特許第6403318号(P6403318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403318
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】水田用除草装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 39/18 20060101AFI20181001BHJP
   A01M 21/02 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A01B39/18 A
   A01B39/18 Z
   A01M21/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-187429(P2014-187429)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-59285(P2016-59285A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】陶山 純
(72)【発明者】
【氏名】川口 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 慈郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆延
(72)【発明者】
【氏名】水上 智道
(72)【発明者】
【氏名】田中 庸之
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−204708(JP,A)
【文献】 特開2014−076004(JP,A)
【文献】 特開2000−092906(JP,A)
【文献】 特開2000−300006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0039304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/00 − 39/28
A01B 63/00 − 63/12
A01M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗が条植えされた水田に生えた雑草を除去する水田用除草装置であって、
本体フレームと、
前後に延び、土壌表面に接触しつつ揺動する揺動ツースと、
水平かつ左右に延びる回転軸を中心として回転し、複数の除草爪を備える条間ロータと、
ロータ操作部を備えるロータ位置調節機構と、
前記条間ロータの前方に配置された前端部から前記条間ロータの側方まで後方に向かって延びる側板を有する分草板と、
を有し、
前記揺動ツースおよび前記分草板は、前記本体フレームに対する上下方向の相対位置が略一定であり、
前記ロータ位置調節機構は、前記ロータ操作部を操作することにより、前記条間ロータの前記本体フレーム、前記揺動ツースおよび前記分草板に対する上下方向の相対位置を変位させる、水田用除草装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水田用除草装置であって、
土壌表面の高さを検知するフロート
をさらに有し、
前記フロートは、前記本体フレームに対する上下方向の相対位置が略一定であり、
前記条間ロータの前方、かつ、前後方向に重なる位置には、前記分草板または前記フロート配置される、水田用除草装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水田用除草装置であって、
前記ロータ位置調節機構は、前記条間ロータの前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を段階的に調節する、水田用除草装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の水田用除草装置であって、
前記ロータ位置調節機構は、
固定軸と、
前記固定軸を中心として回動し、前記条間ロータの前記回転軸を回転可能に支持する回動部材と、
をさらに有し、
前記ロータ操作部は、一端が把手部であり、他端が前記回動部材に固定され、
前記ロータ操作部の前記一端を操作して、前記回動部材を前記固定軸を中心として回動させることで、前記回転軸および前記条間ロータの前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を変位させる、水田用除草装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の水田用除草装置であって、
