特許第6404757号(P6404757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許6404757レジスト下層膜材料用重合体、レジスト下層膜材料、及びパターン形成方法
<>
  • 特許6404757-レジスト下層膜材料用重合体、レジスト下層膜材料、及びパターン形成方法 図000046
  • 特許6404757-レジスト下層膜材料用重合体、レジスト下層膜材料、及びパターン形成方法 図000047
  • 特許6404757-レジスト下層膜材料用重合体、レジスト下層膜材料、及びパターン形成方法 図000048
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404757
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】レジスト下層膜材料用重合体、レジスト下層膜材料、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/28 20060101AFI20181004BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20181004BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20181004BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20181004BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20181004BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08F220/28
   G03F7/11 502
   G03F7/40 521
   G03F7/26 511
   C08F220/32
   C08G59/17
   H01L21/30 573
【請求項の数】19
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-65760(P2015-65760)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185999(P2016-185999A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 里枝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−359971(JP,A)
【文献】 特開2007−084811(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069047(WO,A1)
【文献】 特開2009−258723(JP,A)
【文献】 特開2011−053652(JP,A)
【文献】 特開2013−253227(JP,A)
【文献】 特開2015−018223(JP,A)
【文献】 特開2015−114336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
G03F 7/004 − 7/42
H01L 21/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される繰返し単位及び下記一般式(3)で示される繰返し単位を含有するものであり、
前記一般式(3)で示される繰返し単位が、下記一般式(3−1)で示される繰返し単位であり、
更に下記一般式(2)で示される繰返し単位を含有するものであるレジスト下層膜材料用重合体であって、
前記レジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が、2.0以下であることを特徴とするレジスト下層膜材料用重合体。
【化1】
(式中、R01はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R02は下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。R03は飽和又は不飽和の炭素数4〜20の3級アルキル基であり、酸素官能基を含んでいてもよい。Aは単結合、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。)
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。)
【化3】
(式中、R01及びR03は前記と同様である。nは1〜5の整数である。)
【化4】
(式中、R01は前記と同様である。Aは単結合、エステル基、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して20モル%以上90モル%以下であり、前記一般式(3)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜材料用重合体。
【請求項3】
前記一般式(2)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜材料用重合体。
【請求項4】
前記レジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料用重合体。
【請求項5】
前記レジスト下層膜材料用重合体のガラス転移温度が、50℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料用重合体。
【請求項6】
多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、
(A)ベース樹脂として請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料用重合体、及び
(B)有機溶剤、
を含有するものであることを特徴とするレジスト下層膜材料。
【請求項7】
前記レジスト下層膜材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項8】
前記レジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜が、該レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に23℃で10分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることを特徴とする請求項又は請求項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項9】
前記レジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜が、該レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に65℃で5分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項10】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、請求項から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、請求項から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、請求項から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
前記(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記被加工基板にパターンを転写する工程を有することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を有することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、前記レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記レジスト下層膜は、前記被加工基板上に前記レジスト下層膜材料を塗布し、100℃以上300℃以下の温度で、10〜600秒間熱処理することによって形成することを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることを特徴とする請求項10から請求項18のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングに用いられるレジスト下層膜材料用重合体、該重合体を含有するレジスト下層膜材料、及び該材料を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂と変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングでケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングでパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。上述のようなレジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のものなど、すでに多くのものが公知となっている。
【0008】
一方、近年においては、マルチゲート構造等の新構造を有する半導体装置の製造検討が活発化しており、これに呼応し、レジスト下層膜に対して従来以上の優れた平坦化特性及び埋め込み特性の要求が高まってきている。例えば、下地の被加工基板にホール、トレンチ、フィン等の微小パターン構造体がある場合、レジスト下層膜によってパターン内を空隙なく膜で埋め込む(gap−filling)特性が必要になる。また、下地の被加工基板に段差がある場合や、パターン密集部分とパターンのない領域が同一ウエハー上に存在する場合、レジスト下層膜によって膜表面を平坦化(planarization)させる必要がある。下層膜表面を平坦化させることによって、その上に成膜するレジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンやその後の被加工基板の加工工程でのマージン低下を抑制することができる。また、基板加工後に、埋め込み・平坦化に用いたレジスト下層膜をドライエッチングにより残渣なく除去するために、上述とは異なるドライエッチング特性を有するレジスト下層膜、例えばレジスト上層膜より速いドライエッチング速度を有するレジスト下層膜が必要とされる場合もある。更には、化学薬品を用いたウェットエッチングによる基板加工が必要とされる場合もあり、その場合、加工マスクとなるレジスト下層膜には、ウェットエッチング液耐性も求められることとなる。
【0009】
ここで、多層レジスト法に関してウェットエッチングプロセスに対応した材料が望まれる背景について、詳述する。半導体装置の性能向上のため、最先端の半導体装置では、3次元トランジスタや貫通配線等の技術が使用されている。このような半導体装置内の構造を形成するために使用されるパターニング工程においても、上記の多層レジスト法によるパターニングが行われている。このようなパターニングにおいては、パターン形成後、当該パターンにダメージを与えることなくケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程が求められる場合がある。この除去が不十分である場合、即ち洗浄対象物を残存させたまま次工程の製造プロセスへウエハーを流品させた場合、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。このように、素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなってきている。しかしながら、従来のケイ素含有レジスト中間膜の主要構成元素と半導体装置基板の主要構成元素はいずれもケイ素の場合が多く、ドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜を選択的に除去しようとしても構成成分が近似しており、半導体装置基板へのダメージを抑えることは困難であった。この問題は、通常のフッ酸系剥離液を用いたウェットエッチングを行っても、解決することができない。そこで、半導体装置基板に対してダメージを与えない剥離液として、半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1(Standard Clean−1)と呼ばれるアルカリ性過酸化水素水のウェットエッチング液としての適用が考えられる。この場合、逆にレジスト下層膜にはアルカリ性過酸化水素水耐性が必要となる。
【0010】
ドライエッチング速度が速く、段差基板を平坦化可能な半導体装置製造用レジスト下層膜材料として、例えば特許文献2では、ポリグリシジルメタクリレート等の高分子化合物を有する材料が提案されている。また、ドライエッチング速度が速い半導体装置製造用レジスト下層膜材料として、特許文献3では(メタ)アクリル酸及びグリシジル(メタ)アクリレート等を単量体として製造した共重合体を有する材料、特許文献4ではメタクリル酸ヒドロキシプロピル等を単量体として製造した共重合体と架橋剤を含む材料が提案されている。しかしながら、これら公知材料の埋め込み/平坦化特性は最先端の半導体装置製造に求められるレベルには及ばないという問題があった。
【0011】
また、アルカリ性過酸化水素水耐性を有するレジスト下層膜材料として、特許文献5ではエポキシ基及びビニルエーテル化合物を用いて保護したカルボキシル基(アセタール保護エステル)を有するポリマー等を含む材料が、レジスト中間膜を用いない2層プロセス用に提案されている。しかしながら、該材料は平坦化特性が不十分であり、特に最先端プロセスにおいて要求が高い、凹凸や段差がある被加工基板のパターニングには適さないという問題があった。
