【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
まず、実施例1のGa、Alを含有するNa型のMFIゼオライト(FeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3))の合成方法を説明する。
コロイダルシリカ58.9g(SiO
2 30.6wt%、Na
2O 0.4wt%、H
2O 69.0wt%)水酸化ナトリウム1.69gからなる溶液をA液、硫酸アルミニウム・n水和物0.19g、硝酸ガリウム・n水和物0.11g、硝酸鉄・9水和物0.24g、臭化テトラプロピルアンモニウム3.10g、精製水187.8gからなる溶液をB液とした。A液とB液を室温で撹拌しながら徐々に混合した後、さらにミキサー中で15分間激しく撹拌した。
【0070】
この混合溶液を60℃に保温して一晩静置した後、オートクレーブ中にて自己圧力下、150℃、72時間、300rpmの条件下で水熱合成反応を行った。冷却後、精製水により十分に洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥、空気気流中にて550℃で3時間焼成することで、FeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3(酸密度)、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた(
図1参照)。
【0071】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比74wt%/26wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した粉末状のNa型FeGaAl−MFIゼオライト、バインダーとしてのシリカ粉末(エボニックデグサGmbH(有限会社)、製品名:アエロジル200)、成形助剤としてのでんぷんを所定量混合した後、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度4.5wt%)を適量加えながら混練し、塊状のゼオライト/シリカ混合物を得た。その後、押し出し成形器にて円筒状(1.0mmφ)に加工し、120℃での3時間乾燥、空気流通下における550℃での3時間焼成を経て、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を得た。
【0072】
この複合体に、沸騰還流下での2.2mol/L硝酸アンモニウム水溶液によるイオン交換とそれに続く水洗浄を4回施した後(1回当りのイオン交換は2時間とし、毎回新しい2.2mol/L硝酸アンモニウム水溶液と入れ替えた)、120℃での3時間乾燥、空気流通下における550℃での3時間焼成を経て、プロトン型のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒とした。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=74wt%/26wt%となった(
図1参照)。
【0073】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比74wt%/26wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を、長さが1.0〜2.0mmの範囲内に収まるように整粒し、性能評価用の触媒試料とした。反応試験はn−ヘキサンの接触分解反応を固定床流通式反応装置にて行った。触媒2.0mL(充填重量としては1.32gとなる。)を内径12.6mmのステンレス反応管(SUS316製)に触媒層の層高が約20mmとなるように充填し、触媒層の前後にガラスウールを、さらにその前後にアルミナビーズを充填した。
【0074】
反応条件は、反応温度565℃、全圧0.1MPa、n−ヘキサンのLHSV(Liquid Hourly Space Velocity)を4.5h
−1(n−ヘキサンの供給流量9.0mL/h)として、n−ヘキサン接触分解反応を約340時間行った。反応を開始してから約30時間後に気相および液相生成物を採取してガスクロマトグラフィー分析を行い、原料転化率(wt%)および低級オレフィン(エチレン、プロピレン)と芳香族炭化水素の収率(wt%)を求め、反応初期の触媒性能の指標とした。また、一定時間毎に生成物の採取およびガスクロマトグラフィー分析を行って、触媒性能の経時変化を求めた。さらに、LECO・Carbon分析法(燃焼・非分散型赤外線吸収法による炭素定量分析装置、LECOジャパン製を用いた分析法)により、反応試験後の触媒上への炭素析出量を測定した。本試料の触媒性能のまとめを
図2に、触媒性能の経時変化を
図5にそれぞれ示す。
【0075】
(実施例2)
次に、実施例2のFeAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Al)=120.3)の合成方法を説明する。
コロイダルシリカ58.9g(SiO
2 30.6wt%、Na
2O 0.4wt%、H
