【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度経済産業省「エネルギー使用合理化技術開発等(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究開発)(国庫債務負担行為に係るもの)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願) 平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の熱電変換素子および熱電変換モジュールについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0017】
図1(A)〜
図1(C)に、本発明の熱電変換素子の一例を概念的に示す。なお、
図1(A)は上面図、
図1(B)は正面図、
図1(C)は底面図である。具体的には、上面図は
図1(B)を紙面上方から見た図であり、正面図は後述する基板等の面方向に見た図であり、底面図は
図1(B)を紙面下方から見た図である。
なお、
図1(B)は、
図1(A)を図中横方向に切断した断面を示しているが、図を簡略化するために、ハッチは省略している。
【0018】
図1(A)〜
図1(C)に示す熱電変換素子10は、基本的に、第1基板12と、熱電変換層16と、粘着層18と、第2基板20と、電極26および電極28と、を有して構成される。
具体的には、第1基板12の上に熱電変換層16、電極26および電極28を有し、熱電変換層16、電極26および電極28を覆って粘着層18を有し、粘着層18の上に第2基板20を有する。また、電極26および電極28すなわち電極対は、第1基板12の基板面の方向に熱電変換層16を挟むように設けられる。以下の説明では、第1基板12の基板面の方向を、単に『面方向』とも言う。
【0019】
図1(A)〜
図1(C)に示すように、第1基板12は、低熱伝導部12aおよび高熱伝導部12bを有する。また、第2基板20は、金属製のシート状物に、凹部20aを形成してなる構成を有する。シート状物は、板、フィルムおよび箔等を含む。
後述するが、本発明の熱電変換素子および熱電変換モジュールは、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板20の凹部20aとが、面方向に少なくとも一部が重複するように構成される。
【0020】
熱電変換素子10の第1基板12は、矩形のシート状の低熱伝導部12aの表面に、矩形のシート状の高熱伝導部12bを積層してなる構成を有する。図示例において、高熱伝導部12bは、低熱伝導部12aの半面のほぼ全面を覆うように設けられる。また、電極26と電極28との離間方向すなわち通電方向において、高熱伝導部12bの端部は、第1基板12の中央に位置する。
従って、第1基板12の一面は、面方向の約半分の領域が低熱伝導部12aで、残りの約半分の領域は高熱伝導部12bとなる。また、第1基板12の他方の面は、全面が低熱伝導部12aとなる。
【0021】
なお、本発明の熱電変換素子において、第1基板は、低熱伝導部の表面に高熱伝導部を積層した構成以外にも、各種の構成が利用可能である。
例えば、第1基板は、低熱伝導部12aの半面の全面を覆う構成であってもよい。あるいは、第1基板は、
図4(A)に概念的に示すように、低熱伝導部12aとなるシート状物の、一方の面の半分の領域に凹部を形成して、この凹部に、表面が均一となるように高熱伝導部12bを組み込んでなる構成でもよい。
【0022】
低熱伝導部12aは、ガラス板、セラミックス板、樹脂フィルムなど、絶縁性を有し、かつ、熱電変換層16や電極26等の形成等に対する十分な耐熱性を有するものであれば、各種の材料からなるシート状物が利用可能である。
好ましくは、低熱伝導部12aには、樹脂フィルムが利用される。低熱伝導部12aに樹脂フィルムを用いることにより、軽量化やコストの低下を計ると共に、可撓性を有する熱電変換素子10が形成可能となり、好ましい。
【0023】
低熱伝導部12aに利用可能な樹脂フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、トリアセチルセルロース(TAC)等の樹脂、ガラスエポキシ、液晶性ポリエステル等からなるフィルムが例示される。
中でも、熱伝導率、耐熱性、耐溶剤性、入手の容易性や経済性等の点で、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるフィルムは、好適に利用される。
【0024】
高熱伝導部12bは、低熱伝導部12aよりも熱伝導率が高いものであれば、各種の材料からなるシート状物が例示される。
具体的には、熱伝導率等の点で、金、銀、銅、アルミニウム等の各種の金属、もしくは、これらの金属を含む合金が例示される。中でも、熱伝導率、経済性等の点で、Cuおよびアルミニウム、もしくは、これらの金属を含む合金は好適に利用される。
【0025】
本発明において、第1基板12の厚さ、高熱伝導部12bの厚さ等は、高熱伝導部12bおよび低熱伝導部12aの形成材料、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。なお、第1基板12の厚さとは、高熱伝導部12bが無い領域の低熱伝導部12aのみの部分の厚さである。
第1基板12の面方向の形状や大きさ、第1基板12における高熱伝導部12bの面方向の形状や面積率等も、低熱伝導部12aおよび高熱伝導部12bの形成材料、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。第1基板12の面方向の大きさとは、言い換えれば、基板面と直交する方向から見た際の大きさである。
【0026】
さらに、第1基板12における高熱伝導部12bの面方向の位置も、図示例に限定されず、各種の位置が利用可能である。
例えば、第1基板12において、高熱伝導部12bは、面方向において一部を端部に位置してそれ以外の領域を内包されてもよい。さらに、第1基板12が面方向に複数の高熱伝導部12bを有してもよい。
【0027】
なお、
図1(A)〜
図1(C)に示す熱電変換素子10は、第1基板12と第2基板20との間での温度差を生じ易い好ましい態様として、第1基板12は、高熱伝導部12bを積層方向の外側に位置している。
しかしながら、本発明は、これ以外にも、第1基板12は、高熱伝導部12bを積層方向の内側に位置する構成でもよい。なお、高熱伝導部12bが金属等の導電性を有する材料で形成され、かつ、積層方向の内側に配置される場合には、熱電変換層16、電極26および電極28との絶縁性を確保できるように、間に絶縁層等を形成する必要が有る。
【0028】
