特許第6406613号(P6406613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6406613含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406613
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/26 20060101AFI20181004BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20181004BHJP
   C22C 19/03 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   B22F9/26 C
   C22B23/00 102
   !C22C19/03 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-167904(P2014-167904)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-212411(P2015-212411A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-83886(P2014-83886)
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 佳智
(72)【発明者】
【氏名】平郡 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高石 和幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 修
(72)【発明者】
【氏名】大原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】米山 智暁
(72)【発明者】
【氏名】工藤 陽平
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−074160(JP,A)
【文献】 特表2003−514111(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/001741(WO,A1)
【文献】 特表平10−509213(JP,A)
【文献】 日本化学会 編,化学便覧 基礎編 改訂5版,日本,丸善出版,2004年 2月,第9章, II-151頁, 表9.32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/26
B22F 1/00
C22C 19/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法であって、
硫酸ニッケル水溶液に錯化剤を添加して形成したニッケル錯体イオンを含有する溶液を作製する錯化処理と、
加圧容器内に装入した前記ニッケル錯体イオンを含有する溶液を、液温150〜250℃に保持し、前記ニッケル錯体イオンを含有する溶液に水素ガスを吹き込んで水素還元を行ってニッケル粉を生成する水素還元処理と、
前記ニッケル粉を、液温50℃以上、90℃以下で、ニッケル粉の重量に対して1倍量以上、5倍量以下の水量による水洗浄、又は、低圧下でニッケル粉と水との混合物を超音波洗浄し、硫黄及び炭素の各含有量の両者を低減したニッケル粉を生成する水洗浄処理と、
水洗浄処理されたニッケル粉を窒素と濃度2〜4重量%の水素の混合気体雰囲気下で焙焼する焙焼処理を順に経ることを特徴とする含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法。
【請求項2】
前記焙焼処理の混合気体における水素濃度が、2〜4重量%であることを特徴とする請求項1記載の含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法。
【請求項3】
