【文献】
Ai Lin Chun,Nanosheets: Fit to repair,Nature Nanotechnology,2009年 6月19日,p.1-2
【文献】
T. Fujie et al.,Adhesive, Flexible, and Robust Polysaccharide Nanosheets Integrated for Tissue-Defect Repair,Advanced Functional Materials,2009年 8月24日,Vol.19,p.2560-2568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の浸透性基材及び前記第2の浸透性基材は、メッシュシート、不織布シート及び多孔質構造を有するシートのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ薄膜転写シート。
前記第1の浸透性基材と前記第2の浸透性基材とは、互いに前記ナノ薄膜層との接触面積が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ薄膜転写シート。
前記第1の浸透性基材及び第2の浸透性基材のいずれか一方に代えてカバーフィルムを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ薄膜転写シート。
前記ナノ薄膜層は、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ薄膜転写シート。
前記ポリアニオンは、1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ポリマーであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のナノ薄膜転写シート。
前記積層体形成工程において、第1の浸透性基材、第1の溶解性支持層、及び第1のナノ薄膜層がこの順に積層されてなる第1の積層体と、第2の浸透性基材、第2の溶解性支持層、及び第2のナノ薄膜層がこの順に積層されてなる第2の積層体とを、前記第1のナノ薄膜層と前記第2のナノ薄膜層とが対向するように貼り合せて前記積層体を形成することを特徴とする請求項13に記載のナノ薄膜転写シートの製造方法。
前記溶解除去工程の後に、前記第1の浸透性基材及び前記第2の浸透性基材のいずれか一方を前記ナノ薄膜層から剥離し、前記ナノ薄膜層の前記浸透性基材が剥離された側にカバーフィルムを積層するカバーフィルム積層工程を更に備えることを特徴とする請求項13又は14に記載のナノ薄膜転写シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の寸法比率は、図示された比率に限られるものではない。
【0024】
図1は、本実施形態に係るナノ薄膜転写シートを示す模式断面図である。同図に示すように、ナノ薄膜転写シート1は、第1の浸透性基材2aと、ナノ薄膜層3と、第2の浸透性基材2bとがこの順に積層されることによって構成されている。
[ナノ薄膜層]
【0025】
ナノ薄膜層3は、例えばポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層とを有する。
【0026】
ナノ薄膜層3は、A層とB層が交互に積層された層(交互積層薄膜)であることが好ましい。A層とB層とが交互に積層されることによって、機械的強度及び自己密着性に優れたナノ薄膜層となる。なお、A層とB層とが交互に積層されるとは、1層のA層と1層のB層とが交互に積層されている場合に限られず、複数のA層からなる層と、複数のB層からなる層とが交互に積層されている場合も含む。
【0027】
ナノ薄膜層3がA層とB層との交互積層体である場合、各層の積層の数は特に限定されるものではない。ナノ薄膜層3の透明性を確保しやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが1〜300層であることが好ましい。また、ナノ薄膜層3が、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが10〜100層であることがより好ましく、20〜80層であることが更に好ましい。
【0028】
ナノ薄膜層3におけるA層とB層との積層構造は、例えばナノ薄膜層3をIR、NMR、TOF−SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析、Time−of−Flight SIMS)等で観察することにより、確認することができる。
【0029】
ナノ薄膜層3の厚みは特に制限されない。自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、ナノ薄膜層3の厚みは、1〜300nmの範囲内であることが好ましく、40〜300nmであることがより好ましく、40〜250nmの範囲内であることが特に好ましく、40〜200nmの範囲内であることが最も好ましい。
【0030】
ナノ薄膜層3は、皮膚貼付用ナノ薄膜層、化粧用ナノ薄膜層、又は、化粧用皮膚貼付用ナノ薄膜層として好適に使用することができる。
(ポリカチオン)
【0031】
本明細書において、ポリカチオンとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する化合物をいい、カチオン性基とは、カチオン基又はカチオン基に誘導され得る基をいう。カチオン性基としては、例えば、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基及びグアニジノ基が挙げられる。なお、アミノ基はプロトンが配位結合した−NH
3+であってもよい。
【0032】
ポリカチオンとしては、カチオン性ポリマーが好ましい。なお、本明細書において、カチオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有するポリマーをいう。カチオン性ポリマーとしては、カチオン性基を有するモノマーを重合させたものであることが好ましい。
【0033】
カチオン性ポリマーとしては、水の存在下で後述するアニオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して有害反応の少ないものが好ましい。また、カチオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。
【0034】
カチオン性ポリマーとしては、水に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でカチオン性基が解離することにより正電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。カチオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリマーが好ましい。
【0035】
カチオン性ポリマーの好ましい例としては、コラーゲン、ポリヒスチジン、アイオネン、キトサン、アミノ化セルロース等の塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジビニルピリジン等の塩基性ビニルポリマー;並びにそれらの塩類(塩酸塩、酢酸塩等)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
【0036】
さらに、上述のカチオン性ポリマーを架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。カチオン性ポリマーを架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。カチオン性ポリマーがアミノ基を有する場合には、カチオン性ポリマーのアミノ基をジカルボン酸と縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。
【0037】
カチオン性ポリマーとしては、塩基性多糖類若しくはその誘導体(例えば、アセチル化物等)又はそれらの塩が好適である。特に、塩基性多糖類としてはキトサンが好ましい。キトサンはキチンの脱アセチル化物であり、その脱アセチル化度としては、生体吸収性、水溶性がより優れることから、40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることが更に好ましい。
