(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板の処理として、前記基板上に膜を形成する処理が行われる場合、前記膜中に不純物をドープするドーピングガスを前記処理室内に供給するドーピングガス供給部が設けられている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明者等が得た知見)
本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明者等が得た知見について説明する。基板処理装置として、例えば高温雰囲気下で金属原料が溶融することで生成される液体原料と反応ガスとを反応させることで、基板の処理を行う処理ガスを生成する処理ガス生成器を備える基板処理装置がある。この基板処理装置では、処理ガス生成器内で処理ガスを生成しつつ、処理ガス生成器から処理室内に処理ガスを供給し、処理室内の基板に処理ガスを吹付けることで、基板の処理が行われる。
【0011】
しかしながら、このような基板処理装置では、所定の基板の処理を終了(例えば所定の基板処理時間が経過)し、処理ガス生成器内への反応ガスの供給を停止した場合であっても、処理ガス生成器内には、反応ガスが残留している。一般的な基板の処理の終了は、処理ガス生成器内へ供給するガスを、反応ガス(反応ガスを含むガスを含む)から、反応ガスを含まないガス(水素(H
2)ガスや窒素(N
2)あるいはこれらを混合したガス等のパージガス)に切り替えることで行われるが、このガスの切替の時点では、処理ガス生成器内に反応ガスが残留していることになる。このため、処理ガス生成器内への反応ガスの供給を停止した後であっても、処理ガス生成器内に残留する反応ガスにより、処理ガス生成器内で処理ガスが生成され続け、処理室内に処理ガスが供給され続けることがある。その結果、処理の終了を意図した時点より後にも、処理室内の基板に処理ガスが吹付けられ続け、処理済の基板に対して、意図しない基板処理が行われることがある。
【0012】
また、通常、処理ガス生成器内への反応ガスの供給を停止した後は、反応ガスを含まないガスが処理ガス生成器へ供給され続けるので、処理ガス生成器内で生成される処理ガスの濃度は徐々に低くなる。つまり、処理ガス生成器内への反応ガスの供給を停止した後は、処理室内に供給される処理ガスの供給条件が変化することがある。
【0013】
所定の基板処理の終了後に、処理済の基板に対して意図しない基板処理が行われると、基板の表面の組成や品質が変化することがある。例えば、意図しない基板処理が行われることで、膜の厚さ方向における組成や膜の厚さ等が一定ではない遷移層が、処理済の基板上に形成されることがある。
【0014】
このような意図しない基板処理を防止するための方法として、基板処理の終了時に処理ガス生成器内への反応ガス及び反応ガスを含まないガス等の一切のガスの供給を停止し、その状態で処理ガス生成器を含む基板処理装置を基板を取り出せる温度まで冷却するという方法が考えられる。しかしながら、この方法は幾つかのデメリットがあるため、採用するのが困難である。
【0015】
第1に、冷却により、処理ガス生成器内に残留するガスが収縮(体積収縮)するため、処理室内に残留する処理ガスが処理ガス生成器内に吸い込まれることがある。例えば、処理ガス生成器内で生成した塩化ガリウム(GaCl)ガスと、アンモニア(NH
3)ガスと、を処理室内で反応させることで、基板上に窒化ガリウム(GaN)膜を成膜する基板処理が行われた場合、処理ガス生成器内にNH
3ガスが吸い込まれることがある。これにより、処理ガス生成器内でGaClガスとNH
3ガスとが反応し、処理ガス生成器内にGaN膜(GaN結晶)が堆積することがある。例えば、処理ガス生成器に設けられたGaClガスを排出する排出口にGaN膜が堆積し、排出口が閉塞することがある。
【0016】
第2に、処理ガス生成器内を冷却する際、処理ガス生成器内をパージするパージガスの処理ガス生成器内への供給を行わずに処理ガス生成器を含む基板処理装置を冷却した場合には、処理室内から基板を取り出す際、GaClガスの生成に使用され、処理ガス生成器内に残留した反応ガス(例えばHClガス)が、処理室外に漏洩する危険性もある。
【0017】
本発明は、例えば処理ガス生成器内への反応ガスの供給を停止した後、処理ガス生成器内に残留する反応ガスにより、処理ガス生成器内で処理ガスが生成され続け、処理室内に処理ガスが供給され続ける場合に生じる課題を解決するためになされたものである。
【0018】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
以下に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置について、主に
図1を参照しながら説明する。本実施形態では、基板処理装置がハイドライド気相成長装置(Hydride Vapor Phase Epitaxy(HVPE)装置)である場合を例に説明する。
