(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405117
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】角度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/245 110J
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-99343(P2014-99343)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-224816(P2014-224816A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】10 2013 209 106.0
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・マイヤー
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−169438(JP,A)
【文献】
特開2005−315610(JP,A)
【文献】
特開2001−263361(JP,A)
【文献】
実開平01−168820(JP,U)
【文献】
特開2006−038530(JP,A)
【文献】
特開2011−202986(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0296759(US,A1)
【文献】
特開2008−76391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
z方向で延伸する軸(A)を中心に2つの転がり軸受(3,4)を使って本体(2)に相対的に回転自在で配設されているシャフト(1)を含んでいる角度測定装置であって、
シャフト(1)には、一つの平面(1.1.1)を有する基準尺(1.1)が回転固定して取り付けられており、
本体(2)が、基準尺(1.1)を走査検知するために走査検知装置(2.3)を有しており、
2つの転がり軸受(3,4)もシーリングユニット(5;5’)も、基準尺(1.1)でz方向に関して平面(1.1.1)に対向している側に配設されている
角度測定装置において、
シーリングユニット(5;5’)には、相対的に互いが回転自在であるリング(5.1,5.2;5.1’,5.2’)を含んでおり、前記リングがスキマにより互いが切り離されて配設されており、前記スキマが少なくとも部分的に流体(5.3;5.3’)で満たされており、
シーリングユニット(5;5’)が、シャフト(1)に取り付けられたリング(5.1,;5.1’)および本体(2)に取り付けられたリング(5.2,;5.2’)を有しており、前記リング(5.1,5.2;5.1’,5.2’)が、2つの転がり軸受(3,4)の間に配設されている
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の角度測定装置において、
前記リング(5.1,5.2;5.1’,5.2’)は、シャフト(1)に取り付けられたリング(5.1,;5.1’)の最大径(D;D’)が、本体(2)に取り付けられたリング(5.2;5.2’)の最小径(d;d’)と較べて大きくなるように構成されている
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の角度測定装置において、
シャフト(1)に取り付けられたリング(5.1,;5.1’)が、ラジアル方向に出ている突出部(5.1.1)を有しており、前記突出部が流体(5.3,;5.3’)と接触している
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の角度測定装置において、
シャフト(1)に取り付けられたリング(5.1,;5.1’)が、ラジアル方向に出ている突出部(5.1.1)を有しており、前記突出部が本体(2)に取り付けられたリング(5.2,;5.2’)の円周方向溝の中に入り込んでいる
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の角度測定装置において、
リング(5.1,5.2;5.1’,5.2’)の少なくとも一つが、複数分割して組み付けられている
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の角度測定装置において、
リング(5.1,5.2;5.1’,5.2’)の少なくとも一つが、z方向で予圧されている
ことを特徴とする角度測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の角度測定装置において、
