(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記ポンプの停止時間が前記設定値に達し、かつ前記ポンプの吐出側圧力が所定のしきい値よりも高い場合に、前記固着防止運転を実行することを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【背景技術】
【0002】
ポンプに水を入れたまま運転しないで、例えば2〜3ヵ月という長期間放置すると、錆付ロックや水垢ロックという状態が発生する。錆付ロックとは、酸化物(いわゆる錆:酸化第二鉄)が、羽根車とポンプケーシングまたはケーシングカバー間等の回転部と固定部間の小さい間隙に蓄積し、異なる部品同士が一体となり、ポンプが起動できなくなる現象である。また、水垢ロックとは、羽根車とポンプケーシングまたはケーシングカバー間等の回転部と固定部間の間隙に水垢が蓄積して、ポンプが起動できなくなる現象である。
【0003】
このような現象を防止する一般的な方法としては、水が使用されない状態で微速にてポンプの運転を継続する方法がある(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、水が使用されていない場合でもポンプの運転を継続するため、省エネルギーの観点から好ましくない。また、特に小型のポンプにおいては締切状態(ポンプの吐出流量が0の状態)で微速運転を継続するとポンプの運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、使用環境によってはポンプ内の温度が上昇してしまう可能性がある。ポンプ内の温度が上昇すると機器が破損したり、高温の水が出る危険性がある。
【0004】
インバータによるソフトスタート/ソフトストップを行うことによりポンプ始動時の機器に対する衝撃は緩和されるので、ポンプを完全に停止しても特許文献1に記述されているようなフレッティングコロージョンの発生による機器の故障は避けることが可能である。
【0005】
また、羽根車とポンプケーシングまたはケーシングカバーの形状を工夫し停止中の羽根車とポンプケーシングまたはケーシングカバーとの接触面を減らす方法がある(例えば特許文献2および特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、この方法では、接触面が小さくなるのみで、接触面は無くならない。したがって、ポンプが、例えば中水(再利用水)のように水質が悪く錆や水垢が発生しやすい場所や、別荘などのように何か月間も水の使用がないような場所に設置される場合、回転部と固定部とが固着する可能性がある。また、固着させないためには錆や水垢が発生しにくい材料を使用すると効果的だが高価となる。更に、この方法を用いた場合、実際の使用環境下にて回転部と固定部とが固着した場合に、羽根車やポンプケーシングおよびケーシングカバーの形状を変更するなどの調整は簡単には出来ないので、定期的にポンプを運転させるかまたは水を完全に抜く必要がある。このような観点から上述した方法はどのような環境下でも適応できる方法ではない。
【0007】
羽根車の回転軸への取り付け方法を工夫し、ポンプの停止中に羽根車とケーシングまたはケーシングカバーとが接触しないようにした方法もある(例えば特許文献4および特許文献5参照)。しかしながら、このような方法は、キーのみで回転軸と羽根車を固定する従来の方法に比べて、羽根車を回転軸に固定するための止めねじの調整が必要になる。この止めねじの調整には、羽根車の位置を調整するための治具等を用いる必要があり、組立て工程が複雑になる。また止めねじや係止部材などの部品点数が増えコストアップにつながる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号あるいは類似符号を付し、重複した説明は省略する。
図1の一部断面正面図と側面図を参照して自吸式渦流ポンプを説明する。渦流ポンプ310は、カスケードポンプ又は摩擦ポンプの名前でも呼ばれるポンプであり、周縁に多数の溝を切った円板として形成された羽根車311を備える。このポンプ310は小型であるが、1個の羽根車で数段の渦巻ポンプに匹敵する揚程を得られ、小水量高揚程の目的に適している。またこのポンプ310は自吸性を有するので、家庭に給水を行うために受水槽に蓄えた水や井戸水を供給するのに適している。羽根車311はポンプケーシング312に収納されている。ポンプケーシング312の羽根車311の軸の方向から見た正面には、ケーシングカバー313がボルトで取り付けられており、これを取り外すと羽根車311にアクセスでき、保守点検が容易である。
