(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物は、電子求引性基と単結合を介して結合している炭素原子、ただし炭素原子と二重結合を介して結合している炭素原子を除く、を含む、請求項1に記載の偏光板の製造方法。
前記化合物は、2つの電子求引性基とそれぞれ単結合を介して結合している炭素原子、ただし炭素原子と二重結合を介して結合している炭素原子を除く、を含む、請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明および本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0027】
また、本発明および本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0028】
[偏光板]
本発明の一態様にかかる偏光板は、少なくとも、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子層を有し、ヨウ化化合物含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物(以下、単に「ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物」とも記載する。)を含む。
以下、上記偏光板について、更に詳細に説明する。
【0029】
<偏光板の構成>
上記偏光板は、少なくとも、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子層を有する。その他に任意の層として、一層以上の偏光板保護フィルム、接着剤層等を有することができる。任意に設けられる層については、後述する。
【0030】
上記偏光板に含まれる偏光子層は、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムからなる。ここでヨウ素染色とは、通常、ヨウ素I
2およびヨウ化化合物(例えばモノヨウ化物イオンI
−を含むヨウ化カリウムKIやI
3−やI
5−等のポリヨウ化物イオンを含む化合物)を含有する水溶液とポリビニルアルコール系フィルムを接触(例えば上記水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬)させることにより行われる。詳細は後述する。偏光子層の作製工程は、通常、ヨウ素染色、架橋工程、延伸工程を含む。これらの詳細も後述する。または、上記の各種工程を、樹脂基材上に形成したポリビニルアルコール系フィルムに対して行った後、樹脂基材からポリビニルアルコール系フィルムを剥離することにより、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムを作製してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂を含む組成物を樹脂基材表面に塗布することにより、樹脂基材上にポリビニルアルコール系フィルムを形成することができる。
こうして得られる偏光子層の厚みは、例えば、0.1〜100μmの範囲であり、偏光性能の観点からは、好ましくは1〜25μmの範囲である。
【0031】
<ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物>
上記偏光板は、一態様では、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を、偏光子層に含むことができる。また、他の一態様では、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を、偏光子層以外に設けられる層の一層以上に含むことができる。また他の一態様では、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を、偏光子層および偏光子層以外の一層以上に含むことができる。なおポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、水和物、溶媒和物および塩のいずれかの形態であってもよい。
以下、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物について、更に詳細に説明する。
【0032】
本発明者らは、1つの推定メカニズムとして、先に記載した方法により評価されるポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、酸素による酸化を受け酸化活性化合物に変化することが、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すことに寄与している可能性があると考えている。詳しくは、酸化活性化合物が、モノヨウ化物イオンが酸化されてI
2が形成される反応を促進する作用を有することが、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すことに寄与しているのではないかと考えている。ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、先に記載した方法により求められる吸光度が0.0超であり、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましい。一方、上記吸光度は、例えば5.0未満、または3.0以下、または2.5以下であることができる。ただし、上記吸光度が高いほど、ポリビニルアルコール系フィルム中のポリヨウ化物イオンI
5−を増やすことができると考えられるため、上限については特に限定はなく、5.0以上であってもよい。また、先に記載した方法では、湯浴に耐圧試験管を放置する時間は2時間〜8時間とするが、より短時間で0.0超の吸光度を示す化合物ほど好ましい。この点からは、2時間の放置時間で0.0超の吸光度を示す化合物が特に好ましい。
【0033】
上述のポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すことに寄与していると考えられる部分構造としては、電子求引性基と炭素原子とが単結合を介して結合している構造を挙げることができる。したがって、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、部分構造として、上記構造を含むことが好ましい。好ましい一態様では、上記炭素原子は、2つの電子求引性基と、それぞれ単結合を介して結合している。また、好ましい他の一態様では、電子求引性基と単結合を介して結合している炭素原子は、環状構造に含まれる。好ましい他の一態様では、電子求引性基と単結合を介して結合している炭素原子について、この炭素原子と単結合を介して結合している水素原子の数は、1つであることが好ましい。電子求引性基としては、ハメット則のσp値が0よりも大きい基が好ましい。電子求引性基の詳細については、一般式(I)に関する後述の記載を参照できる。一態様では、電子求引性基は、カルボニル基(−C(=O)−)であることが好ましい。ただし、カルボニル基と単結合を介して結合している炭素原子は、他の炭素原子と二重結合を介して結合していいないことが好ましい。また、上記カルボニル基は、単結合を介してカルボニル基と結合していないことが好ましい。また、電子求引性基としては、−SO
2−、−SO−、−P(=O)(ORb)O−等の2価の電子求引性基も好ましい。ここで、Rbは置換基を表す。置換基としては、後述で例示する各種置換基を挙げることができる。ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、上記の好ましい一態様の1つ以上に包含されることが好ましく、2つ以上に包含されることがより好ましく、より多くに包含されるほど好ましい。
なお、上記の1つ以上に包含される化合物の中にも、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示さない化合物はある。化合物がポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すか否かは、先に記載の方法により判定するものとする。
【0034】
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、環状化合物であってもよく、直鎖状の化合物であってもよく、分岐構造を有していてもよい。環状化合物については、上記の電子求引性基が環状構造に含まれることが好ましい。
【0035】
上記好ましい部分構造を有する化合物は、1個以上のヘテロ原子を含むことが更に好ましい。一分子中に含まれるヘテロ原子の数は、例えば1〜10個であり、好ましくは1〜6個である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子を挙げることができ、一分子中に2種類以上の異なるヘテロ原子が組み合わされて含まれていてもよい。ヘテロ原子が環状構造に含まれる場合、ヘテロ原子としては窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。即ち、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、環状構造として、複素環を有することが好ましく、含窒素複素環を有することがより好ましい。上記複素環は、好ましくは5員または6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子が窒素原子、酸素原子の少なくとも一方であることが好ましく、少なくとも1つの窒素原子であることが好ましく、窒素原子からなることが最も好ましい。一方、ヘテロ原子として酸素原子を含む場合、一態様では、酸素原子は上記の炭素原子と単結合を介して結合しているカルボニル基(−C(=O)−)を構成する酸素原子である。即ち、より好ましい部分構造としては、含窒素複素環であって、上記のカルボニル基とこのカルボニル基と単結合を介して結合している炭素原子を含むものを挙げることができる。更に好ましい部分構造としては、含窒素複素環であって、2つのカルボニル基とそれぞれ単結合を介して結合している炭素原子を含むものを挙げることができる。
【0036】
なお先に記載した1つの推定メカニズムによれば、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、偏光板において、酸素による酸化を受け酸化活性化合物に転換した後、モノヨウ化物イオンI
−を酸化し、最終的に酸化体に変化すると考えられる。したがって、偏光板としては、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の酸化体を含むものも、本発明の一態様にかかる偏光板に包含されるものとする。また、上記推定メカニズムによれば、酸化活性化合物へ転換しやすい性質を有する化合物も、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物として好ましい。この点から好ましい化合物としては、リノール酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0037】
また、好ましい一態様では、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物に偏光子層に含まれる成分と相互作用する官能基を導入して拡散等を抑止することにより、所望の領域において化合物の濃度分布や局在化の状態を維持することができる。
【0038】
以下に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の具体的態様について説明するが、本発明は、下記具体的態様に限定されるものではない。
【0039】
(一般式(1)で表される化合物)
【化1】
(一般式(1)中、R
1およびR
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の分岐のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表し、R
5は置換基を表す。)
【0040】
一般式(1)のR
1およびR
3の好ましい範囲について述べる。
上記炭素数1〜20の直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の分岐のアルキル基は、炭素数が1〜10の直鎖のアルキル基または炭素数3〜20の分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖のアルキル基または炭素数3〜5の分岐のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜3の直鎖のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
上記炭素数3〜20のシクロアルキル基は、炭素数が3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のシクロアルキル基であることがより好ましい。シクロアルキル基の具体例として、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基が挙げられ、シクロヘキシル基が特に好ましい。なお、シクロアルキル基とは、環状のアルキル基を表す。
上記炭素数2〜20のアルケニル基は、炭素数が2〜10のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2〜5のアルケニル基であることがより好ましい。