【0012】
以上のように、優れた埋め込み/平坦化特性とドライエッチング特性を両立し、更にウェットエッチングプロセスへの適合性(即ち、アルカリ性過酸化水素水耐性)も備えた半導体装置製造用レジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−205685号公報
【特許文献2】特開昭61−180241号公報
【特許文献3】特許3082473号公報
【特許文献4】特許4310721号公報
【特許文献5】国際公開特許WO2015/030060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料用の重合体、これを用いたレジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明では、下記一般式(1)で示される繰返し単位及び下記一般式(3)で示される繰返し単位を含有するレジスト下層膜材料用重合体を提供する。
【化1】
(式中、R01はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R02は下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。R03は飽和又は不飽和の炭素数4〜20の3級アルキル基であり、酸素官能基を含んでいてもよい。Aは単結合、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。)
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0016】
このような重合体であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。
【0017】
またこのとき、前記一般式(1)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して20モル%以上90モル%以下であり、前記一般式(3)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
【0018】
このような含有率であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料のアルカリ性過酸化水素水耐性、熱硬化特性、埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を更に優れたものとすることができる。
【0019】
またこのとき、前記一般式(3)で示される繰返し単位が、下記一般式(3−1)で示される繰返し単位であることが好ましい。
【化3】
(式中、R01及びR03は前記と同様である。nは1〜5の整数である。)
【0020】
このような繰返し単位を含有するものであれば、柔軟性に優れ、かつ炭素含有率が少ないものとなるため、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、埋め込み/平坦化特性及びエッチング特性に特に優れたものとすることができる。また、アルカリ性過酸化水素水耐性を更に良好にでき、またドライエッチング後のレジスト下層膜の除去もより容易となる。
【0021】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料用重合体が、更に下記一般式(2)で示される繰返し単位を含有するものであることが好ましい。
【化4】
(式中、R01は前記と同様である。Aは単結合、エステル基、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【0022】
このような繰返し単位を含有するものであれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、波長193nmにおける適度な光学特性を有するものとすることができるため、特に多層ArFリソグラフィーにおいて使用した際に、露光時の反射光を抑制でき、レジスト上層膜のリソグラフィー時の解像性を向上させることができる。
【0023】
またこのとき、前記一般式(2)で示される繰返し単位の含有率が、全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
【0024】
このような含有率であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を特に多層ArFリソグラフィーにおいて使用した際に、レジスト上層膜のリソグラフィー時の解像性が更に良好となる。
【0025】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることが好ましい。
【0026】
このような分子量であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の成膜性が良好となり、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。また、塗布欠陥の発生を抑制でき、埋め込み/平坦化特性に更に優れたものとすることができる。
【0027】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料用重合体のガラス転移温度が、50℃以下であることが好ましい。
【0028】
このようなガラス転移温度であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の埋め込み/平坦化特性を、特に優れたものとすることができる。
【0029】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が、2.0以下であることが好ましい。
【0030】
このような分散度であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料からレジスト下層膜を形成する際の昇華物の発生を更に低減し、昇華物による装置の汚染を更に抑制することができる。
【0031】
また、本発明では、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、
(A)ベース樹脂として上記のレジスト下層膜材料用重合体、及び
(B)有機溶剤、
を含有するレジスト下層膜材料を提供する。
【0032】
このようなレジスト下層膜材料であれば、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0033】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0034】
本発明のレジスト下層膜材料では、必要に応じて、上記のような添加剤を添加して、スピンコーティングによる塗布成膜性、硬化温度、埋め込み/平坦化特性、及び光学特性(吸光特性)などを微調整することができる。
【0035】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜が、該レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に23℃で10分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0036】
更には、前記レジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜が、該レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に65℃で5分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0037】
このようなレジスト下層膜材料であれば、十分なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するものとなるため、加工可能な被加工基板やウェットエッチングで除去可能なレジスト中間膜等の選択肢を増やすことができる。
【0038】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0039】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0040】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0041】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法(2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、又は4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能であり、またレジスト下層膜の形成によって被加工基板上の段差の埋め込みや被加工基板の平坦化を行うことができる。更に、上記のように本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスにも適用可能である。
【0042】
また本発明のパターン形成方法には、前記(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加することもできる。
【0043】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでレジスト中間膜の除去を行うことができる。
【0044】
また本発明のパターン形成方法には、前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記被加工基板にパターンを転写する工程を追加することもできる。
【0045】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで被加工基板へのパターン転写を行うことができる。
【0046】
また本発明のパターン形成方法には、前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を追加することもできる。
【0047】
このようなパターン形成方法は、特に表面に凹凸を有する基板のイオン打込み加工に好適である。
【0048】
またこのとき、前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加することもできる。
【0049】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでイオン打込みによるパターン加工後のレジスト中間膜の除去を行うこともできる。
【0050】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、前記レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いることが好ましい。
【0051】
このようなレジスト下層膜材料を用いれば、マスクとして使用したレジスト下層膜をドライエッチングによって残渣なく除去することが可能となるため、欠陥の少ない半導体装置を製造することができる。
【0052】
またこのとき、前記レジスト下層膜は、前記被加工基板上に前記レジスト下層膜材料を塗布し、100℃以上300℃以下の温度で、10〜600秒間熱処理することによって形成することが好ましい。
【0053】
このような条件であれば、凹凸を有する基板上であっても空隙なく平坦なレジスト下層膜を形成でき、また架橋反応を促進させ、上層の膜とのミキシングを防止することができる。また、熱処理温度及び熱処理時間を上記範囲内で適宜調整することにより、用途に適した埋め込み/平坦化特性や硬化特性を得ることができる。
【0054】
またこのとき、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることが好ましい。
【0055】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上においても、空隙のない平坦なレジスト下層膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0056】
以上のように、本発明のレジスト下層膜材料用重合体であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。また、この重合体に含まれる繰返し単位の種類や各繰返し単位の含有率、各繰返し単位中の官能基の種類、重合体の分子量や分散度、ガラス転移温度などを調整することで、所望の特性を有するレジスト下層膜材料とすることができる。また、種々の添加剤を添加して、スピンコーティングによる塗布成膜性、硬化温度、埋め込み/平坦化特性、及び光学特性(吸光特性)などを微調整することもできる。
このような本発明のレジスト下層膜材料を用いて、多層レジスト法(例えば、2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、及び4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能である。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、凹凸を有する基板上であっても空隙なく平坦なレジスト下層膜を形成できる。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、レジスト中間膜の除去や被加工基板へのパターン転写等をアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスで行うこともできる。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れたドライエッチング特性を有するため、マスクとして使用したレジスト下層膜をドライエッチングによって残渣なく除去することができ、結果として欠陥の少ない半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
