局装置であって、受信した前記観測情報を記憶するバッファと、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する中継局制御部と、前記観測情報が前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号の対ごとの相関係数であって管理番号で特定される前記センサの測定値における相関係数を示すテーブルが記憶されている記憶部と、前記中継局制御部により選択された前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する無線部とを備え、前記中継局制御部は、自装置の前記バッファに記憶されている前記観測情報が一定以上になると、前記テーブルにおける相関係数に基づいて相関の強い前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、中継局装置である。
【0015】
また、本発明の一態様は、センサに接続され前記センサにより得られる測定値を含む観測情報を無線回線を介して送信する複数の端末装置と、前記端末装置それぞれから送信される前記観測情報を収集するサーバ装置と、前記端末装置から送信される前記観測情報を受信して前記サーバ装置へ中継転送する中継局装置とを備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記中継局装置は、前記観測情報が前記サーバ装置へ到達するまでに経由する前記中継局装置と前記センサの種別との組み合わせに対して一意に割り当てられた管理番号の対ごとの相関係数であって管理番号で特定される前記センサの測定値における相関係数を示すテーブルが記憶されている記憶部を備え、前記中継局装置が、受信した前記観測情報をバッファに記憶させる第1のステップと、前記中継局装置が、前記バッファに記憶されている前記観測情報のうち前記サーバ装置宛に送信する観測情報を選択する第2のステップと、前記中継局装置が、前記第2のステップにおいて選択した前記観測情報を前記サーバ装置又は他の前記中継局装置へ中継転送する第3のステップとを有し、前記第2のステップでは、自装置の前記バッファに記憶されている前記観測情報が一定以上になると、前記テーブルにおける相関係数に基づいて相関の強い前記観測情報の組み合わせを検出し、検出した前記観測情報の一部を結合又は棄却する、無線通信方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センサで得られたセンサデータを含む観測情報のトラヒック量が増加した場合に観測情報の中継伝送に要する時間の増加を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態における端末装置の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態における中継局装置の構成例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における管理番号テーブルの一例を示す図である。
図5】第1の実施形態における管理番号相関テーブルの一例を示す図である。
図6】第1の実施形態におけるアクセスポイントの構成例を示すブロック図である。
図7】第1の実施形態におけるサーバ装置の構成例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態における無線通信システムに新たなセンサが追加された際の処理を示す図である。
図9】第1の実施形態の無線通信システムにおける1つの中継局装置についてのバッファの管理及びパケットの送信手順を示す図である。
図10図9において示した中継局装置が行う各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理を示すフローチャートである。
図11図9において示した中継局装置が行う棄却又は送信する観測情報を選択する処理を示すフローチャートである。
図12図9において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各中継局装置のバッファの使用状況の収集などの処理を示す図である。
図13】第2の実施形態の無線通信システムにおけるバッファの管理及びパケットの送信手順を示す図である。
図14図13において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各端末装置及び各中継局装置のバッファの使用状況の収集などの処理を示す図である。
図15】第3の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図16】第3の実施形態の無線通信システムにおける中継局装置についてのバッファの管理及びパケットの送信手順を示す図である。
図17図16において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各中継局装置のバッファの使用状況の収集などの処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における無線通信システム、中継局装置及び無線通信方法を説明する。なお、以下の実施形態では、同一の符号を付した構成要素は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。無線通信システムは、複数のセンサ1と、複数の端末装置2と、複数の中継局装置3と、一つ又は複数のアクセスポイント4と、サーバ装置5とを備える。端末装置2には一つ又は複数のセンサ1が接続されている。なお、サーバ装置5は、複数のコンピュータを組み合わせて構成されるクラウドサーバであってもよい。第1の実施形態における無線通信システムは、階層型のM2M無線ネットワークであり、各センサ1で得られるセンサデータをサーバ装置5に蓄積するシステムである。
【0020】
端末装置2は、一定の周期ごと又は要求される都度、観測情報を無線回線を介して中継局装置3へ送信する。観測情報には、センサ1により得られた測定結果又は検出結果を示すセンサデータと、センサデータを取得した時刻と、センサ1の種別と、管理番号と、センサ1を一意に識別する識別情報とが含まれる。管理番号は、センサ1の種別と中継局装置3との組み合わせに対して割り当てられる番号である。中継局装置3は、一つ又は複数の端末装置2から受信する観測情報をアクセスポイント4へ、無線回線を介して中継転送する。アクセスポイント4は、ネットワーク網を介してサーバ装置5と接続されている。アクセスポイント4は、各中継局装置3から受信する観測情報をサーバ装置5へ、ネットワーク網を介して送信する。サーバ装置5は、端末装置2と中継局装置3とアクセスポイント4とを介して、各センサ1により得られたセンサデータを取得する。サーバ装置5は、取得した各センサ1のセンサデータを時系列データとして記憶する。サーバ装置5は、時系列データを分析し、分析結果に基づいて中継局装置3における送信を制御する。