2O 69.0wt%)、水酸化ナトリウム1.69gからなる溶液をA液、硫酸アルミニウム・n水和物 0.29g、硝酸鉄・9水和物0.24g、臭化テトラプロピルアンモニウム3.10g、精製水187.8gからなる溶液をB液とした以外は実施例1と同様にして、Na型のFeAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Al)=120.3、Fe/(Fe+Al)=0.5、Al/(Fe+Al)=0.5と求められた(
図1参照)。
【0076】
次に、FeAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比75wt%/25wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した粉末状のNa型FeAl−MFIゼオライト、シリカ粉末、でんぷんを用いて、実施例1と同様の方法によって成形化・イオン交換し、円筒状のプロトン型FeAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒とした。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=75wt%/25wt%となった(
図1参照)。
【0077】
次に、FeAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比75wt%/25wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、反応時間を約330時間とした以外は実施例1と同様の方法で性能評価試験を実施した。また、LECO−Carbon分析法により、反応試験後の触媒上への炭素析出量を測定した。本試料の触媒性能のまとめを
図2に示す。
【0078】
(比較例1)
次に、比較例1のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた(
図1参照)。
【0079】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/アルミナ複合体触媒(Zeolite/Al
2O
3混合比77wt%/23wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した、粉末状のNa型FeGaAl−MFIゼオライトとアルミナ粉末(日揮触媒化成(株)、カタロイドAP−1、Al
2O
3含有率71.7wt%)に精製水を適量加えながら混練し、塊状のゼオライト/アルミナ混合物を得た。その後、押し出し成形器にて円筒状(1.0mmφ)に加工し、120℃での3時間乾燥、空気流通下における550℃での3時間焼成を経て、FeGaAl−MFIゼオライト/アルミナ複合体を得た。この複合体に、沸騰還流下での2.2mol/L硝酸アンモニウム水溶液によるイオン交換とそれに続く水洗浄を4回施した後(1回当りのイオン交換は2時間とし、毎回新しい2.2mol/L硝酸アンモニウム水溶液と入れ替えた)、120℃での3時間乾燥、空気流通下における550℃での3時間焼成を経て、プロトン型のFeGaAl−MFIゼオライト/アルミナ複合体触媒とした。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/アルミナ=77wt%/23wt%となった(
図1参照)。
【0080】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/アルミナ複合体触媒(Zeolite/Al
2O
3混合比77wt%/23wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/アルミナ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、n−ヘキサンのLHSVを5.0h
−1(n−ヘキサンの供給流量10.0mL/h)、反応時間を約100時間とした以外は実施例1と同様の方法で反応試験を実施した。また、LECO−Carbon分析法により、反応試験後の触媒上への炭素析出量を測定した。本試料の触媒性能のまとめを
図2に、触媒性能の経時変化を
図5にそれぞれ示す。
【0081】
FeGaAl−MFIゼオライトとアルミナバインダーで成形複合化した試料では(比較例1)、初期プロピレン収率は約18wt%という高い値を示したが、
図5の経時変化からわかるように、80時間を経過した頃から収率の低下が見られ、100時間経過時においては明白な触媒性能の低下が確認された。一方、バインダーにシリカを用い、比較例1の試料と略同じ混合比にて成形複合化した試料では(実施例1)、初期プロピレン収率は若干低いものの、芳香族の収率は低く抑えられ、結果として340時間以上の長い触媒寿命が達成された(
図5参照)。
【0082】
反応試験後に触媒上へ析出したカーボン量を測定したところ、アルミナバインダーを用いた試料では100時間で24wt%、シリカバインダーを用いた試料では340時間で4.8wt%となり(
図2)、析出カーボン量は1/5以下にまで低減されることがわかった。また、FeGaAl−MFIゼオライトについても、シリカバインダーで成形複合化した試料(実施例2)を用いることで、同様の効果が見られた(
