(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、可撓性基板の各デバイス形成領域に有機電子デバイスを形成する場合、複数のデバイス形成領域に渡って第2電極層を形成すれば、第2電極層を形成する工程を短縮できるので、生産性が向上する。しかしながら、製品サイズの有機電子デバイスを切り出すと、複数のデバイス形成領域の配列方向において第2電極層の両端部が露出する。そのため、その第2電極層が水分で腐食し、結果として、有機電子デバイスの性能が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、生産性が向上し、性能低下を抑制できる有機電子デバイスの製造方法基板及び有機電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る有機電子デバイスの製造方法は、可撓性基板に、第1方向に沿って設定される複数のデバイス形成領域のそれぞれに設けられた第1電極層上に有機機能層を形成する有機機能層形成工程と、各上記有機機能層の少なくとも一部を覆うように、上記第1方向において上記複数のデバイス形成領域に渡って第2電極層を上記有機機能層が形成された上記可撓性基板上に形成する第2電極層形成工程と、上記第1方向において、上記デバイス形成領域の境界部と上記有機機能層における機能発揮設計領域との間又は上記境界部上の上記第2電極層を、上記第1方向を横切る第2方向に沿って除去することによって孔部を形成する孔部形成工程と、上記有機機能層を封止する封止部材を、上記孔部の上記機能発揮設計領域側の面を被覆するように上記第2電極層上に設ける封止工程と、を備える。
【0007】
上記製造方法では、デバイス形成領域毎に有機電子デバイスが形成される。そのため、封止工程を実施した後に、可撓性基板を、デバイス形成領域毎に個片化することで、複数の有機電子デバイスが得られる。第2電極層形成工程では、第1方向において上記複数のデバイス形成領域に渡って第2電極層を上記可撓性基板上に形成することから、第2電極層形成工程の時間を短縮できる。その結果、有機電子デバイスの生産性が向上する。第2電極層が上記のように形成されているので、例えば前述したように封止工程の後にデバイス形成領域毎に可撓性基板を個片化した場合、個片化された有機電子デバイスでは、電極層のうち上記第1方向における両端部が露出する。上記製造方法では、孔部形成工程を備えていることで、電極層には上記機能発揮設計領域より外側に孔部が形成されている。そのため、個片化された有機電子デバイスにおいて、仮に、第1方向における第2電極層の両端部で水分による腐食が生じても、その腐食の進行は孔部で停止する。更に、孔部において機能発揮設計領域側の面は封止部材で被覆されているので、その面から第2電極層への水分の浸入も防止されている。そのため、第2電極層のうち機能発揮設計領域上の部分は、第2電極機能部として機能し得るので、上記製造方法では、有機電子デバイスの性能劣化も抑制できる。
【0008】
上記可撓性基板が長尺であり、上記第1方向は、上記可撓性基板の長手方向であり、上記可撓性基板を上記第1方向に搬送しながら上記第2電極層形成工程を実施してもよい。この場合、上記第2電極層を効率的に形成できるので、有機電子デバイスの生産性が更に向上する。
【0009】
上記第2電極層形成工程及び上記孔部形成工程をロールツーロール方式で実施してもよい。
【0010】
上記孔部形成工程では、レーザ光を上記第2電極層に照射し、上記第2電極層を除去することによって上記孔部を形成してもよい。この場合、孔部を形成し易い。特に、可撓性基板が長尺であり、可撓性基板を長手方向に搬送しながら孔部形成工程を実施する場合に有効である。
【0011】
上記封止工程では、上記封止部材の一部が上記孔部内に充填されるように上記封止部材を上記第2電極層上に設けてもよい。これにより、第2電極機能部への腐食をより確実に止められるとともに、第2電極機能部への水分の浸入を防止可能である。
【0012】
上記第2電極層形成工程では、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうちの少なくとも一つを含む第1層を形成する工程と、上記第1層上に、両性金属を含む第2層を形成する工程と、を有してもよい。上記第1層が水分と反応すると、それに応じて第2層が腐食する。よって、上記有機電子デバイスの製造方法は、上記第1層及び第2層を有する第2電極層を形成する場合に一層有効である。
【0013】
上記孔部形成工程では、上記第1方向において、上記有機機能層より外側に上記孔部を形成してもよい。
【0014】
上記孔部形成工程では、上記第1方向において、上記機能発揮領域より外側であって上記有機機能層上に位置するように、上記孔部を形成してもよい。この場合、上記有機機能層内まで延在するように上記孔部を形成してもよい。
【0015】
上記封止工程を経た上記可撓性基板を、上記デバイス形成領域毎に個片化する個片化工程を更に備えてもよい。これにより、互いに別体の有機電子デバイスが得られる。
【0016】
