(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる光学素子の構成を示す模式図である。
【0024】
図1において、光学素子100は、導電体101と、熱可塑性物質102と、基板103とから構成される。
【0025】
導電体101は、メタマテリアルを構成するものである。具体的には、導電体101は、移動可能な電荷を含み、電気を通す性質をもつ物質から構成される。前記導電帯101の構造の寸法形状を調整したものをアレイ化することで、光を含む電磁波に対して位相変調を及ぼし、入射光を屈折する形状を有する。例えば、導電体101は、光を含む電磁波に対して、共振する構造を有する。具体的には、導電体101は、
図1に示す三次元の渦巻き形状であり、光を含む電磁波に共振することができる。
【0026】
熱可塑性物質102は、導電体101の少なくとも一部分の表面に接し、導電体101の形状を固定する。例えば、
図1に示すように熱可塑性物質102は、導電体101の一表面に層を形成し、導電体101の形状を固定する。特に導電体101が応力により変形した形状を保つ必要がある場合、熱可塑性物質102の剛性は、導電体101の弾性力に起因する復元力より大きいことが望ましい。
【0027】
また、熱可塑性物質102は、例えば、パリレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂を含むことが好適である。また、熱可塑性物質102は、例えば、SiO2、SiC等の熱可塑性を有する無機物質を含んでも良い。また、有機物と無機物とが複合した熱可塑性コンポジット材料でも良い。熱可塑性物質102の材料選択の基準は、熱可塑性物質102のガラス転移温度Tgが、少なくとも光学素子100の使用温度より高いことである。
【0028】
なお
図1は略図として記載しているものであり、導電体101の層の厚みと、熱可塑性物質102の層の厚みとは、
図1の比率と限るものではなく、求められる共振周波数、剛性により決定されるものである。
【0029】
基板103は、導電体101を収容する形状の孔を有し、導電体101の一端と接続する。基板103は、導電体101と同じ材料で構成されても良いし、別の材料で構成されても良い。また、基板103と導電体101とを同じ材料で構成する場合には、一体で形成されたものでも良い。
【0030】
次に、実施の形態1の光学素子の固定方法について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる光学素子の製造装置の一例を示す略図である。また
図3及び4は、実施の形態1にかかる光学素子の固定方法を示す略図である。ここでは、導電体101と基板103とが一体の同じ材料である例で説明する。
【0031】
図2において、光学素子製造装置200は、オーブン201と、ボンベ202と、バルブ203と、圧力調整器204と、固定台205と、コントローラ206とを備える。
【0032】
オーブン201は、コントローラ206の指示する温度でオーブン内を加熱する装置である。
【0033】
ボンベ202は、流体を貯蔵する容器である。バルブ203は、ボンベ202からオーブン201への流路の間に設けられ、流体の通路を開閉する。圧力調整器204は、ボンベ202から供給される流体の圧力を、一定にしてオーブン201内に供給する。例えば、ボンベ202は、空気、窒素またはアルゴンを大気圧以上の圧力で貯蔵する高圧ガスボンベが好適である。
【0034】
固定台205は、光学素子100の基板103を固定する台であり、オーブン201内に設けられている。例えば、固定台205は、アルミニウム等の金属材料からなり、一面に開口を有する箱形状を有し、箱の端部が光学素子100の基板103と対応する位置にあり、箱の開口が光学素子100の導電体101と対応する位置にあるサイズで形成されていることが望ましい。
【0035】
そして、固定台205は、箱形状の内部にある圧力バッファ空間207が、ボンベ202からの配管と連通している。また、固定台205は、基板103を把持する構成と、ボンベ202からの圧力を導電体101に伝える圧力バッファ空間207を備える。
【0036】
なお、固定台205は、、導電体101に加える圧力の変動を抑えるために十分な容積で圧力バッファ空間207を形成するサイズであることが望ましい。
【0037】
コントローラ206は、オーブン201の温度、バルブ203の開閉、圧力調整器204の圧力を制御する。例えば、コントローラ206は、CPU、メモリ、I/Oインターフェースを備えるマイクロコントローラやコンピュータが好適である。
【0038】
