(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(A)中のラジカル生成能を有する官能基が、ハロゲン原子、アルキルテルル基又はジチオエステル基を有する有機基であり、かつ前記化合物(A)に前記重合性不飽和単量体(B)を重合させる重合法が、リビングラジカル重合である請求項1記載の重合性樹脂の製造方法。
前記リビングラジカル重合が、重合開始剤、遷移金属化合物及び該遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物の存在下で行う原子移動型ラジカル重合である請求項2又は3記載の重合性樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の重合性樹脂は、重合性不飽和単量体を重合して得られる構造を有する重合性樹脂であり、該重合性樹脂は、その構造の片末端にシリコーン鎖を含む構造を有し、該シリコーン鎖の分子量が2,000〜20,000で、しかも、シリコーン鎖の含有率が該重合性樹脂の質量を基準として30〜70質量%であることを特徴とする。この片末端には、シリコーン鎖を単数有していても、複数有していても良いが、本発明においては、片末端にはシリコーン鎖を単数(1つ)有するものが耐摩耗性とすべり性が良好な硬化塗膜が得られることから好ましい。
【0013】
また、本発明の重合性樹脂中の重合性不飽和基(y)の当量は、耐摩耗性に優れる硬化塗膜が得られることから200〜3,500g/eq.の範囲が好ましく、300〜2,000g/eq.の範囲がより好ましく、350〜1,500g/eq.の範囲がさらに好ましく、400〜1、000g/eq.の範囲が特に好ましい。
【0014】
前記シリコーン鎖の分子量は2,000〜20,000であることが必要である、このような分子量のシリコーン鎖を有することにより、シリコーン鎖の持つすべり性を好適に発現でき、その結果、塗膜の表面の摩擦を低減することで優れた耐摩擦性を付与できる。シリコーン鎖の分子量としては、すべり性に優れる硬化塗膜が得られることに加え、溶剤やその他の重合性樹脂との相溶性に優れる重合性樹脂となることから4,000〜12,000が好ましく、分子量5,000〜10,000がより好ましい。
【0015】
本発明の重合性樹脂は、前記シリコーン鎖の含有率が重合性樹脂の質量を基準として30〜70質量%である必要がある。シリコーン鎖の含有率が30質量%よりも小さいと塗膜に十分なすべり性を付与することが困難なことから好ましくない。シリコーン鎖の含有率が70質量%を超えると得られる重合性樹脂と他の樹脂との相溶性が低下し、その結果、塗膜表面にムラが生じ、耐擦傷性が劣ってしまうことから好ましくない。シリコーン鎖の含有率は35〜65質量%がより好ましい。
【0016】
本発明の重合性樹脂は、例えば、分子量2,000〜20,000のシリコーン鎖の片末端にラジカル生成能を有する官能基を有する化合物(A)と、反応性官能基(b1)を有する重合性不飽和単量体(B)とを反応系内に仕込み、前記化合物(A)からラジカルを生成させることにより、前記重合性不飽和単量体(B)由来の構造を含む重合体(P)を得る工程(1)と、
該重合体(P)を含む反応系内に、重合体(P)が有する反応性官能基(b1)に対して反応性を有する官能基(c1)及び重合性不飽和基(c2)を有する化合物(C)を仕込み、反応性官能基(b1)と反応性を有する官能基(c1)とを反応させる工程(2)を含む製造方法により好適に得ることができる。
【0017】
前記化合物(A)中のラジカル生成能を有する官能基としては、例えば、ハロゲン原子を有する有機基、アルキルテルル基を有する有機基、ジチオエステル基を有する有機基、パーオキシド基を有する有機基、アゾ基を有する有機基等が挙げられる。ここで、リビングラジカル重合によって、化合物(A)に、前記重合性不飽和単量体(B)を重合させる場合は、前記ラジカル生成能を有する官能基としてハロゲン原子を有する有機基、アルキルテルル基を有する有機基、ジチオエステル基を有する有機基が用いることができ、特に合成の容易さ、重合制御の容易さ、適用できる重合性不飽和単量体の多様性からハロゲン原子を有する有機基を用いることが好ましい。
【0018】
前記ハロゲン原子を有する有機基としては、例えば、2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ基、2−ブロモ−プロピオニルオキシ基、パラクロロスルホニルベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
前記ハロゲン原子を有する有機基を分子量2,000〜20,000のシリコーン鎖を含む化合物の片末端に導入するには、例えば、分子量2,000〜20,000のシリコーン鎖の片末端に反応により結合を形成し得る官能基を有する化合物(a1)と、この官能基と反応して結合を形成し得る官能基とハロゲン原子を有する有機基とを有する化合物(a2)とを反応させる方法が挙げられる。具体的には、前記化合物(a1)が有する片末端の官能基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これらの官能基を片末端に有する前記化合物(a1)の具体的な例としては、下記の式(a1−1)で表される化合物を好ましく例示できる。
【0020】
【化1】
(式中Xは反応により結合を形成し得る官能基である、R
1〜R
5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜18のアルキル基又はフェニル基である。R
6は2価の有機基又は単結合である。nは25〜300である。)
【0021】
前記R
1〜R
4は、メチル基が好ましい。R
5は、炭素原子数が6以下のアルキル基が好ましい。
【0022】
ここで、前記R
6としては、例えば、メチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基等の炭素原子数1以上のアルキレン基、2つ以上のアルキレン基がエーテル結合で連結されたアルキレンエーテル基が挙げられる。
【0023】
一方、前記化合物(a2)が有し、前記化合物(a1)が片末端に有する官能基と反応して結合を形成し得る官能基としては、下記のものが挙げられる。
【0024】
例えば、前記化合物(a1)が有する官能基が水酸基の場合は、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基は、イソシアネート基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基が好ましい。また、他の方法として、まず、前記化合物(a1)の水酸基に酸無水物を反応させることでカルボキシル基を生成させ、そのカルボキシル基に対し、エポキシ基とハロゲン原子を有する有機基とを有する化合物を前記化合物(a2)として、さらに反応させることによって前記化合物(a1)の片末端にハロゲン原子を有する有機基を導入することも可能である。
【0025】
前記化合物(a1)が有する官能基がイソシアネート基の場合は、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基は、水酸基が好ましい。また、前記化合物(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合は、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基は、カルボキシル基が好ましい。
【0026】
前記化合物(a1)が有する官能基がカルボキシル基の場合は、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基は、エポキシ基が好ましい。また、前記化合物(a1)が有する官能基がカルボン酸無水物基の場合は、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基は、水酸基が好ましい。
【0027】
上記の前記化合物(a1)が有する官能基と、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基との組み合わせの中でも、前記化合物(a1)が有する官能基が水酸基であり、前記化合物(a2)が有するハロゲン原子を有する有機基以外の官能基がカルボン酸ハライド基である組み合わせが、反応が容易な点から好ましい。この組み合わせの場合の反応条件としては、下記の条件が挙げられる。
【0028】
