(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面に形成された前記評価対象パターンは、薄膜形成装置による薄膜の形成、露光装置による露光、及びエッチング装置によるエッチングを含むリソグラフィ工程を経て形成され、
前記第1加工条件及び前記第2加工条件は、前記薄膜形成装置による前記薄膜の成膜条件、前記露光装置における露光量及びフォーカス状態、並びに前記エッチング装置におけるエッチング条件のうちの2つの条件である請求項2に記載の評価方法。
既知の前記加工条件でパターンが表面に形成された基板を偏光光で照明して、該基板の表面から射出した回折光から検出した該回折光の偏光の状態を規定する量に基づいて前記参照データを求めることを含む請求項4又は5に記載の評価方法。
前記表面に形成された前記評価対象パターンは、薄膜形成装置による薄膜の形成、露光装置による露光、及びエッチング装置によるエッチングを含むリソグラフィ工程を経て形成され、
前記第1加工条件及び前記第2加工条件は、前記薄膜形成装置による前記薄膜の成膜条件、前記露光装置における露光量及びフォーカス状態、並びに前記エッチング装置におけるエッチング条件のうちの2つの条件である請求項12に記載の評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の好ましい第1の実施形態につき
図1(a)〜
図10(b)を参照して説明する。
図1(a)は本実施形態に係る評価装置1を示し、
図1(b)は本実施形態に係るデバイス製造システムDMSを示す。
図1(b)において、デバイス製造システムDMSは、基板としてのウェハ(半導体ウェハ)の表面(以下、ウェハ面と称する)に薄膜を形成する薄膜形成装置(不図示)、感光性樹脂としてのレジストのウェハ面に対する塗布及び現像を行うコータ・デベロッパ200、レジストが塗布されたウェハ面に半導体デバイス等の回路パターンの像を露光する露光装置100、現像後のレジストパターンをマスクとしてウェハのエッチングを行うエッチング装置300、並びに露光及び現像後(又はさらにエッチング等の後)にウェハ面に形成されるパターンを用いて、このパターンの加工条件を評価する評価装置1を備えている。さらに、デバイス製造システムDMSは、評価装置1、露光装置100、コータ・デベロッパ200、及びエッチング装置300等の統括的な制御、工程管理、及びそれらの装置間の各種情報の仲介等を行うホストコンピュータ600、及び評価装置1〜エッチング装置300等の間でウェハを搬送する搬送系500を備えている。
【0012】
露光装置100としては、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書等に開示されている液浸型のスキャニングステッパー(走査型の投影露光装置)が使用される。評価装置1が評価可能な加工条件としては、薄膜形成装置及びコータ・デベロッパ200における膜厚条件(膜厚の設定値等)、露光装置100における後述の露光条件、並びにエッチング装置300におけるエッチング条件(エッチング時間等)等がある。
【0013】
図1(a)において、評価装置1は、略円板形のウェハ10を支持するステージ5を備え、不図示の搬送系によって搬送されてくるウェハ10は、ステージ5の上面(載置面)に載置され、例えば真空吸着によって固定保持される。以下、傾斜していない状態のステージ5の上面に平行な面において、
図1(a)の紙面に平行な方向に沿った軸をXE軸、
図1(a)の紙面に垂直な方向に沿った軸をYE軸として、XE軸及びYE軸を含む面に垂直な方向に沿った軸をZE軸として説明する。ステージ5は、ステージ5の上面の中心における法線CAを回転軸とする回転角度φ1を制御する第1駆動部(不図示)と、例えばステージ5の上面の中心を通り、
図1(a)の紙面に垂直な(YE軸と平行な)軸TA(チルト軸)を回転軸とする傾斜角であるチルト角φ2(ウェハ10のチルト角)を制御する第2駆動部(不図示)とを介してベース部材(不図示)に支持されている。
【0014】
評価装置1はさらに、ステージ5に支持された、表面に所定の繰り返しパターンが形成されたウェハ10の表面(ウェハ面)に照明光ILIを平行光として照射する照明系20と、照明光ILIの照射を受けてウェハ面から射出する光(回折光等)を集光する受光系30と、受光系30により集光された光を受けてウェハ面の像を撮像する撮像装置35と、撮像装置35から出力される画像信号を処理して、その像を形成する光の偏光の状態を規定する量(詳細後述)を求める画像処理部40と、そのように求められた偏光の状態を規定する量の情報を用いて上述の加工条件の評価を行う演算部50と、を備えている。撮像装置35は、ウェハ面の像を形成する結像光学系35aと、例えばCCDやCMOS等の2次元の撮像素子35bとを有し、撮像素子35bは一例としてウェハ10におけるウェハ面の全面の像を一括して撮像して画像信号を出力する。なお、撮像素子35bは、ウェハ面の全面の像を一括して撮像しなくてもよく、ウェハ面において、パターンが形成された全ての領域を含む面を一括して撮像して画像信号を出力してもよい。また、被検パターンがウェハ10におけるウェハ面の全面の一部の領域にのみ形成されている場合には、撮像素子35bはその一部の領域の像のみを撮像してもよい。
【0015】
また、ウェハ面には、
図2(a)に示すように、露光装置100の露光によって、マスクのパターンを単位とする露光領域が所定の間隔で形成される。以下、この露光領域をショット11と称する。ショット11には、マスクのパターンが1つだけ露光されたものがある一方、マスクのパターンが、複数、繋ぎ合わされて露光されたものもある。また、ショット11の内で、露光工程を経て最終的に単独のデバイスとなる領域を、以下では、チップと称する。チップは、ショット11内に複数存在することもあれば、1つのショット11が1つのチップとなる場合もある。
【0016】
図1(a)において、画像処理部40は、撮像装置35から入力されたウェハ10の画像信号に基づいてウェハ10のデジタル画像(画素毎の信号強度、ショット毎に平均化された信号強度、又はショットより小さい領域毎に平均化された信号強度等)の情報を生成し、この情報に基づいて得られる偏光の状態を規定する量としての後述のストークスパラメータを演算部50に出力する。なお、画像処理部40は、単にデジタル画像の情報(画素毎の信号強度分布の情報等)を演算部50に出力することもできるように構成されている。また、演算部50は、そのストークスパラメータ等の情報を処理する演算部60a,60b,60cを含む検査部60と、画像処理部40及び検査部60の動作等を制御する制御部80と、画像に関する情報等を記憶する記憶部85と、得られる加工条件の評価結果をそれぞれ
図1(b)のホストコンピュータ600を介してコータ・デベロッパ200の制御部(不図示)、露光装置100の制御部(不図示)、及びエッチング装置300の制御部(不図示)に出力する信号出力部90とを備えている。なお、信号出力部90は、ホストコンピュータ600を介さず、コータ・デベロッパ200、露光装置100、及びエッチング装置300へ直接的に評価結果を出力してもよい。また、信号出力部90は、コータ・デベロッパ200、露光装置100、及びエッチング装置300の一部の装置のみに評価結果を出力可能としてもよい。なお、
図1(a)には、説明の便宜上、露光装置100のみを図示している。また、画像処理部40及び演算部50を全体としてコンピュータより構成し、画像処理部40、検査部60、及び制御部80等をコンピュータのソフトウェア上の機能としてもよい。
【0017】
評価装置1において、照明系20は、照明光を射出する照明ユニット21と、照明ユニット21から射出された照明光をウェハ面に向けて平行光として反射する照明側凹面鏡25とを有する。照明ユニット21は、メタルハライドランプ又は水銀ランプ等の光源部22と、制御部80の指令により光源部22からの光のうち所定の波長(例えば、相異なる波長λ1、λ2、λ3等)の光を選択し、その強度を調節する調光部23と、調光部23で選択され強度が調節された光を所定の射出面から照明側凹面鏡25へ射出する導光ファイバ24と、導光ファイバ24の射出面から射出される照明光を直線偏光にする偏光子26(照明側偏光フィルタ)と、を有する。偏光子26は、例えば、透過軸を有する偏光板である。偏光子26は、導光ファイバ24の射出面から射出された照明光が入射する面26aの中心を通り、面26aと直交する軸を回転軸として回転可能である。すなわち、偏光子26の透過軸の方位を任意の方位に設定可能であり、偏光子26で変換する直線偏光の振動方向を任意の方向にすることができる。偏光子26の回転角(偏光子26の透過軸の方位)は、制御部80の指令に基づき、不図示の駆動部により制御される。また一例として、波長λ1は248nm、λ2は265nm、λ3は313nmである。この場合、導光ファイバ24の射出面が照明側凹面鏡25の焦点に配置されているため、照明側凹面鏡25で反射される照明光ILIは平行光束となってウェハ面に照射される。ウェハ10に対する照明光ILIの入射角θ1(この照明光の主光線とウェハ面の法線とのなす角度)は、制御部80の指令により、不図示の駆動機構を介して導光ファイバ24の射出部の位置並びに照明側凹面鏡25の位置及び角度を制御することで調整可能である。なお、本実施形態では、ウェハ面の法線は、ステージ5の法線CAに平行である。
【0018】
本実施形態において照明側凹面鏡25の位置及び角度は、照明側凹面鏡25がステージ5のチルト軸TAを中心に傾動されることにより制御され、これによりウェハ10(ウェハ面)へ入射する照明光ILIの入射角θ1が調整される。本実施形態では、一例として、ウェハ面に形成されている繰り返しパターン12(
図2(a)参照)から発生する所定次数m(mは0以外の正又は負の整数)の回折光ILDよりなる平行光を受光系30で受光する。
【0019】
この場合、ウェハ面における照明光ILIの入射方向(照明光ILIの入射面とウェハ面との交線の方向)が繰り返しパターン12のある周期方向(繰り返し方向)に平行であるとして、繰り返しパターン12のその周期方向の周期(ピッチ)をP1、照明光ILIの波長をλとすると、照明光ILIの入射角θ1と、次数mの回折光ILDの回折角θ2(回折光の主光線とウェハ面の法線とのなす角度)との間には次の関係がある。
【0020】
sin(θ1)−sin(θ2)=m・λ/P1 …(1)
このため、入射角θ1を変化させる際には、導光ファイバ24の射出部の位置並びに照明側凹面鏡25の位置及び角度を制御するとともに、ウェハ10から射出されて受光系30に入射する回折光ILDの回折角θ2が式(1)の関係を満たすように、ステージ5のチルト角φ2が制御される。
【0021】
このように偏光子26が光路上に設置されているため、後述の構造性複屈折による回折光の偏光状態の変化を利用した検査(以下、便宜的に偏光検査ともいう)が行われる。
受光系30は、ステージ5(ウェハ10)に対向して配置された受光側凹面鏡31と、受光側凹面鏡31で反射された光の光路上に配置される1/4波長板33と、1/4波長板33を通過した光の光路に配置される検光子32(受光側偏光フィルタ)とを有し、撮像装置35の結像光学系35aの前側焦点は受光側凹面鏡31の焦点に配置されている。このため、ウェハ面から射出する平行光(回折光ILD)は、受光側凹面鏡31、及び撮像装置35の結像光学系35aにより集光され、撮像素子35bの撮像面にウェハ面の像が結像される。検光子32も、例えば、偏光子26と同様に透過軸を有する偏光板である。検光子32は、受光側凹面鏡31で反射された光が入射する面32aの中心を通り、この面32aと直交する軸を回転軸として回転可能である。すなわち、検光子32の透過軸の方位を任意の方位に設定可能であり、検光子32で変換する直線偏光の振動方向を任意の方向にすることができる。検光子32の回転角(偏光板の透過軸の方位)は、制御部80の指令に基づき、不図示の駆動部により制御される。一例として、検光子32の透過軸は偏光子26の透過軸に対して直交する方向(クロスニコル)に設定することができる。また、1/4波長板33は、受光側凹面鏡31で反射された光が入射する面33aの中心を通り、この面33aと直交する軸を回転軸として回転可能である。1/4波長板33の回転角は、制御部80の指令に基づき不図示の駆動部により制御可能である。例えば、1/4波長板33を回転しながら得られるウェハ面の複数の画像を処理することにより、後述のようにウェハ10からの回折光ILDの偏光の状態を規定する量であるストークスパラメータを画素毎に求めることができる。
