(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、断熱層(C)を介して積層された装置を用い、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)とを、試験部材(D)を介して接続し、次に前記発熱部材(A)の温度を40℃〜200℃に設定した後、前記受熱部材(B)の温度(P1)を測定し、前記温度(P1)と、前記温度設定前の前記受熱部材(B)の初期温度(P0)との温度差を算出することを特徴とする試験部材(D)の熱伝導性の評価方法。
発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、断熱層(C)を介して積層された装置を用い、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)とを、試験部材(D)を介して接続し、前記発熱部材(A)を40℃〜200℃の範囲の温度(Q1)に設定した後、前記受熱部材(B)の温度(P1)を測定し、前記Q1及びP1の温度差を算出することを特徴とする試験部材(D)の熱伝導性の評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の熱伝導性の評価装置は、発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、断熱層(C)を介して積層され、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、試験部材(D)を接続可能な部位を有することを特徴とする。前記評価装置であれば、例えば熱伝導性シートのような比較的薄型の試験部材(D)の、面方向への熱伝導性を、定量的に評価することができ、その評価方法の測定結果と、前記試験部材(D)を実装試験した結果とは、比較的良い一致を示す。
【0009】
[発熱部材(A)]
前記評価装置を構成する発熱部材(A)は、試験部材(D)を所定の温度に調整可能な加熱機能を備えた部材であって、例えば熱源となりうる発熱部(a1)と、必要に応じて金属基材(a2)等の他の部材とによって構成されるものが挙げられる。
前記発熱部(a1)としては、例えば電源装置に接続されたヒーター部等が挙げられる。具体的には、耐熱性、絶縁性に優れた面状ヒーターであることが好ましい。前記面状ヒーターとしては、柔軟性、密着性に優れるシリコーンラバーヒーターを使用することが好ましく、1−130−01(アズワン製)等を使用することが好ましい。
また、前記金属基材(a2)としては、一般に熱伝導性が優れる各種金属基材を使用することができ、例えば熱伝導率が100W/m・K以上の素材である、アルミニウム(204W/m・K)、金(295W/m・K)、銀(418W/m・K)、銅(386W/m・K)、亜鉛(113W/m・K)、マグネシウム(159W/m・K)等を使用することができ、アルミニウム基材を使用することが好ましい。
前記発熱部(a1)と前記金属基材(a2)とは、直接接続されていてもよく、また、他の部材を介して接続されていてもよい。
前記発熱部(a1)と前記金属基材(a2)とを接続は、市販の熱伝導性粘着テープ等を用いて行うことができる。
また、前記発熱部材(A)には、その温度を測定可能な熱電対温度センサー(E)が設置されていることが好ましい。
【0010】
[受熱部材(B)]
前記評価装置を構成する受熱部材(B)は、前記発熱部材(A)から発せられた熱の一部を試験部材(D)を介してを受容する部材である。
前記受熱部材(B)としては、一般に熱伝導性が優れる各種金属基材を使用することができ、例えば熱伝導率が100W/m・K以上の素材である、アルミニウム(204W/m・K)、金(295W/m・K)、銀(418W/m・K)、銅(386W/m・K)、亜鉛(113W/m・K)、マグネシウム(159W/m・K)等を使用することができ、アルミニウム基材を使用することが好ましい。
前記発熱部材(A)と前記受熱部材(B)とは、同一の金属基材から構成されていても、異なる金属基材から構成されていてもよい。
また、前記受熱部材(B)には、その温度を測定可能な熱電対温度センサー(E)が設置されていることが好ましい。
【0011】
[断熱層(C)]
本発明の評価装置を構成する断熱層(C)は、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)との間に設置されるものである。前記発熱部材(A)の熱は、その端部に接続された試験部材(D)を介して受熱部材(B)に移動する。前記試験部材(D)を介する経路以外の経路により、発熱部材(A)の熱が受熱部材(B)へ移動することを最小限に抑制することを目的として、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)との間に断熱層(C)を設置する。
【0012】
前記断熱層(C)は、前記発熱部材(A)の上部、前記受熱部材(B)の下部等の位置に、必要に応じて設置してもよい。
【0013】
前記断熱層(C)としては、例えば繊維系断熱材や発泡系断熱材等を使用することができる。
前記繊維系断熱材としては、例えばグラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、炭化コルク、羊毛断熱材等を使用することができる。
前記発泡系断熱材としては、例えばポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、発泡スチロール(EPS)、発泡ゴム、押し出しポリスチレン(XPS)等を使用することができる。