図2】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
図3】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
上述のように、優れた埋め込み/平坦化特性とドライエッチング特性を両立し、更にウェットエッチングプロセスへの適合性(即ち、アルカリ性過酸化水素水耐性)も備えた半導体装置製造用レジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法の開発が求められていた。
【0059】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定構造の重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料、及びこのレジスト下層膜材料を用いたパターン形成方法であれば、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0060】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される繰返し単位及び下記一般式(3)で示される繰返し単位を含有するレジスト下層膜材料用重合体である。
【化5】
(式中、R01はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R02は下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。R03は飽和又は不飽和の炭素数4〜20の3級アルキル基であり、酸素官能基を含んでいてもよい。Aは単結合、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。)
【化6】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0061】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中、Meはメチル基、Phはフェニル基、tBuはtert−ブチル基を示す。
【0062】
<レジスト下層膜材料用重合体>
本発明のレジスト下層膜材料用重合体は、上記一般式(1)で示される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」とも呼ぶ)及び上記一般式(3)で示される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」とも呼ぶ)を必須とする。
【0063】
[繰返し単位(1)]
繰返し単位(1)には、重合体に熱硬化能を与える効果がある。このような繰返し単位(1)を含む重合体とすることで、この重合体をレジスト下層膜材料のベース樹脂とした際に、塗布後の加熱でレジスト下層膜を硬化させることが可能となり、レジスト下層膜の上に形成される膜とのインターミキシングを防ぐことが可能となる。また、繰返し単位(1)は、アルカリ性過酸化水素水耐性にも一定の寄与があると考えられる。
【0064】
上記一般式(1)中、R01は水素原子又はメチル基である。R01が水素原子であれば、重合体が流動性に優れたものとなるため、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、埋め込み/平坦化特性に優れたものとすることができる。また、R01が水素原子であれば重合体の炭素含量が少なくなるため、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、エッチング速度に優れたものとすることができる。一方、R01がメチル基であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、塗布成膜性に優れたものとすることができる。
【0065】
上記一般式(1)中、R02は上記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。即ち、繰返し単位(1)は、具体的には下記のいずれかである。
【化7】
【0066】
なお、本発明のレジスト下層膜材料用重合体に含まれる繰返し単位(1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、繰返し単位(1)の含有率は、全繰返し単位に対して20モル%以上90モル%以下であることが好ましく、25モル%以上70モル%以下であることがより好ましい。繰返し単位(1)の含有率が20モル%以上であれば、より確実に十分な熱硬化能が得られ、90モル%以下であれば、埋め込み/平坦化特性及びエッチング特性に更に優れたものとなるため好ましい。
【0067】
[繰返し単位(3)]
繰返し単位(3)には、重合体のアルカリ性過酸化水素水耐性を向上させる効果がある。上記一般式(3)中、R01は水素原子又はメチル基である。R03は飽和又は不飽和の炭素数4〜20の3級アルキル基であり、酸素官能基を含んでいてもよい。R03としては具体的には以下の構造を例示できるが、これらに限定されない。
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
上記一般式(3)中、Aは単結合、又はエステル基(−CO−)を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Aとしては、具体的には、単結合、−COCH−、−COCHCH−、−COCHCHCH−、−COCH(CH)−、−COCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCHCHCHCH−、−COCHCHO−、−COCHCHOCHCHO−、−COCHCHOCHCHOCHCHO−等を例示できる。これらの中でも特に、−COCH−、−COCHCH−、−COCHCHCH−、−COCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCH−が好ましい。即ち、繰返し単位(3)としては、下記一般式(3−1)で示される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3−1)とも呼ぶ」)が好ましい。
【化11】
(式中、R01及びR03は前記と同様である。nは1〜5の整数である。)
【0072】
このような繰返し単位(3−1)を含む重合体であれば、柔軟性に優れ、かつ炭素含有率が少ないものとなるため、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、埋め込み/平坦化特性及びエッチング特性に特に優れたものとすることができる。また、アルカリ性過酸化水素水耐性を更に良好にでき、またドライエッチング後のレジスト下層膜の除去もより容易となる。
【0073】
繰返し単位(3)又は繰返し単位(3−1)は、これを含む重合体をベース樹脂とするレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する際に、例えば後述の(C)酸発生剤より発生する酸の作用等により、3級アルキル基R03の脱離分解反応が進行してカルボン酸を発生するとともに、生じたカルボン酸が、繰返し単位(1)への開環付加反応を起こし、特定構造のヒドロキシエステル架橋を形成する。下記式に、繰返し単位(3)と繰返し単位(1’)(式(1−1)で示される構造を有する繰返し単位(1))との反応を典型例として示す。下記式中、繰返し単位(3)中のR03が脱離しカルボン酸となった状態が(4)であり、ヒドロキシエステル架橋構造が形成された状態が(5)である。また、点線で囲まれた部分が、本反応により形成されるヒドロキシエステル架橋構造である。
【0074】
【化12】
(式中、R01、R03、及びAは前記と同様である。)
【0075】
このヒドロキシエステル架橋構造の形成は、レジスト下層膜材料中のベース樹脂を高分子量化させ、レジスト下層膜の溶剤耐性の発現に寄与する。また、上記のヒドロキシエステル架橋構造は、基板との親和性が高い構造であるため、繰返し単位(3)又は繰返し単位(3−1)の存在は、レジスト下層膜の基板に対する密着性を向上させ、ひいてはアルカリ性過酸化水素水耐性の向上に寄与するものと考えられる。理論上、上記のヒドロキシエステル構造を架橋前のベース樹脂に前もって導入しておくことも可能であるが、その場合、成膜時の埋め込み/平坦化特性が顕著に劣化する欠点を有しており、本発明のように、ベース樹脂の架橋反応時にヒドロキシエステル構造を形成する材料設計の方が実用上より有利である。
【0076】
即ち、本発明のレジスト下層膜材料用重合体は、平坦化性能を悪化させる一因とみられるアルコール性水酸基、カルボキシル基等の高極性基をベーク前は有しておらず、ベーク中に3級アルキル基R03の脱離分解反応が始まるまでに、埋め込み/平坦化が成されるために、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の埋め込み/平坦化特性を向上させることができるものと考えられる。他方、R03が3級アルキル基ではなく、ビニルエーテル化合物より誘導されるアセタール基の場合、安定性が低いため、埋め込み/平坦化の完了以前にアセタール基が分解してカルボキシル基を生じてしまい、結果としてレジスト下層膜材料が埋め込み/平坦化特性に劣るものとなると考えられる。
【0077】
なお、本発明のレジスト下層膜材料用重合体が含有する繰返し単位(3)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、繰返し単位(3)の含有率は、全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、10モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。繰返し単位(3)の含有率が5モル%以上50モル%以下であれば、重合体のアルカリ性過酸化水素水耐性を更に向上させることができるため好ましい。
【0078】
なお、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)の含有率の合計が100モル%にならない場合、本発明のレジスト下層膜材料用重合体は他の繰返し単位を含む。このような繰返し単位としては、特に限定されないが、例えば後述の一般式(2)で示される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」とも呼ぶ)、他のアクリル酸エステル、他のメタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;5,5−ジメチル−3−メチレン−2−オキソテトラヒドロフランなどのα,β−不飽和ラクトン類;ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸無水物;アリルエーテル類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;ビニルシラン類に由来する繰返し単位等を挙げることができる。
【0079】
[繰返し単位(2)]
本発明のレジスト下層膜材料用重合体は、更に下記一般式(2)で示される繰返し単位を含有するものであることが好ましい。
【化13】
(式中、R01は前記と同様である。Aは単結合、エステル基、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【0080】
繰返し単位(2)は、重合体に波長193nmにおける適度な光学特性を与えるため、このような繰返し単位(2)を含む重合体とすることで、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を使用した際に、特に多層ArFリソグラフィーにおける露光時の反射光を抑制でき、解像性に優れたものとすることができる。なお、反射光を抑制するために、レジスト下層膜材料の光学定数としては、屈折率nが1.5〜1.9、消衰係数kが0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0081】
上記一般式(2)中、R01は水素原子又はメチル基である。Aは単結合、エステル基(−CO−)、又はエステル基を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Aとしては、具体的には、単結合、−CO−、−COCH−、−COCHCH−、−COCHCHCH−、−COCH(CH)−、−COCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCHCHCHCH−、−COCHCHO−、−COCHCHOCHCHO−、−COCHCHOCHCHOCHCHO−等を例示できるが、これらに限定されない。
【0082】
Arは、置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。Arとしては、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アセチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等を例示でき、特にフェニル基、tert−ブトキシフェニル基が好ましいが、これらに限定されない。
【0083】
