(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水二次電池を模式的に示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)に示す非水二次電池をA−A線に沿って切断したときの切断面を示す横断面図であり、(c)は、(a)に示す非水二次電池をB−B線に沿って切断したときの切断面を示す縦断面図である。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係る非水二次電池100について、
図1を参照しながら簡単に説明する。非水二次電池100においては、櫛型電極1a及び1bがそれぞれ櫛型形状として形成され、櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されて形成される。よって、櫛型電極1a及び1bは、それぞれの端面が離間対向するように配置されることとなる。ここで、櫛型電極1aは正極であり、櫛型電極1bは負極である。櫛型電極1a及び1bがこのような構成を採ることにより、電極間距離が短く、電解液抵抗が一定になり、リチウムイオンやナトリウムイオン等の金属イオンの交換が効率良く行われることで、電池容量を大きくすることができる。
櫛型電極1aと櫛型電極1bとの間には、空間又は両者を隔離するセパレータ(図示せず)が設けられ、両者が電気的に分離される。また、櫛型電極1aと櫛型電極1bとの間には、電池反応に関与する電解質8が充填されている。櫛型電極1a及び1bは、表面が不導体である基板4の表面上、即ち、同一平面内に配置される。正極集電体、正極、セパレータ、負極、及び負極集電体等の電極部材がその厚さ方向に積層された従来の非水二次電池と比べると、従来の電池と同一厚さの電極部材を用いた場合でも、本発明の実施形態に係る非水二次電池にあっては、その厚さをはるかに薄く(例えば、1/3程度に)することができる。
なお、櫛型電極1a及び1bは、実質的に同一平面内に配置されていてもよい。ここで、「実質的に同一平面内に配置されている」とは、櫛型電極1aが配置されている平面と櫛型電極1bが配置されている平面との距離が、0μm超10μm以下、好ましくは0μm超5μm以下であることをいう。
【0015】
基板4としては、表面に酸化膜を有するシリコン基板が例示される。上記シリコン基板は、更に上記酸化膜の上層に後述の密着付与層が形成されたものであることが好ましい。
また、基板4としては、その他に絶縁基板又は絶縁層を有する基板が挙げられ、透明性や可撓性を有する基板であってもよく、ガラス基板、PETフィルム、ガラスフィルム等も例示される。
【0016】
櫛型電極1a及び1bを覆って、カバー部材9が基板4に結合されている。カバー部材9は基板4とともに、櫛型電極1a及び1bを含む密閉室を規定する。カバー部材9は、少なくともガスバリア性を有するものであり、気体、特に水蒸気の透過性が極めて低い材質からなり、例えば、ガラス、PET、ガラスフィルム、SUS(JIS規格におけるステンレス鋼材の材料記号、Steel Special Use Stainless)、シリコン、又はAl
2O
3、ZrO
2、ZnO、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2等の少なくとも1種の耐フッ酸性無機酸化物からなる耐フッ酸性酸化膜で形成することができる。カバー部材9として、少なくともガスバリア性を有するものを用いることで、電解質8の吸湿を抑制しやすくなり、非水二次電池100の劣化を防止しやすくなる。非水二次電池100がリチウム−空気二次電池等の金属−空気二次電池である場合、例えば、カバー部材9の内側には酸素を吸放出可能な酸素吸蔵材を設けることが好ましい。酸素吸蔵材を設けることで、外気から酸素を取り込まなくても充放電が可能となり、非水二次電池100内へのH
2OやCO
2の混入を防ぐことができる。
【0017】
カバー部材9は、更に耐フッ酸性を有することが好ましい。LiPF
6等の、フッ酸を遊離しうる電解質8を用い、現にフッ酸が遊離した場合であっても、カバー部材9は、耐フッ酸性を有することで、フッ酸による腐食、溶解を効果的に回避することができる。耐フッ酸性を有する材質として、PETや前記耐フッ酸性酸化膜が挙げられるが、その他の材質を用いる場合でも、耐フッ酸性は、例えば、カバー部材9の少なくとも電解質8と接する部分に、金、白金等の貴金属や前記耐フッ酸性無機酸化物を公知の方法により蒸着させることで、カバー部材9に付与することができる。
【0018】
なお、カバー部材9には、後述の通り、注液孔10が形成されており、非水二次電池100においては、接着剤50により封止されている。また、非水二次電池100は、基板4上に端子51a及び51bを備える。端子51a及び51bは、それぞれ櫛型電極1a及び1bに接続している。
【0019】
非水二次電池100としては、特に限定されず、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等の金属イオン二次電池;リチウム金属二次電池等の金属二次電池;リチウム−空気二次電池等の金属−空気二次電池等が挙げられる。
なお、非水二次電池100において、ガスバリア性を有するカバー部材9の代わりに、例えば、カバー部材9と同一形状を有し、かつ、酸素透過性を有するカバー部材を用いた場合には、リチウム−空気二次電池等の金属−空気二次電池として、それぞれの端面が離間対向するように、実質的に同一平面内に配置された正極及び負極と、上記正極及び上記負極を固定支持する基板と、上記正極及び上記負極を含む収容室を上記基板とともに規定する酸素透過性を有するカバー部材と、少なくとも上記正極及び上記負極の対向端面間に存在するように上記収容室内に収容された、上記正極と上記負極との電池反応に関与する電解質とを備えるものを構成することができる。
以下、特に、非水二次電池100が金属イオン二次電池である場合について、
図1及び2を参照しながら、より詳細に説明する。
【0020】
図2に示す通り、正極である櫛型電極1aは、電流を取り出すための集電体2aと、集電体2aの表面に形成された正極活物質層3aと、を有する。集電体2aは、平面視で櫛型形状として形成される。そして、正極活物質層3aは、櫛型形状である集電体2aの表面に形成され、集電体2aと同様に、平面視で櫛型形状として形成される。
【0021】
集電体2aは、導電性を付与するために金属で構成され、使用する正極と負極との電位差を考慮して適宜選択すればよい。好ましくは金又はアルミニウム等で構成される。そして、集電体2aと基板4との間の密着性を確保するために、必要に応じて、集電体2aと基板4との間に密着付与層(図示せず)が形成される。密着付与層は、集電体2aの材質と基板4の材質とを考慮して適宜決定される。一例として、集電体2aが金又はアルミニウム等で構成され、かつ基板4がシリコンで構成される場合、密着付与層としてチタンの薄膜が好ましく使用される。集電体2aの厚さ及び密着付与層の厚さは、特に限定されず、任意に決定することができる。一例として、集電体2aの厚さとして100〜500nm、密着付与層の厚さとして50nm〜100nmが挙げられるが、限定されない。
【0022】
負極である櫛型電極1bは、電流を取り出すための集電体2bと、集電体2bの表面に形成された負極活物質層3bと、を有する。櫛型電極1bのそれ以外の事項については、正極である上記櫛型電極1aと同様であるので、説明を省略する。
【0023】
上述の通り、正極である櫛型電極1aと負極である櫛型電極1bとの間には、電解質8が充填される。これにより、櫛型電極1a及び櫛型電極1bではそれぞれ電極反応が起こり、集電体2a及び集電体2bから電流を取り出すことができる。
【0024】
櫛型電極全体のサイズ;櫛型電極1a又は櫛型電極1bにおける歯の太さ、長さ、及び本数;隣接する2本の歯同士の間隔;活物質層の厚さ等は、所望の充電容量及び放電容量に応じて、適宜、調整される。例えば、歯の太さは10〜50μm、隣接する2本の歯同士の間隔は30〜70μm、活物質層の厚さは10〜50μmとすることができる。なお、基板4として透明基板を使用し、カバー部材9として透明部材を使用したとき、歯の太さ、歯の長さ、歯の本数、及び歯同士の間隔の少なくとも1種を変更することにより、非水二次電池100の光透過性を適宜変更することができる。櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯の長さ方向に対して垂直かつ基板4に平行な方向視で櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯が互い違いに組み合っている領域において、基板4に垂直な方向から見たときに、櫛型電極1aの歯、櫛型電極1bの歯、及び櫛型電極1aの歯と櫛型電極1bの歯との間隙(透過部)の合計に対する、上記透過部の面積比は、例えば、40〜95%の範囲であることが好ましい。
【0025】
正極活物質層3a及び負極活物質層3bを構成する材質、並びに電解質8の種類は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等の金属イオン二次電池に用いることができるものの中から、適宜決定される。例えば、金属イオン二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、正極活物質層3aを構成する材質としては、コバルト酸リチウム等の遷移金属酸化物等が挙げられ、負極活物質層3bを構成する材質としては、炭素、グラファイト、チタン酸リチウム等が挙げられ、電解質8としては、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のリチウム塩と、このリチウム塩を溶解する、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステル化合物、アセトニトリル、これらの少なくとも2種の混合液等の有機溶剤とを含む電解質液や、上記電解質液とポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリマーとを含むゲル状電解質や、上記リチウム塩と上記ポリマーとアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤とを含む固体電解質前駆体において、上記ポリマー間で架橋を形成させることにより得られる固体電解質が挙げられる。また、例えば、金属イオン二次電池がナトリウムイオン二次電池である場合、正極活物質層3aを構成する材質としては、コバルト酸ナトリウム等の遷移金属酸化物等が挙げられ、負極活物質層3bを構成する材質としては、炭素、グラファイト、チタン酸ナトリウム等が挙げられ、電解質8としては、過塩素酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ナトリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のナトリウム塩と、このナトリウム塩を溶解する、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステル化合物、アセトニトリル、これらの少なくとも2種の混合液等の有機溶剤とを含む電解質液や、上記電解質液とポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリマーとを含むゲル状電解質や、上記ナトリウム塩と上記ポリマーとアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤とを含む固体電解質前駆体において、上記ポリマー間で架橋を形成させることにより得られる固体電解質が挙げられる。電解質8として上記ゲル状電解質又は固体電解質を用いることにより、得られる二次電池からの液漏れの発生を有効に軽減することができる。
