(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
不織布を備えた吸収性物品であって、
前記不織布は、オーガニックコットン繊維と、熱可塑性の合成繊維と、を含み、
前記オーガニックコットン繊維は、前記不織布内で複数の繊維塊を形成しており、
前記オーガニックコットン繊維の表面は石油由来の油剤によってコーティングされていない、吸収性物品。
【0013】
オーガニックコットン繊維は、無農薬又は低農薬で栽培されるため、地球環境に優しく、また肌に優しいという安心感を使用者に与えることができる。また、オーガニックコットン繊維の表面は石油由来の油剤によってコーティングされていない。したがって、オーガニックコットン繊維からなる繊維塊が水分を保持したとしても、水分中に石油由来の油剤が染み出すという不安感を抑制することができる。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記合成繊維は、植物由来の油剤によってコーティングされている。
【0015】
合成繊維の表面が、石油由来の油剤ではなく、植物由来の油剤によってコーティングされている。これにより、目的に応じて合成繊維に親水性又は撥水性を付与することができる。また、オーガニックコットン繊維がそのまわりから水分を吸収したとき、合成繊維の表面にコーティングされた油剤を引き込むことがある。ここで、合成繊維の表面にコーティングされた油剤が植物由来の油剤であるため、オーガニックコットン繊維に保持された水分中には石油由来の油剤ではなく、植物由来の油剤が混入する。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記繊維塊の表面は植物由来の油剤によってコーティングされている。
【0017】
オーガニックコットン繊維の繊維塊の表面が、石油由来の油剤ではなく、植物由来の油剤によってコーティングされている。したがって、オーガニックコットン繊維によって保持された水分中に油剤が染み出したとしても、水分中に混入する油剤は植物由来からなるものである。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記不織布全体の重量に対する前記オーガニックコットン繊維の重量は、2%〜50%の範囲である。前記オーガニックコットン繊維は、そのまわりから水分を吸収し、吸収した水分を外部へ放出する。このように、オーガニックコットン繊維は、水分の吸収と放出のバランスをとる作用を有する。不織布全体の重量に対するオーガニックコットン繊維の重量が2%〜50%であるため、不織布全体として水分の吸収と放出のバランスをとることができる。
【0019】
好ましい一態様によれば、前記繊維塊の周りに、前記繊維塊及び前記合成繊維の密度よりも小さい密度を有する領域が形成されている。オーガニックコットン繊維からなる繊維塊が水分を吸収したとき、繊維塊は膨張する。このとき、繊維塊のまわりには密度の小さい領域が存在するため、繊維塊は、まわりから強く圧迫されることなく、膨張することができる。したがって、繊維塊は、より効果的に水分を吸収することができる。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記オーガニックコットン繊維は、前記合成繊維に熱融着されていない。オーガニックコットン繊維が合成繊維に熱融着されていないので、合成繊維に石油由来の油剤がコーティングされている場合であっても、合成繊維からオーガニックコットン繊維への油剤の移行を抑制することができる。これにより、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0021】
好ましい一態様によれば、前記複数の繊維塊は、前記不織布の厚み方向において、前記不織布の中央部に偏って設けられている。水分を吸収し易いオーガニックコットン繊維からなる繊維塊が、厚み方向における不織布の中央部に設けられているため、不織布の表面をなるべく乾燥した状態に保つことができる。これにより、使用者に肌触りのよい吸収性物品を提供することができる。
【0022】
好ましい一態様によれば、前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間の吸収体と、前記裏面シートと前記吸収体との間に設けられ、前記吸収体を覆う液不透過性の防漏シートと、を含み、前記表面シートと前記裏面シートの少なくとも一方は前記不織布により構成されており、前記不織布は、前記防漏シートと重複しない領域を有し、前記不織布の、前記防漏シートと重複しない領域は、少なくとも、前記幅方向における外側で、少なくとも前記吸収性物品の前側から後側にわたって延びている。すなわち、着用者の足回りに相当する領域は、防漏シートを含まず、上記不織布から構成される。不織布中の繊維塊は、水分を吸収し、放出する作用を有する。したがって、吸収性物品の足回りの領域は、着用者の肌側から吸収した水分を外部へ放出する。これにより、吸収性物品の足回りの領域をなるべく乾燥した状態に保つことができる。