なお、本発明のレジスト下層膜材料用重合体が繰返し単位(2)を含有する場合、含有される繰返し単位(2)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、繰返し単位(2)を含有する場合、その含有率は全繰返し単位に対して5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、5モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。繰返し単位(2)の含有率が5モル%以上であれば、レジスト上層膜のリソグラフィー時の解像性が良好となり、50モル%以下であれば、エッチング特性が良好となるため好ましい。
【0084】
本発明のレジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量は、1,000〜20,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましく、2,000〜10,000が更に好ましい。なお、ここでいう「重量平均分子量」は、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。重量平均分子量が1,000以上であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の成膜性が良好となり、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑えることができるため、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。また、重量平均分子量が20,000以下であれば、この重合体をレジスト下層膜材料のベース樹脂とした際に、塗布欠陥の発生を抑制でき、また流動性が良好なため埋め込み/平坦化特性に優れたものとすることができる。
【0085】
また、本発明のレジスト下層膜材料用重合体のガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましい。このようなガラス転移温度を有する重合体であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の埋め込み/平坦化特性を特に優れたものとすることができるため、表面に凹凸を有する基板の加工に特に好適である。
【0086】
また、本発明のレジスト下層膜材料用重合体の重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度は、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。なお、ここでいう「分散度」は、上述のGPCによって求めた重量平均分子量及び数平均分子量から求めた値である。このような分散度を有する重合体であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料の加熱硬化時の昇華物の発生を抑えることができるため、昇華物による装置の汚染を抑制することができ、実用性に優れる。
【0087】
ここで、本発明のレジスト下層膜材料用重合体の具体例を以下に例示するが、本発明のレジスト下層膜材料用重合体は、これらに限定されない。
【0088】
【化14】
【0089】
【化15】
【0090】
【化16】
【0091】
本発明のレジスト下層膜材料用重合体を合成する方法としては、例えば各繰返し単位に対応した重合性不飽和結合を有するモノマーを混合し、溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これにより重合体を得ることができる。重合条件は、用いるモノマー、目標分子量等に応じて、種々選択でき、特に制限されないが、重合時に使用する溶剤として具体的には、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を例示できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等を例示でき、また、重合の際に連鎖移動剤として、オクタンチオール、2−メルカプトエタノール等のチオール類を加えてもよい。重合反応は、好ましくは40℃〜反応溶剤の沸点に加熱して行うことができる。反応時間は、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは1〜48時間である。
【0092】
例えば、下記一般式(1a)、(2a)、及び(3−1a)で表される重合性二重結合を有する化合物をモノマーとして用いて、上述のような重合を行うことにより、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)、及び繰返し単位(3−1)を含有するレジスト下層膜材料用重合体を合成することができる。
【化17】
(式中、R01、R02、R03、A、Ar、及びnは前記と同様である。)
【0093】
重合の際は、全原料を混合した後に加熱を行ってもよいし、あらかじめ加熱しておいた一部原料中に、残りの原料を個別に又は混合して、一気に又は徐々に添加してもよい。例えば、重合溶剤のみを加熱しておき、そこに、モノマー溶液と重合開始剤溶液を別々に漸次添加する重合方法は、比較的均質な重合体が得られ、また、暴走反応等の異常反応を防止できることから、特に好ましい。
【0094】
上記により得られた重合体溶液を、そのままレジスト下層膜材料に配合してもよいし、必要に応じて、晶析、分液、ろ過、濃縮などの常法を用いて精製を行い、残存モノマー、残存溶剤、反応副生物、その他の不純物等を除去してもよい。本発明のレジスト下層膜材料用重合体を精製する場合は、重合体溶液に水、含水アルコール、飽和炭化水素等の貧溶媒を加え、生じた沈殿を濾取する晶析法、あるいは、貧溶媒層を分離除去する分液法が好適であり、このうち分液法が特に好適である。重合体を分液法により精製すると、重合体溶液中の低分子量成分を効率よく除去できるため、この重合体を含むレジスト下層膜材料からレジスト下層膜を形成する際の昇華物の発生が少なくなり、結果として成膜装置の汚染を防止できる。
【0095】
以上説明したような本発明のレジスト下層膜材料用重合体であれば、この重合体をベース樹脂として含むレジスト下層膜材料を、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。また、この重合体に含まれる繰返し単位の種類や各繰返し単位の含有率、各繰返し単位中の官能基の種類、重合体の分子量や分散度、ガラス転移温度などを調整することで、所望の特性を有するレジスト下層膜材料とすることができる。
【0096】
<レジスト下層膜材料>
また、本発明では、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、
(A)ベース樹脂として上記のレジスト下層膜材料用重合体、及び
(B)有機溶剤、
を含有するレジスト下層膜材料を提供する。
【0097】
[(A)ベース樹脂]
本発明のレジスト下層膜材料は、上述の本発明のレジスト下層膜材料用重合体をベース樹脂として含有する。なお、本発明のレジスト下層膜材料に含まれるレジスト下層膜材料用重合体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明のレジスト下層膜材料は、上述の本発明のレジスト下層膜材料用重合体以外の樹脂(即ち、繰返し単位(1)及び/又は繰返し単位(3)を含まない樹脂)を含有していてもよい。このような樹脂としては、特に限定されることなく公知の樹脂を用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0098】
[(B)有機溶剤]
本発明のレジスト下層膜材料は、有機溶剤を含有する。このような有機溶剤としては、(A)ベース樹脂を溶解できるものであれば特に制限はなく、後述する添加剤((C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素)を添加する場合には、これらの添加剤も溶解できるものが好ましい。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を添加することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0099】
本発明のレジスト下層膜材料は、上記の(A)ベース樹脂及び(B)有機溶剤に加えて、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものとしてもよい。以下、(C)〜(G)の各成分について詳しく説明する。
【0100】
[(C)酸発生剤]
本発明のレジスト下層膜材料には、熱などによる架橋反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加してもよい。酸発生剤には熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、本発明のレジスト下層膜材料にはいずれの酸発生剤も添加することができる。
【0101】
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、
i.下記一般式(P1a−1)、(P1a−2)、(P1a−3)、又は(P1b)で示されるオニウム塩、
ii.下記一般式(P2)で示されるジアゾメタン誘導体、
iii.下記一般式(P3)で示されるグリオキシム誘導体、
iv.下記一般式(P4)で示されるビススルホン誘導体、
v.下記一般式(P5)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、
vi.β−ケトスルホン酸誘導体、
vii.ジスルホン誘導体、
viii.ニトロベンジルスルホネート誘導体、
ix.スルホン酸エステル誘導体、
等が挙げられる。
【0102】
【化18】
(式中、R101a、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基、又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R101bとR101cとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。Kは非求核性対向イオンを示す。R101d、R101e、R101f、R101gは、上記のR101a、R101b、R101cと同様の基、又は水素原子である。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0103】
上記R101a、R101b、R101c、R101d、R101e、R101f、R101gは互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等が挙げられる。オキソアルケニル基としては、2−オキソ−4−シクロヘキセニル基、2−オキソ−4−プロペニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等や、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。Kの非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸、更には下記一般式(K−1)で示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)で示される、α、β位がフルオロ置換されたスルホネート等が挙げられる。
【0104】
【化19】
【0105】
一般式(K−1)中、R102Kは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基又はアシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基又はアリーロキシ基である。一般式(K−2)中、R103Kは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0106】
また、R101d、R101e、R101f、R101gが式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環としては、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が挙げられる。
【0107】
なお、(P1a−1)と(P1a−2)は光酸発生剤及び熱酸発生剤の両方として作用し、(P1a−3)は熱酸発生剤として作用する。
【0108】
【化20】
(式中、R102a、R102bはそれぞれ炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を示す。R103は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基を示す。R104a、R104bはそれぞれ炭素数3〜7の2−オキソアルキル基を示す。Kは非求核性対向イオンを示す。)
【0109】
上記R102a、R102bのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。R103のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,4−シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。R104a、R104bの2−オキソアルキル基としては、2−オキソプロピル基、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソシクロヘプチル基等が挙げられる。Kとしては、式(P1a−1)、(P1a−2)、及び(P1a−3)で説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0110】
【化21】
(式中、R105、R106は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
【0111】