本発明の他の側面に係る有機電子デバイスは、第1端部と、第1方向において上記第1端部と反対側に位置する第2端部とを有する可撓性基板と、上記可撓性基板上に設けられた第1電極層と、上記第1電極層上に設けられた有機機能層と、上記第1端部から上記第2端部に渡って設けられており、上記有機機能層の少なくとも一部を覆う第2電極層と、 上記第2電極層上に設けられており、上記有機機能層を封止する封止部材と、を備え、 上記第2電極層のうち上記有機機能層上の少なくとも一部が第2電極機能部であり、上記第1方向において上記第2電極機能部の外側で且つ上記第2電極機能部の両側にそれぞれ上記第1方向を横切る第2方向に沿って上記第2電極層を延在する孔部が上記第2電極層に形成されており、上記封止部材は、上記封止部材の上記第2方向における端部から上記第1電極層の一部が露出するように上記第2電極層上に設けられているとともに、上記孔部の上記第2電極機能部側の面を被覆している。
【0017】
上記有機電子デバイスでは、第2電極層が、第1方向において可撓性基板の上記第1端部から上記第2端部に渡って設けられているので、有機電子デバイスを製造する際、第1方向において第2電極層を形成し易く、生産性が向上する。上記第2電極層の構成では、第2電極層の第1方向における両端部は露出している。このように、第2電極層の両端部が露出していても、有機電子デバイスでは、第2電極層には、第1方向において第2電極機能部の外側に孔部が形成されているので、第2電極層の上記両端部で水分による腐食が生じても、その腐食の進行は孔部で停止するので、第2電極機能部に達しない。更に、孔部の第2電極機能部側の面は封止部材で被覆されているので、その面から第2電極層への水分の浸入も防止されている。そのため、第2電極機能部はその機能を維持できるので、有機電子デバイスの性能劣化も抑制できる。
【0018】
上記孔部は、上記第1方向において、上記有機機能層より外側に形成されていてもよい。 上記孔部は、上記有機機能層内に延在していてもよい。上記孔部内に上記封止部材の一部が充填されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生産性が向上し、性能劣化を抑制できる有機電子デバイスの製造方法基板及び有機電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。有機電子デバイスとしては、例えば有機ELデバイス、有機太陽電池、有機フォトディテクタ、有機センサーなどが挙げられる。以下に説明する実施形態では、断らない限り、有機電子デバイスは、ボトムエミッション型の有機ELデバイスである。ただし、有機電子デバイスはトップエミッション型の有機ELデバイスでもよい。
【0022】
図1は、一実施形態に係る有機ELデバイスの製造方法に使用する長尺の可撓性基板10の平面図である。本明細書において、長尺の可撓性基板10とは、一方向に延在しており、その延在方向(長手方向)の長さが、延在方向に直交する方向(幅方向)の長さより長く、可撓性を有する基板を指す。ここで、可撓性とは、基板に所定の力を加えても剪断したり破断したりすることがなく、基板を撓めることが可能な性質である。説明の便宜のため、可撓性基板10の長手方向をX方向(第1方向)と称し、長手方向に直交する方向をY方向(第2方向)とも称す。
【0023】
可撓性基板10は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する。可撓性基板10の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下であり、フィルム状を呈し得る。
【0024】
可撓性基板10は、例えば、プラスチックフィルムである。可撓性基板10の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等を含む。
【0025】
可撓性基板10の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートがより好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
可撓性基板10の表面10a上には、ガス、水分などをバリアするバリア層(特に、水分をバリアするバリア層)が配置されていてもよい。
【0027】
有機ELデバイスの製造では、長尺の可撓性基板10の長手方向において複数のデバイス形成領域DAを仮想的に設定し、各デバイス形成領域DA上に有機ELデバイスの構成要素を形成する。可撓性基板10にバリア層が形成されている形態では、バリア層上に、有機ELデバイスの構成要素を形成する。
図1では、X方向に互いに接するように設定した複数のデバイス形成領域DAを例示している。各デバイス形成領域DAは、境界部を有している。境界部とは、デバイス形成領域DAの外縁である。
図1の場合、X方向におけるデバイス形成領域DAの境界部は、隣接する2つのデバイス形成領域DAの境界部でもある。複数のデバイス形成領域DAは、互いに離散的に設定されてもよい。離散的に複数のデバイス形成領域DAを設定している場合、X方向におけるデバイス形成領域DAの境界部は、当該デバイス形成領域DAとその外側の領域との境界部である。
【0028】
図2は、一実施形態に係る有機ELデバイスの製造方法であって、ロールツーロール方式を利用した有機ELデバイスの製造方法の概念図である。ロールツーロール方式で有機ELデバイスを製造する場合、ロール状の可撓性基板10を繰出し部12Aにセットして可撓性基板10を繰り出し、可撓性基板10を巻取り部12Bに向けて搬送ロールRで搬送しながら、陽極層(第1電極層)形成工程S01、有機機能層形成工程S02及び電極層(第2電極層)形成工程S03、孔部形成工程S04及び封止工程S05を順に実施した後、可撓性基板10を、巻取り部12Bでロール状に巻き取る。