図2)。シリカバインダーで成形複合化することで、ゼオライトの外表面酸点が被覆・不活性化され、芳香族の生成が抑えられることでカーボン析出抑制能が著しく向上し、結果として長い触媒寿命を与えることが確認された。
【0083】
(実施例3)
次に、実施例3のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法について説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた(
図3参照)。
【0084】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比68wt%/32wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した粉末状のNa型FeGaAl−MFIゼオライト、シリカ粉末、でんぷんを用いて、実施例1と同様の方法によって成形化・イオン交換し、混合比を変えた円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=68wt%/32wt%となった(
図3参照)。
【0085】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比68wt%/32wt%)の性能評価試験方法について説明する。
上記の手順に沿って調製した円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を、長さが1.0〜2.0mmの範囲内に収まるように整粒し、性能評価用の触媒試料とした。反応試験はn−ヘキサンの接触分解反応を固定床流通式反応装置にて行った。触媒1.44g(ゼオライト含有量0.98g:充填容積としては2.0mLとなる)を内径12.6mmのステンレス反応管(SUS316製)に充填し、触媒層の前後にガラスウールを、さらにその前後にアルミナビーズを充填した。
【0086】
反応条件は、反応温度565℃、全圧0.1MPa、n−ヘキサンのWHSV(Weight Hourly Space Velocity)を6.0h
−1(n−ヘキサンの供給流量5.9g/h)として、n−ヘキサン接触分解反応を約360時間行った。反応を開始してから約30時間後に気相および液相生成物を採取してガスクロマトグラフィー分析を行い、原料転化率(wt%)および低級オレフィン(エチレン、プロピレン)と芳香族炭化水素の収率(wt%)を求め、反応初期の触媒性能の指標とした。また、一定時間毎に生成物の採取およびガスクロマトグラフィー分析を行って、触媒性能の経時変化を求めた。さらに、LECO−Carbon分析法により、反応試験後の触媒上への炭素析出量を測定した。本試料の触媒性能のまとめを
図4に示す。
【0087】
(実施例4)
次に、実施例4のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた(
図3参照)。
【0088】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した粉末状のNa型FeGaAl−MFIゼオライト、シリカ粉末、でんぷんを用いて、実施例1と同様の方法によって成形化・イオン交換し、混合比を変えた円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図3参照)。
【0089】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、触媒充填量を1.09g(ゼオライト含有量0.98g:充填容積としては2.0mLとなる)、反応時間を約480時間とした以外は実施例3と同様の方法で反応試験を実施した。また、LECO−Carbon分析法により、反応試験後の触媒上への炭素析出量を測定した。
【0090】
本試料の触媒性能のまとめを
図4に、触媒性能の経時変化を
図5にそれぞれ示す。
図4は混合組成が異なるFeGaAl−MFI/SiO
2複合体触媒の性能についてまとめたものである。ゼオライトの含有率が異なる試料を3種類調製(68wt%,74wt%,90wt%)し、初期性能について検討したところ、ゼオライトの含有率が高くなるにしたがい、反応転化率、低級オレフィン収率、芳香族収率は増加した。また、どの試料を用いても芳香族収率は5.0wt%以下の低い値に抑えられ、結果として340時間以上の長い触媒寿命を実現した。とりわけ、高いゼオライト含有率(90wt%)を有する試料(実施例4)においても、初期芳香族収率は4.6wt%と低く抑えられ、480時間以上の極めて長い触媒寿命が達成された(
図5参照)。
従って、シリカバインダーによる複合体触媒は、幅広いシリカ混合率(10〜30wt%程度)で高いプロピレン収率と長い触媒寿命を同時に与えることが確認された。
【0091】
(実施例5)
次に、実施例5のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0092】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法を説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図6参照)。