【0026】
より具体的には、金属イオン二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、活物質としては、LiCoO
2、LiFePO
4、LiMn
2O
4等の正極活物質粒子や、黒鉛、Li
4Ti
5O
12、Sn合金、Si系化合物等の負極活物質粒子が例示される。また、金属イオン二次電池がナトリウムイオン二次電池である場合、活物質としては、NaCoO
2、NaFePO
4、NaMn
2O
4等の正極活物質粒子や、黒鉛、Na
4Ti
5O
12、Sn合金、Si系化合物等の負極活物質粒子が例示される。活物質層を形成する際、上記の活物質は、分散媒に分散させた分散液の状態で用いることが好ましい。使用される分散媒としては、水、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセトン、エタノール等が例示される。分散媒の使用量は、上記分散液の固形分濃度が35〜60質量%となるような量であることが好ましい。
【0027】
上記分散液は、通常、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤を含む。上記分散液は、更に、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)等の導電助剤、カルボキシメチルセルロース等の分散剤を含んでもよい。上記分散液の固形分における活物質、結着剤、導電助剤、及び分散剤の含有量は、特に限定されない。上記分散液の固形分において、活物質の含有量は、好ましくは75〜99質量%、より好ましくは80〜98質量%であり、結着剤の含有量は、好ましくは1〜15質量%であり、導電助剤の含有量は、好ましくは0〜9質量%であり、分散剤の含有量は、好ましくは0〜7質量%である。特に、導電助剤の含有量が上記の範囲内であると、後述の
図5(d)若しくは(g)又は
図6(d)又は(h)で示される工程において、スクリーン印刷法によりガイド孔13a又は13bを上記分散液で充填する際、レジスト層12又は15の表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる活物質の残渣が発生しにくく、また、得られる櫛型電極では、活物質のひげ状の残渣が発生しにくく、電極間での短絡を効果的に防ぐことができる。
【0028】
電解質8において、塩の含有量は、この塩を構成する金属原子(例えば、リチウム原子やナトリウム原子)の濃度が0.2〜2.0Mとなるように、調整することが好ましい。上記ゲル状電解質において、ポリマーの含有量は、2〜80質量%であることが好ましい。電解質8は、更に、炭酸ビニレン等の不飽和環状炭酸エステル化合物;フルオロエチレンカーボネート等のハロゲン置換炭酸エステル化合物;1,3−プロパンスルトン等の環状スルホン酸系化合物;エチレンサルファイト等の環状亜硫酸エステル化合物;12−クラウン−4等のクラウンエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物等の添加剤を含んでもよい。電解質8が上記添加剤を含むと、得られる二次電池の寿命が向上しやすい。電解質8において、上記添加剤の濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る非水二次電池100の製造方法について説明する。本実施形態に係る非水二次電池100の製造方法は、電極形成工程と、カバー部材結合工程と、電解質充填工程とを少なくとも含む。以下、各工程について、
図3を参照しながら説明する。
【0030】
[電極形成工程]
電極形成工程は、
図3(a)及び(b)で順次示される工程である。
この工程では、基板4の表面に櫛型電極1a及び1bが形成される。櫛型電極1a及び1bの形成は、公知の方法、例えば、スクリーン印刷法、金属溶射法、メッキ法、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、これらの2つ以上の組み合わせで行うことができる。
また、非水二次電池100がリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等の金属イオン二次電池である場合、電極形成工程は、集電体形成工程と、レジスト塗布工程と、ガイド孔形成工程と、活物質層形成工程とを含むものであることが好ましい。以下、特に、非水二次電池100がリチウムイオン二次電池である場合に焦点を当て、電極形成工程における各工程について、
図4を参照しながら説明する。なお、非水二次電池100がナトリウムイオン二次電池等の、リチウムイオン二次電池以外の金属イオン二次電池である場合も、非水二次電池100がリチウムイオン二次電池である場合と同様にして、以下に説明する集電体形成工程、レジスト塗布工程、ガイド孔形成工程、及び活物質層形成工程を含む電極形成工程により、電極を形成することができる。
【0031】
(集電体形成工程)
集電体形成工程は、
図4(a)から(f)で順次示される工程である。
この工程では、まず、基板4の表面に薄膜の導電層2が形成される(
図4(a)〜(b))。基板4は、不導体又は少なくとも表面に不導体の層が形成された導体若しくは半導体であり、例えば、表面に酸化膜を有するシリコン基板が挙げられ、ガラス基板、PETフィルム等も例示される。導電層2は、導体であり、好ましくは金属の薄膜である。基板4の表面に導電層2を形成させるには、PVD法又はCVD法のような蒸着法、スパッタ法、めっき法、金属箔接着法等、各種公知の方法を使用することができる。導電層2の厚さは、電極1a及び1bに要求される性能を考慮して適宜決定すればよい。
【0032】
例えば、基板4が表面に酸化膜を有するシリコン基板であり、導電層2が金又はアルミニウムの薄膜で形成される場合、まず、シリコン基板4の表面にスパッタ法によりチタンの薄膜(図示せず)を形成させ、次いでこのチタンの薄膜の表面にスパッタ法により導電層2である金又はアルミニウムの薄膜を形成させる方法が挙げられる。この場合、チタンの薄膜は、導電層2のシリコン基板4への密着性を向上させるために設けられる。チタンの薄膜及び導電層2の厚さとして、例えば、100〜500nmが挙げられ、密着付与層の厚さとして、例えば、50nm〜100nmが挙げられるが、必要とされる性能を考慮して適宜決定すればよい。
【0033】
導電層2を形成した後、
図4(c)に示すように、導電層2の表面に集電体形成用レジストを塗布し、集電体形成用レジスト層5を形成させる。集電体形成用レジスト層5は、導電層2をパターニングして、櫛型の集電体2a及び2bを形成するために設けられる。
【0034】
集電体形成用レジストは、公知の各種レジスト組成物を使用することができる。なお、「集電体形成用レジスト」という用語は、後述するガイド孔7a及び7bを形成するために使用されるレジストと区別するためのものである。集電体形成用レジストは、後述するガイド孔形成工程で使用されるレジストと同じでもよいし、異なってもよい。
【0035】
集電体形成用レジストを塗布する方法は、公知の方法を特に制限なく挙げることができる。このような方法としては、スピンコート法、ディップ法、はけ塗り法等が挙げられる。
【0036】
形成された集電体形成用レジスト層5は、櫛型形状のマスクパターンを介して選択的に露光及び現像されて、集電体形成用の樹脂パターン5a及び5bとなる。これにより、
図4(d)に示すように、導電層2の表面に、集電体形成用の樹脂パターン5a及び5bが形成される。櫛型形状の樹脂パターン5a及び5bにおける歯の本数、歯の太さ、パターンとパターンとの間のギャップ(スペースギャップ)等は、必要とされる性能を考慮して適宜設定すればよい。歯の本数としては、例えば5〜500対が、歯の太さとしては、例えば1〜50μmが、スペースギャップとしては、例えば1〜50μmがそれぞれ挙げられる。一例として、歯の本数として100対(片方の樹脂パターンにおける歯の本数が100本である)、歯の太さとして20μm、スペースギャップとして10〜20μmが挙げられるが限定されない。
【0037】
次いで、導電層2のうち、パターン5a及び5bに覆われていない箇所を除去する。導電層2を除去するには、公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような方法として、エッチング法、イオンミリング法等が例示される。導電層2のうち、パターン5a及び5bに覆われていない箇所が除去されることにより、櫛型形状の集電体2a及び2bが形成される(
図4(e))。その後、パターン5a及び5bが除去され、
図4(f)に示すように、櫛型形状の集電体2a及び2bが基板4の表面に露出する。
【0038】
(レジスト塗布工程)
次に、レジスト塗布工程について説明する。レジスト塗布工程は、上記集電体形成工程の後に行われる工程であり、
図4(g)で示される工程である。
この工程では、上記集電体形成工程で形成された集電体2a及び2bの部分を含む基板4の表面に、レジスト組成物を塗布してレジスト層6を形成させる。
【0039】
基板4の表面にレジスト組成物を塗布してレジスト層6を形成させる方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。レジスト層6には、後に説明するように、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させるためのガイド孔7a及び7bが形成される。このガイド孔7a及び7bは、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させる際の鋳型となるので、正極活物質層3a及び負極活物質層3bを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。レジスト層6の厚さは、将来、ガイド孔7a及び7bの深さとなるので、必要とされるガイド孔7a及び7bの深さを考慮して、適宜決定される。レジスト層6の厚さとして、10〜100μmが例示されるが、特に限定されない。
【0040】