次に、光学素子製造装置200に設置する光学素子について説明する。導電性物質の平板に対して形状加工を行い、導電体101の平面形状と、基板103の孔形状を形成する。例えば、
図3に示すように、金薄膜を上面に備えるシリコンの平板に対してエッチングを行い、渦巻き形状の導電体101を形成する。また、渦巻き形状の一端は、基板103の孔の一部位に接続する形状で形成される。
【0039】
例えば、光学素子100がテラヘルツ波を対象とする場合、厚さ45nmの金薄膜を上面に備える厚さ300nmのシリコンの平面基板に、最大直径150μm、5回巻、ピッチ間隔180μm、幅8μmの渦巻き形状を形成することが好適である。なお、渦巻き形状の最大直径、巻き数、ピッチ間隔、幅は、所望のキャパシタンス及びインダクタンスをに合わせて任意に決定できる。例えば、巻き数を7回巻や8回巻に変更しても良く、巻き数の増加に合わせて幅を減少させることもできる。
【0040】
次に、導電体101の一面に熱可塑性物質102の層を形成する。具体的には、熱可塑性物質102を融点以上に加熱することにより溶融し、溶融した熱可塑性物質を導電体101の表面に一様に塗布または吹き付ける。例えば、熱可塑性物質102として、パリレンを1μmの厚さの層を導電体101上に形成することが好適である。
【0041】
なお、熱可塑性物質102が熱可塑性樹脂である場合には、上述の溶融及び塗布が好適であるが、熱可塑性物質102がSiO
2やSiC等の融点が高い無機物質である場合には、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着)等の半導体の膜形成技術を用いるのが好適である。
【0042】
また、導電体101の平面構造を形成する工程と、熱可塑性物質102を導電体101上に形成する工程とは、順序を逆にしても良い。例えば、熱可塑性物質102を導電体101上に形成した後に、導電体101と熱可塑性物質102の両方をエッチングしても良い。
【0043】
次に、
図2の光学素子製造装置200を用いて導電体101に力を加え、導電体101を、光を含む電磁波に対して共振する構造に変形する工程について説明する。
【0044】
まず、熱可塑性物質102を導電体101上に形成した光学素子100に対して、少なくとも熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上の温度にする。例えば、熱可塑性物質102がすでにガラス転移温度Tg未満に冷却されている場合には、光学素子100をオーブン等の加熱装置に入れ、加熱を行う。また、例えば、溶融した熱可塑性物質102を塗布した直後である場合には、自然放冷により温度を下げる。
【0045】
熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上融点以下の温度とすることにより、熱可塑性物質102の剛性が低下する。
【0046】
そして、この状態で導電体101に力を加えることにより、導電体101は変形することができる。例えば、基板103を固定した状態で、導電体101の一面に流体の圧力を加えることにより、導電体101が変形する。
図4は、導電体101が変形した光学素子100の例を示す図である。
図4に示すように、導電体101は一面に流体からの圧力を受けて変形することにより、三次元の渦巻き形状となる。
【0047】
そして、流体の圧力を調整することにより、導電体101を所望の共振周波数を得られる三次元の渦巻き形状に変形させる。
【0048】
次に、導電体101を固定する工程について説明する。
固定する工程では、導電体101に加える圧力を一定にした状態で、熱可塑性物質102の温度をガラス転移温度Tg未満とする。具体的には、流体が熱可塑性物質102の熱を奪うことによる自然放冷が好適である。
【0049】
熱可塑性物質102の温度をガラス転移温度Tg未満とすることにより、熱可塑性物質102が固体状態に変化して剛性が高くなる。この結果、導電体101は、熱可塑性物質102の剛性により、変形した形状を保つことができる。すなわち、光学素子100は、
図1に示す変形後の形状を維持することができる。
【0050】
このように、実施の形態1の光学素子製造方法によれば、導電体に力を加えて変形させた後に、熱可塑性物質を冷却して固体状態とすることにより、熱可塑性物質の剛性が高まり導電体の復元力を抑えることができ、光学素子を固定することができる。
【0051】
なお、上述の製造方法は、光学素子100の製造工程において適用しても良いし、すでに製造した光学素子100を再度変形及び固定する例に適用しても良い。言い換えれば光学素子製造装置200は、光学素子100の製造装置として提供しても良いし、すでに製造した光学素子100を再度変形及び固定する装置に適用しても良い。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0053】