前記条間ロータを複数有し、
前記ロータ位置調節機構は、前記ロータ操作部を操作することにより、複数の前記条間ロータの全てについて、前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を同時に変位させる、水田用除草装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の水田用除草装置であって、
前記ロータ位置調節機構は、前記条間ロータを、前記揺動ツースに対して最も下方に配置した最深位置と、前記揺動ツースに対して最も上方に配置した最浅位置との間で昇降し、
前記最深位置において、前記条間ロータの下端部は、前記揺動ツースの下端部よりも下方に配置される、水田用除草装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田に植えられた複数の苗の周囲に生える雑草を除去するための水田用除草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田に生えた雑草を除去するために、苗の条間を除草する条間ロータと、苗の株間を除草する揺動ツースとを備えた除草機が知られている。従来の除草機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の除草機では、図6に示すように、条間を除草する条間ロータ81(田車)と株間を除草するレーキ82(揺動しないが、ツースに相当する)とを有している。このような除草機では、苗の周囲においてレーキ82が圃場に接触することにより、苗の株間に生える雑草を掻き出すとともに、苗の条間において回転駆動する条間ロータが圃場に接触することにより、苗の条間に生える雑草を掻き出す。これにより、圃場に生えた雑草を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4526991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の除草機では、条間ロータ81の高さをフレーム83に対して調節することが可能である(段落0020)。しかしながら、図6に示すように、条間ロータ81はそれぞれ、フレーム83に対してねじ止めにより固定されているため、高さの調整には工具が必要である。したがって、除草機を圃場に配置したまま、条間ロータ81の高さを調節するのは困難である。
【0006】
一方、除草作業において、雑草の密集度や生える雑草の種類は、同一の水田内でも異なる。そのため、圃場面に対する条間ロータの高さを一定に保ったまま除草作業を行うと、同一の水田内に除草効果が低い領域が生じる。除草効果を向上させるためには、圃場の状態に応じて条間ロータの高さを調節する必要がある。しかしながら、圃場上で工具を用いて条間ロータの高さを調節すると、時間がかかり作業効率が低下する。また、圃場上でねじ等の取り外しを行うと、部品を紛失する虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、苗の条間を除草する条間ロータを有する除草装置において、除草作業の作業効率の低下を抑制しつつ、条間ロータによる除草効果を高める技術を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗が条植えされた水田に生えた雑草を除去する水田用除草装置であって、苗が条植えされた水田に生えた雑草を除去する水田用除草装置であって、本体フレームと、前後に延び、土壌表面に接触しつつ揺動する揺動ツースと、水平かつ左右に延びる回転軸を中心として回転し、複数の除草爪を備える条間ロータと、ロータ操作部を備えるロータ位置調節機構と、前記条間ロータの前方に配置された前端部から前記条間ロータの側方まで後方に向かって延びる側板を有する分草板と、を有し、前記揺動ツースおよび前記分草板は、前記本体フレームに対する上下方向の相対位置が略一定であり、前記ロータ位置調節機構は、前記ロータ操作部を操作することにより、前記条間ロータの前記本体フレーム、前記揺動ツースおよび前記分草板に対する上下方向の相対位置を変位させる。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の水田用除草装置であって、土壌表面の高さを検知するフロートをさらに有し、前記フロートは、前記本体フレームに対する上下方向の相対位置が略一定であり、前記条間ロータの前方、かつ、前後方向に重なる位置には、前記分草板または前記フロート配置される。