特許第6405292号(P6405292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405292
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20181004BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01L31/04 262
   H01L31/04 440
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-158670(P2015-158670)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-37974(P2017-37974A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛之
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−134387(JP,A)
【文献】 特開2006−269884(JP,A)
【文献】 特開2011−228529(JP,A)
【文献】 特開2014−220291(JP,A)
【文献】 特表2010−519732(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0094421(US,A1)
【文献】 特開2015−159272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0224
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の少なくとも第1主表面上に集電電極を有する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の少なくとも前記第1主表面上に、平行線状で所定の幅を有し第1の間隔及び前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔の2つの間隔を有するエッチングマスクを設けた後、前記エッチングマスクによってマスクされていない部分の前記半導体基板をエッチングし、前記半導体基板の前記第1主表面上に前記所定の幅を有する凸部パターンを形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1主表面上の前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、前記集電電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記エッチングマスクの前記幅を5μm以上100μm以下とし、
前記エッチングマスクの前記第1の間隔を40μm以上150μm以下とし、
前記エッチングマスクの前記第2の間隔を0.8mm以上2.5mm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板の前記第1主表面の前記集電電極が形成される領域を含む領域に拡散層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の前記第1主表面に拡散層を形成する工程は、拡散剤を前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域に印刷して熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の少なくとも第1主表面に集電電極を有する太陽電池であって、
前記半導体基板の前記第1主表面には、前記半導体基板と同じ材質からなり、平行線状の所定の幅を有する複数の凸部が設けられ、最隣接する該凸部は第1の間隔及び前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔の2つの間隔を隔てて設けられており、
前記集電電極は前記第1の間隔を隔てた凸部間に設けられていることを特徴とする太陽電池。
【請求項6】
少なくとも前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域における基板中のドーパントの表面濃度が、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下であることを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記凸部の前記幅が5μm以上100μm以下であり、
前記凸部の高さが1μm以上20μm以下であり、
前記凸部の前記第1の間隔が40μm以上150μm以下であり、
前記凸部の前記第2の間隔が0.8mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶や多結晶半導体基板を用いた比較的高い光電変換効率を有する太陽電池セルの受光面側の表面の概観を図11に示す。図11に示すように、半導体基板204の受光面の集電電極として、フィンガー電極201aと呼ばれる数百〜数十μm幅の電極を多数有し、また、フィンガー電極201aを連結するための集電電極としてバスバー電極201bを1〜4本有するのが一般的である。
【0003】
上記の太陽電池セルの断面構造の模式図を図12に示す。半導体基板204に対し、受光面側には半導体基板204の導電型と反対の導電型のエミッタ層203が設けられ、この上に受光面集電電極201が設けられる。受光領域には、反射損失を低減する目的で、反射防止膜202が設けられることが多い。受光面と同様に、反受光面側(裏面)にも裏面集電電極205が形成され、非電極領域はシリコン窒化膜やシリコン酸化膜等の裏面保護膜207で覆われる。また、半導体基板204の裏面側には、半導体基板204の導電型と同じ導電型の裏面電界層206が設けられる。
【0004】
電極形成には蒸着法やスパッタ法等の方法が可能であるが、コストの面からスクリーン印刷が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。スクリーン印刷を用いた方法において、金属粉末(Ag粉末又はAl粉末)とガラスフリットを有機物バインダと混合した導電性ペースト(Agペースト又はAlペースト)を、印刷版を用いてフィンガーパターン状に印刷する。この後、熱処理により反射防止膜202又は裏面保護膜207に電極を貫通させ(ファイアースルー)、電極と半導体基板204とを導通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−324504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した構造の太陽電池の光電変換効率は、表裏面のフィンガー電極の抵抗にも影響される。すなわち、フィンガー電極が細いなどにより断面積が小さかったり、バスバー電極までの距離が長かったりすると、光電変換効率は低くなってしまう。
