(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程は、処理容器内を真空排気しながら、処理容器内の被処理基板に対して、フッ化水素ガスとアンモニアガスとを予め混合したガスを含む処理ガスをガス供給部から間欠的に供給する工程であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
前記工程は、前記被処理基板に対する処理ガスの各回の供給時間を第1の時間に設定した第1の工程と、この第1の工程の後に行われ、各回の処理ガスの供給時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定した第2の工程と、を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のエッチング方法。
前記第2の工程は、被処理基板に対する各回の処理ガスの供給停止時間が第1の工程における各回の処理ガスの供給停止時間よりも長いことを特徴とする請求項8に記載のエッチング方法。
処理容器内に載置され、表面部に窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とを有する被処理基板に対して、酸化シリコン膜を選択的にエッチングする方法に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし10のいずれか一項に記載のエッチング方法を実施するためにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
前記制御部は、フッ化水素ガスをガス供給部から連続的に供給し、フッ化水素ガスに間欠的にアンモニアガスを混合するように制御信号を出力するものであることを特徴とする請求項14記載のエッチング装置。
前記ガス供給部は、処理容器内に載置された被処理基板に対向する複数のガス供給孔を有することを特徴とする請求項11ないし15のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態にかかるエッチング装置について説明する。
図1に示すようにエッチング装置は、横断面形状が概略円形の真空チャンバである処理容器1と、天板部11と、を備えている。処理容器1の側面には、被処理基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wの受け渡しを行うための搬入出口12が設けられ、搬入出口12には搬入出口12を開閉するゲートバルブ13が設けられている。
【0013】
処理容器1の内部には、ウエハWの載置部である円柱形状のステージ2が設けられており、ステージ2の上面には、ウエハWをステージ2の表面から例えば0.3mmの隙間を介して支持する支持ピン21が、例えばステージ2の周方向等間隔に7箇所に突出している。またステージ2及び処理容器1の底面を貫通する貫通孔22が周方向等間隔に3箇所に設けられている。貫通孔22には、昇降機構23により、ステージ2の上面から突没するように設けられたウエハWの受け渡し用の突き上げピン24が設けられている。また突き上げピン24の下部側は、処理容器1を気密にするためのベローズ25により覆われている。
【0014】
このステージ2の内部には加熱部をなすヒータ26が設けられており、ステージ2に載置されるウエハWが、設定温度に加熱されるようになっている。
処理容器1の底面には排気口14が設けられている。排気口14には排気管15が接続されており、排気口14側から圧力調整バルブ16、開閉バルブ17が介設され、真空排気機構である真空排気ポンプ18に接続されている。これら排気管15等のパーツは真空排気部を構成している。
【0015】
処理容器1の天板部11の下面側中央領域には凹部19が設けられており、この凹部19を塞ぎステージ2と対向するように拡散板30が設けられている。拡散板30はアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を用いて円板状に形成され、厚さ方向に貫通するガス供給孔31が縦横に配列されたパンチングプレートとして構成されている。
