特許第6406145号(P6406145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406145
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20181004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08J7/04 ZCFD
   B32B27/00 101
   B32B27/36
   B32B27/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-143519(P2015-143519)
(22)【出願日】2015年7月18日
(65)【公開番号】特開2017-25172(P2017-25172A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舟津 良亮
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰史
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−330683(JP,A)
【文献】 特開2006−095710(JP,A)
【文献】 特開2007−031584(JP,A)
【文献】 特開2008−006804(JP,A)
【文献】 特開平09−314782(JP,A)
【文献】 特開2002−182037(JP,A)
【文献】 特開2009−214402(JP,A)
【文献】 特開2010−113367(JP,A)
【文献】 特開2011−099097(JP,A)
【文献】 特開2014−126822(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021277(WO,A1)
【文献】 特開2010−180502(JP,A)
【文献】 特開2003−049394(JP,A)
【文献】 特開平08−053652(JP,A)
【文献】 特開2002−121483(JP,A)
【文献】 特開2006−307148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04−7/06
B32B 1/00−43/00
C08J 5/18
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
C09J 7/00−7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、付加硬化型シリコーン化合物とジェミニ型界面活性剤を含有する塗布剤を硬化させてなる塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記付加硬化型シリコーン化合物が、不飽和炭化水素基および水素基を官能基として有するシリコーン化合物である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記付加硬化型シリコーン化合物が、不飽和炭化水素基を官能基として有するシリコーン化合物と水素基を官能基として有するシリコーン化合物の混合物である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ジェミニ型界面活性剤が、アセチレングリコールのエトキシ化体である請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記塗布剤がポリビニルアルコールまたはポリエステル樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエステルフィルム製造の工程内において、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、付加硬化型シリコーン化合物とジェミニ型界面活性剤を含有する塗布剤を塗布した後、当該ポリエステルフィルムを延伸し、180〜270℃の範囲で熱処理を行うことを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関するものであり、例えば、粘着剤用離型フィルム、偏光板用粘着層の保護フィルム、セラミックコンデンサ製造工程用離型フィルムなどに好適な離型ポリエステルフィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
【0003】
ポリエステルフィルムを使用する用途例の一つとして、粘着剤用離型フィルム、偏光板用粘着層の保護フィルム、セラミックコンデンサ製造工程用離型フィルムが挙げられる。例えば、粘着製品にポリエステルフィルムを使用する場合、粘着剤を各種溶剤に溶解、分散した状態で離型フィルム上に塗工し、加熱により溶媒除去および架橋を行うことで粘着層を形成する。その後、離型フィルムを剥離することで、その粘着性能が発揮される。
【0004】
これらの用途でポリエステルフィルムを使用する場合、粘着剤などに対する離型性が求められる。そのため、ポリジメチルシロキサンに代表されるシリコーン組成物などから構成される離型層を設ける提案(例えば特許文献1)が数多くなされている。しかし、これらの方法では、離型層を形成するための塗布剤の溶媒に有機溶剤を用いることが多く、塗工や乾燥時の有機溶剤処理設備が大掛かりになるという問題がある。また、作業環境面や、有機溶剤爆発火災などの安全面への考慮も必要になるという問題がある。有機溶剤を使用しない無溶剤型の方法(特許文献2)も提案されているが、この手法では塗布液の粘度が上昇していまい、均一な塗膜を得ることが難しいという問題がある。
【0005】
これらの観点から、水系のシリコーンエマルジョンによる塗布方法も提案(特許文献3)されている。しかし、この場合はエマルジョンの安定性が悪いため、安定した均一な塗膜の形成が難しく、耐溶剤性などに劣るという問題をかかえている。粘着製品に使用する場合、塗布層が溶剤に触れるため、塗布層の耐溶剤性は重要となる。そのため、耐溶剤性に優れた塗布層を持つ離型フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−7689号公報
【特許文献2】特開2003−192987号公報