【0023】
好ましい一態様によれば、前記オーガニックコットン繊維は、前記合成繊維の平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する。合成繊維12の平均繊維長を長くすることで、不織布全体の強度を向上させることができ、製造中及び使用中における繊維のケバ立ちを抑制することができる。一方、オーガニックコットン繊維10の平均繊維長を短くすることで、合成繊維12同士の熱融着点を減少させ、不織布として適度な柔軟性を実現できる。
【0024】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る吸収性物品の詳細について説明する。本発明の吸収性物品は、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンである。以下の実施形態では、使い捨ておむつを例に挙げて詳細に説明する。
【0025】
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
図1は、一実施形態に係る吸収性物品1の平面図である。
図2は、
図1とは反対側から見た吸収性物品1の平面図である。吸収性物品1は、長手方向L及び幅方向Wを有する。長手方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、長手方向Lと直交する方向である。以下、使用時に着用者の肌に面する側を、「肌面側」と呼ぶことがある。また、使用時に着用者の肌とは反対に向けられる側を、「非肌面側」と呼ぶことがある。
【0027】
吸収性物品1は、表面シート3と、裏面シート4と、吸収体7と、を有する。吸収体7は、表面シート3と裏面シート4の間に設けられている。表面シート3は、液透過性のシートから構成されていてよい。
【0028】
裏面シート4と吸収体7との間には、液不透過性の防漏シート5が設けられていてよい。防漏シート5は、少なくとも吸収体7を覆っている。裏面シート4は、防漏シート5を覆っており、防漏シート5よりも外側まで延びている。裏面シート4のうち、防漏シート5と重複していない領域は、幅方向Wにおける両外側で、長手方向Lの前側端部から後側端部まで延びている。なお、
図6において、裏面シート4のうち、防漏シート5と重複していない領域が、斜線によって示されている。
【0029】
表面シート3は、吸収体7を覆う液透過性シート3aと、幅方向Wにおいて液透過性シート3aの外側部を覆い、液透過性シート3aよりも外側に延びるサイドシート3bと、を有していてよい。幅方向Wにおけるサイドシート3bの内側縁は、立ち上がり可能に構成されており、漏防ギャザーを構成していてよい。
【0030】
表面シート3及び裏面シート4は不織布から構成される。
図3は、表面シート3又は裏面シート4の断面を示す模式図である。この不織布は、オーガニックコットン繊維10と、合成繊維12と、を含む。ここで、「オーガニックコットン」は、農業段階において、国際的な基準(CODEXに準じた各国の基準)に基づき有機性が認証され、それが証明されるコットンを意味する。
【0031】
合成繊維12は、熱可塑性樹脂からなる繊維であってよい。熱可塑性樹脂からなる繊維としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。熱可塑性樹脂からなる繊維は、油剤によってコーティングされていてもよい。熱可塑性樹脂からなる繊維は、目的に応じて、親水化油剤によって親水化されていてもよいし、撥水化油剤によって撥水性を持たせてもよい。例えば、表面シート3の液透過性シート3aとして不織布を使用する場合には、合成繊維12を親水化油剤によってコーティングすることが好ましい。また、裏面シート4又は表面シート3のサイドシート3bとして不織布を使用する場合には、合成繊維12を撥水化油剤によってコーティングすることが好ましい。さらに、表面シート3のサイドシート3bとして不織布を使用する場合には、裏面シート4としての不織布よりも高い撥水性を有する撥水化油剤によって合成繊維12をコーティングすることがより好ましい。
【0032】
オーガニックコットン繊維10は、不織布内で複数の繊維塊11を形成している。オーガニックコットン繊維10は、合成繊維12よりも短い平均繊維長を有していてよい。これにより、オーガニックコットン繊維10は、不織布内で繊維塊11を形成し易くなる。
【0033】
オーガニックコットン繊維10の繊維塊11の表面は石油由来の油剤によってコーティングされていない。オーガニックコットン繊維10は、無農薬又は低農薬で栽培されるため、地球環境に優しく、また肌に優しいという安心感を使用者に与えることができる。また、オーガニックコットン繊維10の表面は石油由来の油剤によってコーティングされていない。したがって、オーガニックコットン繊維10からなる繊維塊11が水分を保持したとしても、水分中に石油由来の油剤が染み出すという不安感を抑制することができる。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0034】