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の水田用除草装置であって、前記ロータ位置調節機構は、前記条間ロータの前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を段階的に調節する。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの水田用除草装置であって、前記ロータ位置調節機構は、固定軸と、前記固定軸を中心として回動し、前記条間ロータの前記回転軸を回転可能に支持する回動部材と、をさらに有し、前記ロータ操作部は、一端が把手部であり、他端が前記回動部材に固定され、前記ロータ操作部の前記一端を操作して、前記回動部材を前記固定軸を中心として回動させることで、前記回転軸および前記条間ロータの前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を変位させる。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの水田用除草装置であって、前記条間ロータを複数有し、前記ロータ位置調節機構は、前記ロータ操作部を操作することにより、複数の前記条間ロータの全てについて、前記揺動ツースに対する上下方向の相対位置を同時に変位させる。
【0013】
本願の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれかの水田用除草装置であって、前記ロータ位置調節機構は、前記条間ロータを、前記揺動ツースに対して最も下方に配置した最深位置と、前記揺動ツースに対して最も上方に配置した最浅位置との間で昇降し、前記最深位置において、前記条間ロータの下端部は、前記揺動ツースの下端部よりも下方に配置される。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1発明から第6発明によれば、ロータ操作部を操作することにより、揺動ツースおよび分草板に対して条間ロータの上下方向の位置がワンタッチで変位する。これにより、苗の活着の状態や、圃場の状態に応じて、揺動ツースおよび分草板が圃場に対して作用する深さを変えることなく、条間ロータが圃場に対して作用する深さをワンタッチで変更できる。簡単かつ迅速に条間ロータの高さ調節を行うことにより、作業効率を低下させることなく、条間ロータによる除草効果を向上できる。
【0015】
特に、本願の第2発明によれば、揺動ツースの上下方向の位置を、フロートに従動させて、揺動ツースおよび分草板を土壌表面に対する適切な高さに配置する。これにより、揺動ツース24の除草効果が低下するのが抑制される。
【0016】
特に、本願の第3発明から第5発明によれば、簡易な操作で条間ロータの高さを調節できる。したがって、作業効率を向上できる。
【0017】
特に、本願の第6発明によれば、条間ロータは、揺動ツースよりも深い位置まで雑草の根部を掻き取ることができる。これにより、条間ロータによる除草効果をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】除草機の側面図である。
図2】除草装置の正面図である。
図3】除草装置の斜視図である。
図4】ロータ位置調節機構および条間ロータの回転軸の斜視図である。
図5】除草機の部分側面図である。
図6】従来の除草装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、除草機の進行方向を「前方向」、除草機の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、本願では、除草機の使用時の姿勢に従って上下方向を定義する。また、除草機の使用時の姿勢において、水平かつ前後方向と垂直な方向を、左右方向と称する。図1中、前方向に「F」、後方向に「R」を付している。
【0020】
<1.第1実施形態>
<1−1.除草機の全体構成>
図1は、本実施形態に係る除草機1の側面図である。この除草機1は、水田に条植えされた苗の周囲に生える雑草を除去する装置である。図1に示すように、除草機1は、走行車体10と、除草装置20とを有する。
【0021】
走行車体10は、メインフレーム11、前輪12、後輪13、操作部14、運転席15、昇降リンク16、および、走行用動力機構17を備えた乗用型機体である。メインフレーム11は、前輪12および後輪13によって支持されている。
【0022】
