特許第6405738号(P6405738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405738
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20181004BHJP
【FI】
   H01L33/50
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-126488(P2014-126488)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-4981(P2016-4981A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年2月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】作田 寛明
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/024818(WO,A1)
【文献】 特開2006−008721(JP,A)
【文献】 特開2008−081631(JP,A)
【文献】 特開2012−124356(JP,A)
【文献】 特開2006−049799(JP,A)
【文献】 特開2013−229593(JP,A)
【文献】 特開2013−012711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0193836(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/034228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近紫外乃至青色領域にピーク発光波長を有する光を放射する発光素子と、
前記発光素子から放射された1次光によって励起され光を放射する第1蛍光体、前記1
次光によって励起され赤色領域にピーク発光波長を有する光を放射する第1赤色蛍光体、
および、前記1次光によって励起され赤色領域の前記第1赤色蛍光体よりも長波長側にピ
ーク発光波長を有する光を放射する第2赤色蛍光体を含有する蛍光体層と、を備える発光
装置であって、
前記第1赤色蛍光体および第2赤色蛍光体のそれぞれは、(Sr1−y,Ca1−
AlSiN:Eu(但し、0.001≦x≦0.1、 0<y≦1)で表される蛍
光体であって、前記第1赤色蛍光体が(Sr,Ca)AlSiN:Euで表される蛍光
体であり、前記第2赤色蛍光体が、CaAlSiN:Euで表される蛍光体であり、
前記第1赤色蛍光体のピーク発光波長が625nmより長波長であり、635nm以下
であり、
前記発光素子の前記ピーク発光波長が406nm以上である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光装置が白色発光装置であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2赤色蛍光体のピーク発光波長が、630nm以上670nm以下であることを
特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1蛍光体のピーク発光波長が、490nm以上610nm以下であることを特徴
とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1蛍光体が、Ce付活アルミニウムガーネット蛍光体であることを特徴とする請
求項1〜のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
連続した一つの前記蛍光体層に対して、2以上の前記発光素子を配置してなることを特
徴とする請求項1〜のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、GaN系LEDチップであることを特徴とする請求項1〜のいずれ
かに記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体層が、ピーク発光波長435nm以上490nm以下の第2蛍光体を含有す
ることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
下記式で規定される励起光透過率が、40%以上200%以下であることを特徴とする
請求項1〜のいずれかに記載の発光装置。
励起光透過率(%)=Ip<chip>/Ip<phos>
Ip<chip>:チップの発光スペクトルにおける発光ピーク強度
Ip<phos>:蛍光体からの発光スペクトルにおける発光ピーク強度
(蛍光体が複数ある場合は、各蛍光体の発光スペクトルが重ね合わされたスペクトルにお
ける発光ピーク強度を用いる。)
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の発光装置を具備する照明器具。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の発光装置を具備する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具、表示装置等の光源等に利用可能な発光装置に関し、特に、発光輝度の低下を抑制しつつ、高演色性および高発光効率の実現を可能にした発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子を用いた照明装置等の半導体発光装置が種々開発されている。