【特許文献3】特開平8−118573号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、粘着剤用離型フィルム、偏光板用粘着層の保護フィルム、セラミックコンデンサ製造工程用離型フィルムなどに好適であり、耐溶剤性にも優れた離型ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、付加硬化型シリコーン化合物とジェミニ型界面活性剤を含有する塗布剤を硬化させてなる塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、粘着剤用離型フィルムや偏光板用粘着層の保護フィルムとして用いた際に、粘着層加工時の溶剤による離型性の悪化が少ない離型ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0013】
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。
【0014】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。粒子がない場合、あるいは粒子が少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、フィルムにキズが入りやすい傾向がある。
【0015】
粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。また、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0016】
ポリエステルフィルムに粒子を含有させる場合、滑り性を落とさず、透明性を確保するという観点から、3層以上の構成であることが好ましく、さらに製造の容易性を考慮し、3層構成であることがより好ましく、粒子を最表面の層に含有する構成が最適である。
【0017】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0018】
また、用いる粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、転写する成型面の表面形状に影響を与える場合がある。
【0019】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0020】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0022】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性及び生産性などの点から、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜100μmの範囲がよく、粘着剤用離型フィルムや偏光板用粘着層の保護フィルムとして使用する場合、12〜50μmであることがより好ましい。
【0023】
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0024】
次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0025】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0026】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
【0027】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。
【0028】
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層の性能や耐久性を向上させることができる。
【0029】
本発明においては、シリコーン化合物とジェミニ型界面活性剤を含有する塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0030】
本発明における塗布層は、例えば、粘着剤用離型フィルム、偏光板用粘着層の保護フィルム、セラミックコンデンサ製造工程用離型フィルム等として好適に使用可能な離型性を付与するために設けられるものである。
【0031】
本発明者らは、シリコーン化合物を含む塗布層の均一性および耐溶剤性を向上させるため、種々、検討を行った結果、ジェミニ型界面活性剤を利用することで塗布層の均一性を出すことに成功した。また、ジェミニ型界面活性剤を加えることにより、塗布層の耐溶剤性も改善できることを見いだした。
【0032】
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用するシリコーン化合物とは、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、ポリジメチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。離型性に優れるという観点から、ポリジメチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、耐熱性、汚染性を考慮し、硬化型シリコーン化合物を含有することが好ましい。硬化型シリコーン化合物の種類としては、付加硬化型、縮合硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。中でも付加硬化型シリコーン化合物が塗膜凝集力を上げることができるという観点でより好ましい。
【0033】
付加硬化型シリコーン化合物とは、その構造中に不飽和炭化水素基および水素基を官能基として有するシリコーン化合物であり、これらの官能基の反応によって付加硬化反応が行われる。不飽和炭化水素基と水素基は同一分子内に存在しないことが、ポットライフの観点から好ましく、別々のシリコーン分子中に官能基を含み、それらの混合物を用いる。
【0034】
不飽和炭化水素基を官能基として有するシリコーン化合物としては、不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンが挙げられる。不飽和炭化水素基はポリジメチルシロキサン分子中に少なくとも2個含有する必要がある。不飽和炭化水素基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数が2〜8個のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手のしやすさから、ビニル基であることが好ましい。少なくとも2個含有するアルケニル基は異なる炭素数のアルケニル基を含んでいても良い。
【0035】
不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンはケイ素原子に直結する官能基としてアルケニル基とメチル基を有するが、その他にも種々の官能基を有しても良い。メチル基以外の官能基の例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。ポリエステルフィルムへの密着性の観点から、フェニル基やメトキシ基を含むことが好ましい。
