特許第6404639号(P6404639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404639
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】燃料流量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20181001BHJP
   G01F 9/00 20060101ALI20181001BHJP
   G01F 1/84 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G05D7/06 Z
   G01F9/00 A
   G01F1/84
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-169323(P2014-169323)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-45694(P2016-45694A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴史
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−089373(JP,A)
【文献】 米国特許第05307288(US,A)
【文献】 特表2010−518368(JP,A)
【文献】 特開2001−147150(JP,A)
【文献】 特表2007−522587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
G01F 1/84
G01F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出口ポートが内燃機関に接続されており、当該内燃機関に供給される燃料が流れる燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられて、当該燃料供給路を流れる燃料の流量を測定する流量計と、
前記燃料供給路において前記流量計の上流側に設けられた流体制御機構と、
前記燃料供給路において前記流体制御機構と前記流量計の間に設けられた上流側圧力計と、
前記燃料供給路において前記流量計の下流側に設けられた下流側圧力計と、
前記上流側圧力計で測定される上流側測定圧力及び前記下流側圧力計で測定される下流側測定圧力の差である測定差圧と、目標差圧と、に基づいて前記流体制御機構を制御する制御部と、を備え、
前記下流側圧力計が、前記出口ポートに対して直結した位置に設けられており、
前記制御部が、
前記内燃機関の出力と、前記出力に対応する前記流量計の前後の差圧との間の関係である出力‐差圧関係を記憶する出力‐差圧関係記憶部と、
前記内燃機関の実測出力又は推定出力と、前記出力‐差圧関係とに基づいて前記目標差圧を設定する目標値設定部と、
前記測定差圧と、前記目標値設定部で設定された前記目標差圧との偏差が小さくなるように前記流体制御機構の供給流量をフィードバック制御する制御器と、を具備することを特徴とする燃料流量測定装置。
【請求項2】
前記流量計が、コリオリ流量計であり、
前記流体制御機構が、ポンプである請求項1記載の燃料流量測定装置。
【請求項3】
前記出力‐差圧関係が、
前記内燃機関の出力と、前記出力に応じて前記内燃機関で必要とされる燃料の流量との間の関係である出力‐燃料流量関係と、
前記燃料の流量と、前記燃料の流量を実現するのに必要とされる前記コリオリ流量計の前後の差圧との間の関係である燃料流量‐差圧関係と、
に基づいて導出される関係である請求項2記載の燃料流量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により消費される燃料の量を評価するために用いられる燃料流量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料流量測定装置には、内燃機関に接続されて実車と略同じ状態を模擬しつつ、燃料の消費量等を評価できるようにしたものがある。このものは、前記内燃機関が燃料を吸い込むことにより発生する燃料の流量の変化をコリオリ流量計で測定するように構成されている。
【0003】
ところで、内燃機関の開発現場では例えばインジェクタ−の1回の噴射量で発生する非常に短い時間内での燃料流量の変化を捉えたいという要求がある。このような要求に応えるには、燃料流量測定装置におけるコリオリ流量計の応答性をさらに向上させる必要がある。