前記ハロゲン原子を有する有機基をシリコーン鎖の片末端に導入する具体的方法としては、前記化合物(a1)の片末端の官能基が水酸基であり、前記化合物(a2)がハロゲン基を有するカルボン酸の場合は、脱水エステル化条件下で反応を行うことで、主鎖中に分子量2,000〜20,000のシリコーン鎖を含む化合物の片末端に重合開始能を有する官能基を有する化合物(A)を得ることができる。また、前記化合物(a1)の片末端の官能基が水酸基であり、前記化合物(a2)がハロゲン基を有するカルボン酸のハロゲン化物の場合は、トルエン、テトラヒドロフラン等の溶剤中、(a1)と(a2)とを反応させることにより同様に重合開始能を有する官能基を有する化合物(A)を得ることができる。なお、この反応においては必要に応じて塩基性触媒を用いることができる。
【0029】
また前記化合物(a1)の片末端にある官能基がイソシアネート基、前記化合物(a2)がハロゲン基と、該イソシアネート基と反応し得る官能基として水酸基を有する場合、オクチル酸スズのような触媒の存在下、(a1)と(a2)を反応させることにより重合開始能を有する官能基を有する化合物を得ることができる。
【0030】
さらに前記化合物(a1)の片末端の官能基がエポキシ基、前記化合物(a2)がハロゲン基と、該エポキシ基と反応し得る官能基としてカルボキシル基を有する場合、トリフェニルホスフィンや第3級アミンのような塩基性触媒の存在下、(a1)と(a2)を反応させることにより重合開始能を有する官能基を有する化合物を得ることができる。
【0031】
本発明で用いる主鎖中に分子量2,000〜20,000のシリコーン鎖を含み、該主鎖の片末端にラジカル生成能を有する官能基を有する化合物(A)の具体例としては、例えば、以下の式で表される化合物等が挙げられる。
【0032】
【化2】
(nは27〜270である。)
【0033】
次に、反応性官能基(b1)を有する重合性不飽和単量体(B)について説明する。前記単量体(B)が有する官能基(b1)としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。また、前記単量体(B)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、重合が容易な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0034】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0035】
前記単量体(B)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有するカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの単量体(B)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
また、本発明の重合性樹脂の中間体である前記重合体(P)を製造する際に、前記化合物(A)、単量体(B)の他に、これらと共重合し得るその他の重合性不飽和単量体を用いても構わない。このようなその他の重合性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などが挙げられる。
【0037】
本発明で用いる重合体(P)の製造方法としては、前記化合物(A)をラジカル重合開始剤として、前記単量体(B)をリビングラジカル重合させる方法が挙げられる。一般にリビングラジカル重合においては、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより、極めて分子量分布の狭い重合体を得ることができる。このようなリビングラジカル重合の例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加−開裂型ラジカル重合(RAFT)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)等が挙げられる。このリビングラジカル重合によって、前記共重合体(P)を製造すると、分子量分布が非常に狭い共重合体が得られるため好ましい。これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから前記ATRPが好ましい。ATRPは、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属化合物と配位子からなる金属錯体を触媒として重合される。
【0038】
前記ATRPで使用する遷移金属化合物は、M
n+X
nで表されるものである。遷移金属であるM
n+は、Cu
+、Cu
2+、Fe
2+、Fe
3+、Ru
2+、Ru
3+、Cr
2+、Cr
3+、Mo
0、Mo
+、Mo
2+、Mo
3+、W
2+、W
3+、Rh
3+、Rh
4+、Co
+、Co
2+、Re
2+、Re
3+、Ni
0、Ni
+、Mn
3+、Mn
4+、V
2+、V
3+、Zn
+、Zn
2+、Au
+、Au
2+、Ag
+及びAg
2+からなる群から選択することができる。また、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシル基、(SO
4)
1/2、(PO
4)
1/3、(HPO
4)
1/2、(H
2PO
4)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR
1、CN及びR
2COOからなる群から選択することができる。ここで、R
1は、アリール、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜20(好ましくは炭素原子数1〜10)のアルキル基を表し、R2は、水素原子、ハロゲンで1〜5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1〜3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。さらに、nは、金属上の形式電荷を表し、0〜7の整数である。
【0039】
前記遷移金属錯体としては、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が好ましく、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体がさらに好ましい。
【0040】
前記の遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物としては、遷移金属とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子又は硫黄原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とπ結合を介して配位できる2つ以上の炭素原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とμ結合又はη結合を介して配位できる配位子を有する化合物が挙げられる。
【0041】
前記配位子を有する化合物の具体例としては、例えば、中心金属が銅の場合は2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子との錯体が挙げられる。また2価のルテニウム錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。さらに2価の鉄錯体としては、ビストリフェニルホスフィン錯体、トリアザシクロノナン錯体等が挙げられる。
【0042】
また、前記重合体(P)の製造では、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。また、上記の溶媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
また、前記重合体(P)製造の際の重合温度は、室温から100℃の範囲が好ましい。
【0044】
本発明の重合性樹脂を得るためには、上記の方法で製造された重合体(P)が有する前記反応性基の一部又は全部に、前記官能基(b1)に対して反応性を有する官能基(c1)及び重合性不飽和基(c2)を有する化合物(C)を用いて、重合体(P)に重合性不飽和基を導入する。前記化合物(C)が有する官能基(c1)としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。前記単量体(B)が有する反応性官能基(b1)が水酸基である場合には、官能基(c1)としてイソシアネート基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、エポキシ基が挙げられ、反応性官能基(b1)がイソシアネート基である場合には、官能基(c1)として水酸基が挙げられ、反応性官能基(b1)がエポキシ基である場合には、官能基(c1)としてカルボキシル基、水酸基が挙げられ、反応性官能基(b1)がカルボキシル基である場合には、官能基(c1)としてエポキシ基、水酸基が挙げられる。これらは、複数の官能基の組み合わせとしても構わない。また、これらの組み合わせの中でも、前記反応性官能基(b1)が水酸基で前記官能基(c1)がイソシアネート基の組み合わせ、前記反応性官能基(b1)がエポキシ基で前記官能基(c1)がカルボキシル基の組み合わせが好ましい。