【0019】
図1に示すように、基板処理装置10としてのHVPE装置は、例えば石英(SiO
2)等の耐熱性材料により形成される反応容器11を備えている。反応容器11内の筒中空部には、処理室12が形成されている。
【0020】
反応容器11には、反応ガス供給管13が、反応容器11の側部を貫通するように気密に設けられている。反応ガス供給管13は、耐熱性、耐食性等を有する金属材料(例えばステンレス)や非金属材料(例えば石英)により形成されている。
【0021】
反応ガス供給管13における反応容器11の外側には、上流側から順に、反応ガス供給源13a、後述の処理ガス生成器14への反応ガスの供給・停止を行う弁としてのバルブ13bが設けられている。反応ガス供給管13から反応ガスとして例えば塩素(Cl
2)ガスや塩化水素(HCl)ガスが処理ガス生成器14内に供給される。処理ガス生成器14には、処理ガス生成器14内で生成された基板100を処理する処理ガス(第1の処理ガス)を基板100に供給する第1の処理ガス供給管13cが形成されている。第1の処理ガス供給管13cは、耐熱性、耐食性等を有する非金属材料(例えば石英)により形成されている。第1の処理ガス供給管13cの下流端部(下流端)には、第1の処理ガス供給口13dが形成されている。第1の処理ガス供給管13cから、第1の処理ガス供給口13dを介して、第1の処理ガスとしてIII族元素含有ガス(例えばGaClガス)が処理室12内に供給され、後述の第1の位置にある基板100に吹付けられる。
【0022】
処理ガス生成器14は、反応容器11内に設けられている。処理ガス生成器14は、金属原料14aを収容する容器14bを備えている。容器14b内の金属原料14aより上方には、反応ガスが通過する空間14cが形成されている。処理ガス生成器14は、空間14c内を反応ガスが通過する際に、反応ガスが金属原料14aに接触して反応ガスと金属原料14aとが反応し、処理ガス(第1の処理ガス)が生成されるように構成されている。
【0023】
容器14bは、例えば平面形状が矩形状に形成されている。容器14bは、耐熱性、耐食性を有する非金属材料(例えば高純度の石英)で形成されている。金属原料の補充頻度を低減し、金属原料14aの高い純度を維持する観点から、容器14bの容積は可能な限り大きくすることが好ましい。容器14bには、上述の反応ガス供給管13の下流端が気密に接続されているとともに、上述の第1の処理ガス供給管13cの上流端が気密に接続されている。
【0024】
金属原料14aとして、例えば常温で固体の原料が用いられる。例えば、金属原料14aとして、III族元素を含む金属原料であるガリウム(Ga)の固体、インジウム(In)の固体、アルミニウム(Al)の固体が用いられる。なお、金属原料14aは、処理ガス生成器14内の温度と使用する金属によって、固体状の場合もあれば、液体状の場合もある。
【0025】
容器14bの容積は例えば0.5リットル(0.5L)〜3Lであることが好ましい。また、容器14b内に入れる(補充する)金属原料(例えばGa)の量は、例えば容器14bの容積の10%〜80%程度であることが好ましい。例えば、容器14bの容積が2Lである場合、容器14b内の容積の50%の金属原料であるGaを、容器14b内に入れ、空間14cの体積を1Lにすることが好ましい。
【0026】
主に、反応ガス供給管13、バルブ13b、処理ガス生成器14、第1の処理ガス供給管13cにより、第1の処理ガス供給部が構成される。なお、反応ガス供給源13aを第1の処理ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0027】
反応容器11には、第2の処理ガス供給管15が、反応容器11の側部を貫通するように気密に設けられている。第2の処理ガス供給管15は、耐熱性、耐食性等を有する金属材料(例えばステンレス)や非金属材料(例えば石英)により形成されている。
【0028】
第2の処理ガス供給管15における反応容器11の外側には、上流側から順に、第2の処理ガス供給源15a、処理室12内の基板100に対して第2の処理ガスの供給・停止を行う弁としてのバルブ15bが設けられている。第2の処理ガス供給管15の下流端部(下流端)には、第2の処理ガス供給口15dが形成されている。第2の処理ガス供給管15から、第2の処理ガス供給口15dを介して、第2の処理ガスとしてV族元素含有ガス(例えばNH
3ガス)が処理室12内に供給され、後述の第1の位置にある基板100に吹付けられる。
【0029】
主に、第2の処理ガス供給管15、バルブ15bにより、第2の処理ガス供給部が構成される。なお、第2の処理ガス供給源15aを第2の処理ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0030】
主に、第1の処理ガス供給部、第2の処理ガス供給部により、処理ガス供給部が構成される。