【0007】
フィンガー電極抵抗を低減する方法としては、フィンガー電極幅を太くするのが簡単であるが、このようにすると非電極領域の面積が減少してしまい、光生成キャリアが再結合しやすくなる領域の面積が増え、光電変換効率は低下してしまう。また、受光面においては受光面積の低下も併発する。このようにフィンガー電極幅増によるフィンガー電極抵抗低減と、非電極領域面積減少による再結合の増加・受光面積の低下がトレードオフの関係にあるため、さらなる光電変換効率の向上は困難であった。
【0008】
また、フィンガー電極を複数回印刷するなどして電極断面積を広げて、非電極領域面積を減らさずにフィンガー電極抵抗を低減する方法もあるが、少なからず位置ずれが発生して電極線幅が太ってしまったり、高精度で位置調整が可能な装置が必要になったりして、必ずしも有効な方法ではなかった。
【0009】
さらに、スクリーン印刷を用いた電極の形成においては、印刷された電極が焼成前ではペースト(流体)の状態であるために、印刷後ににじみが発生し、線幅の太りの制御が難しいため、局所的な線幅の太りが発生し、光電変換効率の低下の原因となっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、太陽電池の主表面上の電極形成を導電性ペーストの印刷、焼成を用いて行う場合において、電極幅を精度よく形成することができる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、半導体基板の少なくとも第1主表面上に集電電極を有する太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の少なくとも前記第1主表面上に、平行線状で所定の幅を有し第1の間隔及び前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔の2つの間隔を有するエッチングマスクを設けた後、前記エッチングマスクによってマスクされていない部分の前記半導体基板をエッチングし、前記半導体基板の前記第1主表面上に前記所定の幅を有する凸部パターンを形成する工程と、前記半導体基板の前記第1主表面上の前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、前記集電電極を形成する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
【0012】
このように、半導体基板の第1主表面上の第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、集電電極を形成することで、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されるため、電極の部分的な太りを防止することができ、それにより電極幅を精度よく形成することができ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0013】
このとき、前記エッチングマスクの前記幅を5μm以上100μm以下とし、前記エッチングマスクの前記第1の間隔を40μm以上150μm以下とし、前記エッチングマスクの前記第2の間隔を0.8mm以上2.5mm以下とすることが好ましい。
【0014】
エッチングマスクの幅、エッチングマスクの第1の間隔及び第2の間隔は具体的には上記の範囲とすることができる。
【0015】
このとき、前記半導体基板の前記第1主表面の前記集電電極が形成される領域を含む領域に拡散層を形成する工程をさらに含むことができる。
【0016】
このように、目的に応じて拡散層を形成することができる。
【0017】
このとき、前記半導体基板の前記第1主表面に拡散層を形成する工程は、拡散剤を前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域に印刷して熱処理する段階を含むことが好ましい。
ことが好ましい。
【0018】
このようにすることで、集電電極直下の領域に高濃度層を選択的に拡散できるので、光電変換効率をより効果的に向上させることができる。また、凸部による段差がガイドとなるため、高濃度層を精度よく形成することができる。
【0019】
また、本発明は、半導体基板の少なくとも第1主表面に集電電極を有する太陽電池であって、前記半導体基板の前記第1主表面には、平行線状の所定の幅を有する複数の凸部が設けられ、最隣接する該凸部は第1の間隔及び前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔の2つの間隔を隔てて設けられており、前記集電電極は前記第1の間隔を隔てた凸部間に設けられていることを特徴とする太陽電池を提供する。
【0020】
このように集電電極が第1の間隔を隔てた凸部間に設けられているので、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されているため、電極の部分的な太りを防止されている。それにより電極幅が精度よく形成されているため、光電変換効率が向上した太陽電池とすることができる。
【0021】
このとき、少なくとも前記第1の間隔を隔てた凸部間の領域における基板中のドーパントの表面濃度が、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下であることが好ましい。
【0022】
このように第1の間隔を隔てた凸部間の領域、すなわち、集電電極の形成されている領域における基板中のドーパントの表面濃度が上記の範囲であれば、集電電極と半導体基板との接触抵抗を低減することができ、光電変換効率を効果的に向上させることができる。
【0023】
このとき、前記凸部の前記幅が5μm以上100μm以下であり、前記凸部の高さが1μm以上20μm以下であり、前記凸部の前記第1の間隔が40μm以上150μm以下であり、前記凸部の前記第2の間隔が0.8mm以上2.5mm以下であることが好ましい。
【0024】