【0045】
なお、前記単量体(C)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線硬化型組成物に本発明の含フッ素重合性重合体を添加した際に、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂(D)、活性エネルギー線硬化性単量体(E)等との硬化性が高いことから、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アルリロイル基がより好ましい。
【0046】
前記化合物(C)の具体的としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有するカルボン酸無水物などが挙げられる。また、複数の重合性不飽和基を有するものとして、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることもできる。これらの化合物(C)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0047】
上記の化合物(C)の具体的の中でも特に紫外線照射での重合硬化性が好ましい点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸が好ましい。
【0048】
前記重合体(P)に、前記化合物(C)を反応させる方法は、化合物(C)等が有する重合性不飽和基が重合しない条件で行えば良く、例えば、温度条件を30〜120℃の範囲に調節して反応させることが好ましい。この反応は触媒や重合禁止剤の存在下、必要により有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。
【0049】
例えば、前記反応性官能基(b1)が水酸基であって、前記官能基(c1)がイソシアネート基である場合は、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等を使用し、反応温度40〜120℃、特に60〜90℃で反応させる方法が好ましい。また、前記反応性官能基(b1)がエポキシ基であって、前記官能基(c1)がカルボキシル基である場合、又は、前記反応性官能基(b1)がカルボキシル基であって、前記官能基(c1)がエポキシ基である場合は、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、エステル化反応触媒としてトリエチルアミン等の第3級アミン類、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン類、塩化テトラブチルホスホニウム等の第4級ホスホニウム類等を使用し、反応温度80〜130℃、特に100〜120℃で反応させることが好ましい。
【0050】
上記反応で用いられる有機溶媒はケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性を考慮して適宜選択すればよい。
【0051】
上記のようにして得られる本発明の重合性樹脂は、製造時のゲル化を防止でき、防汚性が優れることから、その数平均分子量(Mn)が3,000〜70,000の範囲であることが好ましく、6,000〜50,000の範囲であることがより好ましく、7,000〜30,000が更に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が3,000〜100,000の範囲であることが好ましく、7,000〜75,000の範囲であることがより好ましく、8,000〜50,000の範囲が更に好ましい。また、本発明の重合性樹脂の分散度(Mw/Mn)は1.0〜1.6が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.4が最も好ましい。
【0052】
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0053】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0054】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0055】
本発明の重合性樹脂は、それ自体を活性エネルギー線硬化性組成物の主剤として用いることができるが、極めて優れた表面改質性能を有しているため、活性エネルギー線硬化性組成物に添加する表面改質剤(界面活性剤)として用いることで、硬化塗膜に優れた耐擦傷性を付与できる。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の重合性樹脂を添加したものであるが、その主成分しては、本発明の重合性樹脂以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(D)又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有する。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、活性エネルギー線硬化型樹脂(D)と活性エネルギー線硬化性単量体(E)とは、それぞれ単独で用いてもよいが、併用しても構わない。また、本発明の重合性樹脂は、当該活性エネルギー線硬化型組成物において、フッ素系界面活性剤として用いることが好ましい。
【0057】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂(D)は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられるが、本発明では、特に透明性や低収縮性等の点からウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0058】
ここで用いるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
【0059】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられ、また、芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
一方、水酸基を有するアクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0061】
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するアクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。
【0062】
これらのウレタンアクリレート樹脂の中でも特に脂肪族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるものが硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れる点から好ましい。
【0063】
次に、不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
【0064】
次に、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0065】
また、マレイミド基を有する樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂(D)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0066】
前記活性エネルギー線硬化性単量体(E)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド類などが挙げられる。
【0067】
