(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液晶配向処理剤が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
前記液晶配向処理剤が、前記式[4−1a]又は式[4−2a]の側鎖構造を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを含む請求項5に記載の液晶表示素子。
前記液晶配向処理剤が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する化合物を含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
前記液晶配向処理剤が、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は、前記式[1−1a]の特定化合物(1)及び前記式[2−1a]の特定化合物(2)を含む。
液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。なかでも、負の誘電異方性を有するものが好ましい。また、低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率の異方性が大きく、屈折率の異方性が大きいものが好ましい。また、液晶には、前記の相転移温度、誘電率異方性及び屈折率異方性の各物性値に応じて、2種類以上の液晶を用いることができる。
液晶表示素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高くて、電圧保持率(VHRともいう)が高いことが求められる。そのため、液晶には、電気抵抗が高くて、紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶を用いることが好ましい。
【0015】
更に、液晶表示素子は、液晶組成物中に二色性染料を溶解させて、ゲストホスト型の素子とすることもできる。この場合には、電圧無印加時は透明で、電圧印加時に吸収(散乱)となる素子が得られる。また、この液晶表示素子では、液晶のダイレクターの方向(配向の方向)は、電圧印加の有無により90度変化する。そのため、この液晶表示素子は、二色性染料の吸光特性の違いを利用することで、ランダム配向と垂直配向でスイッチングを行う従来のゲストホスト型の素子に比べて、高いコントラストが得られる。また、二色性染料を溶解させたゲストホスト型の素子では、液晶が水平方向に配向した場合に有色になり、散乱状態においてのみ不透明となる。そのため、電圧を印加するにつれ、電圧無印加時の無色透明から有色不透明、有色透明の状態に切り替わる素子を得ることもできる。
【0016】
本発明の液晶組成物には、液晶層のポリマーネットワークを形成させるため、重合性化合物を含む。ポリマーネットワークは、液晶組成物中に重合性化合物を導入して、液晶表示素子の作製時の紫外線の照射により、重合反応をさせてポリマーネットワークとしてもよく、或いは、予め重合性化合物を重合反応させたポリマーを液晶組成物に導入してもよい。ただし、ポリマーとした場合でも、紫外線の照射により重合反応する部位を有する必要がある。より好ましくは、液晶組成物の取り扱い、即ち、液晶組成物の高粘度化の抑制や液晶への溶解性の点から、液晶組成物中に重合性化合物を添加して、液晶表示素子作製時の紫外線の照射により重合反応をさせてポリマーネットワークとすることが好ましい。
【0017】
液晶組成物中の重合性化合物は、液晶に溶解すれば、特に限定されず、そのオリゴマーを含むポリマーでもよく、また、重合性化合物を液晶に溶解した際に、液晶組成物の一部又は全体が液晶相を示す温度が存在することが好ましい。液晶組成物の一部が液晶相を示す場合であっても、液晶表示素子を肉眼で確認して、素子内全体がほぼ一様な透明性と散乱特性が得られていることが好ましい。
重合性化合物は、紫外線により重合する化合物であればよく、どのような反応形式で重合が進み、ポリマーネットワークを形成させてもよい。具体的な反応形式は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合又は重付加反応が挙げられる。
【0018】
なかでも、重合性化合物の反応形式は、液晶表示素子の光学特性の点から、ラジカル重合が好ましい。その際、重合性化合物としては、下記のラジカル型の重合性化合物、又はそのオリゴマーを用いることができる。また、前記の通り、これらの重合性化合物を重合反応させたポリマーを用いることもできる。ラジカル型の重合性化合物又はそのオリゴマーの具体例は、国際公開公報2015/146987の69頁〜71頁に記載されるラジカル型の重合性化合物が挙げられる。ラジカル型の重合性化合物は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
液晶組成物中における重合性化合物又はそのポリマーオリゴマーを含むポリマーの含有割合は、液晶表示素子の液晶層と液晶配向膜との密着性などの点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、70〜150質量部が好ましく、より好ましくは、80〜120質量部である。
【0019】
前記ポリマーネットワークの形成を促進させるため、液晶組成物中には、重合性化合物のラジカル重合を促進させる目的で、紫外線により、ラジカルを発生するラジカル開始剤(重合開始剤ともいう。)を導入することが好ましい。具体的には、国際公開公報2015/146987の71頁〜72頁に記載されるラジカル開始剤が挙げられる。
ラジカル開始剤の使用割合は、液晶表示素子の液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.05〜5質量部である。また、ラジカル開始剤は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0020】
特定化合物(1)は、前記式[1−1a]の化合物であり、式[1−1a]中、T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、T
6及びnTは、前記に定義した通りである。
なかでも、T
1は特定化合物(2)との付加反応の点から、式[1−b]、式[1−c]又は式[1−e]が好ましく、より好ましくは、式[1−b]又は式[1−c]である。T
2は単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NH−、−CON(CH
3)−、−S−又は−SO
2−で置換されていてもよい。T
2は、より好ましくは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基である。
【0021】
T
3は素子の光学特性の点から、ベンゼン環、シクロヘキサン環、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基が好ましく、より好ましくは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環である。T
4は単結合、−O−、−COO−又は−OCO−が好ましく、より好ましくは、単結合である。T
5は素子の光学特性の点から、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
T
6は素子の光学特性の点から、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基である。nTは0〜3が好ましく、より好ましくは、1又は2である。
【0022】
特定化合物(1)としては、下記式[1−2a]の化合物が好ましい。
【化7】
上記式[1−2a]中、T
7は前記式[1−b]又は式[1−c]の構造を示す。T
8は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。T
9及びT
10はそれぞれ、ベンゼン環又はシクロヘキサン環を示す。T
11は炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。mTは0〜2の整数を示す。式[1−2a]の具体例は、下記式[1a−1]〜式[1a−24]の化合物が挙げられる。
【0025】
【化12】
【化13】
(式[1a−1]〜式[1a−24]中、T
aは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。T
bは炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。)
【0026】
前記式[1−2a]としては、なかでも、素子の光学特性の点から、式[1a−1]〜式[1a−3]、式[1a−5]〜式[1a−7]、式[1a−10]、式[1a−11]、式[1a−13]、式[1a−18]、式[1a−19]又は式[1a−21]の化合物が好ましい。より好ましくは、式[1a−1]〜式[1a−4]、式[1a−10]、式[1a−11]又は式[1a−13]である。最も好ましいのは、式[1a−2]、式[1a−3]、式[1a−11]又は式[1a−13]である。
【0027】
特定化合物(1)の使用割合は、素子の光学特性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、より好ましくは、1〜30質量部であり、最も好ましく、1〜20質量部である。また、特定化合物(1)は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0028】
特定化合物(2)は、前記式[2−1a]の化合物であり、式[2−1a]中、S
1、S
2及びnSは、前記に定義した通りである。
なかでも、S
1は液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、式[2−a]、式[2−b]、式[2−c]又は式[2−e]が好ましく、より好ましくは、式[2−a]又は式[2−b]である。
【0029】
S
2は炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、S
1と−N=C=Oと隣り合わない前記アルキレン基の任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−又は−NH−で置換されていてもよい。S
2のより好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。nSは液晶層と液晶配向膜との密着性から2〜4の整数が好ましく、2がより好ましい。
【0030】
特定化合物(2)は、下記式[2−2a]の化合物が好ましい。
【化14】
上記式[2−2a]中、S
3及びS
5はそれぞれ、式[2−a]又は式[2−b]を示す。S
4は炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。式[2−2a]の具体例は、下記式[2a−1]〜式[2a−4]の化合物が挙げられる。
【0031】
【化15】
(nS1及びnS2はそれぞれ、0〜7の整数を示し、nS1+nS2は1〜7の整数を示す。)
【0032】
【化16】
(nS3〜nS5はそれぞれ、0〜6の整数を示し、nS1+nS2+nS3は1〜6の整数を示す。)
【0033】
本発明においては、液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、前記式[2a−1]〜式[2a−4]の化合物を用いることが好ましい。
特定化合物(2)の使用割合は、素子の光学特性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、より好ましくは、1〜30質量部である。
また、特定化合物(2)は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0034】
本発明の液晶組成物には、液晶表示素子の光学特性、特に透明性を高めるために、下記式[3−1a]の化合物(特定化合物(3)ともいう。)を含有することが好ましい。