105、R106のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1−トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0112】
【化22】
(式中、R107、R108、R109は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。R108、R109は互いに結合して環状構造を形成してもよく、環状構造を形成する場合、R108、R109はそれぞれ炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R105は前記と同様である。)
【0113】
107、R108、R109のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アラルキル基としては、R105、R106で説明したものと同様の基が挙げられる。なお、R108、R109のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0114】
【化23】
(式中、R101a、R101bは前記と同様である。)
【0115】
【化24】
(式中、R110は炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、アセチル基、又はフェニル基で置換されていてもよい。R111は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、又はアルコキシアルキル基、あるいはフェニル基又はナフチル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基、(炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、又はアセチル基で置換されていてもよい)フェニル基、炭素数3〜5のヘテロ芳香族基、塩素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0116】
110のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、フェニルエチレン基、ノルボルナン−2,3−ジイル基等が挙げられる。アルケニレン基としては、1,2−ビニレン基、1−フェニル−1,2−ビニレン基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基等が挙げられる。R111のアルキル基としては、R101a〜R101cと同様のものが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプレニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ジメチルアリル基、1−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチロキシメチル基、ヘキシロキシメチル基、ヘプチロキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチロキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基等が挙げられる。
【0117】
置換基となる炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。置換基となる炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。置換基となる(炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、又はアセチル基で置換されていてもよい)フェニル基としては、フェニル基、トリル基、p−tert−ブトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基、p−ニトロフェニル基等が挙げられる。置換基となる炭素数3〜5のヘテロ芳香族基としては、ピリジル基、フリル基等が挙げられる。
【0118】
酸発生剤として使用されるオニウム塩としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ピリジニウム、カンファースルホン酸トリエチルアンモニウム、カンファースルホン酸ピリジニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフタレンカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート、トリエチルアンモニウムノナフレート、トリブチルアンモニウムノナフレート、テトラエチルアンモニウムノナフレート、テトラブチルアンモニウムノナフレート、トリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルアンモニウムトリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のオニウム塩を挙げることができる。
【0119】
酸発生剤として使用されるジアゾメタン誘導体としては、例えばビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体を挙げることができる。
【0120】
酸発生剤として使用されるグリオキシム誘導体としては、例えばビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体を挙げることができる。
【0121】
酸発生剤として使用されるビススルホン誘導体としては、例えばビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等のビススルホン誘導体を挙げることができる。
【0122】
酸発生剤として使用されるN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体としては、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0123】
酸発生剤として使用されるβ−ケトスルホン酸誘導体としては、例えば2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン酸誘導体を挙げることができる。
【0124】
酸発生剤として使用されるジスルホン誘導体としては、例えばジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体を挙げることができる。
【0125】
酸発生剤として使用されるニトロベンジルスルホネート誘導体としては、例えばp−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体を挙げることができる。
【0126】
酸発生剤として使用されるスルホン酸エステル誘導体としては、例えば1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0127】
これらの中でも、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフタレンカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体;ビスナフチルスルホニルメタン等のビススルホン誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。
【0128】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜50質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。0.05質量部以上であれば、酸発生量が少なく、架橋反応が不十分となる恐れが少なく、50質量部以下であれば、上層の膜へ酸が移動することによるミキシング現象が起こる恐れが少ない。
【0129】
[(D)界面活性剤]
本発明のレジスト下層膜材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、例えば、特開2009−269953号公報中の(0142)〜(0147)段落に記載のものを用いることができる。
【0130】
[(E)架橋剤]
本発明のレジスト下層膜材料には、硬化性を高め、上層の膜とのインターミキシングを更に抑制するために(E)架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を例示できる。
【0131】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体等を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体等を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体等を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体等を例示できる。β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として、具体的には、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド等を例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として、具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等を例示できる。アジリジン系架橋剤として、具体的には、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオナート]等を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として、具体的には、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−メチレンビス4,5−ジフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−tertブチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、1,4−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−イソプロペニルオキサゾリン共重合体等を例示できる。エポキシ系架橋剤として、具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等を例示できる。
【0132】
[(F)可塑剤]
本発明のレジスト下層膜材料には、埋め込み/平坦化特性を更に向上させるために(F)可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013−253227号公報に記載のポリアセタール系重合体などのポリマー等を例示できる。
【0133】
[(G)色素]
本発明のレジスト下層膜材料には、多層リソグラフィーのパターニングの際の解像性を更に向上させるために(G)色素を添加してもよい。色素としては、露光波長において適度な吸収を有する化合物であれば特に限定されることはなく、公知の種々の化合物を広く用いることができる。一例として、ベンゼン類、ナフタレン類、アントラセン類、フェナントレン類、ピレン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類等を例示できる。
【0134】
以上説明したような本発明のレジスト下層膜材料であれば、上述の本発明のレジスト下層膜材料用重合体をベース樹脂として含有するため、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとなる。また、このレジスト下層膜材料に種々の添加剤を添加することで、スピンコーティングによる塗布成膜性、硬化温度、埋め込み/平坦化特性、及び光学特性(吸光特性)などを微調整して、所望の特性を有する材料とすることもできる。
【0135】
ここで、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜のアルカリ性過酸化水素水耐性について説明する。上述のように、近年はSC1等のアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングによってレジスト中間膜を除去する工程や、SC1等のアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングによって基板の加工を行う工程が必要とされる場合もあり、このような場合には、レジスト下層膜にSC1等のウェットエッチング液に対する耐性が求められる。
【0136】
そこで、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成されるレジスト下層膜としては、レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に23℃で10分間浸漬した際に、レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。更には、レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に65℃で5分間浸漬した際に、レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0137】
このようなレジスト下層膜材料であれば、十分なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するものとなるため、様々な条件でウェットエッチングが可能である。つまり、加工可能な被加工基板やウェットエッチングで除去可能なレジスト中間膜等の選択肢を増やすことができる。