【0016】
凹部19における拡散板30の上方には、周方向に等間隔に八つのガス拡散部32が設けられている。ガス拡散部32は、扁平な円筒形状の部材で構成され、その側面に周方向に間隔を置いて複数の吐出口33が設けられている。各ガス拡散部32の上面には夫々天板部11に形成された内部流路34の一端が接続されており、各内部流路34の他端側は天板部11の上面側に形成されたガスを分散するための分散室35に接続されている。天板部11の上部側には突出構造体20が設けられ、上端側が2つに分岐されると共に下端側が分散室35に開口する外部流路36が形成されている。
【0017】
外部流路36の一方の分岐の上流端には、配管からなるNH
3ガス供給管40の下流端が接続されており、外部流路36の他方の分岐の上流端にはHFガス供給管50の下流端が接続されている。まずNH
3ガス供給管40側(NH
3ガスの供給系)から説明すると、NH
3ガス供給管40には、上流側からNH
3ガス供給源41、流量調整部42、バルブV3、及びバルブV1がこの順に設けられている。NH
3ガス供給管40におけるバルブV3とバルブV1との間にはキャリアガス(希釈ガス)であるN
2(窒素)ガスを供給するN
2ガス供給管43の下流端が接続されており、N
2ガス供給管43には、上流側からN
2ガス供給源44、流量調整部45及びバルブV5がこの順に設けられている。またNH
3ガス供給管40におけるNH
3ガス供給源41と流量調整部42との間には、バイパス配管46の上流端が接続されており、バイパス配管46の下流端は、排気管15に接続されている。バイパス配管46には、上流側から流量調節部47と開閉バルブV7とが設けられている。
【0018】
次いでHFガス供給管50側(HFガスの供給系)を説明すると、HFガス供給管50には、上流側からHFガス供給源51、流量調整部52、バルブV4、及びバルブV2がこの順に設けられている。HFガス供給管50におけるバルブV4とバルブV2との間にはキャリアガス(希釈ガス)であるAr(アルゴン)ガスを供給するArガス供給管53の下流端が接続されており、Arガス供給管53には、上流側からArガス供給源54、流量調整部55及びバルブV6がこの順に設けられている。またHFガス供給管50におけるHFガス供給源51と流量調整部52との間には、バイパス配管56の上流端が接続されており、バイパス配管56の下流端は、排気管15に接続されている。バイパス配管56には、上流側から流量調節部57と開閉バルブV8とが設けられている。
【0019】
ここでNH
3ガス供給管40及びHFガス供給管50から外部流路36へ供給されたガスが処理容器1内に供給されるまでの処理ガスの流れについて説明する。NH
3ガス供給管40及びHFガス供給管50からガスが供給されると、外部流路36内にて、ガスが合流し、混合されて処理ガスとなる。混合された処理ガスは分散室35から8本の内部流路34に分散され、分散された各処理ガスは、ガス拡散部32の側面に設けられた吐出口33から凹部19内に放射状に吐出される。凹部19内に広がった処理ガスは、拡散板30に設けられた各ガス供給孔31から処理容器1内に吐出される。この実施の形態では、拡散板30がガス供給部に相当し、外部流路36の流路の分岐点(上流側から見れば合流部分)が混合部に相当する。
【0020】
また処理容器1には図示しないヒータが設けられており、外部流路36、分散室35、内部流路34、ガス拡散部32、拡散板30及び処理容器1の内面の温度が例えば140度±10度に設定されている。これにより例えば外部流路36の内部等においてNH
3ガスとHFガスとの反応による副生成物、例えばNH
4Fの析出を制御でき、パーティクルを抑制する。
【0021】
またエッチング装置は制御部9を備えている。この制御部9は例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムは、後述の作用説明における一連の動作を実施するようにステップ群が組み込まれており、プログラムに従って、各バルブV1〜V8の開閉、各ガスの流量の調整、処理容器1内の圧力の調整などを行う。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等に収納され制御部9にインストールされる。