【0029】
繰出し部12A、巻取り部12B及び搬送ロールRは、可撓性基板10の搬送機構の一部を構成している。搬送機構は、その他、張力調整機構など公知の構成要素を備え得る。ロールツーロール方式で搬送される可撓性基板10には、可撓性基板10が垂れたり破断したりしない範囲で長手方向に所望の張力を加えることができる。なお、各工程の間に巻取り工程や、巻出し工程を設けることもできる。さらに、各工程の後に一旦巻き取って保管し、その後、改めて巻出して次の工程を行うこともできる。
【0030】
[陽極層形成工程]
陽極層形成工程S01では、
図3に示したように、可撓性基板10のX方向に沿って仮想的に設定される複数のデバイス形成領域DAのそれぞれに陽極層14を形成する。
【0031】
陽極層14には、光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。陽極層14は、導電体(例えば金属)からなるネットワーク構造を有してもよい。陽極層14の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定され得る。陽極層14の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0032】
陽極層14の材料としては、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等が挙げられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズが好ましい。陽極層14は、例示した材料からなる薄膜として形成され得る。陽極層14の材料には、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物を用いてもよい。この場合、陽極層14は、透明導電膜として形成され得る。
【0033】
陽極層14は、ドライ成膜法、メッキ法、塗布法などにより形成され得る。ドライ成膜法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などが挙げられる。塗布法としては、インクジェット印刷法、スリットコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法及びノズル印刷法等が挙げられる。
【0034】
[有機機能層形成工程]
有機機能層形成工程S02では、
図4に示したように、陽極層14上に有機機能層16を形成する。有機機能層16は、陽極層14の一部(
図4に示した形態では、可撓性基板10の縁部10b側の端部)を露出するように陽極層14上に形成される。有機ELデバイスでは、有機機能層16のうち、陽極層14と、後述する電極層20の陰極機能部24とで挟まれている領域が、発光する機能発揮領域(発光領域)である。
図4のハッチングは、有機機能層16において、機能発揮領域となるべき機能発揮設計領域A1を示している。
【0035】
発光層は、光(可視光を含む)を発する機能を有する機能層である。発光層は、通常、主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物、又はこの有機物とこれを補助するドーパント材料とから構成される。従って、発光層は有機層である。ドーパント材料は、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。上記有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層の厚さは、例えば2nm〜200nmである。
【0036】
主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料及び高分子系材料が挙げられる。
【0037】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などが挙げられる。
【0038】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、又はAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体が挙げられ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などが挙げられる。
【0039】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0040】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどが挙げられる。
【0041】
発光層は、陽極層で例示した方法と同様の方法で形成される。可撓性基板10を搬送しながら発光層を形成する場合、塗布法、特に、インクジェット印刷法が生産性の向上を図るために好ましい。
【0042】
有機機能層16の構造は、単層構造であってもよいし、発光層の他、種々の機能層を含む多層構造であってもよい。有機機能層の層構成の例を以下に示す。下記層構成の例では、陽極層14に対する配置関係を示すために陽極層を括弧書きで示している。