【0036】
水素基を官能基として有するシリコーン化合物としては、水素基含有のポリジメチルシロキサンが挙げられる。水素基含有のポリジメチルシロキサンとは、ケイ素原子に結合した水素原子を持つポリジメチルシロキサンのことである。1分子中にケイ素原子に結合した水素原子は少なくとも2個含有することが必要であり、硬化特性の観点から3個以上含有することが好ましい。ケイ素に結合した水素原子は、ポリジメチルシロキサン分子鎖の末端でもあっても側鎖でもあってもよい。
【0037】
水素基含有のポリジメチルシロキサンはケイ素原子に直結する官能基として水素基とメチル基を有するが、その他にも種々の官能基を有しても良い。メチル基以外の官能基の例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。
【0038】
不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンと、水素基含有のポリジメチルシロキサンのポリジメチルシロキサン骨格は、それぞれ直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0039】
不飽和炭化水素含有ポリジメチルシロキサンと水素基含有ポリジメチルシロキサンの配合は、全アルケニル基に対する全SiH基のモル比(SiH基量/アルケニル基量)が1.0〜3であることが好ましく、1.1〜2.0であることがより好ましく、1.2〜1.8であることが特に好ましい。モル比が1.0未満だと硬化性が低下し、硬化不足となる場合があり、3より大きい場合は残存するSiH基量が多く、粘着剤に対する剥離力が重くなる場合がある。
【0040】
作業環境面や、有機溶剤爆発火災などの安全面の観点から、本発明の塗布層を形成する塗布液は水を主な溶媒とすることが好ましく、上述のシリコーン化合物はシリコーンエマルジョンであることが好ましい。水を主な溶媒とする場合、その溶媒の80重量%以上を水であることが好ましく、90重量%以上がより好ましい、95重量%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
シリコーン化合物樹脂をエマルジョン化する場合、乳化安定剤として界面活性剤成分が使用される。界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンフェニルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸石けん、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩等が挙げられる。これらの中でもノニオン系界面活性剤であることが好ましく、シリコーンエマルジョンの安定性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシアルキレンフェニルエーテルがより好ましい。
【0042】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシブチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。また、アルキル基は炭素数が8〜30の直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、炭素数が8〜16の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましい。
【0043】
ポリオキシアルキレンフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシブチレンフェニルエーテルなどが挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。また、フェニル基は非置換または置換のフェニル基であり、フェニル基の水素原子がスチリル基で置換されたスチレン化フェニル基であることが好ましい。
【0044】
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用するジェミニ型界面活性剤とは、界面活性剤の種類の1つであり、少なくとも2つの親水性基と、少なくとも2つの疎水性基を有する化合物のことである。その構造は少なくとも1つの親水性基と少なくとも1つの疎水性基を持つ構造が、スペーサーを介して少なくとも2個結合した構造である。また、複数の親水性基および疎水性基は同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
親水性基および疎水性基は従来公知の官能基であればよく、特に限定されるものではない。親水性基としては、例えば、水酸基、(ポリ)エチレンオキシド誘導体などの(ポリ)アルキレンオキシド誘導体、(ポリ)アルキレンオキシドアルキルエーテル誘導体、カルボキシ基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム基、アミノ基、アミド基、およびこれらの塩などが挙げられる。これらの中でも水酸基や(ポリ)アルキレンオキシド誘導体が液の安定性の観点から好ましい。
【0046】
疎水性基とは親水基以外の有機基であり、例えば、1−メチルプロピル、1,3−ジメチルプロピル、n−ブチル、1−メチルブチル、1,3−ジメチルブチル、n−ペンチル、1−メチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、sec−トリデシル、オクタデシル、イソオクタデシル、エイコシルなどの炭素数4〜20のアルキル基、3−ブテニル、5−ヘキセニル、5−デセニル、11−ドデセニル、11−オクタドデセニルなどのアルケニル基、フェニル、ノニルフェニル、オクチルフェニル、ナフチルなどのアリール基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルヘキシル、ノニルフェニルエチルなどのアリールアルキル基といった炭化水素基、n−パーフルオロブチル、n−パーフルオロヘキシル、2−パーフルオロエチルヘキシル、n−パーフルオロデシル、n−パーフルオロドデシル、パーフルオロオクタデシル、パーフルオロイソオクタデシル、パーフルオロエイコシルなどの炭素数4〜20のフルオロアルキル基、3−パーフルオロブテニル、5−パーフルオロヘキセニル、5−パーフルオロデセニル、11−パーフルオロオクタデセニルなどのフルオロアルケニル基、パーフルオロフェニル、パーフルオロノニルフェニル、パーフルオロオクチルフェニル、パーフルオロナフチルなどのフルオロアリール基といった、含フッ素炭化水素基などが挙げられる。これらの中でも工業的な入手のし易さからアルキル基であることが好ましく、n−ブチル、1−メチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1−メチルペンチル、1,3−ジメチルペンチルがより好ましい。