前記焙焼処理における温度が、700℃以上、1250℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル溶液から錯化還元法により製造したニッケル粉から不純物、特に炭素及び硫黄を低減したニッケル粉を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルの製錬方法には、鉱石を焙焼して硫化物や酸化物の形態としたものを還元して鉄との合金であるフェロニッケルを得て、ステンレスの原料に用いたり、硫化物を塩酸や硫酸で溶解した酸溶解液から不純物を分離し、電解採取して電気ニッケルを得たりする方法がある。また、前記酸溶解した液から硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩類として回収し、めっきや電池材料などに用いることがある。
【0003】
その他に、そのニッケル塩類から粉末状のニッケルを製造する方法として、例えば非特許文献1に示す湿式プロセスがある。
非特許文献1記載の方法は、硫酸ニッケル水溶液に錯化剤を混合、錯化処理してニッケルアンミン錯体の溶液を形成し、その溶液を加圧容器に入れて密栓後、150〜250℃程度に昇温、保持し、その中に水素ガスを吹き込む、いわゆる錯化還元法と呼ばれる方法で、水素によりニッケルアンミン錯体が還元されてニッケル粉を生成するものである。
【0004】
また、ニッケル粉をペーストやニッケル水素電池等の正極活物質として使用する場合に炭素や硫黄などの不純物元素は、ガス発生の原因となるため、その低減が求められている。
【0005】
そこで、硫黄や炭素を除去するために、加熱処理する方法が提案され、例えば特許文献1は、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬、あるいはスクラップや工程仕掛品から得られたニッケル硫化物や、ニッケル・コバルトを含む混合硫化物からフェロニッケル原料を製造する製造方法を提供する方法が示されている。
【0006】
具体的には(1)ニッケル硫化物、あるいはニッケル硫化物とコバルト硫化物の混合硫化物を、スラリーとし、そのスラリーに酸化剤を添加して、ニッケル硫化物を溶解した場合にはニッケルを含有する濃縮液、あるいは混合硫化物を溶解した場合にはニッケルおよびコバルトを含有する濃縮液を得る再溶解工程。(2)再溶解工程で得られた濃縮液にアルカリを添加し、中和澱物と中和後液とを得る脱鉄工程。(3)脱鉄工程で得られた中和後液と有機抽出剤を混合して抽出有機と抽残液とに分離し、次いで抽出有機から逆抽出液と逆抽出後有機とを得る溶媒抽出工程。(4)溶媒抽出工程で得られた抽残液にアルカリ
酸化ニッケルを230℃ 以上、870℃ 以下の温度範囲に加熱、焙焼して酸化ニッケルを形成する焙焼工程。(5)水酸化工程で得られた水酸化ニッケルを230℃ 以上、870℃ 以下の温度範囲に加熱、焙焼して酸化ニッケルを形成する焙焼工程。(6)焙焼工程で得られた酸化ニッケルを、水温50℃以上の水を用いて水洗浄し、次いで50℃以上の温度で假焼することによって、洗浄後酸化ニッケルを形成することを特徴とする洗浄・假焼工程、を経て硫黄を分離したフェロニッケル原料を得るものである。
【0007】
しかし、加熱処理により炭素や硫黄などの不純物を除去する特許文献1に記載のフェロニッケル原料の製造方法と異なり、ニッケル粉の場合には、加熱処理によって硫黄や炭素などの不純物の除去は可能であるが、同時にニッケル粉までもが酸化されたり、互いに焼結を生じて粗大化したりして、望みうる形態のニッケル粉は製造できず、また焼結した場合には、粉砕など新たな設備が必要となるなどコスト面からも好ましくない。
このように、ニッケル粉の性状への影響を回避しながら硫黄や炭素を効果的にニッケルと分離するのに適した方法は見当たらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012‐31446号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“The manufacture and properties of Metal powder produced by the gaseous reduction of aqueous solutions”, Powder metallurgy, No.1/2 (1958), pp40−52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、錯化還元法を用いて製造したニッケル粉をより高品質化するために、ニッケル粉中の不純物である硫黄や炭素の含有品位を低減する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、ニッケル溶液から錯化還元法を用いて製造したニッケル粉を、洗浄および焙焼することで、硫黄や炭素を分離するものである。