本実施形態では、走行車体10は、1つの前輪12および2つの後輪13を有する三輪車である。前輪12は、走行車体10の前方中央に配置される。また、後輪13は、走行車体10の後方に、左右の間隔を空けて配置される。なお、前輪12と左側の後輪13の左右方向の間隔、および、前輪12と右側の後輪13の左右方向の間隔はそれぞれ、圃場に条植えされた苗を跨ぐ間隔に設定されている。なお、本発明の除草装置が搭載される除草機は、三輪車に限られない。例えば、2つの前輪と2つの後輪とを有する四輪車であってもよい。
【0023】
走行用動力機構17には、例えば、エンジンおよび変速機を含む動力機構が用いられる。本実施形態の前輪12および後輪13はそれぞれ、動力伝達機構(図示せず)を介して走行用動力機構17と連結される。すなわち、本実施形態の除草機1は、全輪が動力により駆動される、全輪駆動車である。これにより、走行用動力機構17が動作すると、前輪12および後輪13が回転し、除草機1が走行する。
【0024】
また、前輪12は、走行車体10の進行方向に対して左右方向に回動自在に支持されている。前輪12の回動方向は、操作部14を操作することにより、制御される。
【0025】
操作部14および運転席15は、走行車体10の後部中央に設けられている。本実施形態の除草機1は、前輪12と後輪13との間に、除草装置20が配置される、いわゆるミッドマウント型の除草機である。運転席15が走行車体10の最後方に設けられることにより、作業者は、除草機1の走行方向や除草作業を監視しやすい。作業者は、運転席15に着席した状態で、必要に応じて操作部14の各部を操作し、前輪12の回動方向、前後の進行方向の切り替え、走行速度の切り替え、および、昇降リンク16の昇降動作などを制御しつつ、除草作業を行う。
【0026】
昇降リンク16は、前後方向に延びる平行リンク161と、平行リンク161の角度を変更する昇降装置162とを有する。平行リンク161の後方側の端部は、ギアケース111に回動自在に取り付けられる。ギアケース111は、メインフレーム11の下方に取り付けられる。ギアケース111は、ギアを内部に保持するとともに、平行リンク161を取り付ける取付フレームの役割も果たしている。一方、平行リンク161の前方側の端部には、除草装置20が取り付けられる。
【0027】
本実施形態の昇降装置162は、走行用動力機構17により駆動される油圧発生装置(図示せず)の油圧を用いた、油圧シリンダである。昇降装置162は、上方側の端部がメインフレーム11と回動自在に取り付けられ、下方側の端部が平行リンク161と回動自在に取り付けられる。これにより、作業者が操作部14を操作すると、昇降装置162が伸縮し、平行リンク161の角度が変化する。そうすると、平行リンク161の前方側の端部に取り付けられた除草装置20が、走行車体10に対して上下に移動する。
【0028】
除草装置20は、昇降リンク16を介して走行車体10に取り付けられている。除草を行う場合、昇降装置162が伸長することにより、除草装置20を下方へ移動させ、除草位置に配置する。また、除草を行わない場合、昇降装置162が縮むことにより、除草装置20を上方へ移動させ、除草位置より上方の待機位置に配置する。図1では、除草装置20は、除草位置に配置されている。
【0029】
また、本実施形態の昇降リンク16は、走行車体10に備えられた走行用動力機構17の動力の一部を除草装置20へ伝達するための動力伝達軸(図示せず)を有する。ギアケース111の内部のギア機構には、走行用動力機構17から出力された動力の一部が分岐されて入力される。当該動力は、ギアケース111の内部のギア機構において変換・伝達され、ギアケース111の出力端から出力され、動力伝達軸を介して、除草装置20へと入力される。
【0030】
<1−2.除草装置の構成>
次に、除草装置20について説明する。除草装置20は、圃場に生えた雑草を除去する部位である。図2は、除草装置20の正面図である。図3は、除草装置20の斜視図である。図4は、ロータ位置調節機構25および条間ロータ23の回転軸230の斜視図である。図5は、除草機1の部分側面図である。図1図3に示すように、本実施形態の除草装置20は、2つのフロート21、3つの分草板22、5つの条間ロータ23、4組の揺動ツース24、および、ロータ位置調節機構25を有する。
【0031】
フロート21は、圃場の土壌表面の高さを検知するための機構である。フロート21は、例えば、その下面を土壌表面に接触させ、土壌表面から受ける圧力を検知することにより、フロート21に対する土壌表面の相対的な高さを検知する。除草機1は、フロート21の検出した圃場の高さに応じて、昇降リンク16を昇降させ、除草装置20を適切な高さに配置させる。本実施形態では、2つのフロート21は、左右に並ぶ5つの条間ロータ23のうち、両端及び中央以外の2つの条間ロータ23の前方に配置される。