【0022】
また、ウェハ10の表面には、プロセスに応じて熱酸化装置若しくはプラズマCVD装置等で酸化膜が形成されるか、又は真空蒸着装置、スパッタリング装置若しくはCVD装置などで導電膜が形成され、この上にコータ・デベロッパ200によりレジストが塗布される。そして、露光装置100により最上層のレジストに対してマスクを介し、所定のパターンが投影露光され、コータ・デベロッパ200によるレジストの現像後、ウェハ10は評価装置1のステージ5上に搬送される。ここで、ステージ5上に搬送されたウェハ10の上面には露光装置100、及びコータ・デベロッパ200による露光・現像工程を経て繰り返しパターン12(
図2(a)参照)が形成されている。
【0023】
そして、ウェハ10は、搬送途中で不図示のアライメント機構によりウェハ10のショット内のパターン、ウェハ面のマーク(例えばサーチアライメントマーク)、又は外縁部(ノッチ、オリエンテーションフラット、又は裏面の凹凸マーク等)を基準としてアライメントが行われた状態で、ステージ5上に搬送される。本実施形態において、ウェハ面には、
図2(a)に示すように、複数のショット11が直交する2つの方向にそれぞれ所定間隔で配列され、各ショット11中には、半導体デバイスの回路パターンの一例として、多数のホールパターンが所定の状態で配列された繰り返しパターン12が形成されている。なお、以下では、ウェハ面に平行な面において、複数のショット11の直交する2つの配列方向に沿ってX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸を含む面に垂直な軸をZ軸として説明する。本実施形態において、ウェハ面における繰り返しパターン12の周期方向(繰り返し方向)は、X軸に平行な方向(X方向)である。
【0024】
一例として、
図2(b)に拡大して示すように、繰り返しパターン12は、複数のホールパターン群12bをX方向に周期P1で配列したパターンであり、各ホールパターン群12bは、それぞれレジスト8(又は他の薄膜8aでもよい。
図3(a)参照)中に形成された複数のほぼ円形の凹部よりなるホールパターン12aをY方向に周期P2で配列したものである。一例として、ホールパターン12aの直径dは20〜40nm程度であり、ホールパターン群12b内のホールパターン12aの周期P2は、直径dの2倍程度であり、複数のホールパターン群12bの周期P1は170〜300nm程度(例えば200nm程度)である。
【0025】
式(1)の右辺の周期P1の代わりに一般的な周期Pxを代入すると、式(1)の左辺の値は2以下であるため、少なくとも1次回折光(m=1)が発生する条件は、次のように入射する光の波長λがその周期Pxの2倍より小さいこと(周期Pxがλ/2より大きいこと)である。
λ/Px<2 即ち、 λ<2・Px …(2)
このため、照明光ILIの波長が上述のλ1〜λ3(248〜313nm)である場合、周期P2(40〜80nm程度)のパターンからは回折光は発生しないが、周期P1(170nm程度以上)のパターンからは回折光が発生する。この結果、照明光ILIに対しては、繰り返しパターン12の複数のホールパターン群12bは、実質的にそれぞれY方向を長手方向とするラインパターンと等価であり、繰り返しパターン12は、それぞれY方向を長手方向とする線幅dの複数のラインパターンをX方向に周期P1で配列した周期的パターンとみなすこともできる。このため、繰り返しパターン12の周期方向はX方向であり、その周期はP1である。
【0026】
また、ウェハ10に繰り返しパターン12を形成する場合には、一例として、
図2(c)に示すY方向の幅dでX方向を長手方向とする複数の明部MP2及びY方向の幅が(P2−d)でX方向を長手方向とする複数の暗部MP1をY方向に周期P2で配列した形状のパターンの像をポジ型のレジスト(誘電体)に露光する。その後、
図2(d)に示すX方向の幅dでY方向を長手方向とする複数の明部MP4及びX方向の幅が(P1−d)でY方向を長手方向とする暗部MP3をX方向に周期P1で配列した形状のパターンの像をそのレジストに重ねて露光する。その二重露光後のレジストを現像することによって凹凸のレジストパターンとしての繰り返しパターン12を形成できる。また、その現像後に形成されるレジストパターンを用いてエッチングを行うことによって、そのレジストの下地(絶縁膜等の薄膜)に繰り返しパターン12と同じ形状の繰り返しパターンを形成できる。
【0027】
なお、繰り返しパターン12は例えば金属を材質とするパターンでもよい。さらに、繰り返しパターンは、ホールパターン又は複数のホールパターン群に限られることなく、例えば、ライン・アンド・スペースパターンなどであってもよい。また、1つのショット中には、ライン・アンド・スペースパターンのみが形成されている場合、ホールパターンのみが形成されている場合、ライン・アンド・スペースパターンとホールパターンの両方のパターンが形成されている場合がある。なお、一つのショット11中には複数のチップ領域が含まれていることが多いが、
図2(a)では簡単のために一つのショット中に一つのチップ領域があるものとしている。
【0028】
本実施形態では、一例として、検査部60が、後述のようにウェハ面の画像を処理して、加工条件としての露光装置100の露光条件を評価(検査)する場合について述べる。
ここで、露光条件は、ウェハ10を露光した露光装置100の露光量(露光エネルギー等のいわゆるドーズ)、フォーカス位置(露光装置における投影光学系の光軸方向におけるマスクパターンの像面の位置や、露光対象のウェハに対する投影光学系の光軸方向におけるマスクパターンの像面のデフォーカス量等)、露光波長(中心波長及び/又は半値幅)、及び液浸法で露光する場合の投影光学系とウェハとの間の液体の温度等である。一例として、上述のようにレジストに二重露光を行う場合の露光量は、例えばその2回の露光における各露光量の和である。その露光条件の評価結果は、一例としてホストコンピュータ600を介して露光装置100内の制御部(不図示)に出力され、その評価結果に応じて、露光装置100はその露光条件の補正(例えばオフセットやばらつき等の補正)を行うことができる。
【0029】
以上のように構成される評価装置1を用いて、ウェハ面からの反射光の偏光状態の変化に基づく評価又は検査を行う方法の一例につき説明する。この場合、
図2(a)のウェハ面の繰り返しパターン12は、
図3(a)及び(b)に示すように、レジスト8(又は他の薄膜8a)中にそれぞれ複数の直径dのホールパターン12aを含む複数のホールパターン群12bをX方向に周期P1で配列したパターンである。
【0030】
ここで、一例として、ホールパターン12aの形状がZ軸に平行な軸を中心とする直径dの円筒状であり、その直径dが設計値dsであるときの形状をホールパターン12aの理想的な形状とする。その設計値dsは、各ホールパターン群12b内の周期P2の設計値の1/2である。また、露光装置100におけるフォーカス位置又は露光量が適正値から外れると、繰り返しパターン12の周期P1,P2はほとんど変化しないが、各ホールパターン12aの形状が変化する。このため、各ホールパターン12aの形状が理想的であるときに、複数のホールパターン12aからなる繰り返しパターン12の形状が理想的であるとみなすことができる。また、各ホールパターン群12bは実質的にそれぞれY方向を長手方向とする幅dのラインパターンとみなすことができるため、理想的な形状の繰り返しパターン12は、Y方向を長手方向とするX方向の幅dで断面形状がほぼ矩形の複数のラインパターンをX方向に周期P1で配列したパターンとみなすことができる。
【0031】
これに対して、繰り返しパターン12を形成する際の露光装置100における露光量が適正値より多くなると、各ホールパターン12aの直径dは
図3(b)に点線で示すホールパターン12Aaのように大きくなり、逆に露光量が少なくなると、各ホールパターン12aの直径dは小さくなる。このように露光量が適正値から外れると、各ホールパターン群12bと等価なラインパターンの線幅dが変化して、線幅dと周期P1との比が設計値から外れることになる。
【0032】
また、繰り返しパターン12を形成する際の露光装置100におけるフォーカス位置が適正値から外れると、ホールパターン12aの断面形状は、
図3(c)に拡大して示すホールパターン12Baのように台形状となる。これは、各ホールパターン群12bと等価なラインパターンの断面形状が理想的な形状から外れることを意味する。
本実施形態の評価装置1は、上記のような繰り返しパターン12におけるホールパターン12aの形状(断面形状を含む)の変化に伴うウェハ面からの回折光の偏光状態の変化(いわゆる、ウェハ面上の繰り返しパターン12における構造性複屈折による反射光の偏光状態の変化)を利用して、露光条件の評価を行うものである。あるパターンの構造性複屈折とは、そのパターンの形状等の構造によって、複数の方向(例えば周期方向及びこれに直交する方向)における入射光に対する屈折率(見かけの屈折率)が異なることを意味する。そのパターンに例えば直線偏光した光が入射すると、そのパターンの構造性複屈折によって、そのパターンからの反射光又は回折光の偏光状態が楕円偏光や異なる方向の直線偏光になったりするため、その反射光又は回折光の偏光状態の変化から、逆にそのパターンの構造の理想的な構造からの変化、ひいてはそのパターンを形成したときの加工条件(露光条件等)の目標値に対する変化を評価することができる。なお、繰り返しパターン12のホールパターン12aの形状の変化は、ウェハ10のショット11ごとに、さらにはショット11内の複数の領域ごとに現れる。
【0033】
本実施形態の評価装置1を用いて、ウェハ面からの回折光の偏光状態の変化から露光条件の評価を行うには、制御部80が記憶部85に記憶されたレシピ情報(装置条件又は評価条件や評価手順等)を読み込み、以下の処理を行う。本実施形態では、偏光の状態を規定する量としてウェハ面で回折される光の次式で定義されるストークス(Stokes)パラメータS0,S1,S2,S3を計測する。なお、その光の光軸に垂直な面内の互いに直交する軸をx軸及びy軸として、x方向の直線偏光成分(横偏光)の強度をIx、y方向の直線偏光成分(縦偏光)の強度をIy、x軸に対して45°傾斜した方向の直線偏光成分(45°偏光)の強度をIpx、x軸に対して135°(−45°)傾斜した方向の直線偏光成分(135°偏光)の強度をImx、右回りの円偏光成分の強度をIr、左回りの円偏光成分の強度をIlとしている。
【0034】
S0=光束の全強度 …(3A)
S1(横偏光と縦偏光との強度差)=Ix−Iy …(3B)
S2(45°偏光と135°偏光との強度差)=Ipx−Imx …(3C)
S3(右回り及び左回りの円偏光成分の強度差)=Ir−Il …(3D)
また、ストークスパラメータS0は、他の3つのストークスパラメータS1〜S3の自乗和の平方根であり、以下ではストークスパラメータS0が1になるように規格化している。この場合、他のストークスパラメータS1〜S3の値は−1〜+1の範囲内になる。ストークスパラメータ(S1,S2,S3)は、例えば完全な135°偏光では(0,−1,0)となり、完全な右回りの円偏光では(0,0,1)となる。
