特許第6406525号(P6406525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6406525-樹脂組成物 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406525
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20181004BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20181004BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   G02B3/00 A
   C08L33/06
   G02B1/04
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-562710(P2015-562710)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2014084632
(87)【国際公開番号】WO2015122109
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-25437(P2014-25437)
(32)【優先日】2014年2月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
(72)【発明者】
【氏名】坂口 崇洋
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−258616(JP,A)
【文献】 特開2013−212489(JP,A)
【文献】 特開2013−212569(JP,A)
【文献】 特開2002−060467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/06
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分、(B)成分及び溶剤を含有する平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
(A)成分:下記式(1)で表される構造単位を有し、さらに、下記式(2)又は式(3)で表される構造単位を有する共重合体
(B)成分:熱酸発生剤
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその中にエーテル結合を有してもよく、Rはエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、nは0乃至5の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される構造単位は下記式(1−1)で表される構造単位である、請求項1に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表す。)
【請求項3】
前記共重合体はさらに下記式(4)で表される構造単位を有する、請求項1又は請求項2に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化3】
(式中、Xはシクロヘキシル基又はフェニル基を表す。)
【請求項4】
前記共重合体の重量平均分子量は1,000乃至50,000である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱酸発生剤は、前記樹脂組成物から前記溶剤を除いた固形分中の含有量に基づいて0.1質量%乃至20質量%含まれる、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の樹脂組成物から作製される平坦化膜。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の樹脂組成物から作製されるマイクロレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物、並びに当該樹脂組成物より形成される平坦化膜及びマイクロレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCD/CMOSイメージセンサを製造する工程では、溶剤やアルカリ溶液等の薬液による浸漬処理が行なわれ、このような処理により素子が劣化あるいは損傷することを防止するために、当該処理に対して耐性を有する保護膜を素子表面に設けることが行なわれている。このような保護膜には、透明性を有すること、耐熱性および耐光性が高く、長期間にわたって着色等の変質を起こさないこと、耐溶剤性、耐アルカリ性に優れたものであることなどの性能が要求される(特許文献1)。さらに、近年、CCD/CMOSイメージセンサの高精細化によってセンサ感度の向上が必要となったことから、マイクロレンズから効率良く受光部へ集光するため、保護膜をカラーフィルター上などに形成する場合には、当該保護膜は下地基板上に形成された段差を平坦化できることも求められる(特許文献2及び特許文献3)。一方、CCD/CMOSイメージセンサ用のカラーフィルターにおいては、従来の顔料分散系では解像度を更に向上させることは困難であり、顔料の粗大粒子により色ムラが発生する等の問題があるため、固体撮像素子のように微細パターンが要求される用途には適さない。そのため、顔料分散系に代えて染料を使用する技術が提案されている(特許文献4)。しかしながら、従来の熱硬化性の保護膜は、180℃以上の温度で焼成されるため、一般的に180℃程度で分解が開始する染料を使用したカラーフィルター上への適用は困難であった(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2921770号
【特許文献2】特開2008−208235号公報
【特許文献3】国際公開第2013/005619号
【特許文献4】特開平6−75375号公報
【特許文献5】特開2010−237374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、前記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、透明性、耐溶剤性及び平坦性に優れた、100℃よりも高い所望の温度で硬化可能な熱硬化性の樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1観点として、
(A)成分、(B)成分及び溶剤を含有する平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
(A)成分:下記式(1)で表される構造単位を有し、さらに、下記式(2)又は式(3)で表される構造単位を有する共重合体
(B)成分:熱酸発生剤
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその中にエーテル結合を有してもよく、Rはエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、nは0乃至5の整数を表す。)
第2観点として、前記式(1)で表される構造単位は下記式(1−1)で表される構造単位である、第1観点に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表す。)
第3観点として、前記共重合体はさらに下記式(4)で表される構造単位を有する、第1観点又は第2観点に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化3】