【0047】
スペーサーとは親水性基と疎水性基を持つ有機基を化学結合により結合させる有機基であり、特に限定はされない。例えば、炭素数が1〜24の飽和炭化水素、炭素数が2〜24で炭素-炭素二重結合を持つ不飽和炭化水素、炭素数が1〜24で炭素-炭素三重結合を持つ不飽和炭化水素などから水素原子が2個除かれた構造、1,4−フェニレン、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン、1,4−ナフチレンなどのアリーレンなどの2価の有機基が挙げられる。また、これらにさらに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などが結合された構造なども挙げられる。これらの中でも、界面活性剤の分子構造が強固になり、触媒不活性が少なく、より効果的に界面活性剤効果が得られるという観点から、三重結合を有する不飽和炭化水素やアリーレンが好ましく、アセチレンであることがより好ましい。
【0048】
ジェミニ型界面活性剤の最も好ましい形態としては、親水性基として水酸基もしくは(ポリ)エチレンオキシド、疎水基としてアルキル基、スペーサーとしてアセチレンを有する構造、すなわちアセチレングリコールもしくはそのエトキシ化体と言える。
【0049】
アセチレングリコールとしては、例えば、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールなどが挙げられる。また、アセチレングリコールのエトキシ化体としては、上記のアセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体が挙げられる。塗膜の均一性への効果から、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、もしくはそのエチレンオキサイド誘導体がより好ましい。また、エチレンオキサイド誘導体の場合、1分子中のエチレンオキサイド単位の付加モル総数は、界面活性剤効果や消泡性の観点から、1〜40モルであることが好ましく、1〜25モルであることがより好ましく、2〜15モルがさらに好ましい。なお、本発明のジェミニ型界面活性剤は複数の親水基を持つ構造であり、エチレンオキサイド単位の付加モル総数は、複数の親水基の合計の付加モル数を意味する。
【0050】
従来、シリコーンの付加型硬化反応の組成物として、触媒活性を抑制する触媒活性抑制剤の目的のためにアセチレン誘導体が用いられる場合がある。本発明のジェミニ型界面活性剤として最も好ましい形態である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、もしくはそのエチレンオキサイド誘導体もアセチレン基をその構造中に持つ。しかし、従来の従来の触媒活性抑制剤として用いられるアセチレン誘導体はその分子構造の末端にアセチレン基を持つ構造であるのに対して、分子構造の骨格内にアセチレン基を持つ本発明のジェミニ型界面活性剤は、アセチレン基の周囲に立体障害構造を持つため、触媒活性抑制剤としての効果は低い。そのためシリコーンの付加型硬化反応への影響は少なく、触媒活性抑制剤とは区別することができる。
【0051】
ジェミニ型界面活性剤とシリコーン化合物の混合のタイミングは特に制限されないが、ジェミニ型界面活性剤はシリコーンの乳化の目的では無く、塗布の際の均一性向上や耐溶剤性向上のために用いられる。そのため、ノニオン系界面活性剤で乳化されたシリコーンエマルジョンにジェミニ型界面活性剤を加えることが好ましい。また、ジェミニ型界面活性剤の添加タイミングは塗布工程の直前20時間以内に含有される工程が好ましく、10時間以内であることがより好ましい。
【0052】
本発明のフィルムの塗布層の形成には、塗布外観や透明性の向上、塗布層と基材の密着性向上、エマルジョンの乳化安定性の向上、離型性のコントロールの目的で、各種のポリマーを併用することが可能である。
【0053】
ポリマーの種類は特に限定されず、シリコーンの硬化反応に影響を与えないポリマーであれば、従来公知のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも基材との密着性向上の観点において、ポリビニルアルコールやポリエステル樹脂が好ましく、さらに乳化安定性の向上の観点から、ポリビニルアルコールがより好ましい。また、乳化安定性をより効果的に出すという観点から、シリコーン化合物の乳化の際に同様に使用されることが好ましい。
【0054】
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有するものであり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000の範囲のものが用いられる。重合度が100未満の場合、乳化安定効果や基材との密着性向上効果が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、70モル%以上、好ましくは80〜99.9モル%の範囲であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0055】
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0056】
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0057】
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0058】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0059】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0060】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0061】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0062】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0063】
本発明で使用するウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性に優れており好ましい。また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。