【0035】
まず、コータ・デベロッパ200におけるレジストの塗布、露光装置100におけるレジストの露光、及びコータ・デベロッパ200におけるレジストの現像の工程を経て、検査対象の繰り返しパターン12が形成されたウェハ10が、ステージ5上の所定の位置に載置される。そして、ステージ5の回転角は、一例としてウェハ面における繰り返しパターン12の周期方向A1(ウェハ面のX方向)が、
図3(b)に示すように、ウェハ面における照明光ILIの入射方向A2に平行になるように設定される。
【0036】
また、ステージ5のチルト角φ2は、受光系30でウェハ10からのm次の回折光ILDを受光できるように、すなわち入射する照明光ILIの入射角θ1に対して受光系30で受光する光のウェハ面に対する回折角θ2が上述の式(1)で定められる角度になるように設定される。このため、回折角θ2は、受光系30による受光角でもある。
さらに、偏光子26の角度は、一例として、入射する照明光ILIのウェハ面における偏光方向A3(
図3(b)参照)が繰り返しパターン12の周期方向A1に対してなす角度ψが45°になるように設定される。これは、照明光ILIの電気ベクトルのうちの周期方向A1(X方向)に振動する成分の強度と、周期方向A1に直交するY方向に振動する成分の強度とを等しくして、ウェハ面からの回折光における繰り返しパターン12の構造性複屈折による偏光状態の変化を大きくして、露光条件の変化に対する偏光状態を規定する量(ここではストークスパラメータ)の変化である検出感度を大きくするためである。ただし、周期方向A1とその偏光方向A3との角度ψを0°、30°、又は60°等とすることによってその検出感度が高くなる場合には、その角度ψを変更してもよい。なお、その角度ψはこれらに限らず、任意角度に設定可能である。例えば角度ψは22.5°又は67.5°に設定することも可能である。
【0037】
その角度ψが45°であるとき、直線偏光の照明光ILIは、電気ベクトルの振動方向(偏光方向A3)が繰り返しパターン12の周期方向A1に対して45°傾いた状態で、繰り返しパターン12を周期方向A1に横切るように入射する。ウェハ面で回折された検出対象のm次の平行光の回折光ILDは、受光系30の受光側凹面鏡31により集光されて1/4波長板33及び検光子32を介して撮像装置35の撮像面に達する。このとき、繰り返しパターン12での構造性複屈折により回折光ILDの偏光状態が入射光の直線偏光に対して例えば楕円偏光に変化する。検光子32の透過軸の方位は、一例として偏光子26の透過軸に対して直交するように(クロスニコルの状態に)設定されている。従って、検光子32により、ウェハ10(繰り返しパターン12)からの偏光状態が変化した回折光のうち、入射する照明光ILIと偏光方向が略直角な偏光成分が抽出されて、撮像装置35に導かれる。その結果、撮像装置35の撮像面には、検光子32で抽出された偏光成分によるウェハ面の像が形成される。なお、検光子32の角度をそのクロスニコルの状態から所定角度ずらしてウェハ面の像を撮像することも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、一例として回転位相子法によりウェハ面からの反射光の偏光状態を示すストークスパラメータS0〜S3を求めるものとする。この場合、1/4波長板33の回転角θを段階的に複数の角度(例えば少なくとも4個の異なる角度)θi(i=1,2,…)に設定し、各回転角でそれぞれウェハ面の像を撮像素子35bで撮像し、得られた画像信号を画像処理部40に供給する。画像処理部40には1/4波長板33の回転角に関する情報も供給されている。このとき、ストークスパラメータS0(各画素の全強度)を1/4波長板33の回転角θに関してフーリエ変換したときの0次の係数をa0/2、sin2θの係数をb2、cos4θの係数をa4、sin4θの係数をb4とすると、ストークスパラメータS1、S2、S3はそれぞれ係数a4、b4、b2に対応していることから、画像処理部40ではストークスパラメータS0〜S3を求めることができる。
【0039】
なお、回転位相子法は、例えば文献「鶴田匡夫著:応用光学II(応用物理学選書),p.233(培風館,1990)」に「回転λ/4板による方法」として記載されている。また、ストークスパラメータの詳細な計算方法は、本出願人による特開2010−249627号公報にも記載されているため、その計算方法は省略する。
画像処理部40では、求めた撮像装置35の画素毎のストークスパラメータの情報を検査部60に出力する。検査部60はその情報を用いてウェハ10の繰り返しパターン12を形成する際に使用された露光装置100における露光条件を評価する。そのようにウェハ面の画像の画素毎のストークスパラメータを求めたときの、評価装置1におけるウェハ面に対する照明光ILIの入射角θ1(又は入射角θ1に応じて式(1)から求められる回折角θ2)、照明光ILIの波長λ(λ1〜λ3等)、偏光子26の回転角度(透過軸の方位)、検光子32の回転角度(透過軸の方位)、検出する回折光ILDの次数m、及びステージ5の回転角度(ウェハ10の方位)等の組み合わせを一つの装置条件と呼ぶ。装置条件は評価条件と呼ぶこともできる。そのように偏光状態の変化に基づいた評価を行う場合、その装置条件は偏光条件と呼ぶこともできる。そして、複数の装置条件が上記の記憶部85に記憶された評価装置1のレシピ情報に含まれている。
【0040】
本実施形態では、その複数の装置条件からウェハに形成されたパターンの露光条件を評価するのに適した装置条件を選択する。なお、装置条件としては、波長λ、入射角θ1、及び検光子32の角度の少なくとも一つを使用してもよく、評価装置1において調整され得る他の任意の条件を使用してもよい。なお、照明光ILIの波長λ、ウェハ面に対する照明光ILIの入射角θ1、及び偏光子26の回転角度(透過軸の方位)が照明条件の一例であり、ウェハ面からの回折光ILDの回折角θ2(受光系30による受光角)及び検光子32の回転角度(透過軸の方位)が検出部の検出条件の一例であり、ステージ5の回転角度(ウェハ10の方位)及びステージ5のチルト角φ2(ウェハ面のチルト角)がステージの姿勢条件の一例である。
【0041】
以下の説明では、一例として、露光装置100の評価対象の露光条件を露光量(第1の露光条件又は第1の加工条件)及びフォーカス位置(第2の露光条件又は第2の加工条件)とする。このとき、露光量が変化すると、上述のように繰り返しパターン12のホールパターン群12bと実質的に等価なラインパターンの線幅dが変化する(断面の幅が変化する)ため、ウェハ面に直線偏光の光束が入射したときに、
図4(a)に示すように、そのパターンの露光時の露光量がD1(最適値に対して低い状態)からD5(最適値、いわゆるベストドーズ量Dbe)を経てD8(最適値に対して高い状態)に変化すると、一例として、そのウェハ面からの反射光の偏光状態は楕円偏光の長軸の方向(傾き)及び楕円率の両方が変化する。また、楕円偏光の長軸の方向はストークスパラメータS2に対応し、楕円率はストークスパラメータS1及びS3に対応するため、露光量が変化すると反射光のストークスパラメータS1、S2、及びS3が変化する。
【0042】
一方、フォーカス位置が変化すると、上述のようにパターンの断面形状が変化するため、ウェハ面に直線偏光の光束が入射したときに、
図4(b)に示すように、そのパターンの露光時のフォーカス位置がF1(最適値に対して低い状態)からF4(最適値、いわゆるベストフォーカス位置Zbe)を経てF8(最適値に対して高い状態)に変化すると、一例として、そのウェハ面からの反射光の偏光状態は楕円偏光の長軸の方向(傾き)はほぼ同じで、ほぼ楕円率のみが変化するという傾向がある。このため、フォーカス位置が変化したときには、反射光のストークスパラメータS1及びS3が比較的大きく変化し、ストークスパラメータS2の変化率が比較的小さいという傾向がある。このように露光条件によって変化するストークスパラメータが異なることを利用して、ストークスパラメータの計測値から個別の露光条件の検査が可能となる。
【0043】
なお、
図4(a)及び(b)は、ライン部の幅とスペース部の幅との比が1:1の実際のライン・アンド・スペースパターンからの反射光の楕円偏光の変化を表している。本実施形態の繰り返しパターン12は、ラインパターンに対応する部分は実際にはホールパターン群12bであり、そのラインパターンに対応する部分の幅dに対して、そのスペース部に対応する部分(隣接する2つのホールパターン群12bの間の領域)の幅(P1−d)は例えば数倍程度になる。しかしながら、露光条件の変化による繰り返しパターン12からの回折光の偏光状態の変化も定性的には
図4(a)及び(b)のようになるものと想定している。
【0044】
また、本実施形態の繰り返しパターン12は、上述のように、露光条件の変化に応じて形状が変化するラインパターンに対応する部分の幅に対して、露光条件が変化してもほとんど形状が変化しないスペース部に対応する部分の幅が例えば数倍程度に広い。この場合、仮にウェハ面からの正反射光(0次回折光)を検出するものとすると、露光条件が変化した場合の偏光状態を規定する量の変化が少ないため、検出感度が低くなる恐れがある。これに対して、本実施形態では、ウェハ面の繰り返しパターン12からの1次以上の回折光ILDを検出しており、回折光ILDの大部分は繰り返しパターン12中のラインパターンに対応する部分(複数のホールパターン12a)からの光である。このため、露光条件が変化した場合の、複数のホールパターン12aの形状の変化に起因する回折光ILDの偏光状態を規定する量の変化(検出感度)が大きくなり、繰り返しパターン12を形成したときの露光条件を高精度に評価できる。
【0045】
次に、本実施形態において、評価装置1を用いてウェハ面の繰り返しパターンからの光を検出して、そのパターンを形成する際に使用した露光装置100の露光条件(ここでは露光量及びフォーカス位置)を評価(検査)する方法の一例につき
図6のフローチャートを参照して説明する。その評価に際して予め装置条件(評価条件)を求める必要があるため、まず、その装置条件を求める方法(以下、条件出しとも呼ぶ。)の一例につき
図5のフローチャートを参照して説明する。これらの動作は制御部80によって制御される。
【0046】
まず、条件出しのために、
図5のステップ102において、コータ・デベロッパ200においてレジストが塗布されたウェハ10a(
図7(a)参照)を用意する。
図7(a)に示すように、ウェハ10aの表面には、一例としてスクライブライン領域SLを挟んでN個(Nは例えば数10〜100程度の整数)のショット11が配列される。以下、ウェハ10aの表面のn番目のショット11をショットSAn(n=1〜N)と称する。そして、レジストを塗布したウェハ10aを
図1(b)の露光装置100に搬送し、露光装置100によって、ウェハ10aの例えば走査露光時の走査方向(
図7(a)においてY軸に沿った方向)に配列されたショット間では露光量が次第に変化し、走査方向に直交する非走査方向(
図7(a)においてX軸に沿った方向)に配列されたショット間ではフォーカス位置が次第に変化するように、露光条件を変化させながら各ショットSAnに実際に製品となるデバイス用のマスク(不図示)のパターンを露光する。本実施形態では、
図2(c)及び(d)のマスクパターンの像が二重露光される。
【0047】
その後、露光済みのウェハ10aを現像することによって、各ショットSAnに異なる露光条件のもとで繰り返しパターン12が形成された1枚のウェハ(以下、条件振りウェハと称する。)10aが作成される。
以下では、フォーカス位置として、ベストフォーカス位置Zbeに対するデフォーカス量(ここではフォーカス値と称する。)を用いるものとする。フォーカス位置に関しては、一例としてフォーカス値が20nm刻みで−60nm〜0nm〜+60nmの7段階に設定される。後述の