レジスト層6を形成させるためのレジスト組成物として、(1)エポキシ基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を含むカチオン重合系レジスト組成物、(2)ノボラック樹脂及び感光剤を含むノボラック系レジスト組成物、(3)酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を含む化学増幅系レジスト組成物、又は(4)エチレン性の不飽和結合を有するモノマー及び/又は樹脂、並びにラジカル重合開始剤を含み、エチレン性の不飽和結合を有するモノマーを含む場合には、当該モノマーの1分子中に含まれるエチレン性の不飽和結合が3個以下であるラジカル重合系レジスト組成物のいずれかを使用する。以下、各レジスト組成物としては、公知のものを使用することができる。
【0041】
(ガイド孔形成工程)
次に、ガイド孔形成工程について説明する。ガイド孔形成工程は、上記レジスト塗布工程の後に行われる工程であり、
図4(h)で示される工程である。なお、
図4(h)では、図面の見易さを考慮して、ガイド孔7aの底部に存在する集電体2aを省略した。
本実施形態では、この工程において、上記レジスト塗布工程で形成されたレジスト層6に、櫛型形状である集電体2a及び2bと平面視で同一形状となる形状のガイド孔7a及び7bを形成させる。ガイド孔7a及び7bは、集電体2a及び2bの表面までレジスト層6を貫通する貫通孔として形成される。ガイド孔7a及び7bは、後に説明する活物質層形成工程において、正極又は負極活物質を堆積させるための鋳型として使用される。
【0042】
本実施形態では、この工程において、まず、集電体2a及び2bと平面視で同一形状となるマスクを介して、上記レジスト塗布工程で形成されたレジスト層6を選択露光させる。これにより、レジスト層6がネガ型のレジストで形成されている場合には、将来ガイド孔7a及び7bとならない箇所が硬化して現像液に不溶となり、将来ガイド孔7a及び7bとなる部分は現像液に対して可溶のままとなる。また、レジスト層6がポジ型のレジストで形成されている場合には、将来ガイド孔7a及び7bとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔7a及び7bとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0043】
選択露光を受けたレジスト層6は、現像される。現像は、公知の現像液を使用し、公知の方法により行うことができる。このような現像液としては、例えば、アルカリ性の水溶液が例示される。また、現像方法としては、浸漬法、スプレー法等が例示される。
【0044】
現像されたレジスト層6には、櫛型形状である集電体2a及び2bと平面視で同形状、かつ集電体2a及び2bの表面まで貫通するガイド孔7a及び7bが形成される。ガイド孔7a及び7bが形成されたレジスト層6は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。レジスト層6は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の活物質層形成工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0045】
(活物質層形成工程)
次に、活物質層形成工程について説明する。活物質層形成工程は、上記ガイド孔形成工程の後に行われる工程であり、
図4(i)で示される工程である。
この工程では、上記ガイド孔形成工程で形成されたガイド孔7a及び7bを鋳型として、集電体2aの表面に正極活物質層3aを、集電体2bの表面に負極活物質層3bをそれぞれ形成させる。これにより、電極1a及び1bが完成する。
【0046】
ガイド孔7a及び7bを鋳型として、集電体2a及び2bの表面に活物質層3a及び3bを形成させる方法としては、電気泳動法やめっき法が挙げられる。以下、これらの方法を説明する。
【0047】
電気泳動法は、正極又は負極活物質の粒子を分散させた極性溶剤に、ガイド孔7a及び7bが形成された基板4を浸し、集電体2a又は2bのいずれか一方に電圧を印加することによって、溶剤に分散させた正極又は負極活物質の粒子を、電圧が印加された集電体の表面に対して選択的に堆積させる方法である。これにより、ガイド孔7a又は7bを鋳型として、集電体2a又は2bの任意の一方に活物質層3a又は3bを堆積させることができる。
【0048】
溶剤に分散させる活物質としては、粒径100〜10000nm、好ましくは100〜1000nmの、LiCoO
2、LiFePO
4、LiMn
2O
4等の正極活物質粒子や、黒鉛、Li
4Ti
5O
12、Sn合金、Si系化合物等の負極活物質粒子が例示される。また、溶剤に分散させる活物質の量としては、1〜50g/Lが例示され、使用される溶剤としては、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセトン、エタノール、水が例示される。更に、溶剤には、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデン、ヨウ素等の導電助剤や結着剤を添加してもよい。溶剤中の導電助剤や結着剤の量としては、それぞれ0.1〜1g/Lが例示される。
【0049】
そして、電気泳動を行う際には、集電体2a又は2bの1cm程度上方に、ニッケルや金等の基板を対向電極として用いて電気泳動を行うことができる。その際の電圧は1〜1000Vが例示される。電場密度としては、集電体2aと2bとの間、あるいは集電体2a又は2bと、集電体2a又は2bに対向する電極との間に、1〜1000V/cmの印加が例示される。
【0050】
めっき法は、水溶性のめっき液を使用して、集電体2a又は2bの表面に活物質層3a又は3bを形成させる方法である。このようなめっき液としては、SnCl
2・2H
2Oの0.01〜0.3M水溶液、SnCl
2・2H
2OとNiCl
2・6H
2Oの混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl
2・2H
2OとSbCl
3の混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl
2・2H
2OとCoCl
2の混合0.01〜0.3M水溶液、SnCl
2・2H
2OとCuSO
4の混合0.01〜0.3M水溶液が例示される。また、めっき液には、添加剤として、グリシン、K
4P
2O
7、NH
4OH水溶液等を例えば0.01〜0.5Mの濃度で添加してもよい。
【0051】
特に限定されないが、上記電気泳動法により一方の集電体2a又は2bに対して選択的に活物質層3a又は3bを形成させた後に、上記めっき法を行うことにより、活物質層3a又は3bの形成されていない他方の集電体2b又は2aに対して選択的に活物質層3b又は3aを形成させることができる。このようにして、集電体2aの表面に正極活物質層3aを、集電体2bの表面に負極活物質層3bをそれぞれ選択的に形成させることができる。
【0052】
また、集電体2a又は2bの表面に活物質層3a又は3bを形成させるにあたり、上記電気泳動法やめっき法の他にも、上記正極活物質粒子又は負極活物質粒子を上記溶剤に分散させた溶液を、キャピラリーを用いてガイド孔7a又は7bに注入させるインジェクション法も適用可能である。
【0053】
以上のように、レジスト層6に形成されたガイド孔7a及び7bを鋳型として、活物質層3a及び3bが電気泳動法やめっき法によって形成される。このため、活物質層形成工程におけるレジスト層6には、電気泳動法で使用される溶剤やめっき法で使用されるめっき液に対して耐性を備えることが好ましい。この点、上記(1)〜(4)で挙げた各レジスト組成物の中でも、めっき液に対する耐性を付与するとの観点からは、(1)のカチオン重合系レジスト組成物、(2)ノボラック系レジスト組成物又は(3)化学増幅系レジスト組成物が好ましい。そして、これら(1)〜(3)のレジスト組成物の中でも、上記電気泳動法で使用される溶剤に対する耐性を付与するとの観点からは、(1)のカチオン重合系レジスト組成物がより好ましい。
【0054】
集電体2a及び2bの表面にそれぞれ活物質層3a及び3bを形成させた後、ガイド孔7a及び7bの形成されたレジスト層6は除去される。これにより、
図2に示す電極1a及び1bが形成される。レジスト層6を除去する方法としては、高温で加熱することによりレジスト層6を分解させるアッシング法、エッチング法が挙げられる。
【0055】
なお、上記のレジスト塗布工程、ガイド孔形成工程、及び活物質層形成工程における手順は、以下で説明する第1又は第2のパターン形成方法によっても実行することができる。即ち、櫛型電極1a及び1bは、例えば、集電体形成工程によって集電体2a及び2bを形成させ、下記第1又は第2のパターン形成方法を用いて、集電体2a及び2b上に正極及び負極を形成させることにより製造することができる。
【0056】
・第1のパターン形成方法
第1のパターン形成方法は、同一又は異なるパターン材料からなるn個(nは、2以上の整数であり、好ましくは2である。)のパターンを支持体上に形成するパターン形成方法であって、上記支持体の表面にポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層を形成させ、k番目(kは1〜(n−1)の整数)のパターン材料及びk番目のレジスト層について、kが1の場合からkが(n−1)の場合まで順番に、下記(1)〜(3):(1)露光及び現像により、1番目からk番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させること、(2)スクリーン印刷法により上記ガイド孔にk番目のパターン材料を充填すること、及び(3)k番目のレジスト層と上記ガイド孔に充填された上記k番目のパターン材料との上に、ポジ型レジスト組成物を塗布して(k+1)番目のレジスト層を形成させることを繰り返し、露光及び現像により、1番目からn番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させ、スクリーン印刷法により上記ガイド孔にn番目のパターン材料を充填し、1番目からn番目までのレジスト層を除去することを含むパターン形成方法である。第1のパターン形成方法によれば、短時間で、同一又は異なるパターン材料からなる複数個のパターンを支持体上に形成することができる。
【0057】
以下、図面を参照しながら、第1のパターン形成方法について詳細に説明する。
図5は、第1のパターン形成方法を示す縦断面図である。
図5を参照して、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法について説明する。なお、
図5では、n=2の場合について説明する。
【0058】
まず、
図5(a)で示される支持体11の表面に、