【化17】
【0035】
上記式[3−1a]中、W
1は下記式[3−a]〜式[3−e]から選ばれる構造を示す。W
2は単結合又は炭素数1〜24のアルキレン基を示し、前記アルキレン基の任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NH−、−CON(CH
3)−、−S−又は−SO
2−で置換されていてもよい。W
3はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環を有する環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3の、アルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基若しくはフッ素含有アルコキシ基、又はフッ素原子で置換されていてもよい。W
4は単結合、−CH
2−、−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。W
5はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環を有する環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3の、アルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基若しくはフッ素含有アルコキシ基、又はフッ素原子で置換されていてもよい。W
6は炭素数1〜18の、アルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基若しくは1〜18のフッ素含有アルコキシ基、又は炭素数2〜18のアルケニル基を示す。nWは0〜4の整数を示す。
【0036】
【化18】
(W
A及びW
cは単結合、−O−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−又は−NH−を示す。W
Bは水素原子又はベンゼン環を示す。)
【0037】
前記式[3−1a]中、なかでも、W
1は上記式[3−a]、式[3−b]、式[3−c]又は式[3−e]が好ましい。より好ましくは、液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、式[3−a]、式[3−b]又は式[3−c]である。W
2は単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NH−、−CON(CH
3)−、−S−又は−SO
2−で置換されていてもよい。W
2のより好ましくは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基である。
【0038】
W
3は素子の光学特性の点から、ベンゼン環、シクロヘキサン環、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基が好ましく、より好ましくは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環である。W
4は単結合、−CH
2−、−O−、−COO−又は−OCO−が好ましい。W
5は素子の光学特性の点から、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。W
6は素子の光学特性の点から、炭素数1〜18のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数2〜18のアルケニル基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基である。nWは0〜3の整数が好ましく、より好ましくは、0〜2である。
【0039】
特定化合物(3)は、素子の光学特性の点から、具体的には、下記式[3a−1]〜式[3a−6]の化合物が好ましい。
【化19】
【0040】
(W
aは炭素数1〜18のアルキル基又はアルコキシ基であり、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。W
bは−O−、−COO−又は−OCO−であり、−O−が好ましい。p1は1〜12の整数であり、1〜8が好ましい。p2は1〜3の整数であり、1又は2が好ましい。)
【0042】
(X
cは−CH
2−、−O−、−COO−又は−OCO−であり、−O−、−COO−又は−OCO−が好ましい。X
dは炭素数1〜18のアルキル基又はアルコキシ基であり、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。X
eは−O−、−COO−又は−OCO−であり、−O−が好ましい。p3は1〜12の整数、1〜8が好ましい。)
特定化合物(3)は、最も好ましくは、素子の光学特性の点から、式[3a−1]又は式[3a−2]の化合物である。
【0043】
特定化合物(3)の使用割合は、素子の光学特性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、より好ましくは、1〜30質量部であり、最も好ましくは、1〜20質量部である。また、特定化合物(3)は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0044】
<液晶配向処理剤>
液晶配向膜は、前記式[4−1a]又は式[4−2a]の特定側鎖構造を有する重合体を含む液晶配向処理剤から得られる。
【0045】
式[4−1a]中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6及びnは、前記に定義した通りである。なかでも、X
1は原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましい。X
1は、より好ましくは、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。X
2は単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜10の整数である)が好ましい。X
3は合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましく、より好ましくは、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
【0046】
X
4は合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が好ましい。X
5はベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。X
6は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシ基が好ましい。X
6は、より好ましくは、炭素数1〜12の、アルキル基又はアルコキシ基であり、特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基又はアルコキシ基である。nは原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3の整数が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0047】
X
1〜X
6及びnの好ましい組み合わせは、国際公開公報WO2011/132751の13頁〜34頁の表6〜表47に掲載される(2−1)〜(2−629)の組み合わせである。なお、該公報の各表に記載されているY1〜Y6は、本発明におけるX
1〜X
6と読み替えるものとする。また、上記公報の各表に掲載される(2−605)〜(2−629)のステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基は、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基と読み替えるものとする。
【0048】
X
1〜X
6及びnの好ましい組み合わせは、なかでも、(2−25)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−268)〜(2−315)、(2−364)〜(2−387)、(2−436)〜(2−483)又は(2−603)〜(2−615)の組み合わせが好ましい。特に好ましい組み合わせは、(2−49)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−603)〜(2−606)、(2−607)〜(2−609)、(2−611)、(2−612)又は(2−624)である。
【0049】
式[4−2a]中、X
7及びX
8は、前記に定義した通りである。
なかでも、X
7は単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−CON(CH
3)−又は−COO−が好ましく、より好ましくは、単結合、−O−、−CONH−又は−COO−である。X
8は炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。
本発明における特定側鎖構造は、上述の通り、高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる点から、式[4−1a]が好ましい。
【0050】
特定側鎖構造を有する特定重合体は、特に限定されないが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの重合体が好ましい。より好ましくは、ポリイミド前駆体、ポリイミド又はポリシロキサンである。
特定重合体にポリイミド前駆体又はポリイミド(総称してポリイミド系重合体ともいう。)を用いる場合、それらは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドであることが好ましい。
【0051】
ポリイミド前駆体とは、下記式[A]の構造を有するものが好ましい。
【化21】
(R
1は4価の有機基を示す。R
2は2価の有機基を示す。A
1及びA
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。A
3及びA
4はそれぞれ、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは正の整数を示す。)
【0052】
前記ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンである。テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることにより、比較的簡便に得られることから、下記式[D]の構造を有するポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【0053】
【化22】
(R
1及びR
2は、式[A]で定義したものと同じである。)
【化23】
(R
1及びR
2は、式[A]で定義したものと同じである。)
【0054】
また、通常の合成手法で、前記で得られた式[D]の重合体に、式[A]のA
1及びA
2の炭素数1〜8のアルキル基、及び式[A]のA
3及びA
4の炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
前記の特定側鎖構造をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定側鎖構造を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。
【0055】
特定側鎖構造を有するジアミンは、特に、下記式[4a]のジアミン(特定側鎖型ジアミンともいう。)が好ましい。
【化24】
上記式[4a]中、Xは前記式[4−1a]又は式[4−2a]を示す。また、式[4−1a]中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6及びnの定義及び好ましい組み合わせは、前記式[4−1a]のとおりであり、式[4−2a]におけるX