凸部の幅、高さ、第1の間隔、第2の間隔は具体的に上記の範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の太陽電池の製造方法であれば、半導体基板の第1主表面上の第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、集電電極を形成することで、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されるため、電極の部分的な太りを防止することができ、それにより電極幅を精度よく形成することができ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。また、本発明の太陽電池であれば、集電電極が第1の間隔を隔てた凸部間に設けられているので、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されており、電極の部分的な太りが防止されている。それにより電極幅を精度よく形成されているため、光電変換効率が向上した太陽電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の太陽電池の製造方法を示すフロー図である
図2】本発明の太陽電池の製造方法におけるエッチングマスク形成後の断面模式図である。
図3】本発明の太陽電池の製造方法におけるエッチング後の断面模式図である。
図4】本発明の太陽電池の製造方法における拡散剤印刷後の断面模式図である。
図5】本発明の太陽電池の製造方法における導電ペースト印刷後の断面模式図である。
図6】本発明の太陽電池の製造方法における導電ペーストの焼成後の断面模式図である。
図7】凸部上にバスバー電極を設ける場合を説明するための平面図である。
図8】凸部上にバスバー電極を設けない場合を説明するための平面図である。
図9】本発明を裏面側に適用した場合の太陽電池の一例を示す断面模式図である。
図10】本発明を受光面側に適用した場合の太陽電池の一例を示す断面模式図である。
図11】従来の太陽電池の受光面を示す図である。
図12】従来の太陽電池の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
前述のように、フィンガー電極の線幅については、フィンガー電極幅増によるフィンガー電極抵抗低減と、非電極領域面積減少による再結合の増加・受光面積の低下がトレードオフの関係にあるため、さらなる光電変換効率の向上は困難であった。さらに、スクリーン印刷を用いた電極の形成においては、印刷された電極が焼成前ではペースト(流体)の状態であるために、印刷後ににじみが発生し、線幅の太りの制御が難しいため、局所的な線幅の太りが発生し、光電変換効率の低下の原因となっていた。
【0029】
そこで、本発明者らは、太陽電池の主表面上の電極形成を導電性ペーストの印刷、焼成を用いて行う場合であっても、電極幅を精度よく形成することができる太陽電池の製造方法について鋭意検討を重ねた。
【0030】
その結果、半導体基板の第1主表面上の第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、集電電極を形成することで、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されるため、電極の部分的な太りを防止することができ、これにより電極幅を精度よく形成することができ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。本発明において、形成する凸部は受光面、裏面のいずれにも形成することができ、両方の面において適用することもできる。
【0031】
まず、本発明の太陽電池の製造方法について図1〜6を参照しながら、説明する。
【0032】
まず、半導体基板の第1主表面上に、平行線状で所定の幅を有し、第1の間隔及び第1の間隔よりも大きい第2の間隔の2つの間隔を有するエッチングマスクを設ける(図1のステップS11参照)。
【0033】
具体的には、半導体基板(例えば、シリコン基板)104の第1主表面116上に、第1の間隔108、及び、第1の間隔108より大きい第2の間隔107を有するエッチングマスク109を設ける(図2参照)。ここで、エッチングマスク109の間隔とは、図2に示したような間隔(第1の間隔108及び第2の間隔107)で定義されるものとする。このエッチングマスク109は、例えば、酸化シリコン膜、又は、窒化シリコン膜とすることができ、膜を全面に形成した後に、エッチングペースト又はレーザー等を用いてパターン形成することができる。ここで、第1主表面116は、裏面又は受光面とすることができる。
【0034】
次に、エッチングマスクによってマスクされていない部分の半導体基板をエッチングし、半導体基板の第1主表面上に所定の幅を有する凸部パターンを形成する(図1のステップS12参照)。
【0035】
具体的には、エッチングマスク109によってマスクされていない部分の半導体基板104をエッチングし、その後エッチングマスク109を除去し、半導体基板104の第1主表面116上に所定の幅を有する凸部パターン114を形成する(図2、3参照)。ここで、凸部114の間隔とは、図3に示したような間隔(第1の間隔108及び第2の間隔107)で定義されるものとする。
【0036】
次に、半導体基板の第1主表面上の第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、集電電極を形成する(図1のステップS13参照)。
【0037】
具体的には、半導体基板104の第1主表面116上の第1の間隔108を隔てた凸部114間の領域に、導電性ペースト115を例えばスクリーン印刷を用いて印刷する(図5参照)。このとき、凸部114による段差がガイドとなるため、この後の工程において、導電ペースト115の部分的な太りを防止することができる。その後焼成を行い、集電電極117を形成する(図6参照)。
【0038】
図2において、エッチングマスク109の幅を5μm以上100μm以下とすることが好ましい。エッチングマスク109の幅が5μm以上であれば、次のエッチング工程でエッチングマスク109が除去されることを防止することができる。また、エッチングマスク109の幅が100μm以下であれば、ガイドとしての段差の機能を十分果たすことができる凸部を形成することができる。
【0039】
図2において、エッチングマスク109の第1の間隔108を40μm以上150μm以下とし、エッチングマスク109の第2の間隔107を0.8mm以上2.5mm以下とすることが好ましい。エッチングマスク109の第1の間隔108、第2の間隔107が上記の範囲であれば、フィンガー電極の形状に適合した凸部114を形成することができる。