これらのなかでも特に硬化塗膜の硬度に優れる点からトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これらの活性エネルギー線硬化性単量体(D)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、本発明の重合性樹脂の使用量は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂(D)及び活性エネルギー線硬化性単量体(E)の合計100質量部に対して、0.001〜20質量部の範囲が好ましく、0.1〜15質量部の範囲がより好ましく、0.1〜10質量部の範囲がさらに好ましい。本発明の重合性樹脂の使用量がこの範囲であれば、レベリング性、撥水撥油性、防汚性を十分なものにすることができ、該組成物の硬化後の硬度や透明性も十分なものとすることができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗膜にした際の膜厚により、塗膜の表層部分に占める本発明の重合性樹脂の割合が変化するため、厚膜の場合は、本発明の重合性樹脂の添加量を低めに設定し、薄膜の場合は、本発明の重合性樹脂の添加量を高めに設定することで、塗膜表面に本発明の重合性樹脂を満遍なく存在させることができ、高い耐擦傷性を期待できるため好ましい。
【0069】
本発明の重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、該重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物中に光重合開始剤(F)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(F)や光増感剤を添加する必要はない。
【0070】
前記光重合開始剤(F)としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0071】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0072】
上記の光重合開始剤(F)の中でも、活性エネルギー線硬化型組成物中の前記活性エネルギー線硬化性樹脂(D)及び活性エネルギー線硬化性単量体(E)との相溶性に優れる点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びベンゾフェノンが好ましく、特に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。これらの光重合開始剤(F)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0073】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0074】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.3〜7質量部がさらに好ましい。
【0075】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、各種有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を併用することができる。
【0076】
上記の各配合成分中、有機溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0077】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、硬化成分の全質量に対して、質量基準で、0.5〜50倍量の範囲であることが好ましい。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも特に紫外線であることが好ましく、酸素等による硬化阻害を避けるため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、紫外線を照射することが好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、紫外線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の塗工方法は用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法、あるいは各種金型を用いた成形方法等が挙げられる。
【0081】
本発明の重合性樹脂の硬化塗膜は、耐擦傷性を有するため、物品の表面に塗布・硬化することで、物品の表面に耐擦傷性を付与することができる。また、本発明の重合性樹脂は、塗材に添加することで、その塗材にレベリング性を付与することもできるため、本発明の活性エネルギー線硬化料組成物は、高いレベリング性を有する。また、本発明の重合性樹脂の硬化塗膜はすべり性に優れることからタッチパネル等タッチ操作が良好となる効果も有する、更に、本発明の重合性樹脂の硬化塗膜は防汚性にも優れる。
【0082】
本発明の重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、優れた耐擦傷性等を有するため、物品の表面に塗布・硬化することで、物品の表面に耐擦傷性等を付与することができる。
【0083】
本発明の重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いて傷付きを防止できる物品としては、TACフィルム等の液晶ディスプレイ(LCD)の偏光板用フィルム;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面;タッチパネル;携帯電話等の電子端末の筐体又は画面;液晶ディスプレイ用カラーフィルター(以下、「CF」という。)用透明保護膜;液晶TFTアレイ用有機絶縁膜;電子回路形成用インクジェットインク;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス面;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ;腕時計等の時計の風防、ガラス面;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ;太陽電池用カバーガラス又はフィルム;化粧板等の各種建材;住宅の窓ガラス;家具等の木工材料、人工・合成皮革、家電の筐体等の各種プラスチック成形品、FRP浴槽などが挙げられる。これらの物品表面に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化塗膜を形成することで、物品表面に耐擦傷性を付与することができる。
【0084】
また、本発明の重合性樹脂を添加し耐擦傷性を付与できる塗材としては、TACフィルム等のLCDの偏光板用フィルムのハードコート材、アンチグレア(AG:防眩)コート材又は反射防止(LR)コート材;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面用ハードコート材;タッチパネル用ハードコート材;CFに使用されるRGBの各画素を形成するためのカラーレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;CFのブラックマトリックス用のブラックレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の画素隔壁用樹脂組成物;携帯電話の等の電子端末筐体用塗料又はハードコート材;携帯電話の画面用ハードコート材;CF表面を保護する透明保護膜用塗料;液晶TFTアレイの有機絶縁膜用塗料;電子回路形成用インクジェットインク;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体用ハードコート材;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム用ハードコート材;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー用コート材;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス用コート材;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ用コート材;腕時計等の時計の風防、ガラス用コート材;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ用コート材;太陽電池用カバーガラス又はフィルムの反射防止膜用塗料;化粧板等の各種建材用印刷インキ又は塗料;住宅の窓ガラス用コート材;家具等の木工用塗料;人工・合成皮革用コート材;家電の筐体等の各種プラスチック成形品用塗料又はコート材;FRP浴槽用塗料又はコート材などが挙げられる。