【0004】
コリオリ流量計4Aの応答性を高めるために、特許文献1では図7に示すように流路1Aに上流側から順番にポンプ2A、上流側圧力計3A、コリオリ流量計4A、下流側圧力計5A、流量制御弁7Aを設け、制御部6Aが前記各圧力計3A、5Aの出力に基づいて前記ポンプ2A及び流量制御弁7Aを制御する流量制御系100Aが提案されている。前記制御部6Aは、前記上流側圧力計3A及び前記下流側圧力計5Aで測定される測定差圧ΔPが、流路に流したい目標流量に対応する目標差圧ΔPrとなるように前記ポンプ2Aの回転数及び前記流量制御弁7Aの開度を制御するように構成されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような流量制御系100Aを従来の燃料流量測定装置にそのまま適応してもコリオリ流量計の応答性を高めることは実際には難しい。
【0006】
この理由について本願発明者が鋭意検討を行った結果、従来の燃料流量測定装置では前記コリオリ流量計の下流側に設けられる下流側流量計の後段にもフィルタ等の様々な流体機器が設けられているため、下流側圧力計で測定される圧力変化は内燃機関における出力変化に対して応答遅れが発生していることに原因があることを初めて見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008―89373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、流量計の応答性を向上させ、内燃機関における非常に短い時間内での燃料消費量等の変化について測定することができる燃料流量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の燃料流量測定装置は、出口ポートが内燃機関に接続されており、当該内燃機関に供給される燃料が流れる燃料供給路と、前記燃料供給路に設けられて、当該燃料供給路を流れる燃料の流量を測定する流量計と、前記燃料供給路において前記流量計の上流側に設けられた流体制御機構と、前記燃料供給路において前記流体制御機構と前記流量計の間に設けられた上流側圧力計と、前記燃料供給路において前記流量計の下流側に設けられた下流側圧力計と、前記上流側圧力計で測定される上流側測定圧力及び前記下流側圧力計で測定される下流側測定圧力の差である測定差圧と、目標差圧と、に基づいて前記流体制御機構を制御する制御部と、を備え、前記下流側圧力計が、前記出口ポートに対して直結した位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記下流側圧力計が、前記出口ポートに対して直結した位置に設けられているので、前記下流側圧力計と前記内燃機関との間には抵抗や応答遅れの原因となる流体機器が存在しない。このため、前記内燃機関での出力変化を前記下流側圧量計で直に測定することができ、下流側流量計で測定される下流側測定圧力の変化は、前記内燃機関での出力変化に対して応答遅れがほとんどない状態にできる。
【0011】
このため、前記制御部は上流側測定圧力と下流側測定圧力の差圧である測定差圧と、目標差圧とに基づいて前記流体制御機構の動作を前記内燃機関の出力変化に高速で追従させることができる。
【0012】
この結果、前記流量計で測定される測定流量は、前記内燃機関の出力変化に対してほとんど応答遅れが存在せず、内燃機関の開発等における厳しい要求を満たすことができる応答性のよいものとなる。
【0013】
前記制御部が、前記内燃機関の出力変化に対してフィードフォワード制御により目標差圧を変化させ、前記内燃機関の出力変化が早急に前記燃料供給路を流れる流体にも反映されるようにして、さらに前記流量計における測定流量の応答性を高めるには、前記流量計が、コリオリ流量計であり、前記流体制御機構が、ポンプであり、前記制御部が、前記内燃機関の出力と、前記出力に対応する前記コリオリ流量計の前後の差圧との間の関係である出力‐差圧関係を記憶する出力‐差圧関係記憶部と、前記内燃機関の実測出力又は推定出力と、前記出力‐差圧関係とに基づいて前記目標差圧を設定する目標値設定部と、前記測定差圧と、前記目標値設定部で設定された前記目標差圧との偏差が小さくなるように前記ポンプの供給流量をフィードバック制御する制御器と、を具備するものであればよい。
【0014】
ここで、前記コリオリ流量計の前後の差圧とは、前記コリオリ流量計の直前と直後の差圧だけでなく、前記上流側圧力計が設けられている地点での圧力と、前記内燃機関と直結する位置にある前記下流側圧力計の設けられている地点での圧力との差圧を少なくとも含む概念である。
