特許第6404172号(P6404172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404172膜厚測定方法、膜厚測定装置、研磨方法、および研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404172
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】膜厚測定方法、膜厚測定装置、研磨方法、および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20181001BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20181001BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20181001BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G01B11/06 G
   B24B49/04 Z
   B24B49/12
   H01L21/304 622S
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-79459(P2015-79459)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-200459(P2016-200459A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年11月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金馬 利文
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−92454(JP,A)
【文献】 特開2015−8303(JP,A)
【文献】 特開2014−216457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/163649(US,A1)
【文献】 特開2013−222856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
B24B 41/00−51/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が形成された基板に光を照射し、
前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、
前記選択規準を決定する工程は、
前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、
前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項2】
表面に膜が形成された基板に光を照射し、
前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、
前記選択規準を決定する工程は、
前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、
前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、
最も多く特定された膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項3】
前記複数の極大値は、しきい値との比較に基づいて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記しきい値は、過去の膜厚測定結果から決定された値であることを特徴とする請求項3に記載の膜厚測定方法。
【請求項5】
前記参照基板の膜厚測定は、前記参照基板を水研磨しながら実行されることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項6】
表面に膜が形成された基板に光を照射する投光部と、
前記基板からの反射光を受ける受光部と、
前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、
前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部とを備え、
前記処理部は、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、
前記選択規準は、
前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、
前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項7】
表面に膜が形成された基板に光を照射する投光部と、
前記基板からの反射光を受ける受光部と、
前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、
前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部とを備え、
前記処理部は、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、
前記選択規準は、
前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、
前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、
最も多く特定された膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記複数の極大値を、しきい値との比較に基づいて決定することを特徴とする請求項6または7に記載の膜厚測定装置。
【請求項9】