【0031】
また、反応容器11には、ドーピングガス供給管16が、反応容器11の側部を貫通するように気密に設けられている。ドーピングガス供給管16は、耐熱性、耐食性等を有する金属材料(例えばステンレス)や、非金属材料(例えば石英)により形成されている。
【0032】
ドーピングガス供給管16における反応容器11の外側には、上流側から順に、ドーピングガス供給源16a、処理室12内の基板100に対してドーピングガスの供給・停止を行う弁としてのバルブ16bが設けられている。ドーピングガス供給管16の下流端部(下流端)には、ドーピングガス供給口16dが形成されている。ドーピングガス供給管16から、ドーピングガス供給口16dを介して、不純物をドーピングするドーピングガスとして例えばジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガス等のSi元素含有ガスが処理室12内に供給され、後述の第1の位置にある基板100に吹付けられる。
【0033】
主に、ドーピングガス供給管16、バルブ16bにより、ドーピングガス供給部が構成される。なお、ドーピングガス供給源16aをドーピングガス供給部に含めて考えてもよい。また、ドーピングガス供給部を処理ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0034】
反応容器11の外周には、加熱部として、第1のヒータ17及び第2のヒータ18が設けられている。主に第1のヒータ17によって、上述の処理ガス生成器14内が所定温度(例えば500℃〜900℃)に加熱される。主に第2のヒータ18によって、後述の処理室12内の第1の位置にある基板100が所定温度(例えば500℃〜1200℃)に加熱される。
【0035】
反応容器11には、処理室12内の雰囲気を排気する排気管19が気密に設けられている。排気管19には、排気装置としての真空ポンプ(あるいはブロア)19aが設けられる場合もある。
【0036】
処理室12内には、処理室12内で基板100を支持する基板支持部としてのサセプタ20が設けられている。サセプタ20には回転軸20aが設けられており、サセプタ20は回転可能に構成されている。
【0037】
サセプタ20には、サセプタ20を保持しつつ、処理室12内を気密に維持した状態で、処理室12内でサセプタ20を移動させることができる移動機構21が設けられている。
【0038】
具体的には、移動機構21は、処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられる処理室12内の第1の位置と、処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられない処理室12内の第2の位置(例えば
図1に破線で示す位置)と、の間で、基板100を支持したサセプタ20を移動させることができるように構成されている。
【0039】
移動機構21は、基板の処理を行う場合には、例えばサセプタ20に支持された基板100が第1の位置に位置するように、サセプタ20を移動させる。また、移動機構21は、基板の処理を行わない(例えば所定の基板の処理が終了した)場合には、例えばサセプタ20に支持された基板100が第2の位置に位置するように、サセプタ20を移動させる。
【0040】
移動機構21は、例えば、所定の基板の処理時間が経過した後、第1の処理ガス供給部から処理室12内への第1の処理ガスの供給が停止される前に、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置から第2の位置に移動させることが好ましい。
【0041】
移動機構21は、例えば、所定の基板処理時間が経過した後、第1の処理ガス供給部から処理室12内に供給される第1の処理ガスの濃度や組成、供給量等の供給条件が変わる前に、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置から第2の位置に移動させることがより好ましい。
【0042】
移動機構21は、処理ガス生成器14内への反応ガスの供給が停止される瞬間(停止と同時)か、処理ガス生成器14内への反応ガスの供給が停止される前に、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置から第2の位置に移動させることがより好ましい。
【0043】
このように、所定の基板の処理が終了した後(例えば所定の基板の処理時間が経過した後)、移動機構21により、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置から第2の位置に移動させることで、処理済の基板100に対して、意図しない基板の処理が行われることを抑制することができる。
【0044】