【0040】
また、上記の太陽電池の製造方法において、集電電極が形成される領域を含む領域に拡散層を形成する工程を含むことが好ましい。このようにして、目的に応じた拡散層を形成することができる。特に、電極直下において、その他の領域よりもドーパント濃度を高くすることにより、集電電極と半導体基板との接触抵抗を低減することができる。なお、この工程は、図1のステップS12とステップS13の間に行うことができる。
【0041】
上記の第1主表面に拡散層を形成する工程は、拡散剤111を第1の間隔108を隔てた凸部114間の領域に印刷し(図4参照)、その後熱処理する段階を含むことが好ましい。このような構成により、集電電極直下の領域に高濃度層を選択的に拡散できるので、光電変換効率をより効果的に向上させることができる。また、凸部による段差がガイドとなるため、高濃度層を精度よく形成することができる。
【0042】
上記で説明した太陽電池の製造方法によれば、半導体基板の第1主表面上の第1の間隔を隔てた凸部間の領域に導電性ペーストを印刷し焼成し、集電電極を形成することで、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されるため、電極の部分的な太りを防止することができるので、電極幅を精度よく形成することができ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0043】
次に、本発明の太陽電池について図6を参照しながら、説明する。
【0044】
図6に示す太陽電池10は、半導体基板104の第1主表面116上に平行線状の所定の幅を有する複数の凸部114が設けられ、最隣接する凸部114は第1の間隔108及び第1の間隔108よりも大きい第2の間隔107の2つの間隔を隔てて設けられており、集電電極117が第1の間隔108を隔てた凸部間に設けられている。
【0045】
このように集電電極が第1の間隔を隔てた凸部間に設けられているので、凸部による段差がガイドとなって電極が形成されている。このような太陽電池は、電極形成時における電極の部分的な太りが防止されて作製されている。それにより電極幅が精度よく形成されているため、光電変換効率が向上した太陽電池とすることができる。
【0046】
図6の太陽電池10において、少なくとも第1の間隔108を隔てた凸部114間の領域における基板中のドーパントの表面濃度が、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下であることが好ましい。
【0047】
第1の間隔を隔てた凸部間の領域における基板中のドーパントの表面濃度が上記の範囲であれば、集電電極と半導体基板との接触抵抗を低減することができ、光電変換効率を効果的に向上させることができる。
【0048】
太陽電池10において、凸部114の幅が5μm以上100μm以下であることが好ましい。凸部114の幅が上記の範囲であれば、ガイドとしての段差の機能を十分果たすことができる。また、凸部114の高さが1μm以上20μm以下であることが好ましい。凸部114の高さが上記の範囲であれば、ガイドとしての段差の機能を十分果たすことができる。
【0049】
さらに、凸部114の第1の間隔108が40μm以上150μm以下であり、凸部114の第2の間隔107が0.8mm以上2.5mm以下であることが好ましい。凸部114の第1の間隔108、第2の間隔107が上記の範囲であれば、フィンガー電極の形状に適合した段差とすることができる。
【0050】
次に、本発明を太陽電池の裏面(受光面と反対の面)側に適用した場合(すなわち、図6において第1の主表面16を裏面とした場合)の太陽電池の一例について、図9を参照しながら説明する。
【0051】
図9の太陽電池11は、半導体基板104と、半導体基板104の受光面側に設けられ半導体基板104の導電型と反対の導電型を有するエミッタ層103と、半導体基板104の受光面側に設けられた反射防止膜112と、半導体基板104の受光面側に設けられ反射防止膜112を貫通してエミッタ層103と接触している受光面集電電極101と、半導体基板104の裏面側に設けられ半導体基板104の導電型と同じ導電型を有する裏面電界層106と、半導体基板104の裏面側に設けられた裏面保護膜113と、半導体基板104の裏面側に設けられ、裏面保護膜113を貫通して裏面電界層106と接触している裏面集電電極105とを有している。ここで、図9において下側が太陽電池の裏面(非受光面)に相当している。
【0052】
太陽電池11の裏面には平行線状の凸部114が設けられており、最隣接する凸部114は第1の間隔108及び第1の間隔108より大きい第2の間隔107を隔てて設けられている。すなわち、図9に示すように、裏面に凸部間の間隔が狭い領域と、凸部間の間隔が広い領域が形成された構造となっている。さらに、凸部間の間隔が狭い領域には裏面集電電極105が設けられており、その直下(図9中では直上)には裏面電界層106が設けられている。このような構造により、裏面集電電極105を印刷により形成する際に、両端の凸部114がガイドとなって、電極の太りを防ぐことができ、より均一な線幅を得ることができる。なお、裏面電界層106は裏面全面に形成されていてもよい。
【0053】
次に、図9の太陽電池11の具体的な製造方法を、半導体基板104がn型シリコン基板である場合を例にして説明する。
【0054】
高純度シリコンにリンあるいはヒ素、アンチモンのような第15族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}n型シリコン基板を準備し、基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、ふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングすることにより除去する。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。ここで、基板は必ずしも単結晶シリコンである必要はなく、多結晶シリコンでもかまわない。
【0055】
引き続き、基板表面(両面)にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の受光面における入射光の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10%、温度60〜100℃)中に基板を10分から30分程度浸漬することで作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させてもよい。