上記炭素数6〜20の芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましい。当該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0041】
R
1およびR
3は置換基を有してもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、ベンジル基、2−エトキシエチル基、1−カルボキシメチル基等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル基、アリル基、オレイル基等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル基、ブタジイニル基、フェニルエチニル基等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、3−メチルフェニル基等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、前記環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−イミダゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、2−チアゾリル基、2−オキサゾリル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ベンジルオキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等)、
【0042】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、ベンジルチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクロロイル基、ベンゾイル基、ニコチノイル基等)、アリーロイルアルキル基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−エチルアミノ基、アニリノ基、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホニル基等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド基、N−フェニルスルホンアミド基等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ基、アクリロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ニコチンアミド基等)、シアノ基、水酸基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。R
1およびR
3が有しうる上記置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
R
1およびR
3の各基が有してもよい上記の置換基のうち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基が好ましい。
【0043】
R
5は置換基を表す。置換基は、特に制限はなくR
1およびR
3が有する置換基として示したものが挙げられる。R
5は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基)、アリール基、アラルキル基であることが好ましく、アリール基またはアラルキル基がより好ましく、フェニル基またはベンジル基であることが更に好ましい。
本発明では、R
5は、特に、芳香環を有し、極性効果を示す置換基であることが更に好ましい。これらの基はさらに置換基で置換されていてもよい。R
5で示される、芳香環を有し、極性効果を示す置換基はラジカルを捕集し安定化に寄与するため極性効果を示す構造であることが好ましい。極性効果を示す構造としては分極を示す効果を有する置換基を用いることができるが、R
5は芳香環を有し、極性効果を示す置換基であることが好ましい。
【0044】
このような芳香環を有し、極性効果を示す置換基としては、炭素数6〜20の芳香族基または炭素数7〜20のアラルキル基であることが好ましく、炭素数6〜14の芳香族基または炭素数7〜15のアラルキル基であることがより好ましく、炭素数6〜10の芳香族基または炭素数7〜11のアラルキル基であることが更に好ましい。なお、ここで炭素数は総炭素数を表す。アラルキル基はアルキル基にアリール基が置換した化合物であり、アラルキル基のなかでも、アルキル基に1個または2個のアリール基が置換したもの(2個のアリール基が置換した場合、同一炭素原子に置換していることが好ましい。)が好ましい。芳香環を有し、極性効果を示す置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
R
5としては、フェニル基、p−クロロフェニル基、p−トルイル基、ベンジル基、エチルフェニル基、m−トルイル基、p−メトキシフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、p−メチルベンジル基、ジフェニルメチル基、メチルベンゾイルフェニルメチル基等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)で表される化合物のうち、好ましい化合物を列挙すると以下の通りである。
・R
1、R
3およびR
5の少なくとも1つが、極性効果を示す置換基を有する
・R
1およびR
3のいずれか1つがアラルキル基である化合物
なお、アラルキル基はアルキル基にアリール基が置換した化合物であり、アラルキル基のなかでも、アルキル基に1個または2個のアリール基が置換したもの(2個のアリール基が置換した場合、同一炭素原子に置換していることが好ましい。)が好ましい。さらに、アルキル基にアリール基とアシル基(好ましくはアリーロイル基)が置換したものも好ましい。
・R
1およびR
3のいずれか1つが、シクロアルキル基を含む基で、好ましくは、シクロアルキル基を含む基がシクロアルキル基である化合物
・R
1およびR
3が水素原子である化合物、特に、R
1およびR
3が水素原子で、R
5が炭素数1〜3のアルキル基である化合物
【0046】
一般式(1)で表される化合物の好ましい一態様としては、R
1、R
3およびR
5の少なくとも1つが水溶性基であるか、水溶性官能基を含んでいるか、R
1とR
3の両方が水素原子である。上記一態様にかかる一般式(1)で表される化合物は、偏光子層を構成するポリビニルアルコールとの相溶性に優れるため、好ましい。
水溶性官能基とは、一般式(1)で表される化合物の水溶解性に寄与する基である。一般式(1)で表される化合物が有し得る水溶性官能性基の具体例としては、スルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アンモニオ基、スルホンアミド基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチン基、またはこれらの基を含む置換基を挙げることができ、好ましくはスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、アミノ基等の基が挙げられる。
カルボキシル基、スルホンアミド基およびスルホ基は塩の状態であってもよい。塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物に水溶性を付与する基として、R
1とR
3の両方が水素原子である態様が例示される。このような構成とすることにより、一般式(1)で表される化合物の水溶性が高くなるためである。
【0047】
また、一般式(1)で表される化合物は、水和物、溶媒和物または塩の形態で用いてもよい。なお、本発明において、水和物は有機溶媒を含んでいてもよく、溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」および「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。
【0048】
溶媒和物が含む溶媒の例には、一般的な有機溶剤のいずれも含まれる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例えば、酢酸エチル)、炭化水素(脂肪族もしくは芳香族炭化水素のいずれでもよく、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、ニトリル(例えば、アセトニトリル)、ケトン(例えば、アセトン、2−ブタノン)等が挙げられる。好ましくは、アルコールの溶媒和物であり、より好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。これらの溶媒は、本発明における一般式(1)で表される化合物の合成時に用いられる反応溶媒であっても、合成後の晶析精製の際に用いられる溶媒であってもよく、またはこれらの混合であってもよい。
また、二種類以上の溶媒を同時に含んでもよいし、水と溶媒を含む(例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール、t−ブタノール)など)であってもよい。
【0049】
塩としては、無機または有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸は、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸)、硫酸、リン酸などが挙げられる。また、有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸が挙げられ、アルカンスルホン酸(メタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸)が挙げられる。
【0050】
また、塩は、親化合物に存在する酸性部分が、金属イオン(例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩、アンモニウム塩アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)により置換されるか、あるいは有機塩基(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン)と調整されたときに形成される塩が挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
【0051】
なお、一般式(1)で表される化合物の塩の形態は、例えば、ナトリウム塩の場合、下記に一例を示したように互変異性体が存在するが、本発明ではそれらを区別せず同一のものとみなし、具体例中ではその片方のみの構造で記載している。
【0053】
一般式(1)で表される化合物の親水性の程度は、CLogP値として表すことができる。CLogPにおけるPとは、n−オクタノール−水系での分配係数を表し、n−オクタノールと水を用いて測定することができる。これら分配係数は、ClogP値推算プログラム(Daylight Chemical Information Systems 社のPC Modelsに組み込まれたCLOGPプログラム)を使用して推算値CLogP値として求めることもできる。ClogP値は、−8.0〜12.0の範囲であることが好ましく、−5.0〜10.0の範囲であることがより好ましく、−5.0〜8.0の範囲であることがさらに好ましい。
【0054】
以下に、一般式(1)で表される化合物等の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、Meはメチル基を表す。
【0065】
一般式(1)で表される化合物は、バルビツール酸構造を有するため、尿素誘導体とマロン酸誘導体とを縮合させるバルビツール酸の合成法を用いて合成することができる。窒素原子上に置換基を2つ有する化合物は、N,N’二置換型尿素とマロン酸クロリドを加熱するか、マロン酸と無水酢酸などの活性化剤とを組み合わせて加熱することにより得ることができる。合成法としては、例えば、Journal of the American Chemical Society、第61巻、1015頁(1939年)、Journal of Medicinal Chemistry、第54巻、2409頁(2011年)、Tetrahedron Letters、第40巻、8029頁(1999年)、WO2007/150011号公報などに記載の方法を好ましく用いることができる。
また、縮合に用いるマロン酸は、無置換のものでも置換基を有するものでもよく、R
5に相当する置換基を有するマロン酸を用いれば、バルビツール酸を構築することにより一般式(1)で表される化合物を合成することができる。また、無置換のマロン酸と尿素誘導体を縮合させると5位が無置換のバルビツール酸が得られるので、これを修飾することにより一般式(1)で表される化合物を合成してもよい。
5位の修飾の方法としては、ハロゲン化アルキル等との求核置換反応やマイケル付加反応のような付加反応を用いることができる。また、アルデヒドやケトンと脱水縮合させてアルキリデンまたはアリーリデン化合物を生成させ、その後二重結合を還元する方法も好ましく用いることができる。このような方法は例えば、Organic Letters,第5巻,2887頁(2003年)、Journal of Medicinal Chemistry,第17巻,1194頁(1974年)、Journal of Organic Chemistry,第68巻,4684頁(2003年)、Tetrahedron Letters,第42巻,4103頁(2001年)やJournal of the American Chemical Society,第119巻,12849頁(1997年)、Tetrahedron Letters,第28巻,4173頁(1987年)などに記載の方法を好ましく用いることができる。