【0015】
前記出力−差圧関係が実際の流量制御系を精度よくモデル化できるようにして、前記コリオリ流量計の応答性の向上効果をさらに高められるようにするには、前記出力‐差圧関係が、前記内燃機関の出力と、前記出力に応じて前記内燃機関で必要とされる燃料の流量との間の関係である出力‐燃料流量関係と、前記燃料の流量と、前記燃料の流量を実現するのに必要とされる前記コリオリ流量計の前後の差圧との間の関係である燃料流量‐差圧関係と、に基づいて導出される関係であればよい。
【0016】
従来の燃料流量測定装置における下流側圧力計で測定される下流側測定圧力が前記内燃機関の出力変化に対して遅れるために、燃料供給路における流量制御全体が遅れてしまい、コリオリ流量計の応答特性を改善できないという問題を根本から解決できる燃料流量測定装置の別の態様としては、出口ポートが内燃機関に接続されており、当該内燃機関に供給される燃料が流れる燃料供給路と、前記燃料供給路に設けられて、当該燃料供給路を流れる燃料の流量を測定する流量計と、前記燃料供給路において前記流量計の上流側に設けられた流体制御機構と、前記燃料供給路において前記流体制御機構と前記流量計の間に設けられた上流側圧力計と、前記上流側圧力計で測定される上流側測定圧力と、目標圧力と、に基づいて前記流体制御機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記内燃機関の出力と、前記出力に対応する前記流量計の上流側の圧力との間の関係である出力‐上流圧関係を記憶する出力‐上流圧関係記憶部と、前記内燃機関の実測出力又は推定出力と、前記出力‐上流圧関係とに基づいて目標圧力を設定する目標値設定部と、を具備することを特徴とするものが挙げられる。
【0017】
このようなものであれば、従来の燃料流量測定装置において流量計の応答性を改善できない原因であった下流側圧力計の下流側測定圧力を用いずに上流側圧量計の上流側測定圧力のみを用いて前記流体制御機構を制御するので、流量計の応答性が損なわれない。また、前記制御部は、前記出力−上流圧関係に基づき目標圧力を設定するので、前記内燃機関の出力変化に対してフィードバックを待つことなくフィードフォワードにより燃料の流量の制御を実現して応答性を高めることができる。これらのことから、前記流量計は前記内燃機関の出力変化に対して十分な速さで追従した測定流量を出力する事が可能となる。
【0018】
また、前記流量計の下流側に圧力計を設けない場合でも、前記流量計の上流側の圧力を速やかに目標圧力で維持できるようにし、前記流量計で測定される測定流量値が前記内燃機関の出力変化をすぐに反映したものにできるようにするための具体的な制御態様としては、前記流量計が、コリオリ流量計であり、前記流体制御機構が、ポンプであり、前記制御部が、前記上流側測定圧力と、前記目標値設定部で設定された前記目標圧力との偏差が小さくなるように前記ポンプの供給流量をフィードバック制御する制御器をさらに具備するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の燃料流量測定装置によれば、前記下流側圧力計を前記内燃機関と直結した位置に設けて前記内燃機関の出力変化に対して遅れないようにしているので、前記燃料供給路における高速の流量制御を実現できる。したがって、前記流量計での測定流量の前記内燃機関の出力変化に対する応答性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料流量測定装置を示す模式図。
図2】第1実施形態における制御部の構成を示す模式的制御ブロック図。
図3】第1実施形態における出力−差圧関係について説明する模式的グラフ。
図4】本発明の第2実施形態に係る燃料流量測定装置を示す模式図。
図5】第2実施形態における制御部の構成を示す模式的制御ブロック図。
図6】第2実施形態における出力−上流圧関係について説明する模式的グラフ。
図7】従来のコリオリ流量計の応答性を改善するための流量制御系を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態に係る燃料流量測定装置100について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0022】