図5(b)で示される工程において、ポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層12を形成させる。
【0059】
支持体11の表面にポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層12を形成させる方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。1番目のレジスト層12には、後に説明するように、パターン材料層14a及び14bを形成させるためのガイド孔13a及び13bが形成される。このガイド孔13a及び13bは、パターン材料層14a及び14bを形成させる際の鋳型となるので、パターン材料層14a及び14bを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。1番目のレジスト層12の厚さは、将来、ガイド孔13a及び13bの深さとなるので、必要とされるガイド孔13a及び13bの深さを考慮して、適宜決定される。1番目のレジスト層12の厚さとして、10〜100μmが例示されるが、特に限定されない。
【0060】
1番目のレジスト層12を形成させるためのポジ型レジスト組成物としては、公知のものを特に制限なく用いることができ、非化学増幅系、化学増幅系のいずれであってもよい。非化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、キノンジアジド基含有化合物(A)及びアルカリ可溶性樹脂(B)を少なくとも含有するものが挙げられる。一方、化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を少なくとも含むものが挙げられる。
【0061】
次に、
図5(c)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、1番目のレジスト層12を選択露光させる。これにより、将来、ガイド孔13aとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔13aとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0062】
選択露光を受けた1番目のレジスト層12は、現像される。現像は、公知の現像液を使用し、公知の方法により行うことができる。このような現像液としては、例えば、アルカリ性の水溶液が例示される。また、現像方法としては、浸漬法、スプレー法等が例示される。
【0063】
現像された1番目のレジスト層12には、支持体11の表面まで貫通するガイド孔13aが形成される。ガイド孔13aは、
図5(d)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔13aが形成された1番目のレジスト層12は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。1番目のレジスト層12は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の通り、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0064】
次に、
図5(d)で示される工程について説明する。
この工程では、
図5(c)で示される工程で形成されたガイド孔13aに、スクリーン印刷法により、1番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔13aを鋳型として、支持体11の表面に1番目のパターン材料層14aを形成させる。
【0065】
スクリーン印刷法は、例えば、市販のスクリーン印刷機を用い、適宜、スキージ圧、スキージ速度、用いるスキージの材質、硬さ、研磨角度等を調整して実行することができる。
【0066】
次に、
図5(e)で示される工程について説明する。
この工程では、1番目のレジスト層12と、ガイド孔13aに充填された1番目のパターン材料(即ち、1番目のパターン材料層14a)との上に、ポジ型レジスト組成物を塗布して2番目のレジスト層15を形成させる。2番目のレジスト層15は、1番目のパターン材料層14aの保護層として機能する。即ち、2番目のレジスト層15を形成させないで、後述の通り、ガイド孔13bを形成させると、その過程で1番目のパターン材料層14aが現像液に触れて、流出してしまう。上述の通りに2番目のレジスト層15を形成させることで、1番目のパターン材料層14aが現像液に触れて流出してしまうのを防ぐことができる。
【0067】
ポジ型レジスト組成物の種類及び塗布方法は、
図5(b)で示される工程について上述したのと同様である。
図5(e)で示される工程に用いられるポジ型レジスト組成物は、
図5(b)で示される工程に用いられるポジ型レジスト組成物と同一であってもよいが、組成成分又は種類の異なるものを用いることが好ましい。
【0068】
2番目のレジスト層15の厚さは、1番目のパターン材料層14aの保護層としての機能が確保される限り特に限定されないが、後述の
図5(f)で示される工程で形成されるガイド孔13bに必要とされる深さを考慮して適宜決定され、1〜20μmが例示される。
【0069】
次に、
図5(f)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15を選択露光させる。これにより、将来ガイド孔13bとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔13bとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0070】
選択露光を受けた1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15は、現像される。現像液及び現像方法については、
図5(c)で示される工程について説明したのと同様である。
【0071】
現像された1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15には、支持体11の表面まで貫通するガイド孔13bが形成される。ガイド孔13bは、
図5(g)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔13bが形成された1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の通り、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0072】
次に、
図5(g)で示される工程について説明する。
この工程では、
図5(f)で示される工程で形成されたガイド孔13bに、スクリーン印刷法により、2番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔13bを鋳型として、支持体11の表面に2番目のパターン材料層14bを形成させる。
【0073】
スクリーン印刷法の条件は、
図5(d)で示される工程について説明したのと同様である。
【0074】
次に、
図5(h)で示される工程について説明する。
この工程では、1番目のレジスト層12及び2番目のレジスト層15を除去する。具体的には、例えば、剥離液を用いて、これらのレジスト層を剥離する方法が挙げられる。この場合、剥離方法は、特に限定されず、浸漬法、スプレー法、シャワー法、パドル法等を用いることができる。また、剥離液としては、例えば、3〜15質量%の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、N―メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。剥離処理時間は、特に限定されないが、例えば1〜120分間程度である。なお、剥離液は、25〜60℃程度に加温してもよい。
【0075】
以上の通りにして、1番目及び2番目のパターン材料からなる2個のパターンを支持体上に形成することができる。
なお、
図5では、n=2の場合について説明したが、nが3以上の場合については、
図5(c)〜(e)で示される工程を必要回数繰り返すことにより、同一又は異なるパターン材料からなるn個のパターンを支持体上に形成することができる。
【0076】
正極及び負極は、例えば、
図5における支持体11として、
図2の集電体12a及び12bを用い、
図5における1番目のパターン材料層14aとして、
図2の正極活物質層13aを用い、
図5における2番目のパターン材料層14bとして、
図2の負極活物質層13bを用い、
図5に従ってパターン形成を行うことにより、集電体12a及び12b上に形成させることができる。
【0077】
・第2のパターン形成方法
第2のパターン形成方法は、同一又は異なるパターン材料からなるn個(nは、2以上の整数であり、好ましくは2である。)のパターンを支持体上に形成するパターン形成方法であって、上記支持体の表面にレジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層を形成させ、k番目(kは1〜(n−1)の整数)のパターン材料及びk番目のレジスト層について、kが1の場合からkが(n−1)の場合まで順番に、下記(1)〜(4):(1)露光及び現像により、k番目のレジスト層を貫通するガイド孔を形成させること、(2)スクリーン印刷法により上記ガイド孔にk番目のパターン材料を充填すること、(3)上記k番目のレジスト層を除去すること、及び(4)上記支持体と1番目からk番目までのパターン材料との上に、レジスト組成物を塗布して(k+1)番目のレジスト層を形成させることを繰り返し、露光及び現像により、n番目のレジスト層を貫通するガイド孔を形成させ、スクリーン印刷法により上記ガイド孔にn番目のパターン材料を充填し、n番目のレジスト層を除去することを含むパターン形成方法である。第2のパターン形成方法によれば、第1のパターン形成方法と同様、短時間で、同一又は異なるパターン材料からなる複数個のパターンを支持体上に形成することができる。
以下、図面を参照しながら、第2のパターン形成方法について詳細に説明する。
図6は、第2のパターン形成方法を示す縦断面図である。
図6を参照して、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法について説明する。なお、
図6では、n=2の場合について説明する。
【0078】
まず、
図6(a)で示される支持体11の表面に、
図6(b)で示される工程において、レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層12を形成させる。
【0079】
