(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族環を有するポリイソシアネートが、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物である請求項5に記載のガスバリア材用接着剤。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装に代表的に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐レトルト性、耐熱性といった機能ばかりでなく、内容物を確認できるよう透明性に優れるなど多岐に渡る機能が要求されている。
【0003】
その一方で、ヒートシールにより袋を密閉する場合には、熱加工性に優れる無延伸のポリオレフィン類フィルムが必須であるが、無延伸ポリオレフィンフィルムには包装材料として不足している機能も多い。特に内容物の品質保持及び内容量保持という目的から高いバリア性が特に要求されている。このようなバリア包装材料は、通常、異種のポリマー材料、無機材料を積層させた複合フレキシブルフィルムとして用いられている。
【0004】
バリア機能を多層フィルムに付与する際、内層(シーラント側)に用いる無延伸ポリオレフィンフィルム類にコーティングや蒸着によりバリア機能を付与することが困難である。そのため、外層側に用いている各種フィルム(ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド樹脂、延伸ポリオレフィン樹脂)にバリア機能を付与することが多い。
【0005】
これらの外層側フィルムにコーティングによりバリア機能を付与する場合、バリアコーティング材料としては、耐レトルト性及びガス又は水蒸気バリア性の高い塩化ビニリデンが多用されてきたが、廃棄の焼成時にダイオキシンが発生する等の問題がある。また、ポリビニルアルコール樹脂やエチレン−ポリビニルアルコール共重合体をバリアコーティング材料として用いた場合ガスバリア性は高いが、水蒸気バリア性が著しく低下する問題があった。また、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層をガスバリア層として設けたフィルムは高価な上、柔軟性に乏しく、クラック、ピンホールによりガスバリア性能がばらつく問題がある。
以上のように、バリア機能を付与するためには、環境への影響が大きい素材を用いたり、高価である蒸着フィルムを用いなければならない等の問題があり、バリア機能に優れた素材の提供が要望されている。
【0006】
特許文献1には、高ガスバリア性と高接着特性、特にボイル・レトルト処理後の各種ポリマー、紙、金属などに対して優れた接着性能を併せて有する2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびこれを含むガスバリア性ラミネート用接着剤に関し、活性水素含有化合物を主成分とする成分(A)および有機ポリイソシアネート化合物を主成分とする成分(B)より成る2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、該活性水素含有化合物が、芳香脂肪族ポリアミンのアルキレンオキシド付加物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物のポリオール付加物および芳香脂肪族ポリオールから選ばれる少なくとも1種の化合物であり、(A)と(B)の反応により形成される樹脂硬化物中に特定の骨格構造が20重量%以上含有されることを特徴とする2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が記載されている。
【0007】
特許文献2には、高ガスバリア性、および各種ポリマー、紙、金属などのフィルム材料に対し好適な接着性を有しているラミネート用接着剤およびそれを用いたラミネートフィルム、多層包装材料および包装用袋に関し、エポキシ樹脂と特定の構造を有する下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物であるエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とするラミネート用接着剤であって、該エポキシ樹脂組成物により形成されるエポキシ樹脂硬化物中に(1)式に示される骨格構造が40重量%以上含有されることを特徴とするラミネート用接着剤。
(A)メタキシレンジアミンまたはパラキシレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0008】
また、特許文献3には、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を重縮合して得られる非晶性ポリエステルポリオールと、
これと反応しうる硬化剤とを含有するガスバリア性接着剤を使用し、該接着剤により得られる層によりガスバリア性を具備することを特徴とするガスバリア性フィルムが記載されているが、本文献に記載の発明では、アミド構造を有しないポリエステルポリオール樹脂を用いている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の各項目から構成されるものである。
1.イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸、炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸、炭素2〜4である脂肪族ジオール、炭素数2〜4であるアミノアルコールを重縮合してなるポリアミドポリエステルを含有する樹脂組成物、
2.炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸である1.に記載の樹脂組成物、
3.炭素2〜4である脂肪族ジオールが、エチレングリコールである1.又は2.に記載の樹脂組成物、
4.炭素数2〜4であるアミノアルコールが、2−アミノエチルアルコールである1.〜3.の何れかに記載の樹脂組成物、
5.更に、イソシアネート化合物を含有する1.〜4.の何れかに記載の樹脂組成物、
6.イソシアネート化合物が、芳香族環を有するポリイソシアネートを含有するものである1.〜5.の何れかに記載の樹脂組成物。
7.芳香族環を有するポリイソシアネートが、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物である6.に記載の樹脂組成物、
8.1.〜7.の何れかに記載の樹脂組成物を用いたガスバリア材用接着剤、
9.8.に記載のガスバリア材用接着剤を接着剤層として有する多層フィルム、
10.9.に記載の多層フィルムを用いた包装材、
11.イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸、炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸、炭素2〜4である脂肪族ジオール、炭素数2〜4であるアミノアルコールを重縮合してなるポリアミドポリエステルの製造方法において、
イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、炭素数2〜4であるアミノアルコールとを重縮合させた後に、炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸と、炭素2〜4である脂肪族ジオールとを重縮合することを特徴とするポリアミドポリエステルの製造方法。