【0021】
第1の実施形態における無線通信システムでは、センサ1の種別それぞれに対して、許容遅延時間などのQoSが予め定められている。許容遅延時間は、センサ1で得られたセンサデータが端末装置2からサーバ装置5へ伝送されるまでに要する時間(遅延時間)に対して許容される時間の上限値である。また、センサ1の種別それぞれに対して優先度が予め定められており、無線通信システムにおける各装置は優先度を記憶している。優先度は、例えば許容遅延時間が短いほど高く定められ、中継局装置3は、観測情報に含まれるセンサ1の種別の優先度に基づいて、端末装置2から受信した観測情報をアクセスポイント4へ転送する。また、第1の実施形態の無線通信システムでは、センサデータのトラヒック量が増加した場合に、無線通信システム全体におけるQoSなどの要求条件を満たすように、センサ1の種別の優先度に応じてセンサデータの圧縮や、結合又は棄却などによるトラヒック量の制御が行われる。
【0022】
図2は、第1の実施形態における端末装置2の構成例を示すブロック図である。端末装置2は、センサインタフェース(I/F)21と、端末電源部22と、端末制御部23と、送信バッファ24と、端末無線部25とを備える。
【0023】
センサインタフェース21は、端末装置2に対して設けられた一つ又は複数のセンサ1と接続され、接続されたセンサ1からセンサデータを取得する。センサ1は、例えば温度、湿度、位置、振動などを測定し、測定結果を示す電気信号をセンサインタフェース21へ出力する。センサ1が出力する電気信号は、アナログ信号又はデジタル信号である。端末装置2に複数のセンサ1が接続される場合、センサ1は全て異なる種類であってもよいし、同じ種類のものが複数あってもよい。センサインタフェース21は、アナログ信号をセンサ1から取得する場合、アナログ信号をデジタル信号に変換する。センサインタフェース21は、デジタル信号で示される測定結果のセンサデータと、センサデータを取得した時刻と、センサ1の種別と、管理番号と、センサ1を一意に識別する識別情報とを含む観測情報を端末制御部23へ出力する。センサインタフェース21は、センサ1ごとに観測情報を端末制御部23へ出力する。
【0024】
端末電源部22は、端末装置2内のセンサインタフェース21と端末制御部23と送信バッファ24と端末無線部25とへ電力を供給する。端末電源部22には、例えば一次電池、二次電池、二次電池と発電手段とを組み合わせたものなどが用いられる。発電手段は、例えばソーラーパネルや風車又は水車などである。端末装置2が設置される位置において、商用電源などが確保できる場合には、端末電源部22は商用電源による電力を端末装置2内に供給してもよい。
【0025】
端末制御部23は、センサインタフェース21から出力される観測情報を送信バッファ24に記憶させる。端末無線部25は、予め定められた無線方式で中継局装置3と無線通信を行う。端末無線部25は、予め定められた時刻又は予め定められた周期で、送信バッファ24に記憶されている観測情報を読み出し、読み出した観測情報を接続先の中継局装置3を宛先として送信する。また、端末無線部25は、サーバ装置5から受信する命令信号を受信したときに、送信バッファ24に記憶されている観測情報を中継局装置3へ送信する。
【0026】
図3は、第1の実施形態における中継局装置3の構成例を示すブロック図である。中継局装置3は、下位側無線部31と、中継局電源部32と、管理情報記憶部33と、中継局制御部34と、バッファ35と、送信バッファ36と、上位側無線部37とを備える。
【0027】
下位側無線部31は、予め定められた無線方式で端末装置2と無線通信を行う。下位側無線部31は、端末装置2からパケットを受信し、受信したパケットに含まれる観測情報を中継局制御部34へ出力する。また、下位側無線部31は、上位側無線部37がアクセスポイント4を介してサーバ装置5から受信した命令信号を、端末装置2へ送信する。
【0028】
中継局電源部32は、中継局装置3内の下位側無線部31と管理情報記憶部33と中継局制御部34とバッファ35と送信バッファ36と上位側無線部37とへ電力を供給する。中継局電源部32は、端末電源部22と同様に、例えば一次電池、二次電池、二次電池と発電手段とを組み合わせたものなどが用いられる。中継局装置3が設置される位置において、商用電源などが確保できる場合には、中継局電源部32は商用電源による電力を中継局装置3内に供給してもよい。
【0029】
管理情報記憶部33には、管理番号テーブルと管理番号相関テーブルとが記憶される。管理番号テーブルと管理番号相関テーブルとは、サーバ装置5において生成され、アクセスポイント4を介して通知される。管理番号テーブルには、中継局番号とセンサ1の種別との組み合わせに対応する管理番号が記憶されている。中継局番号は、通信システムに備えられる複数の中継局装置3それぞれを一意に識別できる番号である。中継局番号とセンサ1の種別との組み合わせには、当該組み合わせを一意に識別できる管理番号がサーバ装置5により割り当てられる。管理番号相関テーブルには、同一管理番号内および管理番号間における管理番号に対応するセンサ1で得られるセンサデータの相関係数が記憶されている。
【0030】
図4は、第1の実施形態における管理番号テーブルの一例を示す図である。管理番号テーブルは、管理番号と中継局番号と、センサ1の種別であるセンサ種別とを示す項目の列を有している。管理番号テーブルにおける各行は、中継局番号とセンサ種別との組み合わせごとに設けられている。例えば、中継局番号「1」とセンサ種別「A」との組み合わせに対して、管理番号「1」が対応付けられている。
【0031】