【0012】
本発明の第1の発明は、含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法であって、硫酸ニッケル水溶液に錯化剤を添加して形成したニッケル錯体イオンを含有する溶液を作製する錯化処理と、加圧容器内に装入した前記ニッケル錯体イオンを含有する溶液を、液温150〜250℃に保持し、前記ニッケル錯体イオンを含有する溶液に水素ガスを吹き込んで水素還元を行ってニッケル粉を生成する水素還元処理と、前記ニッケル粉を、液温50℃以上、90℃以下で、ニッケル粉の重量に対して1倍量以上、5倍量以下の水量による水洗浄、又は、低圧下でニッケル粉と水との混合物を超音波洗浄し、硫黄及び炭素の各含有量の両者を低減したニッケル粉を生成する水洗浄処理と、水洗浄処理されたニッケル粉を窒素と濃度2〜4重量%の水素の混合気体雰囲気下で焙焼する焙焼処理を順に経ることを特徴とする含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方である。
【0013】
本発明の第2の発明は、第1の発明の焙焼処理における混合気体の水素濃度が、2〜4重量%であることを特徴とする含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法である。
【0014】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明の焙焼処理における温度が700℃以上、1250℃以下であることを特徴とする含有する炭素及び硫黄の濃度を低減するニッケル粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、錯化還元法を用いて製造したニッケル粉から不純物元素の硫黄と炭素を効果的に除去でき、ニッケル粉の品質を大きく向上せしめるもので、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のニッケル粉の製造フロー図である。
図2】実施例1での洗浄工程におけるかけ水の量とニッケル粉中の硫黄品位変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、焙焼の雰囲気を水素および窒素の混合気体とすることや、粒子の比表面積を維持すること、および洗浄工程を設けることで、今まで困難であったニッケル粉の不純物濃度低減を可能とするものである。
以下、本発明の製造方法を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明のニッケル粉の製造方法を示す製造フロー図である。
本発明は錯化還元法を用いて作製されたニッケル粉に含まれる不純物、特に炭素及び硫黄のニッケル粉からの除去を特徴とするもので、先ず供試粉となるニッケル粉は、図1の上工程として記載される「錯化処理」と「水素還元処理」を経て作製されるニッケル粉である。
【0019】
この供試粉の作製は、ニッケルを含有する溶液に錯化剤としてのアンモニアと分散剤を加えて錯化処理を行い「硫酸ニッケルアンミン錯体」などのようなニッケル錯体イオンを含むスラリーを形成し、次いでこのスラリーを、150〜250℃の高温高圧下に保持した状態で、水素ガスをスラリー中に吹き込み、スラリー中のニッケル錯体イオンを、還元して水素還元によるニッケル粉の供試粉を作製する。その具体的方法は、従来から公知として知られる方法を用いることができる。さらにニッケル粉や鉄粉などを種結晶として添加してもよい。
【0020】
本発明の特徴は、上記で得られたニッケル粉から、その粉中に含まれる不純物、特に炭素及び硫黄を粉体から除去する製造方法にある。
本発明に係るニッケル粉から不純物の炭素、硫黄成分を除去する方法は、図1に示されるように、供試粉に対して、供試粉に水を用いた洗浄処理を施し、不純物の中で水溶性不純物を取り除く「洗浄工程」と、「洗浄工程」において取り除けなかった残存炭素及び硫黄を、高温で焙焼処理することにより分離する「焙焼工程」を順に経ることによって、得られるニッケル粉中の不純物濃度を低減して純度の高いニッケル粉を生成するものである。
そこで、以下に本発明における特徴を成す「洗浄工程」及び「焙焼工程」について詳細する。
【0021】
[洗浄工程]
供試粉のニッケル粉を、所定の方法で洗浄し、水溶性の不純物濃度を低減したニッケル粉を得る工程である。