7及びX
8の定義及び好ましい組み合わせは、前記式[4−2a]のとおりである。mは1〜4の整数、特に、1が好ましい。
【0056】
式[4−1a]の特定側鎖構造を有する定側鎖型ジアミンの具体例は、国際公開公報WO2013/125595の15頁〜19頁に記載される式[2−1]〜式[2−6]、式[2−9]〜式[2−36]のジアミン化合物が挙げられる。なお、該公報の記載において、式[2−1]〜式[2−3]中のR
2及び式[2−4]〜式[2−6]中のR
4は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基及び炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。また、式[2−13]中のA
4は、炭素数3〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基を示す。加えて、式[2−4]〜式[2−6]中のR
3は−O−、−CH
2O−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0057】
なかでも、好ましい特定側鎖型ジアミンは、国際公開公報WO2013/125595に記載される式[2−1]〜式[2−6]、式[2−9]〜式[2−13]又は式[2−22]〜式[2−31]である。より好ましくは、液晶表示素子の光学特性の点から、下記式[4a−32]〜式[4a−41]のジアミンである。
【0058】
【化25】
【化26】
(R
1及びR
2はそれぞれ、炭素数3〜12のアルキル基を示す。)
【0059】
【化27】
【化28】
(R
3及びR
4はそれぞれ、炭素数3〜12のアルキル基を示し、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、トランス異性体である。)
最も好ましいのは、素子の光学特性の点から、前記式[4a−35]〜式[4a−37]、式[4a−40]又は式[4a−41]のジアミンである。
【0060】
前記式[4−2a]の特定側鎖構造を有する特定側鎖型ジアミンの具体例は、国際公開公報WO2013/125595の23頁に記載される式[DA1]〜式[DA11]のジアミンが挙げられる。なお、該国際公開公報において、式[DA1]〜式[DA5]中のA
1は、炭素数8〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のフッ素含有アルキル基を示す。
【0061】
特定側鎖型ジアミンの使用割合は、素子の光学特性及び液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、ジアミン成分全体に対し10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。また、特定側鎖型ジアミンは、各特性に応じて、1種又は2種以上を使用できる。
【0062】
前記のポリイミド系重合体を製造するためのジアミン成分としては、下記式[4b]のジアミン(第2のジアミンともいう。)が好ましい。
【化29】
X
Aは、下記式[4−1b]〜式[4−5b]から選ばれる構造を示す。rは1〜4の整数、特に1が好ましい。
【0063】
【化30】
aは0〜4の整数を示す。特に、原料の入手性や合成の容易さから、0又は1が好ましく、bは0〜4、特に原料の入手性や合成の容易さから、0又は1が好ましい。
【0064】
X
a及びX
bはそれぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。X
cは炭素数1〜5のアルキル基を示す。X
dは単結合、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−CON(CH
3)−又は−COO−が好ましい。より好ましくは、合成の容易さから、単結合、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
【0065】
X
eは炭素数1〜18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロシクロヘキサン環若しくは複素環からなる環状基を有する炭素数6〜24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3の、アルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基、フッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。特に、炭素数2〜12のアルキレン基、ベンゼン環又はシクロシクロヘキサン環からなる環状基を有する炭素数6〜24の有機基が好ましい。より好ましくは、合成の容易さ及び液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、炭素数2〜12のアルキレン基である。
【0066】
X
fは単結合、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、単結合、−O−、−NHCO−、−N(CH
3)CO−又は−OCO−が好ましい。より好ましくは、合成の容易さから、単結合、−O−、−NHCO−又は−OCO−である。
X
gは下記式[4−a]〜式[4−f]から選ばれる構造を示す。特に、合成の容易さ及び液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、式[4−a]、式[4−b]又は式[4−e]が好ましい。
【0067】
【化31】
(X
Aは水素原子又はベンゼン環を示す。X
Bは単結合、又はベンゼン環、シクロへキサン環若しくは複素環からなる環状基を示す。X
Cは炭素数1〜18の、アルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。)
【0068】
第2のジアミンの具体例は、国際公開公報WO2015/199148の20頁〜22頁に記載される第2のジアミン及び式[2−1]〜式[2−15]のジアミンが挙げられる。特に、該公報の2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]、式[2−2]、式[2−3]、式[2−7]、式[2−8]、式[2−11]、式[2−12]又は式[2−15]のジアミンが好ましい。特に好ましくは、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性や光学特性の点から、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]、式[2−2]、式[2−11]又は式[2−12]のジアミンである。
【0069】
第2のジアミンの使用割合は、素子の光学特性及び液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、ジアミン成分に対し10〜70モル%が好ましく、20〜60モル%がより好ましい。また、第2のジアミンは、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0070】
前記のポリイミド系重合体の原料ジアミン成分としては、式[4a]及び式[4b]のジアミン以外のジアミン(その他ジアミンともいう。)を用いることもできる。
具体的には、国際公開公報WO2015/012368の27頁〜30頁に記載されるその他のジアミン化合物、及び該公報の30頁〜32頁に記載される式[DA1]〜式[DA14]が挙げられる。その他ジアミンは、各特性に応じて、1種又は2種以上を使用できる。
前記ポリイミド系重合体の原料テトラカルボン酸成分としては、下記式[5]のテトラカルボン酸二無水物や、その誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド(総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう。)が好ましい。
【0071】
【化32】
式[5]中、Zは下記式[5a]〜式[5l]から選ばれる構造を示す。
【0072】
【化33】
(Z
1〜Z
4はそれぞれ、水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環である。Z
5及びZ
6はそれぞれ、水素原子又はメチル基を示す。)
【0073】
式[5]中、なかでも、Zは、合成の容易さや重合反応性のし易さの点から、式[5a]、式[5c]、式[5d]、式[5e]、式[5f]、式[5g]、式[5k]又は式[5l]が好ましい。より好ましくは、式[5a]、式[5e]、式[5f]、式[5g]、式[5k]又は式[5l]であり、素子における光学特性の点から、式[5a]、式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5l]である。
特定テトラカルボン酸成分の使用割合は、全テトラカルボン酸成分に対して1モル%以上が好ましく、より好ましくは、5モル%以上であり、特に好ましくは、10モル%以上である。最も好ましくは、10〜90モル%である。
【0074】
ポリイミド系重合体には、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を使用できる。その他のテトラカルボン酸成分としては、具体的には、国際公開公報WO2015/012368の34頁〜35頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を使用できる。
【0075】
ポリイミド系重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2015/012368の35頁〜36頁に記載される方法が挙げられる。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
【0076】
上記溶媒の具体例は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン又は下記式[D1]〜式[D3]を用いることができる。
【化34】
(D
1及びD
2はそれぞれ、炭素数1〜3のアルキル基を示す。D
3は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0077】
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記の溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は100%である必要はなく、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性などの点から、30〜80%が好ましく。より好ましくは、40〜70%である。
【0078】
ポリイミド系重合体の分子量は、得られる液晶配向膜の強度、膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量として5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜150,000である。
特定重合体にポリシロキサンを用いる場合、下記式[A1]のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、又は、下記式[A1]のアルコキシシランと、下記式[A2]及び/又は下記式[A3]のアルコキシシランとを重縮合させて得られるポリシロキサン(総称してポリシロキサン系重合体ともいう。)が好ましい。
【0079】
【化35】
(A
1は前記式[4−1a]又は式[4−2a]を示す。A
2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。A
3は炭素数1〜5のアルキル基を示す。mは1又は2の整数を示す。nは0〜2の整数、pは0〜3の整数を示す。ただし、m+n+pは4である。)