【0018】
自吸式ポンプ310は、水を吸い込んで吐出す羽根車311を備える。羽根車311は、水平方向に配置された回転軸111に固定され回転する。羽根車311は、回転軸111の一端部に軸方向に移動自在に、かつキー12を介して回転軸111とともに回転可能に取付けられている。図示省略した回転軸111の他端部は、ポンプケーシング312に収納される。ポンプケーシング312の上部には、羽根車311から吐き出される空気の混合した水(気液混合水)から気体を分離する気液分離室112が、羽根車311の水の吐き出し側に形成されている。
【0019】
気液分離室112には、羽根車311から水を流出させる吐出流路113と、吐出流路113の下流側(鉛直方向上方)に形成され、吐出流路113から流入する気液混合水を水と空気に分離する気液分離部112aと、気液分離部112aで分離された水を羽根車311に戻す還流路114とが形成されている。吐出流路113と還流路114とは、鉛直方向に設けられた第1の分流壁115で隔てられている。分流壁115の根元には、還流路114から羽根車311に水を戻す還流口114aが形成されている。
【0020】
気液分離室112には、吐出流路113を流れる水の流れを2つに分岐させる第2の分流壁116が鉛直方向に設けられている。第2の分流壁116は、第1の分流壁115に沿って、鉛直方向に配置されている。本実施の形態では、第2の分流壁116は、吐出流路113から気液分離部112aにかけて配置されている。
【0021】
第1の分流壁115は、下端が羽根車311の近傍になるように配置されている。第1の分流壁115の下端は、羽根車311の外周と所定の隙間となるような位置にある。第2の分流壁116の下端と羽根車311の外周との距離は、第1の分流壁115の下端と羽根車311の外周との距離よりも大きくなるように構成されている。また、第2の分流壁116の上端は、第1の分流壁115の下端より高い位置となるように位置決めされている。
【0022】
気液分離室112は、ポンプ停止時に呼水が溜まるように、ポンプケーシング312内で上方が開放された容器状に構成され、上部が気液分離部112a、下方に吐出流路113と、吐出流路113と並列に還流路114が形成されている。自吸運転時は、羽根車311から吐出された水は、吐出流路113から気液分離部112aへと下方から上方に流れる。還流路114内では、気液分離部112aで気体と分離された水は上方から下方に流れるように構成されている。
【0023】
また気液分離室112に溜まった水は、気液分離室隔壁117の上端を溢れて流れるように構成されている。気液分離室隔壁117は、気液分離室112と、ポンプ吐出水路118とを隔てる壁である。ポンプ吐出水路118は、鉛直方向に配置されその下端部にポンプ吐出口326bが形成されている。
【0024】
一方、吸込側隔壁122が、吐出流路113とポンプ吸込流路121とを隔てる。ポンプ吸込流路121は、鉛直方向に配置され水は上方から下方に流れ、羽根車311に吸い込まれるように構成されている。またポンプ吸込口326aから吸い込まれた水は、鉛直方向に配置されたポンプ吸込水路123を下方から上方に流れる。ポンプ吸込水路123の上端部には、チェッキ弁321が設けられ、これを通じて、ポンプ吸込水路123とポンプ吸込流路121とが連通する。
【0025】
ポンプケーシング312の最上部、すなわち気液分離室112の気液分離部112aの上方には、呼水栓328が取り付けられている。
【0026】
図1を参照して、本実施の形態の自吸式ポンプの作用を説明する。呼水栓328からポンプケーシング312に呼び水を注入し栓を締める。呼水は気液分離室112の上流側、気液分離室112から羽根車311までのケーシング部分の空間を満たす。本実施形態では、チェッキ弁321があるので羽根車311から上方に存在する吸込流路121内の空気は抜けず、ここには呼水が入らない。しかしながら羽根車311が水に浸れば差し支えない。呼水完了後、運転を開始すると、羽根車311が回転し、ポンプ310の吸込側に備えられたチェッキ弁321よりも吸込側のポンプ部であるポンプ吸込水路123及び吸込配管部から空気が運ばれて来て(吸込流路121内の空気も一緒に)、ポンプケーシング312内の水と混ざり合って気液混合水となり、気液分離室112に流入する。
【0027】