特許文献1には、発光素子から放射された1次光によって励起され緑色領域にピーク発光波長を有する光を放射する緑色蛍光体と、前記1次光によって励起され赤色領域にピーク発光波長を有する光を放射する第1赤色蛍光体および第2赤色蛍光体を含有する蛍光体層とを備える発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−124356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の発光装置の構成では、十分な発光効率が得られず、また通電発光時に発熱による色シフトが大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、近紫外乃至青色領域にピーク発光波長を有する光を放射する発光素子と、前記発光素子から放射された1次光によって励起され光を放射する第1蛍光体、前記1次光によって励起され赤色領域にピーク発光波長を有する光を放射する第1赤色蛍光体、および、前記1次光によって励起され赤色領域の前記第1赤色蛍光体よりも長波長側にピーク発光波長を有する光を放射する第2赤色蛍光体を含有する蛍光体層と、を備える発光装置であって、前記第1赤色蛍光体および第2赤色蛍光体のそれぞれは、(Sr1−y,Ca1−xAlSiN:Eu(但し、0.001≦x≦0.1、0<y≦1)で表される蛍光体であり、前記第1赤色蛍光体の発光ピーク波長が625nmより長波長であることを特徴とする発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発光装置により、通電駆動時の発熱による色シフトが抑制され、高演色および高効率の発光装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る発光装置の一実施形態の概略構造を模式的に示す概略斜視図
図2】本発明に係る発光装置をCOB:chip on board形状とした別実施形態の概略構造を模式的に示す概略斜視図
図3】本発明に係る発光装置の蛍光体層を多層構造とした別実施形態の概略構造を模式的に示す概略要部断面図
図4】本発明に係る発光装置の蛍光体層を多層構造とした他の別実施形態の概略構造を模式的に示す概略要部断面図
図5】本発明に係る発光装置のリードフレームパッケージに実装した別実施形態の概略構造を模式的に示す概略断面図
図6】本発明に係る発光装置の蛍光体層をドーム形状とした別実施形態の概略構造を模式的に示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、近紫外とは好ましくは200nm以上380nm以下の波長領域を示し、紫色とは好ましくは380nm以上435nm以下の波長領域を示し、青色とは好ましくは435nm以上490nm以下の波長領域を示し、緑色とは好ましくは490nm以上580nm以下の波長領域を示し、黄色とは好ましくは580nm以上610nm以下の波長領域を示し、赤色とは好ましくは610nm以上800nm以下の波長領域を示す。
【0009】
以下に第1蛍光体の例を説明する。第1蛍光体は、ピーク発光波長が490nm以上610nm以下の波長範囲内にある、緑色乃至黄色蛍光体であり、LuAl12:Ce蛍光体(LuAG蛍光体)、または、YAl12:Ce蛍光体(YAG蛍光体)等を使用できる。LuAG蛍光体においては、Luの一部がYまたはGdで置換されていてもよい(すなわち、12モルのOに対して、Lu、Y、Gd、付活剤Ceの合計が3モル)。YAG蛍光体においては、Yの一部がLuまたはGdで置換されていてもよい(すなわち、12モルのOに対して、Y、Lu、Gd、付活剤Ceの合計が3モル)。LuAG蛍光体、YAG蛍光体のAlの一部がGaで置換されていてもよい(すなわち、12モルのOに対して、Al、Gaの合計量が5モル)。本発明では、上記のように、元素の一部が、Y、Lu、Gd、Ga等で置換されたものも含めてLuAG蛍光体またはYAG蛍光体と称することとする。他にα−サイアロン(一般式Si12−(m+n)Al(m+
n)8−nで表される単位構造の組成で構造の中に2箇所の空隙がある結晶構造である。この空隙に比較的イオン半径の小さなCa2+等の金属イオンが固溶可能であり、金属イオンが固溶したα−サイアロンの一般式はMm/vSi12−(m+n)Al(m+n)8−n:Eu(ここでMは金属イオンであり、vはその原子価である。)で表される。0<m<12、0<n<8であり、Mは例えばLi、Mg、Ca、Y、Zn等である。)、LSN蛍光体(LnSi:Z(Lnは付活剤として用いる元素を除いた希土類元素であり、Zは賦活剤であり、xは2.7≦x≦3.3を満たし、yは5.4≦y≦6.6を満たし、nは10≦n≦12を満たす。))が挙げられる。
【0010】
更に、第1蛍光体として、以下の一般式で表される3価のセリウム付活珪酸塩蛍光体(CSMS蛍光体)が使用できる。
一般式: M1(M21−x,Ce(SiO
但し、M1は、Ca,Sr及びBaの中から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Al,Ga,In,Sc,Y,La,Gd及びLuから選択される少なくとも1種の元素であり、0.01≦x≦0.4である。
【0011】
更に、第1蛍光体としては、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体(BSS蛍光体):(BaCaSrMgEu)SiO(a+b+c+d+x=2、1.0 ≦ a ≦ 2
.0、0 ≦ b < 0.2、0.2 ≦ c ≦ 0.8、0 ≦ d < 0.2および0 < x ≦ 0.5)、β−SiAlON蛍光体:(Si6−zAl−z:Eu(0<z<4.2))、アルカリ土類金属スカンジウム酸塩蛍光体(CSO蛍光体)CaSc:Ce、酸窒化物蛍光体(BSON蛍光体):(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)Si12、SiON蛍光体:(組成式MSi:Eu2+(M:二価の金属元素を表わす。通常は、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素))が挙げられる。
【0012】
第1蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、第1蛍光体を1種類で用いることを考慮した場合、各波長における発光強度(スペクトル)の連続性を保つために青色領域の発光が発光半値幅の狭いときは広い方が好ましく、例えば95nm以上の蛍光体を使用する。一方
で第1蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、第1蛍光体を1種類で用いることを考慮した場合、青色領域の発光が発光半値幅の広いときは狭い方が好ましく、例えば50nm以上の蛍光体を使用する。また励起波長の変化に対する色度の温度特性を調整するために緑色蛍光体を2種類使用することもある。その際は励起波長に対する発光強度変化の異なる特性