【0138】
またここで、レジスト下層膜のアルカリ性過酸化水素水耐性を調べる方法について説明する。例えば、直径4インチ(100mm)のシリコンウエハー上に、後述する成膜条件に準じて、レジスト下層膜材料を膜厚約200nmとなるように成膜した後、ウエハーを2cm幅に切断する。このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、23℃で10分間、又は65℃で5分間浸漬し、続いて、脱イオン水でリンス後に、目視によりウエハーからのレジスト下層膜の剥離の有無を検査する方法を挙げることができる。レジスト下層膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供したレジスト下層膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断することができる。
【0139】
<パターン形成方法>
本発明では、上述の本発明のレジスト下層膜材料を用いて、多層レジスト法(例えば、2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能である。
【0140】
[2層レジストプロセス]
本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0141】
((I−1)工程)
本発明の2層レジストプロセスによるパターン形成方法では、まず、被加工基板上に上述の本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する((I−1)工程)。被加工基板としては、特に限定されないが、例えば基板上に被加工層が形成されたものを用いることができる。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものを好適に用いることができる。また、被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、TiN、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜、及びそのストッパー膜などを好適に用いることができ、被加工層の厚さとしては、50〜10,000nmが好ましく、100〜5,000nmが特に好ましい。
【0142】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることも好ましい。上述のように、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上においても、空隙のない平坦なレジスト下層膜を形成することができ、特に効果的である。
【0143】
レジスト下層膜は、例えば被加工基板上に上述の本発明のレジスト下層膜材料をスピンコート法などで塗布した後、溶媒を蒸発させて上層の膜とのミキシングを防止するため、あるいは架橋反応を促進させるために熱処理(ベーク)を行うことで形成することができる。このようにスピンコート法などで塗布することで、良好な埋め込み特性を得ることができる。
【0144】
熱処理温度は好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上280℃以下であり、熱処理時間は好ましくは10〜600秒間、より好ましくは10〜300秒間である。熱処理温度が100℃以上であれば、十分に硬化させることができるため、上層の膜とのミキシングをより確実に防止することができる。また、熱処理温度が300℃以下であれば、ベース樹脂の熱分解によって膜厚が減少したり、膜表面が不均一になる恐れがなく、凹凸を有する基板上であっても空隙なく平坦なレジスト下層膜を形成できる。また、熱処理温度及び熱処理時間を上記範囲内で適宜調整することにより、用途に適した埋め込み/平坦化特性、硬化特性を得ることができる。
【0145】
なお、レジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、好ましくは30〜20,000nm、特に好ましくは50〜15,000nmである。
【0146】
((I−2)工程)
本発明の2層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、レジスト下層膜上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する((I−2)工程)。レジスト上層膜は、通常用いられているフォトレジスト材料を用いて形成することができ、ケイ素を含有するレジスト上層膜、ケイ素を含有しないレジスト上層膜のどちらでもよく、またポジ型、ネガ型のどちらでもよい。
【0147】
レジスト上層膜は、上記のレジスト下層膜の形成と同様、例えばレジスト下層膜上にフォトレジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、熱処理(プリベーク)を行うことで形成することができる。プリベークは、60〜180℃で10〜300秒間行うことが好ましい。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、好ましくは30〜500nm、特に好ましくは50〜400nmである。
【0148】
((I−3)工程)
本発明の2層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、レジスト上層膜にパターンを形成する((I−3)工程)。露光光は、使用するフォトレジスト材料等に合わせて適宜選択すればよく、例えば波長300nm以下の高エネルギー線等を使用でき、より具体的には、波長248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、波長3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。また、露光後、常法に従いポストエクスポージャーベーク(PEB)を行ってもよい。また、現像液は、使用するフォトレジスト材料等に合わせて適宜選択すればよく、ポジ型現像、ネガ型現像のどちらでもよい。
【0149】
((I−4)工程)
本発明の2層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングでレジスト下層膜にパターンを転写する((I−4)工程)。ドライエッチング条件としては、使用するフォトレジスト材料等に合わせて適宜選択すればよい。
【0150】
[3層レジストプロセス]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0151】
((II−1)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−1)工程は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−1)工程と同様にして行うことができる。
【0152】
((II−2)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、レジスト下層膜上にレジスト中間膜を形成する((II−2)工程)。レジスト中間膜は、レジスト下層膜とは異なるエッチング耐性を有するもの、より具体的には、ケイ素含有レジスト中間膜とすることが好ましい。
【0153】
このようなケイ素含有レジスト中間膜としては、例えばケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)等の無機ハードマスク中間膜を挙げることができる。このような無機ハードマスク中間膜は、例えばCVD法やALD法等で形成することができ、ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002−334869号公報、WO2004/066377号公報等に記載されている方法を挙げることができる。無機ハードマスク中間膜の膜厚は好ましくは5〜200nm、より好ましくは10〜100nmであり、これらの中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。
【0154】
また、ケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間膜も好適に用いることができる。ポリシルセスキオキサンベースの中間膜は反射防止効果を持たせることが容易であり、これによりレジスト上層膜のパターン露光時に反射光を抑制でき、解像性を向上させることができるという利点がある。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含む材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。なお、スピンコート法によって形成できるこのようなケイ素含有レジスト中間膜は、上記のCVD法等で形成する無機ハードマスク中間膜よりも膜形成が簡便であり、また低コストであるというメリットもある。
【0155】
((II−3)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−3)工程は、レジスト上層膜を形成するのをレジスト下層膜上ではなくレジスト中間膜上に変更する以外は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−2)工程と同様にして行うことができる。なお、上述のようにレジスト中間膜として、ケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合には、ケイ素含有レジスト中間膜とは異なるエッチング耐性を有するレジスト上層膜、より具体的には、ケイ素を含有しないレジスト上層膜を形成することが好ましい。
【0156】
((II−4)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−4)工程は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−3)工程と同様にして行うことができる。
【0157】
((II−5)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングでレジスト中間膜にパターンを転写する((II−5)工程)。このときのドライエッチングは、フロン系のガスを用いて行うことが好ましい。
【0158】
((II−6)工程)
本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングでレジスト下層膜にパターンを転写する((II−6)工程)。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスを用いたドライエッチングに耐性を示すため、このときのエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0159】
[4層レジストプロセス]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0160】
((III−1)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−1)工程は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−1)工程と同様にして行うことができる。
【0161】
((III−2)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−2)工程は、上述の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−2)工程の無機ハードマスク中間膜の形成と同様にして行うことができる。
【0162】
((III−3)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、次に、無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜(BARC)を形成する((III−3)工程)。無機ハードマスク中間膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARC膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。また、BARCを形成することで、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があるという別のメリットもある。このBARCとしては、特に限定されず公知のものを使用することができる。
【0163】
((III−4)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−4)工程は、レジスト上層膜を形成するのをレジスト下層膜上ではなく有機反射防止膜上に変更する以外は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−2)工程と同様にして行うことができる。
【0164】
((III−5)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−5)工程は、上述の2層レジストプロセスによるパターン形成方法における(I−3)工程と同様にして行うことができる。
【0165】
((III−6)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−6)工程は、上述の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−5)工程と同様にして行うことができる。なお、BARCのエッチングは無機ハードマスク中間膜のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどして無機ハードマスク中間膜のエッチングを行ってもよい。