【0056】
テクスチャ形成後、基板を塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、又はこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。
【0057】
次に、裏面の基板表面に平行線状の複数の凸部114を形成する。凸部形成にはアルカリ等のエッチング液に浸漬する方法、又は、気相でのエッチング方法等が可能である。いずれの方法を用いるにしても、エッチングマスクの形成が必要となる。エッチングマスクはシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の膜が50〜100nm程度の厚さで形成されたものであれば、マスクとして機能する。シリコン酸化膜は熱酸化法やCVD法等で、シリコン窒化膜はCVD法等で形成できる。エッチングマスクとなる膜を少なくとも裏面全面に形成した後、エッチングペースト又はレーザー等を用いて開口する。開口パターンは、図2に示すように2つの間隔(第1の間隔108、第2の間隔107)をもつ平行線状とし、第1の間隔108は40μm以上150μm以下、第2の間隔107は0.8mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。また、エッチングマスク109の幅は5μm以上、100μm以下が好ましい。エッチングマスク109の幅が5μm以上であれば、次のエッチング工程でエッチングマスク109が除去されることを防止できる。また、エッチングマスク109の幅が100μm以下であれば、後述する裏面のテクスチャを除去する効果が十分得られる。
【0058】
開口したら、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、ふっ酸と硝酸の混酸中に基板を浸漬する等の方法で開口部をエッチングする。アルカリ水溶液を用いる場合は50〜90℃で1〜10分程度浸漬すれば十分である。あるいは、Cl2、CF4、CHF、CBrF3、CH、CHF、C、C、C48、C、SF6、BCl、SiCl、XeFなどのエッチングガス単体、これらの混合ガス、さらにはこれらに酸素や窒素、アルゴンなどを混合した混合ガスのいずれかを導入したチャンバー内に基板を入れ、エッチングすることができる。高温にしたり、高周波電圧を印加するなどの方法でプラズマを形成し、反応を促進させてもよい。
【0059】
エッチング後、エッチングマスク109をふっ酸等で除去し、場合によっては基板洗浄してもよい。以上の処理により、基板の裏面に図3に示すような2つの間隔(第1の間隔108、第2の間隔107)を有する、高さ1〜20μmの凸部114が形成される。裏面のエッチングされた部分はテクスチャが除去され平坦となるため、セル化した際にキャリアの再結合が緩和され、高い光電変換効率が得られるようになる。このように本発明の方法では、テクスチャの除去を凸部形成と同時に行うことができ、単なる凹溝を形成して埋め込み電極とする方法よりも優れている。
【0060】
この半導体基板104に、受光面側にはエミッタ層103、裏面側には裏面電界層106を形成する(図9参照)。エミッタ層103は半導体基板104と逆の導電型(この場合p型)で厚みが0.05〜1μm程度であり、裏面電界層106は基板と同じ導電型(この場合n型)で厚みは0.1〜2μm程度である。また、裏面電界層106は、電極直下は電極との接触抵抗低減という観点から、表面濃度は1019〜1021cm−3程度、非電極領域では表面でのキャリアの再結合緩和という観点から1018〜1019cm−3程度というように濃淡が形成されていると高い光電変換効率が得られる。
【0061】
エミッタ層103の形成には、熱拡散法が好適であり、BBr等を用いた気相拡散法のほか、ホウ素源を含有させた塗布剤を受光面全面に塗布し、950〜1050℃で熱処理する方法でも形成が可能である。
【0062】
裏面電界層106の形成にはオキシ塩化リンを用いた気相拡散法が使用できる。830〜950℃、オキシ塩化リンと窒素および酸素混合ガス雰囲気下で基板を熱処理することで、裏面電界層106が形成される。少なくとも凸部間の間隔が狭い領域110(図3参照)内の基板中のリン表面濃度が1019〜1021cm−3程度であれば、後に形成する電極と良好なオーミックコンタクトが得られる。気相拡散法の他、リンを含有する材料をスピン塗布したり、印刷したりしてから熱処理する方法でもよい。特に、印刷法を用いる場合、印刷製版を調整することにより、図4に示すように凸部間の間隔が狭い領域に収まるように拡散剤111を印刷することができる。こうすると、凸部間の間隔が狭い領域にのみ特に高濃度で拡散させることができ、不要な部分にリン拡散層が形成されにくくなり、太陽電池特性が向上する。
【0063】
拡散層(エミッタ層103及び/又は裏面電界層106)形成の後、表面に形成されるガラスをふっ酸などで除去する。
【0064】
次いで、受光面の反射防止膜112の形成を行う。反射防止膜112としては、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等が利用できる。シリコン窒化膜の場合はプラズマCVD装置を用い約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH)およびアンモニア(NH)を混合して用いることが多いが、NHの代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、さらには、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。シリコン酸化膜の場合は、CVD法でもよいが、熱酸化法により得られる膜の方が高いセル特性が得られる。
【0065】
裏面にも、裏面保護膜113としてシリコン窒化膜やシリコン酸化膜が利用できる。膜厚は50〜250nmとするのが好適である。受光面側と同様に、シリコン窒化膜の場合はCVD法、シリコン酸化膜の場合は熱酸化法やCVD法で形成することが可能である。
【0066】
次いで、裏面集電電極105を、例えばスクリーン印刷法で、先に形成しておいた第1の間隔108で隔てられた凸部114間に形成する(図5、6参照)。例えば、開口幅30μm以上140μm以下、開口間隔0.8mm以上2.5mm以下の平行線状パターンを有する印刷製版を用意しておき、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストを印刷する。凸部114がAgペーストのガイドとなって、Agペーストが不必要に広がらなくなる。すなわち、安定して30μm以上140μm以下のフィンガー電極線幅を得ることができる。
