特許第6405715号(P6405715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405715蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
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  • 特許6405715-蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405715
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20181004BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20181004BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01G11/52
   H01G9/02
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-114681(P2014-114681)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-230743(P2015-230743A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
(72)【発明者】
【氏名】根本 友幸
【審査官】 小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−193864(JP,A)
【文献】 特表2013−508483(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/066233(WO,A1)
【文献】 特開2005−145998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01G 9/02
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモポリプロピレンであり、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0〜10g/10分であるポリプロピレン系樹脂(A)が55〜85質量部、スチレン含有量が10質量%〜40質量%であり、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下のスチレン系エラストマー(B)が15〜45質量部の割合で含有する樹脂組成物を含み、
空孔率が30%以上であり、透気度が100秒/100ml以下であることを特徴とする蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記スチレン系エラストマー(B)が、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)からなる群の中から1種類以上含有する請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記樹脂組成物に結晶核剤(C)をさらに含有する請求項1または2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
前記結晶核剤(C)の含有率が、前記樹脂組成物100質量部に対して0.001〜5.0質量部である請求項3に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
厚みが100μm未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
請求項に記載の蓄電デバイス用セパレータが組み込まれている蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電デバイスとして、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池のような電池系デバイスと、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのようなコンデンサ系デバイスがある。本発明では、前記蓄電デバイス用セパレータとして利用される。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイス用セパレータとして、ポリオレフィン樹脂を主成分とした多孔性フィルムが用いられてきた。微細な連通孔を多数形成する技術としては、以下に記載されているような種々の技術が提案されている。例えば、特開平5−25305号公報(特許文献1)では超高分子量ポリエチレンと溶媒を混練・シート化し、延伸処理したのち溶媒を抽出することにより多孔性フィルムを得ている。
【0003】
特許3166279号公報(特許文献2)では、ポリオレフィン樹脂と充填剤等を含む樹脂組成物をインフレーション成形し、得られたフィルムを一軸延伸することにより連通性をもつ多孔性フィルムを得ている。同じく、特開2004−95550号公報(特許文献3)でもセパレータとして用いる多孔性フィルムを、熱可塑性樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物から成形したシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより多孔性フィルムを得ている。
【0004】
特開2000−219767号公報(特許文献4)では、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーを流動パラフィンに溶解させ、ヒートプレスにて圧延後、有機溶媒により流動パラフィンを抽出し、逐次二軸延伸を行うことで多孔性フィルムを得ている。
【0005】
また、特開2012−131990号公報(特許文献5)では、ポリオレフィン系樹脂に熱可塑性エラストマーと粒子を含み、少なくとも一軸方向に延伸することにより、多孔性フィルムを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−25305号公報
【特許文献2】特許3166279号公報
【特許文献3】特開2004−95550号公報
【特許文献4】特開2000−219767号公報
【特許文献5】特開2012−131990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,特許文献4では多孔性フィルム全体に含まれている溶媒を有機溶媒で洗浄、抽出する必要があり、環境上の観点から好ましくない。また、特許文献2,特許文献3に記載の製造方法により得られる多孔性フィルムには充填剤が存在しているため、多孔性フィルムの比重が大きくなり、改善を行う余地がある。
また、特許文献5では粒子添加に伴う粒子脱落の問題があり、各種物性への影響が懸念される。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、透気特性に優れただけでなく、製膜時の安定性に優れ、微細多孔化された表面を有する蓄電デバイス用セパレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂(A)が55〜85質量部、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下のスチレン系エラストマー(B)が15〜45質量部の割合で含有する樹脂組成物を含むことを特徴とする蓄電デバイス用セパレータである。
【0010】
また本発明は、前記スチレン系エラストマー(B)が、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)からなる群の中から1種類以上含有することが好ましい。
【0011】