第1の位置は、例えば処理ガス供給部から排気管19に向かって処理室12内を流れる処理ガスの流路上にあることが好ましい。また、第1の位置は、例えば第1の処理ガス供給口13d、第2の処理ガス供給口15d、ドーピングガス供給口16dよりも下流側であることが好ましい。また、第2の位置は、例えば第1の処理ガス口13d、第2の処理ガス供給口15d、ドーピングガス供給口16dよりも上流側であることがより好ましい。なお、第2の位置には、処理ガス(第1の処理ガス、第2の処理ガス、ドーピングガス)が全く吹付けられない位置の他、基板の処理(例えば成膜)が行われない程度に吹付けられる位置も含まれる。
【0045】
移動機構21によるサセプタ20の移動の制御は、例えば移動機構21に電気的に接続された制御部22を介して行うことができる。
【0046】
また、反応容器11には、第2の位置に移動した基板100(処理済の基板100)に、基板100の表面を保護する保護ガスを吹付ける保護ガス吹付管22が設けられている。保護ガス吹付管22は、耐熱性、耐食性等を有する金属材料(例えばステンレス)や非金属材料(例えば石英)により形成されている。
【0047】
保護ガス吹付管22における反応容器11の外側には、上流側から順に、保護ガス供給源22a、保護ガスの供給・停止を行う弁としてのバルブ22bが設けられている。
【0048】
保護ガス吹付管22から、保護ガスとして、例えば、基板100の表面からの所定の元素の脱離を抑制したり、処理室12内の処理ガスが基板100の表面に接触(供給)することを抑制するガスが、第2の位置にある基板100に吹付けられる。例えば基板100上にIII−V族半導体膜(例えばGaN膜)を成膜する処理が行われた場合、保護ガス吹付管22から、保護ガスとして、III−V族半導体膜から、蒸気圧が高いV族元素(例えばN元素)が脱離することを抑制するガス(例えばV族元素含有ガス、例えば窒化物半導体膜が成膜された場合はNH
3ガス等を含むガス)が、第2の位置にある基板100に吹付けられる。
【0049】
主に、保護ガス吹付管22、バルブ22bにより、保護ガス吹付部が構成される。なお、保護ガス供給源22aを保護ガス吹付部に含めて考えてもよい。
【0050】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態にかかる半導体製造工程の一工程として実施される基板処理工程について説明する。かかる工程は、上述の基板処理装置10により実施される。ここでは、HVPE法により、基板100上にGaN膜を成膜する例について説明する。
【0051】
まず、容器14b内に例えばGaの固体を収容(補充)する。そして、基板100としての例えばサファイア基板を処理室12内に搬入し、サセプタ20上に載置した後、処理室12を気密に保持する。そして、移動機構21により、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置に移動させる。例えば、サセプタ20に支持された基板100が第1の位置に位置するように、移動機構21によりサセプタ20を移動させる。その後、サセプタ20の回転を開始する。サセプタ20の回転は、少なくとも後述のGaN膜の成膜が終了するまで継続する。
【0052】
処理室12内の不純物を低減するために、真空ポンプ19aによって処理室12内の大気を真空排気した後、例えばN
2ガスを処理室12内に導入して処理室12内を例えば大気圧にする。この目的のためには、真空ポンプ19aを用いずに、処理室12内にN
2ガスを一定時間供給した後、真空ポンプ(あるいはブロア)19aを用いて処理室12内を所定の圧力(典型的には0.1〜1気圧)にしてもよい。また、容器14b内が所定の温度(例えば600℃〜900℃)になるように、第1のヒータ17によって加熱する。これにより、容器14b内のGaの固体が溶融して金属原料14aであるGa融液が生成される。第1のヒータ17による加熱と併行して、処理室12内の第1の位置にある基板100が所定温度(例えば500℃〜1200℃)になるように、第2のヒータ18によって加熱する。
【0053】
容器14b内でGa融液が生成されるとともに、基板100が所定温度に達したら、バルブ15bを開けて、第2の処理ガス供給管15から、第2の処理ガス(例えばNH
3ガス)を処理室12内に供給し、処理室12内の基板100に吹付ける。
【0054】
その後、バルブ13bを開けて、反応ガス供給管13から、反応ガス(例えばHClガス)の容器14b内への供給を開始する。これにより、容器14b内で、Ga融液と反応ガスとが反応して、第1の処理ガス(例えばGaClガス)が生成される。そして、第1の処理ガス供給管13cから、容器14b内で生成された第1の処理ガスを処理室12内に供給し、処理室12内の基板100に吹付ける。
【0055】
また、所定のタイミングでバルブ16bを開けて、ドーピングガス供給管16から、ドーピングガス(例えばSiH
2Cl