【0022】
続いて本発明の実施の形態の作用について説明するが、まずエッチング装置に搬入されるウエハWの表面構造の一例について
図2に示す。
図2に示すように、シリコン層60にはn型あるいはp型の不純物がドーピングされ、シリコン層60の表面に、異なる導電型のソース/ドレイン(S/D)61領域が形成されている。S/D領域61間のチャネル領域62には、熱酸化膜からなるゲート絶縁膜63が形成されている。ゲート絶縁膜63の上方には、ゲート電極となる導電性ポリシリコン膜64が形成されている。ポリシリコン膜の上側には、例えばSiNを用いて形成されたキャップ層65が形成され、側壁には絶縁膜であるSiN膜66が形成されている。このウエハWは、表面に層間絶縁膜67が形成された後、SiN膜66と、S/D領域61とが露出するようにエッチングが行われて、コンタクト孔68が形成され、コンタクト孔68の底部に露出したS/D領域61の表面が酸素、例えば大気に触れると自然酸化膜であるSiO
2膜69が形成される。
【0023】
ウエハWに形成されたSiO
2膜69のエッチング処理について、各ガスの供給(ON)及び供給休止(OFF)のタイムチャートを示す
図3も参照しながら説明する。ウエハWは、例えば図示しない外部の搬送アームと、突き上げピン24との協働作用によりステージ2上に載置され、ヒータ26により例えば115度に加熱される。
【0024】
一方ゲートバルブ13が閉じられ、処理容器1が密閉にされた後、
図3中の時刻t0において、バルブV1及びバルブV5が開かれ、N
2ガスが例えば450sccmの流量で供給される。またバルブV2及びバルブV6が開かれ、Arガスが例えば450sccmの流量で供給される。N
2ガスとArガスとは、外部流路36の接続部分で合流し、既述のようにして拡散板30のガス供給孔31から処理容器1へ供給される。
【0025】
続いてHFガス及びNH
3ガスの混合ガスをウエハWに間欠的に供給する処理を行う。この実施形態では、先ず時刻t1にて
図1に示すバルブV4を開き、HFガスを例えば200sccmの流量でArガスと混合する。このときN
2ガスも外部流路36に流入しているため、Arガス及びN
2ガスで希釈されたHFガスが拡散板30のガス供給孔31からシャワー状にウエハWに供給される。既述のようにN
2ガス及びArガスの各流量は450sccmであることから、N
2ガス及びArガスで希釈されたHFガスの供給流量は1100sccmである。
【0026】
このとき
図4に示すようにNH
3ガスの供給系においては、バルブV7が開かれ、バルブV3が閉じられている。従って、NH
3ガスは例えば100sccmの流量でバイパス配管46を流れ、処理容器1を迂回して真空ポンプ18により排気される。そして時刻t1から例えば6秒後の時刻t2から、時間Taの間だけバルブV7を閉じかつバルブV3を開く動作と、時間Tbの間だけバルブV7を開きかつバルブV3を閉じる動作と、を例えば5回繰り返す。
【0027】
バルブV7を閉じ、バルブV3を開くと、
図5に示すようにNH
3ガスがN
2ガスと混合されて希釈され、希釈されたNH
3ガスがNH
3ガス供給管40を流れ、外部流路36にて、Arガス及びHFガスと混合される。従って、NH
3ガス、N
2ガス、Arガス及びHFガスの混合ガスがガス供給孔31からシャワー状にウエハWに供給される。NH
3ガスの供給先をバイパス配管46から処理容器1側に切り替えるときには流量は100sccmのままとしているため、ガス供給孔31から吐出する混合ガスの流量は、1200sccmである。
【0028】
またバルブV7を開き、バルブV3を閉じると、
図4に示すようにNH
3ガスが処理容器1を迂回して排気され、処理容器1内に対するNH
3ガスの供給が停止する。従ってHFガス及びNH
3ガスが事前に混合された(いわゆるプリミックスされた)混合ガスがガス供給孔31からウエハWに間欠的に供給されることになる。
【0029】
この例では、HFガスをウエハWに供給したままにして、NH
3ガスが間欠的に供給され、NH
3ガスの供給時間、即ちHFガス及びNH
