【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0015】
実施例1.N-ドデシル-(2R)-2-O-(α-d-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸アミドの合成
GGAは、d-グリセリン酸カルシウム(Acetobacter tropicalis NBRC16470株を培養する微生物プロセス(Appl. Environ. Microbiol., 2009, 75, 7760-7766)によりグリセリンを原料として製造されたもの、d-体の光学純度は99%以上)とスクロース(和光純薬)を原料に、Sawanganらの方法(T.Sawangwan et al., Org. Biomol. Chem., 2009, 7, 4267-4270)で、スクロースホスホリラーゼによる酵素反応で合成した。
0.8M スクロースおよび0.3M d-グリセリン酸カルシウムを含む50mM MES緩衝液中に、スクロースホスホリラーゼ(オリエンタル酵母)を20U/mLになるように加えて、30℃で7日間静置して反応させた。GAからGGAへの転化率は、56%であった。反応後、溶液中の酵素を85℃で15分間加熱して失活させ、ろ過により酵素を取り除いた。この溶液中のグルコシルグリセリン酸の濃度は、169mMであった。
この溶液(5mL、GGA 0.845mmol)にメタノール3.35mL、1M HCl 1.33mL、1-アミノドデカン 0.3mL (1.33mmol, 和光純薬)を加え、4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium Chloride n-hydrate (DMT-MM)を0.786g(2.67mmol, 和光純薬)加えて、室温(25℃)で撹拌しながら4時間反応させた。反応後、反応溶液中のメタノールを減圧除去し、過剰量のアセトンを加えて沈殿物をろ過して取り除いた。減圧下でアセトンを除去後、粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、クロロホルム/メタノール=85/15で溶出した画分を回収した。溶媒を除去し得られた固体を水に溶解させ、固相抽出カートリッジ(Sep-Pak C18, Waters)に供し、水-メタノールの濃度勾配で吸着させた化合物を溶出させ、70%メタノール水溶液で目的の化合物が溶出していることを確認した。この画分を回収し、メタノールを減圧下で除去し得られた水溶液に、強酸性陽イオン交換樹脂(DOWEX 50Wx8, 100-200mesh, H
+ form, ダウケミカル)を加えてイオン性化合物を吸着させ、ろ過により樹脂を取り除き、減圧下で乾固させることでN-ドデシルグルコシルグリセリン酸アミドの白色固体0.139gを収率24%で得た。
得られた化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)で決定した。
重メタノール中でのNMRスペクトル測定から、水素および炭素骨格を帰属し、N-ドデシル化された2-グルコシル-D-グリセリン酸アミドであることを確認した。
δ
H (CD
3OD, 400MHz) 4.80 (1H, d, J =3.8Hz, glucose-H
1), 4.17 (1H, dd, J =5.0, 3.0Hz, glycerate-H
2), 3.86 (1H, dd, J = 11.8, 3.0Hz, glycerate-H
3a), 3.78-3.82 (3H, m, glucose-H
3, H
6a, H
6b), 3.74 (1H, t, J = 9.3Hz, glucose-H
5), 3.68 (1H, dd, J = 12.3, 5.9Hz, glycerate-H
3b), 3.48 (1H, dd, J =9.7, 3.9Hz, glucose-H
2), 3.33 (1H, d, J =9.6Hz, glucose-H
4), 3.23 (2H, t, J =7.0Hz, -NH-CH
2-), 1.53 (2H, q, J =7.1Hz, -NH-CH
2-CH
2-), 1.25-1.40 (18H, br, -CH
2-), 0.89 (3H, t, J =6.8Hz, -CH
3) ;δ
C (CD
3OD, 100MHz) 172.5 (C=O, glycerate-C
1), 100.8 (glucose-C
1), 80.9 (glycerate-C
2), 74.9 (glucose-C
3), 74.5 (glucose-C
5), 73.3 (glucose-C
2), 71.6 (glucose-C
4), 64.2 (glycerate-C
3), 62.5 (glucose-C
6), 40.3 (-NH-CH
2-CH
2-), 33.1-23.7 (-CH
2-), 14.4(-CH
3)
LC/MS分析は、逆相クロマトグラム用カラムSynergi 4u Fusion-RP (phenomenex, 2 mm ID x 150mm、40℃)を用い、0.1%ギ酸/アセトニトリル(A/B)のグラジエント(A/B=50/50で2分保持, 50/50から5/95へ10分で変化, 5/95で2分保持、5/95から50/50に2分で戻し、50/50で4分保持)によりカラムより目的化合物を溶出させ、エレクトロスプレーイオン化MSにより、m/z=50-2000の範囲の正および負イオンを検出した。
クロマトグラム上の保持時間約4.7分の単一ピークのMSスペクトルから、N-ドデシルグルコシルグリセリン酸の分子量(M)=435に対し、[M+H]
+(m/z=436)、[M+Na]
+(m/z=458)、[2M+Na]
+(m/z=872)が正イオンとして、[M-H]
-(m/z=434)、[M+HCOO]
-(m/z=480)、[2M-H]
-(m/z=869)、[2M+HCOO]
-(m/z=916)が負イオンとして観測されたことから、このピークの化合物の分子量は435であり、NMRスペクトルの解析と合わせて、N-ドデシル-2-グルコシル-D-グリセリン酸アミドであると決定した。
【0016】
実施例2.N-ドデシル-(2R)-2-O-(α-d-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸アミドの界面活性機能の評価
N-ドデシル-2-グルコシル-D-グリセリン酸アミドの界面物性を評価するため、ペンダントドロップ法により、これを添加することによる水の表面張力低下能を測定した。その結果を、
図4に示す。臨界ミセル濃度(CMC)は4.6×10
-4Mであり、CMCでの表面張力は33.0mN/mであった。
N-ドデシル-2-グルコシル-D-グリセリン酸アミドの乳化能を、水/大豆油=40/1におけるO/W型エマルションの形成により評価した。水4mLに0.025wt%の濃度で各界面活性剤を溶解させ、そこに大豆油0.1mLを添加し、1分間激しく混和した。室温(25℃)で3時間静置後、溶液下層の濁度を、分光光度計を用いて620nmの波長で評価した。その結果を、
図5に示す。3時間経過後の溶液は、N-ドデシル-2-グルコシル-D-グリセリン酸アミド(
図5ではaGGA)を含む溶液が、同じく炭素数12の鎖状部分を含む他の界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(
図5ではSDS)、および、モノラウリン酸グリセロール(
図5ではモノラウリン))を含む溶液よりも濁度が大きく、安定な乳化相を形成することが分かった。