図8(b)等の横軸のフォーカス値Fの番号1〜7は、その7段階のフォーカス値(−60〜+60nm)に対応している。なお、フォーカス値を任意の刻み量かつ、任意の段階で設定することが可能であり、例えば10nmや30nm刻みで複数段階に設定することもできる。また、フォーカス値を例えば25nm刻みで−200nm〜+200nmの17段階等に設定することもできる。
【0048】
そして、露光量は、一例として、ベストドーズ量Dbeを中心として1.5mJ刻みで7段階(11.5mJ,13.0mJ,14.5mJ,16.0mJ,17.5mJ,19.0mJ,20.5mJ)に設定される。後述の
図8(a)等の横軸の露光量Dの番号1〜7は、その7段階の露光量に対応している。なお、露光量も任意の刻み量で、かつ、任意の段階(例えば9段階等)で設定することが可能である。
【0049】
また、一例として良品の露光量及びフォーカス値の範囲をそれぞれ許容範囲EG1及びEG2(例えば、製造後のデバイスが動作不良を起こさない露光量及びフォーカス値の範囲)として表している。
本実施形態の条件振りウェハ10aは、露光量とフォーカス位置とをマトリックス状に振って露光し現像したいわゆるFEMウェハ(Focus Exposure Matrixウェハ)である。なお、フォーカス値の段階数と露光量の段階数の積で得られる露光条件の組み合わせの異なるショットの個数が、1枚の条件振りウェハ10aの全面のショット数よりも多い場合には、複数枚の条件振りウェハを作成してもよい。
【0050】
逆に、例えばショットSAnの非走査方向の配列数がフォーカス値の変化の段階数よりも大きい場合、及び/又は走査方向の配列数が露光量の変化の段階数よりも大きい場合には、フォーカス値及び露光量が同じショットを複数個形成し、フォーカス値及び露光量が同じショットに関して得られる計測値を平均化してもよい。また、例えばウェハの中心部と周辺部とのレジストの微妙な塗布むらの影響、及び走査露光時のウェハの走査方向(
図7(a)の+Y方向又は−Y方向)の相違の影響等を軽減するために、フォーカス値及び露光量が異なる複数のショットをランダムに配列してもよい。
【0051】
次に、作成された条件振りウェハ10aを評価装置1のステージ5上に搬送する。そして、制御部80は記憶部85のレシピ情報から複数の装置条件を読み出す。複数の装置条件としては、一例として照明光ILIの波長λが上記のλ1、λ2、λ3のいずれかとなり、照明光ILIの入射角θ1が10°、15°、30°、45°、60°、85°のいずれかとなり、偏光子26の回転角(透過軸の方位)である偏光子角度又は偏光角が0°〜165°まで15°刻みでいずれかの角度に設定される条件を想定する。この場合、偏光子角度が45°であるときには、ウェハ面に入射する照明光ILIの偏光方向A3は、繰り返しパターン12の周期方向A1に対して時計回りに45°で交差する方向となる。また、以下では、一例として受光系30で受光する回折光ILDは+1次回折光(m=+1)であるとする。ただし、−1次回折光又は他の2次以上の回折光を受光してもよい。ここでは、波長λがλn(n=1〜3)、入射角θ1がαm(m=1〜6)、偏光子26の回転角がβj(j=1〜J,Jは2以上の整数)になる装置条件を条件ε(n−m−j)で表すこともできる。なお、入射角θ1をある角度に設定したときには、上述の式(1)で求められる回折角θ2の回折光ILDが受光系30で受光されるように、照明側凹面鏡25のチルト軸TAを中心とした角度及び/又はステージ5のチルト角φ2が調整される。
【0052】
また、入射角θ1は、設定可能な任意の角度でよく、例えば10°〜85°のいずれかとなるように5°程度の間隔で設定してもよい。また、偏光子角度は、ウェハ面の繰り返しパターン12の周期方向A1に45°で交差する方向を基準として、この基準となる角度を中心として複数の角度に設定してもよい。
そして、評価装置1において、条件振りウェハ10aをステージ5に載置した状態で、照明光ILIの波長をλ1に設定し(ステップ104)、入射角θ1をα1に設定し(併せて、ステージ5のチルト角を設定し、受光系30の受光角を設定し)(ステップ106)、偏光子26の回転角(偏光子角度)をβ1に設定し(ステップ108)、1/4波長板33(位相板)の回転角を初期値に設定する(ステップ110)。そして、この装置条件のもとで、照明光ILIを条件振りウェハ10aの表面に照射し、条件振りウェハ10aからの回折光ILDに基づいて、撮像装置35が条件振りウェハ10aの像を撮像して画像信号を画像処理部40に出力する(ステップ112)。次に1/4波長板33を全部の角度に設定したかどうかを判定し(ステップ114)、全部の角度には設定していない場合には、1/4波長板33を例えば約1.41°(1/4波長板33の回転可能な角度範囲360°を256分割した角度)だけ回転し(ステップ116)、ステップ112に戻って条件振りウェハ10aの像を撮像する。ステップ114で1/4波長板33の角度が360°回転されるまでステップ112を繰り返すことによって、1/4波長板33の異なる回転角に対応して256枚のウェハの像が撮像される。なお、ストークスパラメータに関する未知数は4個(S0〜S3)であるため、1/4波長板33の角度を例えば4個の異なる角度に設定し、ウェハの4枚の像を撮像するのみでもよいし、撮像する像はその他の任意の枚数であってもよい。
【0053】
その後、動作はステップ114からステップ118に移行し、画像処理部40は得られた256枚のウェハのデジタル画像から上述の回転位相子法によって、撮像素子35bの画素毎にストークスパラメータS0〜S3を求める。なお、本実施形態では、ストークスパラメータS0が1になるように規格化されているため、以下では実際に求められるストークスパラメータをS1〜S3とする。これらのストークスパラメータS1〜S3は検査部60の第1演算部60aに出力され、第1演算部60aでは一例として各ストークスパラメータのショット毎の平均値(以下、ショット平均値と称する)を求めて、装置条件ε(n−m−j)及び露光条件に対応させて第2演算部60b及び記憶部85に出力する。
【0054】
その後、偏光子26の回転角を全部の角度に設定したかどうかを判定し(ステップ120)、全部の角度に設定していない場合には、偏光子26を例えば15°回転して角度β2に設定し(ステップ122)、ステップ110に戻る。そして、回転位相子法でウェハ面の画像の画素毎のストークスパラメータの算出及びショット平均値の算出等(ステップ110〜118)を実行する。その後、偏光子26の回転角を全部の角度βj(j=1〜J)に設定した場合には、ステップ120からステップ124に移行して、照明光ILIの入射角θ1を全部の角度に設定したかどうかを判定し、全部の角度に設定していない場合には、照明系20及びステージ5を駆動して、入射角θ1をα2に設定し、回折角θ2を対応する角度に設定し(ステップ126)、ステップ108に戻る。そして、回転位相子法でウェハ面の画像の画素毎のストークスパラメータの算出及びショット平均値の算出等(ステップ108〜122)を実行する。
【0055】
その後、入射角θ1を全部の角度αm(m=1〜6)に設定した場合には、ステップ124からステップ128に移行して、照明光ILIの波長λを全部の波長に設定したかどうかを判定し、全部の波長に設定していない場合には、照明ユニット21で波長λをλ2に変更し(ステップ130)、ステップ106に戻る。そして、回転位相子法でウェハ面の画像の画素毎のストークスパラメータの算出及びショット平均値の算出等(ステップ106〜126)を実行する。その後、波長λを全部の波長λn(n=1〜3)に設定した場合には、動作はステップ128からステップ132に移行する。
【0056】
ステップ132において、第2演算部60bでは、上記の全部の装置条件で条件振りウェハ10aの各ショットに関して計測したストークスパラメータの情報を用いて、その全部の装置条件で計測したストークスパラメータS1〜S3に関して、露光量の変化に対する計測値の変化の割合である感度(以下、ドーズ感度とも称する)、及びフォーカス値の変化に対する計測値の変化の割合である感度(以下、フォーカス感度とも称する)を求める。
【0057】
そして、第2演算部60bでは、上記の全部の装置条件ε(n−m−j)の中で、ストークスパラメータS1〜S3に関して、ドーズ感度が高く、フォーカス感度がドーズ感度よりも低い条件を、第1の装置条件(又は第1の評価条件)Aとして決定する。その第1の装置条件Aは、一例として、照明光の波長がλ2、照明光のウェハ面に対する入射角θ1が60°、偏光子26の回転角(偏光子角度)が30°である。
【0058】
この第1の装置条件Aでは、ストークスパラメータS1,S2及びS3が、条件振りウェハ10aの露光量D及びフォーカス値Fに関して、それぞれ
図8(a)及び(b)に示すように変化する。
図8(a)及び(b)の横軸の数値1〜7は、それぞれ露光量D及びフォーカス値Fを上述の7段階に変化させたときの各段階を表しており、第4段階が最適値である。これは、以下の
図9(a)及び(b)でも同様である。また、露光量Dの良品範囲をEG1、フォーカス値Fの良品範囲をEG2で表している。
【0059】
図8(a)及び(b)において、実線の曲線(又は折れ線。以下同様。)B11,B21、点線の曲線B12,B22、及び破線の曲線B13,B23が、それぞれ露光量D及びフォーカス値Fの変化に対するストークスパラメータS1,S2及びS3の変化を表す。
図8(b)の曲線B21,B22,b23より、フォーカス値Fの変化に対するストークスパラメータS1〜S3の変化が小さいため、フォーカス値Fの変化に対するストークスパラメータS1〜S3の変化の割合(フォーカス感度)が低いことが分かる。また、
図8(a)の曲線B11,B12,B13の最大値と最小値との差がそれぞれ大きいことから、ストークスパラメータS1〜S3のドーズ感度が高いことが分かる。
【0060】
なお、実用上は、予め第1の閾値及びこの第1の閾値より大きい第2の閾値を定めておいてもよい。このとき、フォーカス値Fの全部の範囲(ここでは7段階の全部の値)におけるストークスパラメータS1〜S3のそれぞれの最大値と最小値との差がその第1の閾値より小さくなるとともに、露光量Dの全部の範囲(ここでは7段階の全部の値)におけるストークスパラメータS1〜S3のそれぞれの最大値と最小値との差がその第2の閾値より大きくなるときに、ドーズ感度が高くフォーカス感度が低いとみなしてもよい。そして、このようにドーズ感度が高くフォーカス感度が低くなる複数の装置条件を求め、これらの複数の装置条件中から例えばストークスパラメータS1〜S3のドーズ感度の平均値が最も高くなるときの装置条件を装置条件Aとして選択してもよい。ドーズ感度の平均値とは、例えば露光量Dの全部の範囲におけるストークスパラメータS1〜S3のそれぞれの最大値と最小値との差の平均値である。
【0061】
さらに、第2演算部60bでは、7段階の露光量Dの値の間の任意の値におけるストークスパラメータS1,S2,S3の値を補間するために、一例として、
図8(a)の3つの曲線B11,B12,B13を露光量Dに関する高次関数又は指数関数等で近似することによって、
図8(c)に示すように、それぞれ露光量Dの値に対するストークスパラメータS1,S2,S3の変化を表す曲線B31,B32,B33を求める。なお、