【0038】
カチオン性ポリマーの分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、ポリカチオンを含む溶液の粘度が高くなるため、ナノ薄膜層の形成時に流延し難く、積層し難くなる傾向がある。また、被着体が生体である場合、カチオン性ポリマーの粘度平均分子量が大きいと、生体吸収性が低下する傾向がある。カチオン性ポリマーの粘度平均分子量は、1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることが更に好ましい。
【0039】
本明細書において、「粘度平均分子量」とは、一般的な測定方法である粘度法により評価すればよく、例えば、JIS K 7367−3:1999に基づいて測定した極限粘度数[η]から算出することができる。
【0040】
ポリカチオンとして、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する低分子の化合物であっても好ましく用いることができる。1分子中に2個以上のカチオン性基を有する低分子の化合物としては、例えば、低分子のジアミン及びポリアミンが挙げられる。このようなポリカチオンとして、具体的には、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン等のジアミノアルカン類のように1分子中に2個のアミノ基を有する化合物、N−(リジル)−ジアミノエタン、N,N’−(ジリジル)−ジアミノエタン、N−(リジル)−ジアミノヘキサン、N,N’−(ジリジル)−ジアミノヘキサン等のモノ又はジリジルアミノアルカン類のように1分子中に3〜4個のアミノ基を有する化合物、及び、1分子中に5個以上のアミノ基を有する化合物を挙げることができる。
(ポリカチオンを含む溶液)
【0041】
ポリカチオンを含む溶液中のポリカチオンの濃度は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2.0質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が更に好ましい。
【0042】
ポリカチオンを含む溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、0.5〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、1〜100mPa・sの範囲内であることが更に好ましい。本明細書において、粘度とは、株式会社エー・アンド・デー製音叉型振動式粘度計SV−10を用い、サンプル量10mL、20℃で測定した値である。
【0043】
ポリカチオンを含む溶液には、2種類以上のポリカチオンを併用してもよい。
【0044】
ポリカチオンを含む溶液の溶媒としては、ポリカチオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリカチオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。
【0045】
ポリカチオンを含む溶液は、ポリカチオンを溶媒に溶解させたものをそのまま用いることができる。例えば、ポリカチオンを含む溶液のpHは、1.2〜6.6にすることができる。
(ポリアニオン)
【0046】
本明細書において、ポリアニオンとは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有する化合物をいい、アニオン性基とは、アニオン基又はアニオン基に誘導され得る基をいう。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、硫酸基、スルホン酸基及びリン酸基が挙げられる。
【0047】
ポリアニオンとしては、アニオン性ポリマーが好ましい。なお、本明細書において、アニオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有するポリマーをいう。アニオン性ポリマーとしては、アニオン性基を有するモノマーを重合させたものであることが好ましい。
【0048】
アニオン性ポリマーとしては、水の存在下で上記カチオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して有害反応の少ないものが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。
【0049】
アニオン性ポリマーとしては、水に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でアニオン性基が解離することにより負電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。アニオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するポリマーが好ましい。
【0050】
アニオン性ポリマーの好ましい例としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ペクチン、サクラン等のカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有する天然の酸性多糖類及びその誘導体;セルロース、デキストラン、デンプン等の天然ではカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有しない多糖類にアニオン性基を結合させて人工的に合成された酸性多糖類及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース及び硫酸化デキストラン並びにそれらの誘導体);ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸とアスパラギン酸との共重合体等の酸性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリアクリル酸等の酸性ビニルポリマー;並びにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が挙げられる。
【0051】
酸性多糖類の誘導体としては、例えば、水酸基の一部又は全部を、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸等と反応させたもの;カルボキシル基又はカルボキシレート基の一部をエチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子アルコールでエステル化した化合物が挙げられる。
【0052】
酸性多糖類の誘導体としては、例えば、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレングリコールエステル及びヒアルロン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。これらの誘導体におけるエステル化度は特に制限されないが、エステル化度が高くなりすぎると、カルボキシル基又はカルボキシレート基の割合、すなわちアニオン性が低下し、上記カチオン性ポリマーとの間に形成されるポリイオンコンプレックスの機械的強度が低下する傾向にある。そこで、酸性多糖類の誘導体におけるエステル化度は40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることが更に好ましい。
【0053】
酸性多糖類又は酸性多糖類の誘導体の塩としては、これらと1価のイオンとの塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0054】