気液分離室112に向けて、吐出流路113に流出する気液混合水は、羽根車311から遠ざかる方向の速度成分と羽根車311の回転方向の速度成分をもっているため、第2の分流壁116によって分岐した2つの吐出流路のうち、吸込側隔壁122側の流路に主流が集まり、この流路内の平均流速はもう一方の流路内の平均流速より大きくなる。この時の刺激が気液分離作用を生み出す。
【0028】
空気は上方に移動して吐出側の開放部からポンプ吐出水路118に抜ける一方で、水は還流路114を通って還流口114aに戻る。還流口114aに戻った水は、ポンプの吸込側に備えられたチェッキ弁321よりも吸込側のポンプ吸込水路123及び吸込配管部から運ばれてきた空気と混ざり合って気液混合水となり、再び気液分離室112にて気液分離される。
【0029】
第2の分流壁116の下端を第1の分流壁115の下端より高い位置とすることにより、分岐前の吐出流路に適度な助走区間119を設けることができる。この助走区間119がないと、気液混合水は、羽根車311から遠ざかる方向の速度成分が殆どないうちに第2の分流壁116の下端に辿り着くため、分岐した2つの吐出流路のうち、吸込側隔壁122の側の流路のみが事実上の吐出流路となり、もう一方の流路と第1の分流壁115により形成された還流路114の2つの流路が共に、還流路となってしまう。この場合は、良好な気液分離作用が行われないだけではなく、吐出流路を狭くした状態に近くなる。言い換えれば、吐出流路113内に流出した直後の気液混合水は、極端に吸込側隔壁122の側へ偏った流れとなっているため、適度な助走区間119を設けて少し偏りを減少させないと、その後に分岐した2つの流路が共に吐出流路として機能するようにならない。
【0030】
また、助走区間119が大きすぎると、吐出流路113内の流速分布が平均化され過ぎて、第2の分流壁116により2つの吐出流路に分岐しても気液分離作用を高めることができない。
【0031】
吐出流路113内の流速分布が適度に偏っている時に第2の分流壁116を設けると、極端に吸込側隔壁122の側へ偏った流れが反対側へ移行しつつある時にそれに対抗する障壁ができ、より気液分離が促進される。適正な助走区間119の目安は概ね、吐出流路113幅と同程度であることが実験的に分かっている。
【0032】
これに加えて、第2の分流壁116の上端を第1の分流壁115の上端より高い位置とすることにより、ポンプケーシング312上部に移動していく空気が、還流路114の水の流れに巻き込まれて還流口114aに戻るのを防止することができる。
【0033】
図2の斜視図と断面図を参照して、本発明に用いるのに適したポンプの例として渦流ポンプの原理を説明する。先に説明したように、渦流ポンプ310は、カスケードポンプ又は摩擦ポンプの名前でも呼ばれるポンプである。回転軸111に支持された羽根車311は、
図2(a)に示すように、円板の周縁に多数の溝を切って構成される。
【0034】
羽根車311の外周に沿って、通路壁131で断面がコの字型に囲まれた水通路132が形成されている。水通路132は、吸込流路121の羽根車311への流入口から吐出流路113の入口まで、断面形状が一様のコの字型に形成されている。吸込側隔壁122の部分では、水通路132は絞られており、羽根車311の外周と通路壁131は、僅かな隙間をもって配置されている。
【0035】
一つ一つの溝を羽根と考えると、一つの羽根溝中の水は回りながら遠心力により外に放出される。その運動のエネルギーを水通路132内の水に伝えてだんだんと圧力を上げて行く。放出された水のあとには水通路132から羽根の根元に水が入り込むので、結局水の流れは吸込から吐出までの間に数多くの渦を巻くことになる。このようなところから、本ポンプは渦流ポンプと呼ばれる。
【0036】
一方水は溝の形成された羽根車311に、摩擦により引っ張られて圧力を生じ、また水流が生じると考えることもできるところから、摩擦ポンプとも呼ばれる。このような構造と原理から、渦流ポンプは自吸性能に優れている。
【0037】
渦流ポンプ310においては、ポンプ運転中には羽根車311の軸方向両端面と、これらと対向するポンプケーシング312およびケーシングカバー313の各内端面との間に微小間隙6が保たれている。すなわち、羽根車311の軸方向変位を容易にするために、羽根車311の軸孔を回転軸111の外径より若干大きめに形成するとともに、キー12を介して回転力を伝達する。ポンプ運転中は羽根車室内における圧力バランスにより自動的に上記間隙6が調整される。
【0038】