熱電変換素子10において、第1基板12の高熱伝導部12bを形成されていない側の表面には、必要に応じて、密着層を有してもよい。密着層を有することにより、第1基板12と、電極26および電極28との密着性を良好にして、耐屈曲性など、機械的強度が良好な熱電変換素子(熱電変換モジュール)が得られる。
【0029】
密着層は、第1基板12(低熱伝導部12a)、熱電変換層16、電極26および電極28の形成材料に応じて、熱電変換層16や両電極と第1基板12との密着性を確保できるものであれば、各種のものが利用可能である。
例えば、熱電変換層16の形成材料として、ニッケルやニッケル合金を用いる場合や、電極26および電極28の形成材料として、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、白金等を用いる場合には、密着層としては、酸化珪素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、クロム、チタン等からなる層が例示される。
また、密着層を酸化珪素等の金属酸化物で形成することにより、第1基板12を通過した水分から熱電変換層16を保護する、ガスバリア層としての作用も得られる。
【0030】
密着層の厚さは、密着層の形成材料等に応じて、目的とする熱電変換層16や電極26および電極28の密着力が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
また、密着層は、密着層の形成材料に応じて、公知の方法で形成すればよい。例えば、密着層を金属、合金、金属酸化物等で形成する場合には、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等の気相成膜法で密着層を形成すればよい。
【0031】
熱電変換素子10において、第1基板12の高熱伝導部12bを形成されていない側の表面には、熱電変換層16、ならびに、電極26および電極28が設けられる。
熱電変換素子は、例えば、熱源との接触などによる加熱によって温度差が生じることにより、この温度差に応じて、熱電変換層16の内部において、温度差の方向のキャリア密度に差が生じ、電力が発生する。図示例においては、例えば、第1基板12側に熱源を設け、第1基板12(特に高熱伝導部12b)と第2基板20との間に温度差を生じさせることにより、発電する。また、電極26および電極28に配線を接続することにより、加熱等によって発生した電力(電気エネルギー)が取り出される。
【0032】
本発明の熱電変換素子10において、熱電変換層16は、公知の熱電変換材料を用いる各種の構成が、全て、利用可能である。従って、有機系の熱電変換材料を用いる物であっても、無機系の熱電変換材料を用いるものであってもよい。
熱電変換層16に用いられる熱電変換材料としては、例えば、導電性高分子や導電性ナノ炭素材料等の有機材料が好適に例示される。
【0033】
導電性高分子としては、共役系の分子構造を有する高分子化合物(共役系高分子)が例示される。具体的には、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフルオレン、アセチレン、ポリフェニレンなどの公知のπ共役高分子等が例示される。特に、ポリジオキシチオフェンは、好適に使用できる。
【0034】
導電性ナノ炭素材料としては、具体的には、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下の説明では、『カーボンナノチューブ』を『CNT』とも言う。
中でも、熱電特性がより良好となる理由から、CNTが好ましく利用される。
【0035】
CNTには、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、及び複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特に、導電性及び半導体特性において優れた性質を持つ単層CNTおよび2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。半導体性CNTと金属性CNTとを両方を用いる場合、組成物中の両者の含有比率は、組成物の用途に応じて適宜調節することができる。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。
CNTは、修飾あるいは処理されたものであってもよい。さらに、熱電変換層16にCNTを利用する場合には、ドーパント(アクセプタ)を含んでいてもよい。
【0036】
熱電変換層16を構成する熱電変換材料としては、ニッケルあるいはニッケル合金も好適に例示される。
ニッケル合金は、温度差を生じることで発電するニッケル合金が、各種、利用可能である。具体的には、バナジウム、クロム、シリコン、アルミニウム、チタン、モリブデン、マンガン、亜鉛、錫、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、ジルコニウムなどの1成分、もしくは、2成分以上と混合したニッケル合金等が例示される。
熱電変換層16にニッケルあるいはニッケル合金を用いる場合には、熱電変換層16は、ニッケルの含有量が90原子%以上であるのが好ましく、ニッケルの含有量が95原子%以上であるのがより好ましく、ニッケルからなるのが特に好ましい。ニッケルからなる熱電変換層16には、不可避的不純物を有するものも含む。
【0037】
本発明の熱電変換素子10において、熱電変換層16の厚さ、面方向の大きさ、基板に対する面方向の面積率等は、熱電変換層16の形成材料、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。
なお、図示例の熱電変換素子10において、熱電変換層16は、電極26と電極28との離間方向の中心を、第1基板12の高熱伝導部12bと低熱伝導部12aとの境目に一致して形成される。
【0038】
このような熱電変換層16には、面方向に挟持するように、電極26および電極28が接続される。熱電変換素子10において、電極26および電極28は、端部を熱電変換層16に覆われて、熱電変換層16に接続される。
【0039】
電極26および電極28は、必要な導電率を有するものであれば、各種の材料で形成可能である。
具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、コンスタンタン、クロム、インジウム、鉄、銅合金などの金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等の各種のデバイスで透明電極として利用されている材料等が例示される。中でも、銅、金、銀、白金、ニッケル、銅合金、アルミニウム、コンスタンタン等は好ましく例示され、銅、金、銀、白金、ニッケルは、より好ましく例示される。