(式中、Xはシクロヘキシル基又はフェニル基を表す。)
第4観点として、前記共重合体の重量平均分子量は1,000乃至50,000である、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一つに記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
第5観点として、前記熱酸発生剤は、前記樹脂組成物から前記溶剤を除いた固形分中の含有量に基づいて0.1質量%乃至20質量%含まれる、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一つに記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
第6観点として、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一つに記載の樹脂組成物から作製される平坦化膜。
第7観点として、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一つに記載の樹脂組成物から作製されるマイクロレンズ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、(B)成分である熱酸発生剤を含むため、100℃より高い所望の温度での硬化性と、保存安定性に優れる。さらに、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜は、優れた透明性、耐溶剤性、及び平坦性を有する。以上より、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜により、下地基板上に形成された段差を平坦化することができる。また、本発明の樹脂組成物から樹脂膜を形成後にレジストを塗布する場合、及び平坦化膜又はマイクロレンズ形成後に電極/配線形成工程が行われる場合には、前記樹脂膜は、レジストとのミキシング、有機溶剤による平坦化膜又はマイクロレンズの変形及び剥離といった問題も著しく減少させることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、平坦化膜及びマイクロレンズを形成する材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の各成分の詳細を説明する。本発明の樹脂組成物から溶剤を除いた固形分は通常、1質量%乃至50質量%である。
【0008】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、前述の下記式(1)で表される構造単位を有し、さらに、式(2)又は式(3)で表される構造単位を有する共重合体である。
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその中にエーテル結合を有してもよく、Rはエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、nは0乃至5の整数を表す。)
【0009】
前記式(1)の例としては、下記式(1−1)で表される構造単位が挙げられる。
【化5】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表す。)
【0010】
前記式(2)で表される構造単位を形成する化合物(モノマー)の具体例としては、4−ビフェニル(メタ)アクリレート、2−(4−ビフェニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ビフェニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ビフェニルオキシ)−2’−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−ビフェニルオキシ)−2’−エトキシエチル(メタ)アクリレート、NKエステル〔登録商標〕A−LEN−10(新中村化学工業(株)製)が挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
前記式(3)で表される構造単位を形成する化合物(モノマー)の具体例としては、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニルが挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
前記式(4)で表される構造単位を形成する化合物(モノマー)の具体例としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
前記共重合体において、上記(A)成分の共重合体中、上記式(1)で表される構造単位の含有量は10mol%乃至90mol%であり、好ましくは20mol%乃至70mol%である。
【0014】
前記共重合体の重量平均分子量は通常、1,000乃至50,000であり、好ましくは3,000乃至30,000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0015】
また、本発明の樹脂組成物における前記共重合体の含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて通常、1質量%乃至99質量%であり、好ましくは5質量%乃至95質量%である。
【0016】
本発明において、前記(A)成分を得る方法は特に限定されないが、一般的には、上述した共重合体を得るために用いるモノマー種を含むモノマー混合物を重合溶媒中、通常50℃乃至120℃の温度下で重合反応させることにより得られる。このようにして得られる共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液状態であり、この状態で単離することなく、本発明の樹脂組成物に用いることもできる。
【0017】
また、上記のようにして得られた共重合体の溶液を、攪拌させたヘキサン、ジエチルエーテル、メタノール、水等の貧溶媒に投入して当該共重合体を再沈殿させ、生成した沈殿物をろ過・洗浄後、常圧又は減圧下で常温又は加熱乾燥することで、当該共重合体を粉体とすることができる。このような操作により、前記共重合体と共存する重合開始剤や未反応化合物を除去することができる。本発明においては、前記共重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を、例えば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0018】
<(B)成分>
本発明の(B)成分である熱酸発生剤は、加熱によって酸が発生し、酸の作用によって前記(A)成分中のエポキシ基をカチオン重合させる触媒である。熱酸発生剤としては、通常カチオン成分とアニオン成分とが対になった有機オニウム塩化合物が用いられる。
【0019】
上記カチオン成分としては、例えば、有機スルホニウム、有機オキソニウム、有機アンモニウム、有機ホスホニウム、有機ヨードニウム等の有機カチオンが挙げられる。また、上記アニオン成分としては、例えば、B(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSOが挙げられる。
【0020】