研磨面を有する研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルを回転させながら、場所によって厚さが異なる膜が表面に形成された基板を前記研磨面に押し付け、
前記研磨テーブルが1回転するたびに、前記基板の複数の測定点に光を照射し、
前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であって、研磨される基板の構造によって変わりうることを特徴とする研磨方法。
【請求項10】
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定されることを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項11】
前記選択された膜厚が予め設定された目標値に達した場合には、前記基板の研磨を終了する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記目標値にオフセット値を加算して補正目標値を算出する工程をさらに含み、
前記選択された膜厚が前記補正目標値に達した場合に、前記基板の研磨を終了することを特徴とする請求項11に記載の研磨方法。
【請求項13】
前記複数の極大値は、しきい値との比較に基づいて決定されることを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項14】
記選択規準を決定する工程は、
前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、
前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の研磨方法。
【請求項15】
記選択規準を決定する工程は、
前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、
前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、
最も多く特定された膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の研磨方法。
【請求項16】
研磨面を有する研磨パッドを支持する回転可能な研磨テーブルと、
場所によって厚さが異なる膜が表面に形成された基板を前記研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨テーブルが1回転するたびに、前記基板の複数の測定点に光を照射する投光部と、
前記基板からの反射光を受ける受光部と、
前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、
前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部と、
前記基板の研磨を制御する研磨制御部とを備え、
前記処理部は、
前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、
前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、
前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、
前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であって、研磨される基板の構造によって変わりうることを特徴とする研磨装置。
【請求項17】
前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定されることを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項18】
前記研磨制御部は、前記選択された膜厚が予め設定された目標値に達した場合には、前記基板の研磨を終了させることを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項19】
前記研磨制御部は、前記目標値にオフセット値を加算して補正目標値を算出し、前記選択された膜厚が前記補正目標値に達した場合に、前記基板の研磨を終了させることを特徴とする請求項18に記載の研磨装置。
【請求項20】
前記処理部は、前記複数の極大値を、しきい値との比較に基づいて決定することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項21】
記選択規準は、
前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、
前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項22】
記選択規準は、
前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、
前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、
最も多く特定された膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜が表面に形成されている基板(例えばウェハ)の膜厚測定方法および膜厚測定装置に関し、特に基板からの反射光に含まれる光学情報を解析することにより膜厚を検出する膜厚測定方法および膜厚測定装置に関する。また、本発明は、そのような膜厚測定方法および膜厚測定装置を利用した研磨方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスには、SiOなどの絶縁膜を研磨する工程や、銅、タングステンなどの金属膜を研磨する工程などの様々な工程が含まれる。裏面照射型CMOSセンサおよびシリコン貫通電極(TSV)の製造工程では、絶縁膜や金属膜の研磨工程の他にも、シリコン層(シリコンウェハ)を研磨する工程が含まれる。
【0003】