3ガスをプリミックスした混合ガスである処理ガスの供給時間Ta(
図3参照)が1秒、NH
3ガスを流さないHFガスだけの供給時間Tbが2秒に設定されている。このようにNH
3ガスを間欠的に(パルス的に)ウエハWに供給するプロセスを行う間、処理容器1内の圧力は例えば250Paに設定されている。従ってHFガスとNH
3ガスとの混合ガスを処理容器1内に供給した場合に、HFガスの分圧が41Pa、NH
3ガスの分圧が21Paとなる。このようにNH
3ガスを処理容器1内に間欠的に供給する手法として、バイパス配管46側と処理容器1側との間で供給先を切り替えるようにすることで、間欠的に処理容器1内に供給されるNH
3ガスの流量が安定する。
【0030】
そしてNH
3ガスの供給、停止のサイクルが例えば5回繰り返された時刻t3から、更に同様にしてNH
3ガスの供給、停止のサイクルが2回繰り返されるが、この2回のサイクルにおいては、HFガス及びNH
3ガスの供給時間Tcが3秒、NH
3ガスを流さないHFガスだけの供給時間Tdが5秒に設定されている。このサイクルが2回繰り返された時刻t4にてバルブV4を閉じてHFガスの供給を停止し、しばらくN
2ガス及びArガスを処理容器1内に流し続けた後、これら不活性ガスの供給を停止し、ウエハWを処理容器1から搬出する。
【0031】
ここでNH
3ガス及びHFガスの混合ガスを用いてSiO
2膜69及びSiN膜66をエッチングしたときの本発明者の知見について説明する。
図6は、NH
3ガス及びHFガスの混合ガスをSiO
2膜及びSiN膜に供給したときのエッチング量と供給時間との関係を示している。◇はSiO
2膜のエッチング量であり、▲はSiN膜のエッチング量である。このグラフから分かるように、SiO2膜はエッチングガスが供給された直後からエッチングが急激に進行する。一方、SiN膜はエッチングガスが供給された後、しばらくはエッチングがほとんど進行せず、3秒を経過した頃から徐々にエッチングされ、5秒を経過した頃からSiO
2膜と同様の早い速度でエッチングが進行する。
【0032】
SiO
2やSiNは、HF分子及びNH
3分子と化学反応をすると反応生成物として、(NH
4)
2SiF
6(珪フッ化アンモニウム)や水等が生成される。そのためこれらの反応生成物を生成した後、例えば加熱により除去することによりエッチングが行われる。
図6に示す結果から、SiO
2膜については、NH
3ガス及びHFガスと直ちに反応して反応が進行するが、SiN膜については表面状態が、速やかに反応しない状態になっていると推測される。
【0033】
本実施形態において、NH
3ガス及びHFガスの混合ガスを間欠的に(パルス的に)ウエハWに供給している理由は、上述の知見に基づいている。
図7〜
図9は、
図3に示したガスの供給シーケンスとウエハWの表面状態とを対応させた模式図(イメージ図)である。なおこの模式図は、ガスの供給シーケンスとエッチングとの対応を直感的に把握できるようにするためのイメージ図であって、表面状態を正確に記載したものではない。
【0034】
図7は、HFガスをウエハWに供給した状態を示し、SiN膜66とS/D領域61の表面に形成されたSiO
2膜69とが露出しているウエハWの表面にHF分子が吸着された状態である。そして処理雰囲気がHFガスにNH
3ガスが混合された混合ガスに切り替わると、
図8に示すように、HFガスとNH
3ガスの共存するガスに曝される1秒間で反応が進行し、SiO
2膜69とHF分子80及びNH
3分子81とが反応して、例えば(NH
4)
2SiF
6や水などの反応生成物82となる。
【0035】
一方でSiN膜66はHF分子80とNH
3分子81とに曝されても反応の進行が緩やかである。そのためHFガス及びNH
3ガスの共存する処理ガスに曝されるTaの1秒間では、反応がほとんど進行しない。その後Tbにおいて供給されるNH
3を含まない処理ガスにより、ウエハWの雰囲気が置換されてしまうためSiN膜66は、HF分子80及びNH
3分子81と反応がほとんど進行しない。ウエハWは115度に加熱しているため
図9に示すように(NH
4)
2SiF
6や水などの反応生成物82は揮発する。従ってSiN膜66に対してSiO2膜69が選択的にエッチングされる。そしてNH