本体(2)に取り付けられたリング(5.2,;5.2’)が、z方向で予圧されていることを特徴とする角度測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の角度測定装置において、
シャフト(1)に取り付けられたリング(5.1’)が、流体用の油溜り(5.1.1.1’)を有している
ことを特徴とする角度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1に記載の角度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角度測定装置は、しばしばロータリーエンコーダとも呼ばれるが、回転自在で支承された機械部品、特にシャフトの回転運動を1回転または複数回転に亘って測定するために使用される。そこでは回転運動を、インクリメントまたはアブソリュートで検出する。直線的な運動も、ラックアンドピニオンまたはスクリュースピンドルと接続することにより、角度測定装置を使って測定することができる。この種の角度測定装置は整流信号を発生するために、しばしば電動モータと接続して使用される。
【0003】
角度測定装置は、測定精度に関して比較的高度の仕様を満たさねばならず、多くのケースで光学的な測定原理に従って作動し、そして基準尺がしばしば、例えば表面に角度スケールを設けたガラスリングで構成されている。この場合に角度スケールを、反射光または透過光による方法で走査検知する。高い測定精度を確保するためには、基準尺を汚染から保護されていることが重要である。特に問題となることがあるのは、潤滑剤またはその構成成分が転がり軸受から流出して、基準尺に、特に角度スケールの範囲に落下する時である。この種の汚染は、しばしば滴として構成されて、レンズに類似した光学的な作用を起こす。そのような状況下では対応して光線が屈曲されて、誤差測定に至ることがある。
本出願人による特許文献1において角度測定装置が開示されており、それは、潤滑剤を収容する中空空間と接続している溝を備えたシャフトを有しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP2378251A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が根拠にする課題は、信頼性を有し継続して高い測定精度を達成できる角度測定装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を本発明に従い、特許請求項1の特徴を有する角度測定装置を得ることにより解決する。
【0007】
本角度測定装置にはシャフトを含んでおり、それがz方向で延伸する軸を中心に、少なくとも一つの転がり軸受を使って本体に相対的に回転自在で配設されている。シャフトには基準尺が回転固定して取り付けられており、その基準尺は少なくとも一つの平面を有している。本体は、基準尺を走査検知するために走査検知装置を有している。転がり軸受もシーリングユニットも基準尺の片側に配設されており、z方向に関して、その該当する側がその平面に対向している。そこでシーリングユニットに含まれるのは、相対的に互いが回転自在であるリングであり、それが特にラジアル方向でスキマにより、互いが切り離されて配設されており、そのスキマが少なくとも部分的に流体で満たされている。シーリングユニットは、特に非接触で構成されている。
【0008】
本角度測定装置は回転運動を測定するために、例えば現在の回転位置または回転速度を特定するために使用される。
【0009】
基準尺はリング形状で構成されていることがあり、そして形状的に観察すると中空円筒であり、それには高さが極端に小さく円周を取り巻く内外径面および、リング形状で互いに平行な向きにあると共にベース面およびカバー面と呼ばれることもある平面が備わっている。角度スケールまたは角度コードは、その平面の一つまたは内外径面の一つに設けられていることがあり、利点があるのは外径面である。
【0010】
基準尺は、前述の平面をz方向での方向成分を有する直線が交点で交叉するように、シャフトに固定されていることがある。その平面は特に、z方向に対して直角な方向成分で向けられている一つの平面にある場合がある。従って平面のある面に、z方向に対して平行な方向成分を有している垂線ベクトルを割り当てることができる。その平面がz方向に対して直角に向いている、ないし該当する平面の垂直ベクトルが、軸に対して平行に向けられており、従ってz方向を向いていると利点がある。
【0011】