図5は、第1の実施形態における管理番号相関テーブルの一例を示す図である。管理番号相関テーブルは、すべての管理番号に対応する列と行とを有し、管理番号の組み合わせにおけるセンサデータの相関係数を記憶している。同図に示す管理番号相関テーブルには、管理番号「1」から管理番号「4」までの列と行とが設けられ、管理番号の組み合わせそれぞれの相関係数が記憶されている。例えば管理番号「1」と管理番号「3」との組み合わせに対しては、相関係数「0.8」が記憶されている。管理番号相関テーブルにおいて、同じ管理番号の組み合わせに対応する相関係数(自己相関係数)には、管理番号に対応するセンサ1で得られるセンサデータの単位期間ごとの時間相関を示す値が用いられる。例えば単位期間を1日とした場合に自己相関係数が高いと、サーバ装置5に蓄積されているセンサデータの1日ごとの時系列データと、直前までに得られたセンサデータとから、今後に得られるセンサデータを推定することができる。また、異なる管理番号の組み合わせに対応する相関係数には、それぞれの管理番号に対応するセンサ1で得られたセンサデータの時系列データ間の相関を示す値が用いられる。例えば第1のセンサ1と第2のセンサ1とのセンサデータの相関係数が高い場合には、第1のセンサ1で得られるセンサデータ及び時系列データとに基づいて、第2のセンサ1で得られるセンサデータを推定することができる。
【0032】
図3に戻り、中継局装置3の構成の説明を続ける。中継局制御部34は、下位側無線部31により受信された観測情報を取得する。中継局制御部34は、観測情報に含まれるセンサ1の種別と自装置の中継局番号との組み合わせに対応する管理番号を観測情報に付加してバッファ35に記憶させる。中継局制御部34は、管理情報記憶部33に記憶されている管理番号テーブルから、センサ1の種別と自装置の中継局番号とに対応付けられている管理番号を読み出すことにより、観測情報に付加する管理番号を取得する。
【0033】
バッファ35は、優先順位が定められた複数のキューを含み構成されている。第1の実施形態では、バッファ35には、優先順位が最も高い高優先度キューと、次に優先順位が高い中優先度キューと、優先順位が最も低い低優先度キューとが存在する場合について説明する。バッファ35は、2個のキューを含み構成されてもよいし、4個以上のキューを含み構成されてもよい。中継局制御部34は、管理番号が付加された観測情報をバッファ35に記憶させる際に、観測情報に含まれるセンサ1の種別に対して定められている優先度に基づいてバッファ35のいずれかのキューを選択し、選択したキューに観測情報を記憶させる。
【0034】
バッファ35に含まれる高優先度キュー、中優先度キュー、低優先度キューそれぞれには、優先度のレンジが閾値として割り当てられている。センサ1の種別に対して割り当てられる優先度に0から1までの範囲の値が割り当てられる場合には、例えば高優先度キューに対して「0.8〜1」が割り当てられ、中優先度キューに対して「0.5〜0.8」が割り当てられ、低優先度キューに対して「0〜0.5」が割り当てられる。センサ1の種別が「A」のセンサデータに対して優先度「0.9」が割り当てられ、センサ1の種別が「B」のセンサデータに対して優先度「0.7」が割り当てられ、センサ1の種別が「C」のセンサデータに対して優先度「0.2」が割り当てられている場合、種別「A」のセンサデータを含む観測情報は、高優先度キューに記憶されることになる。また、種別「B」のセンサデータを含む観測情報は中優先度キューに記憶され、種別「C」のセンサデータを含む観測情報は低優先度キューに記憶されることになる。優先度が高いキューに記憶されている観測情報は高い確率で送信バッファ36に移され、優先度が低いキューに記憶されている観測情報は低い確率で送信バッファ36に移されることにより、観測情報内のセンサデータに対する優先度に応じて、アクセスポイント4の送信が行われる。
【0035】
また、中継局制御部34は、バッファ35内の各キューに記憶されている観測情報から、サーバ装置5宛に送信する観測情報を選択する。中継局制御部34は、選択した観測情報を送信バッファ36に記憶させて、選択した観測情報を上位側無線部37による送信の対象にする。また、中継局制御部34は、サーバ装置5から管理番号テーブル及び管理番号相関テーブルを更新する指示と、新たな管理番号テーブル及び管理番号相関テーブルとを上位側無線部37を介して取得すると、管理情報記憶部33に記憶されている管理番号テーブル及び管理番号相関テーブルを更新する。また、中継局制御部34は、自装置のバッファ35に記憶されている観測情報のデータ量と、バッファ35内の各キューの使用率と、バッファ35内の各キューに対する優先度のレンジと、自装置の中継局番号とを含むバッファ状態情報を定期的に生成する。中継局制御部34は、生成したバッファ状態情報を送信バッファ36に記憶させて、上位側無線部37による送信の対象にする。バッファ状態情報は、サーバ装置5宛に送信される。
【0036】
また、中継局制御部34は、無線通信システムにおけるセンサデータのトラヒック量が増加した場合に、バッファ35内の各キューの優先度のレンジを変更したり、バッファ35に記憶されている観測情報の結合や棄却をしたりする。中継局制御部34は、優先度のレンジの変更や、観測情報の結合と棄却とにより、無線通信システム内のトラヒック量を削減し、観測情報が端末装置2からサーバ装置5への伝送における遅延時間の増加を抑える。
【0037】
上位側無線部37は、予め定められた無線方式でアクセスポイント4と無線通信を行う。上位側無線部37は、送信バッファ36に記憶されている観測情報又はバッファ状態情報を読み出し、読み出した情報を含む送信パケットをアクセスポイント4へ送信する。また、上位側無線部37は、アクセスポイント4を介して、サーバ装置5から受信する命令信号や、管理番号テーブル及び管理番号相関テーブル並びにその更新の指示を受信すると、中継局制御部34へ出力する。
【0038】
図6は、第1の実施形態におけるアクセスポイント4の構成例を示すブロック図である。基地局装置としてのアクセスポイント4は、アクセスポイント無線部(AP無線部)41と、アクセスポイント制御部(AP制御部)42と、アクセスポイントネットワークインタフェース(APネットワークI/F)43とを備える。AP無線部41は、配下の中継局装置3により送信された送信パケットを受信し、受信した送信パケットに含まれる観測情報又はバッファ状態情報をAP制御部42へ出力する。また、AP無線部41は、サーバ装置5により通知される命令信号や、管理番号テーブル及び管理番号相関テーブル並びにその更新の指示を、配下の中継局装置3へ送信する。
【0039】
AP制御部42は、AP無線部41から取得する観測情報及びバッファ状態情報をAPネットワークI/F43へ出力する。また、AP制御部42は、APネットワークI/F43により受信される命令信号や、管理番号テーブル及び管理番号相関テーブル並びにその更新の指示をAP無線部41へ出力する。APネットワークI/F43は、ネットワーク網を介してサーバ装置5と通信を行い、サーバ装置5から命令信号や、管理番号テーブル及び管理番号相関テーブル並びにその更新の指示を受信する。