熱酸発生剤としては、例えば、TA100、TA120、TA160(以上、サンアプロ(株)製)、K−PURE〔登録商標〕TAG2689、同TAG2690、同CXC1614、同CXC1738(以上、King Industries Inc.製)、サンエイドSI−100L、同SI−180L(以上、三新化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの熱酸発生剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物における(B)成分の含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて通常、0.1質量%乃至20質量%である。
【0022】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、(A)成分である共重合体を溶剤に溶解し、この溶液に(B)成分である熱酸発生剤を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0023】
前記溶剤としては、上記(A)成分、(B)成分を溶解するものであれば特に限定されない。そのような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトンを挙げることができる。これらの溶剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
これらの溶剤の中でも、本発明の樹脂組成物を基板上に塗布して形成される塗膜のレベリング性の向上の観点より、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、乳酸エチル、乳酸ブチル及びシクロヘキサノンが好ましい。
【0025】
また、本発明の樹脂組成物は、塗布性を向上させる目的で、界面活性剤を含有することもできる。当該界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F−171、同F−173、同R−30、同R−40、同R−40−LM(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)、FTX−206D、FTX−212D、FTX−218、FTX−220D、FTX−230D、FTX−240D、FTX−212P、FTX−220P、FTX−228P、FTX−240G等フタージェントシリーズ((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
また、前記界面活性剤が使用される場合、本発明の樹脂組成物における含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて、3質量%以下であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、架橋剤、硬化助剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、酸化防止剤、密着助剤等の添加剤を含むことができる。
【0028】
以下、本発明の樹脂組成物の使用例について説明する。
基板{例えば、酸化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、カラーフィルターが形成されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板}上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の樹脂組成物を塗布後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークして硬化させて平坦化膜又はマイクロレンズ用樹脂膜を形成する。
【0029】
ベーク条件は、ベーク温度80℃乃至300℃、ベーク時間0.3分乃至60分間の中から適宜選択される。また上記温度範囲内の異なるベーク温度で2ステップ以上処理してもよい。本発明の樹脂組成物の場合、200℃未満のベーク温度で所望の樹脂膜が形成可能である。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜の膜厚としては、0.005μm乃至5.0μmであり、好ましくは0.01μm乃至3.0μmである。
【0031】
その後、本発明の樹脂組成物から形成されたマイクロレンズ用樹脂膜の上にレジスト溶液を塗布し、所定のマスクを通して露光し、必要に応じて露光後加熱(PEB)を行い、アルカリ現像、リンス及び乾燥することにより、所定のレジストパターンを形成する。露光には、例えば、g線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーを使用することができる。
【0032】
次いで、加熱処理(通常は200℃を超えない温度)することにより、上記レジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成する。このレンズパターンをエッチングマスクとして下層のマイクロレンズ用樹脂膜をエッチバックして、レンズパターン形状をマイクロレンズ用樹脂膜に転写することによってマイクロレンズを作製する。
【実施例】
【0033】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
〔下記合成例で得られた共重合体の重量平均分子量の測定〕
装置:日本分光(株)製GPCシステム
カラム:Shodex〔登録商標〕KF−804L及びKF−803L
カラムオーブン:40℃
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
【0034】
[共重合体の合成]
<合成例1>
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(サイクロマー〔登録商標〕M100((株)ダイセル製))19.7g、エトキシ化オルトフェニルフェノールアクリレート(NKエステル〔登録商標〕A−LEN−10(新中村化学工業(株)製))40.0g、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート114.0gに溶解させた後、この溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70.2gを70℃に保持したフラスコ中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間反応させることにより、前記式(1)で表される構造単位及び前記式(2)で表される構造単位を有する共重合体の溶液(固形分濃度25質量%)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは32,000(ポリスチレン換算)であった。
【0035】
<合成例2>
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート20.0g、4−ビニルビフェニル11.0g、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.64gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.9gに溶解させた後、この溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27.0gを70℃に保持したフラスコ中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間反応させることにより、前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位を有する共重合体の溶液(固形分濃度25質量%)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは17,000(ポリスチレン換算)であった。
