(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0021】
<1. 第1実施形態>
<1.1. 検査装置の構成および機能>
図1は、第1実施形態に係る検査装置100の概略構成図である。また、
図2は、
図1に示される励起光照射部12と検出部13の概略構成図である。
【0022】
検査装置100は、フォトデバイスが形成された基板の一種である太陽電池パネル90の特性の検査に適するよう構成されている。太陽電池などフォトデバイスは、例えば、p型とn型の半導体が接合されたpn接合部を有している。このpn接合部付近では電子と正孔とが互いに拡散して結びつく拡散電流が生じることによって、pn接合部付近に電子と正孔とがほとんど存在しない空乏層が形成されている。この領域では、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域に引き戻す力が生じるため、フォトデバイスの内部に電場(内部電界)が生じている。
【0023】
ここで、禁制帯幅を超えるエネルギーを持つ光がpn接合部に照射された場合、pn接合部において発生した自由電子および自由正孔が、内部電界によって、自由電子がn型半導体側へ、取り残された自由正孔がp型半導体側へ移動する。フォトデバイスでは、この電流がn型半導体およびp型半導体のそれぞれに取り付けられた電極を介して、外部に取り出される。例えば太陽電池の場合、pn接合部の空乏層に光が照射されたときに生じる自由電子と自由正孔の移動が、直流電流として利用される。
【0024】
発明者らは、フォトデバイスに所定波長のパルス光を照射したとき、特定波長の電磁波パルスが発生することを見出した。マクスウェルの方程式によると、電流に変化が生じたとき、その電流の時間微分に比例した強度の電磁波が発生する。すなわち、空乏層などの光励起キャリア発生領域にパルス光が照射されることで、瞬間的に光電流の発生および消滅が起こる。この瞬間的に発生する光電流の時間微分に比例して、電磁波パルスが発生する。
【0025】
ここで、光電流の発生は、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を反映したものである。したがって、発生した電磁波パルスを解析することによって、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を検査することができる。このような原理に基づき、検査装置100は、太陽電池パネル90に向けて所定波長のパルス光を照射したときに発生する電磁波パルスを検出するように構成されている。
【0026】
図1に示されるように、検査装置100は、ステージ11、励起光照射部12、検出部13、連続光照射部14、モーター15、制御部16、モニター(表示部)17、操作入力部18、温度変更部31、温度測定部33、結露氷結防止手段35、および、可視カメラ80を備えている。
【0027】
ステージ11は、図示を省略する固定手段によって、太陽電池パネル90をステージ11上に固定する。固定手段としては、基板を挟持する挟持具を利用したもの、基板に貼着される粘着性シート、または、ステージ11の表面に形成される吸着孔などが想定される。ただし、太陽電池パネル90を固定できるのであれば、これら以外の固定手段を採用されてもよい。本実施形態では、ステージ11は、太陽電池パネル90の受光面91S側に励起光照射部12が励起光を照射し、かつ、受光面91S側に放射された電磁波パルスを検出部13が検出するように、太陽電池パネル90を保持する。
【0028】
図2に示されるように、励起光照射部12は、フェムト秒レーザ121を備えている。フェムト秒レーザ121は、例えば、360nm(ナノメートル)以上1.5μm(マイクロメートル)以下の可視光領域を含む波長のパルス光(パルス光LP1)を放射する。具体例としては、中心波長が800nm付近であり、周期が数kHz〜数百MHz、パルス幅が10〜150フェムト秒程度の直線偏光のパルス光が、フェムト秒レーザから放射される。もちろん、その他の波長領域(例えば、青色波長(450〜495nm)、緑色波長(495〜570nm)などの可視光波長)のパルス光が出射されるようにしてもよい。
【0029】
フェムト秒レーザ121から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(パルス光LP11)は、太陽電池パネル90に照射される。このとき、励起光照射部12は、パルス光LP11の照射を、受光面91S側から行う。また、パルス光LP11の光軸が、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して斜めに入射するように、パルス光LP11が太陽電池パネル90に対して照射される。本実施形態では、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲内で適宜変更することができる。
【0030】