【0064】
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、基材との密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
【0065】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0066】
本発明のフィルムの塗布層の形成には、触媒量の白金族金属触媒を併用することも可能である。この白金族金属触媒はシリコーン化合物の付加硬化型反応を促進するための触媒であり、不可反応触媒として従来公知のものが使用できる。白金族金属触媒としては、例えば、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられる。これらの中でも白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液やアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。ポットライフの観点から、白金族金属触媒の添加タイミングは塗布工程の直前20時間以内に含有される工程が好ましく、10時間以内であることがより好ましい。
【0067】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層の形成には必要に応じて、1−オクチン、エチニルシクロヘキサノールなどのように、末端にアセチレン構造を持つアセチレン誘導体、各種有機窒素化合物、各種リン化合物、オキシム化合物、有機ハロゲン化合物などの触媒活性抑制剤、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、シランカップリング剤などの架橋剤、粒子、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
【0068】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層中のジェミニ型界面活性剤を除く全成分100重量部に対する割合として、ジェミニ型界面活性剤は、通常0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.05〜3重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜1.8重量%の範囲である。0.01重量%より少ない場合は十分な界面活性効果が得られない可能性があり、5重量%よりも多い場合は塗布液の状態で界面活性剤が分散できず、塗膜性能に悪影響が生じる可能性がある。
【0069】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層中にポリマーを加える場合、シリコーン化合物100重量部に対する割合として、ポリマーの添加量は、好ましくは0.1〜50重量%の範囲、より好ましくは1〜30重量%の範囲、さらに好ましくは2〜20重量%である。上記範囲であれば、基材密着性の向上や乳化安定化を効果的に出すことが可能となる。
【0070】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層中に白金族金属触媒を加える場合、塗布層中の全成分に対する割合として、白金族金属触媒の添加量は、好ましくは1〜1000ppmの範囲、より好ましくは20〜800ppmの範囲である。上記範囲であれば、付加型硬化反応の促進とポットライフを適度に両立することが可能となる。
【0071】
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0072】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0073】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、好ましくは0.005〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.2μmの範囲である。膜厚が1μmを超える場合は、塗膜外観の悪化や塗膜の硬化不足が生じる可能性があり、膜厚が0.005μm未満の場合は十分な離型性が得られない可能性がある。
【0074】
本発明の塗布層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0075】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0076】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0077】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0078】
本発明のポリエステルフィルムのアクリル系粘着テープに対する剥離力は、好ましくは50mN/cm未満、より好ましくは40mN/cm以下、さらに好ましくは35mN/cm以下である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0080】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0081】
(2)平均粒径(d50)の測定
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0082】
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0083】
(4)離型フィルムの剥離力の評価
試料フィルムの離型層表面に5cm幅にカットした両面粘着テープ(日東電工株式会社製「No.502」)の片面を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0084】
(5)離型フィルムの加熱後剥離力の評価
試料フィルムの離型層表面に5cm幅にカットした両面粘着テープ(日東電工株式会社製「No.502」)の片面を2kgゴムローラーにて1往復圧着した後、100℃のオーブン内にて1hr加熱した。その後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0085】
(6)離型フィルムの溶剤処理後の剥離力評価