【0080】
【化36】
(B
1はビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基及びシンナモイル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する炭素数2〜12の有機基を示す。B
2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。B
3は炭素数1〜5のアルキル基を示す。mは1又は2の整数を示す。nは0〜2の整数を示す。pは0〜3の整数を示す。ただし、m+n+pは4である。)
【0081】
【化37】
(D
1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。D
2は炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【0082】
前記式[A1]中、A
1は高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる点から、式[4−1a]が好ましい。また、前記式[4−1a]におけるX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6及びnの定義及び好ましい組み合わせは、式[4−1a]に記載と同じである。A
2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。A
3は重縮合の反応性の点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。mは合成の容易さの点から、1が好ましい。nは0〜2の整数を示す。pは重縮合の反応性の点から、1〜3の整数が好ましく、より好ましくは2又は3である。m+n+pは4である。
【0083】
式[A1]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846の17頁〜21頁に記載される式[2a−1]〜式[2a−32]のアルコキシシランが挙げられる。なかでも、式[2a−9]〜式[2a−21]、式[2a−25]〜式[2a−28]又は式[2a−32]が好ましい。
【0084】
前記式[A2]中、B
1は入手の容易さの点から、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基又はウレイド基を有する有機基が好ましい。より好ましくは、メタクリル基、アクリル基又はウレイド基を有する有機基である。B
2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。B
3は重縮合の反応性の点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。mは合成の容易さの点からは、1の整数が好ましい。nは0〜2の整数を示す。pは重縮合の反応性の点から、1〜3の整数が好ましく、より好ましくは、2又は3である。m+n+pは4である。
【0085】
前記式[A2]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846の21頁〜24頁に記載される式[2b]のアルコキシシランが挙げられる。なかでも、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0086】
前記式[A3]中、D
1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。D
2は重縮合の反応性から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。nは0〜3の整数を示す。
【0087】
前記式[A3]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846の24頁〜25頁に記載される式[2c]が挙げられる。
また、前記式[A3]中、nが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランが挙げられ、前記式[A1]〜[A3]のアルコキシシランは、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0088】
ポリシロキサン系重合体は、なかでも、重縮合の反応性やポリシロキサン系重合体の溶媒への溶解性の点から、複数種のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンが好ましい。即ち、式[A1]と式[A2]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、式[A1]と式[A3]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、並びに式[A1]、式[A2]及び式[A3]の3種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンのうちのいずれか1種を用いることが好ましい。
【0089】
ポリシロキサン系重合体を製造する際に複数種のアルコキシランを用いる場合、式[A1]のアルコキシシランの使用割合は、全アルコキシシラン中、1〜40モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましい。また、式[A2]のアルコキシシランの使用割合は、全てのアルコキシシラン中、1〜70モル%が好ましく、1〜60モル%がより好ましい。更に、式[A3]のアルコキシシランの使用割合は、全アルコキシシラン中、1〜99モル%が好ましくは、1〜80モル%がより好ましい。
【0090】
ポリシロキサン系重合体を重縮合する方法は特に限定されない。具体的には、国際公開公報WO2015/008846の26頁〜29頁に記載される方法が挙げられる。
ポリシロキサン系重合体を作製する重縮合反応において、前記式[A1]、前記式[A2]又は前記式[A3]のアルコキシシランを複種用いる場合は、複数種のアルコキシシランを予め混合した混合物を用いて反応しても、複数種のアルコキシシランを順次添加しながら反応してもよい。
【0091】
本発明においては、前記方法で得られたポリシロキサン系重合体の溶液をそのまま特定重合体として用いてもよいし、必要に応じて、前記の方法で得られたポリシロキサン系重合体の溶液を濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり、他の溶媒に置換して、特定重合体として用いてもよい。
希釈する際に用いる溶媒(添加溶媒ともいう。)は、重縮合反応に用いる溶媒やその他の溶媒であってもよい。添加溶媒は、ポリシロキサン系重合体が均一に溶解している限りにおいては特に限定されず、1種又は2種以上を任意に選択できる。 添加溶媒としては、前記重縮合反応に用いる溶媒に加え、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒が挙げられる。
更に、特定重合体にポリシロキサン系重合体とそれ以外の重合体を用いる場合、ポリシロキサン系重合体にそれ以外の重合体を混合する前に、ポリシロキサン系重合体の重縮合反応の際に発生するアルコールを常圧又は減圧で留去しておくことが好ましい。
【0092】
本発明における液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための溶液であり、前記の特定側鎖構造を有する特定重合体及び溶媒を含有する溶液である。
特定側鎖構造を有する特定重合体としては、特に限定は無いが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。なかでも、ポリイミド前駆体、ポリイミド又はポリシロキサンが好ましい。また、特定重合体には、これら重合体のなかの1種、あるいは2種以上を用いることができる。
【0093】
液晶配向処理剤における全ての重合体成分は、全てが特定重合体であってもよく、それ以外の重合体が混合されていてもよい。その際、それ以外の重合体の含有量は、特定重合体100質量部に対して、0.5〜15質量部、好ましくは、1〜10質量部である。それ以外の重合体としては、前記式[4−1a]又は式[4−2a]の特定側鎖構造を持たない前記の重合体が挙げられる。
液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択することができる。なかでも、塗布により均一な垂直液晶配向膜を形成するとい観点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は50〜99.9質量%が好ましく、60〜99質量%が好ましく、特に好ましくは、65〜99質量%である。
【0094】
液晶配向処理剤に用いる溶媒は、特定重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、特定重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルの場合、あるいは、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンの溶媒への溶解性が低い場合は、下記に示すような溶媒(溶媒A類ともいう。)が好ましい。
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどである。なかでも、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン又はγ−ブチロラクトンを用いることが好ましい。また、これらは単独でも、混合して使用してもよい。
【0095】
特定重合体が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンである場合、更には、特定重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルであり、これらの特定重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、下記に示すような溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
【0096】
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の58頁〜60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。特に、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は前記式[D1]〜式[D3]の溶媒を用いることが好ましい。
また、溶媒B類を用いる際、液晶配向処理剤の塗布性を改善する目的で、前記溶媒A類である、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン又はγ−ブチロラクトン、特にγ−ブチロラクトンを併用することが好ましい。
【0097】
これらの溶媒B類は、液晶配向処理剤を塗布する際の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、特定重合体にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルを用いた場合、前記溶媒A類と併用すすることが好ましい。溶媒B類は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1〜99質量%が好ましく、10〜99質量%がより好ましく、20〜95質量%が特に好ましい。
【0098】
液晶配向処理剤には、液晶表示素子の光学特性の点から、下記式[b−1]〜式[b−11]からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物(特定化合物(A)ともいう。)を含有することが好ましい。
【化38】
(B
aは水素原子又はベンゼン環を示す。B
b〜B