上記態様の代わりに、オーガニックコットン繊維10の繊維塊11の表面は植物由来の油剤によってコーティングされていてもよい。例えば、後述するように、繊維塊11のまわりの合成繊維12に油剤をコーティングすることによって、繊維塊11の表面を植物由来の油剤によってコーティングする(覆う)ことができる。
【0035】
また、オーガニックコットン繊維10の表面が、植物由来からなる油剤によってコーティングされている場合、オーガニックコットン繊維によって保持された水分中に油剤が染み出したとしても、水分中に混入する油剤は植物由来からなるものである。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0036】
合成繊維12にコーティングする油剤は、石油由来のものであっても、植物由来のものであってもよい。油剤により、合成繊維12に親水性又は撥水性を付与することができる。
【0037】
油剤は、植物由来の油剤であることが好ましい。オーガニックコットン繊維10がまわりから水分を吸収したとき、合成繊維12の表面にコーティングされた油剤を引き込むことがある。ここで、合成繊維12の表面にコーティングされた油剤が植物由来の油剤であるため、オーガニックコットン繊維10に保持された水分中には石油由来の油剤ではなく、植物由来の油剤が混入する。よって、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0038】
合成繊維12にコーティングされる植物由来からなる油剤は、例えば、米油、ココナッツ油、椿油、茶葉若しくはユーカリから抽出した成分由来の油剤、米ぬかから抽出した成分由来の油剤、又はこれらの組み合わせであってよい。安心感という観点から、植物由来からなる油剤は、食品として利用可能なものから抽出した成分由来の油剤であることがより好ましい。
【0039】
また、油剤は、弱酸性であることが好ましい。人肌に近いpHの油剤を用いることで、肌に優しい不織布にすることができる。
【0040】
不織布全体の重量に対するオーガニックコットン繊維10の重量の比は、2%〜50%、好ましくは3%〜35%、より好ましくは3%〜10%の範囲である。オーガニックコットン繊維は、そのまわりから水分を吸収し、吸収した水分を外部へ放出する。このように、オーガニックコットン繊維10は、水分の吸収と放出のバランスをとる作用を有する。不織布全体の重量に対するオーガニックコットン繊維10の重量が上記範囲であるため、不織布全体として水分の吸収と放出のバランスをとることができる。
【0041】
合成繊維12の繊度は、特に制限されないが、不織布の強度、柔軟性、肌触り、液透過性などの点から、1.1〜8.8dtex、好ましくは1.5〜4.6dtexの範囲にあることが好ましい。
【0042】
また、2.0dtex以上の繊度を有する繊維に、2.0dtex未満の繊度を有する繊維を好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜30%含んだ合成繊維を用いてもよい。この場合、平均繊維長を長く保ちつつ、繊維長の短い合成繊維を含めることができる。合成繊維12が細い番手の繊維を含むことで、オーガニックコットン繊維10の繊維塊11が不織布から脱落することをより抑制することができる。
【0043】
図3に示すように、複数の繊維塊11は、厚み方向Tにおいて吸収性物品1の中央側に偏って設けられていることが好ましい。ここで、厚み方向Tにおいて吸収性物品1を表面側の両層T2,T3と中央の層T1とに三等分し、複数の繊維塊11のうちの60%以上、好ましくは70%以上の繊維塊が中央の層T1に存在する場合に、複数の繊維塊11が厚み方向Tにおいて吸収性物品1の中央に偏って設けられているものとする。
【0044】
水分を吸収し易いオーガニックコットン繊維10からなる繊維塊11が、厚み方向Tにおける不織布の中央に設けられているため、不織布の表面をなるべく乾燥した状態に保つことができる。これにより、使用者に肌触りのよい吸収性物品1を提供することができる。
【0045】
厚み方向における繊維塊11の偏りを確認するためには、X線CTを用いることができる。具体的には、測定対象の繊維塊11の部分を含む不織布について、不織布の一方の面から、他方の面が撮影されるようにX線CT(例えば、株式会社ビームセンス社製FLEX-M863)により撮影する。撮影によって得られた画像を用いて、同一不織布内の10点の繊維塊11について確認することで、繊維塊11の偏りを判断できる。なお、撮影後のサンプル中の繊維塊11は、後述するカヤステインQによる染色方法を利用することによって、オーガニックコットン繊維の繊維塊11であるかどうかを確認することができる。
【0046】