支持体11の表面にレジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層12を形成させる方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。1番目のレジスト層12には、後に説明するように、パターン材料層14aを形成させるためのガイド孔13aが形成される。このガイド孔13aは、パターン材料層14aを形成させる際の鋳型となるので、パターン材料層14aを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。1番目のレジスト層12の厚さは、将来、ガイド孔13aの深さとなるので、必要とされるガイド孔13aの深さを考慮して、適宜決定される。1番目のレジスト層12の厚さとして、10〜100μmが例示されるが、特に限定されない。
【0080】
1番目のレジスト層12を形成させるためのレジスト組成物としては、公知のものを特に制限なく用いることができ、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよい。また、ポジ型レジスト組成物は、非化学増幅系、化学増幅系のいずれであってもよい。非化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、キノンジアジド基含有化合物及びアルカリ可溶性樹脂を少なくとも含有するものが挙げられる。一方、化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を少なくとも含むものが挙げられる。また、ネガ型レジスト組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を少なくとも含有する重合型のネガ型レジスト組成物;アルカリ可溶性樹脂、架橋剤、及び酸発生剤を少なくとも含有する化学増幅型のネガ型レジスト組成物;酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することにより極性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を少なくとも含む溶剤現像プロセス用の化学増幅型ネガ型レジスト組成物が挙げられる。中でも、
図6(e)で示される工程(後述)において、1番目のレジスト層12の除去がより容易となる傾向にあることから、化学増幅型レジスト組成物が好ましく、ポジ型レジスト組成物がより好ましい。
【0081】
次に、
図6(c)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、1番目のレジスト層12を選択露光させる。これにより、1番目のレジスト層12の形成にポジ型レジスト組成物を用いた場合には、将来、ガイド孔13aとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来、ガイド孔13aとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。一方、1番目のレジスト層12の形成にネガ型レジスト組成物を用いた場合には、将来、ガイド孔13aとならない箇所が現像液に対して不溶となり、将来、ガイド孔13aとなる部分が現像液に対して可溶のままとなる。必要に応じて、選択露光後に加熱(PEB)が施される。
【0082】
選択露光を受けた1番目のレジスト層12は、現像される。現像は、公知の現像液を使用し、公知の方法により行うことができる。このような現像液としては、例えば、アルカリ性の水溶液や、溶剤現像プロセスの場合は酢酸ブチル等のエステル系溶剤やメチルアミルケトン等のケトン系溶剤が例示される。また、現像方法としては、浸漬法、スプレー法、パドル法、ダイナミックディスペンス法等が例示される。
【0083】
現像された1番目のレジスト層12には、支持体11の表面まで貫通するガイド孔13aが形成される。ガイド孔13aは、
図6(d)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔13aが形成された1番目のレジスト層12は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。1番目のレジスト層12は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の通り、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0084】
次に、
図6(d)で示される工程について説明する。
この工程では、
図6(c)で示される工程で形成されたガイド孔13aに、スクリーン印刷法により、1番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔13aを鋳型として、支持体11の表面に1番目のパターン材料層14aを形成させる。
【0085】
スクリーン印刷法は、例えば、市販のスクリーン印刷機を用い、適宜、スキージ圧、スキージ速度、用いるスキージの材質、硬さ、研磨角度等を調整して実行することができる。
【0086】
次に、
図6(e)で示される工程について説明する。
この工程では、1番目のレジスト層12を除去する。具体的には、例えば、剥離液を用いて、1番目のレジスト層12を剥離する方法が挙げられる。この場合、剥離方法は、特に限定されず、浸漬法、スプレー法、シャワー法、パドル法等を用いることができる。また、剥離液としては、レジスト層に用いられるレジスト組成物の成分に合わせて適宜選択すればよく、例えば、3〜15質量%の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、トリエタノールアミン、N―メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、その他プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のレジスト溶媒等が挙げられる。剥離処理時間は、特に限定されないが、例えば1〜120分間程度である。なお、剥離液は、25〜60℃程度に加温してもよい。
この工程により、1番目のパターン材料からなる1個のパターンが支持体上に形成される。
【0087】
次に、
図6(f)で示される工程について説明する。
この工程では、支持体11と1番目のパターン材料層14aとの上に、レジスト組成物を塗布して2番目のレジスト層15を形成させる。2番目のレジスト層15には、後に説明するように、パターン材料層14bを形成させるためのガイド孔13bが形成される。このガイド孔13bは、パターン材料層14bを形成させる際の鋳型となるので、パターン材料層14bを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。また、2番目のレジスト層15は、1番目のパターン材料層14aの上に形成されるので、1番目のパターン材料層14aの保護層としても機能する。即ち、1番目のパターン材料層14aの上に2番目のレジスト層15を形成させないで、後述の通り、ガイド孔13bを形成させると、その過程で1番目のパターン材料層14aが現像液に触れて、流出してしまう。上述の通り、1番目のパターン材料層14aの上に2番目のレジスト層15を形成させることで、1番目のパターン材料層14aが現像液に触れて流出してしまうのを防ぐことができる。
【0088】
レジスト組成物の種類及び塗布方法は、
図6(b)で示される工程について上述したのと同様である。
図6(f)で示される工程に用いられるレジスト組成物は、
図6(b)で示される工程に用いられるレジスト組成物と同一であってもよいし、組成成分又は種類の異なるものであってもよい。
【0089】
2番目のレジスト層15の厚さは、1番目のパターン材料層14aの保護層としての機能が確保される限り特に限定されないが、後述の
図6(g)で示される工程で形成されるガイド孔13bに必要とされる深さを考慮して適宜決定され、1〜20μmが例示される。
【0090】
次に、
図6(g)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、2番目のレジスト層15を選択露光させる。これにより、2番目のレジスト層15の形成にポジ型レジスト組成物を用いた場合には、将来、ガイド孔13bとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来、ガイド孔13bとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。一方、2番目のレジスト層15の形成にネガ型レジスト組成物を用いた場合には、将来、ガイド孔13bとならない箇所が現像液に対して不溶となり、将来、ガイド孔13bとなる部分が現像液に対して可溶のままとなる。必要に応じて、選択露光後に加熱(PEB)が施される。
【0091】
選択露光を受けた2番目のレジスト層15は、現像される。現像液及び現像方法については、
図6(c)で示される工程について説明したのと同様である。
【0092】
現像された2番目のレジスト層15には、支持体11の表面まで貫通するガイド孔13bが形成される。ガイド孔13bは、
図6(h)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔13bが形成された2番目のレジスト層15は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。2番目のレジスト層15は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述の通り、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0093】
次に、
図6(h)で示される工程について説明する。
この工程では、
図6(g)で示される工程で形成されたガイド孔13bに、スクリーン印刷法により、2番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔13bを鋳型として、支持体11の表面に2番目のパターン材料層14bを形成させる。
【0094】
スクリーン印刷法の条件は、
図6(d)で示される工程について説明したのと同様である。
【0095】
次に、
図6(i)で示される工程について説明する。
この工程では、2番目のレジスト層15を除去する。具体的には、例えば、剥離液を用いて、2番目のレジスト層15を剥離する方法が挙げられる。剥離方法、剥離液、剥離処理時間は、
図6(e)で示される工程について説明したのと同様である。
【0096】
以上の通りにして、1番目及び2番目のパターン材料からなる2個のパターンを支持体上に形成することができる。
なお、
図6では、n=2の場合について説明したが、nが3以上の場合については、
図6(c)〜(f)で示される工程を必要回数繰り返すことにより、同一又は異なるパターン材料からなるn個のパターンを支持体上に形成することができる。
【0097】
正極及び負極は、例えば、
図6における支持体11として、
図2の集電体12a及び12bを用い、
図6における1番目のパターン材料層14aとして、