第1実施形態の燃料流量測定装置100は、実車の状態を模擬してガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関Eでの燃料の消費量を例えば時系列データとして収集するためのものである。図1に示すように、この燃料流量測定装置100は、前記内燃機関Eに燃料を供給する燃料供給路1を有し、前記燃料供給路1には、上流側から、ポンプ2、上流側圧力計3、コリオリ流量計4、下流側圧力計5が設けてある。また、この燃料流量測定装置100は、前記上流側圧力計3及び前記下流側圧力計5の出力に基づいて前記ポンプ2を制御する制御部6を備えている。さらに、この燃料流量測定装置100は、前記燃料供給路1の一部として前記内燃機関Eで消費されなかった燃料が実車であれば燃料タンクに戻される部分を模擬する戻し流路12が前記内燃機関Eの近傍に設けてある。なお、この燃料流量測定装置100は、前記コリオリ流量計4で得られた質量流量値に基づいて前記内燃機関Eにおける燃料の消費量を算出する演算部(図示しない)を備えていてもよい。
【0023】
各部について詳述する。
【0024】
前記燃料供給路1は、その出口ポート11が前記内燃機関Eの燃料供給ポートに接続されており、前記下流側圧力計5と前記内燃機関Eとの間には管壁以外には流体抵抗となるものは存在しないように構成してある。また、前記燃料供給路1、前記戻し流路12、又は、各流路を接続する流路上には、内燃機関Eから燃料タンクへ戻される燃料の流量を模擬するために、逆流防止弁13、15や戻し流路用ポンプ14等が設けてある。例えば、前記逆流防止弁13、15は、前記内燃機関Eから戻された燃料が前記戻し流路12からの前記燃料供給路1よりも上流側へ逆流するのを防止するものである。また、前記戻し流路用ポンプ14は、燃料がタンクに戻される状態を模擬するための流れを形成する。
【0025】
前記ポンプ2は、前記燃料供給路1を流れる燃料の流量又は圧力を制御するための流量制御機構である。より具体的には前記ポンプ2は、吐出される燃料の供給流量を制御するものであり、例えば印加電圧や回転数が前記制御部6によって調節される。
【0026】
前記上流側圧力計3は、前記ポンプ2と前記コリオリ流量計4との間に設けられているものであり、前記コリオリ流量計4の上流側の圧力を測定するものである。
【0027】
前記コリオリ流量計4は、流量計の一種であって流体に働くコリオリ力を利用して流体の質量流量を測定するように構成されたものであり、例えば前記燃料供給路1に取り付けられるマニホールド部と、前記マニホールド部から分岐し、再び合流するU字状の2本の細管と、前記2本の細管を流体の流れ方向に対して垂直な方向に単振動させるオシレータと、前記細管のねじれを検出するねじれ検出器と、前記ねじれ検出器で検出されたねじれに基づいて流体の質量流量を算出する流量算出部と、から構成されるものである。なお、コリオリ流量計4の各部及び詳細については図示していない。このコリオリ流量計4は、細管を使用しているため、燃料のような粘度の高い流体が流れる場合、前記細管での圧損が大きくなり応答性が低下する傾向がある。このため、コリオリ流量計4の応答性を向上させるには、コリオリ流量計4の前後における差圧をできるだけ短時間で変更する必要がある。
【0028】
前記下流側圧力計5は、前記燃料供給路1において前記出口ポート11に対して直結される位置に配置してある。言い換えると、前記下流側圧力計5と前記出口ポート11との間にはフィルタ等の流体機器は設けられておらず、前記内燃機関Eにおける出力変化がそのまま遅れを生じることなく、前記下流側圧力計5で測定される下流側圧力に反映されるようにしてある。なお、ここで遅れが生じることがないとは、前記内燃機関Eにおける燃料の消費量の測定で要求される精度から考えて十分な速度で応答していることを言う。
【0029】
前記制御部6は、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を備えた専用又は汎用のコンピュータにおいて、メモリに格納された燃料流量測定装置100用プログラムが実行され、各種機器が協業することによりその機能が実現されるものである。この制御部6は、前記上流側圧力計3で測定される上流側測定圧力Pu及び前記下流側圧力計5で測定される下流側測定圧力Pdの差である測定差圧ΔPと、前記コリオリ流量計4の前後の目標差圧ΔPrと、に基づいて前記ポンプ2を制御するように構成してある。
【0030】
以下では前記制御部6の詳細な構成について図2を参照しながら説明する。
【0031】
前記制御部6は、出力−差圧関係記憶部61と、目標値設定部62と、制御器63と、を具備しているものであり、これらと各部が協業して前記内燃機関Eの出力(内燃機関Eのしている仕事、又は仕事に換算可能値)に基づいて目標差圧ΔPrを変更するフィードフォワード部6Fと、前記測定差圧ΔPと前記目標差圧ΔPrの偏差に基づいて前記ポンプ2を制御するフィードバック部6Bとを構成している。
