特許第6405209号(P6405209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405209銅バンプ用液状封止材、および、それに用いる樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405209
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】銅バンプ用液状封止材、および、それに用いる樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20181004BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08L63/00 Z
   C08K9/06
   C08K5/54
   H01L23/30 R
   H01L21/60 311S
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-244026(P2014-244026)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108358(P2016-108358A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】山澤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】吉井 東之
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−226673(JP,A)
【文献】 特開2011−089025(JP,A)
【文献】 特開2012−149237(JP,A)
【文献】 特開2013−018991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08K 3/00−13/08
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 21/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、および、(C)下記式(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラーを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
さらに、(D)シランカップリング剤を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)シランカップリングで表面処理されたアルミナフィラーの含有量が、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、45〜77質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載樹脂組成物を用いた液状封止剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載樹脂組成物を用いた銅バンプ用液状封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅バンプ用液状封止材、および、それに用いる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い半導体の実装形態がワイヤーボンド型からフリップチップ型へと変化してきている。
フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するためにアンダーフィルと呼ばれる液状封止剤を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
【0003】
アンダーフィルとして用いられる液状封止剤は、注入性、接着性、硬化性、保存安定性等に優れ、かつ、ボイドが発生しないことが求められる。また、液状封止材によって封止した部位が、耐湿性、耐サーマルサイクル性、耐リフロー、耐クラック性、耐反り等に優れることが求められる。
【0004】
上記の要求を満足するため、アンダーフィルとして用いられる液状封止材としては、エポキシ樹脂を主剤とするものが広く用いられている。
液状封止材によって封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させるためには、シリカフィラーのような無機物質からなる充填材(以下、「フィラー」という。)を液状封止材に添加することにより、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数差のコントロールを行うことや、バンプ電極を補強することが有効であることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
近年、特に高密度のフリップチップ実装において、銅ピラーバンプ(以下、「銅バンプ」という。)が用いられるようになっている。銅バンプは、従来のはんだバンプと比較して、バンプのピッチを小さくできる、鉛の使用量を低減できるので環境に与える影響が小さい、熱伝導性が高いので放熱特性に優れている、電気伝導度が高いので寄生抵抗を低減できるなどの利点がある。
特許文献2の段落番号0003には、銅バンプとアンダーフィルを用いた従来のフリップチップ実装の手順の一例が示されている。特許文献2には、この手順で銅ピラーを用いたフリップチップ実装を行った場合、アンダーフィル中のフィラーが加熱硬化中に樹脂から分離し、アンダーフィル樹脂中にフィラーが存在しない領域が形成されることとなり、シリコンチップと基板の線膨張率の差を吸収できず、バンプにクラックが発生するなどの問題が発生することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2007−56070号公報
【特許文献2】再公表特許2010−103934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解決するため、加熱硬化時におけるフィラーの分離、および、それによるバンプでのクラックの発生が抑制された、銅バンプ用液状封止材およびそれに用いる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、銅バンプ用液状封止材における、加熱硬化時におけるフィラーの分離について鋭意検討することにより以下の知見を得た。
アンダーフィルのフィラーに着目すると、アンダーフィルのフィラーとして広く使用されるシリカフィラーを使用した場合、加熱硬化時におけるフィラーの分離が起こりやすい。
シリカフィラーに比べて、アルミナフィラーは、加熱硬化時におけるフィラーの分離が起こりにくい。
上記の知見について、本願発明者らは以下のように推測する。
銅ピラーとハンダを接合した際の両者の電位差の影響により、アンダーフィルの加熱硬化中に、フィラーが電気泳動の作用によって銅ピラーに引き寄せられて、フィラーの分離が起こると推測する。
【0009】
上述したように、加熱硬化時におけるフィラーの分離の抑制という点では、アルミナフィラーはシリカフィラーに比べて好ましい。しかしながら、アルミナフィラーを含有するアンダーフィルは、シリカフィラーを含有するアンダーフィルに比べて、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が劣る。その理由は、アルミナフィラーは、吸湿の影響を受け易く、吸湿によってアルミナフィラーの凝集が起こるためである。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、