【0032】
分草板22は、条植えされた苗の葉部の左右の広がりを抑える板である。分草板22は、左右方向に並ぶ5つの条間ロータ23のうち、両端および中央の3つの条間ロータ23の前方に配置される。すなわち、3つの分草板22と2つのフロート21とは、それぞれ、5つの条間ロータ23と前後方向に重なる位置に、交互に配置されている。
【0033】
分草板22はそれぞれ、前後方向に対して垂直、すなわち、左右方向および上下方向に拡がる前板221と、前板221の左右の端部から斜め後方に向かって延びる2つの側板222とを有する。2つの側板222は、後方に向かうにつれ、前板221から左右に拡がるように配置されている。
【0034】
これにより、圃場に植えられた苗の葉部が左右方向に拡がっている場合に、苗の葉部にフロート21の側面および分草板22の側板222が接触して当該苗の中心方向に葉部をまとめる。その結果、左右方向に拡がった苗の葉部が条間ロータ23に接触して、苗が圃場から引き抜かれるのが抑制される。
【0035】
なお、分草板22には、前板221の中央下部に通水孔223が設けられている。これにより、分草板22による抵抗を抑制するとともに、分草板の前方に土や藻が堆積するのが抑制される。
【0036】
条間ロータ23は、条植えされた苗の条間を除草する。5つの条間ロータ23はそれぞれ、植え付けされた苗の条間に位置するように、左右方向に等間隔に配置されている。また、条間ロータ23は、複数の除草爪231を有している。
【0037】
走行用動力機構17から除草装置20へと動力が入力されると、当該動力が条間ロータ23へ伝達され、条間ロータ23が回転する。このとき、条間ロータ23は、水平かつ左右に延びる回転軸230(図3参照)を中心として前向きに(前進するときの前輪12および後輪13と同じ向きに)回転駆動する。除草爪231が圃場の条間の土壌表面を掻くことにより、圃場の条間に生えた雑草を土壌から掻き取ることができる。条間ロータ23により掻き取られ、水面近くに浮き上がった雑草は、その後拾い集めてもよいし、放置してもよい。放置した場合、雑草はその後死滅する。
【0038】
揺動ツース24は、条植えされた苗の周辺を除草する機構である。本実施形態の除草装置20は、4本1組の揺動ツース24を4組有する、4条用の除草装置である。4組の揺動ツース24は、植え付けされた苗の株間に位置するように、左右方向に等間隔に配置されている。揺動ツース24は各組ごとにそれぞれ、上端をフレーム241に固定され、配置されている。なお、本実施形態の除草装置20は、1条分の株間に対して4本1組の揺動ツース24を有しているが、1条分の株間に対する揺動ツース24は3本以下であってもよいし、5本以上であってもよい。
【0039】
図1に示すように、揺動ツース24はそれぞれ、針金状の部材により形成されている。揺動ツース24は、フレーム241に片持ち状に取り付けられて下方へ延びる基部242と、基部242の下端部から上下方向に蛇行しつつ後方へ延びる作用部243とを有する。
【0040】
基部242は、フレーム241から鉛直に垂下した後、前方に向けて斜め下方向へやや屈曲し、さらに下方において後方に向けて斜め下方向へ大きく屈曲する。すなわち、基部242は、左右方向から見て、前方に向けて凸となるく字状の形状である。このように揺動ツース24は、上下方向および前後方向に延びている。一方、図2に示すように、揺動ツース24が左右方向には延びていないことにより、除草作業時に、揺動ツース24が圃場に生育する苗に引っかかり、苗を引き抜くのが抑制されている。
【0041】
また、走行用動力機構17から除草装置20へと動力が入力されると、当該動力が左右の往復運動力に変換されて、フレーム241へ伝達される。これにより、フレーム241とともに、揺動ツース24が左右に揺動する。その結果、揺動ツース24が圃場に生育する苗の周辺の土壌表面に接触しながら揺動することにより、株間および苗の周辺に生えた雑草を掻き出して除去することができる。揺動ツース24により掻き出され、水面近くに浮き上がった雑草は、条間ロータ23により掻き取られた雑草と同様、拾い集めてもよいし、放置してもよい。
【0042】