電極26および電極28は、例えば、クロム層の上に銅層を形成してなる構成等、積層電極であってもよい。
【0040】
電極26および電極28の厚さや大きさ、形状等も、熱電変換層16の厚さや大きさ、形状、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0041】
図示例の熱電変換素子において、電極26および電極28は、離間方向の端部を熱電変換層16に覆われて、熱電変換層16に接続されている。
本発明は、これ以外にも、電極26および電極28は、各種の構成が利用可能である。一例として、
図2(A)に概念的に示すように、熱電変換層16の端部から端面に沿って立ち上がり、熱電変換層16の上面の端部近傍に到る電極26および電極28が例示される。また、
図2(B)に概念的に示すように、熱電変換層16の端部に当接する電極26および電極28も利用可能である。さらに、電極26と電極28とは、構成が異なってもよい。
【0042】
熱電変換素子10において、熱電変換層16、電極26および電極28の上には、粘着層18が形成される。粘着層18は、十分な密着力で第2基板20を貼着するためのものである。また、粘着層18は、金属材料からなる第2基板20と、熱電変換層16、電極26および電極28とを絶縁する、絶縁層としても作用する。
粘着層18の形成材料は、熱電変換層16、電極26および電極28の形成材料と、第2基板20の形成材料とに応じて、絶縁性を有し、かつ、両者を貼着可能なものが、各種、利用可能である。
具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、EVA、α-オレフィンポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン等が例示される。また、粘着層18は、市販の接着剤、粘着剤、両面テープや粘着フィルム等を利用して形成してもよい。
【0043】
粘着層18の厚さは、粘着層18の形成材料、熱電変換層16に起因する段差の大きさ等に応じて、熱電変換層16等と第2基板20とを十分な密着力で貼着でき、かつ、絶縁できる厚さを、適宜、設定すればよい。なお、粘着層18は、基本的に、薄い方が、熱電変換性能を高くできる。
具体的には、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
粘着層18の厚さを5μm以上とすることにより、熱電変換層16に起因する段差を十分に埋めることができる、良好な密着性が得られる、十分な絶縁性が得られる等の点で好ましい。
粘着層18の厚さを100μm以下、特に50μm以下とすることにより、熱電変換素子10(熱電変換モジュール)の薄膜化を計れる、可撓性の良好な熱電変換素子10を得ることができる、粘着層18の熱抵抗を小さくでき、より良好な熱電変換性能が得られる等の点で好ましい。
【0044】
なお、必要に応じて、密着性を向上するために、熱電変換層16、電極26および電極28と粘着層18との界面、粘着層18と第2基板20との界面の1以上において、界面を形成する表面の少なくとも1面に、プラズマ処理、UVオゾン処理、電子線照射処理等の公知の表面処理を施して、表面の改質や清浄化を行ってもよい。
【0045】
粘着層18の上には、第2基板20が貼着されて、熱電変換素子10が構成される。
第2基板20は、金属材料からなるシート状物であり、粘着層18と対面する面の一部に、凹部20aが形成される。具体的には、図示例の熱電変換素子10において、第2基板20は、面方向に第1基板12と同じ形状を有し、面方向の高熱伝導部12bと同じ位置に、面方向に高熱伝導部12bと同じ形状の凹部20aが形成される。
すなわち、図示例の熱電変換素子10において、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板20の凹部20aとは、面方向で完全に重複している。言い換えれば、図示例の熱電変換素子10において、第2基板20の凹部20aは、第1基板12の低熱伝導部12aのみの領域とは、全く重複していない。
従って、図示例においては、熱電変換層16は、電極26と電極28との離間方向において、中心を、第1基板12の低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとの境界と、第2基板20の凹部20aの端部とに一致して設けられる。
【0046】
第2基板20は、金属材料からなるものである。従って、第2基板20において、凹部20aと、それ以外の領域とでは、熱伝導性は、空間となっている凹部20aの方が遥かに小さい。すなわち、第2基板20において、凹部20aは、第1基板12の低熱伝導部12aのみの領域と同様に作用する。
また、本発明において、第1基板の高熱伝導部と、第2基板の凹部とは、面方向に少なくとも一部を重複して設けられる。図示例の熱電変換素子10においては、好ましい態様として、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板20の凹部20aとは、面方向で完全に重複している。
そのため、例えば第1基板12側に加熱源を設けると、高熱伝導部12bと、第2基板20の凹部20a以外の領域との間で、
図1(A)〜
図1(C)中の横方向に、熱電変換層16の面方向に温度差が生じる。その結果、熱は、第1基板12の高熱伝導部12bから、熱伝導率の高い第2基板20の凹部20a以外の領域に流れ、これにより熱電変換層16の面方向に熱が流れる。
従って、本発明の熱電変換素子10は、熱電変換層16の面方向(面内)の長い距離の温度差によって、効率の良い発電が可能である。
【0047】
しかも、熱伝導率が高い第2基板20は、樹脂製の基板や支持体等を介することなく、粘着層18に直接接触する。すなわち、熱伝導率が高い第2基板20は、熱電変換層16の近くに位置する。加えて、第2基板20は、粘着層18に直接接触している上に、粘着層18との接触部以外は、何も覆われることなく、外部に直接開放されている。
そのため、熱電変換層16を通過して第2基板20に到る熱の伝導ロスが極めて小さく、しかも、第2基板20に至った熱は、金属材料製の第2基板20を伝熱されて、迅速に外部に放出される。
その結果、熱電変換層16における面方向の温度差が非常に大きくなり、大きな発電量を得ることができる。
【0048】
第2基板20の形成材料は、各種の金属材料が全て利用可能である。
具体的には、銅、アルミニウム、シリコン、ニッケル等の金属や、銅合金、ステンレス、ニッケル合金等の合金が好適に例示される。
また、金属の酸化、変色を抑制するために、(1)Ni、Ag、Auなどの金属メッキ、(2)アミン化合物などの有機化合物を含む防錆剤や酸化防止剤、(3)金属酸化物などを、金属表面に設けてもよい。