【0040】
図7は、第1の実施形態におけるサーバ装置5の構成例を示すブロック図である。サーバ装置5は、サーバネットワークインタフェース(SVネットワークI/F)51と、サーバ制御部(SV制御部)52と、記憶部53と、演算部54とを備える。SVネットワークI/F51は、ネットワーク網を介してアクセスポイント4と通信を行う。SVネットワークI/F51は、アクセスポイント4を介して、各中継局装置3から送信される観測情報又はバッファ状態情報を受信する。SVネットワークI/F51は、受信した観測情報及びバッファ状態情報をサーバ制御部52へ出力する。また、SVネットワークI/F51は、サーバ制御部52から出力される命令信号や、管理番号テーブル及び管理番号相関テーブル並びにその更新の指示を、ネットワーク網を介してアクセスポイント4へ送信する。
【0041】
サーバ制御部52は、無線通信システムにおけるセンサ1の種別と中継局装置3との組み合わせを示す管理番号を割り当てる。サーバ制御部52は、生成した管理番号と、センサ1の種別と中継局装置3との組み合わせとの対応を示す管理番号テーブルを生成し、記憶部53に記憶させる。また、サーバ制御部52は、生成した管理番号テーブルをSVネットワークI/F51を介して、各中継局装置3宛に送信する。なお、管理番号テーブルに、管理番号それぞれに対する優先度を含めるようにしてもよい。
【0042】
また、サーバ制御部52は、SVネットワークI/F51を介して取得する観測情報に含まれるセンサデータを、センサ1ごとの時系列データとして記憶部53に記憶させる。このとき、サーバ制御部52は、各時系列データに管理番号を対応付けて記憶部53に記憶させる。また、サーバ制御部52は、SVネットワークI/F51を介して取得する各中継局装置3のバッファ状態情報を記憶部53に記憶させ、無線通信システム内の各中継局装置3におけるバッファ35の使用状況を把握する。なお、サーバ制御部52は、管理番号ごとの時系列データを更に記憶部53に記憶させてもよい。
【0043】
サーバ制御部52は、各中継局装置3におけるバッファ35の使用状況と、センサデータの遅延時間及び到達率とが含まれるトラヒック情報を定期的に生成する。センサデータの遅延時間は、例えば、各中継局装置3における高優先度キューに入れられたセンサデータが端末装置2からサーバ装置5までの伝送に要した時間である。また、センサデータの到達率は、各中継局装置3における高優先度キューに入れられたセンサデータであってサーバ装置5に到達したセンサデータのうち、許容遅延時間内にサーバ装置5に到達したセンサデータの割合を示す。すなわち、許容遅延時間≧遅延時間を満たすセンサデータの割合がセンサデータの到着率である。センサデータの到達率は管理番号ごとに算出され、トラヒック情報には、各管理番号に対応するセンサデータの到達率が含まれる。センサデータの到達率は、記憶部53に記憶されているセンサ1ごとの時系列データに基づいて演算部54により管理番号ごとに算出される。サーバ制御部52は、SVネットワークI/F51を介して、生成したトラヒック情報を各中継局装置3宛に送信する。無線通信システム内の中継局装置3それぞれは、トラヒック情報をサーバ装置5から通知されることにより、他の中継局装置3における観測情報の滞り具合を把握する。また、トラヒック情報には、アクセスポイント4それぞれの配下の中継局装置3を示す情報が含まれる。
【0044】
演算部54は、記憶部53に記憶されているセンサ1ごとの時系列データを用いて、同一管理番号と異なる管理番号間とにおけるセンサデータ間の時間的な相関係数を算出する。例えば、センサ1が温度センサである場合、近くに位置する複数のセンサ1で得られるセンサデータ(温度情報)の時変動には強い相関がある。また、橋梁を車が通過したことを検出する通過センサと橋梁の振動を検出する振動センサとがセンサ1として用いられる場合、車の通過を検出するタイミングと橋梁の振動を検出するタイミングとには強い相関がある。演算部54は、同一管理番号と異なる管理番号間とにおける相関係数を算出し、管理番号相関テーブルを生成する。演算部54は、定期的又は時系列データが一定量増加する度に、管理番号相関テーブルを生成する。演算部54は、生成した管理番号相関テーブルをサーバ制御部52へ出力する。管理番号相関テーブルは、SVネットワークI/F51を介して、各中継局装置3宛に送信される。
【0045】
図8は、第1の実施形態における無線通信システムに新たなセンサ1が追加された際の処理を示す図である。端末装置2において、新たなセンサ1がセンサインタフェース21に接続されると、端末制御部23は、新たなセンサ1の種別を含む問合せ情報であって新たな管理番号を問い合わせる問合せ情報を生成し、送信バッファ24に記憶させる。問合せ情報は、端末無線部25により中継局装置3宛に送信され、中継局装置3及びアクセスポイント4を介してサーバ装置5に伝送される。サーバ装置5において、サーバ制御部52は、問合せ情報が経由した中継局装置3の中継局番号と、新たなセンサ1の種別との組み合わせに対応する管理番号の有無を、管理番号テーブルを参照して検出する。サーバ制御部52は、当該組み合わせに対応する管理番号がない場合には、新たな管理番号を当該組み合わせに割り当てる。サーバ制御部52は、中継局番号とセンサ1の種別との組み合わせに対する管理番号と、当該管理番号に対応する優先度とを含む通知情報を生成する。サーバ制御部52は、問合せ情報の送信元の端末装置2を宛先として通知情報を、SVネットワークI/F51を介して送信する。また、サーバ制御部52は、新たな管理番号を割り当てた場合、管理番号テーブルを更新し、更新した管理番号テーブルを各中継局装置3宛に送信する。
【0046】
図9は、第1の実施形態の無線通信システムにおける1つの中継局装置3についてのバッファ35の管理及びパケットの送信手順を示す図である。この処理は繰り返し行われる。中継局装置3は、配下の各端末装置2から各々のタイミングで送信される観測情報を含むパケットを受信する。中継局装置3は、端末装置2からのパケット受信と並行して、バッファ35内の各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理(ステップS101)と、受信した観測情報それぞれの優先度と各キューの閾値とに基づいて、受信した観測情報をバッファ35のいずれかのキューに記憶させる処理(ステップS102)と、バッファ35の各キューに記憶されている観測情報から棄却又は送信する観測情報を選択する処理(ステップS103)とを行う。ステップS103の処理において、送信する観測情報として選択された観測情報は、送信バッファ36に移され、サーバ装置5を宛先として中継局装置3及びアクセスポイント4を介して送信される(ステップS104)。ステップS102において、観測情報を記憶させるキューは、観測情報に含まれるセンサ1の種別に対して定められている優先度を含むレンジ(閾値)が割り当てられているキューである。