(a)(陽極層)/発光層
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層
(d)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層
(g)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
(h)(陽極層)/発光層/電子注入層
(i)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層
記号「/」は、記号「/」の両側の層同士が接合していることを意味している。上記構成例(a)は、有機機能層16の構造が単層構造の場合の例である。
【0043】
有機機能層16が有する発光層以外の機能層(例えば、正孔輸送層、電子輸送層など)の材料には公知の材料が用いられ得る。有機機能層16が有する機能層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、電気伝導度、耐久性等を考慮して設定される。有機機能層16が有する発光層以外の機能層の形成方法は、発光層の場合と同様である。
【0044】
[電極層形成工程]
電極層形成工程S03は、
図5及び
図6に示したように、電極層20を可撓性基板10及び有機機能層16上に形成する。具体的には、X方向において各陽極層14と絶縁された状態で且つ各有機機能層16の少なくとも一部を覆うように、複数のデバイス形成領域DAに渡って電極層20を可撓性基板10及び有機機能層16上に形成する。本実施形態では、可撓性基板10の縁部10c側において電極層20が可撓性基板10の表面10aに接するように、電極層20を形成する。
【0045】
電極層20は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物のうちの少なくとも一つを含む第1層(下層)20Aと両性金属を含む第2層(上層)20Bとを有し、電極層形成工程S03は、下層20Aを形成する下層形成工程と、下層20A上に上層20Bを形成する上層形成工程とを有する。
【0046】
下層形成工程では、各陽極層14と絶縁された状態で且つ各有機機能層16を覆うように、複数のデバイス形成領域DAに渡って下層20Aを可撓性基板10上に形成する。本実施形態では、可撓性基板10の縁部10c側において可撓性基板10の表面10aに接するように、下層20Aを形成する。下層20Aは、例えば真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などのドライ成膜法で形成され得る。下層20Aは、塗布法で形成されてもよい。
【0047】
下層20Aの材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一つを含む。アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物とは、それぞれアルカリ金属元素を含む化合物、及びアルカリ土類金属元素を含む化合物であり、例えば、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物等が挙げられる。下層20Aの材料は、具体的には、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)、リチウム(Li)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF)、酸化バリウム(BaO)である。下層20Aの厚さの例は、0.2nm〜20nmであり、導電性制御の観点からは1nm〜5nmが好ましい。
【0048】
上層形成工程では、複数のデバイス形成領域DAに渡って下層20A上に上層20Bを形成する。本実施形態では、上層20Bを、Y方向において上層20Bの一方の端部(可撓性基板10の縁部10b側の端部)が対応する下層20Aの一方の端部と一致するとともに、上層20Bの他方の端部(可撓性基板10の縁部10c側の端部)が対応する下層20Aの他方の端部を覆うように形成する。上層20Bを、Y方向において上層20Bの一方の端部(可撓性基板10の縁部10b側の端部)が対応する下層20Aの一方の端部を覆うように形成するとともに、上層20Bの他方の端部(可撓性基板10の縁部10c側の端部)が対応する下層20Aの一方の端部と一致するように形成してもよい。上層20Bは、例えば真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などのドライ成膜法で形成され得る。上層20Bは、塗布法で形成されてもよい。
【0049】
上層20Bの材料は、アルカリ性水溶液と反応する両性金属を含む。両性金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、スズ(Sb)である。上層20Bの材料は、水分による影響を受けにくい材料、かつ可視光の反射率の高い金属、例えば、アルミニウムがより好ましい。上層20Bの厚さの例は、30nm〜5000nmであり、光反射の観点及び生産性の観点から80nm〜300nmが好ましく、90nm〜200nmがさらに好ましい。
【0050】
[孔部形成工程]
孔部形成工程S04では、