【0166】
((III−7)工程)
本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法における(III−7)工程は、上述の3層レジストプロセスによるパターン形成方法における(II−6)工程と同様にして行うことができる。
【0167】
また、本発明の2層、3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、(I−4)工程、(II−6)工程、又は(III−7)工程の後、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、ドライエッチングで被加工基板にパターンを転写することもできる。このときのドライエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工基板の被加工層がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたドライエッチング、p−SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたドライエッチングで基板の加工を行うことができる。フロン系ガスを用いたドライエッチングで基板の加工を行った場合、3層レジストプロセスのレジスト中間膜は基板の加工と同時に剥離(除去)される。一方、塩素系、臭素系ガスを用いたドライエッチングで基板の加工を行った場合は、このドライエッチングでレジスト中間膜は剥離されない。このため、従来法では基板の加工後に例えばフロン系ガスを用いたドライエッチングでレジスト中間膜の剥離を別途行う必要があった。
【0168】
これに対し、本発明のパターン形成方法においては、上述のように本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜が良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いてレジスト中間膜のみをウェットエッチングで剥離することも選択肢となる。即ち、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0169】
また、被加工基板がW、TiNなどの場合、本発明のパターン形成方法を適用すれば、アルカリ性過酸化水素水による被加工基板のウェットエッチング加工も選択肢となりうる。即ち、本発明の2層、3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、(I−4)工程、(II−6)工程、又は(III−7)工程の後、更に、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、被加工基板にパターンを転写する工程を追加してもよい。
【0170】
また、本発明の2層、3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、(I−4)工程、(II−6)工程、又は(III−7)工程の後、更に、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、被加工基板をパターン加工する工程を追加してもよい。
【0171】
また、このイオン打込み後のレジスト中間膜の剥離も、上述の基板の加工後のレジスト中間膜の剥離と同様、ドライエッチングで行ってもよいし、ウェットエッチングで行ってもよい。即ち、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0172】
また、マスクとして使用したレジスト下層膜をドライエッチングにより除去することもできる。このとき、レジスト下層膜のエッチング速度が高ければ(即ち、レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いれば)、基板段差の隅部など、一般に除去が困難な場所についても、ドライエッチングにより残渣なく除去することが可能となり、欠陥の少ない半導体装置を製造することができるため、好ましい。
【0173】
なお、本発明において、ウェットエッチングに使用されるアルカリ性過酸化水素水の組成は特に制限されないが、例えば脱イオン水、過酸化水素、及びアンモニアの混合物等を好適に用いることができる。その場合の、過酸化水素の濃度としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%であり、アンモニアの濃度としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。特には、SC1(Standard Clean−1)と呼ばれる、脱イオン水5質量部、29質量%アンモニア水1質量部、30質量%過酸化水素水1質量部の混合液が好ましい。このSC1は、半導体ウエハー洗浄に一般的に用いられており、ウエハー表面の有機不純物、微粒子の洗浄除去用の標準的薬液となっている。ウェットエッチングの際の処理温度は、好ましくは0〜90℃であり、より好ましくは20〜80℃である。
【0174】
ここで、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例を図1(A)〜(F)に示す。
3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上にレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、図1(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、図1(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、図1(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてレジスト中間膜4をドライエッチング加工し、レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、図1(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、酸素系又は水素系ガスを用いてレジスト下層膜3をプラズマエッチング加工し、レジスト下層膜パターン3aを形成する。更に、図1(F)に示されるように、レジスト中間膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。なお、このときの被加工層2のエッチング加工はドライエッチングで行ってもよいし、SC1等のアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで行ってもよい。
【0175】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法(例えば、2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、及び4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能である。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、凹凸を有する基板上であっても空隙なく平坦なレジスト下層膜を形成できる。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、レジスト中間膜の除去や被加工基板へのパターン転写等をアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスで行うこともできる。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れたドライエッチング特性を有するため、マスクとして使用したレジスト下層膜をドライエッチングによって残渣なく除去することができ、結果として欠陥の少ない半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0176】
以下、合成例、実施例、及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0177】
なお、分子量及び分散度は、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、これらから分散度(Mw/Mn)を求めた。また、ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量分析(DSC)により測定した。
【0178】
[合成例1]重合体(A1)の合成
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記載する)38.9gを窒素雰囲気下100℃にて加熱撹拌した。これに、メタクリル酸グリシジル29.7g、アクリル酸ベンジル11.3g、アクリル酸tert−ブチル8.9g、及びPGMEA38.9gの混合物と、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.0gとPGMEA38.9gの混合物を、同時かつ別々に、2時間かけて添加した。更に2時間加熱撹拌後、室温まで冷却し、目的とする重合体(A1)のPGMEA溶液を得た。分析の結果、重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は4,500、分散度(Mw/Mn)は1.95、ガラス転移温度(Tg)は44℃であった。
【0179】
[合成例2]重合体(A2)の合成
PGMEA38.9gを窒素雰囲気下100℃にて加熱撹拌した。これに、メタクリル酸グリシジル29.7g、アクリル酸ベンジル11.3g、アクリル酸tert−ブチル8.9g、及びPGMEA38.9gの混合物と、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.0gとPGMEA38.9gの混合物を、同時かつ別々に、2時間かけて添加した。更に2時間加熱撹拌後、60℃に冷却し、ヘプタン200gを添加後、室温に冷却し、2時間静置した。上層を分離除去し、PGMEA100gを添加後、ヘプタンを減圧留去し、目的とする重合体(A2)のPGMEA溶液を得た。分析の結果、重合体(A2)の重量平均分子量(Mw)は5,000、分散度(Mw/Mn)は1.75、ガラス転移温度(Tg)は47℃であった。
【0180】
[合成例3〜6]重合体(A3)〜(A6)の合成
使用する原料単量体の種類及びモル比率を、各重合体の構造に合わせて変更した以外は、合成例2と同様の方法により、重合体(A3)〜(A6)のPGMEA溶液を得た。重合体(A3)〜(A6)の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)、及びガラス転移温度(Tg)は、以下の通りであった。
【0181】
以下に、合成例で合成した重合体(A1)〜(A6)を示す。
【化25】
【0182】
レジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)の調製
重合体(A1)〜(A10)、酸発生剤(C1)、架橋剤(E1)、可塑剤(F1)、色素(G1)を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.05質量%を含む溶剤中に表1に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)を調製した。
【0183】
【表1】
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME :プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0184】
以下に、重合体(A7)〜(A10)、酸発生剤(C1)、架橋剤(E1)、可塑剤(F1)、及び色素(G1)を示す。
【化26】
【0185】
溶剤耐性、光学定数測定(実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−4)
上記で調製したレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をシリコン基板上に塗布し、表2に記載の温度にて60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶剤をディスペンスし、30秒間放置した後スピンドライし、100℃で60秒間ベークしてPGMEA(溶剤)を蒸発させ、膜厚を再度測定しPGMEA処理(溶剤処理)前後の膜厚差を求めることにより溶剤耐性を評価した。また、J.A.ウーラム社製の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)にて求めた成膜後のレジスト下層膜の波長193nmにおける光学定数(屈折率n,消衰係数k)を表2に併せて示す。
【0186】
【表2】
【0187】
表2に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、いずれも成膜性良好、かつ溶剤処理による減膜がほとんどなく、溶剤耐性が良好な膜が得られていることが分かる。また、光学定数については、膜厚、上層膜の種類等にも依存するが、概ね、n値1.5〜1.9、k値0.1〜0.5の間であれば、基板からの反射光を相当程度抑制でき、フォトレジストパターニング用の下層膜として適用可能である。上記実施例においては、光学定数はいずれも好適な範囲にあり、レジスト下層膜としてフォトレジストパターニングに適用可能であることが分かる。
【0188】