不織布は、一般的には10〜60g/cm
2の範囲の坪量を有することが好ましい。不織布の厚みは好ましくは0.5〜5.0mm、より好ましくは0.8〜3.5mmである。不織布の厚さは、測定圧3g/cm
2、直径10mmの測定端子を有する厚み計(株式会社 尾崎製作所社製 Peacockダイヤルシックネスゲージ)を用いて測定することができる。具体的には、対象の不織布の異なる10点の厚みを測定し、その平均値から「厚さ」を得る。
【0047】
上記厚みを有する不織布において、合成繊維に対するオーガニックコットン繊維の重量比率を25%より小さくすることが好ましい。この条件で、厚み方向における不織布の中央に繊維塊11を偏って設けることで、製造工程中及び製品使用中におけるオーガニックコットン繊維の脱落をより抑制することが可能となる。
【0048】
合成繊維に対するオーガニックコットン繊維の重量比率は、以下の方法により算出することができる。まず、不織布から単位面積(例えば、5cm×5cm)の試験片を取り出す。この試験片からオーガニックコットン繊維を取り出し、取り出したオーガニックコットン繊維の重量を測定する。これにより、合成繊維に対するオーガニックコットン繊維の重量比率を算出することができる。
【0049】
また、試験片からオーガニックコットン繊維を取り出す際に、合成繊維とオーガニックコットン繊維との違いを判別する必要がある。不織布中の繊維が、オーガニックコットン繊維からなるか合成繊維からなるかということは以下の方法により確認することができる。まず、試験片と同量のカヤステインQ(日本化薬株式会社製)を秤量し、カヤステインQの100倍の重量のイオン交換水(60〜70度)で溶解する。この溶液を加熱し、溶液が沸騰する直前に、中性洗剤で洗浄した試験片を溶液内に投入する。その後、溶液を5分間煮沸した後、試験片を速やかに水洗・乾燥した。この時点で、繊維塊は、繊維の種別に応じた色に染色される。その後、カヤステインQの各種繊維への色相を元に繊維塊の鑑別を行うことができる。
【0050】
不織布に含まれるオーガニックコットン繊維10は、合成繊維12の平均繊維長よりも短い平均繊維長を有し、及び/又は合成繊維12の繊度よりも細い繊度を有することが好ましい。合成繊維12の平均繊維長を長くし、及び/又は合成繊維12の繊度を太くすることで、不織布全体の強度を向上させることができ、製造中及び使用中における繊維のケバ立ちを抑制することができる。一方、オーガニックコットン繊維10の平均繊維長を短くし、及び/又はオーガニックコットン繊維10の繊度を細くすることで、合成繊維12同士の熱融着点を減少させ、不織布として適度な柔軟性を実現できる。
【0051】
「平均繊維長」は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定される平均繊維長とする。なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法にあたる。
【0052】
図3では、表面シート3又は裏面シート4を構成する単層の不織布の断面が示されている。この代わりに、表面シート3又は裏面シート4は、複数の不織布が重ね合わせられた複層構造を有していてもよい。
【0053】
図4は、吸収性物品の一部分(例えば
図1のF3−F3線)の断面を示している。この領域では、表面シート3を構成する不織布と裏面シート4を構成する不織布が互いに重なっている。より具体的には、
図1のF3−F3線の位置では、サイドシート3bと裏面シート4とが互いに重なり合っている。
【0054】
このような場合、オーガニックコットン繊維10の繊維塊11は、吸収性物品1の厚み方向Tにおける中央に偏って配置されていればよい。具体的には、繊維塊11が表面シート3と裏面シート4の各々のシートの表面に偏って配置されていたとしても、表面シート3と裏面シート4全体として吸収性物品1の厚み方向Tにおける中央に偏って配置されていればよい。これにより、吸収性物品の表面をなるべく乾燥した状態に保つことができ、使用者に肌触りのよい吸収性物品1を提供することができる。
【0055】
図3及び
図4に示すように、オーガニックコットン繊維10からなる繊維塊11の周りに、繊維塊11及び合成繊維12の密度よりも小さい密度を有する領域15が形成されていることが好ましい。オーガニックコットン繊維10からなる繊維塊11が水分を吸収したとき、繊維塊11は膨張する。このとき、繊維塊11のまわりには密度の小さい領域が存在するため、繊維塊11は、まわりから強く圧迫されることなく、膨張することができる。したがって、繊維塊11は、より効果的に水分を吸収することができる。これにより、オーガニックコットン繊維10による保湿効果を十分に発揮することができる。
【0056】
好ましくは、オーガニックコットン繊維10は、合成繊維12に熱融着されていない。オーガニックコットン繊維10が合成繊維12に熱融着されていないので、合成繊維12からオーガニックコットン繊維10への油剤の移行を抑制することができる。これにより、使用者に、肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0057】