【0067】
受光面集電電極101の形成においても、スクリーン印刷法を用いAgペーストを印刷する。
【0068】
以上の受光面集電電極101、裏面集電電極105の印刷の後、熱処理(焼成)により裏面保護膜113又は受光面集電電極101にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、集電電極と基板とを導通させる。なお、裏面集電電極105及び受光面集電電極101の焼成は別々に行うことも可能である。焼成は、通常、700〜850℃の温度で5〜30分間処理することで行われる。
【0069】
以上、n型シリコン基板の場合を例に述べたが、p型シリコン基板の場合はエミッタ層103の形成にリン、ヒ素、アンチモン等、裏面電界層106の形成にホウ素、ガリウム、アルミニウム等を用いればよく、この場合もn型シリコン基板の場合と同様に裏面のフィンガー電極抵抗低減効果は得られ、これにより、光電変換効率は向上する。
【0070】
次に、本発明を受光面側に適用した場合(すなわち、図6において第1の主表面16を受光面とした場合)の太陽電池の一例について、図10を参照しながら説明する。
【0071】
図10の太陽電池12は、半導体基板104と、半導体基板104の受光面側に設けられ半導体基板104の導電型と反対の導電型を有するエミッタ層103と、半導体基板104の受光面側に設けられた反射防止膜112と、半導体基板104の受光面側に設けられ反射防止膜112を貫通してエミッタ層103と接触している受光面集電電極101と、半導体基板104の裏面側に設けられた裏面集電電極105とを有している。ここでは、裏面集電電極105を裏面全体に形成した場合を示している。ここで、図10において上側が太陽電池の受光面に相当している。
【0072】
図10の太陽電池12の受光面には平行線状の凸部114が設けられており、最隣接する凸部114は第1の間隔108及び第1の間隔108より大きい第2の間隔107を隔てて設けられている。すなわち、図10に示すように、受光面側の基板表面に、凸部間の間隔が狭い領域と、凸部間の間隔が広い領域とが形成された構造となっている。さらに、凸部間の間隔が狭い領域には受光面集電電極101が設けられている。受光面集電電極101を印刷して形成する際、両端の凸部114がガイドとなって、電極の太りを防ぐことができ、均一な線幅を得ることができる。
【0073】
次に、図10の太陽電池12の具体的な製造方法を、半導体基板104がp型シリコン基板の場合を例にして説明する。
【0074】
高純度シリコンにホウ素又はガリウムのような第13族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}p型シリコン基板を準備し、基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、ふっ酸と硝酸の混酸等を用いてエッチングする。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。基板は必ずしも単結晶シリコンである必要はなく、多結晶シリコンでもかまわない。
【0075】
次に、受光面の基板表面に平行線状の複数の凸部114を形成する。凸部形成にはアルカリ等のエッチング液に浸漬する方法、又は、気相でのエッチング方法等が可能である。いずれの方法を用いるにしてもエッチングマスクの形成が必要となる。
【0076】
エッチングマスクはシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の膜が50〜100nm程度の厚さで形成されたものであればマスクとして機能する。シリコン酸化膜は熱酸化法やCVD法等で、シリコン窒化膜はCVD法等で形成できる。膜を少なくとも受光面全面に形成した後、エッチングペーストないしレーザー等を用いて開口する。開口パターンは、図2に示すように2つの間隔(第1の間隔108及び第2の間隔107)をもつ平行線状とし、第1の間隔108は40μm以上150μm以下、第2の間隔107は0.8mm以上2.5mm以上とするのが好ましい。
【0077】
開口したら、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、ふっ酸と硝酸の混酸、又は、前述のようにCF等の気相中に基板を曝すことで、開口部をエッチングする。アルカリ水溶液を用いる場合は、50〜90℃で1〜10分程度浸漬すれば十分である。エッチング後、エッチングマスクをふっ酸等で除去し、場合によっては基板洗浄してもよい。以上の処理により、受光面表面に図3に示すような2つの間隔(第1の間隔108及び第2の間隔107)を有する凸部114が形成される。
【0078】
引き続き、基板表面(両面)にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10%、温度60〜100℃)中に10分から30分程度浸漬することで作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させてもよい。上記のエッチング工程(凸部形成工程)を、このテクスチャエッチング工程と兼用させることも可能である。
【0079】
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。
【0080】
次に、基板の受光面側にエミッタ層103を形成する(図10参照)。裏面電界層は公知の方法により形成してもしなくてもよい。エミッタ層103は基板と逆の導電型(この場合n型)で厚みが0.05〜1μm程度である。また、エミッタ層103は、受光面集電電極101直下は電極との接触抵抗低減という観点から、基板表面濃度は1019〜1021cm−3程度、非電極領域では表面でのキャリアの再結合緩和という観点から、基板表面濃度は1018〜1019cm−3程度というように濃淡が形成されていると、高い光電変換効率が得られる(所謂選択エミッタ)。
【0081】
エミッタ層103の形成にはオキシ塩化リンを用いた気相拡散法が使用できる。830〜950℃、オキシ塩化リンと窒素および酸素混合ガス雰囲気下で基板を熱処理することで形成される。少なくとも間隔の狭い方の凸部間の領域110(図3参照)内の基板中のリン表面濃度が1019〜1021cm−3程度であれば、後に形成する受光面集電電極101と良好なオーミックコンタクトが得られる。気相拡散法の他、リンを含有する材料をスピン塗布したり、印刷したりしてから熱処理する方法でもよい。特に、印刷法を用いる場合には、受光面全面にエミッタ層103を形成した後に、図4に示すように間隔の狭い方の凸部間に収まるように拡散剤111を印刷することができる。こうすると、間隔の狭い方の凸部間にのみ特に高濃度で拡散させることができるため、太陽電池特性が向上する。