さらに上述のアニオン性ポリマーを架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。アニオン性ポリマーを架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。アニオン性ポリマーが、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有する場合には、アニオン性ポリマーのカルボキシル基又はカルボキシレート基をジアミンと縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。
【0055】
アニオン性ポリマーとしては、酸性多糖類若しくはその誘導体又はそれらの塩が好適である。特に、天然の多糖類であり、生体適合性に優れ、かつ入手が容易であることから、アルギン酸若しくはその誘導体(具体的には、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)又はそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が好ましい。
【0056】
アニオン性ポリマーの分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、ポリアニオンを含む溶液の粘度が高くなるため、ナノ薄膜層の形成時に流延し難く、積層し難くなる傾向がある。また、被着体が生体である場合、アニオン性ポリマーの粘度平均分子量が大きいと、生体吸収性が低下する傾向がある。アニオン性ポリマーの粘度平均分子量は1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることが更に好ましい。
【0057】
ポリアニオンとして、1分子中に2個以上のアニオン性基を有する低分子の化合物であっても好ましく用いることができる。1分子中に2個以上のアニオン性基を有する低分子の化合物としては、例えば、コハク酸、マロン酸等の1分子中に2個のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する化合物が挙げられる。
(ポリアニオンを含む溶液)
【0058】
ポリアニオンを含む溶液中のポリアニオンの濃度は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2.0質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が更に好ましい。
【0059】
ポリアニオンを含む溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、1〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、10〜100mPa・sの範囲内であることが更に好ましい。
【0060】
ポリアニオンを含む溶液には、2種類以上のポリアニオンを併用してもよい。
【0061】
ポリアニオンを含む溶液の溶媒としては、ポリアニオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリアニオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。
【0062】
ポリアニオンを含む溶液のpHは、1.6〜5.4であることが好ましいが、ポリアニオンの溶解性により優れることから、1.8〜5.0の範囲内であることがより好ましく、2.0〜4.5の範囲内であることが更に好ましく、2.5〜4.0の範囲内であることが特に好ましい。
【0063】
ポリアニオンを含む溶液のpHは、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、リンゴ酸等の有機酸、又は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を添加することで調整できる。
【0064】
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの組合せは、水の共存下で混合した場合に、ポリイオンコンプレックスを形成し、ゲル化するものであれば、いずれの組合せでもよい。特に、安全性により優れることから、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーのうちの少なくとも1種が生体吸収性ポリマーであることが好ましい。
【0065】
生体吸収性ポリマーとは、生分解され得るポリマーを意味する。具体的には、カチオン性ポリマーとして、キトサン、コラーゲン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、アイオネン等が挙げられる。アニオン性ポリマーとして、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、コンドロイチン硫酸及びその誘導体等が挙げられる。
(その他の成分)
【0066】
ナノ薄膜層3には、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、化粧料及び化粧料成分が徐々に薄膜フィルムから溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。
【0067】
化粧料としては、保湿クリーム、スキンクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、美容ジェル等のスキンケアに用いられる化粧料全般を用いることができる。化粧料成分としては、化粧品学的に許容される皮膚に有効な成分であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、保湿剤、ホワイトニング成分、しみ取り成分、防皺成分、ビタミン類、抗炎症成分、血流促進成分、湿潤成分、油分、金属微粒子等の化粧料に用いられる成分を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
このような化粧料成分としては、例えば、アーモンド油、アクリル酸アルキルコポリマー、麻セルロース、アシタバエキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、キサンチン、アスタキサンチン、アスパラガスエキス、アスパラギン酸、アズレン、アセロラエキス、アデノシン三リン酸2Na、アボカド油、アマチャエキス、アミノ酪酸、アラニン、アラントイン、アルギニン、アルギン酸Na、アルジルリン、アルテアエキス、アルニカエキス、アルブミン、アロエベラエキス−2−キダチアロエエキス、安息香酸塩Na、イチョウエキス、イノシトール、ウコンエキス、ウワウルシエキス、エイジツエキス、塩化ナトリウム、オイスターエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オリーブ油、オリザノール、海塩、加水分解ケラチン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解コンキリオン、加水分解シルク、加水分解卵殻膜、加水分解卵白、褐藻エキス、カフェイン、カミツレエキス、カラミン、カリンエキス、カロチン、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カンフル、キイチゴエキス、キウイエキス、キシリトール、キトサン、キュウリエキス、クオタニウム−73、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、グリコール酸、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸2K、グリチルレチン酸ステアリル、グルコース、グルタチオン、グルタミン酸、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、ケープアロエエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、コエンザイムQ10、コーヒーエキス、コーンスターチ、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココベタイン、ゴボウエキス、ゴマ油、コムギデンプン、コムギ胚芽エキス、コメヌカエキス、コレステロール、コンフリーエキス、酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、サザンカオイル、サフラワー油、