2ガス)を処理室12内に供給し、処理室12内の基板100に吹付ける。例えば、GaN膜の最表面をSiドープ層にする場合には、成膜しているGaN膜が所定厚さになったらバルブ16bを開けて、Siドープ層の成膜を開始する。また、例えばGaN膜の全てをSiドープ層にする場合には、バルブ15bと同時にバルブ16bを開ける。
【0056】
そして、第1の処理ガスと第2の処理ガスとを反応させて基板100上に所定の厚さのGaN膜を成膜しつつ、GaN膜中に不純物であるSi元素をドープする。
【0057】
所定の基板の処理時間(成膜時間)が経過し、GaN膜の厚さが所定の厚さに達したら、移動機構21により、基板100を支持したサセプタ20を第2の位置に移動させる。例えば、サセプタ20に支持された基板100が処理室12内の第2の位置に位置するように、移動機構21によりサセプタ20を移動させる。これにより、GaN膜の成膜処理が終了する。
【0058】
サセプタ20が第2の位置に移動する前に、バルブ22bを開けておく。例えば、移動機構21によるサセプタ20の移動の開始と同時に、バルブ22bを開ける。基板100を支持したサセプタ20が第2の位置に移動することで、保護ガス吹付管22から、第2の位置にある基板100(処理済の基板100)への保護ガス(例えばNH
3ガス)の吹付けを開始する。
【0059】
また、容器14b内への反応ガスの供給、処理室12内への第2の処理ガスの供給、処理室12内へのドーピングガスの供給を停止し、第1のヒータ17及び第2のヒータ18への通電を止め、所定の温度まで処理室12内を降温させた後、バルブ22bを閉め、保護ガスの供給を停止する。なお、ここでの所定の温度とは、NH
3ガス等の保護ガスを供給しなくても基板100の表面が変質しない温度である。例えば基板100上にGaN膜が成膜されている場合は500℃程度である。
【0060】
その後、真空ポンプ19aにより、処理室12内に残留する第1の処理ガス、第2の処理ガス及びドーピングガス(以下、この3つのガスを総称して「処理ガス」とも言う。)を排気する。この目的のためには、真空ポンプ19aを用いずに、処理室12内にN
2ガスを一定時間供給して処理室12内に残留する処理ガスを処理室12外へ排出しても良い。処理ガス等の排出が完了したら、N
2ガス等の不活性ガスを処理室12内に供給して、処理室12内を大気圧にする。この状態で、基板100の取出しが可能な室温付近まで処理室12内を降温させる(冷却する)。そして、サセプタ20から基板100を取り外し、基板100を処理室12外へ搬出する。
【0061】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0062】
(a)処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられる第1の位置と、処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられない第2の位置と、の間で、処理室12内でサセプタ20(基板支持部)を移動させる移動機構21を備えることで、意図しない基板の処理が行われることを抑制することができる。例えば、所定の基板処理が終了した後、処理済の基板100に対して、意図しない基板の処理が行われることを抑制することができる。
【0063】
つまり、所定の基板の処理が終了したら(例えば所定の基板の処理時間が経過したら)、移動機構21により、第1の位置から第2の位置に基板100を支持したサセプタ20を移動させることで、処理室12内に残留する処理ガスが、基板100に吹付けられ(供給され)ることを抑制することができる。その結果、意図しない基板の処理が行われることを抑制することができる。
【0064】
例えば、所定の基板の処理が終了し、処理室12内への処理ガスの供給、つまり、処理ガス生成器14内への反応ガスの供給、処理室12内への第2の処理ガス及びドーピングガスの供給が停止されると、処理室12内の第1の処理ガス、第2の処理ガス、ドーピングガスの濃度は徐々に低くなる。しかしながら、処理ガス生成器14内に残留する反応ガスによって、処理ガス生成器14内で第1の処理ガスが生成され続け、処理室12内に供給され続けることがある。このため、処理室12内への処理ガスの供給の停止から時間が経つほど、処理室12内における処理ガスの組成、つまり第1の処理ガス、第2の処理ガス、ドーピングガスの割合が徐々に変化することがある。具体的には、処理室12内における第1の処理ガスの濃度に比べて第2の処理ガス、ドーピングガスの濃度が低くなることがある。このような場合であっても、移動機構21により、第1の位置から第2の位置にサセプタ20を移動させることで、ドーピングガスの濃度が低くなった処理ガスが基板100に供給されることを抑制することができる。これにより、基板100上に、不純物濃度が所望の濃度よりも低い遷移層が形成されることを抑制することができる。
【0065】
これにより、処理済の基板100の表面の組成や品質が変化することを抑制することができる。例えば、処理済の基板100の表面に、膜の厚さ方向における組成や膜の厚さ等が一定ではない遷移層が形成されることを抑制することができる。