【0085】
さらに、本発明の重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いて耐擦傷性(耐スクラッチ性)を付与できる物品としては、LCDのバックライト部材であるプリズムシート又は拡散シート等が挙げられる。また、プリズムシート又は拡散シート用コート材に本発明の重合性樹脂を添加することで、該コート材のレベリング性を向上するとともに、コート材の塗膜に耐擦傷性(耐スクラッチ性)を付与することができる。
【0086】
また、本発明の重合性樹脂の硬化塗膜は低屈折率であるため、LCD等の各種ディスプレイ表面への蛍光灯等の映り込みを防止する反射防止層中の低屈折率層用塗材としても用いることができる。また、反射防止層用の塗材、特に反射防止層中の低屈折率層用塗材に本発明の含フッ素硬化性樹脂を添加することで、塗膜の低屈折率を維持しつつ、塗膜表面に耐擦傷性を付与することもできる。
【0087】
さらに、本発明の重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いることができるその他の用途として、光ファイバクラッド材、導波路、液晶パネルの封止材、各種光学用シール材、光学用接着剤等が挙げられる。
【0088】
特に、LCD用偏光板の保護フィルム用コート材用途のうち、アンチグレアコート材として本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いる場合、シリカ微粒子、アクリル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子等の無機又は有機微粒子を、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の硬化成分の全質量の0.1〜0.5倍量となる割合で配合することで防眩性に優れたものとなるため好ましい。
【0089】
また、本発明の重合性樹脂の又は活性エネルギー線硬化性組成物を、LCD用偏光板の保護フィルム用アンチグレアコート材に用いる場合、コート材を硬化させる前に凹凸の表面形状の金型に接触させた後、金型と反対側から活性エネルギー線を照射して硬化し、コート層の表面をエンボス加工して防眩性を付与する転写法にも適用できる。
【実施例】
【0090】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。なお、得られた重合性樹脂のIRスペクトル、
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトル、
19F−NMRスペクトル及びGPCの測定条件は下記の通りである。
【0091】
[IRスペクトル測定条件]
装置:サーモエレクトロン株式会社製「NICOLET380」
測定方法:KBr法
【0092】
[
1H−NMRスペクトル測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM−ECA500」
溶媒:クロロホルム−d
【0093】
[
13C−NMRスペクトル測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM−ECA500」
溶媒:クロロホルム−d
【0094】
[
19F−NMRスペクトル測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM−ECA500」
溶媒:クロロホルム−d
【0095】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0096】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0097】
実施例1(本発明の重合性樹脂の調製)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてn−ヘプタン136.76gと、下記式(a−1)で表される片末端に水酸基を有するシリコーン化合物を300.00gと、触媒としてトリエチルアミン10.48gを仕込み、フラスコ内温度を5℃に保ったまま、30分間攪拌した。
【0098】
【化3】
(式中、nは平均65である。)
【0099】
次いで、2-ブロモイソ酪酸ブロミド19.10gを仕込んで室温下3時間攪拌した。その後、n−ヘプタン341.89g、0.36%塩酸600gを混合し攪拌してから静置し、塩酸層を分離させて取り除いた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液600gを混合して攪拌してから静置し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液層を分離させて取り除き、さらにイオン交換水600gを混合して攪拌してから静置し、イオン交換水層を分離させて取り除いた。次いで、脱水剤として硫酸マグネシウム8gを添加して振り混ぜて脱水した後、脱水剤を濾別した。その後、減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をイソプロピルエーテル313.31gに溶解した。0.36%塩酸300gを混合し攪拌してから静置し、塩酸層を分離させて取り除いた。その後、1%水酸化ナトリウム水溶液300gを混合し攪拌してから静置し、1%水酸化ナトリウム水溶液層を分離させて取り除き、さらにイオン交換水300gを混合して攪拌してから静置し、イオン交換水層を分離させて取り除いた。次いで、脱水剤として硫酸マグネシウム8gを添加して振り混ぜて脱水した後、脱水剤を濾別した。その後、減圧下で溶媒を留去することで、下記式で表される本発明で用いる化合物(A−4)を得た。
【0100】
【化4】
(式中、nは平均65である。)
【0101】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管を備え、窒素置換したガラスフラスコに、イソプロピルアルコール31.39g、メチルエチルケトン31.39g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート11.853g、メトキシベンゼン0.547gを窒素気流下にて攪拌しながら25℃で1時間攪拌した。次いで、塩化第一銅0.451g、臭化第二銅0.113g部、2,2−ビピリジル1.581gを仕込み、30分攪拌した。60℃に昇温した後に、前記式(A−4)に示されるシリコーン鎖を1本含む化合物30gを加え、フラスコ内温度を60℃に保ったまま4.5時間攪拌した。その後75℃に昇温して21.5時間攪拌した。空気下にて85%りん酸水溶液1.167gを加えて2時間攪拌し、析出した固形分を濾別した。イオン交換樹脂による触媒の除去を行い、イオン交換樹脂を濾別して重合体(p−1)を得た。
【0102】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、得られた共重合体(p−1)28.26g、メチルイソブチルケトン54.64gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0142g、ジブチルヒドロキシトルエン0.1070g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.0107gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.357gを加えた。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し5時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン33.97gを加えることで下記式に示される重合性不飽和基を有する重合性樹脂(1)を30%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(1)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量8,400、重量平均分子量11,000であった。得られた重合性樹脂(1)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(1)の質量を基準として50%であった。なお、重合性樹脂(1)のIRスペクトルのチャート図を
図1に、