3ガスの供給・供給休止が既述のように複数回繰り返されることにより、自然酸化膜であるSiO
2膜69が徐々にエッチングされてウエハWの表面から除去されると共に、SiN膜66のエッチングは抑えられた状態となる。
【0036】
上述の実施の形態は、表面部にSiN膜66と自然酸化膜であるSiO
2膜69とを有するウエハWに対して、SiO
2膜69を選択的にエッチングする方法において、ウエハWに対して、HFガスを連続して供給しながら、NH
3ガスを間欠的に複数回供給するようにしている。SiO
2膜69はHFガスとNH
3ガスとを含む処理ガスと速やかに反応するが、SiN膜66については、概略的にいえば処理ガスと反応するまでの時間遅れがある。このためこの時間遅れの間を利用して処理ガスの供給を行い、SiN膜66における反応が活発になる前に処理ガスを止める動作を、目的とするSiO
2膜69のエッチング量に応じた回数分繰り返すことにより、SiO
2膜69をSiN膜66に対して選択的にエッチングすることができる。
【0037】
またNH
3ガスの一回の供給時間が短い(Taが1秒)前段パルス工程を行った後、NH
3ガスの一回の供給時間がTaよりも長い(Tcが3秒)後段パルス工程を行っている。大気暴露の影響を受けているウエハWの最表面はエッチングされやすい。そのため、エッチング開始直後は、エッチング時間を短くすることで制御性を高め、エッチングが進行しエッチングの速度が遅くなった時に、エッチング時間を長くすることで、エッチング量が増え、エッチングレートが高まる利点がある。
【0038】
また上述の実施の形態では、HFガスとNH
3ガスとを処理容器1内に供給する前に混合した処理ガスを供給しているが、HFガスとNH
3ガスとを夫々異なるガス供給部から処理容器1内に供給した場合にも、SiO
2膜69をSiN膜66に対して高い選択比でエッチングをすることができる。このような手法を用いるエッチング装置として、HFガスとNH
3ガスとが異なるシャワーヘッドのガス供給孔から別々に処理容器1内に供給されるポストミックス型の装置を挙げることができる。この場合、2つのガス供給部の内の一方のガス供給部からHFガスを連続的に処理容器1内に供給し、他方のガス供給部からNH
3ガスを間欠的に処理容器1内に供給する。
さらに前段パルス工程において十分なエッチングレートが得られる場合には、後段パルス工程は行わなくてもよい。
【0039】
また本発明の実施の形態の他の例として、例えば
図10に示すように処理容器1内にHFガスとNH
3ガスとを同時にパルス状に供給してもよい。この場合のガスの給断はバルブV3,V4、V7及びV8の開閉制御によって行われ、HFガスは供給休止時には、NH3ガスと同時にバイパス流路56により処理容器1を迂回して排気される。このようなプロセスにおいて、ウエハWは、HFガスとNH
3ガスとが混合された処理ガスの雰囲気に曝される時間帯と、HFガス及びNH
3ガスのいずれにも曝されない時間帯とが交互に複数回行われる。このような手法によってもSiO
2膜69をSiN膜66に対して高い選択比でエッチングすることができる。
【0040】
また本発明は、
図11に示すように処理容器1内にNH
3ガスを連続して供給しながら、HFガスを間欠的に複数回供給するようにしてもよい。この例の場合には、ウエハWの雰囲気は、HFガスとNH
3ガスとを含む処理ガスとなった後、HFガスを含まずNH
3ガス、N
2ガス及びArガスの混合された処理ガスとなる。この場合にもSiO
2膜69及びSiN膜66がHFガス及びNH
3ガスと混合ガスの雰囲気に間欠的に曝されるため同様の効果が得られる。
【0041】
なお、本発明者は、第1の実施形態のようにHFガスを流しながらNH
3ガスを間欠的に供給する手法と、NH
3ガスを流しながらHFガスを間欠的に供給する手法と、HFガス及びNH
3ガスの両方を同時に供給、同時に供給停止する手法と、を比較している。その結果によると、後述の実施例に記載してあるように、HFガスを流しながらNH
3ガスを間欠的に供給する手法を実施した場合の上記選択比が最も大きいことを把握している。この理由は、SiN膜66の表面にHFが事前に吸着されることにより、(NH