図3は、太陽電池パネル90の概略断面図である。また、
図4は、太陽電池パネル90を受光面91S側から見た平面図である。さらに、
図5は、太陽電池パネル90を裏面側から見た平面図である。太陽電池パネル90は、結晶シリコン系である太陽電池パネルとして構成されている。太陽電池パネル90は、下から順にアルミニウムなどで形成された平板状の裏面電極92と、p型シリコン層93と、n型シリコン層94と、反射防止膜95と、格子状の受光面電極96とで構成される積層構造を有する結晶シリコン系太陽電池として構成されている。反射防止膜95は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化チタンなどで形成されている。
【0031】
太陽電池パネル90の主面のうち、受光面電極96が設けられている側の主面が、受光面91Sとなっている。つまり、太陽電池パネル90は、受光面91S側から光を受けることで発電するように設計されている。受光面電極96には、透明電極が用いられていてもよい。なお、検査装置100は、結晶シリコン系以外の太陽電池(アモルファスシリコン系など)の検査に適用してもよい。アモルファスシリコン系太陽電池の場合、一般的に、エネルギーギャップが1.75eV〜1.8eVといったように、結晶シリコン系太陽電池のエネルギーギャップ1.2eVに比べて大きい。このような場合、フェムト秒レーザ121の波長を、例えば700μm以下とすることで、アモルファスシリコン系太陽電池において、テラヘルツ波を良好に発生させることができる。同様の考え方で、他の半導体太陽電池(CIGS系、GaAS系など)にも適用可能である。
【0032】
太陽電池パネル90の受光面91Sは、光の反射損失を抑えるために、所要のテクスチャー構造を有している。具体的には、異方性エッチングなどにより形成される数μm〜数十μmの凹凸、または機械的方法によるV字状の溝などが形成されている。このように、太陽電池パネル90の受光面91Sは、一般的に、できるだけ効率良く採光できるように形成されている。したがって、所定波長のパルス光が照射されたときに、該パルス光はpn接合部97に届きやすくなっている。例えば、太陽電池パネルの場合、主に可視光の波長領域を有する波長1μm以下の光であれば、pn接合部97に容易に到達し得る。このように、使用状態において受光する側の主面を受光面として検査装置100に設置すれば、良好に電磁波パルスLT1を発生させることができる。
【0033】
また、p型シリコン層93とn型シリコン層94との接合部分は、空乏層が形成されるpn接合部97となっている。この部分にパルス光LP11が照射されることによって、電磁波パルスが発生し、外部に出射される。本実施形態において、検出部13において検出される電磁波パルスは、主にテラヘルツ領域(周波数0.01THz〜10THz)の電磁波パルス(以下、電磁波パルスLT1と称する。)となっている。
【0034】
なお、検査装置100において、検査対象となる基板は、太陽電池パネル90に限定されるものではない。可視光を含む光を電流に変換するフォトデバイスを含む基板であれば、検査装置100の検査対象物となり得る。太陽電池パネル90以外のフォトデバイスとしては、具体的には、CMOSセンサやCCDセンサなどのイメージセンサが想定される。なお、イメージセンサの中には、使用状態においてフォトデバイスが形成された基板の裏面側となる部分に受光素子が形成されているものが知られている。このような基板であっても、使用状態において受光する側の主面を受光面として検査装置100に設置すれば、良好に電磁波パルスLT1を検出することができる。
【0035】
図2に戻って、ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、プローブ光LP12として遅延部131およびミラーなどを経由して、検出器132に入射する。また、パルス光LP11の照射に応じて発生した電磁波パルスLT1は、放物面鏡M1,M2において集光されて検出器132に入射する。
【0036】
検出器132は、電磁波検出素子として、例えば、光伝導スイッチを備えている。電磁波パルスが検出器132に入射する状態で、プローブ光LP12が検出器132に照射されると、この光伝導スイッチに瞬間的に電磁波パルスLT1の電場強度に応じた電流が発生する。この電場強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、検出部13は、プローブ光LP12の照射に応じて、太陽電池パネル90を透過した電磁波パルスLT1の電場強度を検出する。検出器132に、その他の素子、例えば非線形光学結晶を適用することも考えられる。
【0037】
遅延部131は、ビームスプリッタB1から検出器132までのプローブ光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延部131は、図示を省略する移動ステージ(図示せず)によって、プローブ光LP12の入射方向に沿って直線移動可能に構成されている。また、遅延部131は、プローブ光LP12を入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。