図7に示したように、X方向において、デバイス形成領域DAの境界部(デバイス形成領域DAの外縁)と、有機機能層16の機能発揮設計領域A1との間の電極層20をY方向に沿って、電極層20の一方の端部から他方の端部に渡って除去することで孔部22を形成する。孔部22の形成時、電極層20の厚さ方向においては、その厚さ方向における電極層20の両面間にわたって電極層20を除去する。すなわち、厚さ方向において電極層20を貫通するように孔部22を形成する。これにより、各デバイス形成領域DAには、X方向において機能発揮設計領域A1の両側にそれぞれ孔部22が形成される。
【0051】
孔部22は、例えば可撓性基板10の搬送経路上に設けられたレーザ光源からレーザ光を電極層20に照射して、そのレーザ光の照射領域内の電極層20を除去することで形成され得る。レーザ光の波長は、電極層20(具体的には、上層20B及び下層20A)を除去できる波長であればよい。孔部22の形成方法は、レーザ光を利用した方法に限定されない。
【0052】
孔部22が形成された電極層20のうち、各デバイス形成領域DA上における一対の孔部22の間の部分が、有機ELデバイスにおいて陰極として機能する陰極機能部24である。よって、孔部形成工程S04により、陰極機能部24が得られる。
【0053】
[封止工程]
封止工程S05では、
図8に示したように、孔部22が形成された電極層20上に、封止部材26を設け、有機機能層16を封止する。より詳細には、封止工程S05では、可撓性基板10の縁部10b(
図1、
図4及び
図5参照)側において陽極層14の一部が封止部材26から露出するとともに、可撓性基板10の縁部10c(
図1、
図4及び
図5参照)側において電極層20の一部が封止部材26から露出し、孔部22の機能発揮設計領域A1側の面を被覆するように封止部材26を電極層20上に設ける。封止部材26は、水分による有機ELデバイスの劣化を防止するための部材であり、封止基材26Aと、接着層26Bと、樹脂フィルム26Cとを有する。
【0054】
封止基材26Aは、水分バリア機能を有する。封止基材26Aは、ガスバリア機能を有してもよい。封止基材26Aの例としては、金属箔、透明なプラスチックフィルムの片面又はその両面にバリア機能層を形成したバリアフィルム、或いはフレキシブル性を有する薄膜ガラス、プラスチックフィルム上にバリア性を有する金属を積層させたフィルム等が挙げられる。封止基材26Aの厚さの例は、10μm〜300μmである。金属箔としては、バリア性の観点から、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔が好ましい。封止基材26Aが金属箔である場合、金属箔の厚さとしては、ピンホール抑制の観点から厚い程好ましいが、フレキシブル性の観点も考慮すると10μm〜50μmが好ましい。
【0055】
接着層26Bは、封止基材26Aの一方の面に積層されている。接着層26Bは、有機ELデバイスにおける封止部材26で封止すべき部分を埋設可能な厚さを有していればよい。接着層26Bの厚さの例は、5μm〜100μmである。
【0056】
接着層26Bの材料の例は、光硬化性又は熱硬化性のアクリレート樹脂、光硬化性又は熱硬化性のエポキシ樹脂等が挙げられる。その他一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリブタジエンフィルム等の熱融着性フィルムを接着層26Bとして使用できる。熱可塑性樹脂も接着層26Bの材料に使用でき、例えば、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー等が挙げられる。
【0057】
接着層26B内に、吸湿性の微粒子(接着層26Bの厚みよりも小さい)が含まれていてもよい。吸湿性の微粒子としては、例えば、水分と常温で化学反応を起こす金属酸化物、水分を物理吸着するゼオライトが挙げられる。
【0058】
樹脂フィルム26Cは、封止基材26Aの他方の面(接着層26Bに接する面と反対側の面)上に積層されている。樹脂フィルム26Cの材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)などが挙げられる。
【0059】
封止工程S05では、長尺の封止部材26をその長手方向に搬送しながら、搬送されている可撓性基板10に貼合する。具体的には、接着層26Bが電極層20と対向し、封止部材26の厚さ方向から見た場合に、Y方向において、陽極層14及び電極層20の一部が封止部材26から露出するように、長尺の封止部材26を可撓性基板10に位置合わせする。その状態で、封止部材26と可撓性基板10とを封止部材26の厚さ方向に加圧及び加熱して、封止部材26を、可撓性基板10に貼合することで、有機機能層16を封止する。このような封止工程S05では、
図8に示したように、孔部22内に接着層26Bが充填され、孔部22の機能発揮設計領域A1側の面が被覆される。
【0060】
図8では、樹脂フィルム26Cを備えた封止部材26を例示しているが、封止部材26は、封止基材26Aと、接着層26Bとを有していればよい。
【0061】
封止工程S05を経ることで、