(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、および、(C)下記式(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラーを含むことを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【化1】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、さらに、(D)シランカップリング剤を含有してもよい。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、前記(C)シランカップリングで表面処理されたアルミナフィラーの含有量が、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、45〜77質量部であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を用いた液状封止剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を用いた銅バンプ用液状封止剤を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、銅バンプ用液状封止材として使用した場合に、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が良好であり、かつ、加熱硬化時におけるフィラーの分離、および、それによるバンプでのクラックの発生が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、以下に示す(A)〜(C)成分を必須成分として含有する。
【0017】
(A)液状エポキシ樹脂
(A)成分の液状エポキシ樹脂は、本発明の樹脂組成物の主剤をなす成分である。
本発明において、液状エポキシ樹脂とは常温で液状のエポキシ樹脂を意味する。
本発明における液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
(A)成分としての液状エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。
また、常温で固体のエポキシ樹脂であっても、液状のエポキシ樹脂と併用することにより、混合物として液状を示す場合は用いることができる。
【0018】
(B)硬化剤
(B)成分の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができ、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、および、フェノール系硬化剤のいずれも使用できる。
【0019】
アミン系硬化剤の具体例としては、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が挙げられる。また、市販品として、T−12(商品名、三洋化成工業製)(アミン当量116)が挙げられる。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物等のアルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。
【0020】
フェノール系硬化剤の具体例としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、アミン系硬化剤が、耐湿性および耐サーマルサイクル性に優れることから好ましく、中でも、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンが、耐熱性、機械的特性、密着性、電気的特性、耐湿性の観点から好ましい。また、常温で液状を呈する点も、本発明の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の硬化剤として好ましい。
【0022】
(B)成分の硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、(B)成分の硬化剤の配合割合は特に限定されないが、(A)成分の液状エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.6当量であることが好ましく、0.6〜1.3当量であることがより好ましい。
【0024】
(C)下記式(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラー
【化2】

(C)成分のアルミナフィラーは、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる目的で添加される。アルミナフィラーの添加により耐サーマルサイクル性が向上するのは、線膨張係数を下げることにより、サーマルサイクルによる、封止材組成物の硬化物の膨張・収縮を抑制できるからである。
(C)成分としてアルミナフィラーを使用するのは、上述したように、シリカフィラーに比べて、等電位点が高いアルミナフィラーは、銅バンプ用液状封止材として使用した場合に、フィラーの電位が正のままであるため、加熱硬化中に電気泳動の作用を受けないため、フィラーの分離が起こりにくく、バンプでのクラックの発生を抑制できるからである。
【0025】
但し、上述したように、アルミナフィラーを含有する液状封止材は、シリカフィラーを含有する液状封止材に比べて、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が劣る。本発明では、(C)成分として、上記式(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラーを使用することにより、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が改善されている。上記式(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラーを使用することにより、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が改善される理由は、上記式(1)のシランカップリング剤で表面処理することで、アルミナフィラーの耐吸湿性を向上させてアルミナフィラーの凝集を防ぐことができるが、上記式(1)以外のシランカップリング剤で表面処理した場合は、シランカップリング剤に起因するアルミナフィラーの凝集が起きる。そのため、上記(1)のシランカップリング剤での表面処理が、アルミナフィラーの凝集を防ぐ方法であり、上記(1)のシランカップリング剤で表面処理されたアルミナフィラーを用いた樹脂組成物を使用することにより、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が改善される理由になる。
【0026】
本発明の樹脂組成物において、(C)成分のシランカップリングで表面処理されたアルミナフィラーの含有量は、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、45〜77質量部であることが好ましい。
(C)成分のアルミナフィラーの含有量が45質量部未満だと、樹脂組成物の線膨張係数が大きくなり、銅バンプ用液状封止材として使用した場合に、封止した部位の耐サーマルサイクル性が低下する。