【0047】
サーバ装置5において、アクセスポイント4を介して各中継局装置3から観測情報を含むパケットが受信されると、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、管理番号ごとにセンサデータの遅延時間が測定し、到達率を更新する(ステップS105)。また、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、同一管理番号と異なる管理番号間とにおけるセンサデータ間の時間的な相関係数を算出し、管理番号相関テーブルを更新する(ステップS106)。サーバ制御部52は、アクセスポイント4を介して受信したパケットの受信状態を示すACKパケットを生成し、中継局装置3宛に送信する(ステップS107)。
【0048】
図10は、図9において示した中継局装置3が行う各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理を示すフローチャートである。中継局装置3において、キューの閾値を更新する処理が開始されると、中継局制御部34は、自装置のバッファ35における高優先度キューに入れられてサーバ装置5へ伝送されるセンサデータの遅延時間が予め定められた閾値T以上であるか否かを判定する(ステップS201)。ステップS201における判定では、サーバ装置5から通知されるトラヒック情報に含まれる自装置のセンサデータの遅延時間が用いられる。なお、許容遅延時間を閾値Tとして用いてもよいし、許容遅延時間より大きい値又は小さい値を閾値Tとして用いてもよい。
【0049】
ステップS201の判定において、遅延時間が閾値T未満である場合(ステップS201:NO)、中継局制御部34はキューの閾値を更新する処理を終了する。ステップS201の判定において、遅延時間が閾値T以上である場合(ステップS201:YES)、中継局制御部34は、バッファ35の各キューに割り当てられている閾値(優先度のレンジ)を更新し、中優先度キューと低優先度キューとに観測情報が振り分けられやすくなるようにし(ステップS202)、キューの閾値を更新する処理を終了する。
【0050】
中優先度キューと低優先度キューとに観測情報が振り分けられやすくなる閾値の変更とは、例えば、高優先度キュー、中優先度キュー、低優先度キューに「0.8〜1」、「0.5〜0.8」、「0〜0.5」それぞれの閾値が割り当てられている場合、高優先度キュー、中優先度キュー、低優先度キューそれぞれの閾値を「0.9〜1」、「0.6〜0.9」、「0〜0.6」に変更するである。すなわち、高優先度キューの閾値(優先度のレンジ)を狭くし、中優先度キューと低優先度キューとの閾値を広くする変更が、中優先度キューと低優先度キューとに観測情報が振り分けられやすくなる閾値の変更である。
【0051】
図11は、図9において示した中継局装置3が行う棄却又は送信する観測情報を選択する処理を示すフローチャートである。中継局装置3において、棄却又は送信する観測情報を選択する処理である送信/棄却制御が開始されると、中継局制御部34は、自装置のバッファ35における使用量を算出し(ステップS301)、使用量が予め定められた閾値Z1以上であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0052】
ステップS302の判定において、使用量が閾値Z1未満である場合(ステップS302:NO)、中継局制御部34は、自装置が接続しているアクセスポイント4の配下の他の中継局装置3のなかにバッファ35の使用量が閾値Z1以上である中継局装置3があるか否かを判定する(ステップS303)。ステップS303における判定には、サーバ装置5から通知されるトラヒック情報が用いられる。使用量が閾値Z1以上である他の中継局装置3がある場合(ステップS303:YES)、中継局制御部34は、送信/棄却制御を終了する。使用量が閾値Z1以上である他の中継局装置3がない場合(ステップS30:NO)、中継局制御部34は、バッファ35に記憶されている観測情報のうち所定数の観測情報を優先度の高い順に送信バッファ36へ移して、所定数の観測情報を含むパケットをアクセスポイント4へ送信し(ステップS304)、送信/棄却制御を終了する。
【0053】
ステップS302の判定において、使用量が閾値Z1以上である場合(ステップS302:YES)、中継局制御部34は、自装置のバッファ35の使用量が予め定められた閾値Z2以上であるか否かを判定する(ステップS305)。ここで、閾値Z2は、閾値Z1より大きい値である。使用量が閾値Z2未満である場合(ステップS305:NO)、中継局制御部34は、バッファ35に記憶されている観測情報のうち所定数の観測情報を優先度の高い順に送信バッファ36へ移して、所定数の観測情報を含むパケットをアクセスポイント4へ送信し(ステップS306)、送信/棄却制御を終了する。
【0054】
ステップS305の判定において、使用量が閾値Z2以上である場合(ステップS305:YES)、中継局制御部34は、自装置の高優先度キューの遅延時間が許容遅延時間以上であるか否かを判定する(ステップS307)。遅延時間が許容遅延時間未満である場合(ステップS307:NO)、中継局制御部34は、一定時間待機して端末装置2からの観測情報を含むパケットを受信してバッファ35に記憶させた後に、バッファ35に記憶されている観測情報のうち所定数の観測情報を優先度の高い順に送信バッファ36へ移して、所定数の観測情報を含むパケットをアクセスポイント4へ送信し(ステップS308)、送信/棄却制御を終了する。
【0055】
ステップS307の判定において、遅延時間が許容遅延時間以上である場合(ステップS307:YES)、中継局制御部34は、高優先度キューに記憶されている観測情報において相関係数が一定以上の観測情報の組み合わせを検出し、検出した組み合わせごとにいずれか一つの観測情報を残し他の観測情報を棄却した上で、バッファ35に記憶されている観測情報のうち所定数の観測情報を優先度の高い順に送信バッファ36へ移して、所定数の観測情報を含むパケットをアクセスポイント4へ送信し(ステップS309)、送信/棄却制御を終了する。