オーガニックコットン繊維10は、吸収性物品1を構成する不織布のうち、少なくとも、防漏シート5と重複しない領域の不織布に含まれていることが好ましい。具体的には、前述したオーガニックコットン繊維10を含む不織布から構成される表面シート3及び/又は裏面シート4の、防漏シート5と重複しない領域は、少なくとも、幅方向Wにおける外側で、少なくとも吸収性物品1の前側から後側にわたって延びている。すなわち、着用者の脚回りに相当する領域は、防漏シート5を有しておらず、オーガニックコットン繊維10を含む不織布のみから構成される。不織布中の繊維塊11は、水分を吸収し、放出する作用を有する。したがって、吸収性物品1の脚回りの領域は、着用者の肌側から吸収した水分を外部へ放出する。これにより、吸収性物品1の脚回りの領域をなるべく乾燥した状態に保つことができる。
【0058】
また、表面シート3を構成する液透過性シート3aは、前述したようなオーガニックコットン繊維10を含んだ不織布から構成されることが好ましい。この場合、不織布を構成する合成繊維12は、親水化油剤によってコーティングされることが好ましい。液透過性シート3aは、着用者の股下に相当する位置に配置され、着用者の肌に接する面積が大きいシートである。したがって、液透過性シート3aにオーガニックコットン繊維10を含んだ不織布を使用することで、使用者に肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0059】
また、裏面シート3bは外側から使用者が触れやすい箇所であるため、裏面シート3bにオーガニックコットン繊維10を含んだ不織布を使用したときにも、使用者に肌に優しいという安心感を与えることができる。
【0060】
図5は、オーガニックコットン繊維10からなる繊維塊11を含む不織布の製造方法の一例を示す模式図である。
図6は、
図1に続くプロセスを示す模式図である。
【0061】
まず、オーガニックコットン繊維10の原綿を準備する。次に、オーガニックコットン繊維10の原綿をウェブ状に形成する(ステップS1)。例えば、オーガニックコットン繊維10の原綿は、カーディング装置20によってウェブ状に形成することができる。ウェブ状のオーガニックコットン繊維10は、搬送ベルト上を搬送される。
【0062】
次に、後述するステップS3の前に、オーガニックコットン繊維10のウェブを湿らせることが好ましい(ステップS2)。ステップS2は任意に実施されればよい。オーガニックコットン繊維10の加湿は、例えば水滴を噴射する加湿装置30によって行うことができる。オーガニックコットン繊維10のウェブを湿らせてからステップS3にて高圧の水流を噴射することによって、より繊維密度の均一なシートにすることができる。
【0063】
次に、オーガニックコットン繊維10のウェブをメッシュ50上に置き、オーガニックコットン繊維10のウェブに水流を噴射しシートにする(ステップS3)。オーガニックコットン繊維10のウェブに噴射する水流は、噴射装置40によって、小ノズル径のノズルから高水圧で噴射される。
【0064】
これにより、繊維長の小さいオーガニックコットン繊維10がメッシュ50の開口を通って除去される。また、水流の噴射により、微細な異物もメッシュ50の開口を通って除去される。したがって、本ステップS3以降のステップ(特に混合繊維から不織布を形成するステップ)において、繊維長の小さいオーガニックコットン繊維10の脱落を抑制することができる。その結果、製造工程中に配備された様々な設備に微粉が付着することを抑制することができる。
【0065】
さらに、本ステップS3において、オーガニックコットン繊維10のウェブに水流を噴射することによって、オーガニックコットン繊維10が硬い異物から離れるように異動するため、オーガニックコットン繊維10の表面に異物が表れ易くなる。したがって、オーガニックコットン繊維10のシートの表面に異物を目立たせることができる。これにより、異物をより確実に除去することができるようになる。
【0066】
メッシュの開口率は好ましくは5〜40%、より好ましくは5〜20%の範囲である。これにより、製造工程中に微粉として脱落し易い繊維長の短いオーガニックコットン繊維を効果的に除去することができる。また、メッシュの開口径は、好ましくは0.2mm〜0.6mm、より好ましくは0.25mm〜0.45mmである。
【0067】
図1では、オーガニックコットン繊維10のシートの片面からオーガニックコットン繊維10のウェブに水流を噴射している。オーガニックコットン繊維10のウェブに噴射された水流は、異物のまわりの繊維を押しのけることで、異物をシート上に露にすることができる。これにより、より効果的にシートの表面に異物を露にさせることができる。なお、オーガニックコットン繊維10のシートへ噴射する水流の圧力は、異物をシートの表面に露出させ易くするよう適宜調整することが好ましい。