図8に示したように、デバイス形成領域DA毎に、有機ELデバイス28が得られる。よって、例えば、封止工程S05を経た可撓性基板10を、デバイス形成領域DA毎に個片化する個片化工程を実施することで、個片化された有機ELデバイス28が得られる。通常、デバイス形成領域DAは、製品サイズに設定されるので、上記個片化工程を備える形態では、製品サイズの有機ELデバイス28が得られる。個片化工程は、例えば封止工程S05を経た可撓性基板10を搬送しながら、各デバイス形成領域DAの境界部(外縁)を分断線として可撓性基板10を断裁すればよい。以下、説明の便宜のため、製品サイズの有機ELデバイス28を有機ELデバイス28Aと称す。
【0062】
図9は、個片化工程を経て得られた有機ELデバイスの構成を概略的に示す断面図である。
図9は、
図10のIX−IX線に沿った断面図に対応する。
図10は、
図9のX−X線に沿った断面図である。
図9及び
図10中のX方向及びY方向は、製造方法の説明で使用したX方向及びY方向と同様である。
【0063】
有機ELデバイス28Aは、可撓性基板10と、可撓性基板10上に順に設けられた陽極層(第1電極層)14、有機機能層16、電極層(第2電極層)20及び封止部材26と、を備える。電極層20は陰極機能部24を含む。有機ELデバイスの製造方法の説明において、可撓性基板10、陽極層14、有機機能層16、電極層20及び封止部材26の構成を説明していることから、それらの説明を適宜省略しながら、有機ELデバイス28Aを説明する。
【0064】
図9に示したように、有機ELデバイス28Aが有する可撓性基板10は、X方向において、端部(第1端部)10dと、端部10dと反対側に位置する端部(第2端部)10eを有する。電極層20及び封止部材26それぞれのX方向における両端部は露出している。
【0065】
電極層20は陰極機能部24を有しており、X方向において陰極機能部24の外側で且つ陰極機能部24の両側にそれぞれY方向に沿って延在した一対の孔部22が形成されている。これにより、電極層20のうち、陰極機能部24と残部(X方向において孔部22より外側の部分)とは、孔部22により分離されている。また、孔部22のうち陰極機能部24側の面は封止部材26で被覆されている。
【0066】
図10に示したように、陽極層14の端部14a及び電極層20の端部20aは、Y方向において、封止部材26から反対側に露出している。陽極層14のうち封止部材26からの露出領域は、陽極層14を外部接続するための端子部に相当する。電極層20の端部20aが封止部材26から露出しているため、陰極機能部24における対応する端部24aも露出している。陰極機能部24において封止部材26からの露出領域は陰極機能部24を外部接続する端子部に相当する。
【0067】
有機ELデバイス28Aでは、陽極層14及び陰極機能部24の上記端子部(封止部材26からの露出領域)を介して、陽極層14及び陰極機能部24に電圧を印加することで、有機機能層16のうち、可撓性基板10の厚さ方向において、陽極層14と陰極機能部24とで挟まれた領域である機能発揮領域A(機能発揮設計領域A1)で発光が生じる。
【0068】
上記有機ELデバイスの製造方法では、電極層20を、複数のデバイス形成領域DAに渡ってストライプ状に形成しているため、ロールツーロール方式で可撓性基板10を搬送しながら電極層20を効率的に形成できる。例えば、ロールツーロール方式で可撓性基板10を搬送しながら連続的に電極層20を形成可能である。その結果、有機ELデバイス28の生産性が向上する。また、例えばドライ成膜法で電極層20を形成する場合、可撓性基板10の縁部10b及び縁部10c近傍をX方向に延在するマスクで遮蔽することで、上記のように電極層20を連続的に形成できるので、例えばY方向においても遮蔽領域を形成するようにマスクを形成する場合より、遮蔽用のマスクの形成も容易である。
【0069】
デバイス形成領域DAで可撓性基板10を個片化して得られる個別の有機ELデバイス28Aでは、
図9に示したように、X方向における電極層20の両端部は、封止部材26で封止されずに露出している。そのため、電極層20が水分によって腐食する場合がある。特に、電極層20が例示した材料を有する下層20A及び上層20Bを有する構成である場合、下層20Aは水分に反応し易く、下層20Aが水分に反応して生じた塩基性物質(アルカリ物質)で、上層20Bが溶け、上層20Bの腐食が進行する。
【0070】
仮に、電極層20に孔部22が形成されていないと、上記電極層20の露出した両端部からの腐食が、陰極機能部24に達し、陰極機能部24の陰極としての機能が損なわれる。その結果、有機ELデバイスの性能が劣化し、場合によっては、発光が生じなくなる。
【0071】
本実施形態の有機ELデバイスの製造方法では、電極層形成工程S03の後に、孔部形成工程S04を備え、電極層20に孔部22を形成している。この孔部22によって、電極層20のうち、陰極機能部24と、X方向における孔部22より外側の部分とが分離されている。そのため、前述したように、X方向における電極層20の両端部から水分による腐食が進行しても、孔部22によって腐食進行が止められるので、陰極機能部24の腐食を防止できる。更に、孔部22の機能発揮設計領域A1側の面は封止部材26で被覆されているので、孔部22によって電極層20が分離されていても、その孔部22から電極層20への水分の浸入も防止できる。その結果、有機ELデバイス28Aの性能劣化を抑制できる。
【0072】