なお、一般式(1)で表される化合物の合成法は上記に限定されるものではない。
【0066】
また、バルビツール酸構造を有し、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物としては、下記化合物を例示することもできる。
【0069】
表1中、Phはフェニル基、cHexはシクロヘキシル基、cPentylはシクロペンチル基、C
6H
4は、フェニレン基を表し、C
6H
4(p−CH
3)のような( )の基は、フェニル基への置換基を表し、「p−」は、p位であることを示す。
【0070】
以下に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の他の具体的態様について説明するが、本発明は、下記具体的態様に限定されるものではない。
【0073】
一般式(I)において、Rは置換基を表すが、フェノール性水酸基や芳香族アミノ基を含む基であることはない。EWG
1およびEWG
2は各々独立に電子求引性基を表す。EWG
1とEWG
2が互いに結合して環を形成してもよい。ただし、EWG
1とEWG
2が互いに結合して、下記連結基となって、Rが置換している炭素原子に結合して、環を形成することはない。
【0075】
ここで、RxおよびRyは各々独立に水素原子または置換基を表す。*はRが置換している炭素原子に結合する位置を示す。
【0076】
ここで、EWG
1およびEWG
2おける電子求引性基としては、ハメット則のσp値が0よりも大きい基が好ましい。σp値が正の置換基としては、フッ素(0.06)、塩素(0.30)、臭素(0.27)、ヨウ素(0.30)等のハロゲン原子、−CHO(0.22)、−COCH
3(0.50)、−COC
6H
5(0.46)、−CONH
2(0.36)、−COO
−(0.30)、−COOH(0.41)、−COOCH
3(0.39)、−COOC
2H
5(0.45)、等のカルボニルを有する基、−SOCH
3(0.49)、−SO
2CH
3(0.72)、−SO
2C
6H
5(0.68)、−SO
2CF
3(0.93)、−SO
2NH
2(0.57)、−SO
2OC
6H
5(0.23)、−SO
3−(0.09)、−SO
3H(0.50)等のスルホニルもしくはスルフィニルを有する基、−CN(0.66)、−NO
2(0.78)、−N(CH
3)
3+(0.82)、−N(CF
3)
2(0.53)等の含窒素置換基、−CCl
3(0.46)、−CH
2Cl(0.18)、−CHCl
2(0.32)、−CF
3(0.54)、等のハロゲン原子置換アルキル基が挙げられる。ここで、カッコ内はσp値である。
ハメットのσp値は、例えば、C.Harsch他、J.Med.Chem.,16,1207(1973)、同,20,304(1977)、Chem.Rev.91,165(1991)などにも記載されている。
【0077】
EWG
1およびEWG
2おける電子求引性基のハメットのσp値は、0.20以上であることが好ましい。電子求引性基として、具体的には、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基(例えば、―CONHCH
3(0.32))、チオアシル基、アルコキシチオカルボニル基、アリールオキシチオカルボニル基、アルキルもしくはアリールのチオカルバモイル基(例えば、−CSNHCH
3(0.34))、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基(例えば、−SO
2N(CH
3)
2(0.65))、アルキルもしくはアリールのスルホニル基(例えば、−SO
2CH
3(0.72)、−SO
2C
6H
5(0.68))、アルキルもしくはアリールのスルフィニル基(例えば、−SOCH
3(0.49))、シアノ基、ニトロ基またはホスホノ基が挙げられ、これらが好ましく、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基、アルキルもしくはアリールのスルホニル基、アルキルもしくはアリールのスルフィニル基、シアノ基、ニトロ基またはホスホノ基がより好ましい。
【0078】
アシル基は、芳香族のアシル基でも脂肪族のアシル基でもよく、またホルミル基をも含み、炭素数は1〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。
該アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、ピバロイル、ラウロイル、ミリストイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル、ナフトイルが挙げられる。
該アシル基のうち、分岐アルキル(好ましくはtert−アルキルカルボニル基)のアシル基、例えば、ピバロイルなどや、オルト位に置換基を有するフェニルカルボニル基が好ましい。
【0079】
アルコキシカルボニル基の炭素数は2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。アルコキシカルボニル基としては、分岐アルコキシカルボニル基が好ましく、tert−アルキルオキシカルボニル基がより好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニルが挙げられる。
【0080】
アリールオキシカルボニル基の炭素数は7〜20が好ましく、7〜16がより好ましい。アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニルが挙げられる。
なお、アリールオキシカルボニル基よりアルコキシカルボニル基の方が好ましい。
【0081】
水素原子の少なくとも一方がアルキル基もしくはアリール基から独立して選択される基で置換されたチオカルバモイル基は、炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
カルバモイル基としては、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイルが挙げられる。
【0082】
アルキルもしくはアリールスルホニル基は、炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
スルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、tert−オクチルスルホニル、フェニルスルホニルが挙げられる。
【0083】
アルキルもしくはアリールのスルフィニル基は、炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
スルフィニル基としては、例えば、メチルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、tert−ブチルスルフィニル、tert−オクチルスルフィニル、フェニルスルフィニルが挙げられる。
【0084】
ホスホノ基は、−P(=O)(ORb)
2で表され、Rbは置換基を表す。好ましい置換基Rbについては後述する。
【0085】
チオアシル基、アルコキシチオカルボニル基、アリールオキシチオカルボニル基、水素原子の少なくとも一方がアルキル基もしくはアリール基から独立して選択される基で置換されたチオカルバモイル基(これらの好ましい範囲および具体例は、対応するアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、水素原子の少なくとも一方がアルキル基もしくはアリール基から独立して選択される基で置換されたチオカルバモイル基のC(=O)部分を(C=S)に置き換えたのみ異なるもの)が挙げられる。
【0086】
EWG
1およびEWG
2と結合して環を形成した場合、Rが結合する炭素原子に結合する部分は、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO
2−、−SO−または*−P(=O)(ORb)O−が好ましい。ここで、*はRが結合する炭素原子に結合する位置を示し、Rbは置換基を表す。この場合、−C(=O)−、−C(=S)−がより好ましく、−C(=O)−、−C(=O)−または−C(=S)−が更に好ましく、−C(=O)−がなかでも好ましい。
【0087】
R、RxおよびRyにおける置換基は、下記置換基Sが挙げられる。
ただし、Rは、置換基中にフェノール性水酸基や芳香族アミノ基を含む基であることはなく、−NH
2を含む基であることはない。
【0088】
置換基S:置換基Sとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5員環または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、該環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
【0089】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロリイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、アルキルもしくはアリールのスルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホ基もしくはその塩、カルボキシ基もしくはその塩、リン酸基もしくはその塩、オニオ基(例えば、スルホニウム塩のスルホニオ基、アンモニウム塩のアンモニオ基、ヨードニウム塩のヨードニオ基、ホスホニウム塩のホスホニオ基)、チオアシル基、アルコキシチオカルボニル基、アリールオキシチオカルボニル基、アルキルもしくはアリールのチオカルバモイル基(これらの好ましい範囲および具体例は、対応するアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基のC(=O)部分を(C=S)に置き換えたのみ異なるものが挙げられる)、またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
【0090】
これらの置換基はさらに置換基で置換されていてもよく、そのような置換基としては上記置換基Sが挙げられる。
例えば、アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基、アルキル基にアルコキシカルボニル基やシアノ基が置換した基などが挙げられる。
【0091】
Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基またはハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ニトロ基またはハロゲン原子がより好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が更に好ましい。
【0092】
Rにおけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が更に好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基が挙げられる。
【0093】
Rにおけるアルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜5が更に好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−ペンテニル、オレイルが挙げられる。
【0094】
Rにおけるシクロアルキル基の炭素数は、3〜20が好ましく、5〜10がより好ましく、5または6が更に好ましい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
【0095】
Rにおけるシクロアルケニル基の炭素数は、5〜20が好ましく、5〜10がより好ましく、5または6が更に好ましい。
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニルが挙げられる。
【0096】
Rにおけるアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜10がより好ましく、6〜8が更に好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0097】
Rにおけるヘテロ環基は、ヘテロ環基の炭素数は、0〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、2〜10が更に好ましく、2〜5が特に好ましい。
該ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、5員環または6員環のヘテロ環が好ましく、該ヘテロ環は、置換基で置換されていてもよく、またベンゼン環や脂環、ヘテロ環で縮環していてもよい。ここで、置換基としては上記置換基Sが挙げられる。
ヘテロ環基におけるヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が挙げられ、ヘテロ芳香環であっても芳香環でないヘテロ環であってもよい。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピロリジン環、ピロリン環、ピラゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環およびこれらのベンゼン縮環した環(例えば、インドール環、ベンズイミダゾール環等)が挙げられる。