本実施形態では、揺動ツース24は、本体フレーム200に対して取り付けられている。一方、フロート21は、除草装置20の本体フレーム200に対して所定の位置に保たれている。したがって、揺動ツース24のフロート21に対する上下方向の位置は略一定である。すなわち、揺動ツース24は、土壌表面に対して上下方向の位置が略一定となるように除草装置20に取り付けられている。揺動ツース24は、土壌表面に接触することにより、株間の除草を行う。このため、揺動ツース24の下端部は、土壌表面に接触している必要がある。一方、揺動ツース24の下端部が土壌表面に対して一定以上の深さに達すると、揺動ツース24が土壌に捕らわれて動きにくくなってしまう。その場合、揺動ツース24が十分に揺動せず、株間の除草効果が低下する。
【0043】
そこで、本実施形態では、揺動ツース24の上下方向の位置を、フロート21の上下方向の位置に従動させることにより、揺動ツース24を土壌表面に対して常に適切な高さに配置している。これにより、揺動ツース24の除草効果が向上する。
【0044】
ロータ位置調節機構25は、条間ロータ23の揺動ツース24に対する上下方向の相対位置を変位させる機構である。ロータ位置調節機構25は、図4に示すように、レバー251、伝達軸252、3つの接続部材253、2つの駆動軸254、および4つの増幅部材255を有する。
【0045】
レバー251は、作業者が条間ロータ23の高さを選択するためのロータ操作部である。レバー251の一端(上端部)は、作業者が操作するための把手部である。また、レバー251の他端(下端部)は、伝達軸252に固定されている。
【0046】
本実施形態のレバー251は、6段階に条間ロータ23の位置を選択できる段階調節式のレバーである。具体的には、レバー251を、レバーケース251aに対して6つの異なる位置に切り替えることができる。図4に示すように、レバー251には、板状の突起251bが設けられている。一方、レバーケース251aには、突起251bを固定する6個の切り込み251cが設けられている。したがって、レバー251の前後方向の位置を、突起251bと切り込み251cとが咬み合う6箇所のいずれかに固定できる。
【0047】
これにより、ロータ位置調節機構25は、条間ロータ23を、揺動ツース24に対して最も下方に配置した最深位置と、揺動ツース24に対して最も上方に配置した最浅位置との間で6段階に昇降させる。このように、本実施形態のロータ位置調節機構25は、条間ロータ23の揺動ツース24に対する相対位置を多段階に調節できる。これにより、作業者が条間ロータ23の高さを細かく位置決めできる。
【0048】
伝達軸252は、略水平かつ左右に延びる略円柱状の部材である。伝達軸252には、レバー251の下端部が固定されている。本実施形態では、レバー251の下端部は、伝達軸252の右側の端部に固定された接続部材253と、伝達軸252の略中央に固定された接続部材253との間の位置の伝達軸252に固定されている。なお、レバー251の下端部は、伝達軸252に対して回動力を伝達できればよいため、伝達軸252のいずれの位置に固定されてもよい。
【0049】
接続部材253はそれぞれ、略水平かつ左右に延びる固定軸250を中心として、本体フレーム200に対して回動する。本実施形態では、3つの接続部材253のそれぞれが、伝達軸252の右側の端部、左側の端部、および略中央に固定されている。また、3つの接続部材253のうち、左右両端の2つの接続部材253が、駆動軸254とアーム256を介して取り付けられている。これにより、伝達軸252および駆動軸254は、固定軸250を中心として、除草装置20の本体に対して回動する。
【0050】
駆動軸254は、略水平かつ左右に延びる、略円柱状の部材である。2つの駆動軸254は、同一直線上に配置されている。一方の駆動軸254は、右側の接続部材253にアーム256を介して取り付けられ、他方の駆動軸254は、左側の接続部材253にアーム256を介して取り付けられている。これにより、レバー251の位置が変化すると、駆動軸254は、接続部材253およびアーム256とともに固定軸250を中心として回動する。
【0051】
増幅部材255は、前後方向に延びる板状の部材である。本実施形態のロータ位置調節機構25は、4つの増幅部材255を有する。2つの駆動軸254の左右の両端のそれぞれに、増幅部材255の後方側の端部付近が回動自在に取り付けられている。また、増幅部材255の前方側の端部付近は、条間ロータ23の回転軸230を回転可能に支持する。これにより、レバー251の位置が変化すると、伝達軸252、接続部材253、アーム256、駆動軸254および増幅部材255を介して、条間ロータ23の回転軸230が固定軸250を中心として回動する。これにより、条間ロータ23が上下に移動する。
【0052】
本実施形態では、図3に示すように、4つの増幅部材255のうちの2つは、右側から1つ目と2つ目の条間ロータ23を挟むように配置される。また、増幅部材255のうち残りの2つは、左側から1つ目と2つ目の条間ロータ23を挟むように配置される。このように、回転軸230を左右両端と、その間の2箇所とを含む4箇所で支持することにより、回転軸230の撓みが抑制されている。