【0049】
本発明においては、
図5に概念的に示す熱電変換素子10aのように、必要に応じて、第2基板20の凹部20aを形成した面すなわち粘着層18側の面の表面に絶縁層20bを設けてもよい。
第2基板20は金属材料で形成される。そのため、凹部20aを形成した面の表面に絶縁層20bを形成することで、第2基板20と熱電変換層16との間の電流リークを低減、抑制でき、発電量向上に効果がある。
特に、熱電変換層16を印刷で形成する場合には、熱電変換層16の表面に、第2基板20と熱電変換層16との間の電流リークの原因となる凹凸や突起が発生しやすいため、第2基板20の凹部20aを形成した面の表面に絶縁層20bを設けるのが好ましい。また、可撓性を有する熱電変換素子(熱電変換モジュール)を、パイプ状ヒータに装着する場合など、熱電変換素子を曲面に装着する場合には、第2基板20と熱電変換層16との間の電流リークが生じやすくなる。そのため、可撓性を有する熱電変換素子には、第2基板20の凹部20aを形成した面の表面に絶縁層20bを設けるのが好ましい。
【0050】
絶縁層20bの形成材料は、公知の絶縁体が各種利用可能である。具体的には、絶縁層20bの形成材料としては、(1)金属酸化物:SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、Ta
2O
3など、(2)金属窒化物:SiN
x、SiONなど、(3)有機物:パラキシリレン、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などの公知の絶縁体を用いることができる。中でも、気相成膜法で形成でき、かつ、膜厚制御が容易な点で、SiO
2、Al
2O
3、パラキシリレンなどは、好適に例示される。また、絶縁層20bは、これらの絶縁体の混合物や積層体を用いてもよい。
絶縁層20bの厚さは、形成材料に応じて、必要な絶縁性を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。具体的には、絶縁層20bの厚さは、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。絶縁層20bの厚さを2μm以下とすることで、熱流を阻害することなく絶縁層として機能するため、好適に発電量の向上を実現できる。
【0051】
第2基板20の面方向の形状や大きさ、第2基板20の厚さ等は、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。なお、第2基板20の厚さとは、凹部20aが無い領域の厚さである。
また、凹部20aの面方向の形状や大きさや位置、凹部20aの深さ等も、熱電変換素子10の大きさ、第1基板12の高熱伝導部12bの位置、形状、大きさ等に応じて、凹部20aと高熱伝導部12bとが面方向で少なくとも一部が重複するように、適宜、設定すればよい。
【0052】
ここで、本発明者の検討によれば、凹部20aの深さは、第2基板20の厚さの0.2倍以上であるのが好ましく、0.5倍以上であるのがより好ましい。
凹部20aの深さを、第2基板20の厚さの0.2倍以上とすることにより、凹部20aによる低熱伝導性を十分に確保して、熱電変換層16の温度差を大きくして発電量を大きくできる等の点で好ましい。
【0053】
第2基板20の厚さは、0.05mm以上であるのが好ましく、0.1mm以上であるのがより好ましい。
第2基板20の厚さを0.05mm以上とすることにより、十分な深さの凹部20aを形成でき上記と同様の理由で発電量を大きくできる、第2基板20の剛性を確保できる等の点で好ましい。
【0054】
第2基板20の厚さは、0.3mm以下であるのが好ましく、0.2mm以下であるのがより好ましい。
第2基板20の厚さを0.3mm以下とすることにより、可撓性が良好な熱電変換素子が得られる、軽量な熱電変換素子が得られる等の点で好ましい。
【0055】
図示例の第2基板20において、凹部20aは、面方向の周辺全域に壁を有する。すなわち、凹部20aは、第2基板20の面内に形成される。
本発明は、これ以外にも、第2基板20の凹部20aの端部の一部が、外部に開放された形状であってもよい。すなわち、凹部20aを第2基板20の端面を抜けて形成してもよい。しかしながら、凹部20aが第2基板20の端面を抜けると、第2基板20における凹部20aの形成領域の強度が低くなり、凹部20aを適正に保てなくなる可能性も有る。従って、第2基板20において、凹部20aは、図示例のように、第2基板20の面内に形成されるのが好ましい。
【0056】
また、第2基板20において、凹部20aは矩形の断面形状を有する。すなわち、凹部20aは、底面(天井面)に対して垂直に立設する壁面を有する。
本発明は、これ以外にも、例えば、凹部20aの断面形状が台形状すなわち凹部20aの壁面がテーパ状であってもよく、あるいは、凹部20aの断面形状が円形や楕円形すなわち凹部20aの壁面が曲面であってもよい。
さらに、必要に応じて、凹部20aに、低熱伝導材料を充填してもよい。
【0057】
図示例の熱電変換素子10は、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板20の凹部20aとが、面方向に一致するように構成される。
本発明の熱電変換素子は、これ以外にも、第1基板の高熱伝導部と、第2基板の凹部とが、面方向において少なくとも一部が重複していれば、各種の構成が利用可能である。言い換えれば、第1基板12の低熱伝導部12aのみの領域と、凹部20aとが、面方向で完全に重複しなければ各種の構成が利用可能である。
【0058】
例えば、
図1(A)〜
図1(C)に示す例において、第1基板12の高熱伝導部12bを図中右側に移動し、第2基板20の凹部20aを図中左側に移動して、電極26と電極28との離間方向において、凹部20aの端部と高熱伝導部12bの端部とを離間させて、熱の流れ方向に第2基板20の金属部分と高熱伝導部12bとを離してもよい。
具体的には、電極26と電極28との離間方向において、凹部20aの端部と高熱伝導部12bの端部とは、電極26と電極28との離間方向における熱電変換層16の大きさに対して、10〜90%離間させるのが好ましく、10〜50%離間させるのがより好ましい。
【0059】
逆に、
図1(A)〜
図1(C)に示す例において、第1基板12の高熱伝導部12bを図中左側に移動し、第2基板20の凹部20aを図中右側に移動することによって、電極26と電極28との離間方向において、高熱伝導部12bを第2基板20の金属部分の内部に存在させてもよい。
【0060】
図3(A)〜
図3(E)に、このような本発明の熱電変換素子10を、複数、直列に接続してなる、本発明の熱電変換モジュールの一例を示す。なお、