有機ELデバイス28Aでは、Y方向において、陰極機能部24の一部は外部接続用の端子部として、封止部材26から露出している。しかしながら、
図10に示したように、下層20Aのうち可撓性基板10に接している部分の端部は上層20Bで覆われている。そして、上層20B自体は水分による腐食がほとんど生じにくいので、陰極機能部24の端子部の水分による腐食及びそれに伴う陰極機能部24の腐食も防止されている。また、
図10に示したように、下層20Aの端部が封止部材26の端部よりも内側にある形態では、露出している上層20Bにピンホール等が内在しており、該ピンホール等から水分が浸入したとしても、上層20Bの腐食を防ぐことができる。
【0073】
電極層20が、例示した材料を有する下層20A及び上層20Bを有する形態では、下層20Aは水分と反応し易い。下層20Aが水分と反応すると、それに応じて上層20Bが腐食する。よって、上記有機電子デバイスの製造方法は、電極層20が、例示した下層20A及び上層20Bを有する形態に対して有効である。
【0074】
孔部22に封止部材26の一部が充填されている形態では、X方向における電極層20の両端部からの腐食を孔部22の位置でより確実に停止できるとともに、孔部22からの陰極機能部24への水分の浸入を防止できる。
【0075】
以上、本発明の種々の実施形態及び変形例を説明したが、本発明は、例示した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0076】
例えば、孔部形成工程S04では、電極層20のうち、X方向にデバイス形成領域DAの境界部と機能発揮設計領域A1との間において有機機能層16より外側の位置に孔部22を形成する形態を説明した。しかしながら、所望の発光領域(機能発揮領域)を確保できれば、有機機能層16上に孔部22を形成してもよいし、X方向に隣接する機能発揮設計領域A1の間であって上記境界部上に(換言すれば、境界部をまたいで)孔部22を形成してもよい。
【0077】
図11は、X方向において、機能発揮設計領域A1より外側であって有機機能層16上に孔部22を形成している場合の一例を示す図面である。この場合、機能発揮設計領域A1をより広く確保するため、孔部22は、X方向において有機機能層16の端部近傍に形成されていることが好ましい。
図11に示した例では、孔部22は、有機機能層16内まで延在している。具体的には、孔部22は有機機能層16も貫通している。この形態では、孔部22の位置が違う点以外は有機ELデバイス28(28A)と同様の構成を有する有機ELデバイスが製造される。電極層20のうち、X方向において2つの孔部22の間の領域が陰極機能部24である。陰極機能部24は、孔部22によって電極層20のうち孔部22より外側の部分と分離されているので、電極層20の露出端部の水分による腐食は陰極機能部24に達しない。よって、
図11に示したように孔部22を形成する孔部形成工程S04を備える有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスは、上記実施形態で説明した有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスの場合と同様の作用効果を有する。
【0078】
図12は、X方向において、機能発揮設計領域A1より外側であって有機機能層16上に孔部22を形成している場合の他の例である。
図12に示したように、孔部22は、有機機能層16内に延在していなくてもよい。この場合も、
図12に示したように孔部22を形成する孔部形成工程S04を備える有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスは、上記実施形態で説明した有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスの場合と同様の作用効果を有する。
【0079】
図13は、X方向におけるデバイス形成領域DAの境界部上に孔部22を形成する形態の一例を示す図面である。
図13に示したように、X方向における孔部22の幅は、X方向において隣接する有機機能層16の間の幅より狭くてもよい。この形態では、封止工程S05を経ることで、X方向における電極層20の両端部は封止部材26で封止される。これにより、上記両端部の水分による腐食自体を防止でき、陰極機能部24も腐食されない。よって、
図13に示したように孔部22を形成する孔部形成工程S04を備える有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスは、上記実施形態で説明した有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスの場合と同様の作用効果を有する。
【0080】
図14は、X方向におけるデバイス形成領域DAの境界部上に孔部22を形成する形態の他の例を示す図面である。
図14に示したように、X方向における孔部22の幅は、X方向に隣接する陽極層14の間の幅と同じでもよい。この形態でも、封止工程S05を経ることで、X方向における電極層20の両端部は封止部材26で封止される。これにより、上記両端部の水分による腐食自体を防止でき、陰極機能部24も腐食されない。よって、