1H−NMRスペクトルのチャート図(全体図)を
図2に、
1H−NMRスペクトルのチャート図(25倍の拡大図)を
図3に、
13C−NMRスペクトルのチャート図(全体図)を
図4に、
13C−NMRスペクトルのチャート図(25倍の拡大図)を
図5に、GPCのチャート図を
図6にそれぞれ示す。
【0103】
【化5】
式中nは平均で65である。mは平均で18である。Xは臭素原子または塩素原子である。
【0104】
実施例2(同上)
窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管を備え、窒素置換したガラスフラスコに、イソプロピルアルコール39.79g、メチルエチルケトン39.79g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23.05g、メトキシベンゼン0.547gを窒素気流下にて攪拌しながら25℃で1時間攪拌した。次いで、塩化第一銅0.451g、臭化第二銅0.113g、2,2−ビピリジル1.581gを仕込み、30分攪拌した。60℃に昇温した後に、前記式(A−4)に示されるシリコーン鎖を1本含む化合物30gを加え、フラスコ内温度を60℃に保ったまま4時間攪拌した。その後75℃に昇温して24時間攪拌した。空気下にて85%りん酸水溶液1.167gを加えて2時間攪拌し、析出した固形分を濾別した。イオン交換樹脂による触媒の除去を行い、イオン交換樹脂を濾別して重合体(p−2)を得た。
【0105】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、得られた共重合体(p−2)38.73g、メチルイソブチルケトン31.69gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0224g、ジブチルヒドロキシトルエン0.1682g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.0168gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート17.32gを加えた。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し5時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン99.00gを加えることで重合性不飽和基を有する重合性樹脂(2)を30%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(2)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量15,500、重量平均分子量18,000であった。得られた重合性樹脂(2)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(2)の質量を基準として35%であった。
【0106】
実施例3(同上)
窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管を備え、窒素置換したガラスフラスコに、イソプロピルアルコール27.44g、メチルエチルケトン27.44g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23.05g、メトキシベンゼン0.547gを窒素気流下にて攪拌しながら25℃で1時間攪拌した。次いで、塩化第一銅0.451g、臭化第二銅0.113g、2,2−ビピリジル1.581gを仕込み、30分攪拌した。60℃に昇温した後に、前記式(A−4)に示されるシリコーン鎖を1本含む化合物30gを加え、フラスコ内温度を60℃に保ったまま4時間攪拌した。その後75℃に昇温して21時間攪拌した。空気下にて85%りん酸水溶液1.167gを加えて2時間攪拌し、析出した固形分を濾別した。イオン交換樹脂による触媒の除去を行い、イオン交換樹脂を濾別して重合体(p−3)を得た。
【0107】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、得られた共重合体(p−3)25.61g、メチルイソブチルケトン20.95gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0121g、ジブチルヒドロキシトルエン0.0911g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.0091gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート4.745gを加えた。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し5時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン49.86gを加えることで重合性不飽和基を有する重合性樹脂(3)を30%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(3)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量8,900、重量平均分子量10,500であった。得られた重合性樹脂(3)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(3)の質量を基準として65%であった。
【0108】
実施例4(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてn−ヘプタン134.05gと、前記式(a−1)(ここで、nは平均130である)で表される片末端に水酸基を有するシリコーン化合物を300gと、触媒としてトリエチルアミン7.03gを仕込み、フラスコ内温度を40℃に保ったまま、30分間攪拌した。
【0109】
次いで、2-ブロモイソ酪酸ブロミド12.79gを仕込んで40℃で3時間攪拌した。その後、n−ヘプタン335.15g、0.36%塩酸600gを混合し攪拌してから静置し、塩酸層を分離させて取り除いた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液600gを混合して攪拌してから静置し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液層を分離させて取り除き、さらにイオン交換水600gを混合して攪拌してから静置し、イオン交換水層を分離させて取り除いた。次いで、脱水剤として硫酸マグネシウム25gを添加して振り混ぜて脱水した後、脱水剤を濾別した。その後、減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をイソプロピルエーテル303.25gに溶解した。0.36%塩酸303.25gを混合し攪拌してから静置し、塩酸層を分離させて取り除いた。その後、1%水酸化ナトリウム水溶液303.25gを混合し攪拌してから静置し、1%水酸化ナトリウム水溶液層を分離させて取り除き、さらにイオン交換水300.00gを混合して攪拌してから静置し、イオン交換水層を分離させて取り除いた。その後、再びイオン交換水300.00gを混合して攪拌してから静置し、イオン交換水層を分離させて取り除き、次いで、脱水剤として硫酸マグネシウム25.00gを添加して振り混ぜて脱水した後、脱水剤を濾別した。その後、減圧下で溶媒を留去することで、下記式(A−4−1)に示される本発明で用いるラジカル生成能を有する官能基と分子量10,000のシリコーン鎖を1本含む化合物を得た。
【0110】
【化6】
(式中、nは平均130である。)
【0111】
実施例4(同上)
窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管を備え、窒素置換したガラスフラスコに、イソプロピルアルコール61.67g、メチルエチルケトン61.67g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.23g、メトキシベンゼン0.7387gを窒素気流下にて攪拌しながら25℃で1時間攪拌した。次いで、塩化第一銅0.6089g、臭化第二銅0.1527g、2,2−ビピリジル2.135gを仕込み、30分攪拌した。60℃に昇温した後に、前記式(A−4−1)に示されるシリコーン鎖を1本含む化合物60gを加え、フラスコ内温度を60℃に保ったまま4時間攪拌した。その後75℃に昇温して30時間攪拌した。空気下にて85%りん酸水溶液1.575gを加えて2時間攪拌し、析出した固形分を濾別した。イオン交換樹脂による触媒の除去を行い、イオン交換樹脂を濾別して重合体(p−4)を得た。