【0036】
<合成例3>
グリシジルメタクリレート6.5g、1−n−ブトキシエチルメタクリレート8.5g、スチレン38.0g、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート103.0gに溶解させた後、この溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート26.0gを75℃に保持したフラスコ中に4時間かけて滴下した。滴下終了後、18時間反応させることにより、前記式(2)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位のいずれも有さない共重合体の溶液(固形分濃度30質量%)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは14,000(ポリスチレン換算)であった。
【0037】
[樹脂組成物の調製]
<実施例1>
合成例1で得られた(A)成分である共重合体の溶液10.0g(固形分2.5g含む)、(B)成分である熱酸発生剤としてK−PURE〔登録商標〕TAG2689(King Industries Inc.製)0.04g、及び界面活性剤としてメガファック〔登録商標〕R−30(DIC(株)製)0.003gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.5gに溶解させて溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して樹脂組成物を調製した。
【0038】
<実施例2>
合成例2で得られた(A)成分である共重合体の溶液10.0g(固形分2.5g含む)、(B)成分である熱酸発生剤としてK−PURE〔登録商標〕TAG2689(King Industries Inc.製)0.04g、及び界面活性剤としてメガファック〔登録商標〕R−30(DIC(株)製)0.003gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.5gに溶解させて溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して樹脂組成物を調製した。
【0039】
<比較例1>
合成例1で得られた(A)成分である共重合体の溶液10.0g(固形分2.5g含む)、及び界面活性剤としてメガファック〔登録商標〕R−30(DIC(株)製)0.003gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートル7.5gに溶解させて溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して樹脂組成物を調製した。
【0040】
<比較例2>
合成例3で得られた(A)成分である共重合体の溶液10.0g(固形分3.0g含む)、及び界面活性剤としてメガファック〔登録商標〕R−30(DIC(株)製)0.003gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートル11.0gに溶解させて溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して樹脂組成物を調製した。
【0041】
[耐溶剤性試験]
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で調製した樹脂組成物をそれぞれ、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。これらの樹脂膜に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、2−プロパノール、及び2.38質量%濃度の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に、それぞれ23℃の温度条件下、5分間浸漬する試験を行った。浸漬前後において膜厚変化を測定し、上記浸漬溶剤のうち1つでも、浸漬前の膜厚に対して5%以上の膜厚増減があった場合は“×”、全ての溶剤について膜厚増減が5%未満であった場合は“○”として耐溶剤性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0042】
[透過率測定]
実施例1及び実施例2で調製した樹脂組成物をそれぞれ、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。これらの樹脂膜に対し、紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて、波長400nmの透過率を測定した。評価結果を表1に示す。
【0043】
[保存安定性]
実施例1及び実施例2で調製した直後の樹脂組成物をそれぞれ、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行うことにより樹脂膜を形成し、光干渉式膜厚測定装置ラムダエースVM−2110(大日本スクリーン製造(株)製)を用いてこれらの樹脂膜の膜厚を測定した。さらに、同じ樹脂組成物を35℃(加速試験)にて1ヶ月保管し、保管後の樹脂組成物から同様の方法にて形成した樹脂膜の膜厚を測定した。調製直後の樹脂組成物から形成した樹脂膜の膜厚と比較して、膜厚変化が10%未満であるものを“○”、10%以上であるものを“×”とした。評価結果を表1に示す。
【0044】
[段差平坦化性]
実施例1及び実施例2で調製した樹脂組成物を、それぞれ高さ0.3μm、ライン幅10μm、ライン間スペース10μmの段差基板(図1参照)上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。図1に示すh1(段差基板1の段差)とh2(樹脂膜2の段差、即ちライン上の樹脂膜の高さとスペース上の樹脂膜の高さとの高低差)から、“式:(1−(h2/h1))×100”を用いて平坦化率を求めた。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂膜は、高耐溶剤性であると共に高透明性であった。さらに、本発明の樹脂組成物は、保存安定性に優れることがわかった。さらに、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂膜は、いずれも平坦化率50%以上の段差平坦化性を有し、中でも実施例1で調製した樹脂組成物から形成された樹脂膜については、平坦化率80%以上の優れた段差平坦化性を有するものであった。一方、比較例1で調製した樹脂組成物から形成された樹脂膜については熱酸発生剤を含有しないため、比較例2で調製した樹脂組成物から形成された樹脂膜については200℃未満のベーク温度で形成されたため、耐溶剤性を満足しない結果となり、平坦化膜及びマイクロレンズ用樹脂膜いずれにも適さないことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、段差基板上に本発明の樹脂組成物を塗布し、ベークして形成される樹脂膜を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1:段差基板
2:樹脂膜
3:ライン幅
4:ライン間スペース
h1:段差基板の段差
h2:樹脂膜の段差
図1