【0014】
以下、詳細に説明する。
本発明のポリアミドポリエステルは、イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸、炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸、炭素2〜4である脂肪族ジオール、炭素数2〜4であるアミノアルコールを重縮合してなることに特徴を有する。
前記炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸としては、より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等を、前記炭素2〜4である脂肪族ジオールとしては、より具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等を、前記炭素数2〜4であるアミノアルコールは、より具体的には、アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール、アミノブチルアルコール等を挙げることができる。
これらの中でも、バリア性に優れることから、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、アミノアルコールとして2−アミノエチルアルコールを用いた場合が、特に好ましい。
【0015】
本発明のポリアミドポリエステルは、前記原料を用いて、公知慣用の方法で重縮合して得ることができ、一般的な製造条件としては、170〜200℃の間での脱水重縮合反応を挙げることができる。反応雰囲気は窒素気流下でも良いし、減圧により重縮合反応を促進させても良い。
【0016】
また、本発明のポリアミドポリエステルの製造方法において、ポリアミドポリエステルを含有する樹脂組成物から得られる接着剤がより強いガスバリア性を発揮させるために、イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、炭素数2〜4であるアミノアルコールとを重縮合させた後に、炭素数3〜5である脂肪族ジカルボン酸と、炭素2〜4である脂肪族ジオールとを重縮合するとよい。この工程の順序で製造を行うと、より溶媒溶解性、及びバリア性に優れた樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、硬化剤としてイソシアネート化合物を含有してもよい。
本発明に使用される硬化剤としては、前記樹脂組成物の水酸基と反応しうるイソシアネート化合物であれば特に限定はなく、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物を挙げることができ、さらにエポキシ化合物等も使用が可能である。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0018】
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート化合物があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
【0019】
イソシアネート化合物として、ブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0020】
中でも、良好なガスバリア性を得る為にはキシレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、メタキシレンジイソシアネートが最も好ましい。メタキシレン骨格を含むポリイソシアネート化合物であると、ウレタン基の水素結合だけでなく芳香環同士のπ−πスタッキングによってガスバリア性を向上させることができるという理由から好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物とイソシアネート化合物との硬化塗膜のガラス転移温度が−30℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃〜70℃である。更に好ましくは25℃〜70℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方−30℃よりも低い場合、常温付近での硬化塗膜の分子運動が激しいことにより十分なガスバリア性が出ないおそれや、凝集力不足による接着力低下のおそれがある。
【0022】
また、本発明で用いる樹脂組成物の末端にカルボン酸が残存した場合には、エポキシ化合物を硬化剤として用いることができる。エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0023】
エポキシ化合物を硬化剤として用いる場合には、硬化を促進する目的で汎用公知のエポキシ硬化促進剤を本発明の目的であるガスバリア性が損なわれない範囲で適宜添加してもよい。
【0024】
前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体があるが、3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネート化合物のドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいという理由からアダクト体がより好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0025】
前記樹脂組成物と前記硬化剤とは、樹脂組成物と硬化剤との割合が樹脂組成物の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/0.5〜1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/1〜1/5である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方、硬化剤成分が不足の場合には接着強度不足のおそれがある。
【0026】
前記硬化剤は、その種類に応じて選択された公知の硬化剤或いは促進剤を併用することもできる。例えば接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着剤を向上させる意味でも好ましい。
【0027】
本発明の接着剤は、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。膨潤性無機層状化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイル等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。膨潤性無機層状化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0028】
また、接着剤層の耐酸性を向上させる方法として公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0029】
また、必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0030】
また、塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
【0031】