サリチル酸、サリチル酸Na、酸化亜鉛、酸化チタン、サンザシエキス、シアノコバラミン、シイタケエキス、ジオウエキス、ジグリセリン、シコンエキス、シソエキス、ジヒドロコレステロール、ジフェニルジメチルメコン、シモツケソウエキス、酒石酸、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シルク、シルクエキス、水添レシチン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、セイヨウキヅタエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、セタノール、セラミド3、セリン、セルロースガム、ソウハクヒエキス、ソルビトール、ダイズエキス、ダイズ発酵エキス、月見草油、ドクダミエキス、トコフェロール、トレハロース、ナイアシンアミド、ニコチン酸トコフェロール、乳酸、乳酸Na、尿素、バクガエキス、ハチミツ、パパイン、ハマメリスエキス、パルミチン酸レチノール、パンテノール、ヒアルロン酸Na、ビオチン、ヒキオコシエキス、ヒマシ油、ヒマワリ油、ピリドキシンHCl、ビワ葉エキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子油、プラセンタエキス、プルラン、ベタイン、ヘチマエキス、ボタンエキス、ホップエキス、ホホバオイル、メドウフォーム油、メトキシケイヒサンオクチル、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ヤシ油、ユーカリエキス、ユーカリ油、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨウ化ニンニクエキス、葉酸、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラズベリーケトン、ラクトフェリン、ラノリン、ラベンダーエキス、リシン、リシンHCl、リノール酸、リボフラビン、硫酸Na、リンゴエキス、レイシエキス、レシチン、レゾルシン、レタスエキス、レモンエキス、レモン油、ロイシン、ローズ水、ローズヒップ油、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリー、ワレモコウエキス、AHA、BG、DNA、PCA−Na、PCA−Naアラントイン、PG、PPG−28ブテス−35、RNA−NA、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、α−アルブチン、ムコ多糖、クレアチン、ジアセチルボルジン、ビタミンA及びその誘導体、リン酸リボフラビンナトリウム、リボフラビン、ヒドロキノン、リポ核酸及びその塩、アミノ酸及びその誘導体、各種植物エキス、各種動物由来抽出物など、が挙げられる。
【0069】
ナノ薄膜層3には、色素を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)の貼付位置を目視等で簡単に確認できる。
【0070】
色素としては、ナフトール染料(アゾ染料)、モーブ、パラレッド、フルオレセイン、フクシン、フェノールフタレイン、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体色素、メチレンブルー、ジヒドロイントール、コンゴーレッド、エオシン、インダンスレン、アニリンブラック、アクリジン、アゾ染料、アゾイック染料、ネオシアニン、クリプトシアニン、インドシアニングリーン、ヘモグロビン、ヘムエリトリン、フェオポルフィリン、フェオホルビド、チトクロム、バクテリオクロロフィル、クロロフィリド、クロロフィル、メラニン、カテキン、アントシアン、アントクロール、フラバノン、フラボン類、フラボノイド、ルテイン、リコピン、フコキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、キサントフィル、カロチン、カロチノイド、ゲニステイン、クロロクルオリン、クロリン、クロセチン、クルクミン、キサントンマチン、カルタミン、エリトロクルオリン、ウロビリン、インジゴ、アントラキノン、アントシアン、アリザリン、ビリルビン、ビリベルジン、フィトクロム、フィコエリスリン、フィコビリン、フィコシアニン、ミオグロビン、ポルフィン、ポルフィリン、ヘモシアニン、ヘモバナジン、ロドマチン、ロドキサンチン、ロドプシン、リトマス、レグヘモグロビン、ラミナラン、モリンジン、ホルビリン、マンゴスチン、ベルベリン、ベタシアニン、プルプリン、ブラジリン、ピンナグロビン、ヒペリシン、ビキシン、ツラシン、タンニン、ステルコピリン、シコニン、コンメリニン、ゴッシポール、コチニールなどが挙げられる。その中でも、イオン性の色素が水及びアルコールに溶解するので好ましい。
【0071】
ナノ薄膜層3には、金属イオンを保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、金属イオンが徐々にナノ薄膜層から溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。また、金属イオンを利用して、抗菌、殺菌、消臭、制汗といった効果をもったナノ薄膜層にすることができる。
【0072】
金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカル金属イオン、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属イオン、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの遷移金属イオン、アルミニウム、鉛、スズイオンなどが挙げられる。その中でも、抗菌、消臭効果がある銀イオンがより好ましい。
【0073】
ナノ薄膜層3には、薬物を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、薬物が徐々にナノ薄膜層から溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。また、創傷治癒といった効果をもったナノ薄膜層にすることができる。
【0074】
薬物としては、抗炎症剤、止血剤、血管拡張薬、血栓溶解剤、抗動脈硬化剤等が挙げられる。
【0075】
架橋剤として、アルキルジイミデート類、アシルジアジド類、ジイソシアネート類、ビスマレイミド類、トリアジニル類、ジアゾ化合物、グルタルアルデヒド、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)アルキオネート、ブロモシアン等を用いて、上記の成分とナノ薄膜層3中の所定の官能基とを架橋させてもよい。
【0076】
さらに、薬物・化粧料が疎水性の場合、ナノ薄膜層の疎水性領域に疎水性相互作用にて結合させる方法、薬物・化粧料が水素結合性の場合、ナノ薄膜層の水素結合性領域に水素結合にて結合させる方法、薬物・化粧料が電荷を有する場合、ナノ薄膜層の反対電荷領域に静電的相互作用にて結合させる方法を用いてもよい。
[浸透性基材]
【0077】
浸透性基材2a,2bは、溶媒を浸透又は透過させることが可能な基材であり、好ましくは、ナノ薄膜層3を第1の浸透性基材2a又は第2の浸透性基材2bに支持させる溶解性支持層(詳細は後述する)を溶解させる溶媒を浸透又は透過させることが可能な基材である。また、浸透性基材2a,2bは、溶解性支持層を溶解させる溶媒には溶解しない基材である。
【0078】
浸透性基材2a,2bの膜厚は、追従性及び取扱性の観点から、1〜500μmであることが好ましく、3〜300μmであることがより好ましく、5〜200μmであることが更に好ましい。
【0079】
浸透性基材2a,2bは、取扱性及び入手の容易性の観点から、シート(フィルム)状であることが好ましい。また、浸透性基材2a,2bは、上記溶媒を浸透又は透過させる孔を有することが好ましく、メッシュシート、不織布シート又は多孔質構造を有するシートであることがより好ましい。メッシュシートとは、例えば直径100μm以下の糸状の材料が格子状に編みこまれたものを指す。
【0080】