図2の正極活物質層13aを用い、
図6における2番目のパターン材料層14bとして、
図2の負極活物質層13bを用い、
図6に従ってパターン形成を行うことにより、集電体12a及び12b上に形成させることができる。
【0098】
[カバー部材結合工程]
カバー部材結合工程は、
図3(b)及び(c)で順次示される工程である。
この工程では、カバー部材9を基板4の表面に結合する。その結果、櫛型電極1a及び1bを含む密閉室は、基板4及びカバー部材9により規定される。基板4の表面へのカバー部材9の結合方法としては、エポキシ接着剤等の接着剤による方法、半田付け、陽極接合等の、半導体分野で使用される方法等が挙げられる。
【0099】
[電解質充填工程]
電解質充填工程は、
図3(c)で示される工程である。
この工程では、カバー部材結合工程において規定された密閉室内に、櫛型電極1aと櫛型電極1bとの電池反応に関与する電解質8を充填する。電解質8の充填は、カバー部材9の側面に形成された2個の注液孔10を介して行う。充填方法は特に限定されず、減圧注入やシリンジ等による注入が挙げられるが、充填効率の高さや充填むらの起こりにくさ等の観点から、減圧注入が好ましい。減圧注入は、基板4及びカバー部材9からなる構造体を電解質8中に浸漬し、減圧することで行うことができる。
【0100】
なお、電解質8の漏れや電解質8の吸湿等を防ぐため、電解質8の充填後、注液孔10は、エポキシ接着剤等の接着剤50により封止される。
【0101】
本発明の別の実施形態に係る非水二次電池100Aについて、説明する。非水二次電池100Aは、カバー部材9の代わりに、注液孔10を有しないカバー部材9Aを備え、電解質8の代わりに、ゲル状電解質又は固体電解質である電解質8Aを備える点を除き、非水二次電池100と同様である。
以下、本発明の別の実施形態に係る非水二次電池100Aの製造方法について説明する。本実施形態に係る非水二次電池100の製造方法は、電極形成工程と、電解質配置工程と、カバー部材固定工程とを少なくとも含む。以下、各工程について、
図7を参照しながら説明する。
【0102】
[電極形成工程]
電極形成工程は、
図7(a)及び(b)で順次示される工程であり、
図3(a)及び(b)で順次示される工程について上述したのと同様であるので、説明を省略する。
【0103】
[電解質配置工程]
電解質配置工程は、
図7(c)で示される工程である。
この工程では、少なくとも櫛型電極1a及び櫛型電極1bの対向端面間に、櫛型電極1aと櫛型電極1bとの電池反応に関与する電解質8Aを配置する。電解質8Aは、ゲル状電解質又は固体電解質である。電解質8Aの配置方法としては、特に限定されず、ゲル状電解質を少なくとも櫛型電極1a、櫛型電極1b、及び基板4上に塗布する方法や、固体電解質前駆体を少なくとも櫛型電極1a、櫛型電極1b、及び基板4上に塗布し、例えば、上記固体電解質前駆体に含まれるポリマー間での架橋形成等により、上記固体電解質前駆体を固体電解質とする方法等が挙げられる。必要に応じて、電解質8Aが形成されない部分につきあらかじめマスクを形成する工程を追加してもよい。マスクを形成した場合、後述のカバー部材固定工程の前に当該マスクを剥離することが好ましい。また、電解質8Aを形成するために用いたゲル状電解質又は固体電解質の前駆体は、最終的に、熱又は光により硬化させることが好ましい。
【0104】
[カバー部材固定工程]
カバー部材固定工程は、
図7(d)で示される工程である。
この工程では、基板4上にカバー部材9Aを固定する。その結果、櫛型電極1a及び1bを含む密閉室は、基板4及びカバー部材9Aにより規定されるとともに、電解質8Aが該密閉室内に充填される。基板4上にカバー部材9Aを固定する方法としては、特に限定されず、電解質配置工程で配置された電解質8A上に、直接又はエポキシ接着剤等の接着剤を介して、カバー部材9について例示した材質からなる被覆フィルム(例えば、PETフィルムやガラスフィルム)を貼り付ける方法や、電解質配置工程で配置された電解質8Aや電解質8A上に貼り付けられた上記被覆フィルムをガスバリア性材料で被覆する方法等が挙げられる。ガスバリア性材料による被覆方法としては、例えば、電解質配置工程で配置された電解質8Aや電解質8A上に貼り付けられた上記被覆フィルムに有機系又は無機系ガスバリア性材料を塗布法又は真空成膜法等により成膜してガスバリア性材料からなる被覆膜を形成する方法が挙げられる。電解質8A又は電解質8A上に貼り付けられた上記被覆フィルム上に形成されるガスバリア性材料からなる被覆膜は、異なるガスバリア性材料を複数種類重ねて形成したものであってもよく、例えば、有機系ガスバリア性材料からなる被覆膜の上に無機系ガスバリア性材料を成膜して無機系ガスバリア性材料からなる被覆膜を形成する方法や、電解質8A上に貼り付けられた上記被覆フィルムの上に有機系又は無機系ガスバリア性材料を成膜して有機系又は無機系ガスバリア性材料からなる被覆膜を形成する方法や、無機系ガスバリア性材料からなる被覆膜の上に有機系ガスバリア性材料を成膜して有機系ガスバリア性材料からなる被覆膜を形成する方法等が挙げられる。無機系ガスバリア性材料からなる被覆膜を形成する場合には、例えば、電解質8Aや電解質8A上に貼り付けられた上記被覆フィルムや有機系ガスバリア性材料からなる被覆膜に、アルミニウム等の金属を塗布法又は真空成膜法等により成膜してもよく、又は、塗布法又は真空成膜法等により、後述の無機化合物系被覆材料からなる被覆膜を形成してもよい。
【0105】
有機系ガスバリア性材料としては、シクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。有機系ガスバリア性材料としては、スチレン系樹脂やブタジエン系樹脂等のゴム系の材料を使用してもよいが、この場合、後述の無機系ガスバリア性材料及び/又は封止剤を併用することが好ましい。無機系ガスバリア性材料としては、アモルファスシリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、ITO、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機化合物系被覆材料;アルミニウム等の金属が挙げられる。また、ガスバリア性材料の塗布方法としては、スピンコート、スプレーコート等が挙げられる。ガスバリア性材料が無機系ガスバリア性材料を含む場合は、スパッタリング法、蒸着法、又はCVD法等の真空成膜法を用いてもよい。更に、ガスバリア性材料からなる被覆膜を封止剤で封止してもよい。封止剤としては、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。前記封止剤はフィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0106】
本発明の別の実施形態に係る非水二次電池100Aの製造方法では、電解質液の注入作業が不要となるため、基板上に複数の非水二次電池(ユニットセル)を同時に形成することができる。電極形成工程の際、所望のユニットセルに合わせて、基板上に、様々な回路(直列回路又は並列回路)のパターンの組み合わせ又は様々なサイズの組み合わせを有する、正極及び負極からなる複数の組を形成し、当該基板に対し、電解質配置工程と、カバー部材固定工程とを行うことにより、複数の非水二次電池(ユニットセル)を有する基板を得ることができ、その後、所望のユニットセルに合わせて個片化処理を行うことで、種々の電極パターン又はサイズを有する複数のユニットセルを効率よく同時に製造することができる。
【0107】
なお、個片化処理は、電解質配置工程又はカバー部材固定工程を行う前のいずれの段階で適宜行ってもよい。
また、電解質液の注入作業を行う実施形態であっても、電極形成工程の際、所望のユニットセルに合わせて、基板上に、様々な回路(直列回路又は並列回路)のパターンの組み合わせ又は様々なサイズの組み合わせを有する、正極及び負極からなる複数の組を形成してもよい。この場合、個片化処理は、電極形成工程より後であって電解質充填工程より前の任意の段階で行うことができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0109】
[合成例1]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量30000)70質量部と、感光剤として1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼンのナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸ジエステル15質量部と、可塑剤としてポリメチルビニルエーテル(質量平均分子量100000)15質量部とに対して、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を固形分濃度が40質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、レジスト組成物1を得た。このレジスト組成物1は、ノボラック系であり、非化学増幅系であり、ポジ型である。
【0110】
[合成例2]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量10000)52.5質量部と、ポリヒドロキシスチレン樹脂VPS−2515(日本曹達社製) 10質量部と、下記式(1)で表される樹脂27.5質量部と、下記式(2)で表される樹脂10質量部と、酸発生剤として下記式(3)で表される化合物2質量部と、増感剤として1,5−ジヒドロキシナフタレン2質量部と、添加剤としてトリエチルアミン0.01質量部及びサリチル酸0.02質量部と、溶剤としてPGMEA 107質量部及びガンマブチロラクトン6質量部とを混合して溶解させることによりレジスト組成物2を得た。このレジスト組成物2は、化学増幅系であり、ポジ型である。
【0111】
【化1】
【0112】
【化2】
【0113】
【化3】
【0114】
[実施例1]
スクリーン印刷法(上記で説明した第2のパターン形成方法)を用いて、
図2に示す櫛型電極1a及び1bを作製した。ただし、櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さは表1に示す通りに設定した。
【0115】
【表1】
【0116】
(集電体の形成)
まず、上層に密着付与層としてチタンの薄膜が形成された酸化膜を有するシリコン基板の表面(つまり、チタン薄膜表面)に、スパッタ法により、導電層としてアルミニウム膜(厚さ:400nm)を形成した。この基板上に、合成例1のポジ型レジスト組成物1をスピンコート法により塗布し、1.5μmのレジスト層を形成させ、120℃にて1分間乾燥させた。そして、
図2に示す櫛型電極1a及び1bに対応するパターンを有するマスクを用いて、レジスト層に選択露光(ghi混合線、露光量100mJ/cm