トルエン4mLを含浸させたベンコット(旭化成せんい株式会社製「M−3II」)をラビングテスター(大平理化工業株式会社製)に取り付け、アーム荷重の680gで試料フィルムの離型層表面を10往復させた。風乾後、5cm幅にカットした両面粘着テープ(日東電工株式会社製「No.502」)の片面を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0086】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0087】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径2μmのシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0088】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
・シリコーン化合物:(IA)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、水素基含有ポリジメチルシロキサンを全アルケニル基に対する全SiH基量のモル比率が1.47になるように混合し、ケン化度が90モル%のポリビニルアルコール(シリコーン化合物100重量部に対して14重量部)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(シリコーン化合物100重量部に対して2重量部)、触媒活性抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール(シリコーン化合物100重量部に対して0.4重量部)、水を加えて均一に撹拌混合、転相させて得られたO/W型のシリコーンエマルジョン。
【0089】
・シリコーン化合物:(IB)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、水素基含有ポリジメチルシロキサンを全アルケニル基に対する全SiH基量のモル比率が1.52になるように混合し、ケン化度が90モル%のポリビニルアルコール(シリコーン化合物100重量部に対して14重量部)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(シリコーン化合物100重量部に対して2重量部)、触媒活性抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール(シリコーン化合物100重量部に対して0.4重量部)、水を加えて均一に撹拌混合、転相させて得られたO/W型のシリコーンエマルジョン。
【0090】
・シリコーン化合物:(IC)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、水素基含有ポリジメチルシロキサンを全アルケニル基に対する全SiH基量のモル比率が1.60になるように混合し、ケン化度が90モル%のポリビニルアルコール(シリコーン化合物100重量部に対して14重量部)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(シリコーン化合物100重量部に対して2重量部)、触媒活性抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール(シリコーン化合物100重量部に対して0.4重量部)、水を加えて均一に撹拌混合、転相させて得られたO/W型のシリコーンエマルジョン。
【0091】
・シリコーン化合物:(ID)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、水素基含有ポリジメチルシロキサンを全アルケニル基に対する全SiH基量のモル比率が1.47になるように混合し、ケン化度が90モル%のポリビニルアルコール(シリコーン化合物100重量部に対して20重量部)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(シリコーン化合物100重量部に対して2重量部)、触媒活性抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール(シリコーン化合物100重量部に対して0.4重量部)、水を加えて均一に撹拌混合、転相させて得られたO/W型のシリコーンエマルジョン。
【0092】
・ジェミニ型界面活性剤:(IIA)
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシ化体、エチレンオキサイド付加モル総数3.5、HLB=8
・ジェミニ型界面活性剤:(IIB)
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシ化体、エチレンオキサイド付加モル総数10、HLB=13
【0093】
・白金族金属触媒:(III)
塩化白金酸のビニルシロキサンとの錯体
【0094】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)のみを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:8:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液1の通り、ジェミニ型界面活性剤を除く全成分100重量部に対してジェミニ型界面活性剤を0.1重量部、白金族金属触媒を塗布層中の全成分に対して100ppm、それぞれ塗布の6時間前に添加し、水を主な溶媒として塗布し、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が0.07μmの塗布層を有する厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0095】
得られたポリエステルフィルムを評価したところ、溶剤処理後の離型性も良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0096】
実施例2〜14:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、未処理の離型性や溶剤処理後の離型性も良好であった。
【0097】
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、離型性が劣るものであった。
【0098】
比較例2〜4:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、溶剤処理後の離型性が劣るものであった。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の離型フィルムは、粘着層加工時の溶剤による離型性の悪化が少ない離型フィルムであり、例えば、粘着剤用離型フィルムや偏光板用粘着層の保護フィルムとして、好適に利用することができる。