【0098】
Rにおけるハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0099】
一般式(I)におけるEWG
1およびEWG
2およびRのいずれかが、少なくとも1つの環構造を有する基であることが好ましい。
【0100】
一般式(I)で表される化合物の好ましい態様としては、下記一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
一般式(II)において、Rは、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。EWG
1aおよびEWG
2aは各々独立に2価の電子求引性基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。これらの各基はさらに置換基で置換されていてもよい。
【0103】
EWG
1aおよびEWG
2aにおける2価の電子求引性基としては、−C(=O)−、−SO
2−、−SO−または*−P(=O)(ORb)O−が好ましい。ここで、*は、Rが結合する炭素原子に結合する位置を示す。Rbは置換基を表す。置換基としては、先に記載した置換基Sを挙げることができる。
【0104】
Lにおける2価の連結基は、EWG
1aおよびEWG
2aに結合するLの原子が、−C(R
X1)(R
X2)−、−N(Ra)−、−O−、−S−、−N(Ra)−が好ましい。ここで、R
X1およびR
X2は各々独立に水素原子または置換基を表し、Raは水素原子または置換基を表す。
【0105】
Ra、Rb、R
X1およびR
X2における置換基は、前述の置換基Sが挙げられる。
Raにおける置換基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
Raは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0106】
Rbは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましく、アルキル基、アリール基が更に好ましく、アリール基がなかでも好ましい。
【0107】
R
X1およびR
X2における置換基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が好ましい。
R
X1およびR
X2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が好ましい。
【0108】
EWG
1a、EWG
2aおよびLによって形成される環は5〜8員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5または6員環が更に好ましい。
【0109】
一般式(II)で表される化合物の好ましい態様としては、下記一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【0111】
一般式(III)において、Rは、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。EWG
1bは、−C(=O)−、−SO
2−、−SO−または*−P(=O)(ORb)O−を表す。ここで、*はRが置換する炭素原子と結合する位置を示し、Rbは置換基を表す。L
1は2価の連結基を表す。これらの各基はさらに置換基で置換されていてもよい。
【0112】
EWG
1bは、−C(=O)−、−SO
2−、−SO−が好ましく、−C(=O)−、−SO
2−がより好ましく、−C(=O)−が更に好ましい。
【0113】
L
1における2価の連結基は、EWG
1bおよび−C(=O)−に結合する
L1の原子が、−C(R
X1)(R
X2)−、−N(Ra)−、−O−、−S−、−N(Ra)−が好ましい。ここで、R
X1およびR
X2は各々独立に水素原子または置換基を表し、Raは水素原子または置換基を表す。
なお、L
1は一般式(II)のLにおける2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0114】
L、L
1における2価の連結基としては、−O−、−S−、−N(Ra)−、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO
2−、−SO−、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基が好ましい。アルキレン基の炭素数は1〜3が好ましく、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンが挙げられる。アルケニレン基の炭素数は2または3が好ましく、例えば、エテニレンが挙げられる。シクロアルキレン基の炭素数は5〜12が好ましく、シクロペンチレン、シクロヘキシレンが挙げられ、シクロアルケニレン基の炭素数は5〜12が好ましく、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレンが挙げられ、アリーレン基の炭素数は6〜12が好ましく、フェニレン、ナフチレンが挙げられる。2価のヘテロ環基におけるヘテロ環を構成するヘテロ原子は酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、炭素数は1〜12が好ましく、2〜12がより好ましく、3〜12が更に好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、モルホリン環が挙げられる。
シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基としては、隣接する2つの原子をオルト位の関係で有するものが好ましい。
なお、−N(Ra)−は、前述の−N(Ra)−と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0115】
Lは、単結合、−O−、−S−、−N(Ra)−、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO
2−、−SO−、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基が好ましい。
L
1は、−O−、−S−、−N(Ra)−、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO
2−、−SO−、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基が好ましい。
【0116】
EWG
1b、L
1、およびRが置換する炭素原子によって形成される環は5〜8員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5または6員環が更に好ましい。
【0117】
一般式(I)で表される化合物のより好ましい態様としては、下記一般式(IV)で表される化合物を挙げることができる。
【0119】
一般式(IV)において、Rは、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。Y
1およびY
2は各々独立に、−C(R
X1)(R
X2)−、−N(Ra)−、−O−、−S−または−N(Ra)−を表す。ここで、R
X1およびR
X2は各々独立に水素原子または置換基を表し、Raは水素原子または置換基を表す。L
2は単結合またはY
1とY
2を原子数1〜3個で結合する2価の連結基を表す。Y
1とY
2、Y
1とL
2またはY
2とL
2が互いに結合して環を形成してもよい。これらの各基はさらに置換基で置換されていてもよい。
【0120】
L
2は単結合またはY
1とY
2を原子数1〜3個で結合する2価の連結基を表す。R
X1、R
X2およびRaは、前記一般式(II)におけるR
X1、R
X2およびRaと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0121】
L
2は、L
1における2価の連結基で挙げた連結基のうち、Y
1とY
2を原子数1〜3個で結合する2価の連結基が挙げられ、これを満たすもので、L
1で好ましいとして挙げたものが好ましい。
従って、L
2におけるアルキレン基またはアリーレン基はL
1におけるアルキレン基、アリーレン基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
L
2は単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基が好ましい。
【0122】
一般式(IV)におけるR、Y
1、Y
2、L
2のいずれかが、少なくとも1つの環構造を有する基であることが好ましい。
【0123】
一般式(I)で表される化合物は、水溶性官能基を含むことも偏光子層を構成するポリビニルアルコール系樹脂との相溶性に優れるため、好ましい。水溶性官能基とは、一般式(I)で表される化合物の水溶解性に寄与する基である。一般式(I)で表される化合物が有する水溶性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、リン酸基もしくはその塩などの水溶性基や、エーテル結合を有する基を挙げることができる。
【0124】
一般式(I)で表される化合物を偏光板保護フィルムに添加するときの化合物の分子量は、350〜1500の範囲であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物を接着剤層または偏光子層に添加するときの化合物の分子量は、100〜1000の範囲であることが好ましい。 一般式(I)で表される化合物のClogP値は、−8.0〜12.0の範囲であることが好ましく、−5.0〜10.0の範囲であることがより好ましく、−5.0〜8.0の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ClogP値の概算プログラム等の詳細については、先に記載した通りである。
また、一般式(I)で表される化合物と同じ層に含まれる樹脂の性質、特に親水性であるか疎水性であるかに応じて、好ましい分子量やClogP値を有する一般式(I)で表される化合物を選択することが好ましい。
例えば、セルロースエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような疎水性の樹脂の場合、一般式(I)で表される化合物の分子量は350〜1500の範囲であることが好ましく、400〜1000の範囲であることがより好ましく、400〜750の範囲であることが更に好ましい。また、ClogPは1.0〜9.0の範囲であることが好ましく、2.0〜9.0の範囲であることがより好ましく、2.0〜8.0の範囲であることがさらに好ましい。
一方、ポリビニルアルコールまたはそのアシル化もしくはケタール化体等のような親水性樹脂、水溶性樹脂の場合、一般式(I)で表される化合物の分子量は100〜1000の範囲であることが好ましく、140〜800の範囲であることがより好ましく、140〜600の範囲であることが更に好ましい。また、ClogPは−4.0〜1.0の範囲であることが好ましく、−4.0〜0.5の範囲であることがより好ましく、−4.0〜0の範囲であることが更に好ましい。親水性樹脂、水溶性樹脂との相溶性の観点から、一般式(I)で表される化合物としては、水への溶解度が高いものがより好ましい。詳しくは、25℃で水100mlに0.1g以上溶解することが好ましく、1.0g以上溶解することがより好ましく、1.0〜30.0g溶解することが更に好ましい。
【0125】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
以上記載した一般式(I)で表される化合物は、公知の方法で合成可能である。また、市販品として入手可能なものもある。
【0131】
また、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の具体例としては、下記化合物も例示できる。下記において、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0133】
上記例示化合物の中には、偏光子層に含まれるPVAと相互作用する置換基を有するものがある。そのような置換基としては、例えば、アセタール基、カルボニル基、ホルミル基、ケトン基、ボロニル基、ボロン酸エステル基、トリアルコキシシリル基などの共有結合を形成する置換基、フッ素などの水素結合性基を形成する置換基が挙げられる。かかる置換基をポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が有することは、この化合物が偏光子層に留まり易くなるため、偏光板の耐久性向上の点で好ましい。
【0134】
また、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層に応じて、以下の態様も好ましい。
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層が偏光板保護フィルムの場合、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が、置換基として上述したような偏光子層に含まれる成分と相互作用する官能基を1分子中に少なくとも1つ有することが好ましい。置換基は、ホルミル基およびボロニル基から選ばれる少なくとも1つ以上であることが好ましく、そのような置換基が1分子中に2つ以上含まれることがより好ましい。