図3(A)は正面図、
図3(B)は底面図、
図3(C)および
図3(D)は上面図、
図3(E)は正面図である。また、
図3(A)は、
図3(B)を図中横方向に切断した断面を示しているが、図面を簡潔にするために、ハッチは省略している。
【0061】
図3(D)および
図3(E)に示すように、第1基板12Aは、矩形シート状の低熱伝導材料の表面に、長尺な四角柱状の高熱伝導部12bを、低熱伝導部に接触する面の幅と等間隔で、長手方向と直交する方向に配列してなる構成を有する。
すなわち、第1基板12Aは、一面の表面の全面が低熱伝導部12aで、他面の表面に、一方向に長尺で同じ幅の低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとが、長手方向と直交する方向に等間隔で交互に形成された構成を有する。
なお、本例においても、第1基板は、低熱伝導部の表面に高熱伝導部を載置した構成以外の、各種の構成が利用可能である。例えば、第1基板は、
図4(B)に概念的に示すように、第1基板は、矩形シート状の低熱伝導材料に、一方向に長尺な溝を、長手方向と直交する方向に溝の幅と等間隔で形成して、この溝に高熱伝導材料を組み込んでなる構成でもよい。
図4(B)に示す例では、紙面に直交する方向に長尺な溝を形成している。
【0062】
図3(C)および
図3(D)に概念的に示すように、熱電変換層16は矩形の面形状を有し、第1基板12Aの全面が低熱伝導部12aである側の表面に、低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとの境界と中心とを面方向で一致させて形成される。図示例においては、熱電変換層16の
図3(C)における横方向の大きさは、高熱伝導部12bの幅と同じである。以下の説明では、
図3(C)における横方向を、単に『横方向』とも言う。なお、言い換えれば、横方向とは、低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとの交互の配列方向である。
熱電変換層16は、横方向に、低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとの境界に対して、1境界置きに等間隔で形成される。すなわち、熱電変換層16は、横方向に、高熱伝導部12bの幅と同じ間隔で等間隔に形成される。前述のように、横方向の熱電変換層16の大きさは、高熱伝導部12bの幅と同じである。
また、熱電変換層16は、横方向に等間隔に配列された熱電変換層16の列が、
図3(C)における上下方向に等間隔で配列されるように、二次元的に形成される。以下の説明では、
図3(C)における上下方向を、単に『上下方向』とも言う。なお、言い換えれば、上下方向とは、低熱伝導部12aおよび高熱伝導部12bの長手方向である。
さらに、
図3(C)に示すように、熱電変換層16の横方向の配列は、上下方向に隣接する列では、高熱伝導部12bの幅の分だけ、横方向にズレて形成される。すなわち、上下方向に隣接する列では、熱電変換層16は、高熱伝導部12bの幅の分だけ、互い違いに形成される。
【0063】
各熱電変換層16は、電極26(電極28)によって直列に接続される。構成を明確にするために、電極26は、網掛けして示す。具体的には、
図3(C)に示すように、図中横方向の熱電変換層16の配列において、電極26が、各熱電変換層16を横方向に挟むように設けられる。これにより、横方向に配列された熱電変換層16が、電極26によって直列に接続される。
さらに、熱電変換層16の横方向の端部では、上下方向に隣接する列の熱電変換層16が、電極26によって接続される。この横方向の列の端部での電極26による上下方向の熱電変換層16の接続は、一方の端部の熱電変換層16は上側の列の同側端部の熱電変換層16と接続され、他方の端部の熱電変換層16は下側の列の同側端部の熱電変換層16と接続される。
これにより、全ての熱電変換層16が、横方向に、複数回、折り返した1本の線のように直列で接続される。
【0064】
一方、第2基板20Aは、
図3(A)および
図3(B)に示すように、熱電変換層16の形成両域を包含する上下方向に長尺な溝状の凹部20aを、長手方向と直交する方向に、等間隔で配列した構成を有する。
ここで、凹部20aの配列間隔は凹部20aの幅に等しい。さらに、凹部20aの幅すなわち配列間隔は、第1基板12の高熱伝導部12bの幅すなわち高熱伝導部12bの配列間隔と等しい。
このような第2基板20Aは、
図3(B)および
図3(C)に概念的に示すように、熱電変換層16および電極26の上に、溝状の凹部20aが形成された面を下方にして、かつ、第1基板12Aの高熱伝導部12bと凹部20aとが横方向に一致するように積層される。従って、熱電変換層16の形成領域においては、第1基板12Aの高熱伝導部12bと凹部20aとは、面方向に一致する。
これにより、本発明の熱電変換素子10を、多数、直列に接続してなる、熱電変換モジュールが構成される。
【0065】
なお、図示は省略するが、第2基板20Aの積層に先立ち、第1基板12Aを全面的に覆うように、熱電変換層16および電極26の上に、粘着層18が形成される。
【0066】
本発明の熱電変換モジュール(熱電変換素子)を熱源に接着し、発電する際には、熱伝導接着シートや熱伝導性接着剤を用いてもよい。
熱電変換モジュールの加熱側、もしくは冷却側に貼付して用いられる熱伝導接着シートおよび熱伝導性接着剤には特に限定はない。従って、市販されている熱伝導接着シートや熱伝導性接着剤を用いることができる。熱伝導接着シートとしては、例えば、信越シリコーン社製のTC−50TXS2、住友スリーエム社製のハイパーソフト放熱材 5580H、電気化学工業社製のBFG20A、日東電工社製のTR5912F等を用いることができる。なお、耐熱性の観点から、シリコーン系粘着剤からなる熱伝導接着シートが好ましい。熱伝導性接着剤としては、例えば、スリーエム社製のスコッチ・ウェルドEW2070、アイネックス社製のTA−01、シーマ電子社製のTCA−4105、TCA−4210、HY−910、薩摩総研社製のSST2−RSMZ、SST2−RSCSZ、R3CSZ、R3MZ等を用いることができる。
熱伝導接着シートや熱伝導性接着剤を用いることで、熱源との密着性が向上して熱電変換モジュールの加熱側の表面温度が高くなる、冷却効率が向上して熱電変換モジュールの冷却側の表面温度を低くできるなどの効果により、発電量を高くすることができる。
【0067】
さらに、熱電変換モジュールの冷却側の表面には、ステンレス、銅、アルミ等の公知の材料からなる放熱フィン(ヒートシンク)や放熱シートを設けてもよい。放熱フィン等を用いることで、熱電変換モジュールの低温側をより好適に冷却することができ、熱源側と冷却側との温度差が大きくなり、熱電効率がより向上する点で好ましい。