図8(c)の横軸は、ベストドーズ量Dbeを中心とする露光量Dの値を表している。一例として、曲線B32,B33は露光量Dが増加するときに単調に増加する関数であり、曲線B31は露光量Dが増加するときに単調に減少する関数である。これらの曲線B31〜B33が第1参照データとなる。第2演算部60bは、その決定された第1の装置条件A及び第1参照データを記憶部85に記憶させる。その第1参照データは、例えば曲線B31〜B33をそれぞれストークスパラメータS1〜S3の複数段階の値の範囲(例えば−1〜+1までの範囲を100等分して得られる100個の連続する範囲)に対して対応する露光量Dの値を割り当てたテーブルとして記憶してもよい。さらに、例えば曲線B31〜B33を用いて、それぞれストークスパラメータS1〜S3の値から露光量Dを計算するためのストークスパラメータS1〜S3の関数(高次関数又は指数関数等)を求め、このストークスパラメータS1〜S3の関数をその第1参照データとして記憶してもよい。このように第1参照データは様々な形式として記憶することができる。
【0062】
次のステップ134において、第2演算部60bでは、上記の全部の装置条件ε(n−m−j)の中で、ストークスパラメータS1〜S3に関して、フォーカス感度が高く、ドーズ感度がフォーカス感度よりも低い条件を、第2の装置条件(又は第2の評価条件)Bとして決定する。その第2の装置条件Bは、一例として、照明光の波長がλ1、照明光のウェハ面に対する入射角θ1が45°、偏光子26の回転角(偏光子角度)が45°である。
【0063】
この第2の装置条件Bでは、ストークスパラメータS1,S2及びS3が、条件振りウェハ10aの露光量D及びフォーカス値Fに関して、それぞれ
図9(a)及び(b)に示すように変化する。
図9(a)及び(b)において、実線の曲線C11,C21、点線の曲線C12,C22、及び破線の曲線C13,C23が、それぞれ露光量D及びフォーカス値Fの変化に対するストークスパラメータS1,S2及びS3の変化を表す。
図9(a)の曲線C11,C12,C13より、露光量Dの変化に対するストークスパラメータS1〜S3の変化が小さいため、露光量Dの変化に対するストークスパラメータS1〜S3の変化の割合(ドーズ感度)が低いことが分かる。また、
図9(b)の曲線C21,C22,C23の最大値と最小値との差がそれぞれ大きいことから、ストークスパラメータS1〜S3のフォーカス感度が高いことが分かる。
【0064】
なお、実用上は、上述の第1の装置条件Aの場合と同様に、予め第3の閾値及びこの第3の閾値より大きい第4の閾値を定めておき、露光量Dの全部の範囲におけるストークスパラメータS1〜S3のそれぞれの最大値と最小値との差がその第3の閾値より小さくなるとともに、フォーカス値Fの全部の範囲におけるストークスパラメータS1〜S3のそれぞれの最大値と最小値との差がその第4の閾値より大きくなるときに、フォーカス感度が高くドーズ感度が低いとみなしてもよい。そして、このようにフォーカス感度が高くドーズ感度が低くなる複数の装置条件を求め、これらの複数の装置条件中から例えばストークスパラメータS1〜S3のフォーカス感度の平均値が最も高くなるときの装置条件を装置条件Bとして選択してもよい。
【0065】
さらに、第2演算部60bでは、7段階のフォーカス値Fの間の任意の値におけるストークスパラメータS1,S2,S3の値を補間するために、一例として、
図9(b)の3つの曲線C21,C22,C23をフォーカス値Fに関する高次関数又は指数関数等で近似することによって、
図9(c)に示すように、それぞれフォーカス値Fに対するストークスパラメータS1,S2,S3の変化を表す曲線C31,C32,C33を求める。なお、
図9(c)の横軸は、ベストフォーカス位置Fbeを中心とするフォーカス値Fを表している。一例として、曲線C31はフォーカス値Fが増加するときに山型に変化する関数であり、曲線C32はフォーカス値Fが増加するときに単調に減少する関数であり、曲線C33はフォーカス値Fが増加するときに単調に増加する関数である。これらの曲線C31〜C33が第2参照データとなる。第2演算部60bは、その決定された第2の装置条件B及び第2参照データを記憶部85に記憶させる。その第2参照データも、例えばストークスパラメータS1〜S3の複数段階の値の範囲に対して対応するフォーカス値Fを割り当てたテーブル、又はストークスパラメータS1〜S3の値からフォーカス値Fを計算するためのストークスパラメータS1〜S3の関数(高次関数又は指数関数等)として記憶してもよく、様々な形式として記憶することができる。
【0066】
ここで、実際に条件振りウェハ10aから発生する回折光のストークスパラメータを求めた結果の一例を
図10(a)〜
図11(b)に示す。なお、
図10(a)〜
図11(b)は、一例としてそれぞれ対応する装置条件のもとで、条件振りウェハ10aの複数のショット11内の複数の領域で得られるストークスパラメータS1〜S3の値を輝度に変換して表したものである。
図10(a)及び(b)は、それぞれ対応する装置条件のもとで得られるストークスパラメータS1の分布を表している。条件振りウェハ10aでは、横方向でフォーカス値Fが変化し、縦方向で露光量Dが変化しているため、
図10(a)の分布は、フォーカス感度が高いことを示し、
図10(b)の分布はドーズ感度が高いことを示している。また、
図11(a)及び(b)は、それぞれ対応する装置条件のもとで得られるストークスパラメータS2及びS3の分布を表している。
図11(a)の分布は、ストークスパラメータS2のドーズ感度及びフォーカス感度がともに高いことを示し、
図11(b)の分布はストークスパラメータS3のドーズ感度及びフォーカス感度が有ることを示している。
【0067】
以上の動作によって、ウェハの露光条件を検査する場合に使用する装置条件を求める条件出しが終了したことになる。
次に、実際のデバイス製造工程において繰り返しパターンが形成されたウェハに対して、評価装置1によって上記の条件出しで求められた2つの装置条件を用いてウェハ面からの回折光のストークスパラメータを計測し、計測されたストークスパラメータと第1及び第2参照データとから、露光装置100の露光条件中の露光量(第1の露光条件)及びフォーカス位置(第2の露光条件)を以下のように評価する。まず、
図7(a)と同じショット配列を持ち、レジストを塗布した実際の製品(デバイス)となるウェハ10を
図1(a)のコータ・デベロッパ200に搬送してレジストを塗布し、そのウェハ10を露光装置100に搬送し、露光装置100によって、ウェハ10の各ショットSAn(n=1〜N)に実際の製品(デバイス)用のマスク(不図示)のパターンを露光し、露光後のウェハ10をコータ・デベロッパ200に搬送してウェハ10を現像する。この際の露光条件は、全部のショットにおいて最適値であり、露光量に関してはそのマスク(ここでは2つのマスク)に応じて定められているベストドーズ量の和であり、フォーカス位置に関してはベストフォーカス位置である。
【0068】
しかしながら、実際には露光装置100における例えば走査露光時のスリット状の照明領域内の例えば非走査方向における僅かな照度むら及びステージの振動(外乱による振動を含む)等の影響によって、ウェハ10のショットSAn毎(ショットSAn毎の繰り返しパターン毎)に露光量及びフォーカス位置のばらつき等が生じることがあり、意図しない露光量の変化(ベストドーズ量からの変化)や意図しないフォーカス位置の変化(ベストフォーカス値からの変化)が起こる可能性があるため、その露光量及びフォーカス位置の評価を個別に行う。
【0069】
そして、
図6のステップ150において、レジストの塗布、露光、及び現像後のウェハ10は、不図示のアライメント機構を介して
図1(a)の評価装置1のステージ5上にロードされる。そして、制御部80は記憶部85のレシピ情報から上記の条件出しで決定された第1、第2の装置条件を読み出す。そして、装置条件をまず、ストークスパラメータS1〜S3のドーズ感度が高くフォーカス感度の低い第1の装置条件Aに設定し(ステップ152)、1/4波長板33(位相板)の回転角を初期値に設定する(ステップ110A)。そして、照明光ILIをウェハ面に照射し、撮像装置35がウェハ面の回折光によって得られる画像の画像信号を画像処理部40に出力する(ステップ112A)。次に1/4波長板33を全部の角度に設定したかどうかを判定し(ステップ114A)、全部の角度には設定していない場合には1/4波長板33を例えば約1.41°(回転角度範囲360°を256分割した角度)だけ回転し(ステップ116A)、ステップ112Aに移行してウェハ10の像を撮像する。ステップ114Aで1/4波長板33の角度が360°回転されるまでステップ112Aを繰り返すことによって、1/4波長板33の異なる回転角に対応して256枚のウェハ面の像が撮像される。なお、1/4波長板33の角度を例えば4個の異なる角度に設定し、ウェハの4枚の像を撮像するのみでもよいし、その他の任意の枚数であってもよい。
【0070】
その後、動作はステップ118Aに移行し、画像処理部40は得られた256枚のウェハのデジタル画像から上述の回転位相子法によって、撮像装置35の画素毎にストークスパラメータS1,S2,S3を求める。これらのストークスパラメータの値は検査部60の第1演算部60aに出力され、第1演算部60aでは一例としてストークスパラメータS1〜S3のそれぞれのショット毎の平均値(ショット平均値)を求めて第3演算部60c及び記憶部85に出力する。そして、全部の装置条件で検査したかどうかを判定し(ステップ154)、全部の検査用の装置条件に設定していない場合には、ステップ156で第2の装置条件Bに設定してからステップ110Aに移行する。そして、第2の装置条件Bでのストークスパラメータの取得が終了した後、動作はステップ158に移行する。
【0071】
そして、ステップ158において、検査部60の第3演算部60cは、第1の装置条件Aで求めたウェハ10のショット毎のストークスパラメータS1,S2,S3の値(S1a,S2a,S3aとする)を、上述の
図5のステップ132で記憶した第1の参照データ(
図8(c)の曲線B31〜B33)に当てはめて、当該ショットの露光量Dの値D1xを求める。一例として、
図8(c)において、値S1a,S3aをそれぞれ曲線B31,B33に当てはめて露光量Dの値D1a,D3aが得られる。これに対して、値S2aに対応する部分では曲線B32の傾きが小さく、値S2aの変化(誤差)に対して対応する露光量Dの値の変化(誤差)が拡大される恐れがある。そこで、一例として、ここではストークスパラメータS2の値S2aは使用することなく、ストークスパラメータS1,S3の値から求めた露光量Dの値D1a,D3aの平均値を当該ショットの露光量Dの値D1xとする。同様に、例えばストークスパラメータS3の値が曲線B33の傾きが小さい範囲にあるときには、ストークスパラメータS3の値を使用することなく、ストークスパラメータS1,S2の値のみから露光量Dの値を求めてもよい。なお、3つのストークスパラメータS1〜S3の値をそれぞれ曲線B31〜B33に当てはめて露光量Dの3つの値を求め、これらの3つの値の平均値を露光量Dの値D1xとしてもよい。このようにしてウェハ10の全部のショットに関してストークスパラメータS1〜S3の値から露光量Dの値を求める。
【0072】
そして、第3演算部60cは、ウェハ10のショット毎の露光量Dのベストドーズ量Dbeからの差分(誤差)の分布(誤差分布)を求め、これを制御部80に出力する。この誤差分布には、各ショットの露光量Dが良品範囲EG1内か否かの情報も含まれている。制御部80は、そのショット毎の露光量Dの誤差分布を記憶部85に記憶させるとともに表示装置(不図示)に表示する。なお、第3演算部60cは、露光量Dの誤差分布を求めることなく、例えば、算出した露光量Dを制御部80に出力してもよい。また、制御部80は、露光量Dの誤差分布や露光量Dを表示装置に表示させなくてもよい。
【0073】
次のステップ160において、第3演算部60cは、第2の装置条件Bで求めたウェハ10のショット毎のストークスパラメータS1,S2,S3の値(S1b,S2b,S3bとする)を上述のステップ134で記憶した第2の参照データ(