dは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0099】
具体的な特定化合物(A)としては、下記式[b−1a]〜式[b−24a]の化合物が挙げられ、これらが好ましい。
【化39】
(k
1は1〜12の整数、素子の光学特性の点から、1〜8が好ましい。k
2は0〜4の整数、素子の光学特性の点から、1又は2が好ましい。K
aは単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。特に、原料の入手性や合成の容易さの点から、−O−又は−COO−が好ましい。K
bは炭素数1〜18の、アルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。なかでも、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0100】
【化40】
(k
3は1〜12の整数、特に素子の光学特性の点から、1〜8が好ましい。K
cは単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。特に、原料の入手性や合成の容易さの点から、−COO−又は−OCO−が好ましい。K
dは単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。特に、原料の入手性や合成の容易さの点から、−O−又は−COO−が好ましい。K
eは炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。特に、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0101】
【化41】
(k
4は0〜4の整数、液晶表示素子の光学特性の点から、1又は2が好ましい。K
fは炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。特に、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0102】
【化42】
(k
5は1〜12の整数、素子の光学特性の点から、1〜8が好ましい。k
6は0〜4の整数、素子の光学特性の点から、1又は2が好ましい。K
gは炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。特に、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0103】
【化43】
(K
hは単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、−COO−又は−OCO−が好ましい。K
iは炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。なかでも、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0104】
【化44】
(k
7は1〜12の整数、素子の光学特性の点から、1〜8が好ましい。K
jは単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、−COO−又は−OCO−が好ましい。K
kは炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。なかでも、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基である。)
【0105】
なかでも、前記式[b−1a]、式[b−2a]、式[b−7a]、式[b−8a]、式[b−10a]、式[b−11a]、式[b−13a]、式[b−14a]、式[b−16a]又は式[b−17a]がより好ましい。
【0106】
液晶配向処理剤における特定化合物(A)の使用割合は、素子の光学特性の点から、特定重合体100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜20質量部であり、特に好ましくは、1〜10質量部である。特定化合物(A)は、各特性に応じて、1種又は2種以上使用できる。
【0107】
液晶配向処理剤には、液晶配向膜の強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、若しくはシクロカーボネート基を有する化合物、又は、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物(総称して特定架橋性化合物ともいう。)を含有することが好ましい。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の63頁〜64頁に記載されるものが挙げられる。
【0108】
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751の58頁〜59頁に掲載される式[4a]〜式[4k]が挙げられる。
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898の76頁〜82頁に掲載の式[5−1]〜式[5−42]が挙げられる。
ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493の65頁〜66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751の62頁〜66頁に掲載される式[6−1]〜式[6−48]が挙げられる。
【0109】
液晶配向処理剤における特定架橋性化合物の含有量は、全重合体成分100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましい。架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるためには、全重合体成分100質量部に対して0.1〜50質量部がより好ましく、特に、1〜30質量部が最も好ましい。
液晶配向処理剤は、光ラジカル発生剤、光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の発生剤(特定発生剤ともいう。)を含有することが好ましい。
【0110】
特定発生剤の具体例は、国際公開公報2014/171493の54頁〜56頁に記載される特定発生剤が挙げられる。なかでも、特定発生剤には、液晶層と液晶配向膜との密着性の点から、光ラジカル発生剤が好ましい。
液晶配向処理剤は、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性を高める目的で、下記式[e−1]〜式[e−8]からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する化合物(特定密着性化合物ともいう。)を含有することが好ましい。
【0111】
【化45】
(E
1は水素原子又はベンゼン環を示す。E
2はベンゼン環、シクロへキサン環又は複素環からなる環状基を示す。E
3は炭素数1〜18のアルキル基、フッ素含有アルキル基、アルコキシ基又はフッ素含有アルコキシ基を示す。)
【0112】
特定密着性化合物の具体例は、国際公開公報WO2015/012368の43頁〜46頁に記載の式[6]が挙げられる。更に、国際公開公報WO2014/171493の61頁〜63頁に記載される密着性化合物が挙げられる。
液晶配向処理剤における特定密着性化合物の含有量は、全重合体成分100質量部に対して、0.1〜150質量部が好ましく、架橋反応の進行、目的効果を発現のために、1〜100質量部がより好ましく、1〜50質量部が最も好ましい。特定密着性化合物は、各特性に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0113】
液晶配向処理剤には、液晶配向膜中の電荷移動を促進し、素子の電荷抜けを促進させるため、国際公開公報WO2011/132751の69頁〜73頁に掲載される、式[M1]〜式[M156]の窒素含有複素環アミン化合物を添加できる。このアミン化合物は、液晶配向処理剤に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度0.1〜10質量%、好ましくは1〜7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、特定重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。
【0114】
液晶配向処理剤には、塗布膜の厚みの均一性や表面平滑性を向上させる化合物を添加できる。更に、液晶配向膜と基板との密着性や表面平滑性を向上させる化合物なども添加できる。このための化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493の67頁に記載されるものが挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有される全重合体成分100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、より好ましくは、0.01〜1質量部である。
【0115】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の67頁〜69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有される全重合体成分100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、より好ましくは、1〜20質量部である。
液晶配向処理剤には、前記以外の化合物の他に、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0116】
<液晶配向膜及び液晶表示素子の作製方法>
液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板、更には、それらのフィルムを用いることができる。液晶表示素子をリバース型素子として、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板やフィルムであることが好ましい。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極、有機導電膜などが形成された基板が好ましい。また、反射型のリバース型素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
【0117】
液晶表示素子は、基板の少なくとも一方が、液晶分子を垂直に配向させる液晶配向膜を有するのが好ましい。この液晶配向膜は、液晶配向処理剤を基板上に塗布し、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして得ることができる。ただし、本発明における液晶配向膜の場合は、これら配向処理無しでも液晶配向膜として用いることもできる。
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や液晶配向膜の膜厚に応じて、適宜選択できる。
【0118】
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、基板の種類や用いる溶媒に応じて、30〜300℃、好ましくは30〜250℃で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。特に、基板にプラスチック基板を用いる場合には、30〜150℃で処理することが好ましい。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると消費電力の面で不利となり、薄すぎると素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは10〜300nmであり、特に好ましくは10〜250nmである。
【0119】