前記断熱層(C)としては、高断熱性、耐熱性、作業性に優れるため、発泡系断熱材を使用することが好ましく、ポリエチレンフォームを使用することがより好ましい。前記ポリエチレンフォームとしては、具体的にはSN−500(古河電気工業株式会社製)等を使用することができる。
【0014】
[試験部材(D)]
本発明の評価装置及び評価方法によって面方向の熱伝導性を評価可能な試験部材(D)としては、各種部材を使用することができ、前記発熱部材(A)及び受熱部材(B)の端部に接続可能なものを使用することができる。なかでも、前記試験部材(D)としては、例えば熱伝導シート等の粘着テープのような比較的薄型の試験部材であることが好適である。
前記試験部材(D)の大きさは、前記発熱部材(A)及び受熱部材(B)の端部に接続可能な大きさであれば、特に制限されない。
【0015】
前記試験部材(D)の厚さは、その総厚が150m以下であることが好ましく、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがさらに好ましい。前記粘着シートの総厚の下限値としては、45μm以上であることが好ましい。
【0016】
前記試験部材(D)のうち、例えば熱伝導シートとしては、銅等の金属基材やグラファイト基材等の支持体の一方または両方の面に粘着剤層が設けられたもの、前記支持体の一方の面に粘着剤層を有し、他方の面に樹脂フィルム層を備えたもの等を使用することができる。本発明の評価方法では、前記試験部材(D)を湾曲させることから、前記試験部材(D)としては、湾曲させた際にひび割れなどを引き起こしにくい比較的柔軟性に優れたものであることが好ましい。
【0017】
前記熱伝導シートとしては、例えば剥離ライナーの表面に粘着剤を、ロールコーターやダイコーター等を用いて塗布し、その塗布層を50℃〜120℃程度の環境下で乾燥し溶媒を除去することによって粘着層を形成し、次に前記粘着剤層を、金属基材の一方または両方の面に貼合させた後、必要に応じて、前記粘着剤層が前記所定のゲル分率となるよう15℃〜50℃程度の温度で48時間〜168時間程度養生することによって製造したものを使用することができる。
【0018】
[熱電対温度センサー(E)]
前記発熱部材(A)及び受熱部材(B)に設置可能な熱電対温度センサー(E)としては、応答性の速い仕様がよく、応答時間は0.1秒以内のものを使用することができる。なかでも、作業性に優れる観点から、粘着部を有する貼付型熱電対温度センサーが好ましく使用できる。特に限定されるものではないが、粘着部は耐熱性や接着信頼性の観点から、熱硬化性エポキシ系粘着剤の仕様が好ましく使用できる。また、応答性に優れる観点から、熱接点の形状は先端開放型(先端露出型)の仕様が好ましく使用できる。例えば、理化工業株式会社製のST−50が挙げられる。作業環境に応じて、専用コネクタケーブルを用いても良い。例えば、前記熱電対温度センサーST−50の専用コネクタケーブルとしては、W−ST50A−1000−Y3が挙げられる。
【0019】
[熱伝導性の評価方法]
本発明の熱伝導性の評価方法は、例えば発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、断熱層(C)を介して積層された前記評価装置を用い、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)との端部を、試験部材(D)を介して接続し、次に前記発熱部材(A)の温度を40℃〜200℃に設定した後、前記受熱部材(B)の温度(P
1)を測定し、前記温度(P
1)と、前記温度設定前の前記受熱部材(B)の初期温度(P
0)との温度差を算出する方法が挙げられる。
【0020】
上記温度(P
1)の測定は、前記発熱部材(A)の温度を40〜200℃の範囲に設定した後、おおむね10〜60分後に行うことが好ましい。
【0021】
前記温度差が、比較的大きい場合、発熱部材(A)の熱が試験部材(D)を介して受熱部材(B)に十分に移動しているといえ、その結果、試験部材(D)の熱伝導性が優れるものであると評価できる。その際、前記温度差の値をもとに、異なる材質からなる試験部材(D)の熱伝導性を比較することができる。
【0022】
また、本発明の熱伝導性の他の評価方法は、例えば発熱部材(A)と受熱部材(B)とが、断熱層(C)を介して積層された装置を用い、前記発熱部材(A)と受熱部材(B)とを、試験部材(D)を介して接続し、前記発熱部材(A)を40℃〜200℃の範囲の温度(Q
1)に設定した後、前記受熱部材(B)の温度(P
1)を測定し、前記Q
1及びP
1の温度差を算出する方法が挙げられる。
上記温度(P
1)の測定は、前記発熱部材(A)の温度を40℃〜200℃の範囲の温度(Q
1)に設定した後、おおむね10分〜60分後に行うことが好ましい。
前記温度差が、比較的小さい場合、発熱部材(A)の熱が試験部材(D)を介して受熱部材(B)に十分に移動しているといえ、その結果、試験部材(D)の熱伝導性が優れるものであると評価できる。その際、前記温度差の値をもとに、異なる材質からなる試験部材(D)の熱伝導性を比較することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例及び比較例について具体的に説明をする。
【0024】
(実施例1)