【0082】
拡散層(エミッタ層103、及び/又は、裏面電界層)形成の後、表面に形成されるガラスをふっ酸等で除去する。
【0083】
次いで、受光面に反射防止膜112を形成する。反射防止膜112としては、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜が利用できる。シリコン窒化膜の場合はプラズマCVD装置を用い約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH)およびアンモニア(NH)を混合して用いることが多いが、NHの代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、さらには、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。シリコン酸化膜の場合は、CVD法でもよいが、熱酸化法により得られる膜の方が高いセル特性が得られる。
【0084】
次いで、裏面には例えばアルミニウムを含むペーストをスクリーン印刷法等で印刷し乾燥する。受光面には、受光面集電電極101を、例えばスクリーン印刷法で、先に形成しておいた間隔が狭い方の凸部間に形成する(図5参照)。例えば、開口幅30μm以上140μm以下、開口間隔0.8mm以上2.5mm以下の平行線パターンを有する印刷製版を用意しておき、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストを印刷する。このとき、凸部114がペーストのガイドとなって、不必要に広がらなくなる。すなわち、安定して30μm以上140μm以下の受光面側のフィンガー電極幅を得ることができる。
【0085】
上記の受光面集電電極101及び裏面集電電極105印刷の後、熱処理(焼結)により反射防止膜112にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極と基板を導通させる。なお、裏面集電電極105及び受光面集電電極101の焼成は別々に行うことも可能である。焼成は、通常700〜850℃の温度で5〜30分間処理することで行われる。
【0086】
以上、p型シリコン基板の場合を例に述べたが、n型シリコン基板の場合はエミッタ層103の形成にホウ素、ガリウム、アルミニウム等、必要に応じて裏面電界層の形成にリン、ヒ素、アンチモン等を用いればよく、この場合もp型シリコン基板の場合と同様に受光面のフィンガー電極抵抗低減効果が得られ、光電変換効率は向上する。
【0087】
次に、バスバー電極の形成方法について、図7、8を参照しながら説明する。
【0088】
図7は、凸部上にバスバー電極を設ける場合を説明するための平面図である。まず、第1の間隔108、及び、第1の間隔108より大きい第2の間隔107を有する凸部114を平行線状に形成する(図7(a)参照)。次に第1の間隔108を隔てた凸部114間にフィンガー電極118を印刷・焼成により形成するとともに、異なるフィンガー電極118を電気的に接続するためのバスバー電極119を印刷・焼成により形成する(図7(b)参照)。図7において、バスバー電極119は凸部114上に形成される。
【0089】
図8は、凸部上にバスバー電極を設けない場合を説明するための平面図である。まず、第1の間隔108、及び、第1の間隔108より大きい第2の間隔107を有する凸部114を平行線状に形成する。このとき、バスバー電極119が通過する領域には凸部を形成しない(図8(a)参照)。次に第1の間隔108を隔てた凸部114間にフィンガー電極118を印刷・焼成により形成するとともに、異なるフィンガー電極118を電気的に接続するためのバスバー電極119を印刷・焼成により形成する。図8においては、バスバー電極119は凸部114のない領域上に形成される。図8に示す形成方法によれば、図7の場合と比較して、平坦性の良好なバスバー電極119を形成することができる。図7図8のいずれの場合においても、フィンガー電極とバスバー電極は同時に印刷・焼成により形成してもよく、別の工程により形成してもよい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
裏面側に本発明を適用した場合の太陽電池を、n型シリコン基板を用いて作製した。まず、厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmの、リンドープ{100}n型アズカットシリコン基板を8枚準備した。この基板に対し熱濃水酸化カリウム水溶液により処理を行ってダメージ層を除去後、72℃の水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬しテクスチャ形成を行い、引き続き75℃に加熱した塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。
【0091】
次いで、1000℃の酸素雰囲気下3時間熱処理することで基板の両面に熱酸化膜をエッチングマスクとして形成した。次いで、基板の裏面にレーザーを用いて熱酸化膜を平行線状に開口した。このとき、最隣接する熱酸化膜の間隔が1.6mmと80μmとなるようにし、熱酸化膜の残し幅は20μmとした。引き続き、温度80℃、濃度22%の水酸化カリウム溶液中に浸漬し、開口部のみをエッチングし、最隣接する間隔が1.6mmと80μmとなる凸部を形成した。エッチングマスクである熱酸化膜をふっ酸により除去した後に、塩酸・過酸化水素水溶液中で洗浄し、乾燥した。
【0092】
次いで、ホウ酸2%水溶液を受光面上にスピン塗布して、1000℃で18分熱処理を行った。4探針法で測定した結果、シート抵抗は50Ωとなった。これによりエミッタ層が形成された。次いで、有機リンを含有するペースト(拡散剤)を、先に形成した間隔の狭い方の凸部間にスクリーン印刷した。印刷後に顕微鏡で観察したところ、ペーストは凸部間に収まり、凸部間からのはみ出しや太りは確認されなかった。これを、890℃で基板の受光面同士を重ね合わせた状態で40分間熱処理し、裏面にリン拡散層(裏面電界層)を選択的に形成した。この後、濃度12%のふっ酸に浸漬することで表面ガラスを除去した。
【0093】
以上の処理の後、プラズマCVD装置を用いてシリコン窒化膜を両面に形成した。膜厚は表裏とも100nmとした。
【0094】