【0093】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法について説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、n−ヘキサンのLHSVを6.0h
−1(n−ヘキサンの供給流量12.0mL/h)、反応時間を約30時間(サンプリングは反応を開始してから5、24、30時間後に実施した)とした以外は実施例4と同様の方法で反応試験を実施した。本試料の初期触媒性能を
図6に示す。
【0094】
(実施例6)
次に、実施例6のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0095】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法について説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図6参照)。
【0096】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、n−ヘキサンのLHSVを7.0h
−1(n−ヘキサンの供給流量14.0mL/h)、反応時間を約30時間(サンプリングは反応を開始してから5、24、30時間後に実施した)とした以外は実施例4と同様の方法で反応試験を実施した。本試料の初期触媒性能を
図6に示す。
【0097】
(比較例2)
次に、比較例2のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0098】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法を説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図6参照)。
【0099】
次に、比較例2としてのFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、n−ヘキサンのLHSVを15.0h
−1(n−ヘキサンの供給流量30.0mL/h)、反応時間を約30時間(サンプリングは反応を開始してから5、24、30時間後に実施した)とした以外は実施例4と同様の方法で反応試験を実施した。本試料の初期触媒性能を
図6に示す。
【0100】
図6はFeGaAl−MFI/SiO
2複合体触媒の初期性能におけるLHSV(接触時間)の影響についてまとめたものである。実施例4を基準として4.5→6.0→7.0→15.0h
−1とLHSVを上げる(接触時間を短くする)にしたがい、反応転化率、低級オレフィン収率、芳香族収率は徐々に低下したが、LHSV 4.5〜7.0h
−1でのプロピレン収率の低下はごく僅かであった(15.6→15.1wt%)。一方、芳香族収率は約半分にまで低下した(4.6→2.2wt%)。従って、シリカバインダーを用いた複合体触媒は、広いLHSV(接触時間)領域にて15wt%を超える高いプロピレン収率を与えることが確認された。なお、
図6では、n−ヘキサンとの接触時間を、LHSVの逆数を示しており、LHSV4.5,6.0、7.0、15.0h
−1の逆数として、0.23(実施例4)、017(実施例5)、0.14(実施例6)、0.07(比較例2)に設定して実験を行っている。
【0101】
(実施例7)
次に、実施例7のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0102】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法を説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図7参照)。
【0103】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、反応温度を585℃、反応時間を約15時間(サンプリングは反応を開始してから5、15時間後に実施した)とした以外は実施例5と同様の方法で反応試験を実施した。本試料の初期触媒性能を
図7に示す。
【0104】
(実施例8)
次に、実施例8のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0105】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法について説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった(
図7参照)。
【0106】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、反応温度を635℃、反応時間を約15時間(サンプリングは反応を開始してから5、15時間後に実施した)とした以外は実施例5と同様の方法で反応試験を実施した。本試料の初期触媒性能を
図7に示す。
【0107】
図7はFeGaAl−MFI/SiO