【0068】
次に、オーガニックコットン繊維10のシートを乾燥させる(ステップS4)。オーガニックコットン繊維10のシートの乾燥は、乾燥機60を用いて実施される。
【0069】
次に、オーガニックコットン繊維10のシートの表面に表れた異物を除去する(ステップS5)。具体的な一例として、まずオーガニックコットン繊維10のウェブに水流を噴射した後であって後述するオーガニックコットン繊維のシートを開繊する前に、オーガニックコットン繊維10のシートの表面に露出した異物を除去する。異物の位置は、カメラ70によって自動的に特定してもよい。ステップS3において、異物がオーガニックコットン繊維10のシートの表面に表れているので、より確実に異物を除去することができる。
【0070】
異物が取り除かれたオーガニックコットン繊維10のシートWは、一端、ロールRに巻き取られてもよい。
【0071】
次に、オーガニックコットン繊維のシートを開繊し、綿状のオーガニックコットン繊維を形成する。上記工程S1〜S5により、繊維長の小さいオーガニックコットン繊維は大幅に除去されていることに留意すべきである。特に、ステップS3において水流の圧力やメッシュの階効率を調整することにより、0.3mm未満の繊維長を有するオーガニックコットン繊維10の数を、0.3mm以上の繊維長を有するオーガニックコットン繊維10の数の1%以下にすることが好ましい。これにより、不織布の製造工程中に、オーガニックコットン繊維の脱落を抑制することができる。また、オーガニックコットン繊維中の特に微小な繊維、すなわち不織布の繊維間の空隙から脱落しやすい繊維を少なくすることができ、製造工程中における微粉の発生を抑制することができる。さらに、オーガニックコットン繊維を吸収性物品に用いた場合において、脱落した微小な繊維によるシート間接合強度の低下を抑制でき、これにより吸収性物品の成型性と使用中の強度を確保することができる。
【0072】
次に、合成繊維12と綿状のオーガニックコットン繊維10との混合繊維から不織布を形成する。合成繊維12は、熱可塑性樹脂からなる繊維であってよい。熱可塑性樹脂からなる繊維としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。熱可塑性樹脂からなる繊維は、上述した油剤によってコーティングされていてもよい。油剤によるコーティングのタイミングは、合成繊維12をオーガニックコットン繊維10と混合する前であることが好ましい。
【0073】
混合繊維から不織布を形成する方法の一例について、
図2を参照して説明する。まず、第1段のカーディング装置102により合成繊維12を供給する。また、第2段のカーディング装置104で、上記工程S1〜S5を経たオーガニックコットン繊維10を供給する。オーガニックコットン繊維10は剛性が低く柔らかい材質であるために、カーディング装置104のピンによって塊状の繊維塊11にすることができる。さらに、第3段のカーディング装置106により合成繊維12を供給する。これにより、オーガニックコットン繊維からなる繊維塊11が厚み方向の中央に偏って配置された混合繊維が形成される。これにより、混合繊維から繊維塊11が脱落することを抑制することができる。
【0074】
上記の混合繊維を、例えば、スルーエアー方式の加熱室110に送り、合成繊維12を熱融着することで、不織布13が製造される。なお、オーガニックコットン繊維10は熱融着されず、繊維同士の絡み合いによって不織布13内に留まる。
【0075】
混合繊維全体、すなわち不織布全体の重量に対するオーガニックコットン繊維10の重量の比は、2%〜50%、好ましくは3〜35%、より好ましくは3〜10%である。オーガニックコットン繊維の量が多いと、繊維塊11が多くの水分を吸収してしまい、吸収性物品を着用した着用者に不快感を与えてしまうからである。
【0076】
合成繊維12の繊度は、特に制限されないが、不織布の強度、柔軟性、肌触り、液透過性などの点から、1.1〜8.8dtex、好ましくは1.5〜4.6dtexの範囲にあることが好ましい。
【0077】
また、2.0dtex以上の繊度を有する繊維に、2.0dtex未満の繊度を有する繊維を好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜30%含んだ合成繊維を用いてもよい。この場合、平均繊維長を長く保ちつつ、繊維長の短い合成繊維を含めることができる。合成繊維12が細い番手の繊維を含むことで、オーガニックコットン繊維の繊維塊が不織布から脱落することをより抑制することができる。
【0078】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0079】
例えば、上記実施形態では、スルーエアー方式の加熱室を用いて不織布を製造する方法を示した。これに代えて、混合繊維から不織布を製造するために他の公知の任意の方法を採用することができる。