一方、(C)成分のアルミナフィラーの含有量が77質量部超だと、樹脂組成物の粘度が増加し、銅バンプ用液状封止材として使用した場合に、半導体素子と基板とのギャップへの注入性が低下する。
(C)成分のアルミナフィラーの含有量は、50〜75質量部であることがより好ましく、50〜70質量部であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物において、(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径は0.1〜10μmであることが樹脂組成物の流動性の理由から好ましい。
(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径は0.5〜5μmであることがより好ましく、0.7〜1.7μmであることがさらに好ましい。
(C)成分のアルミナフィラーの形状は特に限定されず、粒状、粉末状、りん片等のいずれの形態であってもよい。なお、アルミナフィラーの形状が粒状以外の場合、アルミナーの平均粒径とはアルミナフィラーの平均最大径を意味する。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分以外に、以下に述べる成分を必要に応じて含有してもよい。
【0029】
(D):シランカップリング剤
本発明の樹脂組成物は、銅バンプ用液状封止材として使用した際の密着性を向上させるために、(D)成分としてシランカップリング剤を含有してもよい。
(D)成分のシランカップリング剤としては、(C)成分のアルミナフィラーの表面処理に使用する上記式(1)のシランカップリング剤に限定されず、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の各種シランカップリング剤を用いることができる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が、銅バンプ用液状封止材として使用した際の密着性および機械的強度を向上させる効果に優れることから好ましい。
【0030】
エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−303、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM−402、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(商品名:KBE−402、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−403、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
(D)成分としてシランカップリング剤を含有させる場合、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好ましい。
【0032】
(その他の配合剤)
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような成分の具体例としては、エラストマー、硬化促進剤、金属錯体、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
【0033】
(樹脂組成物の調製)
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分、および、含有させる場合はさらに(D)成分、ならびに、さらに必要に応じて配合するその他の配合剤を混合し、攪拌して調製される。
混合攪拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、勿論、これに限定されない。(A)成分のエポキシ樹脂が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化し混合することが好ましい。
各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残りの成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。(A)成分の液状エポキシ樹脂に対し、(C)成分のアルミナフィラーを均一に分散させることが困難な場合は、(A)成分の液状エポキシ樹脂と、(C)成分のアルミナフィラーを先に混合し、残りの成分を後から混合してもよい。
【0034】
次に本発明の樹脂組成物の特性について述べる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、回転粘度計を用いて測定される、50rpmで25℃における粘度が200Pa・s以下であることが好ましい。上述した粘度であれば、銅バンプ用液状封止材として使用した際の流動性が良好である。
本発明の樹脂組成物は、50rpmで25℃における粘度が100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明の樹脂組成物は、銅バンプ用液状封止材として使用した場合に、半導体素子と基板とのギャップへの注入性が良好である。具体的には、後述する実施例に記載の手順でギャップへの注入性を評価した際に、注入時間が1200秒以下であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物は、として使用した場合に、加熱硬化時におけるアルミナフィラーの分離が抑制される。具体的には、後述する実施例に記載の手順でフィラー分離指数を評価した際に、フィラー分離指数が50以上であることが好ましく、55以上であることがより好ましい。
【0038】
次に本発明の樹脂組成物の使用方法を、銅バンプ用液状封止材としての使用を挙げて説明する。
本発明の樹脂組成物を銅バンプ用液状封止材として使用する場合、以下の手順で基板と半導体素子との間のギャップに本発明の樹脂組成物を充填する。
基板をたとえば70〜130℃に加熱しながら、半導体素子の一端に本発明の樹脂組成物を塗布すると、毛細管現象によって、基板と半導体素子との間のギャップに本発明の樹脂組成物が充填される。この際、本発明の樹脂組成物の充填に要する時間を短くするため、基板を傾斜させたり、該ギャップ内外に圧力差を生じさせてもよい。
該ギャップに本発明の樹脂組成物を充填させた後、該基板を所定温度で所定時間、具体的には、80〜200℃で0.2〜6時間加熱して、樹脂組成物を加熱硬化させることによって、該ギャップを封止する。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜16、比較例1〜5)
下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して実施例1〜16、比較例1〜5の液状封止材を調製した。但し、(A)成分の液状エポキシ樹脂と、(C)成分のアルミナフィラーを先に混合し、残りの成分を後から混合した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
【0040】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158g/eq
エポキシ樹脂A2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名850CRP、DIC株式会社製、エポキシ当量170〜175g/eq