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層が偏光子層および接着剤層の一方または両方の場合、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が、置換基として、上述したような水溶性官能基および偏光子層に含まれる成分と相互作用する官能基を、1分子中にそれぞれ少なくとも1つ有することが好ましい。より好ましくは、1分子中に、水溶性官能基を少なくとも1つ、かつ、偏光子層に含まれる成分と相互作用する官能基を2つ以上、有することが好ましい。置換基は、水溶性官能基としてスルホ基、かつ、偏光子層に含まれる成分と相互作用する官能基としてホルミル基およびボロニル基から選ばれる少なくとも1つが含まれることが好ましい。
【0135】
<ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層>
以上説明したポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、偏光板を構成する層のいずれか一層以上に含まれる。ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なおポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を二種以上併用する場合、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の含有量とは、併用される化合物の合計量をいうものとする。
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が偏光子層以外の層に含まれる場合には、かかる層から偏光子層へ経時的に移行することにより、高温高湿下に置かれた後の偏光性能の維持または向上に寄与しているのではないかと、本発明者らは推察している。
また、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が偏光子層に含まれる場合、偏光子層全体に均一に含まれる態様であってもよく、偏光子層の一部領域に偏在している態様であってもよい。先に記載した通り、1つの推定メカニズムでは、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、酸素と反応し酸化活性化合物に転換すると考えられる。空気中から偏光板へ取り込まれた酸素と上記化合物との反応は、偏光子層の表面や表面から偏光子層の厚み方向に向かう一部領域(表層領域)において、他の領域よりも、より進行しやすいと考えられる。表面や表層領域は、偏光子層に隣接する層を通過して偏光子層に到達した酸素と上記化合物との反応が起こりやすい部分だからである。したがって、偏光子層の表面または表面を含む表層領域に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が存在することも、好ましい。一例として、表層領域は、偏光子層の表面から、例えばフィルム厚みの1/10〜1/3程度の厚さの領域であることができる。ただし表層領域の厚みは特に限定されるものではない。また、偏光子層においては、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の濃度が、例えば内部から表面に向かって連続的または段階的に変化する濃度勾配があってもよい。
【0136】
上記のように偏光子の表面や表層領域にポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を存在させるための手段としては、偏光子層表面に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物をそのまま、または溶液として塗布する方法を挙げることができる。
また、偏光子層等の各層を作製するための組成物に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を添加する方法、各層の作製工程においてポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を添加する方法等を用いることにより、偏光子層等の偏光板を構成する層の少なくとも一層に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む偏光板を得ることもできる。
また、偏光子層の内部にポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を存在させるための手段としては、各層の作製工程において延伸操作を行う場合、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含有させた溶液を用いる方法等を挙げることができる。
以上の詳細については、後述する。
【0137】
[偏光板の製造方法]
本発明の更なる態様は、上述の偏光板の製造方法に関する。
上記製造方法は、ヨウ化化合物含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層を少なくとも一層形成する工程を含む。
以下、上記製造方法の詳細について説明する。
【0138】
<ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムの準備>
ポリビニルアルコール系フィルムは、市販品を用いてもよく、公知の方法で製膜したものを用いてもよい。ポリビニルアルコール系フィルムの製膜方法としては、例えば、特開2007−86748号公報の段落0213〜0237に記載の方法を用いることができる。また、特許登録第3342516号明細書、特開平09−328593号公報、特開2001−302817号公報、特開2002−144401号公報等を参考にして、ポリビニルアルコール系フィルムを製膜することもできる。なおポリビニルアルコール系フィルムとは、フィルムを構成する樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を含むフィルムを意味する。フィルムを構成する樹脂の最も多くを、例えば80質量%以上を、ポリビニルアルコール系樹脂が占めることが好ましい。フィルムを構成する樹脂のすべてがポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含んでいてもよい。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。
【0139】
ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子(偏光子層)の製造工程は、通常、染色工程(ヨウ素染色)、架橋工程、延伸工程を含む。更に任意に、膨潤工程、洗浄工程等を含むこともできる。以上の工程は、任意の順序で、同時または順次、実施することができる。
【0140】
延伸工程は、通常、一軸延伸を施すことにより行うことができる。延伸工程は、例えば、米国特許2,454,515号明細書などに記載されているような、縦一軸延伸方式、または特開2002−86554号公報に記載されているようなテンター方式により、実施することができる。好ましい延伸倍率は2倍〜12倍であり、更に好ましくは3倍〜10倍である。延伸工程は、通常、湿潤式延伸により行うことができる。膨潤工程後に行ってもよい。また、延伸工程は、複数回実施することもできる。例えば、染色工程前に延伸したフィルムを、染色工程、架橋工程、またはこれらの両工程中に更に延伸することができる。
【0141】
湿潤式延伸に用いる処理液(以下、延伸浴とも記載する。)にヨウ化化合物を含有させることもできる。処理液にヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は、例えば0.1〜10質量%とすることができ、0.2〜5質量%とすることが好ましい。湿潤式延伸における延伸浴の液温度は、通常、25℃以上であり、好ましくは30〜85℃、更に好ましくは50〜70℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜800秒間であり、好ましくは30〜500秒間である。
【0142】
染色工程(ヨウ素染色)は、気相または液相において行うことができる。液相で行う染色方法の一例としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液(以下、染色浴とも記載する。)にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬させる方法を挙げることができる。上記ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液としては、ヨウ素濃度は0.1〜20g/l、ヨウ化カリウム濃度は1〜200g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜200が好ましい。染色時間は10〜5000秒が好ましく、染色時の染色浴の液温度は5〜60℃が好ましい。染色手段としては浸漬だけでなく、染色液の塗布または噴霧等、任意の手段を用いることができる。染色工程は、延伸工程前、延伸工程後のいずれで行ってもよい。また、液相での染色中に延伸を行うこともできる。フィルムが適度に膨潤され延伸が容易になることから、延伸工程前または延伸しながら液相で染色することが好ましい。フィルムを複数回延伸する場合において、延伸工程とは、延伸を行う複数の工程の中で、延伸倍率が最も大きい工程をいうものとする。
【0143】
架橋工程は、通常、架橋剤としてホウ素化合物を用いて行われる。架橋工程の順序は特に制限されない。架橋工程は、染色工程、延伸工程とともに行うことができる。また、架橋工程は1回または複数回行ってもよい。ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。ホウ素化合物は、水溶液または水と有機溶媒との混合溶媒を溶媒として含む溶液の形態で、一般に用いられる。通常は、ホウ酸水溶液が用いられる。ホウ酸水溶液のホウ酸濃度は、溶媒100質量部に対して、例えば1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部の範囲である。また、ホウ酸水溶液等(以下、架橋浴とも記載する。)には、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。ホウ酸水溶液にヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は、溶媒100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部の範囲である。架橋工程を実施することでポリビニルアルコールを架橋し安定化することができるため、偏光性能向上の観点から好ましい。
【0144】
架橋工程を、ポリビニルアルコール系フィルムを架橋浴へ浸漬することにより行う場合、通常、架橋浴の液温度は、25℃以上、好ましくは30〜85℃、更に好ましくは30〜60℃の範囲である。浸漬時間は、通常、5〜800秒間、好ましくは8〜500秒間程度である。
【0145】
膨潤工程は、染色工程前または後のポリビニルアルコール系フィルムを処理液に浸漬することにより行うことができる。処理液としては、通常、水、蒸留水、純水が用いられる。処理液は、最も多くを占める成分が水であることが好ましい。処理液には、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加剤、アルコール等の有機溶媒が少量入っていてもよい。また、処理液にヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は、例えば0.1〜10質量%であり、0.2〜5質量%であることが好ましい。
【0146】
膨潤工程における処理液の液温度は、通常、20〜45℃程度に調整することが好ましい。さらには、25〜40℃であることが好ましい。処理液への浸漬時間は、通常10〜300秒間、好ましくは20〜240秒間の範囲である。
【0147】
洗浄工程は、洗浄液として、ヨウ化カリウム溶液を用いて行うことができる。ヨウ化カリウム溶液におけるヨウ化カリウム濃度は、通常、0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜6質量%の範囲である。
【0148】
洗浄液の液温度は、通常15〜60℃、好ましくは25〜40℃である。洗浄液への浸漬時間は、通常1〜120秒間、好ましくは3〜90秒間の範囲である。
【0149】
また、洗浄工程としては、水洗を行ってもよい。水洗は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗に用いる水の液温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、更に好ましくは15〜40℃の範囲である。水への浸漬時間は、通常、5〜300秒間、好ましくは10〜240秒間程度である。
【0150】
上記各工程を施した後には、最終的に、乾燥工程を施すことができる。乾燥工程は、例えば、30℃〜100℃の雰囲気において30秒〜60分程度行うことができる。
【0151】
なお偏光子の製造工程については、特開2011−237580号公報の段落0039〜0050も参照できる。
【0152】
<ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層を少なくとも一層形成する工程>