【0112】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、得られた共重合体(p−4)57.43g、メチルイソブチルケトン38.28gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0294g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2202g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.0220gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート15.98gを加えた。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し6時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン133gを加えることで重合性不飽和基を有する重合性樹脂(4)を30%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(4)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量17,500、重量平均分子量22,800であった。得られた重合性樹脂(4)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(4)の質量を基準として60%であった。
【0113】
実施例5(同上)
窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管を備え、窒素置換したガラスフラスコに、イソプロピルアルコール85.02g、メチルエチルケトン85.02g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート53.36g、メトキシベンゼン0.7387gを窒素気流下にて攪拌しながら25℃で1時間攪拌した。次いで、塩化第一銅0.6089g、臭化第二銅0.1527g、2,2−ビピリジル2.135gを仕込み、30分攪拌した。60℃に昇温した後に、前記式(A−4−1)に示されるシリコーン鎖を1本含む化合物60gを加え、フラスコ内温度を60℃に保ったまま4時間攪拌した。その後75℃に昇温して48時間攪拌した。空気下にて85%りん酸水溶液1.575gを加えて2時間攪拌し、析出した固形分を濾別した。イオン交換樹脂による触媒の除去を行い、イオン交換樹脂を濾別して重合体(p−5)を得た。
【0114】
次いで、窒素導入管、撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、得られた共重合体(p−5)78.71g、メチルイソブチルケトン52.45gと、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0467g、ジブチルヒドロキシトルエン0.3505g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.0351gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート38.13gを加えた。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し8時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン220gを加えることで重合性不飽和基を有する重合性樹脂(5)を30%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(5)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量27,000、重量平均分子量35,000であった。得られた重合性樹脂(5)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(5)の質量を基準として37%であった。
【0115】
比較例1(比較対照用の重合性樹脂の調製)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン976.5gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、下記式(A´−1)で表されるシリコーン基を有する重合性不飽和単量体(以下、「単量体(A´−1)」と略記する。)を495gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート481.5gをメチルイソブチルケトン154.1gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート65.4gをメチルイソブチルケトン247.9gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に滴下を開始し、モノマー溶液2時間、重合開始剤溶液は2時間40分かけて滴下した。
【0116】
【化7】
(式中、nは平均65である。)
【0117】
モノマー溶液滴下終了後、105℃で2時間攪拌し、その後115℃で2時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトン1860質量部を減圧留去することによって、重合体重合体(p´−1)溶液を得た。
【0118】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.600g、ジブチルヒドロキシトルエン4.497g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.450gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート520.9gを1時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し1時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認した後、メチルエチルケトン3567g及びメチルイソブチルケトン1886、3gを加えることで活性エネルギー線硬化性基を有する比較対照用重合性樹脂(P´−1)を20質量%含有するメチルエチルケトン・メチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(P´−1)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量3,500、重量平均分子量12,500であった。得られた重合性樹脂(P´−1)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(P´−1)の質量を基準として33%であった。
【0119】
比較例2
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン1110gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、単量体(A´−1)を750gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート360gをメチルイソブチルケトン1198.1gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート74.37gをメチルイソブチルケトン281.9gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に滴下を開始し、モノマー溶液2時間、重合開始剤溶液は2時間40分かけて滴下した。
【0120】
モノマー溶液滴下終了後、105℃で2時間攪拌し、その後115℃で2時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトン2005gを減圧留去することによって、重合体重合体(p´−2)溶液を得た。