メッシュシートとしては、例えば、ポリエステルメッシュシート、ナイロンメッシュシート、カーボンメッシュシート、フッ素樹脂メッシュシート、ポリプロピレンメッシュシート、シルクメッシュシートが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルメッシュシート、ナイロンメッシュシート、ポリプロピレンメッシュシートが好ましく、ポリエステルメッシュシートがより好ましい。ポリエステルメッシュシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレートメッシュシートが好ましい例として挙げられる。なお、これらのメッシュシートと不織布とを複合させて用いてもよい。
【0081】
メッシュシートの空隙は、ナノ薄膜層4の転写性の観点から、JIS L 1096に記載されるフラジール形法による通気性で、10〜100000cc/cm
2・secであることが好ましく、100〜50000cc/cm
2・secであることがより好ましく、1000〜10,000cc/cm
2・secであることが更に好ましい。また、第1の浸透性基材2aと第2の浸透性基材2bとの空隙の差は、100cc/cm
2・sec以上であることが好ましく、500cc/cm
2・sec以上であることがより好ましく、1000cc/cm
2・sec以上であることが更に好ましい。
【0082】
第1の浸透性基材2aと第2の浸透性基材2bとは、互いに同じ基材からなっていてもよく、互いに異なる基材からなっていてもよい。第1の浸透性基材2a及び第2の浸透性基材2bは、ナノ薄膜層4との密着強度が互いに異なるものであることが好ましい。浸透性基材を剥離する際、ナノ薄膜層4が一方の浸透性基材上に残存し、ナノ薄膜層4自体に破けや欠け等の損傷がないことにより、密着強度の違いを確認できる。密着強度を変える手段としては、例えば浸透性基材に用いるメッシュシートの材質、織りの状態、用いられる繊維の太さ、メッシュの目開き、目開き率等を調整することが挙げられる。
【0083】
本実施形態においては、第1の浸透性基材2a及び第2の浸透性基材2bは、例えばいずれもポリエチレンテレフタレートメッシュシートからなっている。ただし、第1の浸透性基材2aを構成するポリエチレンテレフタレートメッシュシートの目開きは、例えば第2の浸透性基材2bを構成するポリエチレンテレフタレートメッシュシートの目開きよりも小さくなっている。換言すれば、例えば第1の浸透性基材2aを構成するポリエチレンテレフタレートメッシュシートの空隙は、第2の浸透性基材2bを構成するポリエチレンテレフタレートメッシュシートの空隙よりも小さくなっている。
【0084】
以上のように、浸透性基材2a,2bに用いるメッシュシートの目開き及び目開き率を調整することにより、浸透性基材2a,2bとナノ薄膜層との接触面積を調整できる。
[ナノ薄膜転写シートの製造方法]
(ナノ薄膜層形成工程)
【0085】
図2は、本実施形態に係るナノ薄膜層転写シートの製造方法を示す模式断面図である。
図2(a)に示すように、まず、支持基材4上にナノ薄膜層3aを形成する。ナノ薄膜層3aは、例えば支持基材4と、ポリカチオンを含む溶液(以下、「溶液A」ともいう。)と、ポリアニオンを含む溶液(以下、「溶液B」ともいう。)とを用いて、Langmuir,Vol.13,pp.6195−6203,(1997年)に記載された交互積層法によって製造することができる。支持基材4は、例えば後述するカバーフィルムを形成する材料と同じ材料によって形成されている。
【0086】
ナノ薄膜層形成工程は、溶液A又は溶液Bに支持基材4を接触させて、支持基材4の表面にポリカチオン又はポリアニオンに由来する層を形成する工程、及び、(i)ポリカチオンに由来する層に溶液Bを接触させて、ポリカチオンに由来する層上にポリアニオンに由来する層を形成するステップと、(ii)ポリアニオンに由来する層に溶液Aを接触させて、ポリアニオンに由来する層上にポリカチオンに由来する層を形成するステップとを繰り返してナノ薄膜層3aを形成する工程を備えることが好ましい。
【0087】
この交互積層法によると、支持基材4上に形成されるポリカチオンに由来する層(又はポリアニオンに由来する層)と、溶液B(又は溶液A)とが接触することで、ポリカチオン及びポリアニオンが交互に吸着して積層膜が形成される。また、上記接触によりポリカチオン又はポリアニオンの吸着が進行して表面電荷が反転すると、さらなる静電吸着は起こらなくなるため、溶液A又は溶液Bとの接触により形成される層の厚さは制御することができる。
【0088】
ナノ薄膜層形成工程では、溶液Aに支持基材4を接触させて、支持基材4の表面にポリカチオンに由来する層を形成するか、又は、溶液Bに支持基材4を接触させて、支持基材4の表面にポリアニオンに由来する層を形成する。支持基材4の表面が負に帯電している場合は前者を、支持基材4の表面が正に帯電している場合は後者を行うことが好ましい。また、支持基材4の表面の少なくとも一部を、溶液A又は溶液Bに接触させればよい。
【0089】
ステップ(i)又はステップ(ii)においては、表面電荷が反転すればよい。また、接触の回数は特に限定されるものではない。例えば、ステップ(i)において、溶液Bとの接触を2回以上に分けて行ってもよく、ステップ(ii)において、溶液Aとの接触を2回以上に分けて行ってもよい。
【0090】
ステップ(i)とステップ(ii)とを繰り返す回数に特に制限はないが、ナノ薄膜層3aの透明性を確保しやすい傾向にあることから、ポリカチオンに由来する層及びポリアニオンに由来する層のいずれもが1〜300層となるまで繰り返すことが好ましい。また、ナノ薄膜層3aが、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、ポリカチオンに由来する層及びポリアニオンに由来する層のいずれもが10〜100層となるまで繰り返すことがより好ましく、20〜80層となるまで繰り返すことが特に好ましい。なお、ナノ薄膜層3aを形成する工程における繰り返し回数を制御することによって、ナノ薄膜層3aの膜厚を制御することができる。
【0091】
上記交互積層法においては、ナノ薄膜層形成工程が、ステップ(i)で終わるよりも、ステップ(ii)で終わることが好ましい。これにより、ポリカチオンとして用いた物質の特性が発現しやすくなる。例えば、ポリカチオンとしてキトサンを用いた場合、キトサンの特性である抗菌性を発現しやすくなる。
【0092】
ナノ薄膜層形成工程においては、支持基材4、ポリカチオンに由来する層又はポリアニオンに由来する層と、溶液A又は溶液Bとの接触後に接触面をリンスすることが好ましい。これにより、接触面から余分な材料を除去することができる。
【0093】
リンスに用いるリンス液としては、水、有機溶媒又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0094】
ナノ薄膜層形成工程においては、支持基材4、ポリカチオンに由来する層及びポリアニオンに由来する層を、溶液A及び溶液Bに浸漬することにより接触させることが好ましい(以下、「交互浸漬法」ともいう。)。これにより、より一層工業的に生産するのが容易となり、より一層汎用的な製造方法とすることができる。
【0095】
交互浸漬法によるナノ薄膜層3aの形成装置として、J.Appl.Phys.,Vol.79,pp.7501−7509,(1996)、特願2000−568599号(特許第4302321号公報)等に記載されたディッパーと呼ばれる装置を用いてもよい。ディッパーを用いる場合、支持基材4を固定したアームが自動的に動き、プログラムに従って支持基材4を溶液A中、溶液B中又はリンス液中に順次浸漬させることができる。
【0096】
交互浸漬法によれば、表面電荷が反転する限り、ナノ薄膜層3aの形成を継続することができる。そのため、通常のディップコート法よりも、交互浸漬法で形成したナノ薄膜層3aの膜厚均一性は高く、かつ膜厚制御性も高い。
【0097】
交互浸漬法を用いてナノ薄膜層を形成する場合において、ポリアニオンを含む溶液は、効率よく交互積層できる観点から、pHが1.6〜5.4であることが好ましい。
【0098】
また、交互浸漬法によれば、支持基材4の一部又は全部が筒状、糸状、繊維、発泡体等の形状を有していても、浸漬することにより溶液が入り込むことができるものであれば、ナノ薄膜層がその表面に形成されるので使用することができる。また、支持基材4の表面が凹凸形状を有していても、表面の構造に追従してナノ薄膜層を形成することができる。さらに、支持基材4表面がナノメートルスケール又はサブミクロンスケールの構造を有していても、その構造に追従してナノ薄膜層を形成することができる。