2)を行った。次いで、TMAH2.38質量%のアルカリ現像液で1分間現像した。現像後に、アルミニウムエッチング液(H
3PO
4:HNO
3:H
2O=4:1:1.6(質量比))でディップ法によりアルミニウム膜とチタン薄膜をエッチングし、アルミニウムパターン(チタン薄膜のパターンを下層に有するパターン)を形成して、櫛型集電体12a及び12bを形成した。
【0117】
(ガイド孔の作製−1)
集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、合成例1のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、50μmのレジスト層を形成させ、140℃にて5分間乾燥させた。そして、形成された櫛型の集電体12aと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm
2)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、シリコンウェーハの表面に、集電体12aと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12aが露出していた。
【0118】
(活物質層の形成−1)
LiFePO
4粒子34.02g、導電助剤としてアセチレンブラック5.04g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース2.10g、及び結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)0.84gを混合し(質量比は81:12:5:2)、更に58gの水を加えて混合し、固形分42質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を正極活物質として用いた。
【0119】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記正極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、正極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
(レジスト層の剥離−1)
レジスト層をアセトンにて剥離した。
【0120】
(ガイド孔の作製−2)
正極活物質が堆積されたシリコンウェーハの表面に、合成例2のレジスト組成物2をスピンコート法により塗布し、60μmのレジスト層を形成させ、140℃にて1分間乾燥させた。
形成された櫛型の集電体12bと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm
2)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、保護層としても機能する上記レジスト層により正極活物質を保護しつつ、シリコンウェーハの表面に、集電体12bと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12bが露出していた。
【0121】
(活物質層の形成−2)
Li
4Ti
5O
12粒子34.02g、導電助剤としてアセチレンブラック5.04g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース2.10g、及び結着剤としてSBR0.84gを混合し(質量比は87:6:5:2)、更に58gの水を加えて混合し、固形分42質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を負極活物質として用いた。
【0122】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記負極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、負極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
【0123】
(レジスト層の剥離−2)
最後にレジスト層をアセトンにて剥離して、櫛型電極1a及び1bを得た。スクリーン印刷法により電極活物質を充填するのに要した時間は、15分という非常に短い時間であった。
【0124】
<充放電特性>
[実施例2]
カバー部材9を下記の通りにして作製した。無アルカリガラス(NA32R、(株)NHテクノグラス、膜厚750μm、直径6インチ)を用意した。この無アルカリガラス上で複数個のカバー部材9を同時に作製し、最後にダイシング処理により個片化した。以下、カバー部材9の作製方法について、
図8を参照しながら説明するが、その際、同時に作製される複数個のサンプルのうち、1個についてのみ図示する。
図8(a)〜(c)において、上記無アルカリガラスの主平面の一方にブラスト用レジスト(BF410、東京応化工業(株))を積層し、露光・現像を行って、
図8(c)に示す通り、ブラスト加工面を露出させた。
図8(d)において、サンドブラスト処理を行い、上記ブラスト加工面を100μm掘り込んだ。
図8(e)において、レジストをアセトンにより剥離した。その後、ダイシング処理によりサンプルを個片化し、研磨処理により側面に注液孔10を形成して、カバー部材9を得た。カバー部材9の寸法は、22mm×33mm×750mμmであり、サンドブラスト処理により掘り込まれた凹部の寸法は、18mm×29mm×100μmであった。また、注液孔10の開口部の寸法は、カバー部材9の側面上で500μ×500μmであった。
【0125】
カバー部材9に形成された凹部に、実施例1で得た櫛型電極1a及び1bが収容されるように、エポキシ接着剤で、カバー部材9と、櫛型電極1a及び1bが形成されているシリコンウェーハとを結合させた。その後、カバー部材9とシリコンウェーハとからなる構造体を電解質液(1MのLiClO
4溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液))中に浸漬し、2Paで3分間減圧することで、注液孔10を介して、カバー部材9と上記シリコンウェーハで規定された密閉室内に電解質液を注液した。注液完了後、注液孔10をエポキシ樹脂により封止して、リチウムイオン二次電池を得た(サンプル数は3)。
【0126】
このようにして得られたリチウムイオン二次電池の厚さは1.5mmであり、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、はるかに薄いものであった。
これらの二次電池について、電流値を400μAに設定して、充電及び放電を行った。充放電曲線を
図9に示す。3サンプルとも同程度の容量であり再現性が確認された。また、この充放電曲線から読み取った初期放電容量(5サイクル時)の値を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
これらの結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、良好な充放電特性を有することが分かった。
【0129】
<レート特性>
[実施例3]
実施例2で作製したリチウムイオン二次電池(サンプル1〜3)について、Cレートを1C、5C、10C、20C、又は40Cに設定して、実施例2と同様にして、充電及び放電を行った。放電曲線を
図10に示す。また、1Cにおける放電容量を100%としたときの各Cレートにおける放電容量維持率を表3及び
図11に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
上記の結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、Cレートを上昇させた場合でも放電容量維持率が良好であることが分かった。
【0132】
<サイクル特性>
[実施例4]
実施例2と同様にして作製したリチウムイオン二次電池について、実施例2と同様にして、充電及び放電を行った(Cレート:5C)。充電及び放電を1000サイクル繰り返して行い、所定のサイクルにおいて放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量を100%としたときの各サイクルにおける容量維持率を
図12に示す。1000サイクル目でも容量維持率は75%であった。
これらの結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、1000サイクル後も、容量維持率が安定していることが分かった。
【0133】
<耐フッ酸性の付与>
[実施例5]
スパッタ法で表面に白金を蒸着したカバー部材9を用い、電解質液として1MのLiPF
6溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)を用いた以外は、実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池を得た。ただし、得られたリチウムイオン二次電池の活物質層の厚さは20μmであり、櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、及び歯の本数は表1と同じである。
このリチウムイオン二次電池について、電流値を200μAに設定して、充電及び放電を行った。放電曲線を
図13に示す。なお、活物質層の厚さ(電極膜厚)が実施例2の半分であるため、電流値も2分の1とした。
図13から明らかな通り、耐フッ酸性を有するカバー部材9を用いた場合、フッ酸を遊離しうる電解質を用いても、良好な放電特性が確認された。
【0134】
[実施例6:支持する基板の変更]
シリコン基板(シリコンウェーハ)をガラス基板に変更した他は、実施例1と同様にして、
図2に示す櫛型電極1a及び1bを作製した。なお、櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さも実施例1と同様であり、表1に示す通りに設定した。スクリーン印刷法により電極活物質を充填するのに要した時間は、15分という非常に短い時間であった。
【0135】
<充放電特性>
[実施例7]
実施例2で記載したのと同様のカバー部材9を用意し、当該カバー部材9に形成された凹部に、実施例6で得た櫛型電極1a及び1bが収容されるように、エポキシ接着剤で、カバー部材9と、櫛型電極1a及び1bが形成されているガラス基板とを結合させた。その後、実施例2と同様にして、カバー部材9と上記ガラス基板で規定された密閉室内に電解質液を注液した。注液完了後、注液孔10をエポキシ樹脂により封止して、リチウムイオン二次電池を得た(サンプル数は3)。
【0136】
このようにして得られたリチウムイオン二次電池の厚さは1.5mmであり、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、はるかに薄いものであった。