液晶表示素子に用いる液晶組成物のなかに、液晶表示素子の電極間隙(ギャップ)を制御するためのスペーサーを含有せしめることもできる。
液晶組成物の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、基板にガラス基板を用いる場合、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、液晶配向膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から、液晶組成物を減圧注入して、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。更に、基板にプラスチック基板やフィルムを用いる場合には、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶組成物を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。本発明の液晶表示素子では、液晶層と液晶配向膜との密着性が高いため、基板の4片にシール剤を塗布しなくてもよい。
【0120】
液晶表示素子のギャップは、前記のスペーサーなどで制御できる。その方法は、液晶組成物中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板を用いる方法などが挙げられる。また、基板にプラスチックやフィルム基板を用いて、基板の貼り合わせをラミネートで行う場合は、スペーサーを導入せずに、ギャップを制御することができる。
液晶表示素子のギャップの大きさは、1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmであり、特に好ましくは2〜30μmである。ギャップが小さすぎると、素子のコントラストが低下し、大きすぎると、素子の駆動電圧が高くなる。
【0121】
本発明の液晶表示素子は、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で、液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物複合体を形成させて得られる。液晶組成物の硬化は、前記の液晶組成物注入セルに、紫外線を照射して行う。その際に用いる紫外線照射装置の光源としては、例えば、メタルハライドランプ又は高圧水銀ランプが挙げられる。また、紫外線の波長は、250〜400nmが好ましい。なかでも、310〜370nmが好ましい。また、紫外線を照射した後に、加熱処理を行ってもよい。その際の温度は、好ましくは40〜120℃、より好ましくは40〜80℃である。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下で用いる略号の意味は次のとおりである。
<特定化合物(1)>
【化46】
<特定化合物(2)>
【化47】
【0123】
<特定化合物(3)>
【化48】
<液晶>
L1:MLC−6608(メルク社製)
【0124】
<重合性化合物>
【化49】
<ラジカル開始剤>
【化50】
【0125】
<特定側鎖型ジアミン>
【化51】
【0126】
<第2のジアミン>
【化52】
<その他のジアミン>
【化53】
【0127】
<特定テトラカルボン酸成分>
【化54】
<ポリシロキサン系重合体を作製するためのモノマー>
E1:下記式[E1]のアルコキシシランモノマー、E2:オクタデシルトリエトキシシラン、E3:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、E4:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、E5:テトラエトキシシラン
【0128】
【化55】
<特定化合物(A)>
【化56】
<特定架橋性化合物>
【化57】
【0129】
<特定発生剤>
【化58】
<特定密着性化合物>
【化59】
【0130】
<溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン、γ−BL:γ−ブチロラクトン、BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル、PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル、PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル、ECS:エチレングリコールモノエチルエーテル、EC:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
【0131】
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)(昭和電工社製)、カラム(KD−803,KD−805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤:臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O):30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸):30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF):10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0132】
「ポリイミド系重合体のイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
【0133】
<合成例1>
D2(3.83g,15.3mmol)、A1(5.90g,15.5mmol)及びC1(2.51g,23.2mmol)をNMP(33.5g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(4.50g,22.9mmol)とNMP(16.7g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%(以下、C
R25%という)のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量(Mn)は18,300、重量平均分子量(Mw)は61,300であった。
【0134】
<合成例2>
上記ポリアミド酸溶液(1)(30.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.85g)及びピリジン(2.35g)を加え、60℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(450ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(2)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、Mnは15,700、Mwは43,200であった。
【0135】
<合成例3>
D2(1.53g,6.12mmol)、A1(2.36g,6.20mmol)、B2(2.05g,7.76mmol)及びC1(0.17g,1.57mmol)をNMP(15.8g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(1.80g,9.18mmol)とNMP(7.90g)を加え、40℃で6時間反応させ、C
R25%のポリアミド酸溶液(3)を得た。このポリアミド酸のMnは16,100、Mwは57,300であった。
【0136】
<合成例4>
D4(1.01g,5.10mmol)、A2(2.04g,5.17mmol)、B1(0.20g,1.31mmol)及びB2(1.71g,6.47mmol)をγ−BL(17.2g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(1.50g,7.65mmol)とγ−BL(8.60g)を加え、40℃で6時間反応させ、C
R20%のポリアミド酸溶液(4)を得た。このポリアミド酸のMnは13,100、Mwは44,500であった。
【0137】
<合成例5>
D4(0.51g,2.57mmol)、A3(1.68g,3.88mmol)、B1(0.79g,5.19mmol)及びB3(1.37g,3.87mmol)をγ−BL(16.9g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(2.00g,10.2mmol)とγ−BL(8.45g)を加え、40℃で6時間反応させ、C
R20%のポリアミド酸溶液(5)を得た。このポリアミド酸のMnは11,600、Mwは39,800であった。
【0138】
<合成例6>
D3(3.50g,15.6mmol)、A2(2.50g,6.34mmol)、B1(0.96g,6.31mmol)及びB2(0.84g,3.18mmol)をNMP(23.4g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、C
R25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)にNMPを加え、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.80g)及びピリジン(2.50g)を加え、60℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(450ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(6)を得た。このポリイミドのイミド化率は58%であり、Mnは17,200、Mwは47,500であった。
【0139】
<合成例7>
D3(2.00g,8.92mmol)、A4(1.34g,2.72mmol)、B1(0.28g,1.84mmol)及びB2(1.19g,4.50mmol)をγ−BL(27.2g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、C
R15%のポリアミド酸溶液(7)を得た。このポリアミド酸のMnは10,500、Mwは37,500であった。
【0140】
<合成例8>
D2(1.87g,7.47mmol)、A5(2.85g,7.57mmol)及びC1(1.23g,11.4mmol)をNMP(16.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(2.20g,11.2mmol)とNMP(8.15g)を加え、40℃で6時間反応させ、C
R25%のポリアミド酸溶液(8)を得た。このポリアミド酸のMnは17,500、Mwは60,200であった。
【0141】
<合成例9>
D2(2.38g,9.51mmol)及びC1(2.61g,24.1mmol)をNMP(15.6g)中で混合し、40℃で2時間反応させた後、D1(2.80g,14.3mmol)とNMP(7.80g)を加え、25℃で6時間反応させ、C
R25%のポリアミド酸溶液(9)を得た。このポリアミド酸のMnは25,800、Mwは73,500であった。
合成例1〜9で得られたポリイミド系重合体を表1に示す。表1中、*1はポリアミド酸を表す。
【0142】
【表1】
【0143】
「ポリシロキサン系重合体の合成」
<合成例10>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、ECS(28.3g)、E1(4.10g)、E3(7.45g)及びE5(32.5g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めECS(14.2g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.70g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱し、30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量が92質量%のメタノール溶液(1.20g)とECS(0.90g)の混合溶液を加えた。更に30分間還流させた後、放冷してSiO