例えば、
図1では、熱可塑性物質102が導電体101の一表面に層を形成しているが、熱可塑性物質102が導電体101と接する部位は、少なくとも導電体101を固定するための部位を含んでいれば良い。例えば、熱可塑性物質102は、導電体101全体を覆う様にしても良いし、導電体101に加えて基板103とも接する、または覆う様にしても良い。
【0054】
また、熱可塑性物質102を導電体101の上面、下面または側面のいずれか、または複数の面に層を形成しても良い。
【0055】
また、熱可塑性物質102が形成する層の厚さは、部位により変化させてもよい。この場合、3Dプリンタにより熱可塑性物質102を導電体101上に立体的に形成することにより、熱可塑性物質102の層の厚さを変化させることができる。
【0056】
熱可塑性物質102が導電体101と接する部位が、導電体101を固定するための部位のみとした場合、熱可塑性物質102の使用量を最低限の量とすることができるので、光学素子100の材料消費量を削減することができる。また、導電体101を固定する部位と、導電体101が変形する部位とを区別して形成することができる。
【0057】
また、熱可塑性物質102が、導電体101全体を覆う、または導電体101に加えて基板103も覆う場合、一様に塗布することにより、光学素子100をシンプルな作業で作成することができる。
【0058】
また、導電体101に圧力を加える流体は、シリコーンまたはデキストリン等のゲル、空気、窒素またはアルゴン等の気体、または液体のいずれでも良い。例えば、熱可塑性物質102が酸素と反応しやすい物質である場合には、窒素またはアルゴン等の不活性ガスが好適である。一方、熱可塑性物質102が酸素と反応しにくい物質である場合には、空気を用いることもできる。空気を用いた場合はコンプレッサ等により供給するので、窒素やアルゴンのようにボンベが不要となり、製造装置の簡略化、製造コストの低減ができる。
【0059】
また、導電体101に圧力を加える流体は、ポリエチレングリコールの様に、室温では固体である物質を加熱して用いても良い。
【0060】
また、導電体101に圧力を加える流体が窒素である場合には、ボンベの代わりにPSA装置(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着装置)を用いることもできる。
【0061】
また、
図1の光学素子100では、導電体101の三次元渦巻き形状において、渦巻きの幅が一定である例を示しているが、基板103との接続元と先端とで異なる幅としても良い。
【0062】
図5及び
図6は、実施の形態1に係る光学素子の一例を示す上面図である。
図5に示すように、導電体101は、基板103との接続元の幅が狭く、先端の幅が広い。したがって、
図5の導電体101は、基板103との接続元の剛性が高いことになる。また、
図6に示すように、導電体101は、基板103との接続元の幅が狭く、先端の幅が広い。したがって、
図6の導電体101は、基板103との接続元の剛性が低いことになる。
【0063】
すなわち、導電体101の幅を変化させる形状とすることにより、導電体101の剛性が部位により異なるので、均一な力による変形で、部位による変形の違いを実現することができる。この結果、導電体101の基板103の面からの立ち上がり方を制御することができる。
【0064】
また、導電体101の厚みを部位により変化させることでも、同様に導電体101の剛性を部位により変化させることができる。
【0065】
また、オーブン201は、冷却するための手段を更に備えても良い。例えば、液体を冷媒として熱交換器を用いる装置、蒸気圧縮冷凍サイクルを用いた装置、ペルチェ素子等様々な冷却手段が適用可能である。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態2では、導電体を固定する構成として紫外線硬化物質を用いる例について説明する。すなわち、実施の形態1の熱可塑性物質102に代えて紫外線硬化物質を用いる。具体的には、紫外線硬化物質として、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化樹脂が好適である。
【0067】
実施の形態2では、紫外線硬化物質を用いて導電体を固定するので、温度制御に代えて紫外線照射を行う。
図7は、実施の形態2に係る光学素子の製造装置の一例を示す略図である。
図7において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0068】