4)
2SiF
6の生成反応が起こりにくくなっているのではないかと推測される。
【0042】
更にSiO
2膜69は、窒素、水素、フッ素を含む化合物を含む処理ガス、例えばフッ化アンモニウム(NH
4F)ガスを用いてエッチングすることができ、この場合にもこのガスがSiO
2膜69と反応して(NH
4)
2SiF
6を生成する。従って、SiO
2膜69とSiN膜66とを有するウエハWにフッ化アンモニウム(NH
4F)ガスを間欠的に複数回供給することにより、同様にSiN膜66に対してSiO
2膜69を高い選択比でエッチングすることができる。
即ち、本発明は、被処理基板を、NH
3ガス及びHFガスの混合ガスを含む処理ガスまたは窒素、水素、フッ素を含む化合物を含む処理ガスである、NH
4FガスまたはNH
4FHFを含む処理ガスに間欠的に複数回曝す手法である。なお、処理ガスがNH
3ガス、HFガス及びNH
4Fガス(または、NH
4FHF)の混合ガスであってもよい。
【0043】
さらに
図6に示したようにSiO
2膜は、処理ガスを供給した直後からエッチング量が増加しており、SiN膜は5秒経過以降に急激にエッチング量が増加している。従って被処理基板に対する各回の処理ガスの供給時間の長さは0.1秒〜5秒であることが好ましい。またSiN膜のエッチングを十分に少なくするため被処理基板に対する各回の処理ガスの供給停止時間の長さは1秒〜15秒に設定することが好ましい。このように設定することでSiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比を十分に高めることができる。
【0044】
さらに後述の実施例3に示すように、HFガスの分圧を80Pa以下、NH
3ガスの分圧を140Pa以下に設定した場合において、HFガスの分圧に対するNH
3ガスの分圧の分圧比を1以上に設定することが好ましい。この場合処理ガスが狭い部位まで行き渡るようになるため、
図9中に示したSiO
2膜69においてSiN膜66の近傍の部位と当該近傍部位よりもSiN膜66から離れた部位との間のエッチング量が揃い、S/D領域61やSiN膜66の表面が滑らかになる。また深さ寸法が大きく、径の細いホール(凹部)や、深さ寸法が大きく、幅が細い配線パターンにおいても、処理ガスが細部まで行き渡るため、ホールや配線パターンの底部のSiO
2膜69を隅部まで効率よく選択除去できる。HFガス及びNH
3ガスの各々の分圧が低すぎると、エッチング速度が遅くなるおそれがあることから、HFガスの分圧は10Pa〜80Paが好ましく、NH
3ガスの分圧は10Pa〜140Paに設定することが好ましい。
【0045】
そして本発明は、
図1に示す装置に限らず、真空雰囲気中に局所的に例えばNH
3ガス及びHFガスの混合ガスを含む処理ガスの雰囲気が常時形成され、この雰囲気に被処理基板が間欠的に複数回搬入される装置であってもよい。このような例としては、真空容器内の回転テーブルの中心から外れた位置に被処理基板を載置し、回転テーブルを回転させたときに被処理基板が移動する移動領域の一部に天井の低い処理ブロックを形成し、処理ブロック内に処理ガスを供給した状態で、回転テーブルを複数回回転させる装置が挙げられる。また明細書で用いているSiO
2膜、SiN膜の「膜」は、薄い層だけを意味するものではなく、ブロック状のものについても含む意味である。
【0046】
[実施例]
本発明の実施の形態の効果を検証するために行った実施例について記載する。
(実施例1―1)
SiO
2膜とSiN膜とを露出させた評価用のウエハを用い、
図1に示す装置により第1の実施形態に記載した手法のうち
図3に示すシーケンスを行った。即ち、HFガスを流しながら、NH
3ガスを1秒間供給する工程と2秒間供給停止する工程とを5回繰り返し、その後、NH
3ガスを3秒間供給する工程と5秒間供給停止する工程とを2回繰り返した。プロセス圧力は250Pa(1.88Torr)、プロセス温度は115℃である。
(実施例1−2)
図1に示したプリミックス型の装置に代えて、HFガスとNH
3ガスとがシャワーヘッドのガス供給孔から別々に処理容器内に供給されるポストミックス型の装置を用いて、実施例1−1と同様のシーケンスで評価用のウエハに対してエッチングを行った。