これらの二次電池について、電流値を400μAに設定して、充電及び放電を行ったところ、3サンプルとも同程度の容量であり再現性が確認された。また、この充放電曲線から読み取った初期放電容量(5サイクル時)の値を表4に示す。
【表4】
【0137】
実施例2と同様に、これらの結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、良好な充放電特性を有することが分かった。
【0138】
<レート特性>
[実施例8]
実施例7で作製したリチウムイオン二次電池(サンプル1〜3)について、Cレートを1C、5C、10C、20C、又は40Cに設定して、実施例7と同様にして、充電及び放電を行った。1Cにおける放電容量を100%としたときの各Cレートにおける放電容量維持率を表5に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
実施例3と同様に、上記の結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、Cレートを上昇させた場合でも放電容量維持率が良好であることが分かった。
【0141】
<サイクル特性>
[実施例9]
実施例7と同様にして作製したリチウムイオン二次電池について、実施例7と同様にして、充電及び放電を行った(Cレート:5C)。充電及び放電を1000サイクル繰り返して行い、所定のサイクルにおいて放電容量を測定した。1000サイクル目でも容量維持率は75%であった。
実施例4と同様に、これらの結果から、本発明に係る非水二次電池である上記リチウムイオン二次電池は、1000サイクル後も、容量維持率が安定していることが分かった。
【0142】
また、実施例7〜9のリチウムイオン二次電池は、支持基板とカバー部材の両方が透明なので、全体が透けて見える。実施例7〜9のリチウムイオン二次電池の場合、櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯の長さ方向に対して垂直かつ基板4に平行な方向視で櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯が互い違いに組み合っている領域において、基板4に垂直な方向から見たときに、櫛型電極1aの歯、櫛型電極1bの歯、及び櫛型電極1aの歯と櫛型電極1bの歯との間隙(透過部)の合計に対する、上記透過部の面積比は、約42%であった。
【0143】
実施例7〜9のリチウムイオン二次電池において、歯の太さを20μm、隣接する2本の歯同士の間隔を120μm、歯の本数を92本、及び活物質層の厚さを20μmに変更すると、上記面積比は約86%であった。また、実施例7〜9のリチウムイオン二次電池において、歯の太さを20μm、隣接する2本の歯同士の間隔を200μm、歯の本数を59本、及び活物質層の厚さを20μmに変更すると、上記面積比は約91%であった。
【0144】
透明の非水二次電池は、例えば、色素増感太陽電池等の透明部材を有する発電素子やその他の透明部材を有する物品と組み合わせて使用する場合において、意匠性の向上に寄与することも期待される。
【0145】
[実施例10:支持する基板の変更]
シリコン基板(シリコンウェーハ)をPETフィルムに変更した他は、実施例1と同様にして、
図2に示す櫛型電極1a及び1bを作製した。その際、PETフィルムの四隅をシリコンウェーハに貼り付けた状態(以下、このような状態にあるPETフィルムとシリコンウェーハとの組み合わせを「PETフィルム基板」ということがある)で櫛型電極作製作業(即ち、実施例1の(集電体の形成)から(レジスト層の剥離−2)までの作業)を行った。ただし、実施例1の(ガイド孔の作製−1)に相当する手順において、乾燥の条件を140℃、5分から120℃、5分間に変更し、実施例1の(ガイド孔の作製−2)に相当する手順において、乾燥の条件を140℃、1分から120℃、1分に変更した。なお、櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さも実施例1と同様であり、表1に示す通りに設定した。スクリーン印刷法により電極活物質を充填するのに要した時間は、15分という非常に短い時間であった。
【0146】
[実施例11]
次いで、実施例10で得た櫛型電極1a及び1bが形成されているPETフィルム基板上に、下記に示す組成の固体電解質前駆体をキャスト法により塗布し、100℃で1時間ベークして固体電解質とした。これにより、櫛型電極1aと1bとの間隙は上記固体電解質で充填された。その後、PETフィルム基板上の櫛型電極1a及び1bと固体電解質との組み合わせの全表面を被覆するように、エポキシ接着剤をキャスト法により塗布し、カバー部材9としてのPETフィルムを貼り付け、室温(23℃)で1時間乾燥させた。乾燥後、シリコンウェーハからPETフィルムを剥がしてリチウムイオン二次電池を得た。
上記固体電解質前駆体は、ポリマー(イオン伝導性ポリマー)としてPEO(ポリエチレンオキシド)、塩(支持塩)としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及び上記ポリマーの架橋反応を促進する重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)をそれぞれ100:10:0.1の質量比で含むものであった。
このようにして得られたリチウムイオン二次電池の厚さは1.5mmであり、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、はるかに薄いものであった。
【0147】
実施例11のリチウムイオン二次電池は、支持基板とカバー部材の両方が透明なので、全体が透けて見える。実施例11のリチウムイオン二次電池の場合、櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯の長さ方向に対して垂直かつ基板4に平行な方向視で櫛型電極1a及び櫛型電極1bにおける歯が互い違いに組み合っている領域において、基板4に垂直な方向から見たときに、櫛型電極1aの歯、櫛型電極1bの歯、及び櫛型電極1aの歯と櫛型電極1bの歯との間隙(透過部)の合計に対する、上記透過部の面積比は、約42%であった。
【0148】
実施例11のリチウムイオン二次電池において、歯の太さを20μm、隣接する2本の歯同士の間隔を120μm、歯の本数を92本、及び活物質層の厚さを20μmに変更すると、上記面積比は約86%であった。また、実施例11のリチウムイオン二次電池において、歯の太さを20μm、隣接する2本の歯同士の間隔を200μm、歯の本数を59本、及び活物質層の厚さを20μmに変更すると、上記面積比は約91%であった。
【0149】
透明の非水二次電池は、例えば、色素増感太陽電池等の透明部材を有する発電素子やその他の透明部材を有する物品と組み合わせて使用する場合において、意匠性の向上に寄与することも期待される。
【0150】
また、実施例11のリチウムイオン二次電池は、支持基板とカバー部材の両方が柔軟性を有しているので、所望の形状に変形(湾曲)させることができる。フレキシブルな支持基板とカバー部材とを備え、可撓性を有する非水電池は、例えば、人体や被服表面への貼り付けも容易なことから、センサー等との組み合わせにより、医療・介護・ヘルスケア分野への応用が期待される。
【0151】
[実施例12]
工程(1)
シリコン基板(シリコンウェーハ)上にユニットセル用の複数個の電極パターンが形成されるようマスクを変更した他は、実施例1と同様にして、ユニットセルごとに櫛型電極1a及び1bが配置された電極パターンを得た。各ユニットセルのサイズは、1.0cm×0.8cmであり、電極パターンの膜厚は40μmであった。
【0152】
工程(2)
周囲をテープでマスキングした各ユニットセル上に、実施例11と同一組成の固体電解質前駆体をキャスト法により塗布し、100℃で1時間ベークして固体電解質とした。なお、断面SEMにより各電極パターンと固体電解質とを確認したところ、櫛型電極1a又は1bと固体電解質との間でミキシングは発生しておらず、電極パターン上部及び電極パターンのスペース部に固体電解質が充填又は被覆されていた。
【0153】
工程(3)
その後、マスキング用のテープを剥離し、下記組成のガスバリア性被覆膜形成用材料1又は2を、電極パターンが形成され固体電解質が配置されたシリコンウェーハ全面に塗布し、100℃で20分間ベークして、シリコンウェーハ上の櫛型電極1a及び1bと固体電解質との組み合わせの全表面をガスバリア性被覆膜で被覆した。
なお、ガスバリア性被覆膜を剥離したところ、ガスバリア性被覆膜と固体電解質との間でミキシングは発生していなかった。
ガスバリア性被覆膜形成用材料1は、SEPTON8004(株式会社クラレ社製)を濃度10質量%となるようエチルヘキサンで調整することで得た。
ガスバリア性被覆膜形成用材料2は、アペル8007(三井化学株式会社社製)を濃度10質量%となるようエチルヘキサンで調整することで得た。
【0154】
工程(4)
ガスバリア性被覆膜形成用材料1又は2由来のガスバリア性被覆膜で櫛型電極1a及び1bと固体電解質との組み合わせの全表面を被覆した上記シリコンウェーハを、ユニットセルごとに個片化した。
【0155】
工程(5)
上記の個片化により得られたリチウムイオン二次電池について、電流値を100μAに設定して、25℃又は40℃で、充電及び放電を行った。ガスバリア性被覆膜形成用材料1を用いて作製したリチウムイオン二次電池の充放電曲線を
図14に示す。放電容量は、測定温度が25℃の場合(
図14(a))、70.3μAhであり、測定温度が40℃の場合(
図14(b))、94.2μAhであった。
【0156】
なお、実施例12では、工程(2)において、テープによるマスキングを行ったが、固体電解質前駆体としてUV硬化性の材料を用いることで、ユニットセルが形成される電極パターンの上部のみに固体電解質が形成されるような選択性を付与することができる。
また、実施例12における工程(3)の後、更にバリア性を高めるために無機系ガスバリア性材料を、塗布法又は真空成膜法を用いて、工程(3)で得たガスバリア性被覆膜上に成膜してもよい。例えば、アルミニウムをスパッタ法により成膜することができる。
また、実施例12における工程(3)の後、又は上記無機系ガスバリア性材料の成膜後、バリア性を高めるために、更に封止剤を用いてもよい。例えば、jER811(三菱化学株式会社製)に対しジエチレントリアミンを10質量%含むエポキシ樹脂系の封止剤を用い、50℃で2時間、更に100℃で30分間、低温ベークすることにより封止膜を形成することができる。
また、実施例12における工程(4)において、ユニットセルごとに個片化する前にシリコンウェーハに対し薄化処理を行ってもよい。例えば、膜厚750μmのシリコンウェーハを薄化処理により100μm程度にすることができ、全体でより微小な非水二次電池を作製することができる。
実施例12に記載したような製法により、種々の電極パターン又はサイズを有する複数のセルを効率よく同時に製造することができる。