図7において、光学素子製造装置300は、紫外線光源301と、暗箱302と、ボンベ202と、バルブ203と、圧力調整器204と、固定台205と、コントローラ206とを備える。また
図7において、光学素子303は、実施の形態1の熱可塑性物質102に代えて紫外線硬化物質を導電体に塗布した光学素子である。
【0069】
紫外線光源301は、紫外線波長の光を発する構成である。例えば、紫外線光源301は、UV−LED(Ultraviole-Light Emitting Diode)が好適である。紫外線光源301の配置は、導電体に塗布する紫外線硬化物質の位置により決定される。例えば、導電体の上面に紫外線硬化物質を塗布する場合には、光学素子の上面より紫外線を照射する配置とする。同様に導電体の側面に紫外線硬化物質を塗布する場合には、光学素子の側面より紫外線を照射する配置とする。
【0070】
暗箱302は、外部からの紫外線を遮断して、暗箱内に配置した光学素子303が不要な紫外線に晒されるのを防ぐ。例えば、暗箱302は、黒色の材料または黒色に塗装された材料が好適である。また暗箱302は、少なくとも紫外線を遮断できれば良いので、UVカットガラスで構成しても良い。
【0071】
次に、光学素子製造装置300を用いた光学素子の固定方法について説明する。導電体101の加工については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0072】
まず、導電体101の一面に紫外線硬化物質の層を形成する。具体的には、液体状態の紫外線硬化物質を導電体101の表面に一様に塗布または吹き付ける、
【0073】
次に、導電体101に力を加えて、導電体101を所望の形状に変形する。力を加える方法については実施の形態1と同様である。
【0074】
そして、導電体101に加える圧力を一定にした状態で、紫外線硬化物質に紫外線を照射する。
【0075】
紫外線硬化物質に紫外線を照射することにより、紫外線硬化物質が重合して硬化するので、紫外線硬化物質の剛性が高くなる。この結果、導電体101は変形した形状を保つことができ、光学素子303は変形後の形状を維持することができる。
【0076】
このように、実施の形態2の光学素子製造方法によれば、導電体に力を加えて変形させた後に、紫外線硬化物質に紫外線を照射することにより、熱可塑性物質の剛性が高まり導電体の復元力を抑えることができ、光学素子を固定することができる。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態3では、光学素子の導電体を変形させる力として、静電場を適用する例について説明する。
図8は、実施の形態3に係る製造装置の一例を示す略図である。
図8において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0078】
図8において、光学素子製造装置400は、電源401と、スイッチ402と、電極403と、コントローラ404と、オーブン201と、固定台205と、を備える。
【0079】
電源401は、直流の電圧を供給する電源である。電源401は、スイッチ402を介して光学素子100の導電体101と、電極403との間に電位差を発生させる。
【0080】
スイッチ402は、電源401と、光学素子100の導電体101との電気的接続に対して、接続または遮断する。
【0081】
電極403は、導電体で構成され、電源401の電圧印加により、導電体101との間に静電場を形成する。例えば、電極403は、金属の平板で構成され、光学素子100の基板103と平行な位置に配置される。
【0082】
コントローラ404は、オーブン201の温度、スイッチ402の接続、遮断を制御する。例えば、コントローラ404は、CPU、メモリ、I/Oインターフェースを備えるマイクロコントローラやコンピュータが好適である。
【0083】
次に、光学素子製造装置400を用いて光学素子を固定する方法について説明する。導電体101の形状加工及び熱可塑性物質の塗布については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0084】
導電体101の形状を加工し、熱可塑性物質102を導電体101上に形成した光学素子100に対して、少なくとも熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上融点以下の温度にする。熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上の温度とすることにより、熱可塑性物質102の剛性が低下する。