【0053】
レバー251を図4中実線矢印で示すように後方に移動させると、伝達軸252が、固定軸250を中心として上方へ持ち上がる。同時に、接続部材253が、図4中に破線矢印で示すように、回動する。これにより、駆動軸254および増幅部材255が、固定軸250を中心として上方へ持ち上がる。その結果、条間ロータ23の回転軸230が、2点鎖線矢印で示すように、上方へ持ち上がる。
【0054】
すなわち、伝達軸252、接続部材253、アーム256、駆動軸254および増幅部材255は、一体として、固定軸250を中心として回動し、レバー251に入力された回動力を回転軸230へ増幅伝達する回動部材を構成している。
【0055】
このように、ロータ位置調節機構25は、レバー251を前後に操作することにより、工具の使用や部品の取り外しを行うことなく、条間ロータ23の揺動ツース24に対する上下方向の相対位置を変位させる。したがって、条間ロータ23が圃場に対して作用する深さをワンタッチで変更できる。このように、簡易な操作で条間ロータ23の高さを調節できるため、作業効率を向上できる。
【0056】
なお、本実施形態では、レバー251は、走行車体10のメインフレーム11の下方に配置されている。しかしながら、レバー251は、操作部14の近傍に配置されてもよい。そうすれば、作業者は、運転席15に着席したまま、条間ロータ23の高さを調節できるため、作業効率をさらに向上できる。
【0057】
ここで、図5の(a)は、条間ロータ23が最深位置に配置された場合の除草機1の部分側面図である。また、図5の(b)は、条間ロータ23が最浅位置に配置された場合の除草機1の部分側面図である。なお、図5においては、圃場の土壌面9が破線で記載されている。レバー251を操作することにより、図5(a)および図5(b)に示すように、フロート21、分草板22、および揺動ツース24に対して、条間ロータ23の上下方向の位置が変位する。
【0058】
図5(a)に示すように、最深位置において、条間ロータ23の下端部は、揺動ツース24の下端部よりも下方に配置される。これにより、条間ロータ23は、最深位置において揺動ツース24よりも深い位置まで雑草の根部を掻き取ることができる。その結果、条間ロータ23は、条間の雑草を効果的に除草できる。
【0059】
また、図5(b)に示すように、最浅位置において、条間ロータ23の下端部は、揺動ツース24の下端部よりも上方、かつ、フロート21の下面よりも下方に配置される。最浅位置において、条間ロータ23の下端部がフロートの面よりも僅かに下方に配置されることにより、条間ロータが圃場の土壌表面のごく浅い部分のみを掻くことができる。そのため、未活着の苗が土壌表面から浮き上がるのを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、ロータ位置調節機構25は、レバー251を操作することにより、5つの条間ロータ23の全てについて、揺動ツース24に対する上下方向の相対位置を同時に変位させる。これにより、迅速に全ての条間ロータ23の位置を変位させることができる。なお、ロータ位置調節機構25が複数のレバーを有し、条間ロータ23の各々についてその上下方向の位置を変位させてもよい。
【0061】
続いて、除草作業の手順について、以下に説明する。まず、除草機1の運転席15に着席した作業者が、操作部14を操作し、圃場の苗条に沿った向きに除草機1の進行方向を合わせるとともに、前輪12および後輪13が条間に位置するように調節する。このとき、除草装置20は、待機位置に配置されている。
【0062】
次に、操作部14を操作し、除草装置20を下降させ、所定の高さの除草位置へ配置する。このとき、フロート21が検知した圃場の土壌表面高さに基づいて、除草装置20の高さの微調整が行われる。
【0063】
作業者は、条間ロータ23および揺動ツース24の圃場の苗条に対する位置を確認した後、除草装置20を駆動させ、条間ロータ23を回転させるとともに揺動ツース24の揺動を開始する。その後、除草機1を前進させて除草作業を行う。条間ロータ23の回転速度、揺動ツース24の揺動速度、および、条間ロータ23の土壌表面に対する高さはそれぞれ、苗の生育状況、雑草や藻の発生状況、または、圃場の水の深さなどを考慮して調整を行う。
【0064】