また本発明は、前記樹脂組成物に結晶核剤(C)を含有することが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記結晶核剤(C)の含有率が、前記樹脂組成物100質量部に対して0.001〜5.0質量部であることが好ましい。
【0013】
また本発明の蓄電デバイス用セパレータについて、厚みが100μm未満であることが好ましい。
【0014】
また本発明の蓄電デバイス用セパレータについて、透気度が100秒/100ml以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、ポリプロピレン系樹脂とスチレン系エラストマーを含有する樹脂組成物を、延伸することによって多孔化させることを特徴とする。上述の通り、延伸によって多孔化させるため、添加剤を溶媒で除去する工程などが無く、環境への悪影響が少ない。また、前記添加剤の残存や脱落によって物性に悪影響を及ぼすだけでなく、多孔化させるための粒子やフィラーが含まれていないため、より軽量な蓄電デバイス用セパレータを作製することができる。さらに、本発明の蓄電デバイス用セパレータは、透気特性に優れており、厳密な製造条件の制御を必要とせず、原料を溶融混練し、得られた樹脂組成物を少なくとも一軸方向に延伸するのみで簡便にかつ効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の蓄電デバイス用セパレータを収容しているリチウムイオン二次電池の一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ポリプロピレン系樹脂(A))
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1―ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、蓄電デバイス用セパレータに用いる場合には機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
【0018】
また、ポリプロピレン系樹脂(A)としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80〜99%であることが好ましく、より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎると、蓄電デバイス用セパレータの機械的強度が低下する恐れがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素―炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et at al.(Macromol.8,687(1975)に準拠している。
【0019】
また、ポリプロピレン系樹脂(A)は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが1.5以上とすることで、十分な押出成形性が得られ、工業的に大量生産が可能である。一方、Mw/Mnが10.0以下とすることで、十分な機械的強度を確保することができる。Mw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって得られる。
【0020】
また、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。
一方、MFRが15g/10分以下とすることで、蓄電デバイス用セパレータの強度を十分に有することができる。なお、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」(日本ポリプロ社製)、「バーシファイ」「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱化学社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライム TPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」「Adsyl」「HMS−PP(PF814)」(サンアロマー社製)、「インスパイア」(ダウケミカル)など市販されている商品を使用できる。
【0022】
(スチレン系エラストマー(B))
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂(A)にスチレン系エラストマー(B)を添加することが重要である。スチレン系エラストマー(B)を添加することにより、効率的に微細で均一性の高い多孔構造を得ることができ、空孔の形状や孔径を制御し易くなる。
【0023】
本発明におけるスチレン系エラストマー(B)とは、スチレン成分を基材とした熱可塑性エラストマーの1種で、軟質成分(例えばブタジエン成分)と硬質成分(例えばスチレン成分)との連続体からなる共重合体である。
【0024】
また、前記共重合体の種類について、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。一般にブロック共重合体としては、線状ブロック構造や放射状枝分れブロック構造等種々のものが知られている。本発明においてはいずれの構造のものを用いてもよい。
【0025】
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下のスチレン系エラストマー(B)を含むことが重要である。ポリプロピレン系樹脂組成物中に分散した前記スチレン系エラストマー(B)は、樹脂との粘度差によってその形状が変化するが、前記範囲内におけるMFRのものであるならば、その形状が球状になり易い。球状分散したドメインは、アスペクト比が大きなドメインとは異なり、その後の延伸工程によって得られる多孔構造の均一性が高くなり易く、物性安定性に優れるので好ましい。さらに、上記範囲内におけるMFRであった場合、延伸工程時において、高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなるため、開孔起点が生じやすく、多孔化し易いという特徴を有する。
【0026】
また、本発明におけるスチレン系エラストマー(B)は、スチレン含有量が10質量%〜40質量%であることが好ましく、10質量%〜35質量%であることがより好ましい。スチレン系エラストマー(B)中のスチレン含有量が10質量%以上であることにより、効果的にポリプロピレン系樹脂組成物中にドメインを形成することができ、スチレン含有量が40質量%以下であることにより、過度に大きなドメイン形成を抑制することができる。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物の組成比において、ポリプロピレン系樹脂(A)が55〜85質量部、スチレン系エラストマー(B)が45〜15質量部であることが重要である。好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(A)が60〜80質量部、スチレン系エラストマー(B)が40〜20質量部である。
前記樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂(A)が85質量部以下、すなわち、スチレン系エラストマー(B)が15質量部以上であることによって、延伸による多孔化が生じ、十分な透気特性を確保することができる。一方、前記樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(A)が55質量部以上、すなわち、スチレン系エラストマー(B)が45質量部以下であることによって、前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のスチレン系エラストマー(B)同士が凝集を生じやすくなり、均質な孔径を得ることは困難である。
【0028】
前記スチレン系エラストマー(B)の具体的な種類については特に限定しないが、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。