【0066】
なお、従来より、処理室内で基板を移動させる移動機構を備えた基板処理装置がある。しかしながら、従来の基板処理装置が備える移動機構は、基板の処理位置から、基板を処理室外へ搬送する処理室内の搬送位置に基板(基板を支持したサセプタ)を移動させるものである。例えば、従来の基板処理装置が備える移動機構は、処理室内を高温雰囲気下にし、基板を高温に加熱して行う基板の処理が終了し、処理室内および基板の温度を例えば室温付近まで降温させた後に、基板を取出し位置に移動させるものである。つまり、従来の基板処理装置の移動機構は、処理ガスが吹付けられる位置から、処理ガスが吹付けられない位置に基板を移動させるものではない。従って、従来の基板処理装置では、所定の基板の処理を停止した瞬間から、処理室内及び処理室内の基板の降温中(冷却中)のかなり長い時間にわたり、基板は基板の処理位置にとどまることになる。このため、従来の基板処理装置では、本実施形態のように、意図しない基板の処理が行われることを抑制する効果は得られない。
【0067】
(b)本実施形態は、基板処理装置10が処理ガス生成器14を備える場合に、特に有効である。つまり、本実施形態は、処理ガス(第1の処理ガス)を生成しながら、基板の処理を行う場合に特に有効である。
【0068】
例えば、所定の基板の処理が終了し、容器14b内への反応ガスの供給を停止した後に、容器14b内に残留する反応ガスと金属原料14aとが反応して第1の処理ガスが生成され続け、処理室12内に供給され続けた場合であっても、移動機構21により、第1の位置から第2の位置にサセプタ20を移動させることで、処理済の基板100に第1の処理ガスが吹付けられることを抑制することができる。これにより、意図しない基板の処理が行われることをより確実に抑制することができる。例えば、HVPE装置による成膜処理において、成膜された膜の組成制御や膜厚制御を容易かつ確実に行うことができる。従って、上記(a)の効果をより得ることができる。
【0069】
(c)また、例えば処理ガス供給部から処理室12内への処理ガスの供給が停止される前や、処理ガス供給部から供給される処理ガス(例えば処理ガス供給部14から処理室12内に供給される第1の処理ガス)の濃度や組成等の供給条件が変わる前に、移動機構21により、第1の位置から第2の位置に基板100を支持したサセプタ20を移動させることで、基板の処理を所定のタイミングで確実に終了させることができる。つまり、基板の処理の終点を、容易にかつ確実に制御することができる。これにより、上記(a)(b)の効果をより得ることができる。
【0070】
(d)保護ガス吹付部から、第2の位置に移動した基板100に保護ガスを吹付けることで、第2の位置にある基板100の表面を保護することができる。例えば、基板100上にGaN膜が成膜された場合、GaN膜からのN元素の脱離を抑制することができる。また、処理室12内にある処理ガスが第2の位置にある基板100に供給されることをより確実に抑制することができる。従って、処理済の基板100の表面の組成や品質が変わることをより確実に抑制することができる。
【0071】
(e)本実施形態は、不純物がドープされた膜を基板100上に成膜する場合に特に有効であり、処理済の基板100の表面の組成や品質が変わることをより確実に抑制することができる。
【0072】
(f)また、基板処理装置10を構成する石英部品からSiが溶出することがある。処理室12内への処理ガスの供給を停止した後は、上述したように、処理室12内への処理ガスの供給を停止すると、処理室12内の処理ガス(第1の処理ガス、第2の処理ガス、ドーピングガス)の濃度が徐々に低くなることがある。このため、基板処理装置10を構成する石英部品からSiが溶出すると、処理室12内の処理ガス中のSi濃度が徐々に高くなることがある。このような場合であっても、所定の基板の処理が終了した後、移動機構21により、第1の位置から第2の位置にサセプタ20を移動させることで、上述のようにSi濃度が高くなった処理ガスが、処理済の基板100に供給されることを抑制することができる。これにより、基板100上に、不純物濃度が所望の濃度よりも高い遷移層が形成されることを抑制することができる。
【0073】
ちなみに、基板の処理を実行している間、つまり処理室12内への処理ガスの供給が行われている間は、基板処理装置10を構成する石英部品から溶出したSiが処理室12内の処理ガスに混入した場合であっても、そのSiの濃度は無視することができる。
【0074】
図2に、基板100上に成膜された不純物であるSiをドープしたGaN膜の表面からの距離とSi濃度との関係の一例を表すグラフ図(二次イオン質量分析(SIMS)測定結果)を示す。なお、