を持つ緑色蛍光体を使用してもよい。上記LuAG蛍光体、CSMS蛍光体、及び、YAG蛍光体は、何れもCeを付活剤とするガーネット結晶構造のCe付活アルミニウムガーネット蛍光体であり、Ceを付活剤として使用するので、半値幅の広い(95nm以上)蛍光スペクトルが得られ、高い演色性を得るのに好適な蛍光体である。当該半値幅は、例えば、LuAl12:Ce蛍光体では102nm、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce蛍光体では103nmが得られる。
【0013】
第1蛍光体のピーク発光波長は、演色性を向上させる観点から、485nm以上、さらには510nm以上が好ましく、演色性を向上させる観点から610nm以下、さらには550nm以下が好ましい。
第1赤色蛍光体および第2赤色蛍光体として、(Sr1−y,Ca1−xAlSiN:Eu蛍光体(但し、0.001≦x≦0.1、0<y≦1)を使用する。第1赤色蛍光体のピーク発光波長は625nmより長波長である。
【0014】
発光効率を向上させる観点から、第1赤色蛍光体として好ましいxは0.005以上であり、発光効率を向上させる観点から、好ましいxは0.05以下である。発光効率を向上させる観点から、第1赤色蛍光体として好ましいyは0.3以上であり、発光効率を向上させる観点から、好ましいyは0.9以下である。第1赤色蛍光体としては特に(Sr1−y,Ca)AlSiN:Eu(但し、0.001≦x≦0.1、0<y<1)((Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体)が好ましく、x、yの好ましい範囲は上述の通りである。
【0015】
発光効率を向上させる観点から、第2赤色蛍光体として好ましいxは0.002以上であり、発光効率を向上させる観点から、好ましいxは0.05以下である。演色性を向上させる観点から、第2赤色蛍光体として好ましいyは0.3以上であり、演色性を向上させる観点から、好ましいyは0.9以下である。
第2赤色蛍光体としては特にCa1−xAlSiN:Eu(但し、0.001≦x≦0.1)(CaAlSiN:Eu蛍光体)が好ましく、xの好ましい範囲は上述の通りである。
【0016】
(Sr1−y,Ca1−xAlSiN:Eu蛍光体は、温度変化に対して蛍光特性の変動の少ない蛍光体である。従って、第1及び第2赤色蛍光体としてこれらを使用した場合には、発光装置として赤色領域の発光の温度依存性を小さくでき、例えば、第1蛍光体として温度依存性の小さい蛍光特性のLuAG蛍光体、CSMS蛍光体、または、YAG蛍光体を使用することで、全体の発光特性の温度依存性をさらに改善することが期待できる。しかしながら、LEDと複数の蛍光体を混合して作製した発光装置において温度変化に対する発光装置から放射される光の色変化(例えば色度点や色温度の変化)は蛍光体の特性だけではなく、LEDチップの温度特性も考慮する必要がある。例えばチップの発光スペクトルは温度上昇とともに長波長側にシフトするため、このとき各蛍光体の励起特性の影響を受け蛍光体の発光特性が変化する。即ちチップのスペクトル特性に温度変化があることを考慮すると蛍光特性の変動は一概にない方がよいとはいえず、むしろチップ特性変化に起因する各部材の特性変化(チップ波長変化やチップ強度変化、蛍光体発光
強度変化・スペクトル変化など)に合わせて光源の色変化をなくす特性があることが望ま
しい。
【0017】
また、(Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体とCaAlSiN:Eu蛍光体は、
比重差が小さいので、後述するように、発光素子を封止する透明樹脂中に添加した際、比重差による沈降バラツキが小さく、演色性を含めた発光装置の発光特性のバラツキを軽減できる。
本発明では、第1赤色蛍光体のピーク発光波長を625nmより長い(625nmは含まない)波長とすることにより、特許文献1開示の発光装置等の従来の発光装置と比較して、長波長側の発光成分が多いため第2赤色蛍光体と組み合わせて得られる発光スペクトルに占める第2赤色蛍光体の割合を減らすことができる。これにより第2赤色蛍光体に起因する特性を抑制することができる。例えば抑制される特性として、長波長側成分が多く視感度の悪い第2赤色蛍光体を減らすことで得られる光束が増加しその結果発光効率が改善される。また温度変化に対する特性変化を小さくすることができる。
【0018】
発光効率を向上させる観点から、第1赤色蛍光体として好ましいピーク発光波長は628nm以上であり、更には630nm以上であり、演色性を向上させる観点から、好ましいピーク発光波長は640nm以下であり、更には635nm以下である。
発光効率を向上させる観点から、第2赤色蛍光体として好ましいピーク発光波長は640nm以上であり、更には645nm以上であり、演色性を向上させる観点から、好ましいピーク発光波長は670nm以下であり、更には660nm以下である。
【0019】
第1及び第2赤色蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、第1蛍光体と同様に広い方が好ましいが、2種類使用するため、赤色全体としての発光スペクトルが特定波長でピークを有しないように制限される方が良く、例えば、半値幅が85〜110nm程度の蛍光体を使用する。例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体では87nm、CaAlSiN:Eu蛍光体では88nmのものを使用する。
【0020】
また、各蛍光体の粒径は、夫々のメジアン値(D50)が、第1蛍光体では5μm以上20μm以下、第1蛍光体及び第2赤色蛍光体では5μm以上20μm以下であるのが好ましい。
配合比(重量部)については、演色性を向上する観点から、第1蛍光体100部に対して赤色蛍光体(第1及び第2赤色蛍光体の合計)は1部以上、更には30部以上が好ましく、発光効率を向上する観点から、第1蛍光体100部に対して赤色蛍光体は200部以下、更には150部以下が好ましい。
【0021】
さらに配合比(重量部)については、演色性向上の観点から、第1赤色蛍光体100部に対して第2赤色蛍光体は1部以上、更には30部以上が好ましく、発光強度向上の観点から、第1赤色蛍光体100部に対して第2赤色蛍光体は200部以下、更には150部以下が好ましい。