2複合体触媒の初期性能における反応温度の影響についてまとめたものである。実施例5を基準として565℃→585℃→635℃と温度を上げるにしたがい、反応転化率、低級オレフィン収率、芳香族収率は向上し、635℃ではエチレン収率13.3wt%、プロピレン収率20.5wt%もの高い低級オレフィン収率を達成した。一方、芳香族収率は635℃においても6.5wt%であり、アルミナバインダーとの複合体触媒(比較例1)を用いた565℃での反応試験における値(7.3wt%,
図2参照)よりも低くなった。従って、シリカバインダーを用いた複合体触媒は、600℃を超える高い反応温度で接触分解に供しても芳香族生成を抑えつつ高い低級オレフィン収率を与えることが確認された。
【0108】
(実施例9)
次に、実施例9のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=121.3)の合成方法を説明する。
実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=121.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0109】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の調製方法を説明する。
実施例4と同様にして、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=90wt%/10wt%となった。
【0110】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比90wt%/10wt%)の性能評価試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とした。実施例1〜8と同一の反応試験装置を使用し、触媒充填量を2.0mL、全圧を0.1MPaとした上で(触媒の充填方法も実施例1〜8と同様)、下記の操作条件にて約1,000時間のn−ヘキサン接触分解反応を実施した。
【0111】
Step1(反応開始〜約200時間):反応温度を565℃とし、n−ヘキサンのLHSVを7.0h
−1とした。
Step2(反応開始後約200時間〜約380時間):反応温度565℃のままとし、n−ヘキサンのLHSVを6.0h
−1としてn−ヘキサンとの接触時間を延ばした。
Step3(反応開始後約380時間〜約540時間):反応温度565℃のままとし、n−ヘキサンのLHSVを5.0h
−1としてn−ヘキサンとの接触時間を延ばした。
Step4(反応開始後約540時間〜約620時間):反応温度565℃のままとし、n−ヘキサンのLHSVを4.5h
−1としてn−ヘキサンとの接触時間を延ばした。
【0112】
Step5(反応開始後約620時間〜約740時間):反応温度570℃に上げ、n−ヘキサンのLHSVを4.5h
−1に保持した。
Step6(反応開始後約740時間〜約835時間):反応温度580℃に上げ、n−ヘキサンのLHSVを4.5h
−1に保持した。
Step7(反応開始後約835時間〜約920時間):反応温度585℃に上げ、n−ヘキサンのLHSVを4.5h
−1に保持した。
Step8(反応開始後約920時間〜約1,000時間):反応温度595℃に上げ、n−ヘキサンのLHSVを4.5h
−1に保持した。
【0113】
上記の操作条件下で反応を開始した後、一定時間毎に生成物の採取およびガスクロマトグラフィー分析を行い、触媒性能の経時変化を求めた。本試料の触媒性能の経時変化を
図8(n−ヘキサンの転化率およびエチレン収率/プロピレン収率の経時変化)と
図9(n−ヘキサンの転化率および芳香族炭化水素収率の経時変化)に示す。
【0114】
実施例4〜8での検討結果から、LHSVが4.5〜7.0h
−1(反応温度は565℃に固定)の領域ではプロピレン収率の低下はごく僅かであること、ならびに反応温度が635℃程度までは芳香族収率が低く抑えられる(LHSVは6.0h
−1に固定)という知見を得た。そこで、芳香族生成(触媒寿命)に大きく影響するこれらの操作因子を適切に組合せることで、触媒寿命がどの程度まで延長可能であるかを検討した。触媒試料は実施例4〜8で用いたFeGaAl−MFI/SiO
2複合体触媒とし、反応開始時の条件は芳香族収率がより低く抑えられるように、反応温度を565℃に設定し、LHSVを7.0h
−1に設定して反応を開始し、触媒性能(反応転化率)の低下に合わせてLHSVを順次7.0→6.0→4.5h
−1と下げる(接触時間を長くする)ことで補償操作を行い、反応転化率を上げてプロピレン収率を維持させた。その後は、LHSVを4.5h
−1に固定して、反応温度を565℃→570℃→580℃→585℃→595℃と順次上げることで補償操作を行い、同様に反応転化率を上げてプロピレン収率を維持させた。これらの条件操作により、触媒寿命は1,000時間以上持続可能であることが確認された(
図8および
図9参照)。
【0115】
(実施例10)
次に、実施例10のFeGaAl−MFIゼオライト(Si/(Fe+Ga+Al)=31.3)の合成方法を説明する。
コロイダルシリカ58.9g (SiO