先に記載した偏光板は、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む層を、少なくとも一層有する。上記化合物を含む層は、一態様では、偏光子層であり、他の一態様では偏光板保護フィルムであり、また他の一態様では、接着剤層である。
【0153】
(ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む偏光子層を形成する方法)
上記化合物を偏光子層に含めるための方法の一例としては、ポリビニルアルコール系フィルムを製膜するために用いる製膜用組成物に、上記化合物を添加する方法を挙げることができる。
また他の一例としては、染色工程前、染色工程中、染色工程後の少なくともいずれかにおいて、上記化合物をポリビニルアルコール系フィルムに適用する方法を挙げることができる。ここで適用とは、塗布、浸漬、噴霧等の任意の手段によりポリビニルアルコール系フィルムと上記化合物を接触させ、好ましくは吸着ないし浸透させることをいう。そのためには、例えば、先に記載した延伸浴、染色浴、架橋浴、処理液、洗浄液等の液相に、上記化合物を添加する方法を用いることができる。また、他の一例としては、ヨウ素染色後のポリビニルアルコール系フィルムの少なくとも一方の表面に、上記化合物を含む溶液を塗布する方法を挙げることができる。なお上記のように塗布により適用することは、表面または表面を含む表層領域に上記化合物が存在する偏光子層を得る方法として、好ましい。
以上の方法は、1つのみ実施してもよく、2つ以上を組み合わせて実施してもよい。上記いずれの方法を用いる場合にも、偏光子層にポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を所望量含めることができるように製造条件を設定することが好ましい。偏光子層におけるポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の含有量は、上記化合物とポリビニルアルコール系樹脂との相溶性も考慮すると、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲とすることが好ましく、0.01〜10質量部の範囲とすることがより好ましく、1〜10質量部の範囲とすることが更に好ましい。
【0154】
ヨウ素染色後のポリビニルアルコール系フィルムの少なくとも一方の表面に、上記化合物を含む溶液を塗布する方法を用いる場合、塗布液の溶媒としては、特に限定されるものではない。1種または2種以上の溶媒を任意の割合で混合して用いることができる。溶媒としては、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が高い溶解性を示す溶媒が好ましく、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物に応じて適宜選択すればよい。一例として、メチルエチルケトン、メチレンクロライド、メタノール、酢酸メチル、テトラヒドロフラン(THF)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、塗布液におけるポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物濃度は、例えば、0.0005〜50mol/L程度とすることができる。塗布液の塗布量は、例えば、1〜60ml/m
2程度とすることができる。
【0155】
(ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む接着剤層を形成する方法)
偏光板には、偏光子層と他の層との密着性、または偏光板と他の部材との密着性を高めるために、偏光子層に隣接する層として、接着剤層が設けられることがある。そのような場合、粘着剤層に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含めることもできる。接着剤層におけるポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の含有量は、樹脂との相溶性も考慮すると、接着剤層を構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜10質量部の範囲であることがより好ましく、1〜10質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0156】
接着剤層に用いられる樹脂としては、特に限定されず、接着剤を有する公知の樹脂を何ら制限なく用いることができる。接着剤として、粘性を有するもの(粘着剤)を用いてもよく、乾燥や反応により接着性を発現する接着剤を用いてもよい。本発明における接着剤は、接着剤および粘着剤の両方を意味するものである。
接着剤層は、通常、樹脂が最も多くを占める成分(主成分)として含む。樹脂は、通常は、接着剤層の30質量%以上、例えば90質量%以下、を占める。好ましくは接着剤層の70質量%以上を占める。樹脂は、複数の樹脂を混合させた混合物であってもよい。混合物としては、例えば、樹脂の一部を変性したポリマーの混合物、または異なるモノマーを反応させて合成した樹脂などのように、主骨格の構造がほぼ同一の成分の混合体などが挙げられる。なお樹脂が混合物の場合には、混合物の総量が上記範囲であることをいう。
【0157】
接着剤層は例えば、接着剤を所定の割合で含有する塗布液を、偏光子層、任意に設けられる他の層(例えば偏光板保護フィルム)等の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥させることで形成される。塗布液の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布液としては、例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
【0158】
接着剤としては、目的に応じて任意の適切な性質、形態および接着機構を有する接着剤が用いられ得る。具体的には、接着剤として、例えば、水溶性接着剤、紫外線硬化型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、およびサポーテッドフィルム接着剤、熱可塑型接着剤、熱溶融型接着剤、熱固化接着剤、ホットメルト接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤、溶剤活性接着剤等が挙げられ、水溶性接着剤および紫外線硬化型接着剤が好ましい。特に、偏光子層に隣接する接着剤層には、ポリビニルアルコール系樹脂との親和性の観点から、水溶性接着剤、紫外線硬化型接着剤が好ましく用いられる。
【0159】
水溶性接着剤は、例えば、水に可溶な天然高分子および合成高分子の少なくとも一方を含有してもよい。天然高分子としては、例えば、たんぱく質や澱粉等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、レゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤は、ポリビニルアルコール系フィルム(偏光子層)との密着性に優れるため、偏光子層に隣接する接着剤層に用いることが好ましい。
【0160】
なお、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤から形成した接着剤層が偏光子層に隣接する場合、接着剤層と偏光子層が一体化し一層とみなし得る状態になる場合がある。
【0161】
また、接着剤層は、金属化合物、好ましくは金属化合物コロイドを含むことができる。その詳細については、特開2012−014148号公報段落0079〜0083を参照できる。
【0162】
その他の添加剤としては、例えば、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などの、通常、偏光板の接着剤層に用いられる各種添加剤の一種または二種以上を用いてもよい。添加剤を配合する場合、その量は、樹脂(接着剤)に対し、40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%であることがより好ましい。
【0163】
また、接着剤層は、ホウ酸などの架橋剤を含んでもよい。ホウ酸については、接着剤層中に含有させることで、接着剤層を構成する樹脂中のヒドロキシル基の結合と架橋構造(ホウ酸架橋)を形成することにより、偏光子層と接着剤層との層間や、任意に設けられる偏光板保護フィルムと接着剤層との層間において、層間の密着性を向上させることができると考えられる。例えば、偏光板保護フィルムは、通常、鹸化処理等が行われるが行われるため、表面にヒドロキシル基を有する。セルロースエステル系樹脂から形成された偏光板保護フィルムは、鹸化処理により表面に多数のヒドロキシル基を有するものとなる。また、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂やシクロオレフィン系樹脂から形成された偏光板保護フィルムも、鹸化などの表面処理等により表面にヒドロキシル基を有するものとなり得る。このように鹸化処理等により表面にヒドロキシル基を有するものとなった偏光板保護フィルムと隣接する接着剤層に、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物、中でも一般式(I)で表される化合物とホウ酸とを含めることにより、接着剤層と偏光子層との間、および接着剤層と偏光板保護フィルムとの間のホウ酸架橋を促進することができる。これにより、偏光子層と偏光板保護フィルムとの密着性を、より向上することができる。
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む接着剤層においては、ホウ酸を配合する場合、その量は、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物100質量部に対し、0.1質量部以上10000質量部以下とすることが好ましく、1質量部以上1000質量部以下とすることがより好ましい。上記のような架橋剤とポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む接着剤層は、ヒドロキシル基を多数有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂やセルロースエステル系樹脂から形成された層と隣接する層として設けることがいっそう好ましい。
【0164】
接着剤層の厚みは、適宜、設定することができる。具体的には、接着剤層に粘着剤を用いる場合、接着剤層の厚みは、好ましくは、0.1〜50μmの範囲であり、より好ましくは、0.5〜20μmの範囲であり、更に好ましくは、1〜15μmの範囲であり、特に好ましくは、5〜10μmの範囲である。一方、接着剤層に接着剤を用いる場合、接着剤層の厚みは、好ましくは、10〜500nmの範囲であり、より好ましくは、10〜400nmの範囲であり、更に好ましくは、20〜350nmの範囲である。接着剤層は、接着剤や粘着剤を、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、バーコート法等の公知の塗布方法により、偏光子層や任意に設けられる偏光板保護フィルムの表面に塗布することにより、形成することができる。
【0165】
接着剤層は、使用する形態に応じて偏光子層の一方の表面上に直接またはプライマー層(易接着層とも称する)等の他の層を介して間接的に設けてもよく、両方の表面上に設けてもよい。なお接着剤層は、偏光子層に隣接しない層としても形成することができ、その場合の接着剤層にポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物が含まれていてもよい。別態様では、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、偏光子層に隣接する接着剤層に含めることができる。
【0166】
(ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む偏光板保護フィルムを形成する方法)
偏光板は、任意に、一層以上の偏光板保護フィルムを有することもできる。ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物は、偏光板保護フィルムに含まれていてもよい。
【0167】
偏光板保護フィルムにおけるポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の含有量は、樹脂との相溶性も考慮すると、偏光板保護フィルムを構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜10質量部の範囲であることがより好ましく、1.0〜10質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0168】
偏光板保護フィルムの原料として、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィンマレイミド系樹脂やグルタルイミド系樹脂などのイミド系樹脂を挙げることができ、これらを単独または混合して用いることができる。上記樹脂のなかでも、分子の配向による複屈折、および、光弾性係数の比較的小さい、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、イミド系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂を好ましく用いることができる。偏光板保護フィルムにおいて、樹脂は5〜99質量%を占めることができ、20〜99質量%を占めることが好ましく、50〜95質量%を占めることがより好ましい。