ウェハの研磨は、その表面を構成する膜(絶縁膜、金属膜、シリコン層など)の厚さが所定の目標値に達したときに終了される。したがって、ウェハの研磨中は、膜厚が測定される。膜厚測定方法の例として、特許文献1,2に開示されている光学的膜厚測定方法がある。この方法によれば、ウェハの研磨中に膜厚センサから光がウェハに照射され、ウェハからの反射光の強度と周波数との関係を示す分光波形が取得され、分光波形にフーリエ変換処理を行って周波数スペクトルが取得され、得られた周波数スペクトルのピークから膜厚が決定される。
【0004】
図12は、分光波形の一例を示すグラフである。図12において、縦軸はウェハからの反射光の強度を示す相対反射率を表し、横軸は反射光の周波数を表す。相対反射率とは、反射光の強度を示す指標値であり、光の強度と所定の基準強度との比である。各波長において光の強度(実測強度)を所定の基準強度で割ることにより、装置の光学系や光源固有の強度のばらつきなどの不要なノイズが実測強度から除去される。
【0005】
基準強度は、各波長について予め取得された強度であり、相対反射率は各波長において算出される。具体的には、各波長での光の強度(実測強度)を、対応する基準強度で割り算することにより相対反射率が求められる。基準強度は、例えば、膜厚センサから発せられた光の強度を直接測定するか、または膜厚センサから鏡に光を照射し、鏡からの反射光の強度を測定することによって得られる。あるいは、基準強度は、膜が形成されていないシリコンウェハ(ベアウェハ)を水の存在下で水研磨しているときに得られた光の強度としてもよい。実際の研磨では、実測強度からダークレベル(光を遮断した条件下で得られた背景強度)を引き算して補正実測強度を求め、さらに基準強度から上記ダークレベルを引き算して補正基準強度を求め、そして、補正実測強度を補正基準強度で割り算することにより、相対反射率が求められる。具体的には、相対反射率R(λ)は、次の式を用いて求めることができる。
【数1】
ここで、λは波長であり、E(λ)はウェハから反射した波長λでの光の強度であり、B(λ)は波長λでの基準強度であり、D(λ)は光を遮断した条件下で取得された波長λでの背景強度(ダークレベル)である。
【0006】
図13は、図12に示す分光波形にフーリエ変換処理を行って得られた周波数スペクトルを示すグラフである。図13において、縦軸は分光波形に含まれる周波数成分の強度を表し、横軸は膜厚を表す。周波数成分の強度は、正弦波として表される周波数成分の振幅に相当する。分光波形に含まれる周波数成分は、所定の関係式を用いて膜厚に変換され、図13に示すような膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトルが生成される。上述した所定の関係式は、周波数成分を変数とした、膜厚を表す一次関数であり、膜厚の実測結果または光学的膜厚測定シミュレーションなどから求めることができる。
【0007】
図13に示すグラフにおいて、厚さt1のときに、周波数成分の強度が最も大きくなる。つまり、この周波数スペクトルは、膜の厚さがt1であることを示している。このようにして、周波数スペクトルのピークから、膜の厚さが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−110390号公報
【特許文献2】特開2014−216457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図12に示す分光波形および図13に示す周波数スペクトルは、図14に示すウェハ構造からの反射光を使用して生成される。図13に示す周波数スペクトルから得られた膜厚t1は、図14の下地層101上に形成された露出層100の厚さを示している。しかしながら、図15に示すように、下地層101の下にさらに下層102が存在することに起因して、反射光に含まれる光学情報が変わることがある。別の例では、図16に示すように、下地層101に段差が存在することに起因して、露出層100の厚さが場所によって異なることがある。これらの場合、図17に示すように、分光波形が変形し、結果として、図18に示すように複数のピークが周波数スペクトルに現れる。通常、周波数成分の強度の低いもの、すなわちピークの低いものはノイズである場合が多い。そこで、複数のピーク値が発生した場合、最も高いピーク値を示す膜厚が測定結果として選択される。この規準に従えば、図18の例では、最も高いピーク値を示す膜厚t1が選択される。
【0010】
しかしながら、ピーク値(極大値)は、ウェハの測定点によって変化することがある。例えば、ウェハ上の第1の測定点では図18に示すような周波数スペクトルが得られ、第2の測定点では図19に示すような周波数スペクトルが得られることがある。さらに、第3の測定点では、再び図18に示すような周波数スペクトルが得られることがある。
【0011】
このようなピーク値(極大値)の変動は、膜厚t1を有する領域と膜厚t2を有する領域との面積比、ノイズ、その他の原因に起因する。特に、ウェハを研磨しながら膜厚を測定する場合には、ウェハおよび膜厚センサが相対移動するために、比較的広い領域に光が照射され、ピーク値が変動しやすい。このように、ウェハ構造および測定条件によっては、測定点ごとにピーク値が変化し、選択すべき膜厚が測定点ごとに変わることがある。
【0012】
そこで、本発明は、基板構造および測定条件に影響されずに、正確な膜厚を測定することができる膜厚測定方法および膜厚測定装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような膜厚測定方法および膜厚測定装置を利用した研磨方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、表面に膜が形成された基板に光を照射し、前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、前記選択規準を決定する工程は、前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする膜厚測定方法である。
