【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
以下、実施例および比較例を挙げる。
実施例は、上記の数値範囲を含め、上記の実施形態で列挙した内容を反映させた例である。なお、先の出願の実施例番号をそのまま使用している。
比較例は、上記の実施形態で挙げた規定から逸脱した例である。
【0026】
(実施例1)
(1)導電性金属粉の調製
本実施例では、導電性金属粉として銀粉を選択した。
銀を1.1kg含む硝酸銀水溶液87.5kgに、25質量%のアンモニア水3.4kgと、33質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.1kgとを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。
この銀アンミン錯塩水溶液の液温を25℃とし、ここへ2.5質量%の含水ヒドラジン水溶液7.8kgを加えて銀粒子を析出させ、銀含有スラリーを得た。
含水ヒドラジン水溶液の添加終了後、銀の量に対して1質量%のベンゾトリアゾールを銀含有スラリー中に添加した。このようにして得られた銀含有スラリーを濾過、水洗して銀粉ケーキを得た。
当該銀粉ケーキへ、純水2kgに水酸化ナトリウムを1.3g添加した水溶液を添加した。そして、撹拌を続けた後、濾過し、濾液の電気伝導度が0.5mS/mになるまで、25℃の純水で銀粉ケーキの洗浄を行った。
当該洗浄完了後に、銀粉ケーキを乾燥し、さらに解砕して実施例1に係る球状銀粉を得た。
【0027】
(2)銀粉の評価
得られた実施例1に係る球状銀粉に含有されるナトリウムの含有量(以降、「ナトリウム濃度」とも言う。)、平均粒径、比表面積、タップ密度を測定した。当該測定結果を表1(後述)に示す。各種測定結果は、後述の表1にまとめて記載する。
ここで、球状銀粉のナトリウム濃度は全溶解法により測定した。従来技術に係る抽出法では銀粉表面のみのナトリウム量が検出される為、銀粉内部に含まれるナトリウムについては測定されない。そこで、本実施例では全溶解法によりナトリウム濃度測定を行うこととしたものである。
全溶解法は、本実施例においては、銀粉に硝酸を加えて加熱溶解し、原子吸光光度計(日立 Z−8100)により、定量分析を行った。
レーザー回折法による平均粒径は、銀粉0.3gをイソプロピルアルコール50mLに入れ、50W超音波洗浄器にて5分間分散処理後、マイクロトラック9320−X100(ハネウエル−日機装製)により測定した際のD50(累積50質量%粒径)の値である。
比表面積は、カウンタクローム社製モノソーブによりBET法で測定した。
タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学製カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀粉試料15gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1000回タッピングし、タップ密度=試料重量(15g)/タッピング後の試料体積から算出した。
【0028】
(3)ペーストの調製
〈a〉BSF層(Back Surface Field層)と裏面集電電極形成用のペースト
アルミニウム粉末と、エチルセルロース(樹脂バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(溶剤)と、Bi
2O
3−B
2O
3−ZnO系ガラスフリットとを三本ロールミルで混合することによりペースト状にしたBSF層と裏面集電電極形成用のペースト(市販品)を用いた。
【0029】
〈b〉裏面バスバー電極形成用のペースト
銀粉末と、アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(溶剤)と、Bi
2O
3−B
2O
3系ガラスフリットとを三本ロールミルで混合することによりペースト状にした裏面バスバー電極形成用のペースト(市販品)を用いた。
【0030】
〈c〉表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用のペースト
実施例に係る球状銀粉86重量部と、軟化点が530℃のBa系ガラスフリット1重量部と、エチルセルロース1重量部(樹脂バインダー)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート11重量部(溶剤)と、ステアリン酸0.5重量部(分散剤)と、ステアリン酸マグネシウム1重量部と、二酸化テルル2重量部とを配合したものを三本ロールミルで混合することによりペースト状にし、さらに、後記するスクリーン印刷時のペースト粘度が約300Pa・sとなるように、上記有機溶剤を適宜添加して調整した。
【0031】
(4)ペーストの印刷
外形が156mm×156mmの大きさで、表面にn型拡散層が形成され、さらに、n型拡散層の上にSiNxの反射防止層が形成されたp型多結晶シリコンウエハを準備した。
当該シリコンウエハの裏面全面に、上記(2)〈a〉のペーストをスクリーン印刷により塗布し、その塗布されたペーストの上に、(2)〈b〉のペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
次に、冷却後の半導体ウエハの表面側に、(2)〈c〉で調製したペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
そして、実施例1に係るペースト中のナトリウム濃度を測定した。
【0032】
(5)セルの焼成
以上のように作製した半導体ウエハを高速焼成炉に挿入して、800℃の焼成温度で1分間焼成した。
【0033】
(6)配線およびバスバー付け
以上のように焼成した太陽電池セルの表面電極と銅配線とをはんだ付け接続した。次に、リードタブの付いたセルを直線配置し、リードタブと隣接セルの裏面電極とを、はんだ付けにより直列接続した。さらに、複数のセル列を併設し、バスバーによりストリング配線をはんだ付け接続し、配線およびバスバーが付けられたセル列を製造した。