図9(c)の曲線C31〜C33)に当てはめて、当該ショットのフォーカス値F1xを求める。一例として、
図9(c)において、値S2b,S3bをそれぞれ曲線C32,C33に当てはめてフォーカス値F2b,F3bが得られる。これに対して、曲線C31はフォーカス値Fに関して山型に変化しているため、ストークスパラメータS1の値S1bに対応して2つのフォーカス値F1b及びF4bが得られる。このとき、その2つの値F1b及びF4bのうちで、他の曲線C32,C33から求められた値F2b,F3bにより近い方の値F1bを実際のフォーカス値Fであるとして選択する。一例として、そのようにして求められた3つのフォーカス値F1b,F2b,F3bの平均値を当該ショットのフォーカス値F1xとする。このようにしてウェハ10の全部のショットに関してストークスパラメータS1〜S3の値からフォーカス値Fを求める。
【0074】
そして、第3演算部60cは、ウェハ10のショット毎のフォーカス値Fのベストフォーカス位置Fbeからの差分(誤差)の分布(フォーカス位置の誤差分布)を求め、これを制御部80に出力する。この誤差分布には、各ショットのフォーカス位置が良品範囲EG2内か否かの情報も含まれている。制御部80は、そのショット毎のフォーカス位置の誤差分布を記憶部85に記憶させるとともに表示装置(不図示)に表示する。なお、第3演算部60cは、フォーカス位置の誤差分布を求めることなく、例えば、算出したフォーカス位置を制御部80に出力してもよい。また、制御部80は、フォーカス位置の誤差分布やフォーカス位置を表示装置に表示させなくてもよい。
【0075】
その後、評価装置1の制御部80の制御のもとで、信号出力部90からホストコンピュータ600を介して露光装置100の制御部(不図示)に、ウェハ10のショット毎の露光量の誤差分布(露光量むら)及びフォーカス位置の誤差分布(デフォーカス量の分布)の情報が提供される(ステップ162)。これに応じて露光装置100の制御部(不図示)では、例えばその露光量むら及び/又はデフォーカス量の分布がそれぞれ所定の許容範囲を超えている場合に、露光量及び/又はフォーカス位置を補正するために、例えば走査露光時の照明領域の走査方向の幅の分布の調整、及び/又はウェハ面の高さのオフセットの調整等の補正を行う。これによって、その後の露光時に、露光量の誤差及びデフォーカス量が低減される。その後、ステップ164で露光装置100において、補正された露光条件のもとでウェハが露光される。
【0076】
この実施形態によれば、実際に製品となるデバイス用のパターンが形成されたウェハ10を用いて2つの装置条件のもとでストークスパラメータを検出し、2つの装置条件毎に予め
図5の条件出し工程で求めてある第1及び第2の参照データに、その検出されたストークスパラメータの値を当てはめることによって、そのパターンの形成時に使用された露光装置100の露光条件中の露光量及びフォーカス位置を求めることができる。この際に、第1の装置条件Aでは、ストークスパラメータS1〜S3のフォーカス位置に対する感度が低いため、第1の装置条件Aのもとで検出されたストークスパラメータS1〜S3の値を用いることによって、ウェハ10を露光したときのフォーカス位置が適正値に対してずれていたとしても、そのフォーカス位置に実質的に影響されることなく、露光量を高精度に求めることができる。
【0077】
また、第2の装置条件Bでは、ストークスパラメータS1〜S3の露光量に対する感度が低いため、第2の装置条件Bのもとで検出されたストークスパラメータS1〜S3の値を用いることによって、ウェハ10を露光したときの露光量が適正値に対してずれていたとしても、その露光量に実質的に影響されることなく、フォーカス位置を高精度に求めることができる。
【0078】
言い換えれば、各装置条件において、露光量及びフォーカス位置の変化に対するストークスパラメータの変化の割合(感度)が互いに異なるとともに、その2つの装置条件間でも、露光量及びフォーカス位置の変化に対するストークスパラメータの変化の割合(感度)が互いに異なることを利用して、その露光量及びフォーカス位置を個別に高精度に評価又は検査できる。従って、この評価結果に基づいて、露光装置100における露光条件を補正することによって、その後のウェハに対する露光条件をより適正範囲に近づけることができ、デバイスを高精度に、高い歩留まりで製造できる。
【0079】
上述のように、本実施形態の評価方向及び評価装置1は、加工条件の一例としての所定の露光条件(露光量、フォーカス位置等)でウェハ10に形成されたパターンの露光条件を評価する方法及び装置である。そして、その評価方法は、評価対象パターンの一例としての繰り返しパターン12が形成された評価対象基板の一例としてのウェハ10の表面(ウェハ面)に直線偏光の照明光ILI(偏光光)を照射するステップ112Aと、照明光ILIの照射によりウェハ面から射出した回折光ILDを受光し、受光された回折光ILDのストークスパラメータS1〜S3(偏光状態を規定する量)を検出するステップ112A,118Aと、その検出されたストークスパラメータS1〜S3に基づいて、繰り返しパターン12を形成した際の露光条件を評価するステップ158,160と、を有する。
【0080】
また、評価装置1は、繰り返しパターン12が形成されたウェハ10の表面に直線偏光の照明光ILIを照射する照明系20(照明部)と、照明光ILIの照射によりウェハ面から射出した回折光ILDを受光し、回折光ILDのストークスパラメータS1〜S3を検出する撮像装置35及び画像処理部40(検出部)と、その検出された回折光ILDのストークスパラメータS1〜S3に基づいて、繰り返しパターン12を形成した際の露光条件を評価する演算部50(評価部)と、を備えている。
【0081】
本実施形態によれば、所定の露光条件のもとでの露光により設けられた実際に製品となるデバイス用の繰り返しパターン12を有するウェハ10を用いてストークスパラメータS1〜S3を検出し、予め求めてある上述の第1及び第2の参照データ(
図8(c)の曲線B31〜B33及び
図9(c)の曲線C31〜C33)にその検出されたストークスパラメータS1〜S4の値を当てはめることによって、繰り返しパターン12を形成したときの露光装置100における露光条件を求めている。この際に、露光条件の変化に対してストークスパラメータS1〜S3の値の変化が大きい装置条件(評価条件)、すなわちストークスパラメータの感度が高い装置条件でストークスパラメータを検出することができるため、繰り返しパターン12が形成されたウェハ10を用いて、繰り返しパターン12を形成したときの露光条件を高精度に、かつ効率的に評価できる。
【0082】
また、本実施形態では、ウェハ10からの回折光ILDを検出し、回折光ILDのストークスパラメータを求めているため、繰り返しパターン12が、露光条件の変化に応じて形状が大きく変化する部分(ホールパターン群12b)のX方向(周期方向)の幅に対して、露光条件が変化してもほとんど形状が変化しない部分(複数のホールパターン群12bの間の平坦部)のX方向の幅が広いようなパターンであっても、露光条件の変化に対してストークスパラメータの変化が大きくなる。このため、繰り返しパターン12を形成したときの露光条件を高精度に評価できる。
【0083】
また、従来の露光条件としてのフォーカス位置の評価方法のうち、レジストパターンの横ずれ量を計測する方法では、計測効率を高めにくいとともに、主光線が傾斜した照明光でマスクの評価用のパターンを照明する必要があり、実際のデバイス用のパターンを用いて露光を行う際のフォーカス位置を高精度に計測することが困難であった。これに対して、本実施形態によれば、実際のデバイス用のパターンを用いることができ、形成されたレジストパターンの形状を計測する必要がないため、実際のデバイス用のパターンを形成する工程において、露光条件を効率的に、かつ高精度に求めることができる。
【0084】
また、本実施形態において、演算部50は、ウェハ10の表面に繰り返しパターン12を形成した際の露光条件を評価するための第1及び第2の装置条件(第1及び第2の評価条件)を、露光条件(例えば露光量及びフォーカ位置)の既知の組み合わせで繰り返しパターン12が形成された条件振りウェハ10aの表面からの回折光のストークスパラメータS1〜S3に基づいて求めている(ステップ104〜136)。これによって、ウェハ10の評価時には、その求められた装置条件又は評価条件を用いてストークスパラメータを求めるだけでよいため、ウェハ10の評価を効率的に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態において、回折光の偏光を規定する量を利用してパターンの加工条件(露光条件)を評価するため、例えば正反射光の偏光を規定する量を利用する場合よりも、回折次数などの条件を装置条件として、より多くの装置条件を選択できる。したがって、条件出しにおいて、各加工条件(露光条件)に対して感度の高い装置条件、及び参照データを求めることができ、より高精度に加工条件(露光条件)を評価することができる。
【0086】
また、本実施形態のデバイス製造システムDMSは、露光システムを含み、この露光システムは、ウェハ10(基板)の表面にパターンを形成する加工装置としての露光装置100と、本実施形態の評価装置1と、を備え、評価装置1の評価結果に応じて露光装置100の露光条件を調整している。この露光システムによれば、実際にデバイス製造のために使用されるウェハを用いて、ウェハの表面に目標とする形状のパターンが形成されるように、効率的に、かつ高精度に露光装置100における露光条件を調整できる。
【0087】
なお、上記の実施形態では、以下のような変形が可能である。
まず、上記の実施形態では、第1及び第2の参照データ(
図8(c)の曲線B31〜B33及び
図9(c)の曲線C31〜C33)を評価装置1の演算部50で求めているが、その参照データを評価装置1とは別の演算装置としての例えばホストコンピュータ600で求めてもよい。この場合、ホストコンピュータ600からその参照データを評価装置1の演算部50の制御部80に供給し、制御部80ではその参照データを記憶部85に記憶しておく。そして、
図6に示すように露光条件を求める際には、その記憶部85に記憶した参照データを使用すればよい。
【0088】
また、上記の実施形態では、評価対象のパターンは複数のホールパターン12aよりなるパターンであるが、評価対象のパターンは、例えば所定方向を長手方向とする複数のラインパターンをその所定方向と直交する方向に周期的に配列したライン・アンド・スペースパターンでもよい。そのラインパターンの線幅とスペース部の幅との比は任意であり、例えばほぼ1:1であってもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、照明光の入射角θ1(回折角θ2)は、不図示の駆動機構を介して導光ファイバ24の射出部の位置並びに照明側凹面鏡25の位置及び角度を制御すること、及び第2の駆動部を介してウェハ10のチルト角φ2を制御することで調整している。この調整方法の他に、受光系30で検出する回折光ILDの回折角θ2は、受光側凹面鏡31をチルト軸TAを中心に傾動させつつ、撮像装置35の位置及び角度を制御することによって調整してもよい。
【0090】
また、上記の実施形態では、ストークスパラメータS1〜S3を用いて露光条件を評価している。しかしながら、ストークスパラメータS0〜S3のうちの少なくとも一つのストークスパラメータを用いて露光条件を評価してもよい。また、露光条件のうちの露光量及びフォーカス位置を評価する際に互いに異なるストークスパラメータを使用してもよい。
【0091】
また、上記の実施形態では、露光条件のうちの露光量及びフォーカス位置の両方を評価しているが、露光量及びフォーカス位置の少なくとも一方を評価するだけでもよい。露光量のみを求める場合には、