【0056】
ステップS309において棄却された観測情報に含まれる管理番号及び識別情報は、残された観測情報に付加される。サーバ装置5では観測情報に含まれる複数の管理番号及び識別情報に基づいて、棄却された観測情報を再生することができる。なお、棄却された観測情報の再生に、相関係数や再生対象の観測情報に含まれるセンサデータの時系列データを用いてもよい。ステップS309において破棄する観測情報としては、例えば相関係数が高い観測情報のうち、センサデータが取得された時刻が最も古い観測情報以外の他の観測情報を選択するようにしてもよい。また、ステップS308及びステップS309における送信で一つのパケットに含める観測情報の数は、ステップS304及びステップS306における送信で一つのパケットに含める観測情報の数より多く設定する。すなわち、バッファの使用量が閾値Z2以上となった場合(ステップS305:YES)には、複数の観測情報を一つのパケットで送信するアグリゲーションを行う際の集約度を高くした、より効率の高いパケット送信が行われる。
【0057】
また、ステップS307における遅延時間が許容遅延時間以上であるか否かの判定に代えて、遅延時間が許容遅延時間以上となると推定されるか否かの判定を行ってもよい。また、2つの判定を行い、いずれか一方の条件が成立した場合にステップS309の処理を行い、いずれの条件も成立しない場合にステップS308の処理を行うようにしてもよい。遅延時間の推定は、例えばサーバ装置5から通知される遅延時間の変動傾向や、自装置のバッファ35の使用量の変動傾向などを用いて行ってもよい。
【0058】
図12は、図9において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各中継局装置3のバッファ35の使用状況の収集などの処理を示す図である。中継局装置3それぞれは、中継局装置3内のバッファ35の使用状況を示すバッファ状態情報を定期的に生成し、生成したバッファ状態情報を、アクセスポイント4を介してサーバ装置5へ送信する(ステップS401)。サーバ装置5では、中継局装置3それぞれからバッファ状態情報が受信されると、サーバ制御部52は、トラヒック情報を生成し、生成したトラヒック情報を中継局装置3それぞれを宛先にして送信するとともに、管理番号テーブル及び管理番号送信テーブルを中継局装置3それぞれを宛先にして送信する(ステップS402)。
【0059】
第1の実施形態における無線通信システムによれば、中継局装置3とアクセスポイント4との間の無線回線が混雑し、中継局装置3において中継すべき観測情報がバッファ35内に滞ると、中継局装置3がバッファ35に対する制御を行うことで、送信頻度を下げたり、送信する観測情報をまとめて一つのパケットで送信したり、相関係数の高いセンサデータを含む観測情報を破棄してトラヒック量を下げたりする。このような制御により、センサデータのトラヒック量が増加した場合においても、センサデータを端末装置2からサーバ装置5への伝送に要する時間の増加を抑えることができ、許容遅延時間内にサーバ装置5へ伝送されるセンサデータを増やすことができる。また、相関係数の高いセンサデータを含む観測情報を破棄してトラヒック量を下げることにより、送信効率を高めることができる。また、無線通信システムでは、センサ1の種別、すなわちセンサデータの種類に応じた制御が可能となる。なお、トラヒック量を下げる際には、相関係数の高いセンサデータに対する統計処理により得られる値、例えば平均値、中央値又は最頻値などをセンサデータとして含む観測情報を、相関係数の高い複数の観測情報に代えて送信するようにしてもよい。
【0060】
また、第1の実施形態における無線通信システムでは、遅延時間が遅延要求時間以上になると、バッファ35が有する優先順位の異なる複数のキューの閾値(優先度のレンジ)を変更し、送信される確率の高い高優先度キューに割り振られる観測情報を減らし、中優先度キューと低優先度キューとに観測情報が振り分けられやすくなるようにすることで、送信の機会を削減して、中継局装置3の低消費電力化を図ることができ、M2M無線通信システムにおける長期のメンテナンスフリー運用が可能となる。
【0061】
また、第1の実施形態の無線通信システムを適用したM2M無線通信システムでは、センサデータのトラヒック量が増加した場合でも、送信する観測情報をまとめて一つのパケットで送信したり、相関係数の高いセンサデータを含む観測情報を破棄してトラヒック量を下げたりすることにより、センサデータの増加に応じて送信回数を増やさずともセンサデータを伝送することができるので、中継局装置3の低消費電力化を図ることができ、M2M無線通信システムにおける長期のメンテナンスフリー運用が可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における無線通信システムは、中継局装置3が備えるバッファ35を端末装置も備えた構成である。第3の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システムと同様に、センサ1と端末装置と中継局装置3とアクセスポイント4とサーバ装置5とを備える。なお、第2の実施形態における端末装置は、第1の実施形態における端末装置2が備える構成要素に加えて、管理情報記憶部33とバッファ35とを備える。第2の実施携帯における端末制御部23は、センサインタフェース21により取得される観測情報に対して管理番号を付加した観測情報をバッファ35に記憶させる。また、端末制御部23は、中継局制御部34と同様の動作を行う。
【0063】
図13は、第2の実施形態の無線通信システムにおけるバッファ35の管理及びパケットの送信手順を示す図である。端末装置は、接続されたセンサ1から測定値(センサデータ)を取得し、観測情報を生成する。端末装置は、観測情報の生成と並行して、バッファ35内の各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理(ステップS501)と、測定値それぞれの優先度と各キューの閾値とに基づいて、測定値を含む観測情報をバッファ35のいずれかのキューに記憶させる処理(ステップS502)と、バッファ35の各キューに記憶されている観測情報から棄却又は送信する観測情報を選択する処理(ステップS503)とを行う。ステップS503の処理において、送信する観測情報として選択された観測情報は、送信バッファ24に移され、サーバ装置5を宛先としてアクセスポイント4を介して送信される(ステップS504)。ステップS501からステップS504の処理は繰り返し行われる。