本発明に係る発光装置(以下、適宜「本発光装置」という。)の実施の形態につき、照明用の白色光源として使用される場合を想定して、図面に基づいて説明する。尚、本発光装置の構造を示す図面においては、適宜、要部を強調し、或いは、模式的に図示している箇所が存在するため、各部の寸法比は必ずしも実際の構造と一致していない。
【0022】
図1は、本発光装置の一例を模式的に示す概略構造断面図である。図1に示すように、本発光装置1は、セラミック基材からなるパッケージ本体部13、配線パターン3(3a,3k)、電極ランド4(4a,4k)、蛍光体層5、LEDチップ6、ワイヤー7を備えて構成される。尚、図1(a)は上面図、図1(b)は、LEDチップ6とワイヤー7を切断するXZ断面での要部断面図である。図1(a)においては、接続関係を明瞭にするために、内部を透明化して図示している。
【0023】
セラミック基材からなるパッケージ本体部13は上面視正方形状で、一例として、外形を5mm×5mm、厚みを1mmとする。配線パターン3a,3kは、相互に対向するよ
うにセラミック基板2上に形成されている。電極ランド4a,4kは、外部接続用(例えば電源供給用途)の電極として形成される。電極ランド4aは配線パターン3aとセラミクスを貫通する貫通ビアを介して接続され、電極ランド4kは配線パターン3kの一端と貫通ビアを介して接続されている。
【0024】
蛍光体層5は、LEDチップ6から放射された光(例えば、紫色光)の一部を、青色、緑色乃至黄色光と2種類の赤色光に変換して、当該5色の光を混ぜ合わせ白色光として放射するものである。また、蛍光体層5は、LEDチップ6から放射された光(例えば、青色)の一部を、緑色乃至黄色光と2種類の赤色光に変換するものであってもよい。蛍光体層5は、透明樹脂に粒状の第1蛍光体と粒状の第1赤色蛍光体と粒状の第2赤色蛍光体が夫々一様に分散して混合された蛍光体混合樹脂を、セラミック基材からなるパッケージ本体部13の内側に注入し、例えば、100℃で1時間、引き続き、150℃で3〜5時間熱硬化させることで形成される。また、蛍光体層5は、LEDチップ6を封止するための封止樹脂として機能する。蛍光体層5の厚さは、セラミック基材からなるパッケージ本体部13の凹部の深さとほぼ同じで、LEDチップ6の厚さより大きく、例えば0.4〜0.6mm程度である。
【0025】
透明樹脂の好適な実施形態として、硬化前粘度が3Pa・s以上20Pa・s以下のシリコーン樹脂を使用する。また、シリコーン樹脂には、各蛍光体の沈降を抑制するため、更に、LEDチップ6及び各蛍光体からの発光を効率良く拡散させるために、一例として、微細シリカ粒子が混入されている。尚、シリカ粒子等の沈降抑制剤や拡散剤は必ずしも混入する必要はない。
【0026】
積分球にて測定された、発光装置から照射される発光スペクトルに占める、LEDチップの発光スペクトルの割合を下記に示す式のようにチップの発光(1次光)ピーク強度と蛍光体の発光ピーク強度の比率である励起光透過率として以下表記する。
励起光透過率(%)=Ip<chip>/Ip<phos>
Ip<chip>:チップの発光スペクトルにおける発光ピーク強度
Ip<phos>:蛍光体からの発光スペクトルにおける発光ピーク強度
※蛍光体が複数ある場合は、各蛍光体の発光スペクトルが重ね合わされたスペクトルにおける発光ピーク強度を用いる。
【0027】
励起光透過率の好ましい範囲は、発光効率を向上させる観点から、好ましい励起光透過率は40%以上、更には50%以上、60%以上であり、演色性を向上させる観点から、好ましい励起光透過率は200%以下、更には170%以下、130%以下である。
LEDチップ6は、紫色乃至青色領域(波長:380nm以上490nm以下)にピーク発光波長が存在する紫色乃至青色成分を含む光を放射する半導体発光素子のベアチップで、InGaN系LED等のGaN系LEDチップで構成される。本実施形態では、一例として、ピーク発光波長が405nm近傍のものを使用する。また、本実施形態では、LEDチップ6は、セラミック基材からなるパッケージ本体部13上にダイボンドされ、セラミック基材からなるパッケージ本体部13の一辺(X方向)にほぼ平行になるように複数個が直線状に複数列配置されている。図1に示す例では、LEDチップ6は6個並列に接続されて構成されている。また、LEDチップ6は、チップ上面から発光が主に出射される構造で、チップ表面に隣接するLEDチップ6または配線パターン3とワイヤー7で相互に接続するための図示しない電極パッド(アノード用、カソード用)が形成されている。尚、LEDチップ6が裏面出射タイプの場合は、ワイヤー7に相当する配線及びランドをセラミック基材からなるパッケージ本体部13上に予め形成し、LEDチップ6を表面の電極パッドを基板2の表面に対向させてバンプを介してフリップチップ接続により搭載するようにしても構わない。
【0028】
本発光装置から放射される光が照射される物体色の白をより白く際立たせるために、LEDチップピーク波長の好ましい範囲は、シャツや紙に青に発光する蛍光増白剤が混入している白色の被照射物に対しては400nm未満が好ましく、また蛍光増白剤を含む含まないにかかわらず400nm以上470nm以下の範囲も好ましい。更に好ましくは405nmから450nmの範囲、更により好ましくは410nmから430nmの範囲である。
このときの励起光透過率の好ましい範囲は40%以上、更には60%以上、更には80%以上であり、200%以下、更には150%以下、更には120%以下が好ましい。
【0029】
〈別実施形態〉
以下、上記実施形態の別実施形態について説明する。
なお、別実施形態においては、第1蛍光体として緑色蛍光体を用いた場合を例に示すが、第1蛍光体として黄色蛍光体を使用することも可能であり、緑色蛍光体と黄色蛍光体の混合物を用いることも可能である。またチップから放射される光を青色として例を示すが、近紫外から紫色を放射するチップを用いて、青色光を第2蛍光体(青色蛍光体)で代替することも可能である。
【0030】
本発明の実施形態はこれら全てを包含するものであり、別実施形態は青色を放射するチップを用いる場合や緑色蛍光体を用いる場合のみに限定されるものではない。