なお、本発明の熱電変換モジュール(熱電変換素子)では、通常、第2基板20A側が冷却側になる。
【0068】
放熱フィンとしては、太陽金網社製のT−Wing、事業創造研究所製のFLEXCOOLや、コルゲートフィン、オフセットフィン、ウェービングフィン、スリットフィン、フォールディングフィンなどの各種フィンなどの公知のフィンを用いることができる。特に、フィン高さのあるフォールディングフィンを用いるのが好ましい。
放熱フィンのフィン高さとしては10〜56mm、フィンピッチとしては2〜10mm、板厚としては0.1〜0.5mmが好ましく、放熱特性が高く、モジュールの冷却ができ発電量が高くなる点で、フィン高さが25mm以上であるのがより好ましい。また、フィンのフレキシブル性が高い、軽量である等の点で、板厚0.1〜0.3mmのアルミ製を用いるのが好ましい。
また、放熱シートとしては、パナソニック社製のPSGグラファイトシート、沖電線社製のクールスタッフ、セラミッション社製のセラックα等の公知の放熱シートを用いることができる。
【0069】
また、第2基板20Aの凹部20aが形成されていない面に凹凸を形成することにより、この面の表面積を増やして、放熱効率を向上してもよい。
凹凸の形成は、粗面化処理等、公知の方法で行えばよい。
【0070】
以下、
図1(A)〜
図1(C)に示す熱電変換素子10の製造方法の一例を説明する。なお、
図3(A)〜
図3(E)に示す熱電変換モジュールも、基本的に、同様に製造することができる。
【0071】
まず、低熱伝導部12aおよび高熱伝導部12bを有する第1基板12、および、凹部20aを有する金属材料製の第2基板を用意する。
【0072】
第1基板12は、一例として、低熱伝導部12aとなるシート状物に、シート状(もしくは帯状)の高熱伝導部12bを貼着することで、低熱伝導部12aに高熱伝導部12bを積層してなる第1基板12を作製すればよい。あるいは、低熱伝導部12aとなるシート状物の全面に高熱伝導部12bとなる層を形成してなるシート状物を用意し、この高熱伝導部12bとなる層をエッチングして不要な部分を除去することで、低熱伝導部12aに高熱伝導部12bを積層してなる第1基板12を作製してもよい。
【0073】
一方、第2基板20は、一例として、金属板を、ウエットエッチング、ドライエッチング、放電加工、サンドブラスト等によって、直接加工することで、凹部20aを形成することで作製すればよい。
あるいは、金属板に、拡散接合、ロウ付け、溶接等によって金属箔を接合することによって、凹部20aを有する金属材料製の第2基板20を作製してもよい。
【0074】
次いで、熱電変換層16に対応する位置に、熱電変換層16を面方向で挟むように、電極26および電極28を形成する。
電極26および電極28の形成は、メタルマスクを用いる真空蒸着法など、電極26および電極28の形成材料等に応じて、公知の方法で行えばよい。
【0075】
次いで、第1基板12の全面が低熱伝導部12aである面の目的とする位置に、熱電変換層16を形成する。なお、図示例の熱電変換素子10においては、熱電変換層16が、電極26および電極28の端部を覆うように形成する。
熱電変換層16は、用いる熱電変換材料に応じて、公知の方法で形成すればよい。
例えば、熱電変換材料とバインダとを有する塗布組成物を調製して、この塗布組成物をスクリーン印刷やインクジェット等の公知の方法でパターンニングして塗布して、乾燥し、バインダを硬化することにより、バインダに熱電変換材料を分散してなる熱電変換材料を形成する方法が例示される。
また、熱電変換材料としてCNTを用いる場合には、分散剤(界面活性剤)を用いてCNTを水に分散してなる塗布組成物を調製して、この塗布組成物を同様に公知の方法でパターンニングして塗布して、乾燥することにより、主にCNTと界面活性剤とから熱電変換層を形成する方法が例示される。この際においては、塗布組成物を乾燥した後、アルコール等の分散剤を溶解する洗浄剤で熱電変換層を洗浄することで分散剤を除去し、その後、洗浄剤を乾燥することにより、実質的にCNTのみからなる熱電変換層とするのが好ましい。洗浄は、熱電変換層を洗浄剤に浸漬する方法や、熱電変換層を洗浄剤で濯ぐ方法等で行えばよい。
また、熱電変換材料としてニッケルあるいはニッケル合金を用いる場合には、真空蒸着やスパッタリング等の気相成膜法によって、メタルマスク等を用いる公知の方法で、ニッケルあるいはニッケル合金からなる熱電変換層をパターン形成する方法が例示される。
あるいは、第1基板12の全面に熱電変換層を形成して、エッチング等によって、熱電変換層16をパターン形成してもよい。
【0076】
さらに、作製した第2基板20の凹部20aが形成されている面に粘着層18を形成して粘着層18を熱電変換層16に向けて積層して貼着し、熱電変換素子10を作製する。
なお、第2基板20に粘着層18を形成する方法は、接着剤の塗布乾燥による方法、粘着剤、両面テープ、粘着フィルム等を貼着する方法等の公知の方法で形成すればよい。また、第2基板20に粘着層18を形成したら、オートクレーブ等を利用して、圧力を掛けることによって、第2基板20と粘着層18との間の気泡を粘着層18に拡散するのが好ましい。
【0077】
以上の例は、電極26および電極28を形成した後に熱電変換層16を形成しているが、熱電変換層16と電極26および電極28との形成順は、逆であってもよい。
この場合には、
図2(A)に概念的に示す熱電変換層16のように、熱電変換層の上面まで、電極26および電極28が到るような構成でもよい。
【0078】
このような本発明の熱電変換素子および熱電変換モジュールは、各種の用途に利用可能である。
一例として、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機などの発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサ用電源などの各種装置(デバイス)の電源等、様々な発電用途が例示される。また、本発明の熱電変換素子の用途としては、発電用途以外にも、感熱センサや熱電対などのセンサー素子用途も例示される。
【0079】
以上、本発明の熱電変換素子および熱電変換モジュールについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の具体的実施例を挙げて、本発明の熱電変換素子および熱電変換モジュールについて、より詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
接着剤フリーの両面銅張ポリイミド基板(FELIOS R-F775、パナソニック電工社製)を用意した。この銅張ポリイミド基板は、サイズが110×80mmで、ポリイミド層の厚さが20μm、Cu層の厚さが70μmのものである。