しかしながら、羽根車311は軸方向に対して固定されていないため、ポンプ310の停止中は羽根車311が自重によりポンプケーシング312またはケーシングカバー313と接触した状態となる可能性がある。この接触部分に錆や水垢が発生し易い。錆や水垢が発生してしまうと羽根車311がポンプケーシング312またはケーシングカバー313と固着してしまい、起動条件が成立してポンプを起動しようとしたときに電動機が過負荷となりポンプが起動できない。
【0039】
図2は横軸の渦流ポンプであるが、立軸の渦流ポンプも錆付きロックや水垢ロックが発生する原理は同様である。また、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプなどのターボ型ポンプや容積形ポンプ等の上述の渦流ポンプとは構造が異なるポンプにおいても停止中に流体がポンプ内に残る場合には錆付きロックや水垢ロックが発生する可能性がある。
【0040】
図3(a)の平面図と
図3(b)の一部断面正面図を参照して、本発明の実施形態であるポンプ装置の一例としての給水装置201を説明する。給水装置201は、ポンプ310を駆動する電動機210と、ポンプ310の可変速運転を行なうインバータ装置230を備える。インバータ装置230は、電動機210の近傍に配置されている。
【0041】
羽根車311の下流側の気液分離室112の下流側にフロースイッチ324が配置され、フロースイッチ324の近傍に圧力センサ323が配置されている。フロースイッチ324は吐出管325を流れる水の流量が所定の値まで低下したことを検出する流量検出器である。フロースイッチ324と圧力センサ323とは、気液分離室112の下流に設けられた吐出管325に配置されている。吐出管325の下流には、給水装置201の吐出口327が設けられている。吐出管325には圧力タンク322が接続されている。ポンプケーシング312の最上部には呼水栓328が設けられている。圧力タンク322は、ポンプ310の吐出側で、フロースイッチ324よりも下流側に設けられている。
【0042】
給水装置201の構成機器である、ポンプ310、電動機210、インバータ装置230、圧力タンク322は、ユニットベース332の上に載置されボルトで固定されており、全体としてコンパクトにまとめられている。またこれらの機器全体を覆う、樹脂製のユニットカバー331が設けられている。ユニットカバー331には、ポンプ310の吸込口326と吐出口327に外部からアクセスできる開口331a、331bがそれぞれ形成されているが、ユニットカバー331とユニットベース332とで、前記構成機器全体をほぼ密閉的に覆っている。したがって、風雨から構成機器を守ることができると共に、高い防音効果が得られる。
【0043】
ポンプケーシング312の外側、ほぼ気液分離室112の外側には、凍結防止ヒータ333が、吐出管325の外側には、凍結防止ヒータ334が、それぞれ貼り付けられている。
【0044】
図4の模式図を参照して、給水装置201の各構成機器の水の流れに則した配置と作用を説明する。ここで給水装置201は自動給水装置であり、ポンプ310の吐出側圧力の低下により水が使用されたと判断してポンプ310を始動し、ポンプ310の吐出流量が低下した時にポンプ310を停止する。この運転を自動給水運転といい、また運転速度を自動的に可変速し吐出し圧力の制御を行う。
【0045】
図4において、地上Sから掘られた井戸Wellには水WがレベルLの所まで溜まっている。給水装置201は井戸Wellに近接して、地上Sに据え付けられている。吸込管309は給水装置201のポンプ310の吸込口326に接続されている。吸い込まれた水は、チェッキ弁321を経てポンプ310に吸い込まれる。チェッキ弁321は、ポンプ310が停止したときに、水が井戸Wellに逆流しないようにする逆止弁である。ポンプ310はカスケードポンプであるので、始動時に吸込管309中に空気があっても、それを排出して水Wを吸い上げることができるが、チェッキ弁321が設けられているので、ポンプ310の始動、停止ごとに空気を追い出す必要がない。
【0046】
フロースイッチ324は、ポンプ310の吐出流量が所定の値まで低下したことを検出し、検出結果を制御装置234に送信する。圧力センサ323は、ポンプ310の吐出側圧力を検出し、検出結果を制御装置234に送信する。
【0047】
吐出管325に設けられた圧力タンク322は、耐圧容器内にゴム製のブラダが内蔵されており、吐出圧力が上昇するとブラダの外側の空気を圧縮し水が加圧状態で貯留される。また、吐出管325内の圧力が低下するにつれて、圧縮された空気が膨張し、貯留された水を吐出管325に押し出す。このようにして、ポンプ310が停止しても、しばらくは圧力タンク322から吐出管325に水が供給される。圧力タンク322は、フロースイッチ324よりも下流側に設置されているので、圧力タンク322から供給される水流をフロースイッチ324が検出することはない。