転がり軸受もシーリングユニットも、基準尺でz方向に関してその平面に対向している側に配設されているという状況は、基準尺を起点にするとアキシャル方向で(z方向で)シャフトに沿ってまず転がり軸受が、そしてシーリングユニットが配設されていることを意味している。代替として同じく基準尺を起点にしてアキシャル方向で、まずシーリングユニットが、そして転がり軸受が配設されていることもある。従って基準尺は、転がり軸受とシーリングユニットの間にはない。
【0012】
本角度測定装置は、シーリングユニットがシャフトに取り付けられた内側リングおよび本体に取り付けられた外側リングを有するように、構成されていると利点がある。そこでリングは、シャフトに取り付けられたリングの最大径が、本体に取り付けられたリングの最小径と較べて大きくなるように構成されている。
【0013】
シャフトに取り付けられたシーリングユニットの内側リングが、ラジアル方向に出ている突出部を有しており、その突出部が角度測定装置の使用時に流体と接触していると利点がある。角度測定装置の構成では更に、シーリングユニットで本体に取り付けられた別のリングの円周方向溝の中に、突出部が入り込んでいることがある。
【0014】
シーリングユニットのリングの少なくとも一つが複数分割、特に二分割して組み付けられていると利点がある。特に本体に取り付けられたリングが、複数分割されて組み付けられていることがある。
【0015】
本発明の別の構成では角度測定装置が、二つの転がり軸受を有していることがあり、それが特にアキシャル方向でオフセットを有して、即ちz方向にオフセットを有してシャフトに配設されている。この構造ではシーリングユニットが、シャフトに取り付けられたリングおよび本体に取り付けられたリングを有し、そのリングが転がり軸受の間に配設されていることがある。
【0016】
本発明による別の構成によれば、角度測定装置を最終組み付けした状態において、シーリングユニットのリングの少なくとも一つが、z方向で予圧されていることがある。本体に取り付けられたリングが予圧されていると、特に利点がある。
【0017】
転がり軸受は、それぞれ内輪、外輪および、ラジアル方向で内輪と外輪の間に配設された転動体を有しており、そこで潤滑剤が転動体の範囲に入れられている。本発明の特別な構成では、シーリングユニットで本体に取り付けられたリングが、z方向に向けられる力が発生するように予圧されていることがあり、その力により転がり軸受の外輪が、アキシャル方向で互いに予圧されている。代替または補充として、シーリングユニットでシャフトに取り付けられたリングが、z方向に向けられる力が発生するように予圧されていることもあり、その力により転がり軸受の内輪が、アキシャル方向で互いに予圧されている。
【0018】
本発明の別の構成ではシャフトに取り付けられたリングが、流体、例えばオイル用の油溜りを有している。シーリングユニットには、互いが相対的に回転自在であるリングを含んでおり、それがスキマによりラジアル方向で互いに切り離されて配設されていることがあり、そこでスキマが少なくとも部分的に流体で満たされている。その油溜りは、ラジアル方向で内側に配設されていることがあるので、リングの回転時には油溜りにある流体がスキマに押し出される。
【0019】
本発明で利点ある別の構成は、従属請求項から得られる。
【0020】
本発明の別の特徴および利点は、図面を使った二つの実施例の以下の説明で明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
図1において中央部の縦方向断面図で示す角度測定装置には、ステータおよびロータを含んでいる。そのロータは段付き部分を備えたシャフト1を有しており、その段付き部分に基準尺1.1が、例えば接着により強力に、そして非常に僅かな許容公差で軸Aに対して同心で接続されている。軸Aはz方向に延伸している。基準尺1.1は、寸法精度および平面度に関して高い精度で製造されている。基準尺1.1はガラス製であり、リング形状に形成されている。当然のことながら、それは二つの平面1.1.1,1.1.2を有しており、その平面1.1.1,1.1.2の一つに角度スケールが設けられている。その角度スケールは例えば、ラジアル方向を向いた目盛線を備えたインクリメント目盛として構成されていることがあるが、追加または代替としてアブソリュートのコードが設けられていることもある。
【0023】
平面1.1.1,1.1.2は、z方向に対して直角な方向成分で方向を示される面にある。言い換えれば平面1.1.1,1.1.2の一つに対する垂線ベクトルが、z方向に平行な方向成分を有している。紹介している実施例では平面1.1.1,1.1.2が、z方向に対して直角に向いている、ないしは平面1.1.1,1.1.2の垂線ベクトルが軸Aに対して平行に向けられており、従ってz方向を向いている。
【0024】
シャフト1は二つの転がり軸受3,4により、ステータが配置されている本体2の内部に回転自在で支承されている。
【0025】