また、効率的に樹脂組成物中にスチレン系エラストマー(B)を分散させるためには、前記スチレン系エラストマー(B)の中でも、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶性が高い、エチレン成分、ブチレン成分が含有されているものが好ましく、中でも、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。
【0029】
(結晶核剤(C))
本発明では、樹脂組成物に結晶核剤(C)をさらに含有することが好ましい。結晶核剤(C)を含有することにより、ポリプロピレン系樹脂(A)の緻密な球晶を得ることができるようになる。そうすると延伸工程時において、結晶部分と非晶部分での開孔も生じ易くなるため、上述したスチレン系エラストマー(B)を含有する方法に加えて、開孔起点を得ることが可能となり、均質微細な多孔構造を得ることができるようになる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂(A)の緻密な結晶構造を得るために用いる結晶核剤(C)としては、α晶核剤又はβ晶核剤が好ましい。α晶核剤を含有することによって、得られるポリプロピレン系樹脂(A)の球晶サイズは微細なものとなる。そのため、延伸工程時に得られる多孔構造は均一性が高くなる。また、β晶核剤を含有することで、上述した作用だけでなく、生成されるβ晶の延伸工程でのα晶への転位によるクレーズ形成も可能となる。このクレーズを二軸延伸により拡大させることで、さらに良好な透気性能を得ることができるようになる。
【0031】
α晶核剤としては、例えば、タルク、ミョウバン、シリカ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カーボンブラック、粘土鉱物などの無機化合物;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの脂肪族モノカルボン酸を除くカルボン酸;前記非脂肪族モノカルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどの正塩または塩基性塩;1・2,3・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン-2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−(2'・4'−ジメチルベンジリデン)−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−(2'・4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(2',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(3',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、および1・3,2・4−ビス(p−クロルベンジリデン)ソルビトールなどのジベンジリデンソルビトール系化合物;リチウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−ビス(4−クミルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−クミルフェニル)フォスフェート、カリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ジンク−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ジンク−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムジヒドロキシ−(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-トリス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン-ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4'−ジメチル−6,6'−ジ−t−ブチル−2,2'−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ジンク−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−t−オクチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[(4,4'−ジメチル−6,6'−ジ−t−ブチル−2,2'−ビフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒロドオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムヒロドオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、チタンジヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、チンジヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ジルコニウムオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]などのアリールフォスフェート系化合物;前記アリールフォスフェート系化合物の内、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と酢酸、乳酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、モンタン酸、メリシン酸、ステアロイル乳酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−N−ラウロイルアミノプロピオン酸などの脂肪酸族モノカルボン酸のリチウム、ナトリウムまたはカリウム塩など脂肪酸モノカルボン酸アルカリ金属塩、もしくは塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物;ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン、ポリ3−エチル−1−ペンテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ4−メチル−1−ヘキセン、ポリ4,4−ジメチル−1−ペンテン、ポリ4、4−ジメチル−1−ヘキセン、ポリ4−エチル−1−ヘキセン、ポリ3−エチル−1−ヘキセン、ポリアリルナフタレン、ポリアリルノルボルナン、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリアリルベンゼン、ポリアリルトルエン、ポリビニルシクロペンタン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペプタン、ポリビニルトリメチルシラン、ポリアリルトリメチルシランなどの高分子化合物、などが挙げられる。
【0032】
市販されているα晶核剤の具体例としては、新日本理化社製「ゲルオールD」シリーズ、「ゲルオールMD」シリーズ、ADEKA社製「NA」シリーズ、ミリケンケミカル社製「Millad」シリーズ、「Hyperform」シリーズ、BASF社製「IRGACLEAR」シリーズなどが挙げられる。
【0033】
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
【0034】
市販されているβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
【0035】
(他の成分)
本発明の樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂組成物を含んでも良い。さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工などを施すことができる。