具体的な洗浄方法は、ニッケル粉にかけ水をしたり、その水温を90℃程度まで上げたりするなど様々な方法を用いることができる。また、超音波を加えた雰囲気下で洗浄することでも効果がある。
【0022】
さらに洗浄水量は、洗浄対象のニッケル量の重量比で1倍以上、5倍以下とすることが良く、3倍以下が好ましい。その洗浄水量が1倍未満だと洗浄水の量が不足して炭素や硫黄の除去が不完全になる恐れがある。また5倍を超えて用いても洗浄効果は向上せず、水資源を浪費するだけとなり好ましくない。
【0023】
[焙焼工程]
洗浄工程で水溶性の硫黄や炭素の大部分を除去したニッケル粉を、高温で焙焼することで、残留した硫黄や炭素を分離し、純度の高いニッケル粉を得る工程である。
本発明は、この焙焼工程の際の雰囲気に、酸化雰囲気、完全な不活性雰囲気を用いるのではなく、ごくわずかな量の水素ガスを含む還元雰囲気中において、効果的に硫黄と炭素を除去できることを見出し、完成せしめたものである。
【0024】
本発明の焙焼工程における雰囲気は、窒素など不活性雰囲気中の水素ガスの濃度を2〜4重量%とすることが必要であり、2重量%未満では反応が遅く十分な還元効果が得られない。また、4重量%を超えた濃度では還元力が強すぎるので好ましくない。
【0025】
さらに、その焙焼温度は、700℃以上、1250℃以下が良く、好ましくは1000℃以下である。
しかし、700℃未満では、炭素や硫黄の分離が不十分となる。一方、焙焼温度は高い方が、分離は効率よく進むが、1000℃を越えた温度で焙焼しても分離はほとんど増加せず、特に1250℃を越えるとニッケル粉の焼結が進み、ニッケル粉を酸に溶解する用途に対して溶解性が低下するなど好ましくない。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を参照して本発明を詳細する。
【実施例1】
【0027】
[ニッケル粉(供試粉)の製造]
実験装置としてバッチ式の容量3Lのオートクレーブを用いた。純水880mlに試薬硫酸ニッケル六水和物672g(ニッケル純分で150g)、硫酸アンモニウム660gを含む溶液を調製し、これに25%アンモニア水382mlを添加し、合計の液量が2000mlになるように調整して始液とし、この始液をオートクレーブの内筒缶内に入れた。
【0028】
次に、この始液に市販のニッケル粉を種晶として15g、分散剤としてリグニンスルホン酸ナトリウム0.8gを添加してスラリーを形成し、その内筒缶をオートクレーブの所定位置に装入し、密栓した。種晶添加率は10(15/150=10)重量%となる。
【0029】
次いで、電動撹拌機により750rpmで撹拌させながら、熱媒ヒーターを用いて内筒缶内のスラリーの液温が185℃になるまで昇温した。
液温が185℃に到達した時点から、水素ボンベの水素ガスをスラリーに、4.0リットル/minの流量で吹込み、内部圧力を3.5MPaになるように昇圧し維持しながら水素還元反応を生じさせた。
水素ガスの吹き込み開始から60分間反応させ、時間経過後に水素ガスの供給を停止し、その後撹拌しながら室温まで冷却した。
【0030】
冷却した内筒缶を、オートクレーブから取り出し、内筒缶に入っているスラリーを濾紙とヌッチェを用いて固液分離し、錯化還元法によるニッケル粉を回収した。
回収したニッケル粉は約140gだった。なお、ニッケル粉量を装入した硫酸ニッケル溶液に含有するニッケル物量除して算出した還元率は約83%だった。
【0031】
[洗浄工程]
次に、作製したニッケル粉を供試粉として用い、10gずつ、5サンプル分取した。
次に、分取したそれぞれのニッケル粉を濾紙上に乗せ、真空ポンプを用いて吸引しながら液温50℃の純水を、かけ水として100ml、75ml、50ml、30ml、10mlと量を変えて、それぞれの上から掛け、水洗浄した。
水洗浄後、それぞれのニッケル粉を時計皿に取り出し、真空乾燥機に入れて一晩かけて乾燥させて不純物の低減したニッケル粉を作製した。
【0032】
作製したそれぞれのニッケル粉をICPで分析した結果、図2に示すように、硫黄品位が洗浄前の0.8重量%からいずれも0.1重量%未満まで低減したニッケル粉を作製した。なお、100mlや75ml添加したものは50mlの場合と同じ品位だった。
【0033】
[焙焼工程]