【0085】
そして、この状態で導電体101に力を加えることにより、導電体101は変形することができる。具体的には、スイッチ402を接続側として、導電体101と電極403との間に静電場を形成することにより、静電力により導電体101が変形する。
【0086】
図9は、導電体101が変形した光学素子100の例を示す図である。
図9に示すように、導電体101は一面に静電力を受けて変形することにより、三次元の渦巻き形状となる。
【0087】
次に、導電体101を固定する工程について説明する。
固定する工程では、導電体101に加える静電力を一定にした状態で、熱可塑性物質102の温度をガラス転移温度Tg未満とする。
【0088】
この結果、導電体101は、熱可塑性物質102の剛性により、変形した形状を保つことができる。すなわち、光学素子100は、
図1に示す変形後の形状を維持することができる。
【0089】
このように、実施の形態3の光学素子固定方法によれば、静電力により導電体に力を加えて変形させた後に、熱可塑性物質を冷却して固体状態とすることにより、熱可塑性物質の剛性が高まり導電体の復元力を抑えることができ、光学素子を固定することができる。
【0090】
(実施の形態4)
実施の形態4では、光学素子の導電体を変形させる力として、磁力を適用する例について説明する。
図10は、実施の形態4に係る製造装置の一例を示す略図である。
図10において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0091】
図10において、製造装置500は、電源501と、スイッチ502と、電磁石503と、コントローラ504と、オーブン201と、固定台205と、を備える。
【0092】
電源501は、直流の電圧を供給する電源である。電源501は、スイッチ502を介して電磁石503に電力を供給する。
【0093】
スイッチ502は、電源501と、電磁石503との電気的接続に対して、接続または遮断する。
【0094】
電磁石503は、通電することによって一時的に磁力を発生させる磁石で構成される。例えば、電磁石503は、磁性体からなる芯の周りに導線を巻いた構成である。
【0095】
コントローラ504は、オーブン201の温度、スイッチ502の接続、遮断を制御する。例えば、コントローラ504は、CPU、メモリ、I/Oインターフェースを備えるマイクロコントローラやコンピュータが好適である。
【0096】
次に、製造装置500を用いて光学素子を固定する方法について説明する。実施の形態4では、磁力により導電体101を変形するので、導電体101自身が強磁性体である、または導電体101に強磁性体を固着することが好適である。なお、導電体101の形状加工及び熱可塑性物質の塗布については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0097】
導電体101の形状を加工し、熱可塑性物質102を導電体101上に形成した光学素子100に対して、少なくとも熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上融点以下の温度にする。熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上の温度とすることにより、熱可塑性物質102の剛性が低下する。
【0098】
そして、この状態で導電体101に力を加えることにより、導電体101は変形することができる。具体的には、スイッチ502を接続側として、電磁石503により磁場を発生させることにより、導電体101が変形する。
【0099】
次に、導電体101を固定する工程について説明する。固定する工程では、導電体101に加える静電力を一定にした状態で、熱可塑性物質102の温度をガラス転移温度Tg未満とする。
【0100】
この結果、導電体101は、熱可塑性物質102の剛性により、変形した形状を保つことができる。すなわち、光学素子100は、
図1に示す変形後の形状を維持することができる。
【0101】
このように、実施の形態3の光学素子固定方法によれば、磁力力により導電体に力を加えて変形させた後に、熱可塑性物質を冷却して固体状態とすることにより、熱可塑性物質の剛性が高まり導電体の復元力を抑えることができ、光学素子を固定することができる。
【0102】
なお、上記説明では電磁石を用いた例について説明しているが、永久磁石を用いて導電体を変形しても良い。この場合、永久磁石の位置を移動することにより、導電体に磁力を作用させることができる。
【0103】
(実施の形態5)
実施の形態5では、光学素子の導電体を変形させる力として、バイメタルによる熱膨張を適用する例について説明する。