本発光装置の実施の別形態につき、照明用の白色光源として使用される場合を想定して、図面に基づいて説明する。尚、本発光装置の構造を示す図面においては、適宜、要部を強調し、或いは、模式的に図示している箇所が存在するため、各部の寸法比は必ずしも実際の構造と一致していない。
【0031】
図2は、本発光装置の一例を模式的に示す概略構造断面図である。図2に示すように、本発光装置は、セラミック基板2、配線パターン3(3a,3k)、電極ランド4(4a,4k)、蛍光体層5、LEDチップ6、ワイヤー7、印刷抵抗素子8,樹脂ダム9を備えて構成される。尚、図2(a)は上面図、図1(b)は、LEDチップ6とワイヤー7を切断するXZ断面での要部断面図である。図2(a)においては、接続関係を明瞭にするために、内部を透明化して図示している。
【0032】
セラミック基板2は上面視長方形状で、一例として、外形を24mm×20mm、厚みを1mmとする。配線パターン3a,3kは、相互に対向するようにセラミック基板2上にスクリーン印刷方法等により形成される。夫々は、本発光装置1の上面から見て円環から一部切り出された円弧形状を構成している。電極ランド4a,4kは、外部接続用(例えば電源供給用途)の電極として、材質がAg−Pt等でスクリーン印刷方法等により形成される。厚みの一例は20μmである。電極ランド4aは配線パターン3aの一端と引き出し用配線を介して接続され、電極ランド5kは配線パターン3kの一端と引き出し用配線を介して接続されている。
【0033】
蛍光体層5は、LEDチップ6から放射された光(例えば、青色光)の一部を、緑色乃至黄色光と2種類の赤色光に変換して、当該4色の光を混ぜ合わせ白色光として放射するものである。蛍光体層5は、透明樹脂に粒状の第1蛍光体と粒状の第1赤色蛍光体と粒状の第2赤色蛍光体が夫々一様に分散して混合された蛍光体混合樹脂を、円環状に形成された樹脂ダム9の内側に注入し、例えば、100℃で1時間、引き続き、150℃で3〜5時間熱硬化させることで形成される。また、蛍光体層5は、LEDチップ6を封止するための封止樹脂として機能する。蛍光体層5の厚さは、樹脂ダム9の高さとほぼ同じで、LEDチップ6の厚さより大きく、例えば0.6〜1.0mm程度である。
【0034】
透明樹脂の好適な実施形態として、硬化前粘度が3Pa・s以上20Pa・s以下のシ
リコーン樹脂を使用する。また、シリコーン樹脂には、各蛍光体の沈降を抑制するため、更に、LEDチップ6及び各蛍光体からの発光を効率良く拡散させるために、一例として、微細シリカ粒子が混入されている。尚、シリカ粒子等の沈降抑制剤や拡散剤は必ずしも混入する必要はない。
【0035】
LEDチップ6は、近紫外乃至青色領域(波長:380nm以上490nm以下)にピーク発光波長が存在する近紫外乃至青色成分を含む光を放射する半導体発光素子のベアチップで、InGaN系LED等のGaN系LEDチップで構成される。本別実施形態では、一例として、ピーク発光波長が450nm近傍のものを使用する。また、本実施形態では、LEDチップ6は、基板2上にダイボンドされ、基板2の一辺(X方向)にほぼ平行になるように複数個が直線状に複数列配置されている。そして、配線パターン3で囲まれたエリア内で高密度に配置できるよう、配線パターン3と印刷抵抗素子8とで形成される円環形状の中心付近において列内のチップ数を最も多くし、中心から基板の周辺に向かうに連れて列内のチップ数が少なくなるように配置されている。図2に示す例では、LEDチップ6は12個直列に接続したものが12列並列に接続されて構成されている。また、LEDチップ6は、チップ上面から発光が出射される構造で、チップ表面に隣接するLEDチップ6または配線パターン3とワイヤー7で相互に接続するための図示しない電極パッド(アノード用、カソード用)が形成されている。尚、LEDチップ6が裏面出射タイプの場合は、ワイヤー7に相当する配線及びランドを基板2上に予め形成し、LEDチップ6を表面の電極パッドを基板2の表面に対向させてバンプを介してフリップチップ接続により搭載するようにしても構わない。
【0036】
印刷抵抗素子8は、静電耐圧を高める目的で設けられており、一例として幅200μm、幅6μm、抵抗値50MΩのRhO2によって形成される。図1に示すように、印刷抵抗素子8は、配線パターン3aの一端と配線パターン3kの一端に接続するように配置され、円環から一部切り出された円弧形状を構成している。本実施形態では、配線パターン3aと印刷抵抗素子8と配線パターン3kの夫々が、同一の円環の一部分を構成するように配置されている。
【0037】
樹脂ダム9は、封止樹脂である蛍光体層5を堰き止めるための樹脂であり、有着色材料(白色、乳白色、オパール色が好ましい)で構成されている。本実施形態では、樹脂ダム9を、白色シリコーン樹脂(フィラーTiO2含有)の材質で、幅1mm、径9mmの円環状に形成した。樹脂ダム9は、上記シリコーン樹脂を円環状に流し込んだ後、150℃の硬化温度で1時間熱硬化させ形成した。樹脂ダム9は、図2(a)に示すように、配線パターン3と印刷抵抗素子8が形成する円弧状部分を覆うように形成されるのが好ましい。
【0038】
図1図2と同様に、以下に示す図3図4図5図6は連続した一つの蛍光体層に対して、2以上の発光素子を配置した例であり、一つの蛍光体層は、2以上の複数のLEDチップから放射された光の一部を、緑色乃至黄色光と2種類の赤色光、および必要に応じて青色光に変換して、当該4色または5色の光を混ぜ合わせ白色光として放射するものである。図1〜6において、ピーク発光波長が紫色である半導体発光素子と、ピーク発光波長が青色である半導体発光素子とを併用することもできる。
【0039】
〈1〉上記実施形態では、蛍光体層5には、第1蛍光体と第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体の夫々が混在していた(1層構造)が、蛍光体層5を2層または3層に分離して構成しても良い。
例えば、図3に模式的に示すように、蛍光体層5を、透明樹脂に粒状の第1赤色蛍光体を混合した第1赤色蛍光体層5aと、透明樹脂に粒状の第2赤色蛍光体を混合した第2赤色蛍光体層5bと、透明樹脂に粒状の緑色蛍光体を混合した緑色蛍光体層5cをLEDチ
ップ6側から順番に積層して構成しても良い。近紫外から紫に発光するチップを使用する際は、更に青色蛍光体層(図示せず)を最上部に積層して構成しても良い。この場合、各蛍光体層5a〜5cの全体での各蛍光体の配合比は、蛍光体層5を1層で構成した場合と同様に決定すれば良い。