本発明の一態様は、表面に膜が形成された基板に光を照射し、前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、前記選択規準を決定する工程は、前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、最も多く特定された膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする膜厚測定方法である。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記複数の極大値は、しきい値との比較に基づいて決定されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記しきい値は、過去の膜厚測定結果から決定された値であることを特徴とする
発明の好ましい態様は、前記参照基板の膜厚測定は、前記参照基板を水研磨しながら実行されることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、表面に膜が形成された基板に光を照射する投光部と、前記基板からの反射光を受ける受光部と、前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部とを備え、前記処理部は、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、前記選択規準は、前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする膜厚測定装置である。
本発明の他の態様は、表面に膜が形成された基板に光を照射する投光部と、前記基板からの反射光を受ける受光部と、前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部とを備え、前記処理部は、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であり、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定され、前記選択規準は、前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、最も多く特定された膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする膜厚測定装置である。
本発明の好ましい態様は、前記処理部は、前記複数の極大値を、しきい値との比較に基づいて決定することを特徴とする
【0017】
本発明のさらに他の態様は、研磨面を有する研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルを回転させながら、場所によって厚さが異なる膜が表面に形成された基板を前記研磨面に押し付け、前記研磨テーブルが1回転するたびに、前記基板の複数の測定点に光を照射し、前記基板からの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する工程を含み、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であって、研磨される基板の構造によって変わりうることを特徴とする研磨方法である。
本発明の好ましい態様は、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記選択された膜厚が予め設定された目標値に達した場合には、前記基板の研磨を終了する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記目標値にオフセット値を加算して補正目標値を算出する工程をさらに含み、前記選択された膜厚が前記補正目標値に達した場合に、前記基板の研磨を終了することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の極大値は、しきい値との比較に基づいて決定されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記選択規準を決定する工程は、前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記選択規準を決定する工程は、前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、最も多く特定された膜厚を選択する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、研磨面を有する研磨パッドを支持する回転可能な研磨テーブルと、場所によって厚さが異なる膜が表面に形成された基板を前記研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨テーブルが1回転するたびに、前記基板の複数の測定点に光を照射する投光部と、前記基板からの反射光を受ける受光部と、前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、前記反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成する処理部と、前記基板の研磨を制御する研磨制御部とを備え、前記処理部は、前記分光波形にフーリエ変換処理を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、前記周波数成分の強度の複数の極大値を決定し、前記複数の極大値にそれぞれ対応する複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択するように構成されており、前記予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかであり、Nは予め定められた自然数であって、研磨される基板の構造によって変わりうることを特徴とする研磨装置である。