図6のステップ158において第1の装置条件Aで求めたストークスパラメータの値から露光量を求めればよい。また、フォーカス位置のみを求める場合には、
図6のステップ158を実行することなく、ステップ160において、第2の装置条件Bで求めたストークスパラメータの値からフォーカス位置を求めればよい。
【0092】
また、上記の実施形態では、露光条件として露光量及びフォーカス位置を評価しているが、露光条件として、露光装置100における露光光の波長、照明条件(例えばコヒーレンスファクタ(σ値)、投影光学系の開口数、又は液浸露光時の液体の温度等を評価するために上記の実施形態の評価を使用してもよい。
また、上記の実施形態では、加工条件として露光条件を評価しているが、加工条件として、露光条件とともに、又は露光条件とは別に、加工条件としてのコータ・デベロッパ200における膜厚条件を評価してもよい。その膜厚条件とは、ウェハに塗布されるレジストの膜厚の設定値及びその膜厚のばらつき等を含む。
【0093】
評価装置1を用いてその膜厚条件を評価する場合には、一例として、
図5の条件出しに対応する工程で、コータ・デベロッパ200によって異なる膜厚でレジストが塗布された複数枚のウェハを用意し、これらのウェハの各ショットを露光装置100で露光した後、それらのウェハを現像して繰り返しパターン12を形成する。その後、複数の装置条件のもとで、それらのウェハからの回折光のストークスパラメータを検出し、レジストの膜厚の変化に対してストークスパラメータS1〜S3のうちの少なくとも一つのストークスパラメータの値が大きくなる装置条件を求め、このストークスパラメータと膜厚との関係を示す参照データを求める。この後は、
図6の評価方法に対応する工程で、その装置条件のもとで検出したストークスパラメータをその参照データに当てはめることで、繰り返しパターン12が形成されたウェハ10のレジストの膜厚の平均値及びショット毎のばらつきを求めることができる。
【0094】
さらに、その異なる膜厚の複数枚のウェハをそれぞれ上述のFEMウェハとすることで、膜厚条件及び露光条件を評価することもできる。
また、露光装置で露光される基板において、レジストの下地として、酸化膜又は導電膜等が形成されている場合、レジストの現像後のエッチング等の工程によって酸化膜又は導電膜等のパターンが形成される。このパターンを高精度に形成するためには、その酸化膜又は導電膜等の膜厚条件も評価することが好ましい。この場合、その酸化膜又は導電膜等のパターンが形成されたウェハを
図1(a)のステージ5に載置し、そのウェハからの回折光のストークスパラメータを求めることによって、上述のレジストの膜厚を評価した場合と同様にその酸化膜又は導電膜等の膜厚条件も評価することができる。
【0095】
また、上記の実施形態では、2つの装置条件(評価条件)のもとでウェハの評価を行っているが、少なくとも一つの装置条件(評価条件)のもとでウェハの評価を行ってもよい。さらに、3つ以上の装置条件(評価条件)のもとでウェハの評価を行ってもよい。
また、上記の実施形態では、求められたストークスパラメータの値を参照データに当てはめて露光条件等を求めているが、
図5の条件出し工程に対応する工程おいて、ある装置条件のもとで、例えばストークスパラメータS1〜S3(又はこれらのうちの2つ)から評価対象の複数の加工条件を算出するための連立方程式を求めてもよい。この場合、
図6の評価工程に対応する工程では、その装置条件のもとで検出されるストークスパラメータS1〜S3等の値をその連立方程式に代入するのみで評価対象の加工条件の値を求めることができる。
【0096】
また、上記の第1、第2の装置条件に含まれる波長λ、入射角θ1、偏光子26の回転角はあくまでも一例であり、装置条件には評価装置1で変化させることができる他の任意の条件を含めることができる。例えば、検光子32の回転角がクロスニコル状態を中心として例えば任意の角度(例えば、5°程度)の間隔で複数の角度に設定される条件、検出する回折光の次数m、及びステージ5の回転角(照明光ILIの入射方向A2に対するウェハ10の繰り返しパターン12の周期方向A1の角度(ウェハ10の方位))等を装置条件に含めることができる。
【0097】
また、ステップ118において、条件振りウェハ10aのスクライブライン領域SL(デバイスのダイシング工程でチップ同士を切り分ける際の境界となる領域)を除いた全部のショットSAn(
図7(b)参照)内に対応する画素のストークスパラメータを算出し、算出結果を平均化してショット平均値を求めてもよい。このようにショット平均値を算出するのは、露光装置100の投影光学系の収差の影響等を抑制するためである。なお、その収差の影響等をさらに抑制するために、例えば
図7(b)のショットSAnの中央部の部分領域CAn内に対応する画素のストークスパラメータを平均化した値を算出してもよい。
【0098】
ただし、予め投影光学系の収差の影響(デジタル画像に与える誤差分布)を求めておき、デジタル画像の段階でその収差の影響を補正することも可能である。この場合には、ショット平均値の代わりに、ショットSAn内のI個(Iは例えば数10の整数)の長方形等の設定領域16(
図7(c)参照)毎に平均値を算出し、例えばショットSAn内で同じ位置にある設定領域16の平均値を用いてこれ以降の処理を行うようにしてもよい。設定領域16の配列は、例えば走査方向に8行で非走査方向に6列であるが、その大きさ及び配列は任意である。
【0099】
さらに、ウェハ10の評価を行う場合にも、ウェハの全部のショット内の全部の設定領域16に関してストークスパラメータの平均値を検出し、設定領域16単位で露光条件等を評価してもよい。
また、
図6のステップ162において、ウェハ10の全面の露光量の誤差分布(ドーズむら)、及びフォーカス位置の誤差分布(デフォーカス量の分布)の情報は、信号出力部90からホストコンピュータ600を介することなく直接に露光装置100の制御部(不図示)に出力されてもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、ストークスパラメータから求めた露光量D及びフォーカス位置Fから、これらの量が良品範囲か否かを評価している。これに対して、例えばある装置条件でストークスパラメータS1,S2を得て、これらの値から露光量Dを評価する場合に、ストークスパラメータS1,S2の二次元的な分布の中で、良品範囲を設定し、この二次元的な分布を露光量の良否判定のための参照データとしてもよい。この場合、パラメータS1,S2の値を(S1,S2)で表し、良品範囲を近似的に次のような中心座標が(sa,sb)で半径がsrの円の内部としてもよい。計測されるパラメータの値(S1,S2)を式(5)の左辺の演算式に代入して得られる値が式(5)を満たすときに、その計測値は露光量Dが良品範囲内にあることをしていることになる。
【0101】
(S2−sa)
2+(S3−sb)
2≦sr
2 …(5)
同様に、フォーカス位置に関しても、ストークスパラメータS1,S2(又はS2,S3等)の二次元的な分布の中で、良品範囲等を設定してもよい。
また、上述の実施形態では、3つのストークスパラメータS1〜S3の値を参照データに当てはめて露光量及びフォーカス位置を求めている。この他に、評価装置1においてある装置条件(評価条件)のもとで得られるストークスパラメータS1,S2,S3の値の組をポアンカレ球上で表現してもよい。この場合、一例として、ポアンカレ球上のある点(例えば
図5の条件出し工程に対応する工程で設定される点)からその3つのストークスパラメータS1,S2,S3の値の組で定まる点までの距離から露光量又はフォーカス位置等を求めることが可能となる。
【0102】
また、上述の実施形態では、
図5における条件出しにおいて、露光装置100の露光により繰り返しパターンが形成された条件振りウェハ10aを用いて参照データ(
図8(c)の曲線B31〜B33及び
図9(c)の曲線C31〜C33)を求め、この参照データを使用して、
図6の評価時に、条件出しで利用した露光装置100の露光条件(露光量及びフォーカス位置)を求めた。しかしながら、
図6の評価時に、その参照データ(
図8(c)の曲線B31〜B33及び
図9(c)の曲線C31〜C33)を用いて、露光装置100とは異なる露光装置(不図示)の露光条件を求めてもよい。この場合、露光装置100とは異なる露光装置でパターンが形成されたウェハを上述の
図6におけるステップ158〜160のように評価して、ステップ162のように露光装置を補正してもよい。また、露光装置100でパターンが形成されたウェハを上述の
図6におけるステップ158〜160のように評価して、その評価結果からステップ162で、露光装置100とは異なる露光装置を補正してもよい。
【0103】
また、検査部60は、露光条件(加工条件)を求めるだけでなく、求めた露光条件の良否判定を行ってもよい。この場合、信号出力部90は、良否判定結果に基づいて露光条件が適切ではない旨の警告を露光装置100やホストコンピュータ600に提供してもよい。この良否判定は、例えば、求めた露光条件と所定の閾値とを比較することによって行ってもよい。
また、評価装置1の条件出しで求めた装置条件及び参照データの少なくとも一方を、評価装置1の他の号機で使用して、当該号機で実際のデバイス製造工程でウェハ面に形成された繰り返しパターンの加工条件を評価してもよい。なお、上述の第1の実施形態の変形例は以下の第2の実施形態にも適用できる。
【0104】
[第2の実施形態]
第2の実施形態につき
図12(a)〜(f)を参照して説明する。本実施形態においても、
図1(b)のデバイス製造システムDMSを使用し、加工条件を評価するために
図1(a)の評価装置1を使用する。また、本実施形態では、いわゆるスペーサ・ダブルパターニング法(又はサイドウォール・ダブルパターニング法)で微細周期の繰り返しパターンが形成されたウェハの加工条件を評価する。
【0105】
スペーサ・ダブルパターニング法では、まず、
図12(a)に示すように、ウェハ10dの例えばハードマスク層17の表面に、コータ・デベロッパ200によるレジストの塗布、露光装置100によるパターンの露光、及び現像によって、複数のレジストパターンのライン部3Aを周期Pで配列したライン・アンド・スペースパターンよりなる繰り返しパターン13が形成される。繰り返しパターン13に照明光ILIを照射すると、正反射光ILR及び1次回折光ILDが発生する。この後、
図12(b)に示すように、ライン部3Aをスリミングによって線幅が1/2のライン部3Bにし、不図示の薄膜形成装置でライン部3Bを覆うようにスペーサ層18を堆積する。その後、エッチング装置300でウェハ10dのスペーサ層18だけをエッチングした後、エッチング装置300でライン部3Bのみを除去することで、
図12(c)に示すように、ハードマスク層17上に線幅がほぼP/4の複数のスペーサ部18Aを周期P/2で配列した繰り返しパターンが形成される。その後、複数のスペーサ部18Aをマスクとしてハードマスク層17をエッチングすることによって、
図12(d)に示すように、線幅がほぼP/4のハードマスク部17Aを周期P/2で配列した繰り返しパターン17Bが形成される。この後、一例として、繰り返しパターン17Bをマスクとして、ウェハ10dのデバイス層10daのエッチングを行うことで、極めて微細な周期の繰り返しパターンが形成できる。さらに、上記の工程を繰り返すことによって、周期がP/4の繰り返しパターンを形成することも可能である。
【0106】
また、評価装置1を用いてウェハ10dを照明光ILIで照明し、ウェハ10dの繰り返しパターン17Bからの回折光ILDを検出する場合、上述のように照明光ILIの波長λは繰り返しパターン17Bの周期(P/2)の2倍より小さい必要がある。ただし、繰り返しパターン17Bがより大きい周期で配列されたパターンブロックが存在する場合に、このパターンブロックからの回折光を検出することも可能である。この場合には、照明光ILIの波長λはより長くすることができる。