【0048】
インバータ装置230は、電動機としての直流ブラシレスモータ210に駆動電力を供給するIPM(Intelligent Power Module)232を備える。インバータ装置230内には、IPM232をコントロールする制御装置234が組み込まれている。制御装置234は、IPM232をコントロールできればインバータ装置230の外に設けてもよい。制御装置234はDCBL(直流ブラシレス)コントローラ235を含んで構成されている。
【0049】
IPM232は、直流ブラシレスモータ210から磁極信号を受けて、駆動電力の周波数を直流ブラシレスモータ210の回転数に同期させ、モータ210の固定子に回転磁界を形成する。DCBL(直流ブラシレス)コントローラ235は、IPM232に電圧信号を送信する。
【0050】
また、制御装置234は、不図示の圧力コントローラ部と速度コントローラ部とを備えるとともに、制御に必要な設定値および運転プログラム等を保存する記憶部236を備える。記憶部236は給水運転における吐出圧力の制御や後述する固着防止運転に必要な設定値を保存している。記憶部236は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、データの書き換えが可能である。電源を遮断しても記憶部236内のデータは消えない。
【0051】
制御装置234には表示パネルなどの表示設定部(不図示)を設けてもよいし、リモコン形式にて表示設定器(不図示)を別途設けて運転状態の確認や設定値の変更を可能としてもよい。または、制御装置234に通信ポートを備えた通信部(不図示)を設け、この通信部を介してパソコン等の外部機器を接続し、運転状態の確認や設定値の変更を可能としてもよい。また、給水装置201で状態表示や設定変更を行うだけでなく、例えば監視センターなどの遠方から状態表示や設定変更を行うことができるようにしてもよい。更に複数の表示設定部(不図示)を組み合わせてもよい。上述の表示設定部(不図示)では、固着防止運転中であることを表示できる。
【0052】
圧力センサ323からの圧力信号は、制御装置234の圧力コントローラ部に入力される。自動給水によるポンプ運転中、圧力コントローラ部は目標吐出圧力と実際の圧力を比較して、制御値を演算し設定速度として速度コントローラ部に送る。速度コントローラ部は、設定速度と実際の運転速度との差に応じた制御信号をIPM232に出力する。IPM232はこの制御信号に基づいて電動機210に駆動電力を供給する。
【0053】
本実施形態の固着防止運転について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5の締切カーブはポンプの特性曲線と呼ばれるもので、締切状態でのポンプの回転速度と圧力の関係は2次曲線となる。なお、
図5に記載されている圧力及び速度の値は上述した記憶部236に記憶され、ポンプの性能や使用状況、設置場所等の要因により設定変更が可能である。
【0054】
制御装置234は、始動条件が満たされたときにポンプ310を始動させ、ポンプ310の吐出側圧力が所定の目標吐出圧力に維持されるようにポンプ310の運転を制御し、停止条件が満たされたときにポンプを310停止させる。ポンプ310の停止条件は、ポンプ310の吐出流量が所定の値にまで低下したことである。すなわち、水の流量の下限値を設定しておき、フロースイッチ324がその下限値を検出すると、制御装置234が電動機210を、ひいてはポンプ310を停止する。
【0055】
流量が低下して電動機210を停止する際に、一時的にポンプ310の目標吐出圧力を段階的に上昇させることにより所定の停止圧力まで吐出圧力を上昇させ、圧力タンク322内に十分な水が貯留されるようにする。水の流量低下によるポンプ310の停止は、フロースイッチ324によらず、羽根車311の回転速度の下限値に基づいて行なってもよい。
【0056】
ポンプ310の吐出流量が低下してポンプ310を停止させる場合、すなわち小水量停止時には圧力タンク322内に十分な水が貯留されるように、吐出圧力を
図5及び
図6に示す停止圧力まで上昇させる。この停止圧力まで上昇させる時のポンプ310の回転速度は
図5に示す停止動作速度である。ポンプ310は、ポンプ310の吐出側圧力が停止圧力に達した後、すなわち、圧力センサ323からの圧力信号が停止圧力に達した後に停止する。
【0057】