【0064】
中継局装置3は、配下の各端末装置から送信される観測情報を含むパケットを受信する。中継局装置3は、端末装置2からのパケット受信と並行して、バッファ35内の各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理(ステップS511)と、受信した観測情報それぞれの優先度と各キューの閾値とに基づいて、受信した観測情報をバッファ35のいずれかのキューに記憶させる処理(ステップS512)と、バッファ35の各キューに記憶されている観測情報から棄却又は送信する観測情報を選択する処理(ステップS513)とを行う。ステップS513の処理において、送信する観測情報として選択された観測情報は、送信バッファ36に移され、サーバ装置5を宛先としてアクセスポイント4を介して送信される(ステップS514)。
【0065】
サーバ装置5において、アクセスポイント4を介して各中継局装置3から観測情報を含むパケットが受信されると、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、管理番号ごとにセンサデータの遅延時間が測定し、到達率を更新する(ステップS515)。また、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、同一管理番号と異なる管理番号間とにおけるセンサデータ間の時間的な相関係数を算出し、管理番号相関テーブルを更新する(ステップS516)。サーバ制御部52は、アクセスポイント4を介して受信したパケットの受信状態を示すACKパケットを生成し、中継局装置3宛に送信する(ステップS517)。ステップS511からステップS517の処理は繰り返し行われる。
【0066】
端末装置が行うステップS501の処理と、中継局装置3が行うステップS511の処理とは、図10に示した各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理と同じ処理である。また、端末装置が行うステップS502の処理と中継局装置3が行うステップS512の処理とは、図9におけるステップS102と同じ処理である。また、端末装置が行うステップS503の処理と、中継局装置3が行うステップS513の処理とは、図11に示した棄却又は送信する観測情報を選択する処理と同じ処理である。
【0067】
図14は、図13において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各端末装置及び各中継局装置3のバッファ35の使用状況の収集などの処理を示す図である。端末装置それぞれは、自装置内のバッファ35の使用状況を示すバッファ状態情報を定期的に生成し、生成したバッファ状態情報を中継局装置3へ送信する(ステップS601)。中継局装置3それぞれは、自装置内のバッファ35の使用状況を示すバッファ状態情報を定期的に生成する。中継局装置3それぞれは、生成したバッファ状態情報をアクセスポイント4を介してサーバ装置5へ送信するとともに、配下の端末装置から受信したバッファ状態情報をアクセスポイント4を介してサーバ装置5へ送信する(ステップS602)。サーバ装置5では、端末装置及び中継局装置3それぞれからのバッファ状態情報が受信されると、サーバ制御部52は、トラヒック情報を生成し、生成したトラヒック情報を端末装置及び中継局装置3それぞれを宛先にして送信するとともに、管理番号テーブル及び管理番号送信テーブルを中継局装置3それぞれを宛先にして送信する(ステップS603)。
【0068】
第2の実施形態における無線通信システムでは、端末装置が中継局装置3と同様に動作する。無線通信システムにおいて端末装置と中継局装置3との間の無線回線が混雑し、端末装置において送信すべき観測情報がバッファ35内に滞ると、端末装置及び中継局装置3がバッファ35に対する制御を行うことで、送信頻度を下げたり、送信する観測情報をまとめて一つのパケットで送信したり、相関係数の高いセンサデータを含む観測情報を破棄してトラヒック量を下げたりする。このような制御により、センサデータのトラヒック量が増加した場合においても、センサデータを端末装置からサーバ装置5への伝送に要する時間の増加を抑えることができ、許容遅延時間内にサーバ装置5へ伝送されるセンサデータを増やすことができる。また、相関係数の高いセンサデータを含む観測情報を破棄してトラヒック量を下げることにより、送信効率を高めることができる。
【0069】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。第3の実施形態の無線通信システムは、観測情報が一つ又は複数の中継局装置3を経由してサーバ装置5へ伝送される構成である。第3の実施形態の無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システムと同様に、センサ1と端末装置2と中継局装置3とアクセスポイント4とサーバ装置5とを備える。なお、第3の実施形態における中継局装置3は、端末装置2から観測情報を受信するだけでなく、他の中継局装置3から観測情報を受信し転送する。なお、図15では、一つ又は二つの中継局装置3を経由する構成が示されているが、三つ以上の中継局装置3を経由して観測情報がサーバ装置5へ伝送されてもよい。
【0070】
図16は、第3の実施形態の無線通信システムにおける中継局装置3についてのバッファ35の管理及びパケットの送信手順を示す図である。端末装置2から観測情報を受信する第1の中継局装置3は、配下の各端末装置2から各々のタイミングで送信される観測情報を含むパケットを受信する。第1の中継局装置3は、端末装置2からのパケット受信と並行して、バッファ35内の各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理(ステップS701)と、受信した観測情報それぞれの優先度と各キューの閾値とに基づいて、受信した観測情報をバッファ35のいずれかのキューに記憶させる処理(ステップS702)と、バッファ35の各キューに記憶されている観測情報から棄却又は送信する観測情報を選択する処理(ステップS703)とを行う。ステップS703の処理において、送信する観測情報として選択された観測情報は、送信バッファ36に移され、サーバ装置5を宛先として第2の中継局装置3へ送信される(ステップS704)。ステップS701からステップS704の処理は繰り返し行われる。
【0071】