【0107】
さらに、本実施形態では、デバイス製造システムDMSによる繰り返しパターン17Bの加工条件として、薄膜形成装置(不図示)による
図12(b)のスペーサ層18の堆積時間ts(薄膜堆積量)、及びエッチング装置300によるスペーサ層18のエッチング時間te(エッチング量)を評価するものとする。
この場合、
図5の条件出し工程に対応する工程において、
図12(a)〜(d)のスペーサ・ダブルパターニング・プロセスを、例えば5種類の堆積時間ts及び5種類のエッチング時間teを組み合わせた25(=5×5)回のプロセスで実行して、25枚の条件振りウェハ(不図示)の各ショットにそれぞれ繰り返しパターン17Bを形成する。なお、ベスト堆積時間(適正堆積時間)をtsbe、ベストエッチング時間(適正エッチング量)をtebeとする。
【0108】
作成された複数(ここでは25枚)の条件振りウェハは順次、
図1(a)の評価装置1のステージ5上に搬送される。そして、複数の条件振りウェハのそれぞれにおいて、上記の複数の装置条件ε(n−m−j)のもとで直線偏光の照明光ILIを照射し、撮像部35及び画像処理部40が、第1の実施形態と同様に回転位相子法によって、条件振りウェハからの例えば1次の回折光ILDのストークスパラメータS1〜S3を求める。そして、演算部50において、堆積時間tsに対するストークスパラメータS1〜S3の感度が高く、エッチング時間teに対するストークスパラメータS1〜S3の感度が低い第1の装置条件Cを求める。さらに、この第1の装置条件Cのもとで求めたストークスパラメータS1〜S3と堆積時間tsとの関係を示す曲線(不図示)を補間して、
図12(e)に示すように、ストークスパラメータS1,S2,S3と堆積時間tsとの関係を示す曲線D11,D12,D13(第1の参照データ)を求める。
図12(e)の横軸は、ベスト堆積時間(適正堆積時間)tsbeを中心とするスペーサ層18の堆積時間tsであり、堆積時間tsの良品範囲EG3も示されている。
【0109】
さらに、エッチング時間teに対するストークスパラメータS1〜S3の感度が高く、堆積時間tsに対するストークスパラメータS1〜S3の感度が低い第2の装置条件Dを求める。さらに、この第2の装置条件Dのもとで求めたストークスパラメータS1〜S3と堆積時間tsとの関係を示す曲線(不図示)を補間して、
図12(f)に示すように、ストークスパラメータS1,S2,S3とエッチング時間teとの関係を示す曲線D21,D22,D23(第2の参照データ)を求める。
図12(f)の横軸は、ベストエッチング時間(適正エッチング量)tebeを中心とするスペーサ層18のエッチング時間teであり、エッチング時間teの良品範囲EG4も示されている。
【0110】
その後、
図6の評価工程に対応する工程では、実際のデバイス製造用の
図12(d)の繰り返しパターン17Bが形成されたウェハ10dを評価装置1のステージ5に載置し、評価装置1の撮像部35及び画像処理部40が、回転位相子法によって第1の装置条件C及び第2の装置条件Dのもとでそれぞれウェハ10dからの1次の回折光ILDのストークスパラメータS1〜S3の値を求める。そして、演算部50において、第1の装置条件Cのもとで求めたストークスパラメータS1〜S3を
図12(e)の曲線D11〜D13(第1の参照データ)に当てはめることで、対応する堆積時間ts及びこの誤差分布を求める。同様に、第2の装置条件Dのもとで求めたストークスパラメータS1〜S3を
図12(f)の曲線D21〜D23(第2の参照データ)に当てはめることで、対応するエッチング時間te及びこの誤差分布を求める。
【0111】
さらに、制御部80の制御のもとで信号出力部90からホストコンピュータ600を介して薄膜形成装置(不図示)に、ウェハ10の全面のスペーサ層18の堆積時間tsの誤差分布(膜厚むら)の情報が提供される。これに応じてその薄膜形成装置では、例えばその堆積時間等の調整を行う。同様に、信号出力部90からホストコンピュータ600を介してエッチング装置300に、ウェハ10の全面のエッチング時間teの誤差分布(エッチングむら)の情報が提供される。これに応じてエッチング装置300では、例えばエッチング時間等の調整を行う。これによって、その後のスペーサ・ダブルパターニング・プロセスの実行時に周期P/2の繰り返しパターン17Bを高精度に製造できる。
【0112】
また、ダブルパターニング・プロセスでの加工条件としては、エッチング量及びスペーサの堆積量の外に、例えば露光装置100における露光条件(露光量及びフォーカス位置等)及び/又はコータ・デベロッパ200における膜厚条件(レジストの膜厚の設定値等)を評価するようにしてもよい。
なお、
図12(e)及び(f)の参照データもホストコンピュータ600で作成し、作成された参照データを評価装置1の記憶部85に記憶させてもよい。
【0113】
なお、上記の各実施形態では、
図1(a)の評価装置1の照明系20は、ウェハ10,10dの表面の全面を直線偏光の照明光ILI(偏光光)で一括して照明し、撮像装置35(検出部)は、ウェハ10,10dの表面の全面の像を撮像する撮像素子35bを有する。このため、ウェハ10,10dの全面の各ショットに形成された繰り返しパターン12,17Bの加工条件を効率的に評価できる。
【0114】
これに対して、ウェハ10(被検基板)の表面の一部を偏光光で照明する照明系と、ウェハ10の表面の一部の像を撮像する撮像素子と、ウェハ10の表面に平行なX方向及びY方向に移動可能なステージと、を備える評価装置(不図示)を使用してもよい。この変形例の評価装置では、そのステージによって、その照明系からの偏光光がウェハ10の表面の全面に順次照射されるように、ウェハ10が移動される。この変形例では、ウェハ10の表面を複数の部分に分割し、各部分に形成された繰り返しパターン12の加工条件が順次評価されることになる。この変形例の評価装置は小型にできるため、例えば露光装置100内にオン・ボディで組み込むことも可能となる。この場合には、評価装置のステージを露光装置100のウェハステージ(不図示)で兼用することも可能であるため、評価装置の構成をさらに簡素化できる。
【0115】
また、上記の各実施形態では、回転位相子法でストークスパラメータを求めているが、ストークスパラメータは回転検光子法で求めてもよい。回転検光子法では、1/4波長板33を回転する代わりに検光子32を回転しながら複数の画像を撮像し、得られた複数の画像からストークスパラメータS0〜S3が求められる。
また、上記の各実施形態では、ウェハからの光の偏光の状態を規定する量をストークスパラメータで表している。しかしながら、その偏光の状態を規定する量を、いわゆるジョーンズ標記で光学系の偏光特性を表すための2行の複素列ベクトルよりなるジョーンズベクトル(Jones Vector)で表してもよい。ジョーンズ標記は、例えば、参考文献「M.Totzeck, P.Graeupner, T.Heil, A.Goehnermeier, O.Dittmann, D.S.Kraehmer, V.Kamenov and D.G.Flagello: Proc. SPIE 5754, 23(2005)」に記載されているように、光学系の偏光特性を表すための、2行×2列の複素行列(偏光行列)よりなるジョーンズ行列(Jones Matrix)と、当該光学系によって変換される偏光状態を表すためのジョーンズベクトルとで記述される。
【0116】
また、偏光の状態を規定する条件をストークスパラメータ及びジョーンズベクトルの両方を用いて表してもよい。さらに、偏光の状態を規定する条件をいわゆるミューラ行列で表すこともできる。
また、上記の各実施形態において、露光装置100は液浸露光法を用いるスキャニングステッパーでもよく、ドライ型のスキャニングステッパー又はステッパー等でもよい。さらに、露光装置として、露光光として波長が100nm以下のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を使用するEUV露光装置、又は露光ビームとして電子ビームを用いる電子ビーム露光装置を使用する場合にも上述の実施形態が適用できる。
【0117】
また、上記の各実施形態においては、光源部22からの光を偏光子26で直線偏光に変換した直線偏光光をウェハへ照明しているが、ウェハを照明する光は直線偏光光でなくてもよい(
図1(a)参照)。例えば、ウェハを円偏光の光で照明してもよい。この場合、例えば、偏光子26に加えて1/4波長板を設けることにより、光源部22からの光を偏光子26と1/4波長板で円偏光光に変換してウェハへ照明する。また、ウェハを円偏光以外の楕円偏光で照明してもよい。光源部22からの光を直線偏光や楕円偏光(円偏光を含む楕円偏光)に変換する構成は、上記以外にも公知の構成を適用することができる。また、光源部22として、メタルハライドランプや水銀ランプ等の非偏光光を射出する光源以外にも、直線偏光光や楕円偏光光を射出する光源を利用することもできる。この場合、偏光子26を省略することができる。
【0118】
また、上記の各実施形態において、1/4波長板33は、受光系30の受光側凹面鏡31で反射された光の光路上に配置されているが、この配置に限定されない。例えば、1/4波長板33は照明系20に配置させてもよい。具体的には、照明系20において、導光ファイバ24からの光が偏光子26を通過した光の光路上に1/4波長板33を配置してもよい。この場合、1/4波長板33は、偏光子26と照明側凹面鏡25との間の光路上に配置される。
【0119】
また、上記の各実施形態では、評価装置1はデバイス製造システムDMSの一部であるが、評価装置1は単体で例えばウェハに形成されたパターンからその加工条件を評価するために使用してもよい。
また、
図13に示すように、半導体デバイス(図示せず)は、デバイスの機能・性能設計を行う設計工程(ステップ221)、この設計工程に基づいたマスク(レチクル)を製作するマスク製作工程(ステップ222)、シリコン材料等からウェハ用の基板を製造する基板製造工程(ステップ223)、デバイス製造システムDMS又はこれを用いたパターン形成方法によりウェハにパターンを形成する基板処理工程(ステップ224)、デバイスの組み立てを行うダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージ工程等を含む組立工程(ステップ225)、並びにデバイスの検査を行う検査工程(ステップ226)等を経て製造される。その基板処理工程(ステップ224)では、コータ・デベロッパ200によってウェハにレジストを塗布する工程、露光装置100によりマスクのパターンをウェハに露光する露光工程、及びコータ・デベロッパ200によってウェハを現像する現像工程を含むリソグラフィ工程、並びに評価装置1によりウェハからの光を用いて膜厚条件及び/又は露光条件等の加工条件を評価する評価工程(検査工程)が実行される。
【0120】
このようなデバイス製造方法において、前述の評価装置1を用いてその加工条件を評価し、この評価結果に基づいて例えばその加工条件を補正することによって、最終的に製造される半導体の歩留まりを向上できる。
なお、本実施形態のデバイス製造方法では、特に半導体デバイスの製造方法について説明したが、本実施形態のデバイス製造方法は、半導体材料を使用したデバイスの他、例えば液晶パネルや磁気ディスクなどの半導体材料以外の材料を使用したデバイスの製造にも適用することができる。
【0121】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した検査装置や検査方法などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。