除草作業を行いながら進行する除草機1が、圃場の端部に達したら、除草装置20の駆動を停止し、除草装置20を待機位置まで上昇させる。その後、除草機1の向きを転回し、未処理の苗条に合わせて除草機1を移動する。除草機1の位置および方向が定まったら、除草装置20を除草位置へ下降させ、当該未処理の苗条に対して除草作業を開始する。以後、同様の作業を繰り返すことにより、圃場内の除草作業を行う。
【0065】
条間ロータ23の土壌面に対する高さは、種々の条件により選択することにより、除草効果を向上できる。ここで、苗の育成状況に応じた条間ロータ23の高さの選択について一例を挙げて説明する。
【0066】
苗の移植後、間もなく除草作業を行う場合、苗が未だ十分に活着していないため、条間ロータ23が深くまで土壌表面を掻くと、その衝撃で苗が土壌表面から浮き上がってしまう可能性がある。このため、条間ロータ23を最浅位置または最浅位置に近い位置に配置した状態で除草作業を行うことが好ましい。
【0067】
苗が土壌面にしっかりと定着した後に除草作業を行う場合、雑草の根部を土壌中からできるだけ掻き出すことが好ましい。したがって、条間ロータ23を最深位置または最深位置に近い位置に配置した状態で除草作業を行ってもよい。そうすると、除草効果を向上できる。
【0068】
さらに苗が成長し、条間まで苗の根部が伸びた後に除草作業を行う場合、条間ロータ23を低い位置で回転させると、苗の根部を傷つける虞がある。このため、条間ロータ23を最深位置に近い状態で除草作業を行うのは好ましくない。このような場合、苗の根部の状態を考慮して、条間ロータ23を最浅位置と最深位置の中間付近の位置や、最浅位置に近い位置に配置した状態で除草作業を行うことが好ましい。
【0069】
このように、苗の生育状況に応じて条間ロータ23の高さを選択することにより、苗の成長を阻害することなく、効率よく除草作業を行うことができる。
【0070】
また、同じ圃場内であっても、その領域によって、苗の生育状況、雑草の密集度や生える雑草の種類などの諸条件が異なる。そのため、効率よく除草作業を行うためには、除草作業中に、条件の異なる領域ごとに、圃場の状態に応じて条間ロータ23の高さを変位させることが好ましい。
【0071】
除草装置20では、レバー251を操作することにより、簡単かつ迅速に条間ロータ23の上下方向の位置を変位できる。これにより、除草作業を行っている場合であっても、短い中断時間で条間ロータ23の位置を変位できる。すなわち、作業効率の低下を抑制しつつ、除草効果を向上できる。また、除草装置20では、工具の使用や部品の取り外しを行うことなく条間ロータ23の上下方向の位置を変位できるため、圃場内で条間ロータ23の変位を行った場合であっても、圃場に工具や部品を落下させたり、紛失したりする虞がない。したがって、作業効率の低下をより抑制できる。
【0072】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0073】
上記の実施形態の除草機は、ロータ操作部が6段階の段階を有する段階調節式のレバーであったが、本発明はこれに限られない。ロータ操作部は、2段階〜5段階、または、7段階以上の段階を有する段階調節式のレバーであってもよい。なお、ロータ操作部が段階調節式のレバーである場合、3段階以上の段階を有する事が好ましい。また、ロータ操作部として、段階調節式のレバーに代えて、無段階調節式の回転式レバーなどが用いられてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態の除草機は、前輪と後輪との間に除草装置が備えられた、いわゆるミッドマウント型の除草機であったが、本発明はこれに限られない。除草機は、前後の車輪の前方に除草装置が設けられたいわゆるフロントマウント型や、前後の車輪の後方に除草装置が設けられたいわゆるリアマウント型であってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態の除草機は、4条用の除草機であったが、本発明の除草装置が搭載される除草機は、4条用には限られない。例えば、2条用、6条用、または8条用の除草機に、本発明の除草装置を搭載してもよい。その場合、除草機の条数に応じて、条間ロータの数および揺動ツースの数を、適宜に変更すればよい。
【0076】
また、除草装置の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 除草機
9 土壌面
10 走行車体
20 除草装置
21 フロート
22 分草板
23 条間ロータ
24 揺動ツース
25 ロータ位置調節機構
231 除草爪
251 レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6