【0032】
前記フィードフォワード部6Fは、前記内燃機関Eの出力と、出力ごとに設定されるべき目標差圧ΔPrとの関係である出力−差圧関係を記憶する前記出力−差圧関係記憶部61と、現在の前記内燃機関Eの推定出力又は測定出力と、前記出力−差圧関係とに基づいて前記目標差圧ΔPrを設定する前記目標値設定部62とから構成してある。
【0033】
前記出力−差圧関係は、図3(a)で示される出力−燃料流量関係と、図3(b)で示される燃料流量−差圧関係との2つの関係に基づいて導出される図3(c)に示されるような関係である。
【0034】
図3(a)に示される出力−燃料流量関係は、前記内燃機関Eの出力と、前記出力に応じて前記内燃機関Eで必要とされる燃料の流量との間の関係である。より具体的には、前記内燃機関Eの出力は、当該内燃機関Eの回転数及びトルクから算出される可能な値であり、前記内燃機関Eの出力が分かれば必要な燃料の消費量ひいては前記燃料供給路1を流れる燃料の流量も算出できる。なお、図3(a)に示した出力−燃料流量関係は、一例を示すものであり、グラフに示されるような線形性を示すものに限られない。例えば出力−燃料流量関係は非線形のグラフとして表される特性を有するものであっても構わない。
【0035】
また、図3(b)に示される燃料流量−差圧関係は、前記燃料の流量と、前記燃料の流量を前記燃料供給路1において実現するのに必要とされる当該コリオリ流量計4の前後の差圧との間の関係である。
【0036】
なお、これらの関係については設計値等から計算により関係式を求めたり、実験的に関係を同定したりすることができる。
【0037】
そして、図3(a)と図3(b)のグラフの各式は燃料の流量が媒介変数となっているので、各関係を示す関係式から燃料の流量を表す変数を消去することで図3(c)に示されるような前記出力−差圧関係についても導出できる。
【0038】
本実施形態では、前記出力−差圧関係記憶部61は出力−差圧関係として例えば図3(c)で示されるようなグラフの近似式を記憶しているが、例えば、内燃機関Eの出力と対応する差圧が対になった複数のデータをテーブル形式で記憶するものであっても構わない。
【0039】
図2に示される前記目標値設定部62は、前記内燃機関Eの実測出力又は推定出力を受け付けるとともに、前記出力−差圧関係記憶部61に記憶されている前記出力‐差圧関係を参照して、受け付けられた前記内燃機関Eの出力に対応する差圧を前記目標差圧ΔPrとして前記制御器63に設定するものである。すなわち、前記目標値設定部62に受け付けられる前記内燃機関Eの出力は例えば前記内燃機関Eの現在実測されている回転数又はトルクから換算された実測出力であってもよいし、前記内燃機関Eの試験に用いられている運転指令データ等から予め推定された推定出力であってもよい。
【0040】
前記フィードバック部6Bは、前記測定差圧ΔPと前記目標差圧ΔPrに基づいて制御対象であるポンプ2を制御する前記制御器63と、前記上流側圧力計3及び前記下流側圧力計5により構成されるフィードバックループと、から構成されるものである。より具体的には前記制御器63は前記測定差圧ΔPがフィードバックされて、前記測定差圧ΔPと、前記目標値設定部62で設定される目標差圧ΔPrとの偏差に例えばPID演算等を施して、前記ポンプ2の操作量を算出するものである。前記操作量は例えば前記ポンプ2に印加される電流、電圧、指令回転数等であって前記ポンプ2からの供給流量を変化させるものである。言い換えると、前記制御器63は、前記ポンプ2からの供給流量が変化して、結果として前記測定差圧ΔPと前記目標差圧ΔPrの偏差が小さくなるように前記操作量を調節している。
【0041】
このように構成された第1実施形態の燃料流量測定装置100によれば、前記下流側圧力計5が前記燃料供給路1の前記出口ポート11に対して直結した位置に設けてあるので、前記下流側圧力計5と前記内燃機関Eとの間には前記下流側圧力計5で応答の遅れを発生させるフィルタ等の流体機器は存在しない。このため、前記下流側圧力計5は、前記内燃機関Eにおける出力の変化、及び、それに伴う燃料消費量の変化を下流側測定圧力Pdとしてほとんど遅れることなく検出することができる。したがって、従来のように前記下流側測定圧力Pdに起因して流量制御が遅れ、結果として前記コリオリ流量計4で測定される測定流量の波形と前記内燃機関Eの出力変化の波形が大きく異なってしまうのを防ぐことができる。
【0042】