図14に示したように孔部22を形成する孔部形成工程S04を備える有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスは、上記実施形態で説明した有機ELデバイスの製造方法及びそれにより製造された有機ELデバイスの場合と同様の作用効果を有する。
【0081】
図13及び
図14に例示したように、X方向におけるデバイス形成領域DAの境界部上に孔部22を形成する形態では、孔部22の幅は、所望の機能発揮領域A(機能発揮設計領域A1)を確保できれば、X方向に隣接する陽極層14の間の幅より広くてもよい。
【0082】
陽極層形成工程S01から封止工程S05までに含まれる各工程は、ロールツーロール方式のように、可撓性基板10を搬送しながら実施しなくてもよい。ただし、電極層形成工程(第2電極層形成工程)S03を、可撓性基板10を搬送しながら実施することは、生産性を向上させるために有利であり、特に、電極層形成工程(第2電極層形成工程)S03及び孔部形成工程S04をロールツーロール方式で実施することが好ましい。陽極層14が予め形成された可撓性基板10を準備していれば、陽極層形成工程S01は不要である。
【0083】
封止工程S05では、例えば、封止膜として電極層20上に形成することで有機機能層16を封止してもよい。この場合、封止膜が封止部材に相当し、封止膜は、例えばCVD法で形成されてもよい。
【0084】
封止部材26は、電極層(第2電極層)20に形成された孔部22の機能発揮設計領域A1側の面を被覆していれば、その一部が孔部22内に充填されていなくてもよい。換言すれば、各デバイス形成領域DAにおいて、孔部22の機能発揮設計領域A1側の面を被覆するように、封止部材26を電極層20上に設ければ封止部材26で孔部22全体を覆っていなくてもよい。
【0085】
有機ELデバイスでは、可撓性基板10上に、陰極機能部24と電気的に接続され、外部接続端子として機能する陰極用取出電極を備えていてもよい。この陰極用引出電極は、陽極層14と離間して可撓性基板10の表面10a上に設けられ、外部接続可能なように、陰極用引出電極の一部は封止部材26から露出される。陰極用引出電極は、例えば陽極層14と同じ材料を有し得る。陰極用取出電極を備える有機ELデバイスにおいては、封止部材26内で、電極層20が陰極用取出電極に接するように、電極層20を形成する。この場合、Y方向における電極層20の両端部は封止部材26で封止されるので、下層20A及び上層20BのY方向の幅を同じ、或いは、上層20BのY方向の幅よりも下層20AのY方向の幅が狭い状態とし得る。Y方向における電極層20の両端部は封止部材26で封止されることから、例えば上層20Bの材料として水分の影響を受ける材料も選択し得る。よって、電極層20の材料の選択及び構成の自由度が向上する。
【0086】
電極層20の構造は、下層20A及び上層20Bの2層構造に限定されない。電極層20は単層構造でもよいし、3層以上の多層構造でもよい。また、電極層20の材料としては、下層20A及び上層20Bで挙げたもの以外を用いてもよく、例えば、導電性金属酸化物や導電性有機物等を用いてもよい。
【0087】
孔部22の延在方向は、複数のデバイス形成領域DAの配列方向に相当する第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)であった。しかしながら、孔部22の延在方向は、複数のデバイス形成領域DAの配列方向に相当する第1方向に対して横切る方向であればよい。すなわち、第1方向と第2方向とは直交していなくてもよい。
【0088】
可撓性基板10は、複数のデバイス形成領域DAが仮想的に設定できる大きさを有していれば、長尺でなくてもよい。例えば可撓性基板は枚葉形状を有していてもよい。可撓性基板が枚葉形状のように長尺形状でない形態では、可撓性基板を一方向(第1方向)に沿って搬送すればよい。或いは、枚葉形状の場合は、搬送せずに第2電極層形成工程等を実施してもよい。
【0089】
可撓性基板10側の電極層が陽極層である場合を例示して説明したが、可撓性基板10側の電極層が陰極層であってもよい。この場合、第2電極層の第2電極機能部は、陽極機能部である。
【0090】
上記実施形態では、有機電子デバイスの一例である有機ELデバイスについて説明したが、本発明は、有機ELデバイスの他、有機フォトディテクタ、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ、有機センサー等の有機材料を用いたデバイスである有機電子デバイスにも適用できる。
【解決手段】一形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、可撓性基板10に、第1方向に沿って設定される各デバイス形成領域DA内の第1電極層14上に有機機能層16を形成する工程と、各有機機能層を覆うように、第1方向において複数のデバイス形成領域に渡って第2電極層20を有機機能層が形成された可撓性基板上に形成する工程と、第2電極層のうち、第1方向において、デバイス形成領域の境界部と有機機能層における機能発揮設計領域A1との間又は境界部上の第2電極層を、第1方向を横切る第2方向に沿って除去することによって孔部22を形成する工程と、有機機能層における機能発揮設計領域を封止する封止部材26を、孔部の機能発揮設計領域側の面を被覆するように第2電極層上に設ける工程と、を備える。