【0036】
(蓄電デバイス用セパレータの物性)
(厚み)
本発明の蓄電デバイス用セパレータの厚みは、100μm未満が好ましく、50μm未満がより好ましく、40μm未満がさらに好ましい。一方で下限として、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。厚みが100μm未満であれば、蓄電デバイス用セパレータの電気抵抗が小さくできるため、蓄電デバイスの性能を十分に確保することができる。また、厚みが5μm以上あれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
【0037】
(25℃での透気度)
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、25℃での透気度が100秒/100ml以下であることが好ましく、より好ましくは70秒/100ml以下、さらに好ましくは50秒/100ml以下である。25℃での透気度が100秒/100ml以下とすることによって、室温下で十分な電気抵抗を有することができ、優れた性能を有することができる。
透気度は蓄電デバイス用セパレータの厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該蓄電デバイス用セパレータを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が蓄電デバイス用セパレータの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が当該蓄電デバイス用セパレータの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは蓄電デバイス用セパレータの厚み方向の孔のつながり度合いである。
【0038】
(空孔率)
空孔率は多孔構造を規定する為の重要なファクターであって、蓄電デバイス用セパレータ中の空間部分の割合を示す数値である。本発明の蓄電デバイス用セパレータにおいては、空孔率が30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上である。空孔率が30%以上であれば、連通性を十分に確保し透気特性に優れた蓄電デバイス用セパレータとすることができる。
【0039】
(製造方法)
次に、本発明の蓄電デバイス用セパレータの製造方法について説明する。
本発明では、まずポリプロピレン系樹脂の融点以上、分解温度未満の温度条件下で押出機等を用いて溶融・成形することによって、無孔膜状物を得る。無孔膜状物の成形方法として、より具体的にはTダイ成形、インフレーション成形等が挙げられ、本発明においては、Tダイ成形を用いることが好ましい。
【0040】
また本発明では、混練物を冷却しながらフィルムに成形する際、キャストロールの温度は100℃以上が好ましい。より好ましくは110℃以上で、更に好ましくは120℃以上である。本発明ではポリプロピレン系樹脂(A)の結晶部分と非晶部分での延伸工程時による開孔によっても、良好な透気特性を得ることが可能であるため、キャストロールの温度を100℃以上とし、高い結晶化度の無孔膜状物を得ることが好ましい。
【0041】
ついで、得られた無孔膜状物を一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明の目的である高い透気性能を有する蓄電デバイス用セパレータを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物の流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
【0042】
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、多孔構造の制御が比較的容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。
【0043】
縦延伸温度は、好ましくは0〜50℃であり、より好ましくは5〜40℃である。縦延伸温度を50℃以下とすることで、延伸時に高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなり、ボイド形成に伴う白化が進行するため好ましい。一方で、0℃以上とすることで、延伸時の破断が抑制できるため、好ましい。
【0044】
縦延伸倍率は、任意に選択できるが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8.0倍であり、さらに好ましくは1.5〜4.0倍である。一軸延伸あたりの延伸倍率が1.1倍以上とすることで白化が進行して、延伸による多孔化が十分起こっていることを示唆している。また、10倍以下とすることで、空孔の変形は抑制され、十分に白化した蓄電デバイス用セパレータを得ることができる。
【0045】
横延伸温度は、好ましくは100〜150℃であり、より好ましくは110〜140℃である。前記横延伸温度が規定された範囲内であることによって、縦延伸時に生じた空孔が拡大されて連通性を有することができ、十分な透気性能を有することができる。
【0046】
横延伸倍率は、任意に選択できるが、好ましくは1.1〜10倍であり、より好ましくは1.5〜8.0倍、更に好ましくは1.5〜4.0倍である。規定した横延伸倍率で延伸することによって、縦延伸時に生じた空孔を変形することなく、十分な通気性を有することができる。
【0047】
(蓄電デバイス)
蓄電デバイスとして、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池のような電池系デバイスと、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのようなコンデンサ系デバイスがある。蓄電デバイスの1つとして、リチウムイオン二次電池について、以下に説明する。
【0048】
(リチウムイオン二次電池)
本発明の蓄電デバイス用セパレータを収容しているリチウムイオン二次電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は蓄電デバイス用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、蓄電デバイス用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。厚みを5μm以上にすることにより蓄電デバイス用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
【0049】
前記正極板21、蓄電デバイス用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、蓄電デバイス用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液電池を作製している。
【0050】
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.4mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
【0051】
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
【0052】
本実施形態では、負極として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
【0053】
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【0054】
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の蓄電デバイス用セパレータについてさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0056】
(ポリプロピレン系樹脂(A))