次に、洗浄工程で50mlの量のかけ水を行った洗浄によって硫黄品位が0.04重量%となったサンプルを10gずつ、4サンプルに分取し、それぞれを市販のブリケットマシン(新東工業株式会社製、BGS−IV)を用いて、10×15×20mmサイズの俵状に成型し、次いでこの成型物を内径60mmの管状炉内にセットし、ボンベから供給した高純度窒素ガスを960ml/minの流量で供給し、管状炉内部の空気を完全に窒素に置換した。
【0034】
置換後、管状炉内の温度をそれぞれ700℃と1000℃と1200℃と1300℃に昇温、維持した。
それぞれの温度に達した後、ボンベから水素ガスと置換した窒素と同じ窒素ガスを、水素ガスを毎分40ml、窒素ガスを毎分960mlの流量で管状炉に供給しながら、1時間保持した。供給したガスの水素ガス濃度は3重量%である。
【0035】
窒素と水素ガスを所定時間供給した後、供給ガスを昇温時と同じ窒素のみ毎分960mlの流量で供給しつつ、電源を切り炉内温度が70℃に低下するまで自然冷却した。
炉内温度が70℃を下回ったところで管状炉を開け、中のニッケル粉を取り出し、ICPを用いて分析した。
【0036】
分析結果は、700℃で焙焼することで、洗浄前の供試粉で0.8重量%あった硫黄品位は、洗浄工程で0.04重量%まで低下し、この焙焼工程を経ることで0.02重量%まで低減し、1000℃で焙焼することでさらに0.01重量%まで低減した。
【0037】
炭素品位についても洗浄前の供試粉において、0.20重量%の炭素量が、洗浄工程後に0.07重量%、700℃の焙焼で0.05重量%、1000℃の焙焼で0.02重量%まで低減した。1200℃の場合は1000℃の場合と同品位だったが、ニッケル粉同士が軽く焼結し解砕が必要だった。さらに1300℃の場合は、ニッケル粉同士がしっかりと焼結し、溶解する用途には適さなかった。
実施例1における硫黄品位及び炭素品位の変化を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から判るように、供試粉に含まれる硫黄の95%は、本発明の洗浄工程を実施することにより低減可能で、その効果は大きく、炭素に関しても洗浄工程では65%の低減が可能で、本発明における硫黄及び炭素の低減の大部分が洗浄工程で得られている。
そこで、以下の実施例では、さらなる洗浄工程の効果の把握を行った。
【実施例2】
【0040】
[供試粉の製造]
実施例1と同じ方法で水素ガスを用いて生成したニッケル粉を10g分取し、供試粉のニッケル粉とした。このニッケル粉の硫黄品位は0.75重量%、炭素品位は0.06重量%だった。
【0041】
[洗浄工程]
次に、このニッケル粉を容量100mlビーカーに入れ、ここに90℃の純水を50ml添加した。その後、攪拌機およびヒーターを用いて、液温を90℃に保持したまま、400rpmの回転数で1時間撹拌した。
撹拌終了後、濾紙を用いて濾過し、実施例1と同じ真空乾燥機を用いて乾燥させた。
このニッケル粉の硫黄及び炭素を分析したところ、硫黄品位0.05重量%まで低減し、炭素品位0.02重量%まで低減した。
実施例2における硫黄品位及び炭素品位の変化を表2に示す。
【0042】
【表2】
【実施例3】
【0043】
[洗浄工程]
実施例1と同じ水素還元した供試粉となるニッケル粉を用い、実施例1と同じ方法で水洗浄した洗浄工程後のニッケル粉を5g分取した。このニッケル粉の硫黄品位は、0.8重量%から0.03重量%に低減され、炭素品位も、0.10重量%から0.04重量%へと低減された。
【0044】
さらに、同じ供試粉のニッケル粉を吸引可能なフラスコに入れ、25℃の純水を200ml添加し、次いで真空ポンプでフラスコ内部を5分間吸引し、内部が低圧状態となったフラスコを超音波洗浄機にかけ、3分間保持した。
この真空ポンプによる吸引後、超音波洗浄する操作を4回繰り返した。
上記の洗浄で得たニッケル粉を、濾紙を用いて濾過し、時計皿に取り出し、真空乾燥機で一晩乾燥させた。
【0045】
乾燥後のニッケル粉をICPで分析すると硫黄品位は、当初の0.8重量%から0.02重量%と低減され、炭素品位も当初の0.10重量%から0.02重量%へと低減されていた。
実施例3における硫黄品位及び炭素品位の変化を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表2、表3からも明らかなように、実施例1と同様に9割を超える洗浄工程による硫黄の低減効果を示した。また、炭素の低減効果に関しても6割を超える低減効果が得られ、本発明に係る洗浄工程が、供試粉に含まれる硫黄及び炭素の低減に極めて有効であると判る。
図1
図2