また、前記フィードフォワード部6Fによって前記内燃機関Eの出力に基づいて前記目標差圧ΔPrが適宜変更されるので、前記フィードバック部6B自体による制御上の遅れも回復することができる。
【0043】
これらのことから、前記コリオリ流量計4の応答性を向上させて前記コリオリ流量計4の測定流量の変化を、前記内燃機関Eの出力変化、又は、燃料消費量の変化と略一致させることができる。このため、非常短い時間に生じる燃料消費量の変化であったとしても前記コリオリ流量計4の測定流量として検出できるようになる。
【0044】
以下に第1実施形態に係る燃料流量測定装置100の変形例について説明する。流体制御機構である前記ポンプ2については、バルブやレギュレータ等であってもよい。より具体的には、可変式のニードルバルブや電子制御式レギュレータを前記ポンプ2の代わりに前記流体制御機構として用いても構わない。すなわち、前記コリオリ流量計4の上流側の圧力を変化させ、所望の値に調整できる機構であればよい。
【0045】
第1実施形態では流量計としてコリオリ流量計4を用いていたが、例えば容積式流量計を用いるとともに、前記制御部6が目標差圧をゼロとして前記容積式流量計のピストンや回転子等の運動子を制御するように構成したものであってもよい。すなわち、この変形例の場合には、前記容積式流量計の運動子が第1実施形態におけるポンプ2の代わりに流体制御機構としての機能を発揮することになる。このようなものであっても、前記下流側流量計5が前記内燃機関Eに対して直結した位置にあるので、前記内燃機関Eにおける出力変化を時間遅れ無く取得し、その出力変化に対従させて容積式流量計の前後の差圧をゼロに保ち、測定誤差や時間遅れを生じさせずに燃料の流量を測定することができる。
【0046】
次に本発明の第2実施形態に係る燃料流量測定装置100について図4乃至図6を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に記載の各部については第1実施形態の対応する各部と同じ符号を付すこととする。
【0047】
第2実施形態の燃料流量測定装置100は、図4に示すように前記下流側圧力計5が設けられていない点、及び、図5に示すように制御部6が測定差圧ΔPと目標差圧ΔPrに基づいてポンプ2を制御するのではなく、前記上流側圧力計3で測定される上流側測定圧力Puと目標圧力Prとに基づいてポンプ2を制御する点が第1実施形態の燃料流量測定装置100と異なっている。
【0048】
次に第2実施形態における前記制御部6の詳細について説明する。
【0049】
第2実施形態の制御部6は、出力−上流圧関係記憶部と、目標値設定部62と、制御器63と、から構成してあり、第1実施形態と比較して前記下流側圧力計5が存在しないことに対応して上流側流量計で測定される上流側測定圧力Puのみで前記燃料供給路1における流量制御を実現できるようにしてある。すなわち、第2実施形態の制御部6は、上流側測定圧力Pu、及び、前記コリオリ流量計4の上流側の目標圧力Prとの偏差に基づいて前記ポンプ2を制御するように構成してある。
【0050】
より具体的には、前記出力−上流圧関係記憶部64は図6に示すような前記内燃機関Eの出力と、前記出力に対応する前記コリオリ流量計4の上流側の圧力との間の関係である出力‐上流圧関係を記憶するものである。図6に示される出力−上流圧関係は例えば前記内燃機関Eの出力から前記コリオリ流量計4の下流側の圧力を仮定し、図3(c)のグラフの縦軸に各差圧に対して仮定された下流側の圧力を加えて上流側の圧力に変換して作成できる。第2実施形態でも前記出力−上流圧関係記憶部64は、出力−上流圧関係を示す近似式を記憶しているが、例えば前記内燃機関Eの出力と、必要とされる前記コリオリ流量計4の上流側における圧力の2つの変数が対になった複数のデータをテーブル形式で記憶するものであっても構わない。
【0051】
前記目標値設定部62は、前記内燃機関Eの実測出力又は推定出力を受け付けて、図6に示されるような前記出力‐上流圧関係を参照して、前記目標圧力Prを設定するように構成してある。
【0052】
前記制御器63は、前記上流側圧力計3の上流側測定圧力Puと前記目標値設定部62で設定される前記目標圧力Prとの偏差に基づいて前記ポンプ2の供給流量をフィードバック制御するものである。
【0053】
このように構成された第2実施形態の燃料流量測定装置100によれば、前記燃料供給路1における流量制御には、前記コリオリ流量計4の下流側の圧力が用いられていないので、従来のようにセンサで測定される値が遅れを有していることにより、結果としてコリオリ流量計4の測定流量が前記内燃機関Eの出力変化に対して遅れてしまうのを防ぐことができる。