2換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(1)を得た。
【0144】
<合成例11>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、EC(29.2g)、E1(4.10g)及びE5(38.8g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めEC(14.6g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.50g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱し、30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量92質量%のメタノール溶液(1.20g)とEC(0.90g)の混合溶液を加えた。更に30分間還流させた後、放冷してSiO
2換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(2)を得た。
【0145】
<合成例12>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、ECS(28.3g)、E2(4.07g)、E3(7.45g)及びE5(32.5g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めECS(14.2g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.70g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱し、30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量が92質量%のメタノール溶液(1.20g)とECS(0.90g)の混合溶液を加えた。更に30分間還流させた後、放冷してSiO
2換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(3)を得た。
合成例10〜12で得られたポリシロキサン系重合体を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
「液晶配向処理剤」
<合成例13>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、NMP(25.5g)を加え、25℃で1時間撹拌した。その後、BCS(27.0g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(1)を得た。
<合成例14>
合成例2で得られたポリイミド粉末(2)(2.55g)に、NMP(36.7g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、PB(24.5g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(2)を得た。
【0148】
<合成例15>
合成例3で得られたポリアミド酸溶液(3)(10.5g)に、NMP(26.8g)を加え、25℃で1時間撹拌した。その後、BCS(28.4g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。
<合成例16>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ−BL(1.70g)及びPGME(55.0g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(4)を得た。
【0149】
<合成例17>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ−BL(1.70g)及びPGME(55.0g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、Q1(0.14g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(5)を得た。
<合成例18>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ−BL(1.70g)及びPGME(55.0g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、K1(0.14g)を加え25℃で4時間撹拌して液晶配向処理剤(6)を得た。
【0150】
<合成例19>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ−BL(1.70g)及びPGME(55.0g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、Q1(0.14g)及びK1(0.14g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(7)を得た。
<合成例20>
合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、γ−BL(4.93g)、PB(6.47g)及びPGME(45.3g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、Q1(0.14g)、K2(0.06g)及びN1(0.04g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。
【0151】
<合成例21>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(2.50g)に、NMP(33.0g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、Q1(0.25g)、K1(0.125g)、M1(0.075g)及びPB(27.0g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(9)を得た。
<合成例22>
合成例7で得られたポリアミド酸溶液(7)(15.0g)に、γ−BL(9.08g)及びPGME(50.9g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、Q1(0.113g)、K2(0.158g)、N1(0.045g)及びM2(0.113g)を加え、25℃で4時間撹拌して液晶配向処理剤(10)を得た。
【0152】
<合成例23>
合成例8で得られたポリアミド酸溶液(8)(10.0g)に、NMP(25.5g)を加え、25℃で1時間撹拌した。その後、BCS(27.0g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(11)を得た。
<合成例24>
合成例9で得られたポリアミド酸溶液(9)(10.0g)に、NMP(25.5g)を加え、25℃で1時間撹拌した。その後、BCS(27.0g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(12)を得た。
【0153】
<合成例25>
合成例10で得られたポリシロキサン溶液(1)(10.0g)に、ECS(17.7g)及びPGME(6.62g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(13)を得た。
<合成例26>
合成例11で得られたポリシロキサン溶液(2)(10.0g)に、EC(1.13g)、PB(13.2g)及びPGME(9.93g)を加え、25℃で2時間撹拌した。その後、Q1(0.06g)を加え、25℃で4時間撹拌して、液晶配向処理剤(14)を得た。
<合成例27>
合成例12で得られたポリシロキサン溶液(3)(10.0g)に、ECS(17.7g)及びPGME(6.62g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(15)を得た。
【0154】
合成例13〜27の各液晶配向処理剤の組成を表3及び4にまとめて示す。これらの各液晶配向処理剤は、いずれも、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
なお、表3及び4において、液晶配向処理剤に添加される、特定化合物(A)、特定架橋性化合物、特定発生剤、及び特定密着性化合物についての括弧内の数値は、それぞれの特定重合体100質量部に対する含有量(質量部)を示す。また、表中の「−」は、未使用であることを示す。
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
「液晶組成物の作製」
<液晶組成物(1)>
L1(3.04g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)、T1(0.202g)、S1(0.202g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(1)を得た。
<液晶組成物(2)>
L1(3.24g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)、T2(0.202g)、S1(0.403g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(2)を得た。
【0158】
<液晶組成物(3)>
L1(3.24g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)、T1(0.202g)、S1(0.202g)及びW1(0.202g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(3)を得た。
【0159】
<液晶組成物(4)>
L1(3.45g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)、T1(0.202g)、S1(0.403g)及びW1(0.202g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(4)を得た。
<液晶組成物(5)>
L1(2.64g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)及びP1(0.012g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(5)を得た。
【0160】
<液晶組成物(6)>
L1(2.84g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)及びT1(0.202g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(6)を得た。
<液晶組成物(7)>
L1(2.84g)、R1(1.20g)、R2(1.20g)、P1(0.012g)及びS1(0.202g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(7)を得た。
【0161】
「液晶表示素子の作製及び液晶配向性の評価(ガラス基板)」
前記合成例で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄したITO電極付きガラス基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて210℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。得られた液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の液晶配向膜面に、粒径が6μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した液晶配向膜面に、ODF(One Drop Filling)法にて前記の液晶組成物を滴下し、次いで、他方の基板の液晶配向膜界面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。