本発明の好ましい態様は、前記予め設定された選択規準は、前記基板と同一構造を有する参照基板の膜厚を、前記基板と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨制御部は、前記選択された膜厚が予め設定された目標値に達した場合には、前記基板の研磨を終了させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨制御部は、前記目標値にオフセット値を加算して補正目標値を算出し、前記選択された膜厚が前記補正目標値に達した場合に、前記基板の研磨を終了させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記処理部は、前記複数の極大値を、しきい値との比較に基づいて決定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記選択規準は、前記参照基板の膜厚測定中に決定された複数の極大値の変動の大きさを計算し、前記変動の大きさが最も小さい極大値に対応する膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記選択規準は、前記参照基板の膜厚測定中において複数の極大値が決定されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、前記最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、最も多く特定された膜厚を選択することによって決定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
周波数スペクトルのピークの大きさに基づいて膜厚を選択する従来の方法とは異なり、予め設定された選択規準に従って膜厚が選択される。具体的には、N番目に大きい膜厚、またはN番目に小さい膜厚が選択される。したがって、極大値(ピーク値)の変動に影響されず、安定した膜厚測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る研磨装置を示す図である。
図2】一実施形態に係る光学式膜厚測定器を備えた研磨装置を示す模式断面図である。
図3】光学式膜厚測定器の原理を説明するための模式図である。
図4】ウェハと研磨テーブルとの位置関係を示す平面図である。
図5】処理部によって生成された周波数スペクトルを示す図である。
図6】処理部によって生成された周波数スペクトルの他の例を示す図である。
図7】ウェハ上の複数の測定点を示す図である。
図8】2つの極大値が測定時間とともに変動する様子を示すグラフである。
図9】参照ウェハの水研磨中において、最も大きい極大値に対応する膜厚として特定された膜厚を測定時間に沿って並べたグラフである。
図10】参照ウェハの研磨中に取得された、予め設定された仮のしきい値よりも大きい極大値に対応する膜厚を示すグラフである。
図11】仮のしきい値を大きくしたときに選別された極大値に対応する膜厚を示すグラフである。
図12】分光波形の一例を示すグラフである。
図13図12に示す分光波形にフーリエ変換処理を行って得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
図14】ウェハ構造の一例を示す断面図である。
図15】ウェハ構造の他の例を示す断面図である。
図16】ウェハ構造のさらに他の例を示す断面図である。
図17】分光波形の他の例を示すグラフである。
図18】複数のピークを持つ周波数スペクトルを示すグラフである。
図19】複数のピークを持つ周波数スペクトルの他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨面1aを有する研磨パッド1が取り付けられた研磨テーブル3と、基板の一例であるウェハWを保持しかつウェハWを研磨テーブル3上の研磨パッド1に押圧しながら研磨するための研磨ヘッド5と、研磨パッド1に研磨液(例えばスラリー)を供給するための研磨液供給ノズル10と、ウェハWの研磨を制御する研磨制御部12とを備えている。
【0022】
研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブルモータ19に連結されており、このテーブルモータ19により研磨テーブル3が矢印で示す方向に回転されるようになっている。この研磨テーブル3の上面には研磨パッド1が貼付されており、研磨パッド1の上面がウェハWを研磨する研磨面1aを構成している。研磨ヘッド5は研磨ヘッドシャフト16の下端に連結されている。研磨ヘッド5は、真空吸引によりその下面にウェハWを保持できるように構成されている。研磨ヘッドシャフト16は、図示しない上下動機構により上下動するようになっている。
【0023】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド5および研磨テーブル3をそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル10から研磨パッド1上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、研磨ヘッド5は、ウェハWを研磨パッド1の研磨面1aに押し付ける。ウェハWの表面は、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用により研磨される。
【0024】
研磨装置は、ウェハWの膜厚を測定する光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25を備えている。この光学式膜厚測定器25は、ウェハWの膜厚に従って変化する光学信号を取得する膜厚測定ヘッド31と、光学信号から膜厚を決定する処理部32とを備えている。膜厚測定ヘッド31は研磨テーブル3の内部に配置されており、処理部32は研磨制御部12に接続されている。膜厚測定ヘッド31は、記号Aで示すように研磨テーブル3と一体に回転し、研磨ヘッド5に保持されたウェハWの光学信号を取得する。膜厚測定ヘッド31は処理部32に接続されており、膜厚測定ヘッド31によって取得された光学信号は処理部32に送られるようになっている。