本体2は、例えばLEDおよびコリメータレンズを含む光源2.2を有しているので、光源2.2により平行光線化された光が発光される。この光が基準尺1.1ないしその角度スケールを通過し、そしてロータとステータ間ないしシャフト1と本体2間の角度位置に対応して変調される。変調された光は、本体2に固定された走査検知装置2.3により走査検知される。対応する光感性ディテクタは、実装プリント基板として構成された走査検知装置2.3上にある。特に走査検知装置2.3には、ディテクタが送出した走査検知信号を信号形成−例えば増幅およびデジタル化−するためのエレクトロニクス構成要素も含まれる。図では示していない接続ケーブルを介して、角度測定装置と後続エレクトロニクス機器間の電気的な接続が行われており、それにより電気信号および電気エネルギを、後続エレクトロニクス機器と角度測定装置間で伝送することができる。
【0026】
本体2の周囲に、そして他のステータ側部品の周りに、ハウジングを取り付けることがあり、それにより特に光源2.2、基準尺1.1、走査検知装置2.3を、環境の影響から保護している。この種のハウジングは、例えば電気駆動と関連する用途で気密的に作られないことが多い。場合によっては、ハウジングが完全に廃止されることもある。
【0027】
本角度測定装置は機械に取り付けるために特定されており、そこでシャフト1は、測定する必要のある構成要素、例えばモータシャフトに回転固定して接続するように構成されている。即ち、ステータとロータ間ないしシャフト1と本体2間の相対的な角度位置を、角度測定装置により特定することができる。この種の角度測定装置は、しばしばロータリーエンコーダとも呼ばれる。
【0028】
図2において角度測定装置の詳細外観図を示している。転がり軸受3,4に含まれるのは、それぞれ内輪3.1,4.1、外輪3.2,4.2、そしてラジアル方向で内輪3.1,4.1と外輪3.2,4.2間にボール3.3,4.3および、それぞれシール板3.4,4.4である。
【0029】
アキシャル方向で二つの軸受3,4の間にシーリングユニット5があり、それには内側リング5.1および外側リング5.2を含んでいる。ロータ側では内側リング5.1が、シャフト1に取り付けられている。このリング5.1には、ラジアル方向外方に突出する円周方向突出部5.1.1がある。ステータ側では二分割されたリング5.2が、アキシャル方向で外輪3.2,4.2の間で本体2に取り付けられている。リング5.2および突出部5.1.1はラジアル方向で重なっており、シャフト1に取り付けられた内側リング5.1の最大径Dが、本体2に取り付けられた外側リング5.2の最小径dと較べて大きい。またアキシャル方向で突出部5.1.1の両側に、それぞれ幅ζを有するスキマが現れる。加えて突出部5.1.1および本体2に取り付けられた外側リング5.2が、互いに対向して配設されており、幅ρを有する円周方向スキマにより、ラジアル方向で切り離されている。
【0030】
角度測定装置を組み立てる過程においてオイルが、本体2に取り付けられた外側リング5.2と突出部5.1.1間のスキマに入れられる。このスキマにオイルフィルム5.3を毛細管の力により保持できるように、そのスキマは比較的小さい。
【0031】
ステータ側で本体2に取り付けられた二分割の外側リング5.2は、力のかかっていない状態で、角度測定装置で設けられた転がり軸受3,4の間隔、特に外輪3.2,4.2の間隔と較べて、アキシャル方向で大きな幅を有している。このような理由から角度測定装置の組み立てを行った後には、外側リング5.2がz方向で予圧される、ないしアキシャル方向で弾力的に圧縮される。対応して外輪3.2,4.2に、アキシャル方向の予圧力が伝わる。ボール3.3,4.3および軌道溝を介して予圧力が、内輪3.1,4.1にも伝達される。内輪3.1,4.1はスライド出来ないように、例えば接着または圧入嵌合によりシャフト1と接続されている。従ってシーリングユニット5は、シール機能を満たすだけでなく、転がり軸受3,4間の機械的な予圧を達成する要素としての役割も果たしている。
【0032】
角度測定装置を問題なく使用するためには、転がり軸受3,4を潤滑することが必要であり、従ってそれぞれ内輪3.1,4.1および外輪3.2,4.2の間に、潤滑剤ないし潤滑グリースが入れられている。リング形状のシール板3.4,4.4は基本的に、潤滑剤ないし潤滑グリースが転がり軸受3,4の中に留まり、光学的に走査検知する基準尺1.1の方向に流出しないようにするために使用される。シール板3.4,4.4は、それぞれ外輪3.2,4.2と固く接続されているので、角度測定装置の使用時に、シール板3.4,4.4およびそれぞれの外輪3.2,4.2間で相対的な動きが生じない。角度測定装置で生じる摩擦熱を出来る限り少なくするために、シール板3.4,4.4は回転する部品と、特に内輪3.1,4.1と接触していない。