【0054】
また、第1実施形態と同様に前記目標値設定部62が前記内燃機関Eの出力に応じて前記目標圧力Prを変更するので、流量制御系の遅れについても回復させ、前記コリオリ流量計4の応答性をさらに向上させることができる。
【0055】
したがって、第2実施形態の燃料流量測定装置100であっても第1実施形態とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0056】
次に第2実施形態の燃料流量測定装置100の変形例について説明する。この第2実施形態においても前記ポンプ2については、その他の流体制御機構であるバルブやレギュレータを用いても構わない。
【0057】
さらに第2実施形態の燃料流量測定装置100では、前記コリオリ流量計4の上流側にのみ前記上流側圧力計3を設け、前記コリオリ流量計4の下流側には圧力計を設けず、上流側測定圧力と、目標圧力とに基づいて前記ポンプ2を制御していたが、この関係は逆であっても構わない。
【0058】
より具体的には、前記コリオリ流量計4の上流側に設けられていた上流側圧力計3を省略し、前記コリオリ流量計4の下流側に前記下流側圧力計5だけを設けておき、前記下流側圧力計5で測定される下流側測定圧力と目標圧力に基づいて流体制御機構である前記ポンプ2が制御されるように構成しても構わない。このようなものであれば、前記下流側圧力計5により前記内燃機関Eの出力変化を時間遅れ無く取得して、前記コリオリ流量計4の前後において達成されるべき圧力を速やかに実現して、燃料消費量等を正確に反映した燃料の流量を測定する事が可能となる。
【0059】
また、前述したように前記内燃機関Eと直結する位置に下流側圧力センサ5だけを設けて、前記下流側圧力センサ5の測定値だけに基づいて燃料供給路1における燃料の流量を制御する場合には、前記コリオリ流量計4の代わりに容積式流量計を用いても構わない。この変形例では、前記目標値設定部62が設定する目標圧力又は目標差圧は、前記容積式流量計の前後における圧力がゼロとなるように設定される。
【0060】
その他の実施形態について説明する。
【0061】
第1実施形態における前記下流側圧力計の設置場所は、図1に示した場所に限られず、例えば戻し流路上等に設けてもよい。出口ポートと下流側圧力計とが直結しているとは、例えば間に他の流体機器が挟まれないことであり、その離間距離についても管の内面による流体抵抗により発生する遅れが問題とならない程度であればよい。すなわち、燃料流量測定における許容時間遅れよりも遅れが小さいのであれば、前記出口ポートと前記下流側圧力計との間に所定距離が存在していても構わない。前記出口ポートと前記下流側圧力計は、前記出口ポートと前記下流側圧力計が隣接している又は、所定距離離間した状態であり、かつ、それらの間に別のフィルタ等の流体機器が無いように配置すればよい。
【0062】
前記各実施形態の制御部は、前記内燃機関の出力の値そのものを受け付けていたが、例えば回転数やトルクそのもの、あるいは、前記内燃機関で達成されるアクセル開度そのものを前記内燃機関の出力として受け付けて、目標差圧、又は目標圧力を設定するように構成してもよい。より具体的には、燃料流量の測定の観点からは、前記内燃機関がガソリンエンジンの場合には、回転数又はトルクから目標差圧や目標圧力が設定されるのが好ましい。一方、前記内燃機関がディーゼルエンジンの場合には、アクセル開度に基づいて目標差圧や目標圧力が設定されるのが好ましい。また、前記制御部は、予め固定された目標差圧又は目標圧力に基づいて前記燃料供給路における流量制御を行うように構成してもよい。
【0063】
すなわち、本発明は前記下流側圧力計を前記内燃機関の直下に設ける、あるいは、下流側圧力計を流量制御に用いない点だけでも、前記コリオリ流量計の前記内燃機関の出力変化に対する遅れを改善する効果を奏し得る。
【0064】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0065】
100・・・燃料流量測定装置
1 ・・・燃料供給路
11 ・・・出口ポート
12 ・・・戻し流路
2 ・・・ポンプ
3 ・・・上流側圧力計
4 ・・・コリオリ流量計
5 ・・・下流側圧力計
6 ・・・制御部
61 ・・・出力−差圧関係記憶部
62 ・・・目標値設定部
63 ・・・制御器
64 ・・・出力−上流圧関係記憶部
E ・・・内燃機関
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7