図11は、実施の形態5に係る製造装置の一例を示す略図である。
図11において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0104】
図11において、導電体101は、熱膨張率が異なる2種類の金属を貼り合わせたバイメタルで構成されている。また、
図11において、製造装置600は、電源601と、スイッチ602と、コントローラ603と、オーブン201と、固定台205と、を備える。
【0105】
電源601は、直流の電圧を供給する電源である。電源601は、スイッチ602を介して導電体101に電力を供給する。具体的には、電源601は、スイッチ602を介して、熱膨張率が異なる2枚の金属のそれぞれに接続し、2種類の金属間に電気を通す。
【0106】
スイッチ602は、電源601と、導電体101との電気的接続に対して、接続または遮断する。
【0107】
コントローラ603は、オーブン201の温度、スイッチ602の接続、遮断を制御する。例えば、コントローラ603は、CPU、メモリ、I/Oインターフェースを備えるマイクロコントローラやコンピュータが好適である。
【0108】
次に、製造装置600を用いて光学素子を固定する方法について説明する。なお、導電体101の形状加工及び熱可塑性物質の塗布については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0109】
導電体101の形状を加工し、熱可塑性物質102を導電体101上に形成した光学素子100に対して、少なくとも熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上融点以下の温度にする。熱可塑性物質102をガラス転移温度Tg以上の温度とすることにより、熱可塑性物質102の剛性が低下する。
【0110】
そして、この状態でバイメタルからなる導電体101に通電し、発熱させる。このバイメタルの2種類の金属の熱膨張率の違いにより、導電体101は変形することができる。
【0111】
次に、導電体101を固定する工程について説明する。固定する工程では、導電体101に加える静電力を一定にした状態で、熱可塑性物質102の温度をガラス転移温度Tg未満とする。
【0112】
この結果、導電体101は、熱可塑性物質102の剛性により、変形した形状を保つことができる。すなわち、光学素子100は、
図1に示す変形後の形状を維持することができる。
【0113】
このように、実施の形態3の光学素子固定方法によれば、バイメタルの熱膨張により導電体に力を加えて変形させた後に、熱可塑性物質を冷却して固体状態とすることにより、熱可塑性物質の剛性が高まり導電体の復元力を抑えることができ、光学素子を固定することができる。
【0114】
(実施の形態6)
実施の形態6では、光学素子が複数の導電体を備える例について説明する。
図12は、実施の形態6に係る光学素子の一例を示す略図である。
図5に示すように、光学素子100は、基板103上に複数の導電体101を備えている。
図5の例では、複数の導電体101は、基板103上に直交する二次元座標で配列して配置されているが、配列は特に限定されない
【0115】
また、
図5に示すように導電体101と基板103が接続する部位は、導電体101毎に90°ずつ回転して配置しても良い。この配置により、複屈折が排除され、電磁波の入射方向が複数想定される場合にも対応することができる。
【0116】
また、複数の導電体101は、同じ大きさの力で変形させることにより、均一な変形としても良いが、互いに異なる大きさの力で変形させることにより、異なる変形としても良い。
図13は、実施の形態6に係る光学素子製造装置の一例を示す略図である。
【0117】
図13において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
図13において、製造装置700は、オーブン201と、ボンベ202と、バルブ203と、圧力調整器204−1〜204−nと、固定台701と、コントローラ206とを備える。
【0118】
固定台701は、複数の連通孔702−1〜702−nを有する。複数の連通孔702−1〜702−nは、それぞれ圧力調整器204−1〜204−nと連通している。また、複数の連通孔702−1〜702−nは、複数の導電体101にそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0119】
圧力調整器204−1〜204−nは、
図1の圧力調整器204と同様であり、個々に圧力を設定可能な圧力調整器である。
【0120】