【0033】
角度測定装置の使用に当たっては、リング形状の基準尺1.1がかなりの回転数で回転することがある。従ってラジアルベンチレータの場合のように、ラジアル方向の圧力勾配が形成されて、それにより基準尺1.1でラジアル方向内側、特に平面1.1.1,1.1.2でラジアル方向内側は、ラジアル方向外側の範囲と較べて低い空気圧力が優勢となる。従って同時に吸引作用が、回転する基準尺1.1により発生する。このような圧力状態で転がり軸受3,4の潤滑剤成分が、基準尺1.1を汚染しないことを確保するために、アキシャル方向で転がり軸受3,4間に、シーリングユニット5にオイルフィルム5.3を設けている。というのは、このシーリングユニット5により、負圧時でも基準尺1.1のラジアル方向内側範囲で、空気が転がり軸受3,4を通過して流れないことが達成されるからである。特に角度測定装置がハウジングを有しない時、またはハウジングを有していても気密でない時は、空気が転がり軸受3,4を通過することを阻止することが重要である。シャフト1の回転が勿論、突出部5.1.1を有するシーリングユニット5の内側リング5.1の回転にもなる。その突出部5.1.1は、−毛細管の力ないし境界面応力作用により誘起されて−オイルが湿潤した状態になる。よって、回転数が上昇するとオイルフィルム5.3は、ますますラジアル方向外側範囲に押し付けられ、それにより最適のシーリングが高回転数で確保されている。しかしながら他方で正に高回転数の時に、回転する基準尺1.1による上記した吸引作用が最大である。また、シーリングユニット5の内側および外側のリング5.1,5.2が互いに接触しない。このことが特に、シーリングユニット5の作動では摩擦が極度に少なく、よって実用的に角度測定装置で排熱を発生しないという結果になる。
【実施例2】
【0034】
図3において第二実施例を示している。これが第一実施例と異なるのは、シーリングユニット5’が変形されていることである。このシーリングユニット5’には、シャフト1に組み付けられた内側リング5.1’を含み、それがラジアル方向で外方に突出する円周方向突出部5.1.1’を有している。この突出部5.1.1’は、それ自体に三つの円周方向切り欠き部を有しており、それがオイル用の油溜り5.1.1.1’として使用される。シーリングユニット5’には更に、二分割で構成された外側のリング5.2’を含み、それがステータ側のアキシャル方向で外輪3.2,4.2間に、本体2に取り付けられている。
【0035】
リング5.2’および突出部5.1.1’は、第二実施例でもラジアル方向で重なっており、シャフト1に取り付けられた内側リング5.1’の最大径D’が、本体2に取り付けられた外側のリング5.2’の最小径d’と較べて大きい。突出部5.1.1’および本体2に取り付けられた外側リング5.2’は、互いに対向して配設されており、幅ρ’を有する円周方向スキマによりラジアル方向で切り離されている。
【0036】
油溜り5.1.1.1’は、幅ρ’を有する円周方向スキマに対してラジアル方向内側に位置して配設されているので、角度測定装置の使用時に、即ちリング5.1’の回転時に、油溜り5.1.1.1’にあるオイルがスキマに押し込まれる。
【0037】
図3で示すように組み付けられた状態では、本体2に取り付けられたリング5.2’がz方向で予圧されているので、第一実施例に類似して、ここでもシーリングユニット5’により転がり軸受3,4のアキシャル方向予圧が達成される。
【0038】
本発明を特別に構成することにより、潤滑剤から流出する残留潤滑剤、例えば油滴を基準尺から離して保持することが可能である。このような残留潤滑剤は、しばしば誤差を伴う測定となる、というのは、光源2.2から発光された光の光路が、それにより影響を受けることがあるからである。このように残留潤滑剤を離して保持することが、高回転数での使用中にも確保される。というのは、それが引き起こす遠心力により、シーリングユニットのシール効果が向上されるからである。シーリングユニット5.5’により使用中に高いシール効果が得られるにも拘わらず、実際にはシーリングユニット5.5’により角度測定装置で熱は発生しない、というのは、これが作動する時に摩擦が極度に少ないからである。この事実は又、非常に正確な、即ち誤差を伴わない測定結果を得ることに寄与する。
【符号の説明】
【0039】
1 シャフト
1.1 基準尺
1.1.1 平面
1.1.2 平面
2 本体
2.2 光源
2.3 走査検知装置
3 転がり軸受
3.1 内輪
3.2 外輪
3.3 ボール
3.4 シール板
4 転がり軸受
4.1 内輪
4.2 外輪
4.3 ボール
4.4 シール板
5 シーリングユニット
5.1 内側リング
5.1.1 突出部
5.2 外側リング
5.3 オイルフィルム