パターニングに用いるレジスト上層膜材料(ArF用フォトレジスト:PR−1)は、ArF単層レジストポリマー1で示される重合体、酸発生剤PAG1、塩基化合物amine1をFC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶剤中に表3の割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0189】
【表3】
【0190】
ArF単層レジストポリマー1、PAG1、及びamine1を以下に示す。
【化27】
【化28】
【0191】
上記で調製したレジスト上層膜材料(PR−1)をシリコン基板上に塗布し、105℃で60秒間ベークすることにより、膜厚約100nmのレジスト上層膜を形成した。
【0192】
/H系ガスでのドライエッチング試験(実施例2−1〜2−7、比較例2−1〜2−5)
上記のようにしてシリコン基板上にレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)を用いて形成したレジスト下層膜、及びシリコン基板上にレジスト上層膜材料(PR−1)を用いて形成したレジスト上層膜に対して、下記エッチング条件にてN/H系ガスによるドライエッチング試験を実施した。
【0193】
(エッチング条件)
チャンバー圧力 2.7Pa
RFパワー 1,000W
ガス流量 500mL/min
ガス流量 30mL/min
時間 20sec
【0194】
東京エレクトロン製エッチング装置TE−8500を用いて測定したドライエッチング前後の膜厚差を、エッチング時間にて除することにより求めたドライエッチング速度を表4に示す。
【0195】
【表4】
【0196】
表4に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、いずれも、レジスト上層膜(比較例2−5)に比べて、ドライエッチング速度が高く、優れたドライエッチング特性を有していることが分かる。このことから、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)を使用した場合は、基板加工後、ドライエッチングによるレジスト下層膜除去を含む加工プロセスにおいて、レジスト下層膜除去後の残渣の発生を抑制できることが示唆された。一方、比較例2−2及び比較例2−3は、ドライエッチング速度が低いことから、比較レジスト下層膜材料(比較UL−2、3)を使用した場合は、ドライエッチングによりレジスト下層膜を除去する際に、残渣が生じやすいことが示唆された。
【0197】
埋め込み特性評価(実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−4)
上記のレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、表5に記載の温度にて60秒間焼成し、レジスト下層膜を形成した。使用した基板は図2(G)(俯瞰図)及び図2(H)(断面図)に示されるような密集ホールパターンを有するSiOウエハー基板7である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、レジスト下層膜が充填されているかどうかを確認した。結果を表5に示す。埋め込み特性に劣るレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好なレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、図2(I)に示されるように密集ホールパターンを有するSiOウエハー基板7のホール内部にボイドなくレジスト下層膜8が充填される。
【0198】
【表5】
【0199】
表5に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、いずれも、ボイドなくホールパターンを充填することが可能であり、比較レジスト下層膜材料(比較UL−1〜4)に比べて、埋め込み特性に優れることが分かる。
【0200】
平坦化特性評価(実施例4−1〜4−7、比較例4−1〜4−4)
上記のレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(図3(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.1μm)を有するSiOウエハー基板9上に塗布し、表6に記載の条件で焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜10の膜厚の差(図3(K)中のdelta 10)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を表6に示す。本評価において、膜厚の差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。
【0201】
【表6】
【0202】
表6に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、比較レジスト下層膜材料(比較UL−1〜4)に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差が小さく、平坦化特性に優れることが分かる。
【0203】
昇華物測定(実施例5−1〜5−7、比較例5−1〜5−4)
上記のレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をそれぞれ、シリコン基板上に塗布、表7に記載の条件で焼成し、ベーク中にホットプレートオーブン内に発生する0.3μmと0.5μmサイズのパーティクル数をリオン(株)製パーティクルカウンターKR−11Aを用いて測定した。結果を表7に示す。
【0204】
【表7】
【0205】
表7に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、比較レジスト下層膜材料(比較UL−1〜4)に比べて、ベーク中のパーティクル発生が少なく、焼成用オーブンを汚染しにくいことが分かる。また、実施例5−1と実施例5−2の比較では、分液精製によりベース樹脂の分散度(Mw/Mn)を1.8以下としたレジスト下層膜材料UL−2を用いた実施例5−2の方が、パーティクルがより少ないことが分かる。
【0206】
アルカリ性過酸化水素水耐性評価(実施例6−1〜6−7、比較例6−1〜6−4)
上記のレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をそれぞれ、直径4インチ(100mm)のシリコンウエハー上に塗布、表8に記載の条件で焼成し、膜厚約200nmとなるようにレジスト下層膜を成膜した後、ウエハーを2cm幅に切断した。このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、23℃で10分間、又は65℃で5分間浸漬し、続いて、脱イオン水でリンス後に、目視によりウエハーからのレジスト下層膜の剥離の有無を検査した。レジスト下層膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供したレジスト下層膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断した。結果を表8に示す。
【0207】
【表8】
【0208】
表8に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)は、23℃10分間浸漬、65℃5分間浸漬のいずれの条件でも剥離がないことから、良好なアルカリ性過酸化水素耐性を有していることが分かる。これに対し、比較レジスト下層膜材料(比較UL−1〜4)では、レジスト下層膜の一部又は全部が剥離しており、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)に比べて、アルカリ性過酸化水素耐性が劣っていることが分かる。
【0209】
パターン形成評価(実施例7−1〜7−7、比較例7−1〜7−4)
上記のレジスト下層膜材料(UL−1〜7、比較UL−1〜4)をそれぞれ、シリコンウエハー基板上に塗布し、表10に記載の条件で焼成することにより、レジスト下層膜を形成した。その上に下記レジスト中間膜材料(SOG−1)を塗布し、200℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間膜を形成した。その上に上記のレジスト上層膜材料(PR−1)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚約100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜上に液浸保護膜材料(TC−1)を塗布し、90℃で60秒間ベークして膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0210】
レジスト中間膜材料(SOG−1)としては、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。
【化29】
【0211】
液浸保護膜材料(TC−1)としては、保護膜ポリマーを有機溶剤中に表9の割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【表9】
【0212】
保護膜ポリマーを以下に示す。
保護膜ポリマー:分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化30】
【0213】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、160nm1:1のポジ型のラインアンドスペース(L/S)レジスト上層膜パターンを得た。
【0214】
次いで、レジスト上層膜パターンをマスクにして東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてレジスト中間膜をドライエッチング加工(パターン転写)し、得られたレジスト中間膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜をドライエッチング加工(パターン転写)し、レジスト下層膜パターンを形成した。エッチング条件は下記に示す通りである。
【0215】
(レジスト上層膜パターンのレジスト中間膜への転写条件)
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 75mL/min
ガス流量 15mL/min
時間 15sec
【0216】
(レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜への転写条件)
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75mL/min
ガス流量 45mL/min
時間 90sec
【0217】
レジスト下層膜パターン形成の可否は、レジスト下層膜へのパターン転写(ドライエッチング)後のウエハーを上空SEM観察(top−down SEM view)することにより確認した。続いて、ウエハーを2cm幅に切断し、このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、23℃で10分間浸漬し、脱イオン水でリンス、乾燥後に、光学顕微鏡を用いて観察し、レジスト下層膜パターンの剥離の有無を評価した。これらの評価結果を表10に示す。
【0218】
【表10】
【0219】
表10に示されるように、本発明のパターン形成方法(実施例7−1〜7−7)においては、いずれの場合もレジスト上層膜パターンがレジスト下層膜まで良好に転写されており、このことから本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜7)を多層レジスト法による微細リソグラフィーに好適に用いることができることが分かる。更に、形成したレジスト下層膜パターンのアルカリ性過酸化水素水耐性が良好であることも分かる。このことから、本発明のパターン形成方法であれば、アルカリ性過酸化水素水等を用いたウェットエッチングと多層レジスト法を組み合わせた微細加工による半導体装置製造が可能となることが示された。これに対し、比較例7−1及び比較例7−2では、レジスト下層膜パターンの形成は可能であるものの、形成したレジスト下層膜パターンのアルカリ性過酸化水素水耐性が十分ではなく、剥離が発生した。また、比較例7−3及び比較例7−4では、レジスト下層膜パターンの形成ができなかった。
【0220】
以上より、本発明のパターン形成方法、レジスト下層膜材料、及びレジスト下層膜材料用重合体は、半導体装置製造における微細パターニングのための多層レジストプロセスに好適に用いることができ、特には、ウェットエッチング加工を含むプロセス、凹凸のある被加工基板を用いるプロセスにも適用可能であり、産業上極めて有用であることが明らかとなった。
【0221】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0222】
1…基板、 2…被加工層、 2a…被加工層に形成されるパターン、
3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、
4…レジスト中間膜、 4a…レジスト中間膜パターン、
5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン、 6…露光部分、
7…密集ホールパターンを有するSiOウエハー基板、 8…レジスト下層膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有するSiOウエハー基板、
10…レジスト下層膜、
delta 10…トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差。
図1
図2
図3