【0040】
ここで、図3(a)に示すように、蛍光体を含まない透明樹脂層10でLEDチップ6を封止した上層に、当該3層の蛍光体層5を形成するのが好ましい。この場合、透明樹脂層10の厚さは、LEDチップ6の厚さ(80〜200μm程度)と同等以上とするのが良い。また、図3(b)に示すように、透明樹脂層10を設けずに、第1赤色蛍光体層5aでLEDチップ6を封止した上層に、残り2層の第2赤色蛍光体層5bと緑色蛍光体層5cを積層しても良い。また、第1赤色蛍光体層5aと第2赤色蛍光体層5bの順番を入れ替えても良い。
【0041】
更に、図4(a)に模式的に示すように、蛍光体層5を、透明樹脂に粒状の第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体を混合した赤色蛍光体層5dと、透明樹脂に粒状の緑色蛍光体を混合した緑色蛍光体層5cをLEDチップ6側から順番に積層して構成しても良い。この場合、各蛍光体層5c,5dの全体での各蛍光体の配合比は、蛍光体層5を1層で構成した場合と同様に決定すれば良い。
【0042】
ここで、図4(a)に示すように、蛍光体を含まない透明樹脂層10でLEDチップ6を封止した上層に、当該2層の蛍光体層5を形成するのが好ましい。また、図4(b)に示すように、透明樹脂層10を設けずに、赤色蛍光体層5dでLEDチップ6を封止した上層に、緑色蛍光体層5cを積層しても良い。
尚、上記実施形態で例示した第1及び第2赤色蛍光体に使用する(Sr,Ca)AlSiN3:Eu蛍光体やCaAlSiN3:Eu蛍光体は、吸収帯域が広く、緑色成分の光も吸収するため、図3または図4に示す構成において、緑色蛍光体層5cを蛍光体層5の最上層に設けることで、緑色蛍光体から放射される緑色成分の光が第1または第2赤色蛍光体で吸収されるのを抑制でき、結果として発光効率の低下を抑制でき好ましい。青色蛍光体層を最上部に設ける理由も同様である。
【0043】
更に、蛍光体層5を多層構造とする場合、各層を1層ずつ注入・熱硬化させて順番に形成しても良く、或いは、一部または全ての層について、先に樹脂の注入だけを行い、後で一気に熱硬化させて形成しても良い。つまり、各層の境界は必ずしも明確に分離している必要は無い。更に、図3または図4に示す構成をミックスしても良い。例えば、上記第1赤色蛍光体層5aと、上記第2赤色蛍光体層5bと、1または複数の配合比の異なる上記赤色蛍光体層5dを適宜組み合わせて最終的に必要な第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体の配合比を得るようにしても構わない。従って、蛍光体層5の層数は1〜4に限定されるものではない。
【0044】
〈2〉上記実施形態では、LEDチップ6を、青色領域にピーク発光波長(発光ピーク)が存在する青色成分を含む光を放射する半導体発光素子のInGaN系LEDで構成する場合を説明したが、LEDチップ6からの発光のピーク発光波長が、近紫外領域から紫色領域(波長:200nm以上435nm未満)に存在する場合にも、本発明は適用可能である。LEDチップ6は、上記実施形態と同様、InGaN系LEDで構成するのが好ましい。但し、LEDチップ6の発光スペクトルが短波長側にシフトすると、LEDチップ6から放射される青色成分の光が不足或いは欠如するため、蛍光体層5の透明樹脂に混合する蛍光体として、緑色蛍光体と第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体以外に、近紫外光または紫色光で励起され青色成分の光(例えば、ピーク発光波長を435nm以上490nm以下の範囲内に有する。)を放射する青色蛍光体(第2蛍光体)を追加するのが好ましい。青色蛍光体として、例えば、ハロリン酸塩蛍光体(好ましくはアルカリ土類金属を構
成元素として含有するもの)を用いることができ、さらにハロリン酸塩蛍光体としては下記一般式[1]の化学組成のものが例示される。
【0045】
一般式[1]:(Sr,Ca)BaEu(POCl
(上記一般式[1]において、c、d及びxは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1、0.3≦x≦1.2を満足する数である。さらに、a及びbは、a+b=5−xかつ0.05≦b/(a+b)≦0.6の条件を満足する。)
なお、該蛍光体は、本発明の効果を損なわない程度に、上述以外の元素を含有していてもよい。
【0046】
式[1]において、発光特性、温度特性等を向上する観点から、b/(a+b)の値は、0.1以上とすることが好ましく、0.12以上とすることが更に好ましく、0.2以上とすることが特に好ましく、0.28以上とすることが最も好ましい。特に、0.16以上であると、発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が急に大きくなり、有利である。また、b/(a+b)の値は、0.55以下とすることが好ましく、0.5以下とすることが更に好ましく、0.4以下とすることが最も好ましい。b/(a+b)の値が小さすぎる場合には輝度の値が低くなり、大きすぎる場合には、該蛍光体と、緑色蛍光体及び赤色蛍光体とを組み合わせて白色発光装置としたときに、該蛍光体と緑色蛍光体の発光スペクトルが重なりすぎて、高い発光効率が得られなくなる傾向がある。Sr元素の含有量に対するCa元素の含有量としては、5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることが更に好ましい。
【0047】
他の青色蛍光体としては、例えば、以下の一般式で表される2価のユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体[2]、2価のユーロピウム及びマンガン共付活アルミン酸塩蛍光体[3]等が使用可能である。
一般式[2]: (M3,Eu)O・(Al
一般式[3]: (M3,Eu,MnO・(Al
但し、M3は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnから選択される少なくとも1種の元素であり、a、b、c及びdは,a>0、b>0、0.1≦a/b≦1.0、0.001≦d /c≦0を満足する数である。
【0048】