【0162】
この処理前の液晶表示素子に、照度20mW/cm
2のメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、照射時間30秒で紫外線照射を行った。その際、液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は25℃に制御した。これにより、液晶表示素子(リバース型素子)(ガラス基板)を得た。
この液晶表示素子を用いて、液晶配向性の評価を行った。液晶配向性は、素子を偏光顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE E600WPOL)で観察し、液晶が垂直に配向しているかどうかを確認した。その結果、実施例及び比較例2〜4の液晶表示素子では、液晶は垂直に配向していた。しかし、比較例1の液晶表示素子では、液晶が垂直に配向していなかった。
【0163】
「液晶表示素子の作製及び液晶配向性の評価(プラスチック基板)」
前記合成例で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水で洗浄したITO電極付きPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:0.2mm)のITO面上にバーコーターにて塗布をし、熱循環型クリーンオーブンにて120℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。得られた液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の液晶配向膜面に、6μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した液晶配向膜面に、ODF法にて前記の液晶組成物を滴下し、次いで、他方の基板の液晶配向膜界面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。
【0164】
この処理前の液晶表示素子に、照度20mW/cm
2のメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、照射時間30秒で紫外線照射を行った。その際、液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は25℃に制御した。これにより、液晶表示素子(リバース型素子)(プラスチック基板)を得た。
この液晶表示素子を用いて、液晶配向性の評価を行った。液晶配向性は、素子を偏光顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE E600WPOL)で観察し、液晶が垂直に配向しているかどうかを確認した。その結果、実施例の液晶表示素子では、液晶は垂直に配向していた。
【0165】
「光学特性(透明性と散乱特性)の評価」
電圧無印加時の透明性の評価は、電圧無印加状態での液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の透過率を測定することで行った。具体的には、測定装置にUV−3600(島津製作所社製)を用い、温度25℃、スキャン波長を300〜800nmの条件で、透過率を測定した。その際、液晶表示素子(ガラス基板)の場合は、リファレンス(参照例)に上記ITO電極付きガラス基板を、液晶表示素子(プラスチック基板)の場合は、上記のITO電極付きPET基板を用いて行った。評価は、450nmの波長の透過率を基準として、透過率が高いものほど、透明性に優れるとした。
【0166】
また、液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に36時間保管した後の透過率の評価も行った。具体的には、液晶表示素子作製直後の透過率(初期値)に対して、恒温恒湿槽に保管後の透過率の低下割合が低いものほど、本評価に優れるとした。その際、実施例1、3〜9、13、14、17においては、前記の標準試験に加え、強調試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に72時間保管した後の透過率の評価も行った。評価方法は、前記と同様の条件である。
更に、液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として、卓上型UV硬化装置(センライト社製、HCT3B28HEX−1)を用いて、365nm換算で5J/cm
2の紫外線を照射した後の透過率の評価も行った。具体的には、液晶表示素子作製直後の透過率(初期値)に対して、紫外線照射後の透過率の低下割合が低いものほど、本評価に優れるとした。
【0167】
電圧印加時の散乱特性の評価は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)に、交流駆動で30Vを印加し、液晶の配向状態を目視観察することで行った。具体的には、液晶表示素子が白濁したもの、即ち、散乱特性が得られたものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
また、液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に36時間保管した後の液晶の配向状態の確認も行った。具体的には、液晶表示素子が白濁したもの、即ち、散乱特性が得られたものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
【0168】
更に、液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として、卓上型UV硬化装置(センライト社製、HCT3B28HEX−1)を用いて、365nm換算で5J/cm
2の紫外線を照射した後の液晶の配向状態の確認も行った。具体的には、液晶表示素子が白濁したもの、即ち、散乱特性が得られたものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
液晶表示素子作製直後(初期)、恒温恒湿槽保管後(恒温恒湿)及び紫外線照射後(紫外線)の透過率(%)、及び散乱特性の評価結果を表5〜7にまとめて示す。
【0169】
「液晶層と液晶配向膜との密着性の評価」
この評価は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に36時間保管し、液晶表示素子内の気泡の有無及び素子の剥離を確認することで行った(液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として)。具体的には、素子内に気泡が見られずに素子の剥離(液晶層と液晶配向膜とが剥がれている状態)が起こっていないものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
【0170】
実施例1、3〜9、13、14、17においては、前記の標準試験に加え、強調試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に72時間保管した後の密着性の評価も行った。なお、評価方法は、前記と同様の条件である。
また、液晶表示素子に、卓上型UV硬化装置(センライト社製、HCT3B28HEX−1)を用いて、365nm換算で5J/cm
2の紫外線を照射した後の、液晶表示素子内の気泡の有無及び素子の剥離も確認した(液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として)。具体的には、素子内に気泡が見られずに素子の剥離が起こっていないものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
恒温恒湿槽保管後(恒温恒湿)及び紫外線照射後(紫外線)の液晶層と液晶配向膜との密着性の結果(密着性)を、表8〜10にまとめて示す。
【0171】
<実施例1〜17、及び比較例1〜7>
下記の表5〜10に示されるように、液晶配向処理剤(1)〜(15)のいずれかと、前記液晶組成物(1)〜(7)のいずれかを用いて、前記の光学特性(透明性と散乱特性)の評価、及び液晶層と液晶配向膜との密着性の評価を行った。
なお、実施例1〜3、11、13、16、及び比較例1〜4は、ガラス基板で液晶表示素子を作製して各評価を行い、実施例4〜10、12、14、15、17、及び比較例5〜7は、プラスチック基板で液晶表示素子を作製して各評価を行った。これらの評価の結果を、表5〜10にまとめて示した。
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
【表9】
【0177】
【表10】
*1:液晶が垂直に配向していなかったため、評価ができなかった。*2:素子内に極少量の気泡が見られた。*3:素子内に少量の気泡が見られた(*2よりも多い)。*4:素子内に気泡が見られた(*3よりも多い)。*5:素子内に多くの気泡が見られた(*4よりも多い)。
【0178】
上記からわかるように、実施例の液晶表示素子は、比較例に比べて、良好な光学特性、即ち、高温槽保管後の液晶配向性と電圧無印加時の透明性が良好な液晶表示素子となった。更には、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性も高かった。特に、液晶表示素子の基板にプラスチック基板を用いてもこれら特性は良好であった。
また、実施例の液晶表示素子は、比較例に比べて、良好な光学特性、即ち、初期、恒温恒湿槽保管後、及び紫外線照射後における電圧無印加時の透明性が良好で、液晶層と液晶配向膜の密着性も高かった。特に、液晶表示素子の基板に、プラスチック基板を用いた場合も、これらの特性は良好であった。
【0179】
特に、液晶組成物中に、特定化合物(1)及び(2)を含有する実施例は、それらを導入していない比較例又はどちらか一方のみを導入した比較例に比べて、初期及び前記過酷条件における光学特性及び液晶と液晶配向膜の密着性が高くなった。具体的には、同一の条件での、実施例1と比較例2、3又は4との比較、及び実施例5と比較例5、6又は7との比較である。
また、特定側鎖構造を有するジアミンを用いていない比較例は、液晶が垂直に配向しなかった。具体的には、比較例1である。
【0180】
液晶組成物中に、特定化合物(1)及び(2)とともに、特定化合物(3)を導入した場合、光学特性、特に透明性が高くなった。具体的には、同一の条件での、実施例7と8との比較である。
液晶配向処理剤の特定重合体における特定側鎖構造のなかで、式[4−1a]の特定側鎖構造を有するジアミンを用いた場合、式[4−2a]を有するジアミンを用いた場合に比べて、光学特性、特に透明性が高くなった。更に、強調試験として行った、長時間、恒温恒湿槽に保管した後においても透明性が高い結果となった。
また、液晶層と液晶配向膜との密着性の評価においても、式[4−1a]のジアミンを用いた場合は、強調試験として行った、長時間、恒温恒湿槽に保管した後においても、密着性が高い結果となった。具体的には、同一の条件での実施例1と13との比較、及び実施例14と17との比較である。
【0181】
液晶配向処理剤の特定重合体に、第2のジアミンを用いた場合は、特に、過酷条件下における液晶層と液晶配向膜との密着性が高くなった。具体的には、実施例1と3との比較である。
液晶配向剤に特定化合物(A)を含有せしめた場合、光学特性、特に透明性が高くなった。具体的には、同一の条件での、実施例4と5との比較である。
液晶配向剤に、特定架橋性化合物を導入した場合は、特に、過酷条件下における液晶層と液晶配向膜との密着性が高くなった。具体的には、実施例4と6との比較である。