その後、水が使用されるとしばらくは圧力タンク322から水が供給されるが、圧力タンク322内の水が少なくなり、圧力センサ323の値が所定の始動圧力以下に低下したことを圧力センサ323が検知すると、制御装置234は電動機210を始動し、ポンプ310を起動する。すなわち、ポンプ310の始動条件は、ポンプ310の吐出側圧力が始動圧力にまで低下したことであり、この始動条件が満たされたときに、制御装置234はポンプ310を起動する。
【0058】
他の実施形態として、ポンプ310の始動条件は、ポンプ310の吐出流量が所定の値にまで増加したこととしてもよい。この場合、ポンプ310の吐出流量が所定の値にまで低下したことをフロースイッチ324が検出しなくなったときに、ポンプ310を始動させるか、またはポンプ310の吐出流量が所定の値にまで増加したことを別のフロースイッチが検出したときに、ポンプ310を始動させる。
【0059】
上述の始動圧力は停止圧力よりも低い圧力である。始動圧力とポンプ310の目標吐出圧力(ポンプ310の通常運転時の目標圧力)は異なる値でも同じ値でもよい。ポンプ310の始動開始後、制御装置234はポンプ310の吐出圧力が目標吐出圧力に維持されるようにポンプ310の運転を制御する。
【0060】
制御装置234はポンプ310の停止時間を計測する固着防止タイマー350を備えている。
図6に示すように、ポンプ310が運転されているときは、固着防止タイマー350は動作せず、ポンプ310が停止すると、固着防止タイマー350はポンプ310の停止時間の計測を開始する。
【0061】
水が使用されず、固着防止タイマー350によって計測されたポンプ310の停止時間が設定値に達した場合は、制御装置234は、予め定められた固着防止運転速度にてポンプ310を起動させて、固着防止運転を開始する。この固着防止運転のトリガーとなるポンプ停止時間の設定値は、羽根車311の固着が起きる時間よりも短いことが必要である。羽根車311の固着時間は水質や使用温度などの環境や、ポンプの構造などにより左右されるので、上述した渦流ポンプにて家庭用の水道水を使用する場合は、停止時間の設定値は12時間〜48時間とする。停止時間の設定値は、固着すると予想される時間の1/2〜1/3程度の時間を目安とするが、固着が予想される時間よりも短ければよい。
【0062】
錆付きロックや水垢ロックが発生し、羽根車311がロックしてポンプ310の起動不可となるまでの停止時間は数日〜数か月間と、ポンプの形状や材質、または水質、気温、使用状況等により時間的にかなり幅がある。そのため、ポンプ310の固着防止運転を開始するトリガーとしての停止時間の設定値を上述した表示設定部で調整可能にすることにより、より効果的な固着防止運転を行うことができる。作業者が停止時間の設定値を調整してもよく、ポンプの停止時間を制御装置234に学習させて制御装置234が自動調整してもよい。
【0063】
ポンプ310が固着防止運転を開始したと同時に固着防止タイマー350はリセットされ、固着防止タイマー350は、ポンプ310の固着防止運転時間の計測を開始する。予め定められた固着防止運転時間に達したら、制御装置234はポンプ310を停止させ、固着防止運転を終了させる。同時に、固着防止タイマー350をリセットする。
【0064】
制御装置234は、固着防止運転中、ポンプ310を所定の固着防止運転速度で運転する。固着防止運転時間は、羽根車311が確実に変位する時間に設定し、羽根車311が回転して同じ場所で止まることのないように設定する必要がある。また、固着防止運転により、ポンプ310内の滞留している水が撹拌されなければならない。小型の渦流ポンプであれば、固着防止運転時間は1秒間〜数十秒間でよい。ポンプ310の締切運転を長時間行うとポンプ温度が上昇し、機器に影響を与えたり、またポンプの温度が上昇した状態で水を使用すると高温の水が吐き出されて危険である。したがって、水温や設置場所等の使用環境により固着防止運転時間は調整可能である。
【0065】
固着防止運転中は締切運転であるため、ポンプ310の吐出圧力が目標吐出圧力よりも上昇してはいけない。よって、固着防止運転速度にて運転した時の圧力を、
図5に示す締切カーブから算出して目標吐出圧力よりも小さな圧力となるようにする。より具体的には、固着防止運転時のポンプ310の回転速度(すなわち固着防止運転速度)は、ポンプ310の締切運転時に目標吐出圧力を達成するために必要な回転速度(
図5では目標速度)よりも低い回転速度である。このような低い回転速度でポンプ310が運転されるので、固着防止運転中はポンプ310の吐出側圧力が上昇しない。さらに、固着防止運転時でのポンプ310の運転音も低く抑えることができる。