この両面銅張ポリイミド基板の一面の銅層を、エッチング処理により完全に除去した。
次いで、一面の銅層を除去した銅張ポリイミド基板の残った銅層をエッチングして、0.5mm幅で、0.5mm間隔の銅ストライプパターンを形成した。
これにより、厚さ20μmのシート状の低熱伝導部の表面に、厚さが70μmで幅0.5mmの帯状の高熱伝導部を、長手方向と直交する方向に0.5mm間隔で配列した、
図3(D)および
図3(E)に示すような第1基板を作製した。
【0082】
一方で、サイズが80×80mmで厚さ0.2mmの銅箔を用意した。
この銅箔にハーフエッチング処理を行い、深さが0.075mmで、幅が0.5mmの溝状の凹部を0.5mm間隔でストライプ状に形成した。
これにより、厚さ0.2mmの銅製で、深さが0.075mmで幅が0.5mmの溝状の凹部を、長手方向と直交する方向に0.5mm間隔で有する、
図3(A)および
図3(B)に示すような第2基板20を作製した。
【0083】
第1基板の全面がポリイミドである面の全面(平坦な面)に、真空蒸着法によって、厚さ0.05μmのクロムからなる密着層を形成した。次いで、真空蒸着法によって、厚さ0.5μmの銅からなる電極を形成した。なお、電極は、メタルマスクを用いてパターン形成した。
さらに、電極の離間方向の端部を覆うように、真空蒸着法によって、厚さ1μmのニッケルからなる熱電変換層を形成した。熱電変換層は、メタルマスクを用い、0.5×1.5mmのパターンを1785個形成した。
【0084】
一方で、第2基板の凹部を形成した面に、厚さ30μmの粘着剤(両面テープNo.5630、日東電工製)を貼着した。次いで、0.4MPa、40℃で、20分、オートクレーブ処理を行った。
オートクレーブ処理を行った第2基板と、熱電変換層を形成した第1基板とを、凹部と高熱伝導部との長手方向を一致して、かつ、凹部と高熱伝導部とが横方向に重複するように、積層、貼着して、
図3(A)〜
図3(E)に示すような熱電変換モジュールを作製した。
【0085】
作製した熱電変換モジュールを、加熱した銅プレートと、冷水循環装置を接続した銅プレートとで挟持して、両銅プレートの温度差が10℃になるように、加熱した銅プレートの温度を調節した。なお、この際には、熱電変換モジュールと銅プレートとの間に、熱伝導グリース(SCH−30、サンハヤト社製)を注入して、熱電変換モジュールと銅プレートとを接合した。
さらに、直列に接続した最上流の熱電変換層の電極および最下流の熱電変換層の電極と、ソースメーター(ソースメーター2450、ケースレー社製)とを接続し、開放電圧と短絡電流とを計測し、下記式から発電量を求めた。
(発電量)=0.25×(開放電圧)×(短絡電流)
その結果、発電量は38μWであった。
【0086】
[実施例2]
粘着層を、厚さ5μmの粘着剤(両面テープNo.5600、日東電工製)で形成した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は78μWであった。
【0087】
[実施例3]
第2基板の凹部の深さを0.1mmにした以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は93μWであった。
【0088】
[実施例4]
第2基板として厚さ0.15mmの銅箔を用い、かつ、第2基板の凹部の深さを0.075mmにした以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は102μWであった。
【0089】
[比較例1]
第2基板として、銅箔に溝状の凹部を形成したものに変えて、第1基板と同じ基板を用い、高熱伝導部の長手方向を第1基板と一致し、かつ、横方向に高熱伝導部が第1基板と横方向に重複しないように、第2基板を積層した以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は14μWであった。
【0090】
[比較例2]
第2基板として、銅箔に溝状の凹部を形成したものに変えて、第1基板と同じ基板を用い、高熱伝導部の長手方向を第1基板と一致し、かつ、横方向に高熱伝導部が第1基板と横方向に重複しないように、第2基板を積層した以外は、実施例2と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は32μWであった。
以上の結果を、下記の表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、溝状の凹部をストライプ状に有する銅箔製の第2基板を用いた本発明の熱電変換モジュールは、ポリイミド製のシート状の低熱伝導部に、銅製の帯状の高熱伝導部をストライプ状に有する第2基板を用いる従来の熱電変換モジュールに比して、大きな発電量を得ることができる。
また、実施例2に示されるように、本発明の熱電変換モジュール(熱電変換素子)は、粘着層の厚さが薄いほど、大きな発電量が得られる。さらに、実施例3および実施例4に示されるように、本発明の熱電変換モジュール(熱電変換素子)は、凹部の深さを第2基板の厚さの0.5倍以上とすることにより、大きな発電量が得られる。
【0093】
[実施例5]
接着剤フリーの両面銅張ポリイミド基板(FELIOS R-F775、パナソニック電工社製)を用意した。この銅張ポリイミド基板は、サイズが110×80mmで、ポリイミド層の厚さが20μm、Cu層の厚さが70μmのものである。
この両面銅張ポリイミド基板の一面の銅層を、エッチング処理により完全に除去した。
次いで、一面の銅層を除去した銅張ポリイミド基板の残った銅層をエッチングして、0.5mm幅で、0.5mm間隔の銅ストライプパターンを形成した。
これにより、厚さ20μmのシート状の低熱伝導部の表面に、厚さが70μmで幅0.5mmの帯状の高熱伝導部を、長手方向と直交する方向に0.5mm間隔で配列した、
図3(D)および
図3(E)に示すような第1基板を作製した。
【0094】
一方で、サイズが80×80mmで厚さ0.2mmの銅箔を用意した。
この銅箔にハーフエッチング処理を行い、深さが0.075mmで、幅が0.5mmの溝状の凹部を0.5mm間隔でストライプ状に形成した。さらに、凹部を形成した面にEB蒸着法によってAl
2O
3を成膜して、凹部を形成した面の表面に絶縁層を形成した。
これにより、厚さ0.2mmの銅製で、深さが0.075mmで幅が0.5mmの溝状の凹部を、長手方向と直交する方向に0.5mm間隔で有し、かつ、凹部を形成した面の表面に絶縁層を形成した、
図5に示すような第2基板を作製した。
さらに、第2基板の凹部を形成した面に、厚さ30μmの粘着剤(両面テープNo.5630、日東電工製)を貼着した。次いで、0.4MPa、40℃で、20分、オートクレーブ処理を行った。