【0099】
本実施形態のナノ薄膜層3aは、支持基材4に溶液A又は溶液Bを滴下又はスプレーするスピンコート法で交互積層膜を形成することにより製造してもよい。その際、リンス液は滴下、スプレー、シャワー又はそれらを組み合わせた方法で供給されてもよい。支持基材4は、搬送、回転等の運動を行っていてもよい。
【0100】
いずれの製造方法を用いる場合も、溶液A又は溶液Bの溶媒としては、それぞれ、ポリカチオン又はポリアニオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリカチオン又はポリアニオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。ポリカチオン又はポリアニオンの溶液中の濃度は特に制限されるものではなく、各製造方法に応じて適宜設定すればよい。
【0101】
さらに、ポリカチオン及びポリアニオンの少なくとも一方が塩であり、その塩におけるカチオン基又はアニオン基の対イオンを除去することによりポリカチオン又はポリアニオンの水への溶解性が低下する場合、ナノ薄膜層を形成した後にナノ薄膜層に含まれる対イオンを除去することによって、ナノ薄膜層の力学的強度を向上させることができる。対イオンの除去は、例えば洗浄工程の回数を増やす、pH調整液に浸す等の方法により行うことができる。
(溶解性支持層形成工程)
【0102】
次に、
図2(b)に示すように、ナノ薄膜層3aの支持基材4とは反対の面上に溶解性支持層5aを形成する。
【0103】
溶解性支持層5aは、溶媒に溶解するものであれば限定されないが、肌への刺激性を考慮すると、水又はアルコールに可溶な高分子から形成された膜からなる層であることが好ましい。溶解性支持層5aは、弱アルカリ性又は弱酸性水溶液に可溶な層であってもよい。
【0104】
水又はアルコールに可溶な高分子としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の高分子電解質;ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート等の非イオン性の水溶性高分子;ノボラック又はポリ(N−アルキルシアノアクリレート)等の樹脂を例示することができる。
【0105】
上記高分子の粘度平均分子量は、通常100〜100万であることが好ましく、5000〜50万であることがより好ましい。
【0106】
本実施形態においては、水又はアルコールに可溶な高分子として、ポリビニルアルコール又はその誘導体を用いることがより好ましい。ポリビニルアルコールを用いる場合、膜形成性及び溶媒への溶解性の観点から、平均重合度は、100〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましい。ここで、平均重合度は、JIS K 6726で規定の方法に基づいて測定することができる。
【0107】
また、溶解性支持層5aの膜厚は、ナノ薄膜層3aとの剥離性及び貼り合わせ性の観点から、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜50μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜20μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0108】
溶解性支持層5aは、支持基材4の一面側に形成されたナノ薄膜層3a上に、例えば水又はアルコールに溶解した高分子の溶液を塗布して、通常10分〜24時間、好ましくは1時間〜12時間乾燥させて水又はアルコールを除去することで形成される。
【0109】
ナノ薄膜層3a上への上記高分子の溶液の塗布の方法としては、例えばキャスト法、スピンコート法等があるが、これらに限定されるものではない。溶解性支持層5aは、バーコーター又はロールコーターを用いて形成することもできる。
【0110】
上記水又はアルコールに溶解した高分子の濃度は、特に制限はないが、塗工性の観点から1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましく、5〜10質量%が特に好ましい。
【0111】
溶解性支持層5aは、ピンセット等を用いて支持基材4からナノ薄膜層3aとともに剥離できる。このとき、溶解性支持層5aとナノ薄膜層3aとの間に生じる静電的相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等の2次結合力によって、剥離と同時にナノ薄膜層3aを溶解性支持層5aに移し取ることが可能となる。
(浸透性基材形成工程)
【0112】
続いて、
図2(c)に示すように、溶解性支持層5を溶解させる溶媒を浸透又は透過させる浸透性基材2aを溶解性支持層5a上に積層する。浸透性基材2の積層方法としては、特に限定されないが、ラミネート等の方法を用いることができる。なお、支持基材4をナノ薄膜層3aから剥離した後に、浸透性基材2aを溶解性支持層5a上に積層してもよい。
(積層体形成工程)
【0113】
続いて、
図2(d)に示すように、例えば上記の工程で得られた第1の積層体6a及び第2の積層体6bを準備する。第1の積層体6aは、第1の浸透性基材2aと、第1の溶解性支持層5aと、第1のナノ薄膜層3aとが積層されることによって構成されている。一方、第2の積層体6bは、第2の浸透性基材2bと、第2の溶解性支持層5bと、第2のナノ薄膜層3bとが積層されることによって構成されている。
【0114】
次に、
図2(e)に示すように、第1の積層体6aと第2の積層体6bとを、第1のナノ薄膜層3aと第2のナノ薄膜層3bとが対向するように互いに貼り合せて積層体7を得る。貼り合せる方法としては、例えばラミネート等の方法を用いることができる。なお、ラミネートする際、ナノ薄膜層4は乾燥した状態でなく、水分を含んだ状態であることが好ましい。
【0115】
なお、最終的に得られるナノ薄膜転写シート1のナノ薄膜層3に上述した化粧料、色素等を保持させる場合、積層体形成工程の前に第1のナノ薄膜層3a及び第2のナノ薄膜層3bのいずれか一方又は両方に予め化粧料、色素等を保持させておくことができる。あるいは、積層体形成工程において、第1のナノ薄膜層3aと第2のナノ薄膜層3bとの間に化粧料、色素等を配置した上で、第1のナノ薄膜層3aと第2のナノ薄膜層3bとを貼り合せることもできる。
(溶解除去工程)
【0116】
続いて、
図2(f)に示すように、例えば溶解性支持層5a,5bを溶解させる溶媒8(例えば水)に積層体7を浸漬する。これにより、
図2(f)に矢印で模式的に示したように、浸透性基材2a,2bが溶媒8を浸透又は透過させるので、溶解性支持層5a,5bが溶媒8に溶解する。したがって、溶解性支持層5a,5bが除去されたナノ薄膜転写シート1が得られる。
[作用効果]
【0117】
上述したように、本実施形態では、浸透性基材2a,2bが溶解性支持層5a,5bを溶解させる溶媒を浸透又は透過させるメッシュシートからなっている。そのため、溶解除去工程によって溶解性支持層5a,5bを溶解させることができ、溶解性支持層5a,5bが除去されたナノ薄膜転写シート1が得られる。したがって、このナノ薄膜転写シート1によれば、最終的な溶解性支持層の除去を要さずに簡便にナノ薄膜層3を被着体へ転写できる。
【0118】
また、本実施形態では、第1の浸透性基材2aを構成するメッシュシートの目開きが、第2の浸透性基材2bを構成するメッシュシートの目開きよりも小さくなっている。すなわち、第2の浸透性基材2bは、第1の浸透性基材2aよりも小さな接触面積でナノ薄膜層3と接触している。そのため、ナノ薄膜転写シート1を被着体に貼付する際、ナノ薄膜層3との接触面積が小さい第2の浸透性基材2bをナノ薄膜層3から容易に剥離できる。
[変形例]
【0119】