[粘着剤の調製]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート96.4質量部と、β−カルボキシエチルアクリレート2.4質量部と、アクリル酸1.2質量部と、酢酸エチル98質量部とを仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、前記反応容器に、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液2質量部(固形分5質量%)を添加した。
【0025】
次に、前記反応容器内を攪拌した状態で75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過することによって、固形分50質量%、重量平均分子量50万であるアクリル系重合体の溶剤溶液を得た。
【0026】
前記アクリル系重合体の溶剤溶液の固形分100質量部に対し、熱伝導性充填剤として水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製ハイジライトH−32I、平均粒径8μm)を250質量部を添加し、それらを30分間攪拌し、次に、その混合物の固形分が70質量%となるよう酢酸エチルを供給することによって、粘着剤組成物(1)を得た。
【0027】
前記粘着剤組成物(1)100質量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製テトラッドC)の2質量%酢酸エチル溶液2質量部とを混合し、その混合物をディゾルバー攪拌機を用いて30分間攪拌混合することによって、粘着剤(1)を得た。
【0028】
[試験テープの作製]
前記粘着剤(1)を剥離ライナーの表面にロールコーターを用いて塗布し、80℃に調整したドライヤーを用い3分間乾燥させることによって、離型ライナーの表面に厚さ30μmの粘着剤層が形成し、続いて、前記粘着剤層を厚さ70μmの圧延銅箔に転写し貼り合わせた。
【0029】
次に、前記貼付物を40℃環境下で72時間養生し粘着剤層付き熱伝導性シートを作製した。前記粘着剤層付き熱伝導性シートを幅30mm×長さ30mmの大きさに裁断したものを試験テープとして使用した。
【0030】
[熱伝導性の評価方法]
厚さ0.5mm、幅70mm及び長さ75mmのアルミニウム板(a2−1)(JIS H4000規定のA1050)を用意し、前記アルミニウム板(a2−1)の70mm幅の辺の中間位置へ、前記試験テープの長さ方向の一方の端部を、その貼付面積が幅30mm×長さ10mmとなるように貼付し、前記試験テープの上部から200gローラーを用い1往復の荷重をかけた。
【0031】
次に、厚さ0.5mm、幅70mm及び長さ75mmのアルミニウム板(b2−1)(JIS H4000規定のA1050)を用意し、前記試験テープの他方の端部を、前記のアルミニウム板(b2−1)における幅方向の中間位置へ、その貼付面積が幅30mm及び長さ10mmとなるように貼付し、前記試験テープの上部から200gローラーを用い1往復の荷重をかけた。
【0032】
次に、前記アルミニウム板(a2−1)の中央に、発熱部材(a1−1)であるシリコーンラバーヒーター(アズワン製、1−130−01)を、幅50mm、長さ50mmの熱伝導性粘着テープ(信越化学工業株式会社製、TC−10SAS)にて貼り合わせた。前記熱伝導性粘着テープは、前記試験テープを貼付したアルミニウム板(a2−1)の面と同じ側の面に貼付した。
【0033】
また、熱電対温度センサー(理化工業株式会社製、ST−50)を、アルミニウム板(a2−1)の表面、及び、アルミニウム板(b2−1)の表面に、それぞれ貼り合わせた。
【0034】
次に、幅80mm、長さ80mm、厚さ5mmのポリエチレンフォーム(古河電気工業株式会社製、SN−500)を、前記アルミニウム板(a2−1)と、前記アルミニウム板(b2−1)との間に置き、前記アルミニウム板(b2−1)の下に、幅80mm、長さ80mm、厚さ5mmのポリエチレンフォーム(古河電気工業株式会社製、SN−500)を設置した。
【0035】
次に、前記シリコーンラバーヒーターの上部に、熱電対温度センサーを貼り合わせた。その上に、幅50mm、長さ50mm、厚さ5mmのポリエチレンフォーム(古河電気工業株式会社製、SN−500)を設置し、その上に100gの重りを設置した。
【0036】
23℃50%RH中の無風環境にて、前記アルミニウム板(a2−1)の表面温度Q
1が50℃になるように、前記シリコーンラバーヒーターの温度を調整した。前記表面温度Q
1が50℃になってから、30分経過後に、前記アルミニウム板(b2−1)の表面温度P
1を測定した。続いて、前記表面温度Q
1と前記表面温度P
1との差を計算した。
【0037】
(実施例2)
[粘着剤(2)の調製]
水酸化アルミニウムを使用しないこと以外は、粘着剤(1)と同様の方法で粘着剤(2)を調製した。
粘着剤(1)の代わりに、上記粘着剤(2)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で試験テープを作製し、その熱伝導性を評価した。
【0038】
(実施例3)
厚さ70μmの圧延銅箔の代わりに、厚さ35μmの圧延銅箔を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で試験テープを作製し、その熱伝導性を評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜3に記載の試験テープは、いずれも優れた熱伝導性を有するものであった。表1中の「Q
1−P
1」(℃)の値に基づき、実施例1記載の試験テープが、実施例2及び3に記載の試験テープよりも優れた熱伝導性を有することがわかった。また、実施例2及び3に記載の試験テープは、同等の熱伝導性を有するものであることが分かった。