(比較例1)
HFガスとNH
3ガスとがシャワーヘッドのガス供給孔から別々に処理容器内に供給されるポストミックス型の装置を用いて、HFガスとNH
3ガスとを11秒間供給してエッチングを行った。
【0047】
(結果及び考察)
実施例1−1では、SiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比は15.5と最も高くなっていた。
図12は、実施例1−2と比較例1との各々について、SiO2膜のエッチング量、SiN膜のエッチング量、及びSiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比を示す。比較例では、SiN膜はSiO
2膜と同程度エッチングされておりエッチング選択比は1.2と低かった。これに対して実施例1−2では、SiO
2膜は比較例と同程度エッチングされたが、SiN膜はほとんどエッチングされずエッチング選択比も7.3と高かった。この結果によれば本発明のエッチング方法を用いることによりSiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比を高めることができるといえる。
【0048】
また
図13、
図14は夫々実施例1−1及び実施例1−2におけるエッチングを行った際のウエハW表面のエッチング量の分布を示す等高線図である。なお図中のドットはエッチング量を測定した部位を示し、太線は目標とするエッチング量の等高線、実線は目標よりエッチング量が多い部分の等高線、破線は目標よりエッチング量が少ない部分の等高線を示す。これによるとプリミックス型の装置を用いた場合にはより面内均一性が高くなるといえる。このようにプリミックス型の装置の方が、面内均一性が高くなる点で有利であるが、シャワーヘッドの構造等を調整し、ウエハWの表面に均一にガスを供給できる構造とすることで面内均一性は向上できる。
【0049】
(実施例2)
NH
3を流しながらHFガスを1秒間供給する工程と2秒間供給停止する工程とを5回繰り返し、その後、HFガスを3秒間供給する工程と5秒間供給停止する工程とを2回繰り返すシーケンスを用いたことを除いて、実施例1−1と同様な処理を行った。
【0050】
(結果及び考察)
この結果によれば実施例2ではSiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比は7.3であった。ウエハWをNH
3とHFガスとを含む処理ガスに間欠的に曝すことによりSiN膜に対するSiO
2膜のエッチング選択比を高めることができるが、HFガスを流しながらNH
3ガスを間欠的に供給した場合には、より大きな効果があるといえる。
【0051】
(実施例3)
実施例1において、HFガスとNH
3ガスとを含む処理ガスを250Paの圧力に調整した処理容器1内に供給する際に、各々の分圧が夫々(HFの分圧Pa:NH
3の分圧Pa)=(12:105)、(20:73)、(22:55)、(58:115)、(38:19)となるようにHFガス及びNH
3ガスの流量を調整した。そしてエッチング処理後において膜の表面におけるエッチングの仕上がり状態の良否について評価した。
図15は、HFガス及びNH
3ガスの分圧を夫々の圧力に設定したときのエッチングの結果を示す特性図であり、処理ガスが狭い部位まで行き渡りSiN膜の近傍部までエッチングが揃いSiO
2膜をすべて除去したときに表面が滑らかに仕上がった例は、◇で示し、SiN膜の近傍部のSiO
2膜のエッチングが遅れ、SiO
2膜をすべて除去したときに表面が滑らかに仕上がらなかった例を▲で示した。なお図中の直線は、HF:NH
3の分圧比が1:1を示す。この結果によれば、HFガスの分圧を80Pa以下、NH
3ガスの分圧を140Pa以下に設定した場合において、HFガスの分圧に対するNH
3ガスの分圧の分圧比を1以上に設定した場合には、SiN膜の近傍部までエッチングが揃い、表面が滑らかにエッチングされていた。本発明によれば、狭い部位まで処理ガスを侵入させることができ、細部のSiO
2膜まで効率よくエッチングできるといえる。