【0121】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.5664g、ジブチルヒドロキシトルエン4.248g、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.4247gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート354.35gを1時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温し2時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認した後、メチルエチルケトン3397.5g及びメチルイソブチルケトン1557.3gを加えることで活性エネルギー線硬化性基を有する比較対照用重合性樹脂(P´−2)を20質量%含有するメチルエチルケトン・メチルイソブチルケトン溶液を得た。得られた重合性樹脂(P´−2)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量5,200、重量平均分子量16,000であった。得られた重合性樹脂(P´−2)中のシリコーン鎖の含有率は、重合性樹脂(P´−2)の質量を基準として50%であった。
【0122】
実施例6(本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の一例として偏光板の保護フィルムの最表面に位置する反射防止膜用の組成物を調製した。具体的には、中空シリカ微粒子(平均粒子径60nm)を20質量%含有するメチルイソブチルケトン分散液1.265部、ペンタエリスリトールトリアクリレート0.207部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキュア127」)0.0092部、溶剤としてメチルイソブチルケトン8.395部を混合し溶解させて、反射防止塗料組成物のベース組成物を得た。
【0123】
上記で得られた反射防止塗料組成物のベース組成物9.87部に対し、重合性樹脂(1)の30%含有溶液を樹脂分として0.005部となるように添加し、均一に混合して本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(1)〔反射防止塗料組成物(1)〕を調製した。
【0124】
得られた反射防止塗料組成物(1)を用いて以下の手順に従い反射防止層とハードコート層を有するフィルムを調製した。
【0125】
<ハードコート層用塗料組成物の調製>
ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社の「UV1700B」)30部、酢酸ブチル25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュア184」)1.2質量部、溶剤としてトルエン11.78部、2−プロパノール5.892部、酢酸エチル5.892部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル5.892部を混合し溶解させて、ハードコート層用塗料組成物を得た。
【0126】
<ハードコート層を有するフィルムの調製>
得られたハードコート層用塗料組成物をバーコーターNo.13を使用して、厚さ188μmのPETフィルムに塗布した後、70℃の乾燥機に1分間入れて溶剤を揮発させ、紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、高圧水銀灯使用、紫外線照射量0.5kJ/m
2)にて硬化させ、膜厚8μmのハードコート層を片面に有するハードコートフィルムを作製した。
【0127】
<反射防止層とハードコート層を有するフィルムの調製>
反射防止塗料組成物(1)を上記で得られたハードコートフィルムのハードコート層上にバーコーターNo.2で塗布した後、50℃の乾燥機に1分30秒間入れて溶剤を揮発させ、紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、高圧水銀灯使用、紫外線照射量2kJ/m
2)にて硬化させ、膜厚10μmのハードコート層上に膜厚0.1μmの反射防止層とハードコート層を有するフィルム(反射防止フィルム)を作製した。得られたフィルムの反射防止塗料組成物の硬化塗膜表面について、下記の外観、すべり性及び耐擦傷性の評価を行った。評価結果を第1表に表す。
【0128】
[外観の評価]
上記で得た反射防止フィルムについて、反射防止塗料組成物の硬化塗膜のムラを目視で観察し、下記の基準で外観を評価した。評価結果を第1表に示す。
◎:ムラなし。
○:ほんのわずかにムラあり。
△:一部ムラあり。
×:全体的にムラあり。
【0129】
[滑り性の評価]
表面性測定機(新東科学株式会社製「HEIDON−14D」)を用いて、サンプル台に上記で得たフィルムを固定して水平を確認後、サンプル上にプローブをセットし、100g荷重にて、引っ張り速度0.3m/分の条件で測定を行い、動摩擦係数を求め下記の基準に従って評価した。
◎:動摩擦係数が0.15未満。
○:動摩擦係数が0.15以上0.20未満。
△:動摩擦係数が0.20以上0.25未満。
×:動摩擦係数が0.25以上。
【0130】
[耐擦傷性の評価]
#0000のスチールウールを用い、荷重300gで10往復磨耗させて試験を行った。試験後の塗膜表面に付いた傷の本数を数えて、下記の基準によって耐擦傷性を評価した。尚、耐擦傷性の評価の評価は、下記に示すアルカリ処理を行う前と、アルカリ処理を行った後にそれぞれ行った。
【0131】
◎:傷の本数が10本未満である。
○:傷の本数が10本以上20本未満である。
△:傷の本数が20本以上30本未満である。
×:傷の本数が30本以上である。
【0132】
<硬化塗膜の強アルカリ(ケン化)処理方法>
上記で得られた反射防止フィルムを、70℃に加温した2.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液に1分間浸漬させ、水洗後、100℃で3分間乾燥させて、強アルカリ処理を行った。
【0133】
実施例7(同上)
実施例6で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、重合性樹脂(2)の30%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例4と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0134】
実施例8(同上)
実施例6で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、重合性樹脂(3)の30%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例4と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0135】
実施例9(同上)
実施例6で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、重合性樹脂(4)の30%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例4と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0136】
実施例10(同上)
実施例6で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、重合性樹脂(5)の30%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例4と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0137】
比較例3(比較対照用の活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
実施例4で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、比較対照用重合性樹脂(P´−1)の20%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例2と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0138】
比較例4(同上)
実施例4で用いた重合性樹脂(1)の30%含有溶液に代えて、比較対照用重合性樹脂(P´−2)の20%含有溶液を樹脂分として0.005質量部添加した以外は実施例2と同様に操作して、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0139】
【表1】