上記実施形態では、積層体形成工程において、第1の浸透性基材2a、第1の溶解性支持層5a、及び第1のナノ薄膜層3aが積層されてなる第1の積層体6aと、第2の浸透性基材2b、第2の溶解性支持層5b、及び第2のナノ薄膜層3bが積層されてなる第2の積層体6bとを貼り合せるが、第1の積層体6aと第2の浸透性基材2bのみとを、あるいは第2の積層体6bと第1の浸透性基材2aのみとを貼り合せてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、ナノ薄膜転写シート1は第1の浸透性基材2aと、ナノ薄膜層3と、第2の浸透性基材2bとが積層されてなっているが、ナノ薄膜転写シートは、第1の浸透性基材2a及び第2の浸透性基材2bのいずれか一方に代えてカバーフィルムが積層されてなっていてもよい。
【0121】
この場合、ナノ薄膜転写シートの製造方法は、上記実施形態における溶解除去工程の後に、第1の浸透性基材2a及び第2の浸透性基材2bのいずれか一方を剥離し、ナノ薄膜層3の浸透性基材が剥離された側にカバーフィルムを積層するカバーフィルム積層工程を更に備える。
【0122】
カバーフィルムとしては、平滑な面を有するものであれば、特に限定されず、シート状又はロール状であってもよい。カバーフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポロプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、ポリメチルメタクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル系樹脂、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂など、又は、これらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0123】
これらの樹脂フィルムの中でも特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PC)等のプラスチックフィルムが、好適に用いられる。積層膜の接着性により優れることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがより好ましい。
【0124】
また、カバーフィルムの表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン処理、アルカリや酸等による化学的エッチング処理などを施してもよい。
【0125】
カバーフィルムは、カバーフィルム上に樹脂膜、無機膜又は有機材料と無機材料とを含む膜(有機−無機膜)が積層されていてもよい。それら樹脂膜層、無機膜層又は有機−無機膜層からなる積層構造は基材表面の一部を覆っていればよい。また、積層構造中、最表面層に位置しない膜は、極性基を有する必要はない。
【0126】
カバーフィルムの膜厚は、1〜500μmの範囲内であることが好ましく、3〜300μmの範囲内であることがより好ましく、5〜200μmの範囲内であることが更に好ましい。
[ナノ薄膜転写シートの保存]
【0127】
ナノ薄膜転写シートは、水蒸気が少ない環境にて保管することが望ましいため、水蒸気バリア性を有する梱包材及び乾燥材を用いて保管することが望ましい。水蒸気バリア性のある梱包材といえども、全く水蒸気を透過しないわけではなく、若干の水分透過は避けられないため、乾燥剤を入れることで梱包材内部の湿度を一定に保つのが、より有効である。
(梱包材)
【0128】
水蒸気バリア性のある梱包材の性能は、水蒸気透過率で表される。この値が小さいほど水蒸気バリア性が良くなり、ナノ薄膜転写シートの梱包には適する。しかしその一方で、水蒸気透過率の小さい梱包材は高価である。これらを勘案し、水蒸気バリア性のある梱包材料の水蒸気透過率は1.5g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)以下である水蒸気バリア性のある梱包材で梱包する。水蒸気透過率がこれより大きいと、梱包材内への水分浸透が増加し、乾燥剤の負担が大きくなり、経済性が悪化する。
【0129】
このような水蒸気透過率を満足するものとしては、アルミ蒸着フィルム(水蒸気透過率0.7〜1.0g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)、SiO蒸着フィルム(水蒸気透過率0.1〜0.7g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)、アルミナ蒸着フィルム(水蒸気透過率1.5g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)等がある。
【0130】
また、水蒸気バリア性のある梱包材として、基材フィルム(例えばポリエチレンフィルム(水蒸気透過率10〜20g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)))、バリア層、ヒートシール層を積層して構成したラミネートフィルムを用いることができる。上記バリア層としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム等が用いられている。
【0131】
ナノ薄膜転写シートを、複数枚の梱包材で複数層に梱包し、最内層以外の少なくとも1層に水蒸気バリア性のある梱包材を使用することが好ましい。
(乾燥剤)
【0132】
本発明のナノ薄膜転写シート製品は、水蒸気バリア性のある梱包材より内側に乾燥剤を入れることが好ましい。また、梱包材内の湿度を70%RH以下の雰囲気に保持することが好ましい。
【0133】
梱包材内部に入れる乾燥剤としては、塩化カルシウム、生石灰、シリカゲル、アルミノシリケート等があるが、製品の品質を保証する点から、潮解(吸湿による液化)を生じないシリカゲルやアルミノシリケートが好ましい。
【0134】
乾燥剤の使用量は、組み合わせる梱包材料の水素バリア性及び保管日数から予測される水分浸透量を吸収できるように、乾燥剤の能力に応じて決定される。
【0135】
ナノ薄膜転写シートを梱包材内に袋詰めする作業は低温低湿の雰囲気中で行い、梱包材内の初期雰囲気を低温低湿にしておくのがよい。好ましい雰囲気は、具体的には温度18〜22℃、湿度30〜50%RHである。乾燥剤を使用しない場合は、この作業は特に重要である。
[ナノ薄膜転写シートの用途]
【0136】
ナノ薄膜転写シートを皮膚に対して用いる際、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を皮膚に塗布し、その上にナノ薄膜層を転写することもできる。この場合、化粧料及び化粧料成分が保持され、剥がれ落ちにくいという効果が得られる。また、ナノ薄膜層を皮膚に転写した後に、その上に化粧料又は化粧料成分を塗布することもできる。この場合、皺、たるみ、しみ、あざ、そばかす、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡、又は皮膚疾患による変色等のある肌を目立たなくすることができる。
【0137】
また、本発明のナノ薄膜転写シートは、化粧料又は化粧料成分を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼付シート及び化粧保護シートとしても好適に使用できる。
【0138】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0139】
カチオン性ポリマーとしてキトサン(株式会社キミカ製:粘度平均分子量90,000、粘度12.5mPa・s、濃度:0.1質量%)、アニオン性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製:粘度平均分子量100,000、粘度6.7mPa・s、濃度:0.1質量%)、酸成分として酢酸(和光純薬工業株式会社製)、リンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
[実施例1]
【0140】
ポリカチオンを含む溶液として、0.3質量%のキトサン水溶液をそのまま使用した。ポリアニオンを含む溶液として、0.1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液100質量部に対して、リンゴ酸(1質量%水溶液)1質量部を滴下したものを使用した。
【0141】