青色蛍光体を使用する場合でも、青色光の放射が、LEDチップ6から青色蛍光体に交替しただけの違いであるので、第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体の2種類の赤色蛍光体を使用することによる本発明の効果は、上記実施形態と同様に奏し得ることは明らかである。また、青色蛍光体を含む蛍光体層5を、上記別実施形態〈1〉で示したような多層構造としても良い。この場合、青色蛍光体層を、緑色蛍光体と第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体を含む層より上層、つまり、最上層に設けるのが好ましい。
【0049】
〈3〉上記実施形態では、図1に示すように、セラミック基材からなるパッケージ本体部13上に複数のLEDチップ6を搭載する実装形態や図2に示すように、セラミック基板2上に複数のLEDチップ6を搭載する実装形態を例示したが、セラミック基板2の形状、材質、及び大きさ、LEDチップ6の搭載数及び搭載エリアの形状、蛍光体層5の形状、厚み、透明樹脂の材質及び層数等は、上記実施形態に限定されるものではない。また、樹脂ダム9に代えて、凹部を有する樹脂製フレームをセラミック基板2上に形成し、当該凹部にLEDチップ6を搭載し、各蛍光体を含む透明樹脂を当該凹部内に注入して、LEDチップ6を封止するようにしても良い。
【0050】
〈4〉更に、LEDチップ6をセラミック基板2上に搭載するのではなく、リードフレームを用いたパッケージに搭載する実装形態であっても良い。図5(a),(b)に、リードフレームパッケージに搭載した場合の断面構造を模式的に示す。図5(a),(b)
の何れの実装例においても、一方がアノード端子、他方がカソード端子となる2つのリード端子11,12を備え、一方のリード端子にLEDチップ6を収容する凹部が形成され、LEDチップ6が当該一方のリード端子の凹部上にダイボンディングされ、LEDチップ6及びリード端子11,12の上側に、緑色蛍光体と第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体を含む透明樹脂が充填され、蛍光体層5が形成されている。また、リード端子11,12の下側及び上記透明樹脂が充填される領域の周囲に、不透明樹脂からなるリード端子11,12を固定するパッケージ本体部13が形成されている。
【0051】
図5(a)は2チップを搭載する実装例で、一方のLEDチップ6の一方の電極パッド(図示せず)と一方のリード端子がワイヤー7で相互に接続され、一方のLEDチップ6の他方の電極パッド(図示せず)と他方のLEDチップ6の一方の電極パッド(図示せず)がワイヤー7で相互に接続され、他方のLEDチップ6の他方の電極パッド(図示せず)と他方のリード端子がワイヤー7で相互に接続され、2つのLEDチップ6の直列回路が形成されている。また、図5(a)の実装例では、保護素子としてのツェナーダイオード14が、2つのリード端子11,12に介装されている。更に、図5(b)は1チップを搭載する実装例で、LEDチップ6の一方の電極パッド(図示せず)と一方のリード端子がワイヤー7で相互に接続され、LEDチップ6の他方の電極パッド(図示せず)と他方のリード端子がワイヤー7で相互に接続されている。
【0052】
尚、図5(a)の実装例においても、LEDチップ6の搭載数を3以上としても良い。また、図5(a),(b)の実装例において、蛍光体層5を上記別実施形態〈1〉で示したような多層構造としても良い。
〈5〉更に、LEDチップ6をセラミック基板2上に搭載し、蛍光体層5を平板状に形成するのではなく、図6に例示するようなドーム状の蛍光体層5を備える構造としても良い。
【0053】
具体的には、セラミック基板2に代えて、絶縁性フィルム15の上面に、金属膜片からなる1対のランド部16a,16bを備え、下面に金属膜片からなる外部接続用の1対の端子部17a,17bを備え、各ランド部16a,16bは接着層18を介して絶縁性フィルム15の上面に接着し、各端子部17a,17bは接着層19を介して絶縁性フィルム15の下面に接着したフィルム状の基板を用いる。ランド部16aと端子部17aは、絶縁性フィルム15を挟んで対向し、絶縁性フィルム15を貫通する2つの貫通導電体(図示せず)により電気的に導通している。同様に、ランド部16bと端子部17bは、絶縁性フィルム15を挟んで対向し、絶縁性フィルム15を貫通する2つの貫通導電体(図示せず)により電気的に導通している。貫通導電体の個数は夫々1または3以上でも良い。1対のランド部16a,16bは、当該ランド部間をY方向に延伸する細長い間隙によって電気的に絶縁分離されている。同様に、1対の端子部17a,17bも、当該端子部間をY方向に延伸する細長い間隙によって電気的に絶縁分離されている。本別実施形態〈5〉では、絶縁性フィルム15の一例として、膜厚0.05mmのポリイミドフィルムを使用する。1対のランド部16a,16bとその間隙の上に、当該間隙の中央部分を含む円形領域を露出する開口部20を中央に有する環状の撥液層21を備え、開口部20の内側の1対のランド部16a,16b上に、LEDチップ6が搭載されている。図6に示す実装例では、LEDチップ6は、チップ表面に図示しない1対の電極パッド(アノード用、カソード用)が形成された裏面出射タイプのフリップチップ型LEDで、裏面を上向きにしてバンプを介して、各電極パッドがランド部16a,16b上に接続している。LEDチップ6が表面出射タイプの場合は、各電極パッドとランド部16a,16bを夫々ワイヤーで接続する。上記実施形態と同様の緑色蛍光体と第1及び第2赤色蛍光体の3種類の蛍光体を混合した透明樹脂を、撥液層21を覆うマスク部材を用いて、例えばスキージ印刷法等により開口部20上に注入し、マスク部材を取り外すことで、撥液層21の撥液性と透明樹脂の表面張力によりドーム状に自然に成形され、引き続き熱硬化処理すること
で、LEDチップ6を封止するドーム状の蛍光体層5が形成される。
【0054】
絶縁性フィルム15の表裏に、1対のランド部16a,16bと1対の端子部17a,17bを夫々複数組形成することで、図6に示す構造の本発光素子1が、同時に多数形成され、必要数に応じて1対のランド部16a,16bの周囲の絶縁性フィルム15を切断することで、任意の数のドーム状の本発光素子が得られる。また、開口部20に搭載するLEDチップ6は2以上であっても良い。