圧力調整器204−1〜204−nが互いに異なる圧力を設定することができるので、複数の連通孔702−1〜702−nは互いに異なる圧力で、各々の導電体101に力を加えることができる。
【0121】
例えば、力の加え方としては、複数の導電体101が配置された平面に対して、同心円状単位で異なる力を加える、列単位で異なる力を加える、導電体101個々で異なる力を加える、所定の領域(群)単位で異なる力を加える、平面上に対する二次元直交座標に対応して周期的に異なる力を加える、平面上に対する二次元直交座標に対応して疑似ランダム関数で得られる力を加える、それぞれの方法が適用できる。
【0122】
この結果、複数の導電体101の変形の度合いを変化させることにより、光学素子は、レンズ、プリズム等様々な光学素子に適用することができる。
【0123】
このように、実施の形態6の光学素子によれば、複数の導電体101を備え、個々の導電体101に異なる力を加えた後に、固定することにより、所望の光学特性を有することができる。
【0124】
なお、実施の形態6では、個々の導電体101に異なる力を加えることにより、複数の導電体101の変形の度合いを変化させているが、複数の導電体101に均一な力を加え、個々の導電体101の強度を異ならせることにより、複数の導電体101の変形の度合いを変化させてもよい。
【0125】
例えば、強度の変化のさせ方としては、複数の導電体101が配置された平面に対して、同心円状単位で異なる強度とする、列単位で異なる強度とする、導電体101個々で異なる強度とする、所定の領域(群)単位で異なる強度とする、平面上に対する二次元直交座標に対応して周期的に異なる強度とする、平面上に対する二次元直交座標に対応して疑似ランダム関数で得られる異なる強度とする、それぞれの方法が適用できる。
【0126】
導電体101は、導電体101毎に導電体の幅または厚み、あるいは幅及び厚みを変化させることにより、導電体101毎に異なる強度を実現することができる。
【0127】
(実施の形態7)
実施の形態7では、光学素子製造装置が加熱時と冷却時に異なる流体を送出する例について説明する。
図14は、実施の形態7に係る製造装置の一例を示す略図である。
図14において、
図2と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0128】
図14において、光学素子製造装置800は、オーブン201と、ボンベ202−1と、ボンベ202−2と、バルブ203−1と、バルブ203−2と、圧力調整器204−1と、圧力調整器204−1と、固定台205と、コントローラ206とを備える。
【0129】
ボンベ202−1と、ボンベ202−2とは、それぞれ
図2のボンベ202と同様の構成を有する。同様に、バルブ203−1と、バルブ203−2と、とは、それぞれ
図2のバルブ203と同様の構成を有する。さらに圧力調整器204−1と、圧力調整器204−1とは、それぞれ
図2の圧力調整器204と同様の構成を有する。
【0130】
そして、ボンベ202−1は、熱可塑性物質102を加熱する場合に送出する流体を貯蔵する。また、ボンベ202−1は、熱可塑性物質102を冷却する場合に送出する流体を貯蔵する。
【0131】
例えば、熱可塑性物質102を加熱する場合に送出する流体は、熱可塑性物質102を冷却する場合に送出する流体よりも粘度が低い、熱容量が小さい、または温度が高い。
【0132】
このように、熱可塑性物質102を加熱する場合と、熱可塑性物質102を冷却するする場合で、異なる性質の流体を用いることにより、熱可塑性物質102の加熱及び冷却、導電体101の変形に適した流体を用いることができ、短時間で光学素子を固定することができる。
【0133】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、平面構造から三次元構造に変形した導電体を固定しているが、三次元構造から別の三次元構造に変形した導電体を固定しても良い。
【0134】
また、本発明の光学素子は、テラヘルツ波、遠赤外線、近赤外線、可視光のいずれの光に対しても適用することができる。すなわち対象となる光に対して屈折率を有する、例えば光の波長に対して共振する構造とすることにより、いずれの光に対しても適用することができる。
【0135】
また、上述の渦巻き形状は、左巻き、右巻きのいずれでも良い。また複数の導電体を備える場合には、一様に左巻きとする、一様に右巻きとする、左巻きと右巻きを混合する、のいずれも適用できる。
【0136】
また、上記複数の実施の形態を組み合わせて適用しても良い。例えば、実施の形態6または7における複数の導電体の変形を実施の形態1−5に組み合わせても良い。