・A−1;ポリプロピレン(ノバテックFY6H、MFR:1.9g/10分、日本ポリプロ社製)
(スチレン系エラストマー(B))
・B−1;スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(グレード名;SEPTON1001、スチレン含有量:35質量%、MFR:0.1g/10分、クラレ社製)
・B−2;スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON2006、スチレン含有量:35質量%、MFR:<0.1g/10分、クラレ社製)
・B−3;スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON8006、スチレン含有量:33質量%、MFR:<0.1g/10分、クラレ社製)
・B−4;スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON2007、スチレン含有量:30質量%、MFR:2.7g/10分、クラレ社製)
(結晶核剤(C))
・C−1;β晶核剤(3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)
・C−2;α晶核剤(ソルビトール系化合物、グレード名:ゲルオールMD―LM30G、新日本理化社製)
【0057】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)80質量%、スチレン系エラストマー(B−1)20質量%を混合して、二軸押出機にて200℃で溶融押出した。リップ開度1mmのTダイで成形を行い、キャストロールに導かれて膜状物を得た。膜状物の厚みは平均100μmであった。
膜状物は縦延伸機を用いて、20℃に設定したロールと40℃に設定したロール間において、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃で横方向に3.0倍延伸した後、145℃で熱処理を行い、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0058】
(実施例2)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)60質量%、スチレン系エラストマー(B−1)40質量%を混合する以外、実施例1と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0059】
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70質量%、スチレン系エラストマー(B−2)30質量%を混合して、二軸押出機にて200℃で溶融押出した。リップ開度1mmのTダイで成形を行い、キャストロールに導かれて膜状物を得た。膜状物の厚みは平均100μmであった。
膜状物は縦延伸機を用いて、20℃に設定したロールと40℃に設定したロール間において、ドロー比50%(縦延伸倍率1.5倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、実施例1と同様の方法で横延伸を行い、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0060】
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70質量%、スチレン系エラストマー(B−3)30質量%を混合し、実施例1と同様の方法で縦延伸後フィルムを得た。その後、縦延伸後フィルムを実施例1と同様の方法で、2倍横延伸を行い、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0061】
(実施例5)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70質量%、スチレン系エラストマー(B−1)30質量%、結晶核剤(C−1)0.1質量%を混合した以外は、実施例4と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0062】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70質量%、スチレン系エラストマー(B−1)30質量%、結晶核剤(C−2)0.1質量%を混合した以外は、実施例1と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0063】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)90質量%、スチレン系エラストマー(B−1)10質量%を混合した以外は、実施例3と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0064】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂と(A−1)50質量%、スチレン系エラストマー(B−1)50質量%を混合した以外は、実施例1と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0065】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂と(A−1)70質量%、スチレン系エラストマー(B−4)30質量%を混合した以外は、実施例3と同様の方法で蓄電デバイス用セパレータを得た。得られた蓄電デバイス用セパレータの評価結果を表1に纏める。
【0066】
実施例および比較例で得られた多孔性フィルムについて、蓄電デバイス用セパレータの厚み(膜厚)、透気度、空孔率について以下の方法で測定した。
【0067】
(1)厚み(膜厚)
1/1000mmのダイアルゲージを用いて無作為に10点測定して、その平均値を厚みとした。
【0068】
(2)25℃での透気度
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気度を測定した。測定機器として、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
【0069】
(3)空孔率
蓄電デバイス用セパレータの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
【0070】
表1に実施例、比較例に関する評価結果を示した。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1〜6より、MFRが1g/10分以下のスチレン系エラストマー(B)として、SEP、SEPS、SEBSを使用した場合、透気度が100秒/100ml以下と十分な透気特性を有することが示された。一方、比較例1、2より、ポリプロピレン系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)の組成比が異なると、延伸による多孔化が生じにくくなり、延伸後に厚みムラを生じやすくなった。また、比較例3では、温度230℃、荷重2.16kgにおけるスチレン系エラストマー(B−4)のメルトフローレート(MFR)が1g/10分を越えているため、マトリックス―ドメインの界面部分に応力が集中せず、開孔起点とならないため、十分な透気性能を確保することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、蓄電デバイスとして、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池のような電池系デバイス、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのようなコンデンサ系デバイスとして幅広く利用が期待できる。
【符号の説明】
【0074】
10 蓄電デバイス用セパレータ
20 リチウムイオン二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
図1