【0025】
図2は、光学式膜厚測定器25を備えた研磨装置を示す模式断面図である。研磨ヘッドシャフト16は、ベルト等の連結手段17を介して研磨ヘッドモータ18に連結されて回転されるようになっている。この研磨ヘッドシャフト16の回転により、研磨ヘッド5が矢印で示す方向に回転する。
【0026】
上述したように、光学式膜厚測定器25は、膜厚測定ヘッド31と処理部32とを備える。膜厚測定ヘッド31は、ウェハWの表面に光を導き、ウェハWからの反射光を受け、その反射光を波長に従って分解するように構成されている。膜厚測定ヘッド31は、光をウェハWの表面に照射する投光部42と、ウェハWから戻ってくる反射光を受ける受光部としての光ファイバー43と、ウェハWからの反射光を波長に従って分解し、所定の波長範囲に亘って反射光の強度を測定する分光器44とを備えている。
【0027】
研磨テーブル3には、その上面で開口する第1の孔50Aおよび第2の孔50Bが形成されている。また、研磨パッド1には、これら孔50A,50Bに対応する位置に通孔51が形成されている。孔50A,50Bと通孔51とは連通し、通孔51は研磨面1aで開口している。第1の孔50Aは液体供給路53およびロータリージョイント(図示せず)を介して液体供給源55に連結されており、第2の孔50Bは、液体排出路54に連結されている。
【0028】
投光部42は、多波長の光を発する光源47と、光源47に接続された光ファイバー48とを備えている。光ファイバー48は、光源47によって発せられた光をウェハWの表面まで導く光伝送部である。光ファイバー48および光ファイバー43の先端は、第1の孔50A内に位置しており、ウェハWの被研磨面の近傍に位置している。光ファイバー48および光ファイバー43の各先端は、研磨ヘッド5に保持されたウェハWの被研磨面を横切るように配置される。研磨テーブル3が回転するたびにウェハWの複数の領域に光が照射される。
【0029】
ウェハWの研磨中は、液体供給源55からは、透明な液体として水(好ましくは純水)が液体供給路53を介して第1の孔50Aに供給され、ウェハWの下面と光ファイバー48,43の先端との間の空間を満たす。水は、さらに第2の孔50Bに流れ込み、液体排出路54を通じて排出される。研磨液は水と共に排出され、これにより光路が確保される。液体供給路53には、研磨テーブル3の回転に同期して作動するバルブ(図示せず)が設けられている。このバルブは、通孔51の上にウェハWが位置しないときは水の流れを止める、または水の流量を少なくするように動作する。
【0030】
光ファイバー48と光ファイバー43は互いに並列に配置されている。光ファイバー48および光ファイバー43の各先端は、ウェハWの表面に対して垂直に配置されており、光ファイバー48はウェハWの表面に垂直に光を照射するようになっている。
【0031】
ウェハWの研磨中は、投光部42から光がウェハWに照射され、光ファイバー(受光部)43によってウェハWからの反射光が受光される。分光器44は、各波長での反射光の強度を所定の波長範囲に亘って測定し、得られた光強度データを処理部32に送る。この光強度データは、ウェハWの膜厚を反映した光学信号であり、反射光の強度及び対応する波長から構成される。処理部32は、光強度データから波長ごとの光の強度を表わす分光波形を生成し、分光波形にフーリエ変換処理(例えば、高速フーリエ変換処理)を行って周波数スペクトルを生成し、周波数スペクトルからウェハWの膜厚を決定する。
【0032】
図3は、光学式膜厚測定器25の原理を説明するための模式図であり、図4は、ウェハWと研磨テーブル3との位置関係を示す平面図である。図3に示す例では、ウェハWは、下層膜と、その上に形成された上層膜とを有している。上層膜は、例えばシリコン層または絶縁膜などの、光の透過を許容する膜である。投光部42および受光部43は、ウェハWの表面を横切るように研磨テーブル3内に配置されている。研磨テーブル3が1回転するたびに、投光部42はウェハWの中心を含む複数の測定点に光を照射しながら、光ファイバー(受光部)43はウェハWの複数の測定点からの反射光を受ける。
【0033】
ウェハWに照射された光は、媒質(図3の例では水)と上層膜との界面、および上層膜と下層膜との界面で反射し、これらの界面で反射した光の波が互いに干渉する。この光の波の干渉の仕方は、上層膜の厚さ(すなわち光路長)に応じて変化する。このため、ウェハWからの反射光から生成されるスペクトルは、上層膜の厚さに従って変化する。分光器44は、反射光を波長に従って分解し、反射光の強度を波長ごとに測定する。処理部32は、分光器44から得られた反射光の強度データ(光学信号)から分光波形を生成する。この分光波形は、図12および図17に示すように、光の波長と強度との関係を示す線グラフとして表される。光の強度は、上述した相対反射率などの相対値として表わすこともできる。
【0034】
処理部32は、得られた分光波形に対してフーリエ変換処理(例えば、高速フーリエ変換処理)を行って分光波形を解析する。より具体的には、処理部32は、分光波形に含まれる周波数成分とその強度を抽出し、得られた周波数成分を所定の関係式を用いて膜の厚さに変換し、そして、膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトルを生成する。上述した所定の関係式は、周波数成分を変数とした、膜厚を表す一次関数であり、膜厚の実測結果または光学的膜厚測定シミュレーションなどから求めることができる。
【0035】
図5は、処理部32によって生成された周波数スペクトルを示す図である。図5において、縦軸は、分光波形に含まれる周波数成分の強度を表し、横軸は、膜厚を表している。周波数成分の強度は、正弦波として表される周波数成分の振幅に相当する。処理部32には、周波数成分の強度についてのしきい値が予め記憶されている。このしきい値は、過去の膜厚測定結果から決定される。
【0036】