他の中継局装置3から送信された観測情報を中継する第2の中継局装置3は、他の中継局装置3や端末装置2からのパケット受信とへ移行して、バッファ35内の各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理(ステップS711)と、受信した観測情報それぞれの優先度と各キューの閾値とに基づいて、受信した観測情報をバッファ35のいずれかのキューに記憶させる処理(ステップS712)と、バッファ35の各キューに記憶されている観測情報から棄却又は送信する観測情報を選択する処理(ステップS713)とを行う。ステップS703の処理において、送信する観測情報として選択された観測情報は、送信バッファ36に移され、サーバ装置5を宛先として他の第2の中継局装置3又はアクセスポイント4へ送信される。ステップS711からステップS713の処理は繰り返し行われる。
【0072】
サーバ装置5において、アクセスポイント4を介して各中継局装置3から観測情報を含むパケットが受信されると(ステップS721)、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、管理番号ごとにセンサデータの遅延時間が測定し、到達率を更新する(ステップS722)。また、演算部54は、受信された観測情報に含まれるセンサデータと、記憶部53に記憶されている時系列データとに基づいて、同一管理番号と異なる管理番号間とにおけるセンサデータ間の時間的な相関係数を算出し、管理番号相関テーブルを更新する(ステップS723)。サーバ制御部52は、受信したパケットの受信状態を示す中継局装置3宛のACKパケットを生成し、アクセスポイント4へ送信する(ステップS724)。ステップS721からステップS724の処理は繰り返し行われる。
【0073】
アクセスポイント4は、中継局装置3宛のACKパケットをサーバ装置5から受信すると、配下の中継局装置3宛にACKパケットを送信する(ステップS725)。第2の中継局装置3は、ACKパケットを受信すると、自装置が中継の対象としている他の第2の中継局装置3及び第1の中継局装置3へACKパケットを転送する(ステップS731)。なお、第1の中継局装置3が行うステップS701の処理と、第2の中継局装置3が行うステップS711の処理とは、図10に示した各キューの閾値(優先度のレンジ)を更新する処理と同じ処理である。また、第1の中継局装置3が行うステップS702の処理と、第2の中継局装置が行うステップS712の処理とは、図9におけるステップS102と同じ処理である。また、1の中継局装置3が行うステップS703の処理と、第2の中継局装置3が行うステップS713の処理とは、図11に示した棄却又は送信する観測情報を選択する処理と同じ処理である。
【0074】
図17は、図16において示した処理と並行して無線通信システムで行われる各中継局装置3のバッファ35の使用状況の収集などの処理を示す図である。第1の中継局装置3それぞれは、自装置内のバッファ35の使用状況を示すバッファ状態情報を定期的に生成し、生成したバッファ状態情報を、第2の中継局装置3又はアクセスポイント4へ送信する(ステップS801)。第2の中継局装置3それぞれは、自装置内のバッファ35の使用状況を示すバッファ状態情報を定期的に生成する。第2の中継局装置3それぞれは、生成したバッファ状態情報をアクセスポイント4を介してサーバ装置5へ送信するとともに、他の中継局装置3が受信したバッファ状態情報をアクセスポイント4を介してサーバ装置5へ送信する(ステップS802)。サーバ装置5では、第1及び第2の中継局装置3それぞれからのバッファ状態情報が受信されると、サーバ制御部52は、トラヒック情報を生成し、生成したトラヒック情報を中継局装置3それぞれを宛先にして送信するとともに、管理番号テーブル及び管理番号送信テーブルを中継局装置3それぞれを宛先にして送信する(ステップS803)。
【0075】
第3の実施形態における無線通信システムでは、中継局装置3のうちの一部の中継局装置3が他の中継局装置3から送信される情報を中継することにより、遠隔地に配置された端末装置2で得られる測定値を複数の無線伝送を介してサーバ装置5へ伝送することができる。
【0076】
以上の各実施形態において説明した無線通信システムは、センサデータをサーバ装置5へ伝送するトラヒックが増加し、中継局装置3におけるパケット集約や10%デューティ制限などにより、送信すべき観測情報などが中継局装置3に蓄積した場合でも、バッファ35のキューの優先度変更や、複数の観測情報を一つのパケットに結合したり、観測情報を棄却したりすることにより、トラヒック量の増加を抑えてンサデータの中継伝送に要する時間の増加を抑えることを可能にすることができる。
【0077】
なお、上記の各実施形態において、管理番号は観測情報に含まれることでセンサデータとともにサーバ装置5へ伝送される構成を説明したが、管理番号をMACヘッダに格納することでセンサデータとともにサーバ装置5へ伝送されるようにしてもよい。
【0078】
前述した実施形態における端末装置2や中継局装置3の全て又は一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。例えば、中継局装置3が有する構成要素それぞれを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、このプログラムは、前述した構成要素の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した構成要素をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0079】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
センサで得られたセンサデータのトラヒック量が増加した場合にセンサデータの中継伝送に要する時間の増加を抑えることが不可欠な用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1…センサ、2…端末装置、3…中継局装置、4…アクセスポイント、5…サーバ装置、21…センサインタフェース、22…端末電源部、23…端末制御部、24…送信バッファ、25…端末無線部、31…下位側無線部、32…中継局電源部、33…管理情報記憶部、34…中継局制御部、35…バッファ、36…送信バッファ、37…上位側無線部、41…AP無線部、42…AP制御部、43…APネットワークI/F、51…SVネットワークI/F、52…サーバ制御部、53…記憶部、54…演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図17