次に、受光集電面電極及び裏面集電電極を形成するために、Agペーストを印刷して乾燥した。裏面のフィンガー電極間隔は1.6mmとし、基板の裏面の狭い方の間隔の凸部間に収まるよう印刷した。印刷後に顕微鏡で観察したところ、Agペーストは凸部間に収まっていてフィンガー電極幅は概ね60μmであり、凸部間からのはみ出しや太りは確認されなかった。
【0095】
作製された図9に示すような太陽電池を用いて、擬似太陽光下で電流電圧特性を測定した。測定された特性値(短絡電流、開放電圧、形状因子、光電変換効率)の平均値を表1に示す。ここで、短絡電流とは太陽電池に接続される抵抗器の抵抗が0Ωの時の単位面積当たりの電流値であり、開放電圧とは太陽電池に接続される抵抗器の抵抗が非常に大きい時の電圧値であり、形状因子(フィルファクター)とは最大発電電力/(短絡電流×開放電圧)×100(%)であり、光電変換効率とは(太陽電池からの出力/太陽電池に入った光エネルギー)×100(%)である。
【0096】
(比較例1)
実施例1と同様にして太陽電池を8枚作製した。ただし、凸部形成は行わず、裏面電界層の選択的な形成も行わず、テクスチャは受光面及び裏面に形成された。作製された太陽電池を用いて、実施例1と同様に擬似太陽光下で電流電圧特性を測定した。測定された特性値の平均値を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1からわかるように、実施例1においては、比較例1と比べて、すべての特性値(短絡電流、開放電圧、形状因子、光電変換効率)において改善が見られた。短絡電流・開放電圧改善は、裏面のフィンガー電極の線幅の均一化が具現化できたことに加え、裏面のテクスチャ除去効果ならびに裏面電界層が選択的に形成されたためと考えられる。形状因子改善は、裏面のフィンガー電極が高アスペクト比で形成されたため、及び、裏面のフィンガー電極直下のリン濃度を高濃度で形成できたためと考えられる。
【0099】
(実施例2)
受光面側に本発明を適用した場合の太陽電池を、p型シリコン基板を用いて作製した。厚さ200μm、比抵抗1.5Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}p型アズカットシリコン基板を8枚準備した。基板に対し、熱濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去した。
【0100】
次いで、1000℃の酸素雰囲気下3時間熱処理することで両面に熱酸化膜をエッチングマスクとして形成した。次いで、基板の受光面にレーザーを用いて熱酸化膜を平行線状に開口した。最隣接する熱酸化膜の間隔が2.0mmと80μmとなるようにし、熱酸化膜の残し幅は20μmとした。引き続き、72℃の水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬し開口部のみにテクスチャ形成を行い、引き続き、ふっ酸に浸漬してエッチングマスクを除去し、75℃に加熱した塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。これにより、エッチングマスク(熱酸化膜)部の部分に凸部が形成されるとともに、エッチングマスク(熱酸化膜)部以外の部分にテクスチャが形成された(すなわち、受光部側に選択的にテクスチャが形成され、裏面側にはテクスチャが形成されなかった)。
【0101】
次に、受光面の全面にn型のエミッタ層を形成した後に、有機リンを含有するペースト(拡散剤)を間隔の狭い凸部間にスクリーン印刷した。印刷後顕微鏡で観察したところ、ペーストは凸部間に収まり、凸部間からのはみ出しや太りは確認されなかった。これを、890℃で受光面同士を重ね合わせた状態で40分間熱処理し、受光面にリン拡散層(エミッタ高濃度層)を形成した。この後、濃度12%のふっ酸に浸漬することで表面ガラスを除去した。
【0102】
以上の処理の後、プラズマCVD装置を用いて受光面に反射防止膜としてシリコン窒化膜を形成した。膜厚は100nmとした。
【0103】
次に、裏面全面にアルミニウムを含有するペーストをスクリーン印刷にて印刷し乾燥させた。一方、受光面にはAgペーストを印刷して乾燥した。受光面側のフィンガー電極の間隔は2.0mmとし、基板の受光面の狭い方の間隔の凸部間に収まるよう印刷した。印刷後に顕微鏡で観察したところ、ペーストは凸部間に収まり、凸部間からのはみ出しや太りは確認されなかった。これを780℃の空気雰囲気下で焼成した。
【0104】
作製された図10に示すような太陽電池を用いて、実施例1と同様に擬似太陽光下で電流電圧特性を測定した。測定された特性値の平均値を表2に示す。
【0105】
(比較例2)
実施例2と同様にして太陽電池を8枚作製した。ただし、凸部形成は行わず、エミッタ高濃度層の形成も行わず、テクスチャは受光面及び裏面に形成された。
【0106】
作製された太陽電池を用いて、実施例1と同様に擬似太陽光下で電流電圧特性を測定した。測定された特性値の平均値を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2からわかるように、実施例2において、比較例2と比べて、すべての特性値において改善が見られた。短絡電流・開放電圧改善は、受光面のフィンガー電極の線幅の均一化が具現化できたことに加え、テクスチャを受光面側のみに選択的に形成されるとともにエミッタ高濃度層が選択的に形成されたためと考えられる。また、形状因子改善は、受光面のフィンガー電極が高アスペクト比で形成されるとともに、受光面のフィンガー電極直下のリン濃度を高濃度で形成できたためと考えられる。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
10、11、12…太陽電池、 101…受光面集電電極、 103…エミッタ層、
104…半導体基板、 105…裏面集電電極、 106…裏面電界層、
107…第2の間隔、 108…第1の間隔、 109…エッチングマスク、
110…間隔の狭い凸部間の領域、 111…拡散剤、 112…反射防止膜、
113…裏面保護膜、 114…凸部(凸部パターン)、 115…導電性ペースト、
116…第1主表面、 117…集電電極、 118…フィンガー電極、
119…バスバー電極、
201…受光面集電電極、 201a…フィンガー電極、 201b…バスバー電極、
202…反射防止膜、 203…エミッタ層、 204…半導体基板、
205…裏面集電電極、 206…裏面電界層、 207…裏面保護膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12