しきい値は、周波数成分の強度の極大値を選別するために設けられる。すなわち、処理部32は、周波数スペクトルに現れた全ての極大値をしきい値と比較し、しきい値以上の極大値を決定する。そして、しきい値よりも小さい極大値は膜厚決定には使用されず、しきい値以上の極大値が膜厚決定に使用される。図5に示す例では、2つの極大値M1,M2はしきい値よりも大きいので、これらの極大値M1,M2が現れる2つの膜厚t1,t2は、膜厚決定に使用される。言い換えれば、膜厚t1,t2は、膜厚候補である。図6に示す例では、3つの極大値M1,M2,M3が存在する。しかしながら、極大値M3はしきい値よりも小さい。したがって、この例では、極大値M1,M2が現れる2つの膜厚t1,t2は、膜厚決定に使用される(すなわち膜厚候補である)が、極大値M3が現れる膜厚t3は膜厚決定には使用されない。
【0037】
処理部32は、膜厚候補として選別された複数の膜厚の中から、予め設定された選択規準に従って1つの膜厚を選択する。予め設定された選択規準は、N番目に大きい膜厚を選択することであるか、またはN番目に小さい膜厚を選択することのいずれかである。Nは予め定められた自然数である。例えば、予め設定された選択規準が、1番目に大きい(すなわち最も大きい)膜厚を選択することであれば、処理部32は、図5図6に示す2つの膜厚t1,t2のうち、膜厚t1を選択する。予め設定された選択規準が、2番目に大きい膜厚を選択することであれば、処理部32は膜厚t2を選択する。予め設定された選択規準が、1番目に小さい(すなわち最も小さい)膜厚を選択することであれば、処理部32は膜厚t2を選択する。予め設定された選択規準が、2番目に小さい膜厚を選択することであれば、処理部32は膜厚t1を選択する。
【0038】
このように、処理部32は、極大値の大きさに基づいて膜厚を選択するのではなく、予め設定された選択規準に従って、N番目に大きい膜厚、またはN番目に小さい膜厚を選択する。したがって、膜厚測定中での極大値の変動に影響されず、安定した膜厚測定が可能となる。特に、ウェハWの研磨中に膜厚測定する場合には、ウェハWと膜厚測定ヘッド31(および研磨テーブル3)が相対移動している。このような条件下では、ウェハ上の測定点ごとに周波数成分の強度が変動しやすい。このような場合であっても、処理部32は、周波数成分の強度の極大値同士を比較しないので、周波数成分の強度の変動に影響されずに膜厚を決定することができる。
【0039】
処理部32は、選択規準に従って選択した膜厚を膜厚測定値として出力する。しきい値および/または測定条件によっては、3つ以上の膜厚候補が存在する場合もある。このような場合であっても、選択規準に従って、N番目に大きい、またはN番目に小さい膜厚を選択することが可能である。
【0040】
図7に示すように、投光部42は、研磨テーブル3が1回転するたびにウェハWの中心を含む複数の測定点Pに光を照射しながら、光ファイバー(受光部)43はウェハWの複数の測定点Pから反射光を受ける。したがって、膜厚測定ヘッド31の投光部42および光ファイバー(受光部)43がウェハWの表面を横切るたびに、処理部32は、複数の測定点Pで上述した膜厚の選択を繰り返し実行する。
【0041】
上述した膜厚の選択規準は、研磨すべきウェハWと同一構造を有する参照ウェハ(参照基板)の膜厚を、ウェハWの膜厚測定と同じ工程で測定した結果に基づいて予め決定される。すなわち、参照ウェハに光を照射し、参照ウェハからの反射光の強さと波長との関係を示す分光波形を生成し、分光波形にフーリエ変換処理(例えば、高速フーリエ変換処理)を行なって、周波数成分の強度および対応する膜厚を決定し、周波数成分の強度の、上記しきい値よりも大きい複数の極大値を選別し、選別された複数の極大値の測定時間に伴う変化を分析することによって、上述した選択規準が決定される。
【0042】
参照ウェハの膜厚測定は、参照ウェハの水研磨中に実行されることが好ましい。水研磨とは、研磨液に代えて純水を研磨パッド1上に供給しながら、参照ウェハを研磨パッド1に摺接させる工程である。水研磨中は、ウェハWのスラリー研磨時よりも小さい力で研磨パッド1に押される。水研磨では、参照ウェハの研磨は実質的に進行しない。
【0043】
選択規準は、参照ウェハの膜厚測定結果を用いて、次のようにして予め決定される。一実施形態では、選択規準を決定する工程は、参照ウェハの水研磨中において、選別(決定)された複数の極大値の変動の大きさを計算し、変動の大きさが最も小さい極大値、すなわち最も安定した極大値に対応する膜厚を選択する工程を含む。図5図6に示す例では、参照ウェハ上の各測定点(図7の符号P参照)で膜厚測定が行われるたびに、2つの極大値M1,M2が選別される。図5図6から分かるように、極大値M1,M2は、測定点ごとに変わりうる。
【0044】
図8は、2つの極大値M1,M2が測定時間とともに変動する様子を示すグラフである。縦軸は周波数成分の強度を表し、横軸は測定時間を表す。図8から分かるように、水研磨中における極大値M2の変動の大きさは、極大値M1の変動の大きさよりも小さい。したがって、この場合は、処理部32は、変動の大きさが最も小さい極大値M2に対応する膜厚t2を決定し、この決定された膜厚t2を選択するための選択規準を決定する。この例での選択規準は、複数の膜厚候補の中から、1番目に小さい(すなわち最も小さい)膜厚を選択することである。
【0045】
図8に示す例では、選択規準に従い、より安定している膜厚t2が選択される。したがって、処理部32は、膜厚測定値として膜厚t2を研磨制御部12に出力する。研磨制御部12は、処理部32から送られた膜厚t2に基づいて研磨動作(例えば、研磨終了動作)を制御する。図16に示すウェハ構造を研磨する場合において、研磨される膜は露出層100である。下地層101が表面に現れたときに露出層100の研磨を終了するためには、露出層100の厚さt2を監視する必要がある。したがって、露出層100の厚さt2は、研磨制御部12が監視すべき膜厚である。研磨制御部12は、露出層100の厚さt2が予め設定された目標値に達した場合には、ウェハWの研磨を終了する。
【0046】