【0169】
偏光板保護フィルムにポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含めるためには、偏光板保護フィルム製膜用組成物(ドープ)に、上記化合物を添加して製膜を行う方法や、前述の塗布方法によりフィルムの表面に吸着または表層領域に浸透させる方法などを用いることができる。偏光板保護フィルム製膜用組成物中のポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物の含有量は、偏光板保護フィルムを構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることが更に好ましい。
【0170】
ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む偏光板保護フィルムは、偏光板保護フィルム製膜用組成物に上記化合物を添加する点を除けば、偏光板保護フィルムの製膜方法として公知の方法を、何ら制限なく用いることができる。例えば、溶融製膜法または溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により、ポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む偏光板保護フィルムを製膜することができる。
【0171】
偏光板保護フィルムを構成する樹脂や添加剤とその製造方法については、特開2005−104149号公報や、特開2012−014148号公報の段落0034〜0040も参照できる。
【0172】
なおポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含まない偏光板保護フィルムとして、市販の、または公知の偏光板保護フィルムを用いることもできる。一例としては、市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)、特開2006−58322号公報に記載の脂環式構造含有重合体樹脂フィルム、特開2009−122644号公報に記載のアクリル系樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0173】
偏光板保護フィルムは、偏光子層表面上に直接、または接着剤層等の他の層を一層以上介して間接的に設けることができる。また、偏光子層の片面または両面に、偏光板保護フィルムを設けることができる。
【0174】
本発明の一態様にかかる偏光板が2枚の偏光板保護フィルムを含む場合は、ともに同じ偏光板保護フィルムであっても、異なる偏光板保護フィルムであってもよい。偏光板保護フィルムの厚さは、通常、5〜300μmであり、好ましくは10〜200μm、更に好ましくは15〜100μmである。
【0175】
<偏光板に設けられ得る他の層>
本発明の一態様にかかる偏光板は、ディスプレイの視認性や機械特性向上のために、位相差層、反射防止層、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有することもできる。そのような機能層を、偏光板保護フィルムに積層する形態や、機能層を有するフィルムや光学補償フィルム、輝度向上フィルムなどの光学フィルムと複合した機能化偏光板であってもよい。機能化のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、他の機能性光学フィルム、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア層については、特開2007−86748号公報の段落0257〜0276を参照できる。
【0176】
本発明の一態様にかかる偏光板は、さらに、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗り層や保護層等の機能層を設けた機能性光学フィルムとして使用することもできる。これらの機能層は、偏光子層側および偏光子層と反対面(より空気側の面)のどちらか片面、または両面に設けて使用できる。これらの偏光板保護フィルムに複合化できる機能については、特開2005−104149号公報や、特開2012−014148号公報段落0139〜0160などを参照することができる。
【0177】
なお上記偏光板の一態様としては、偏光子層に、ヨウ化化合物およびヨウ素含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−低減能を示す化合物を含まない偏光板を挙げることもできる。ここで、ヨウ化化合物およびヨウ素含有溶液中でのポリヨウ化物イオンI
5−低減能は、以下の方法により測定される値とする。以下に記載の操作は、特記しない限り、大気中、室温下(25℃、相対湿度40%RH)で行うこととする。そのような化合物の具体例としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クロロゲン酸、クエン酸、ロスマリン酸、チオ硫酸、亜硫酸、およびこれらの塩からなる群から選択される化合物を挙げることができる。また、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等を挙げることができる。ここで「含まない」とは、偏光子層を形成するための成分として用いられていないことを意味し、偏光板の作製後、偏光子層以外の層から移行してきた結果、上記化合物が偏光子層に含まれることは「含まない」には包含されないものとする。また、以下では、ヨウ化化合物としてヨウ化カリウムを用いる方法を例にとり説明するが、ヨウ化化合物としては、例えば先に記載したヨウ化化合物を用いてもよい。
(1)混合溶媒(水:メタノール=4:6(体積比))にヨウ化カリウム(KI)およびヨウ素I
2を添加し十分に撹拌して、KI/I
2溶液(KI濃度:96.4mmol/L、I
2濃度:0.63mmol/L)を調製する。
調製したKI/I
2溶液の一部を、以下の対象化合物溶液の調製に使用し、他の一部を以下の参照溶液として用いる。
(2)KI/I
2溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−低減能を示すか否かを判定する対象化合物を、上記KI/I
2溶液に0.63mmol/Lの濃度となるように添加し十分に撹拌し混合する。こうして調製された対象化合物溶液を含むビーカーを、参照溶液を含むビーカーとともに、温湿制御なしの室温下で48時間放置する。なお放置時間は、対象化合物をKI/I
2溶液を添加した時点を開始時として計測するものとする。
(3)その後、ビーカーから対象化合物溶液の一部を採取し、混合溶媒(水:メタノール=4:6(体積比))で10倍に希釈して、幅(透過光の透過距離)1cmのセルを用いて分光光度計により波長355nmにおける吸光度を測定する。
(4)参照溶液についても、対象化合物溶液と同様に吸光度測定を行う。
(5)対象化合物溶液の波長355nmにおける吸光度(A
sample)が、参照溶液の波長355nmにおける吸光度(A
ref.)を下回る場合、即ち、A
sample<A
ref.である場合、対象化合物はヨウ化化合物およびヨウ素含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−低減能を示す化合物であると判定する。
また、以上の測定によって求められた波長355nmにおける吸光度(A
sample)が、参照溶液の波長355nmにおける吸光度(A
ref.)を下回らなかった対象化合物溶液については、溶液に不活性ガスを通気させ溶液中の残存酸素を排除した後に、再度吸光度測定を行う。その結果得られた吸光度(A
sample)が、参照溶液の波長355nmにおける吸光度(A
ref.)を下回った場合、対象化合物はヨウ化化合物およびヨウ素含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−低減能を示す化合物であると判定する。不活性ガスの通気は、窒素ガスを、例えば10〜20分間バブリングすることにより行うことができる。バブリングした後に温度制御なしの室温下で48時間放置する間は、空気中の酸素に触れないように密閉して保管する。
ただし、調製直後の対象化合物溶液が、波長355nmに吸収を有する場合には、室温放置前、例えば上記開始時から10分以内、の対象化合物溶液の波長355nmにおける吸光度を、上記測定で求めた吸光度から差し引いた値を、ポリヨウ化物イオンI
5−低減能を示すか否かの判定に用いることとする。
なお上記の通り、分光光度計による吸光度測定は、測定対象溶液の測定結果とブランク溶液の測定結果との対比により行われる。ブランク溶液の測定(ブランク試験)は、セルの影響を排除ないし低減するため、対象化合物溶液の吸光度測定に用いたセルと同じセルを用いて行うこととする。ブランク溶液としては、対象化合物溶液の調製に用いた混合溶媒(対象化合物ならびにヨウ化化合物およびヨウ素未含有)を用いる。
【0178】
<偏光板の形状>
偏光板の形状としては、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用偏光板とするためには、偏光板の幅は1000mm以上とすることが好ましい。
【0179】
<偏光板の性能>
本発明の一態様にかかる偏光板は、少なくともいずれかの層に、ヨウ化化合物含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含むものである。これにより、高温高湿下での偏光性能低下を防ぐことができ、一態様では、偏光性能が改善されることもあり得る。
偏光板の性能および耐久性は、特定の環境下における偏光板の直交透過率変化を測定することにより評価することができる。具体的評価方法を、以下に記載する。
【0180】
(直交透過率CT)
波長410nmの直交透過率CTは、CT≦2.0であることが好ましく、より好ましい範囲としてはCT≦1.3であり、更に好ましくはCT≦0.6(単位はいずれも%)、いっそう好ましくはCT≦0.05である。波長410nmの直交透過率が低いほど、波長410nm付近での光漏れは少ない。これに対し、波長410nmの直交透過率が高いほど波長410nm付近での光漏れが多くディスプレイの黒表示が青みを呈するようになる。したがって、色再現性の観点からは、波長410nmの直交透過率は低いことが好ましい。上記の直交透過率が低いことは、偏光性能が良好であることを意味している。直交透過率は、例えば、後述の実施例で用いた測定装置により測定することができる。
【0181】
(直交透過率変化量)
高温高湿下での耐久性評価の指標としては、偏光板が高温高湿下に所定期間置かれた前後の上記直交透過率の変化量を用いることができる。例えば、温度60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置したときの波長410nmの直交透過率の変化量[変化量=(放置後の直交透過率(%))−(放置前の直交透過率(%))]が0.03%以下であることが好ましく、変化量がゼロ以下であることがより好ましく、変化量が負の値、即ち放置後の直交透過率が放置前の直交透過率よりも小さくなることが更に好ましい。これは、高温高湿下での静置中に、偏光性能が向上したことを意味する。本発明の一態様では、高温高湿下での偏光性能低下を防ぐことに加えて、偏光性能を向上させることも可能である。
【0182】
なお、以上記載した直交透過率は、10回の測定値の平均値を用いるものとする。また、直交透過率変化量は、上記の放置前および放置後に、それぞれ10回測定を行い得られた平均値の差分として求めるものとする。
【0183】
(その他の特性)
偏光板が有することが好ましい光学特性等については特開2007−086748号公報の段落0238〜0255に記載されている。本発明の一態様にかかる偏光板は、これらの特性を満たすことが好ましい。
【0184】
<偏光板の製造工程>
偏光板は、偏光子層等の各層を、必要に応じて接着剤層を介して、貼り合わせることにより製造することができる。
【0185】
偏光子層と偏光板保護フィルムを貼り合わせる際には、偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸が平行、直交または45°となるように貼り合せることが好ましい。
なお平行、直交、45°等については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、平行、直交に関する厳密な角度から±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸についての平行とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とのずれが5°以内であることが好ましく、より好ましくは1°以内、更に好ましくは0.5°以内である。ずれが1°以内であれば、偏光板クロスニコル下での偏光性能が低下しにくく、光漏れが特に生じにくく好ましい。
【0186】
偏光板の構成部材としては上記の各層に加えて、液晶セルや有機ELパネル等の表示デバイスの透明基板や、表示装置の保護のために配置される前面板などの部材を挙げることもできる。
【0187】
[液晶表示装置]
次に本発明の一態様にかかる液晶表示装置について説明する。
【0188】
図1は、本発明の一態様にかかる液晶表示装置の例を示す概略図の一例である。