図2中、「移動あり」とは、所定の膜厚のGaN膜を形成した後に、移動機構21により、第1の位置から第2の位置に処理済の基板100を支持したサセプタ20を移動させたことを意味する。また、「移動なし」とは、所定の膜厚のGaN膜を形成した後であっても、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置に維持したままにしたことを意味する。また、
図2中、深さが0μmとは、基板100に成膜されたGaN膜の最表面を示し、深さの値が大きくなるほど、GaN膜の表面からの距離が長くなることを示している。
【0075】
図2から、所定の基板の処理が終了した後に、移動機構21により、サセプタ20を移動させた場合、基板100の表面のシリコン濃度が変わることを抑制することができることを確認した。つまり、処理済の基板100上に形成されたGaN膜の不純物濃度が厚さ方向でほぼ一定であることを確認した。例えば、処理済の基板100上に遷移層が形成されることを抑制することができることを確認した。
【0076】
これに対し、所定の基板の処理後も、基板100を支持したサセプタ20を第2の位置に移動させなかった場合、基板100の表面の組成が変わることがあることを確認した。つまり、処理済の基板100上に形成されたGaN膜の最表面のSi濃度が変わることがあることを確認した。例えば、処理済の基板100上に0.2μm程度の厚さの遷移層が形成されることがあることを確認した。なお、遷移層の表面から0.2μm程度の位置から0.1μm程度の位置にかけてSi濃度が徐々に低くなっていることが確認できる。つまり、処理室12内における処理ガスの組成が変化していることが確認できる。具体的には、処理ガス生成器14内への反応ガスの供給を停止した後であっても、処理ガス生成器14内に残留する反応ガスにより第1の処理ガスが生成され続け、処理室12内に第1の処理ガスが供給され続けたことが確認できる。また、遷移層の表面から0.1μm程度の位置から最表面にかけてSi濃度が徐々に高くなっていることが確認できる。これは、基板処理装置10を構成する石英部品が溶出したSiの影響である。
【0077】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
上述の実施形態では、所定の基板処理が終了し、移動機構21により、基板100を支持したサセプタ20を第1の位置から第2の位置に移動させた後に、処理室12内への処理ガスの供給(例えば、処理ガス生成器14内への反応ガスの供給、処理室12内への第2の処理ガス及びドーピングガスの供給)を停止したが、これに限定されない。例えば、移動機構21による基板100を支持したサセプタ20の移動の開始と同時に、処理室12内への処理ガスの供給を停止してもよい。また、所定の基板処理が終了し、処理室12内への処理ガスの供給を停止した後に、移動機構21による基板100を支持したサセプタ20の移動を開始してもよい。
【0079】
上述の実施形態では、移動機構21による基板100を支持したサセプタ20の移動の開始と同時に、保護ガス供給部からの保護ガスの供給を開始したが、これに限定されない。移動機構21による基板100を支持したサセプタ20の移動が開始される前、つまり基板100を支持したサセプタ20が第1の位置にあるときに、保護ガス供給部から保護ガスを供給し続けてもよい。例えば、処理室12内で基板の処理が行われている最中であっても、保護ガス供給部から保護ガスを供給し続けてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、移動機構21によるサセプタ20の移動の制御を、移動機構21に電気的に接続した制御部を介して行ったが、これに限定されない。例えば、移動機構21によるサセプタ20の移動を、人により行ってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、処理ガス生成器14を備える基板処理装置10について説明したが、これに限定されない。処理ガス生成器14を備えない基板処理装置であっても、上記(a)(b)等の効果を得ることができる。
【0082】
また、
図1に示すように、上述の実施形態では、基板100の表面が第1の処理ガス、第2の処理ガス及びドーピングガス(処理ガス)の処理室12内への供給方向に対して垂直に配置されるようにサセプタ20を設けたが、これに限定されない。例えば、基板100の表面が処理ガスの処理室12内への供給方向に対して平行に配置されるようにサセプタ20を設けてもよい。
【0083】
上述の実施形態では、金属原料14aとして、例えば固体のGaを高温で溶融させたGa融液を用いる場合について説明したが、これに限定されない。金属原料14aとして、常温で液体である原料や、高温で固体である原料を用いてもよい。
【0084】
上述の実施形態では、処理ガス生成器14が処理室12内に設けられる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、処理ガス生成器14は、基板処理装置10の処理室12(反応容器11)外に設けられていてもよい。この場合は、処理ガス生成器14の外周に、処理ガス生成器14が備える容器14b内を所定温度に加熱するヒータが設けられているとよい。