しかしながら、選択規準を決定する工程において、膜厚t1を選択するための選択規準が決定されることがある。例えば、参照ウェハの水研磨中における極大値M1の変動の大きさが極大値M2の変動の大きさよりも小さい場合には、膜厚t1を選択するための選択規準が決定される。このような場合には、研磨制御部12は、予め設定された目標値にオフセット値を加算して補正目標値を算出し、処理部32から出力された膜厚t1が補正目標値に達した場合には、ウェハWの研磨を終了する。このオフセット値は、ウェハ構造に基づいて予め設定された数値であり、正または負の符号を持つ。このオフセット値は、ユーザーによって研磨制御部12に予め入力される。
【0047】
上述した実施形態では、極大値の安定性に基づいて選択規準が定められるが、極大値の大きさに基づいて選択規準が定められてもよい。すなわち、他の実施形態では、選択規準を決定する工程は、参照ウェハの水研磨中において複数の極大値が選別(決定)されるたびに、これら複数の極大値同士を比較して、最も大きい極大値を決定し、この決定された最も大きい極大値に対応する膜厚を特定し、参照ウェハの水研磨中において最も多く(最も頻繁に)特定された膜厚を選択する工程を含む。
【0048】
図9は、参照ウェハの水研磨中において、最も大きい極大値に対応する膜厚として特定された膜厚を測定時間に沿って並べたグラフである。縦軸は膜厚を表し、横軸は測定時間を表す。図9から分かるように、膜厚t1は膜厚t2よりも多くグラフ上に現れている。これは、膜厚t1が、最も大きい極大値に対応する膜厚として特定された回数は、膜厚t2が、最も大きい極大値に対応する膜厚として特定された回数よりも多いことを示している。したがって、この場合は、処理部32は、膜厚t1を選択するための選択規準を決定する。この例での選択規準は、複数の膜厚候補の中から、1番目に大きい(すなわち最も大きい)膜厚を選択することである。
【0049】
周波数スペクトルのある特定の膜厚領域にノイズが発生する傾向がある場合は、このようなノイズを回避するような選択規準を決定することが望ましい。例えば、小さい膜厚領域にノイズが発生する傾向がある場合は、N番目に大きい膜厚を選択する選択規準を決定することが好ましく、大きい膜厚領域にノイズが発生する傾向がある場合は、N番目に小さい膜厚を選択する選択規準を決定することが好ましい。
【0050】
次に、研磨すべきウェハWと同一構造を有する参照ウェハ(参照基板)の膜厚を測定した結果に基づいて、周波数成分の強度の極大値を選別するためのしきい値と、膜厚の選択規準を同時に決定する実施形態について説明する。図10は、参照ウェハの研磨中に取得された、予め設定された仮のしきい値よりも大きい極大値に対応する膜厚を示すグラフである。図10に示す各膜厚は、参照ウェハ上の1つの測定点(例えば、参照ウェハの中心にある測定点)で取得された膜厚である。なお、図10では、仮のしきい値および周波数成分の強度の極大値は図示されていない。
【0051】
図10において、縦軸は膜厚を表し、横軸は膜厚の測定時間を表す。この測定時間は、参照ウェハの研磨時間に相当する。図10に示す例では、参照ウェハの研磨は、研磨液としてスラリーを用いたスラリー研磨である。このため、測定時間とともに膜厚が少しずつ小さくなっている。なお、参照ウェハを水研磨してもよい。
【0052】
研磨テーブル3が一回転するたびに、予め定められた1つの測定点で取得された全ての極大値のうち、仮のしきい値よりも大きい極大値が選別される。例えば、時間Taでは、仮のしきい値よりも大きい3つの極大値が選別される。したがって、時間Taでは、1つの測定点に3つの膜厚が存在する。
【0053】
次に、仮のしきい値を少しずつ大きくする。図11は、仮のしきい値を大きくしたときに選別された極大値に対応する膜厚を示すグラフである。図10図11との対比から分かるように、仮のしきい値を大きくすると、小さな極大値は選別されず、選別された極大値の数が減少する。結果として、グラフに現れる膜厚の数は減少する。小さな極大値は、ノイズであることが多い。したがって、仮のしきい値を大きくすることで、そのようなノイズを排除することができる。結果として、図11に示すように、測定時間に従って減少する(すなわち安定した)膜厚変化がグラフに現れる。大きくした仮のしきい値は、研磨すべきウェハWの膜厚測定に使用されるしきい値に決定される。
【0054】
図11では、膜厚の2つのグループG1,G2が現れている。グループG2に属する膜厚の数は、グループG1に属する膜厚の数よりも大きい。これは、グループG2に属する膜厚の変化は、グループG1に属する膜厚の変化よりも、参照ウェハの膜厚の変化をより正確に反映していることを意味している。グループG1,G2の中では、グループG2は最も小さな膜厚が属するグループであるので、この例の選択規準は、複数の膜厚候補の中から、1番目に小さい(すなわち最も小さい)膜厚を選択することである。このように、参照ウェハの膜厚測定結果から、しきい値および膜厚の選択規準を同時に決定することができる。
【0055】
上述した膜厚測定方法は、ウェハ研磨中での膜厚測定に適用できることはもちろんのこと、ウェハおよび研磨テーブルが静止した状態での膜厚測定にも適用することができる。
【0056】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 研磨パッド
3 研磨テーブル
5 研磨ヘッド
10 研磨液供給ノズル
12 研磨制御部
16 研磨ヘッドシャフト
17 連結手段
18 研磨ヘッドモータ
19 テーブルモータ
25 光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)
31 膜厚測定ヘッド
32 処理部
42 投光部
43 受光部(光ファイバー)
44 分光器
47 光源
48 光ファイバー
50A 第1の孔
50B 第2の孔
51 通孔
53 液体供給路
54 液体排出路
55 液体供給源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19