支持基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名「A4100」、150mm×100mm×100μm厚)を、(a)ポリカチオンを含む溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水(比抵抗18MΩ・cm)に1分間浸漬し、次いで(b)ポリアニオンを含む溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水に1分間浸漬した。
【0142】
(a)及び(b)を順番に行う手順を1サイクルとして、このサイクルを18回繰り返し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持基材)上に、キトサン由来の層とアルギン酸ナトリウム由来の層からなるナノ薄膜層を形成した。形成したナノ薄膜層の膜厚をフィルメトリスク株式会社製の型番:F20によって測定した結果、ナノ薄膜層の膜厚は100nmであった。
【0143】
続いて、ポリビニルアルコール500(関東化学株式会社製、平均重合度=500)を超純水に溶解した10質量%水溶液を用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように、ナノ薄膜層上にバーコーターによって塗布し、溶解性支持層を形成した。
【0144】
その後、浸透性基材として、ポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、大紀商事株式会社製、商品名「OKILON HYBRID」、JISL 1096に記載されるフラジール形法による通気性3600cc/cm
2・sec)を、溶解性支持層上に積層し、室温(25℃)にて水分を蒸発させた。その結果、支持基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、ナノ薄膜層(キトサン由来の層とアルギン酸由来の層との交互積層膜)、溶解性支持層(ポリビニルアルコール)及び浸透性基材(ポリエチレンテレフタレートメッシュシート)が順次積層された積層体Aを得た。
【0145】
浸透性基材をポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、大紀商事株式会社製、商品名「OKILON−SHA 2516」、JISL 1096に記載されるフラジール形法による通気性5850cc/cm
2・sec)に変更した以外は、積層体Aと同様にして積層体Bを得た。
【0146】
積層体Aと積層体Bとから支持基材を剥離し、積層体A,Bのナノ薄膜層同士を貼り合わせ、端部を固定した状態で水に24時間浸漬した。その後、室温(25℃)にて水分を蒸発させた。
【0147】
その結果、浸透性基材(「OKILON HYBRID」)上に、ナノ薄膜層(キトサン由来の層とアルギン酸由来の層との交互積層膜)、浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)が順次積層されたナノ薄膜転写シートを得た。これらの浸透性基材は、共にポリエチレンテレフタレートフィルムであり、ナノ薄膜層との密着強度が相違するものである。また、メッシュの状態(目開き)が異なり、互いにナノ薄膜層との接触面積が異なるものである。
[実施例2]
【0148】
積層体Bに代えて浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)を積層体Aに貼り合せた以外は、実施例1と同様してナノ薄膜転写シートを作製した。
[実施例3]
【0149】
積層体Aに代えて浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)を積層体Bに貼り合せた以外は、実施例1と同様してナノ薄膜転写シートを作製した。
[実施例4]
【0150】
浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)を目開きの異なるポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、大紀商事株式会社製、商品名「OKILON−SHA 2514S」、JISL 1096に記載されるフラジール形法による通気性6240cc/cm
2・sec)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。
[実施例5]
【0151】
溶解性支持層である「ポリビニルアルコール500」を「ヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業株式会社製、6〜10cps(2%in water at 20℃))に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。
[実施例6]
【0152】
カチオン性ポリマーである「キトサン」を「ポリリジン(株式会社ペプチド研究所製:粘度平均分子量120,000、粘度3.0mPa・s、濃度:0.1質量%)」に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。実施例6においては、ナノ薄膜層の膜厚は150nmであった。
[実施例7]
【0153】
アニオン性ポリマーである「アルギン酸ナトリウム」を「ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製:粘度平均分子量100,000、粘度6.7mPa・s、濃度:0.1質量%)」に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。実施例7においては、ナノ薄膜層の膜厚は100nmであった。
[実施例8]
【0154】
アニオン性ポリマーである「アルギン酸ナトリウム」を「コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製:粘度平均分子量50,000、粘度3.5mPa・s、濃度:0.1質量%)」に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。実施例8においては、ナノ薄膜層の膜厚は240nmであった。
[実施例9]
【0155】
積層体Bの浸透性基材をポリエチレンテレフタレートメッシュシート(「OKILON HYBRID」)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ薄膜転写シートを作製した。
[比較例1]
【0156】
浸透性基材(「OKILON HYBRID」)を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、支持基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、ナノ薄膜層(キトサン由来の層とアルギン酸由来の層との交互積層膜)、溶解性支持層(ポリビニルアルコール)が順次積層されたナノ薄膜転写シートを作製した。
(転写性の評価)
【0157】
実施例及び比較例のナノ薄膜転写シートのナノ薄膜層を露出させ、水及び化粧水を用いて湿らせた皮膚表面にナノ薄膜層を貼付した。その後、浸透性基材を剥離してナノ薄膜層を皮膚に転写した。
(ナノ薄膜層の膜厚評価)
【0158】
5インチのシリコンウェハを水で湿らせた後に、実施例及び比較例のナノ薄膜転写シートのナノ薄膜層を露出させ、ウェハ表面にナノ薄膜層を貼付した。その後、浸透性基材を剥離し、シリコンウェハに転写されたナノ薄膜層の膜厚をフィルメトリスク株式社製の型番:F20で測定した。
(浸透性基材とナノ薄膜層との剥離性評価)
【0159】
実施例および比較例のナノ薄膜転写シートのナノ薄膜層を露出させる際、剥離する浸透性基材にナノ薄膜層が付着してしまう剥離凝集が生じたナノ薄膜転写シートの数を測定した。
(評価結果)
【0160】
図3は、評価結果を示す図である。同図に示すように、実施例1〜8では、溶解性支持層を予め除去することで、使用に際して最終的な溶解性支持層の除去を要さず、簡便にナノ薄膜層を皮膚の表面に貼り付けることが可能であった。一方、比較例1では、ナノ薄膜層を皮膚の表面に貼り付ける際に溶解性支持層の除去が必要であり、かつナノ薄膜層の滑落が発生して転写が困難であった。