図1において、液晶表示装置10は、液晶層5とこの上下に配置された液晶セル上電極基板3および液晶セル下電極基板6とを有する液晶セル、液晶セルの両側に配置された上側偏光板1および下側偏光板8からなる。液晶セルの上側偏光板1の吸収軸2と下側偏光板8の吸収軸9は直交に積層する。液晶セルと各偏光板との間にカラーフィルターを配置してもよい。液晶表示装置10を透過型として使用する場合は、冷陰極もしくは熱陰極蛍光管、または発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置する。なお
図1において、符号4および7は、配向制御方向である。
【0189】
上側偏光板1および下側偏光板8は、それぞれ2枚の偏光板保護フィルムで偏光子を挟むように積層した構成で用いられることが多いが、液晶表示装置10は、偏光板の液晶セル側の保護フィルムに光学補償フィルムを用いてもよい。または、保護フィルムを有さずに偏光子層と電極基板3や6と接着剤層で直接貼り合わされていてもよい。
液晶表示装置10は、画像直視型、画像投影型、光変調型であってもよい。液晶層5の駆動モードとしては、TNモード、VAモード、IPSモードを含む横電界モード、OCBモード、ECBモード等の既知のいかなるモードを用いることができる。
【0190】
なお、例示していないが、他の構成として、反射型や半透過型の液晶表示装置や有機EL等の自発光素子の反射防止用途として配置される円偏光版の一部として、本発明の一態様にかかる偏光板を用いることもできる。
【実施例】
【0191】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0192】
実施例においては、以下の化合物1−1〜1−6を用いた。
【0193】
【化24】
【0194】
【化25】
【0195】
比較例2、3においては、以下の比較化合物を用いた。
【0196】
【化26】
【0197】
1.化合物の合成例
<化合物1−1(例示化合物A−4)の合成>
以下のスキームにしたがって、例示化合物A−4を合成した。
【0198】
【化27】
【0199】
1)中間体N−ベンジル−N’−フェニル尿素の合成
温度計、還流冷却管および攪拌機を付した5Lのガラス製フラスコにベンジルアミン321gとアセトニトリル2Lを仕込み、水浴で冷却して攪拌しながらイソシアン酸フェニル358gを反応液の内温が40℃以下になる速度で滴下した。そのまま2時間攪拌した後に、水2Lを加えて吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、水1Lで3回洗浄した。得られた結晶を80℃で減圧乾燥して中間体N−ベンジル−N’−フェニル尿素610gを得た。
【0200】
2)中間体1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコに上記1)で合成したN−ベンジル−N’−フェニル尿素5.0g、マロン酸2.5g、トルエン20mL、および無水酢酸5.6gを仕込み、攪拌しながら内温が80℃になるように加熱し、そのまま80℃で3時間攪拌を続けた。その後50℃まで冷却し、水15mLを加えて分液し、水相を廃棄した。有機層を室温で攪拌しながらイソプロパノール5mLを滴下した。さらに10℃以下で0.5時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、冷却したイソプロパノールで洗浄後、乾燥し、中間体1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸4.6gを得た。
【0201】
3)中間体1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコに1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸4.0g、ベンズアルデヒド1.6g、酢酸40mLを仕込み、硫酸1滴を加えて攪拌しながら内温が100℃になるように加熱し、そのまま100℃で3時間攪拌を続けた。その後50℃まで冷却し、イソプロパノール39mLと水17mLの混合溶液を加えて10℃以下で1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、メタノールで洗浄後、中間体1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸3.9gを得た。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRスペクトルで確認した。
【0202】
1H−NMR(300MHz、CDCl
3)、δ:8.70(s,1H)、8.10(d,2H)、7.58−7.20(m,15H)、5.20(s,2H)
【0203】
4)例示化合物A−4の合成
50mlのオートクレーブに1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸3.5g、メタノール8mLを仕込み、Pd−C(10%)0.1gを加えて攪拌しながら、H2を充填し内温が50℃になるように加熱し、そのまま50℃で3時間攪拌を続けた。その後Pd−Cを濾別し、5℃まで冷却し、さらに水4mLを加えて5℃で1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、メタノール/水=1/1の混合溶媒で洗浄後、乾燥し、例示化合物A−4を3.0g得た。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルおよびマススペクトルで確認した。
【0204】
1H−NMR(300MHz、CDCl
3)、δ:7.52−7.16(m,10H)、5.10(s,2H)、3.86(s,2H)
【0205】
実施例、比較例で用いたその他化合物も、上記合成法に準じて、または公知の方法により合成した。得られた化合物の構造は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルおよびマススペクトルで確認した。
【0206】
2.ヨウ化化合物含有溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すか否かの判定
上記各化合物について、先に記載した方法(湯浴中での耐圧試験管の放置時間:2時間)によりヨウ化化合物(ヨウ化カリウム)溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示すか否かを判定した。分光光度計としては、島津製作所社製、UV3100PCを用いた。
各測定において、参照溶液の波長355nmにおける吸光度は0.0であったため、判定には対象化合物溶液の波長355nmにおける吸光度を用いた。
結果を、下記表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
3.偏光板に関する実施例、比較例
[実施例1〜
13、比較例
2、3]
<偏光子(偏光子層)の作製>
原反フィルムとして、ポリビニルアルコールフィルム(クラレ製VF−PS7500;厚さ75μm)を用いた。このポリビニルアルコールフィルムに、下記の順番にて、下記各工程を施した。
【0209】
(膨潤工程)
膨潤浴の処理液としては、純水を用いた。上記ポリビニルアルコールフィルムを膨潤浴に搬送し、30℃に調整した純水中に1分間浸漬して膨潤させつつ、2.2倍に延伸し、膨潤させた。
【0210】
(染色工程)
染色浴の処理液としては、ヨウ素0.045質量%およびヨウ化カリウム0.315質量%を含む30℃のヨウ素染色溶液を用いた。上記膨潤処理されたポリビニルアルコールフィルムを染色浴に搬送し、30℃に調整したヨウ素染色溶液に、30秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率3.3倍になるように延伸して染色した。
【0211】
(架橋工程)
架橋浴の処理液としては、ホウ酸を3質量%、ヨウ化カリウムを3質量%含有する混合水溶液(1)を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを架橋浴に搬送し、30℃に調整した混合水溶液(1)に、30秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率3.6倍になるように延伸した。
【0212】
(延伸工程)
延伸浴の処理液としては、ホウ酸を4質量%、ヨウ化カリウムを5質量%含有する混合水溶液(2)を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを延伸浴に搬送し、60℃に調整した混合水溶液(2)に、60秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率6.0倍になるように延伸した。
【0213】
(洗浄工程)
洗浄浴の処理液としては、ヨウ化カリウムを3質量%含有する水溶液を用いた。上記処理されたポリビニルアルコールフィルムを洗浄浴に搬送し、30℃に調整した上記水溶液に、10秒間浸漬した。
【0214】
(乾燥工程)
次いで、上記処理されたポリビニルアルコール系フィルムを水切りし、テンションをかけた状態で60℃のオーブンで4分間乾燥して、偏光子を得た。
【0215】
<偏光板保護フィルムの貼り付け>
富士フイルム製セルロースアセテートフィルム(商品名フジタックTD80UF)を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフィルム系の偏光板保護フィルムについて表面の鹸化処理を行った。
実施例1〜12については、鹸化処理したセルロースアセテートフィルム系の偏光板保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記にて作製した偏光子層の片側の表面に貼り付けた。この際、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。
実施例13については、上述の方法で鹸化処理したセルロースアセテートフィルム系の偏光板保護フィルムに代えて、東洋紡(株)社製 易接着処理済ポリエステルフィルム(商品名:コスモシャイン 超複屈折タイプ、厚み80μm)を偏光板保護フィルムとして用いて、このフィルムの易接着処理面側を偏光子層側に配置し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記にて作製した偏光子層の片側の表面に貼り付けた。
【0216】
<偏光子層への化合物の適用>
実施例1〜13、比較例2、3については、表2に示した各化合物をMEK(メチルエチルケトン)に溶解し、0.17mol/Lの溶液とした。この溶液を偏光子層の偏光板保護フィルムを貼付した面と反対側の表面に塗布量が26cc/m
2(26ml/m
2)となるようにバーコーターにて塗布し、80℃で90秒間乾燥させた。
作製した偏光板の一部を下記直交透過率測定に付し、他の一部をメタノール/アセトニトリルの混合溶液中に3.5時間浸漬して化合物を抽出して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行った。測定の結果、各化合物の含有量は、ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して0.1質量部であった。
こうして、少なくとも表面または表面を含む表層領域に各化化合物を含む偏光板を作製した。
【0217】
[比較例1]
偏光子層への化合物の適用を行わなかった点以外、実施例1〜12と同様に偏光板を作製した。
【0218】
[比較例4]
偏光子層への化合物の適用を行わなかった点以外、実施例13と同様に偏光板を作製した。
【0219】
4.直交透過率および直交透過率変化量の測定
実施例1〜13、比較例2、3で作製した偏光板を、上記各化合物を適用した表面を粘着剤(綜研化学SK−2057)を介してガラス板と貼り付けることにより偏光板試料(約5cm×5cm)を作製した。
比較例1、4については、偏光板保護フィルムと貼り合せた面と反対の表面を粘着剤を介してガラス板と貼り付けた点以外は、上記と同様として偏光板試料を作製した。
こうして準備した偏光板試料の透過率を、日本分光(株)製自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、10回の測定の平均値として、波長410nmにおける透過率(直交透過率)を求めた。その他測定の詳細は、先に記載した通りとした。
その後、60℃、相対湿度90%RHの環境下で各偏光板試料を500時間経時保存した後に同様の方法で、10回の測定の平均値として、波長410nmにおける直交透過率を測定した。
なお、経時前、経時後の直交透過率の測定は、それぞれ、25℃相対湿度60%RHの環境下で行った。
経時前後の直交透過率の変化を求め、これを偏光板耐久性として評価した。
結果を、下記表3に示す。
【0220】
【表3】
【0221】
表3に示す結果から、表2に示すようにヨウ化化合物溶液中でポリヨウ化物イオンI
5−形成能を示す化合物を含む実施例1〜13の偏光板では、高温高湿下での波長410nmでの直交透過率変化が抑制されていることが確認できる。なお、実施例1〜13の偏光板では、測定した410nm以外の他の波長においても良好な耐久性が得られている。
波長410nmの直交透過率が低い偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、波長410nm付近での光漏れが少なく、ディスプレイの黒表示が青みを呈することが抑制されている。したがって、優れた色再現性を示すことができる。即ち、上記のように高温高湿下での波長410nmでの直交透過率変化が抑制されている偏光板を組み込むことにより、高温高湿経時後にも色再現性に優れる液晶表示装置を提供することが可能となる。