【0095】
他方で、以下のようにして、熱電変換層となる塗布組成物を調製した。
まず、単層CNT(EC、名城ナノカーボン社製、CNTの平均長さ1μm以上)と、デオキシコール酸ナトリウム(東京化成工業社製)とを、質量比がCNT/デオキシコール酸ナトリウムの比で25/75となるように、20mlの水に加えた溶液を調製した。
この溶液を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH-FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、7分間混合して、予備混合物を得た。
得られた予備混合物を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、高速旋回薄膜分散法で分散処理して、熱電変換層となる塗布組成物を調製した。
【0096】
この熱電変換層となる塗布組成物を用いて、第1基板の全面がポリイミド層である、電極を蒸着した面(平面状の面)に、高熱伝導部の長手方向に1mm間隔、高熱伝導部の配列方向に0.5mm間隔で、0.5×1.5mmの塗布組成物のパターンを1785個形成し、50℃で30分間、120℃で30分間乾燥した。塗布組成物のパターン形成は、メタルマスク印刷によって、アタック角度20°、スキージ方向は熱電変換素子の直列接続方向、クリアランス1.5mm、印圧0.3MPa、押込み量0.5mmの条件で行った。
次いで、エタノールに1時間浸漬させることで、デオキシコール酸ナトリウムを除去した。その後、50℃で30分間、120℃で150分間乾燥して、1785個の熱電変換層を形成した。熱電変換層の厚さは5.0μmであった。
次いで、メタルマスクを使用した真空成膜法によって、電極としてアルミニウムを200nm成膜し、1785個の熱電変換層を直列に接続した。
【0097】
オートクレーブ処理を行った第2基板と、熱電変換層を形成した第1基板とを、凹部と高熱伝導部との長手方向を一致して、かつ、凹部と高熱伝導部とが横方向に重複するように、積層、貼着して、第2基板の凹部に絶縁層を形成した、
図3(A)〜
図3(E)に示すような熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は21μWであった。
【0098】
[実施例6]
凹部を形成した面の表面に絶縁層を有さない第2基板を用いた以外は、実施例5と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は21μWであった。
【0099】
[比較例3]
第2基板として、銅箔に溝状の凹部を形成したものに変えて、第1基板と同じ基板を用い、高熱伝導部の長手方向を第1基板と一致し、かつ、横方向に高熱伝導部が第1基板と横方向に重複しないように、第2基板を積層した以外は、実施例5と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は9.5μWであった。
以上の結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
表2に示されるように、実施例5および実施例6と、比較例3との比較から、熱電変換層として印刷によって形成したCNTを用いた場合でも、溝状の凹部をストライプ状に有する銅箔製の第2基板を用いた本発明の熱電変換モジュールは、ポリイミド製のシート状の低熱伝導部に、銅製の帯状の高熱伝導部をストライプ状に有する第2基板を用いる従来の熱電変換モジュールに比して、大きな発電量を得ることができる。
また、実施例5および6の結果から、本発明においては、第2基板の凹部に絶縁層を形成しても、高い発電量を得ることができる。
【0101】
[実施例7]
第2基板として、凹部を形成した面の表面に絶縁層を形成した実施例5と同じ第2基板を用いた以外は、実施例1と同様に熱電変換モジュールを作製した。
実施例1と同様に発電量を測定した結果、発電量は38μWであった。
結果を表3に示す。なお、参考のために、表3には、実施例1および比較例1の結果も併記する。
【0102】
【表3】
表3に示されるように、本発明によれば、Niからなる熱電変換層を用い、第2基板の凹部の表面に絶縁層を形成した場合でも、高い発電量を得ることができる。
【0103】
[実施例5−2]
実施例5で作製した熱電変換モジュールを、熱伝導接着シート(TC−50TXS2、信越化学工業社製)を用いて、φ80mmのパイプ状ヒーターに接着した。さらに、熱電変換モジュールの上に熱伝導接着シート(TC−50TXS2、信越化学工業社製)をさらに接着し、熱電変換モジュールの曲面に追随する水冷ジャケットを固定した。水冷ジャケットには温度制御された循環水が供給されている。
パイプ状ヒーターの温度を40℃、循環水の温度を25℃に設定した以外には、実施例1と同様に発電量を測定した。
その結果、発電量は25μWであった。
一方、実施例5で作製した熱電変換モジュールを、熱伝導接着シート(TC−50TXS2、信越化学工業社製)で挟み、さらに、加熱した銅プレートと、冷水循環装置を接続した銅プレートとで挟持した。
加熱した銅プレートの温度を40℃、冷水循環装置を接続した銅プレートを25℃に設定した以外には、実施例1と同様に発電量を測定した。
その結果、発電量は25μWであった。
さらに、下記の式によって、発電量維持率を求めた。
発電量維持率=(パイプ状ヒーターでの発電量)/(銅プレートでの発電量)
その結果、発電量維持率は1であった。
【0104】
[実施例6−2]
実施例6で作製した熱電変換モジュールを用いた以外は、実施例5−2同様に発電量を測定し、さらに、発電量維持率を求めた。
その結果、発電量は、パイプ状ヒーターで21.3μW、銅プレートで25μWであり、発電量維持率は0.85であった。
[実施例1−2]
実施例1で作製した熱電変換モジュールを用いた以外は、実施例5−2同様に発電量を測定し、さらに、発電量維持率を求めた。
その結果、発電量は、パイプ状ヒーターで41μW、銅プレートで41μWであり、発電量維持率は1であった。
結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
表4に示されるように、実施例5−2と実施例6−2との比較から、第2基板の凹部の表面に絶縁層を形成することで、平面状での発電量に対する、パイプヒータを用いた発電のような熱電変換モジュールを曲げた状態での発電量維持率を高くできる。
また、熱電変換層として蒸着によるNiを用いた実施例1−2の発電量維持率が1であることから、熱電変換層を印刷によって形成した場合において、絶縁層の効果が好適に発揮される。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。