2 30.6wt%、Na
2O 0.4wt%、H
2O 69.0wt%)、水酸化ナトリウム2.25gからなる溶液をA液、硫酸アルミニウム・n水和物0.76g、硝酸ガリウム・n水和物0.44g、硝酸鉄・9水和物0.98g、臭化テトラプロピルアンモニウム4.65g、精製水187.2gからなる溶液をB液とした以外は実施例1と同様にして、Na型のFeGaAl−MFIゼオライトを合成した。このゼオライトの元素モル組成比は蛍光X線測定により、Si/(Fe+Ga+Al)=31.3、Fe/(Fe+Ga+Al)=0.4、Ga/(Fe+Ga+Al)=0.3、Al/(Fe+Ga+Al)=0.3と求められた。
【0116】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比65wt%/35wt%)の調製方法を説明する。
上記の手順に沿って合成した粉末状のNa型FeGaAl−MFIゼオライト、シリカ粉末、でんぷんを用いて、実施例3と同様の方法によって成形化・イオン交換し、円筒状のプロトン型FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒を調製した。この複合体触媒の重量組成は蛍光X線測定により、ゼオライト/シリカ=65wt%/35wt%となった。
【0117】
次に、FeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体触媒(Zeolite/SiO
2混合比65wt%/35wt%)の触媒再生試験方法を説明する。
上記の手順に沿って調製した、円筒状のFeGaAl−MFIゼオライト/シリカ複合体を1.0〜2.0mmに整粒したものを性能評価用の触媒試料とし、反応時間を約45時間(サンプリングは反応を開始してから2、20、28、32、44時間後に実施した)とした以外は実施例1と同様の方法で反応試験を実施した。また、反応開始後約45時間が経過した時点で一旦反応試験を停止し、下記の操作条件にて触媒の再生処理(触媒上へ析出したカーボンの燃焼除去処理)を実施した。
【0118】
Step1:n−ヘキサン原料の反応器への供給を停止し、窒素流通下で常温まで自然冷却した。
Step2:窒素で希釈された空気(酸素濃度0.5vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を徐々に約100℃まで昇温させた後、1時間保持した。
Step3:窒素で希釈された空気(酸素濃度0.5vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を徐々に約350℃まで昇温させた後、1時間保持した。
Step4:窒素で希釈された空気(酸素濃度0.5vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を徐々に約450℃まで昇温させた後、2時間保持した。
Step5:窒素で希釈された空気(酸素濃度1.0vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を徐々に約500℃まで昇温させた後、18時間保持した。
Step6:窒素で希釈された空気(酸素濃度2.0vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を約500℃で1時間保持した。
Step7:窒素で希釈された空気(酸素濃度2.0vol%)を約67NL/hの流量で供給しながら、触媒層温度を徐々に約535℃まで昇温させた後、2時間保持した。
Step8:流通ガスを純窒素に切替えた後、触媒層の加熱を停止して常温まで自然冷却した。
【0119】
上記の触媒再生処理を実施した後、生成物のサンプリング周期(反応を開始してから2、5、20、27、44時間後に実施した)以外は初回と同一の条件下にて反応試験を再開した。
図10は触媒性能(n−ヘキサンの転化率)の経時変化を示している。
【0120】
本実施例では触媒の再生について検討した。本実施例においては、反応原料にはスチーム等の希釈剤は使用せず、炭化水素原料のみを触媒に供給しているため、触媒活性の劣化要因は基本的にカーボン析出のみと考えてよい。従って、析出したカーボンを除去すれば触媒活性は回復し、繰り返し使用が可能である。そこで、触媒反応試験を行い(本実施例では酸密度が大きい試料(Si/(Fe+Ga+Al)=31.3)を用いることで、短時間で触媒活性を低下させた)、活性低下が観測された時点で一旦反応を停止し、上記の操作方法(Step1〜8)に沿って希釈された空気(酸素濃度:0.5〜2.0vol%)を供給し、カーボンを燃焼除去した。
【0121】
再生処理後に反応試験を再開したところ、反応転化率は1回目の反応試験と同様の履歴をたどって推移したことが観測されたため(
図10参照)、カ−ボンの燃焼除去処理が適切に為されていることが確認された。従って、本発明により、シリカバインダーと成形複合化したFeGaAl−MFIゼオライトあるいはFeAl−MFIゼオライトを適切な条件下で用いることで、効率良いプロピレン生成が極めて長時間持続されるとともに、活性が低下した触媒はカ−ボンの燃焼除去処理により再生され、繰り返し使用が可能であることが確認された。