図6に示すように、固着防止運転中のポンプ310の吐出側圧力は、停止圧力以下である。
【0066】
固着防止運転中、制御装置234は圧力センサ323から送られてくるポンプ310の吐出圧力の測定値を監視し、何らかの外因によりポンプ310の吐出圧力が目標吐出圧力よりも上昇した場合には直ちにポンプ310を停止し、固着防止タイマー350をリセットする。
【0067】
また、使用目的やポンプの形状等が明確であれば、ポンプ310の停止時間の設定値、固着防止運転時間、及び固着防止運転速度は固定値でもよい。
【0068】
固着防止運転中の羽根車311の回転方向は正転でも、逆転でもよい。羽根車311を逆転させる場合は水道本管の汚染防止のためチェッキ弁321にて逆流を防止する必要がある。また、逆転動作は水の撹拌力は高いが、逆転中に水が使用された場合は直ちに正転に戻す必要があるため、逆転時間は短い方がよい。
【0069】
また、正転及び逆転を一回の固着防止運転中に繰り返してもよい。この場合、例えば正転時間を2秒、逆転時間1秒と、正転時間を逆転時間よりも長くすることにより、羽根車311が固着防止運転前の位置より変位する。また、前回の固着防止運転とは異なる回転方向で羽根車311を回転させてもよい。
【0070】
制御装置234は、固着防止運転中の羽根車311の回転を監視し、羽根車311が回転しない場合、羽根車311がすでに固着していると判断してもよい。この場合、制御装置234は、ポンプ310の運転を一旦停止し、再度、固着防止運転をリトライし、リトライを繰り返しても固着が解消されない場合は警報表示を行ってもよい。
【0071】
ポンプ310の固着防止運転中にポンプ310の始動条件が満たされた場合、すなわち、吐出側圧力が所定の始動圧力まで低下した場合、またはポンプ310の吐出流量が所定の値まで増加した場合は、制御装置234は直ちにポンプ310の通常の運転を行い、ポンプ310の吐出圧力が目標吐出圧力に維持されるようにポンプ310を運転する。
【0072】
図7はポンプ310の固着防止運転の一例を示すフローチャートである。フロースイッチ324が吐出流量が所定の値まで低下したことを検出すると、ポンプ310は停止する。固着防止タイマー350はポンプ310の停止時間を計測し、制御装置234は、計測されたポンプ310の停止時間が所定の設定値に達したか否かを決定する。
【0073】
図7に示すように、ポンプ310の停止時間が設定値に達した場合、制御装置234は、ポンプ310の吐出側圧力が所定のしきい値よりも高いか否かを決定する。この所定のしきい値は始動圧力よりも高く、停止圧力よりも低く設定される。
図6の例では、しきい値は始動圧力および目標吐出圧力よりも高く、停止圧力よりも低い。ポンプ310の停止時間が設定値に達し、かつポンプ310の吐出側圧力が所定のしきい値よりも高い場合、制御装置234は、所定の固着防止運転速度でポンプ310を始動し、固着防止運転を開始する。所定の固着防止運転時間(例えば5秒)が経過した後、制御装置234はポンプ310を再び停止する。
【0074】
ポンプ310の固着防止運転を開始するための条件として、ポンプ310の停止時間が設定値に達したことに加えて、ポンプ310の吐出側圧力が所定のしきい値よりも高いことを含む理由は、ポンプ310の吐出側圧力が始動圧力の近くまで低下していれば、ポンプ310がすぐに始動されると予想され、不要な固着防止運転を回避して消費電力を削減するためである。
【0075】
ポンプ310の使用環境によっては、低温下での使用によりポンプ310が凍結し、羽根車311がポンプケーシング312またはケーシングカバー313に固着する場合がある。ポンプ310には温度センサ340(
図4参照)が設けられており、ポンプ310の温度を検出するようになっている。ポンプ310の温度が凍結温度に近い場合は、制御装置234は固着防止運転を行わない。
【0076】
上述の例では、小水量停止時のポンプ310の動作を説明したが、故障等によるポンプ310の停止中にも、固着防止タイマー350によって計測された停止時間が設定値に達したした場合には、ポンプ310の故障が解除されているのを確認したうえで固着防止運転を行う。
【0077】
なお、本発明のポンプ装置は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、また図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは言うまでもない。