【0085】
上述の実施形態では、基板処理装置10がHVPE装置である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、基板処理装置10がMOVPE装置であっても、上記(a)(b)等の効果を得ることができる。しかしながら、本願発明は、MOVPE装置よりも膜厚制御や成膜速度の制御が難しいHVPE装置の場合に、上記(a)(b)等の効果を十分に発揮することができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、基板処理として、GaN膜を成膜する処理について説明したが、これに限定されない。この他、例えば、基板処理として、酸化膜、金属膜等の種々の膜を成膜する成膜処理、エッチング処理等を行う基板処理装置や、上記の基板処理を行って、基板を製造する基板処理装置にも適用できる。これによっても、上記(a)(b)等の効果を得ることができる。
【0087】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0088】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記処理室内に供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられる第1の位置と、前記処理ガス供給部から供給された処理ガスが吹付けられない第2の位置と、の間で、前記処理室内で前記基板支持部を移動させる移動機構と、を備える基板処理装置が提供される。
【0089】
[付記2]
付記1の基板処理装置であって、好ましくは、
前記移動機構は、
前記基板の処理が終了した後、前記処理ガス供給部から前記処理室内への処理ガスの供給が停止される前に、前記基板を支持した前記基板支持部を前記第2の位置に移動させる。
【0090】
[付記3]
付記1又は2の基板処理装置であって、好ましくは、
前記移動機構は、
前記基板の処理が終了した後、前記処理ガス供給部から供給される処理ガスの供給条件が変わる前に、前記基板を支持した前記基板支持部を前記第2の位置に移動させる。
【0091】
[付記4]
付記1ないし3のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記移動機構により、前記基板を支持した前記基板支持部を前記第2の位置に移動させることで、前記基板の処理を停止させる。
【0092】
[付記5]
付記1ないし4のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記移動機構を制御する制御部を備える。
【0093】
[付記6]
付記1ないし5のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記処理ガス供給部は、金属原料と反応ガスとを反応させることで処理ガスを生成する処理ガス生成器を備えている。
【0094】
[付記7]
付記6の基板処理装置であって、好ましくは、
前記金属原料はIII族元素を含む金属原料であり、
前記処理ガス生成器内で生成される処理ガスは、III族元素含有ガスである。
【0095】
[付記8]
付記6又は7のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記処理ガス供給部は、処理ガスとしてV族元素含有ガスを供給するV族元素含有ガス供給部を備えている。
【0096】
[付記9]
付記1ないし8のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2の位置に移動した処理済の前記基板に、処理済の前記基板の表面を保護する保護ガスを吹付ける保護ガス吹付部が設けられている。
【0097】
[付記10]
付記1ないし9のいずれかの基板処理装置であって、好ましくは、
前記基板の処理として、前記基板上に膜を形成する処理が行われる場合、前記膜中に不純物をドープするドーピングガスを前記処理室内に供給するドーピングガス供給部が設けられている。
【0098】
[付記11]
本発明の他の態様によれば、
処理室内で基板を処理する工程を有し、
前記基板を処理する工程では、
処理ガス供給部から処理室内に供給される処理ガスが吹き付けられる第1の位置にある前記基板に、前記処理ガス供給部から処理ガスを吹き付けて基板の処理を行い、
前記処理ガス供給部から前記処理室内に供給される処理ガスが吹き付けられない第2の位置に、前記移動機構により前記基板を支持した前記基板支持部を移動させることで処理を終了する基板処理方法が提供される。
【0099】
[付記12]
付記11の基板処理方法であって、好ましくは、
保護ガス吹付部から、前記第2の位置に移動した処理済の前記基板の表面を保護する保護ガスを吹付ける工程を有する。