エポキシ樹脂A3:ナフタレン型エポキシ樹脂、製品名4032D、DIC株式会社製、エポキシ当量136〜148g/eq
エポキシ樹脂A4:多官能型エポキシ樹脂、製品名630、三菱化学株式会社製、エポキシ当量90〜105g/eq
【0041】
(B)硬化剤
硬化剤B1:アミン系硬化剤、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA−A、日本化薬株式会社製
硬化剤B2:アミン系硬化剤、ジメチルチオトルエンジアミン(変性芳香族アミンを含む)、製品名EH105L、株式会社ADEKA製
硬化剤B3:アミン系硬化剤、ジエチルトリエンジアミン、製品名エタキュア100、アルベマール日本株式会社製
硬化剤B4:酸無水物系硬化剤、製品名YH307、三菱化学株式会社製
硬化剤B5:フェノール系硬化剤、製品名MEH−8005、明和化成株式会社製
【0042】
(C)フィラー
フィラーC1:下記式(1)のシランカップリング剤(製品名KBM573(信越化学工業株式会社製)で表面処理したアルミナフィラー(平均粒径0.7μm)
【化3】

フィラーC2:式(1)のシランカップリング剤(製品名KBM573(信越化学工業株式会社製)で表面処理したアルミナフィラー(平均粒径1.7μm)
フィラーC3:表面未処理シリカフィラー(平均粒径0.7μm)
フィラーC4:表面未処理アルミナフィラー(平均粒径0.7μm)
フィラーC5:エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403(信越化学工業株式会社製))で表面処理したアルミナフィラー(平均粒径0.7μm)
フィラーC6:メタクリル系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、製品名KBM503(信越化学工業株式会社製))で表面処理したアルミナフィラー(平均粒径0.7μm)
フィラーC7:アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM903(信越化学工業株式会社製))で表面処理したアルミナフィラー(平均粒径0.7μm)
【0043】
(D)シランカップリング剤
シリカカップリング剤D1:エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403(信越化学工業株式会社製)
シリカカップリング剤D2:式(1)のシランカップリング剤(製品名KBM573(信越化学工業株式会社製)
【0044】
(E)硬化促進剤
硬化促進剤E1:2−エチル−4−メチルイミダゾール、製品名2P4MZ、四国化成工業株式会社製
【0045】
調製した樹脂組成物を評価用試料として以下の評価を実施した。
【0046】
(フィラー分離指数)
上記の手順で調製した樹脂組成物を、銅バンプを有する配線基板と、半導体素子との間のギャップ(50μm)に注入した後、150℃で2時間加熱硬化させた。樹脂硬化物の断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、その撮影画像を画像処理ソフトウェアによって以下のようにコンピュータにより分析した。すなわち、まず、この撮影画像のうち樹脂組成物の領域を指定し、指定した領域の輝度分布の中央値を基準として二値化処理した。ここで、二値化された画像のうち、白い部分がフィラーを示しており、黒い部分がフィラー以外の樹脂成分を示している。次に、指定された領域は、銅ピラーとハンダとの境界線Lに沿って、銅ピラー側の領域Ra、およびハンダ側の領域Rbの2つに区画した。そして、銅ピラー側の領域Ra、およびハンダ側の領域Rbの各画像に基づいて、それぞれのシリカフィラーの占有率が算出し、分離指数を次式によって算出した。
分離指数=100×(領域Raの占有率)/(領域Rbの占有率)
【0047】
(粘度)
ブルックフィールド粘度計を用いて、液温25℃、50rpmで調製直後の評価用試料の粘度を測定した。
【0048】
(チクソトロピー指数(T.I.))
ブルックフィールド社製回転粘度計HBDV−1(スピンドルSC4−14使用)用いて、5rpmで25℃における粘度(Pa・s)、および、50rpmで25℃における粘度(Pa・s)測定し、5rpmで測定した粘度の測定値を、50rpmで測定した粘度の測定値により除した値(50rpmでの粘度に対する5rpmでの粘度の比)を、チクソトロピー指数として示す。
【0049】
(注入性)
有機基板(FR−4基板)上に、50μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板を固定した試験片を作製した。この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、ガラス板の一端側に樹脂組成物を塗布し、注入距離が20mmに達するまでの時間を測定した。この手順を2回実施し、測定値の平均値を注入時間の測定値とした。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
実施例1〜15の樹脂組成物は、いずれも、フィラー分離指数、液温25℃、50rpmで測定した粘度、チクソトロピー指数(T.I.)、20mm注入性の評価結果がいずれも良好であった。実施例1に対し、実施例2〜16の相違点は以下の通り。
実施例2:平均粒径が異なるアルミナフィラー(平均粒径1.7μm)を使用。
実施例3〜5:アルミナフィラーの含有量が実施例1とは異なる(全成分の合計質量100質量部に対し、45質量部(実施例3)、70質量部(実施例4)、75質量部(実施例5)。
実施例6、7:成分(D)(シランカップリング剤)含有(エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)使用(実施例6)、アルミナフィラーの表面処理に使用したシランカップリング剤と同じシランカップリング剤を使用(実施例7)。
実施例8、9:硬化剤当量比が実施例1とは異なる(硬化剤当量比:0.5(実施例8)、1.8(実施例9))。
実施例10〜12:成分(A)のエポキシ樹脂の種類が実施例1とは異なる(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量170〜175g/eq)(実施例10)、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136〜148g/eq)(実施例11)、多官能型エポキシ樹脂(エポキシ当量90〜105g/eq)(実施例12)。
実施例13、14:成分(B)のアミン系硬化剤の種類が実施例1とは異なる(ジメチルチオトルエンジアミン(変性芳香族アミンを含む)(実施例13)、ジエチルトリエンジアミン(実施例14)。
実施例15:成分(B)に酸無水物系硬化剤を使用。
実施例16:成分(B)にフェノール系硬化剤を使用。
一方、(C)成分として、シリカフィラーを使用した比較例1は、フィラー分離指数の数値が低く、加熱硬化時にフィラーの分離が確認された。
また、(C)成分として、表面未処理のアルミナフィラーを使用した比較例2、エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したアルミナフィラーを使用した比較例3、メタクリル系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)で表面処理したアルミナフィラーを使用した比較例4、アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したアルミナフィラーを使用した比較例5は、注入性評価の際に注入不可であった。