本発明の接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合、溶剤はポリエステルポリオール及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。
更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらのうち通常は酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。
【0032】
また、無溶剤で使用する場合は必ずしも有機溶剤に可溶である必要は無いと考えられるが、合成時の反応釜の洗浄やラミネート時の塗工機等の洗浄を考慮すると、有機溶剤に対する溶解性が必要である。
【0033】
本発明の接着剤は、基材フィルム等に塗工して使用することができる。塗工方法としては特に限定はなく公知の方法で行えばよい。例えば粘度が調整できる溶剤型の場合は、グラビアロール塗工方式等で塗布することが多い。また無溶剤型で、室温での粘度が高くグラビアロール塗工が適さない場合は、加温しながらロールコーターで塗工することもできる。ロールコーターを使用する場合は、本発明の接着剤の粘度が500〜2500mPa・s程度となるように室温〜120℃程度まで加熱した状態で、塗工することが好ましい。
【0034】
本発明の接着剤は、ガスバリア性を有する接着剤として、ポリマー、紙、金属などに対し、ガスバリア性を必要とする各種用途の接着剤として使用できる。
以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
【0035】
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた多層フィルムは、ガスバリア性に優れるため、ガスバリア材用多層フィルムとして使用できる。
【0036】
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0037】
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0038】
前記熱可塑性樹脂フィルムの一方に本発明の接着剤を塗工後、もう一方の熱可塑性樹脂フィルムを重ねてラミネーションにより貼り合わせることで、本発明のガスバリア材用多層フィルムが得られる。ラミネーション方法には、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知のラミネーションを用いることが可能である。
【0039】
ドライラミネーション方法は、具体的には、基材フィルムの一方に本発明の接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。
また、ノンソルベントラミネーションは基材フィルムに予め室温〜120℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤を室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。ラミネート圧力は、10〜300kg/cm
2程度が好ましい。
【0040】
押出しラミネート法の場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明の接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0041】
また、本発明のガスバリア材用多層フィルムは、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に接着強度が生じる。
【0042】
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。
【0043】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる多層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、あるいは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、さらに、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、酸素及び水蒸気バリア性フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。
【0044】
本発明の接着剤は高いガスバリア性を有することを特徴としていることから、該接着剤により形成されるラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。
また、これら従来のガスバリア性材料とシーラント材料とを貼り合せる接着剤として併用することにより、得られるフィルムのガスバリア性を著しく向上させることもできる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0046】
(製造例1)イソフタル酸、コハク酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSIEA−1の製造
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えた反応容器に、イソフタル酸113.1部、アミノエチルアルコール82.3部を仕込み、窒素をフローしつつ70℃に加温した。際に発熱反応が生じ容器内温度が170℃に昇温したところでさらに200℃まで加温した。ここで、理論量の水が発生したことを確認の後、100℃まで温度を下げ、120.6部のコハク酸、54.1部エチレングリコール及び触媒であるチタニウムテトライソプロポキシド0.024部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃で7時間保持した。その後同温度で、2.5時間減圧をおこなった。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量800のポリアミドポリエステルポリオールSIEA−1を得た。
【0047】
(製造例2)イソフタル酸、コハク酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSIEA−2の製造
製造例1とは各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量800のポリアミドポリエステルポリオールSIEA−2を得た。尚、合成で使用したモノマーはイソフタル酸244.8部、アミノエチルアルコール137.2部、コハク酸261.1、エチレングリコール167.3部である。
【0048】
(製造例3)イソフタル酸、コハク酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSIEA−3の製造
製造例1とは各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量800のポリアミドポリエステルポリオールSIEA−3を得た。尚、合成で使用したモノマーはイソフタル酸112.9部、アミノエチルアルコール82.9部、
コハク酸120.4、エチレングリコール42.2部である。
【0049】
(製造例4)オルトフタル酸、コハク酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSOEA−4の製造