【0055】
〈6〉上記別実施形態〈4〉、〈5〉で、本発光装置の実装形態の変形例を説明したが、本発光装置1の実装形態は、上記実施形態及び別実施形態で例示したものに限定されるものではない。
〈7〉更に、上記実施形態では、本発光装置が照明用の白色光源として使用される場合を想定して説明したが、本発光装置は、液晶表示装置のバックライトに適した実装形態を採用することで、当該バックライトに応用可能である。本発光装置は、白色照明器具等の照明器具にも応用可能である。
【0056】
〈8〉更に、上記実施形態〈1〉〜〈7〉では、色温度3000〜3300K近傍の白色光源向けに蛍光体の組合せ及び配合比を規定したものであるが、例えば、色温度5000K近傍の昼光色等の色温度のより高い白色光源用に上記と同様の蛍光体の組合せで、蛍光体の配合比を適宜変更した構成としても良い。例えば、緑色蛍光体と第1及び第2赤色蛍光体の合計との配合比は、7.7:1で、第1赤色蛍光体と第2赤色蛍光体の配合比を0.85:0.15とすることで、高演色性と高い発光効率を有した発光装置の実現が可能となる。
【実施例】
【0057】
LEDチップが実装されたセラミクスPKGに、シリコーン樹脂および蛍光体を混合したペーストを封止・硬化したときのサンプルの特性について表1に示す。
この時作製したサンプルに使用した蛍光体について配合比率とともに表1に示している。実施例に使用した蛍光体は青色蛍光体:SBCA、緑色蛍光体:β−SiAlON、第1赤色蛍光体:SCASN、第2赤色蛍光体:CASNである。実施例では第1赤色蛍光体として630nmの発光ピーク波長を持つSCASN630を使用し、比較例では620nmの発光ピーク波長を持つSCASN620を使用した。
【0058】
実施例・比較例で使用した蛍光体の特性を表2に示す。
表1に示される配合比では、樹脂と青色蛍光体・緑色蛍光体・赤色蛍光体とを混合するときの総重量を100%とし、例えば比較例1を例とすると青色蛍光体の配合(重量)比は9.5%であり、緑色蛍光体の配合(重量)比は3.6%であり、赤色蛍光体の配合(重量)比は4.0%であった。ここで配合比4%の赤色蛍光体はSCASN:50%とCASN:50%から構成されている。
【0059】
表1に示す特性は室温においてLED PKG直下を25℃に温度コントロールし熱的
に安定したところでパルス測定をすることにより得られたものである。表1に示す全光束
の相対値では、SCASN620:CASN650の配合比率を50%:50%として作
製した白色LED(比較例1)の発光効率を100%として相対値で示している。
比較例1と実施例1は、Ra=96でありR9−R15もほぼ同じ値となるように、S
CASN620/CASN650とSCASN630/CASN650の配合比率を調整し
て作製した白色LEDの積分球で測定し得られた特性である。このときの全光束の相対値
では比較例1より実施例1が5%高い値となっている。同様にして比較例2と実施例2で
は、Ra=93でありR9−R15もほぼ同じ値とした結果比較例2より実施例2のほう
が発光効率の相対値が3%高い結果であった。
【0060】
Ra95以上において本発明の効果は特に顕著に表れることがわかる。
また表3に示すのは、PKG直下の温度を25度または80℃に変化させ安定したところでパルス測定したときの相関色温度と色度図(CIE1931)上の色度点の変化(Δ
CCT、Δx、Δy、d)を示している。
このとき温度に対する色度点の変化は、実施例のほうが比較例より小さく照明器具にした際の温度環境変化による色シフトが小さいことがわかる。LEDの大光束化に伴いLEDの発熱は上昇しておりLEDチップ近傍は150℃になることもあり本願における温度評価は80℃までであるが、COBなどの大光束を放射するLEDでは本願の特性がより明確となることは自明である。
【0061】
表4に示すのは、紫チップを使用した白色LEDにおいて、チップ励起光の透過率を変更したときの特性の変化である。このときチップの発光ピーク波長λp=406nmを使用した。このとき励起光透過率を増加したときに演色性は向上する傾向があり、効率の向上と演色性の向上について確認した。
表5に示すのは、白色LEDにおいて、チップ励起光の発光ピーク波長を変更したときの特性の変化である。発光ピーク波長が長波長側になるほど演色性は向上する傾向があり、効率の向上と演色性の向上について確認した。また、このときの光源で照射した白色の被照射物は長波長側の発光ピーク波長の特に406nm以上のチップを使用したときで、更に励起光透過率が高いほうがより白が際立って白く見えることがわかった。発光ピーク波長が長波長側のほうが白が白く見えることは、一般的に考えられている紫外線等の短波長側の光を照射して蛍光増白剤を発光させて白く見せる原理とは異なる傾向であることがわかる。白の見えは、官能試験により2段階で評価した。この特性は白色領域以外でも効果的で例えば、1600K〜2500Kのような通常一般照明では使用されない極めて低い色温度や生鮮食品用途などで使用されることのあるduv≦0.02の特殊色領域でも有効である。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の発光装置は、照明器具、表示装置等の光源等に利用可能であり、例えば、高演色性および高発光効率の白色発光装置、表示装置のバックライト等として利用可能である
。白色発光装置とする場合の色温度は、2500K以上、7000K以下とすることができる。
本発明の発光装置の平均演色評価数Raは80以上、85以上、90以上、95以上とすることができ、一般にはRa98以下とすることができる。
【符号の説明】
【0068】
1: 発光装置
2: セラミック基板
3,3a,3k: 配線パターン
4,4a,4k: 電極ランド
5: 蛍光体層
5a: 第1赤色蛍光体層
5b: 第2赤色蛍光体層
5c: 緑色蛍光体層
5d: 赤色蛍光体層
6: LEDチップ
7: ワイヤー
8: 印刷抵抗素子
9: 樹脂ダム
10: 透明樹脂層
11,12: リード端子
13: パッケージ本体部
14: ツェナーダイオード
15: 絶縁性フィルム
16a,16b: ランド部
17a,17b: 端子部
18,19: 接着層
20: 開口部
21: 撥液層
図1
図2
図3
図4
図5
図6