【0034】
(7)ラミネートおよび端子ボックス、アルミ枠取付け
バックカバー、配線およびバスバーが付けられたセル列、セル列を挟む2枚のエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)フィルム、ガラスを重ね合わせ、真空脱気しながら加熱し、EVAを溶融させ、基材をラミネートした後、端子ボックスおよびアルミ枠を取付け、太陽電池モジュールを作製した。
【0035】
(8)第1の特性評価
作製した太陽電池モジュールを、85℃、Rh85%条件の恒温恒湿槽内に装填し、1000Vを印加した状態で360時間保持した。そして、当該保持前後における太陽電池出力に対する出力保持率を測定した。
【0036】
(9)ペースト中のNa含有量の評価
ペースト1gを硝酸10mlで加熱溶解し、溶けなかった固形物(ガラスフリット)がある場合はこれを濾別し、溶液に対して原子吸光光度計によりNaの定量分析を行う。濾別後の固形物は別途、フッ化水素酸など適切な試薬を用いて溶解し、原子吸光光度計によりNaの定量分析を行い、溶液のNa含有量と固形物のNa含有量から、ペーストのNa含有量を求めれば良い。
【0037】
(実施例2)
実施例1で説明した「(1)導電性金属粉の調製」において、25℃の純水による銀粉ケーキの洗浄を、濾液の電気伝導度が133mS/mになるまで行った以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る銀粉を得た。
得られた実施例2に係る球状銀粉のナトリウム濃度、平均粒径、比表面積、タップ密度を実施例1と同様に測定した。
さらに実施例2に係る銀粉を用いて、実施例1と同様に実施例2に係るペーストを調製した。そして、実施例1に係るペースト中のナトリウム濃度を測定した。当該測定値を表1に示す。
次に、実施例1と同様に、実施例2に係るペーストを用いて太陽電池モジュールを作製し、特性評価を行った。
【0038】
(実施例3)
実施例1で説明した「(1)導電性金属粉の調製」において、25℃の純水による銀粉ケーキの洗浄を、濾液の電気伝導度が318mS/mになるまで行った以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る銀粉を得た。
得られた実施例3に係る球状銀粉のナトリウム濃度、平均粒径、比表面積、タップ密度を実施例1と同様に測定した。当該測定結果を表1に示す。
さらに実施例3に係る銀粉を用いて、実施例1と同様に実施例3に係るペーストを調製した。そして、実施例3に係るペースト中のナトリウム濃度を測定した。当該測定値を表1に示す。
次に、実施例1と同様に、実施例3に係るペーストを用いて太陽電池モジュールを作製し、特性評価を行った。
【0039】
上記の各種測定結果および各実施例における評価結果を表1に示す。
【表1】
【0040】
(比較例1)
市販の太陽電池電極用焼成型ペーストを準備し、比較例1に係るペーストとした。「ペースト総体におけるナトリウム濃度」は、実施例1より少ない40ppmであった。銀粉にはナトリウムがほとんど含まれていない可能性がある。
次に、実施例1と同様に、比較例1に係るペーストを用いて太陽電池モジュールを作製し、特性評価を行ったところ出力を失っていた。
【0041】
表1より、特性試験後における太陽電池モジュールの出力保持率は、実施例において保たれ、実施例2〜3に係るペーストを用いて作製した太陽電池モジュールにおいて、高く保たれていることが判明した。さらに、市販のペーストを用いて作製した比較例1に係る太陽電池モジュールでは、特性試験後において出力を失っていたことを考えると、実施例に係るペーストは太陽電池の早期劣化を十分に抑制出来る太陽電池電極用焼成型のペーストであると考えられる。
【0042】
以下においては、本実施例の有効性をさらに示すべく、比較例2〜3を行った。
【0043】
(比較例2)
実施例1で説明した「(1)導電性金属粉の調製」において、25℃の純水による銀粉ケーキの洗浄を、濾液の電気伝導度が2360mS/mになるまで行った以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る銀粉を得た。
得られた比較例2に係る球状銀粉のナトリウム濃度、平均粒径、比表面積、タップ密度を実施例1と同様に測定した。当該測定結果を表2(後述)に示す。比較例2および3に関する各種測定結果は、後述の表2にまとめて記載する。
さらに比較例2に係る銀粉を用いて、実施例1と同様に比較例2に係るペーストを調製した。そして、比較例2に係るペースト中のナトリウム濃度を測定した。
次に、実施例1と同様に、比較例2に係るペーストを用いて太陽電池モジュールを作製し、特性評価を行った。
【0044】
(比較例3)
実施例1において、軟化点が530℃のBa系ガラスフリットを、軟化点が340℃のガラスフリットに変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るペーストを用いて太陽電池モジュールを作製し、特性評価を行った。
【0045】
(9)第2の特性評価
上記の比較例2〜3に加え、先に行った実施例1および実施例2〜3において作製した太陽電池モジュールを、4%酢酸水溶液に浸漬し、1000Vを印加した状態で360時間保持した。そして、17時間後と、67時間後における当該初期出力に対する出力保持率を測定した。比較例2〜3の結果と、第2の特性評価も含めた特性評価の結果を表2に示す。なお、この弱酸性条件下の耐久試験では、実施例1は参考例とする。
【0046】
【表2】
【0047】
表2より、特性試験後における太陽電池モジュールの出力変化率は、実施例2〜3に係るペーストを用いて作製した太陽電池モジュールにおいて、参考例および比較例2〜3よりも高く保たれていることが判明した。