製造例1とはイソフタル酸の代わりにオルトフタル酸を用いたこと、及びこれ以外の各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量800のポリアミドポリエステルポリオールSOEA−4を得た。尚、合成で使用したモノマーはオルトフタル酸244.0部、アミノエチルアルコール134.5部、コハク酸260.2、エチレングリコール136.7部である。
【0050】
(製造例5)フタル酸無水物、コハク酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSOEA−5の製造
製造例1とはイソフタル酸の代わりにフタル酸無水物を用いたこと、及びこれ以外の各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量1000のポリアミドポリエステルポリオールSOEA−5を得た。尚、合成で使用したモノマーはフタル酸無水物101.0部、アミノエチルアルコール54.1部、コハク酸120.6、エチレングリコール54.1部である。
【0051】
(製造例6)イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールAIEA−6の製造
製造例1とはコハク酸の代わりにアジピン酸を用いたこと、及びこれ以外の各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量650のポリアミドポリエステルポリオールAIEA−6を得た。尚、合成で使用したモノマーはイソフタル酸237.4部、アミノエチルアルコール172.6部、アジピン酸313.9、エチレングリコール112.8部である。
【0052】
(製造例7)イソフタル酸、コハク酸、ポリエチレングリコール、アミノエチルアルコールを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSIPA−7の製造
製造例1とはエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール200を用いたこと、及びこれ以外の各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量900のポリアミドポリエステルポリオールSIPA−7を得た。尚、合成で使用したモノマーはイソフタル酸122.4部、アミノエチルアルコール83.6部、コハク酸71.0部、ポリエチレングリコール54.5部である。
【0053】
(製造例8)イソフタル酸、コハク酸、エチレングリコール、ヘキサメチレンジアミンを重縮合したポリアミドポリエステルポリオールSIEH−8の製造
製造例1とはアミノエチルアルコールの代わりにヘキサメチレンジアミンを用いたこと、及びこれ以外の各種モノマーの量が異なる以外は製造例1と同一の方法で、数平均分子量460のポリアミドポリエステルポリオールSIEH−8を得た。尚、合成で使用したモノマーはイソフタル酸498部、ヘキサメチレンジアミン116.2部、コハク酸118.0、エチレングリコール279部である。
【0054】
(樹脂のモノマー組成のまとめ)
以上、製造例1〜8に示した各種樹脂原料モノマー使用量について表1に示す。
【0055】
(実施例、及び比較例1〜3での接着剤配合)
製造例1〜5で得られた樹脂を接着剤化する際の配合を実施例として表2に示す。
また、製造例6〜8で得られた樹脂を接着剤化する際の配合を比較例として表3に示す。このとき、全ての実施例、比較例において、まずは表の配合に従って各種樹脂を2−ブタノン(メチルエチルケトン)に常温下、スターラー攪拌により溶解させ、完全に溶解できたものについて硬化剤を添加する手順を取った。このときの溶解状態も表2、3に示した。このときに完全に溶解させることができなかった樹脂についてはドライラミ型の接着剤として使用するのが不可能であるため、硬化剤の配合自体を行わなかった。
【0056】
(比較例4での接着剤配合)
汎用の溶剤型ラミネート用接着剤主剤としてディックドライLX−703VL(DICグラフィックス社製:ポリエステルポリオール、不揮発分/約62%)を用いて、硬化剤を表3の通りに混合して接着剤を得た。
【0057】
(接着剤によるラミネート及び多層フィルムの作製法)
表2及び表3の配合に従って得た液を攪拌して、均一な接着剤液を作製した。これをバーコーター#8番で12μm厚のPETフィルムに塗工した後、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させた。このあと70μm厚のCPPフィルムでラミネートすることで、PET/接着剤/CPPの多層フィルムを得た。
次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って積層フィルムを得た。
【0058】
〔評価方法1、酸素透過率〕
各種実施例、比較例で得られたフィルム及び、塗工用に使用した未処理フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21MHを用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃90%RHの雰囲気下で測定した。RHは湿度を示す。
なお、各実施例、比較例で用いたPETフィルムの本条件での測定値は100cc/m
2・day・atmであった。また、CPPフィルムでは本測定装置での測定レンジ400cc/m
2・day・atmをオーバーし、実質的に酸素バリア機能を持たなかった。
【0059】
〔評価方法2、ラミネート強度測定 〕
エージングが終了したガスバリア用積層フィルムを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、PETフィルムとCPPフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度を接着強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。この時、接着強度が十分に強くて、PETフィルムが破断した場合はPET破断と表記した。
【0060】
(使用材料)
以上の実施例、比較例で使用した材料は以下の通りである。
<汎用接着剤>
硬化剤D−110N:三井化学(株)製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分75.0%、NCO%11.5%、溶媒酢酸エチル)
PETフィルム:東洋紡績(株)製「E−5102」
CPPフィルム:東レ(株)製「ZK93KM」
【0061】
各実施例で得た多層フィルムで接着剤の評価結果を表2に、比較例での評価結果を表3に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
以上、実施例1〜5の本発明の樹脂組成物は、汎用溶媒である2-ブタノンへの溶解性に優れた上、本樹脂組成物を用いて試作した接着剤は酸素透過率が低く、即ち酸素バリア機能があり、且つラミネート強度にも優れる、ガスバリア機能を持つ接着剤とすることができた。その一方、本発明の樹脂組成物から外れた樹脂組成物では比較例1、3では2-ブタノンへの溶解性が低くドライラミネート型の接着剤とは使用できなかった。
また、比較例2の樹脂組成物は溶媒溶解性、及び接着強度は良好であったが酸素透過率が高い、即ち酸素バリア機能が劣る結果となった。また、比較例4の汎用接着剤をもちいたフィルムでは、接着強度は良好であったが、酸素透過率はPETフィルムと近い値を示し酸素バリア機能が実質的にない結果となった。