【0038】
遅延部131は、制御部16の制御に基づいて移動ステージを駆動して折り返しミラー10Mを移動させることにより、プローブ光LP12の光路長を精密に変更する。これにより、遅延部131は、電磁波パルスLT1が検出部13に到達する時間と、プローブ光LP12が検出部13へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延部131により、プローブ光LP12の光路長を変化させることによって、検出部13(検出器132)において電磁波パルスLT1の電場強度を検出するタイミング(検出タイミングまたはサンプリングタイミング)を遅延させることができる。
【0039】
なお、その他の態様でプローブ光LP12の検出器132への到達時間を変更することも考えられる。具体的には、電気光学効果を利用すればよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特許文献3(特開2009−175127号公報)に開示されている電気光学素子を利用することができる。
【0040】
また、パルス光LP11(ポンプ光)の光路長、もしくは、太陽電池パネル90から放射された電磁波パルスLT1の光路長を変更するようにしてもよい。この場合においても、検出器132に電磁波パルスLT1が到達する時間を、検出器132にプローブ光LP12が到達する時間に対して、相対的にずらすことができる。これにより、検出器132における電磁波パルスLT1の電場強度の検出タイミングを遅延させることができる。
【0041】
また、太陽電池パネル90には、検査時に裏面電極92と受光面電極96との間に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電圧印加回路99が接続される。逆バイアス電圧が電圧間に印加されることによって、pn接合部97の空乏層の幅が大きくなり、内部電界を大きくすることができる。検出器132において検出される電磁波パルスLT1の電場強度を増大できるため、検出器132における電磁波パルスLT1の検出感度を向上できる。なお、逆バイアス電圧印加回路99は、省略することも可能である。
【0042】
連続光照射部14は、連続光CWを太陽電池パネル90に照射する。連続光照射部14が出射する連続光CWの種類は、検査目的に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではないが、具体的には、太陽光または太陽光を模した疑似太陽光、白熱灯のように波長分布が比較的広い光、LED照明や蛍光灯などの主にRGB3原色に対応した波長(400nm、600nmおよび800nmなど)を持つ光など、複数の波長を含む光であることが考えられる。また、連続光CWは、例えば、紫外線から近赤外までの中から選択される単一波長の光であってもよい。
【0043】
連続光照射部14は、検査に用いられる光の波長に合わせて構成されている。具体的に、連続光照射部14は、例えば、半導体レーザ、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ、またはこれらを組み合わせたもので構成される。また、連続光照射部14として、波長可変レーザが用いられてもよい。波長可変レーザとしては、例えば温度制御によって、出射するレーザ光の波長をほぼ連続的(例えば、2nm毎)に変更可能とされる分布帰還型(DFB)レーザなどを利用することができる。
【0044】
検査装置100においては、パルス光LP11の照射位置に対して、連続光CWが照射されることにより、連続光CWが照射された状態(つまり、起電力が発生した状態)で、電磁波パルスLT1を発生させることができる。例えば、太陽電池パネル90に対し、疑似太陽光が照射された場合、室外などで太陽光に曝された状態を再現できる。この状態で発生する電磁波パルスLT1を解析することにより、太陽電池パネル90の使用時に問題となりうる構造上の欠陥の検出、または、太陽電池パネル90の性能を評価することできる。また、連続光CWを特定の波長に限定して照射することで、波長に依存した太陽電池パネル90の特性を検査することもできる。
【0045】
連続光照射部14は、照射条件変更部141を備えている(
図2参照)。照射条件変更部141は、同時に太陽電池パネル90に対して照射される連続光CWのスポット径を変更する。照射条件変更部141により一度に連続光CWが照射される範囲を変更することによって、起電力が発生する領域の範囲を任意の変更することができる。
【0046】
例えば、パルス光LP11のビーム径(照射径)を50μmとした場合、連続光CWのビーム径(照射径)を50μm以上とすれば、パルス光LP11が照射される領域の周辺部についても、起電力が発生した状態とすることができる。ここで、パルス光LP11の照射により発生した光励起キャリアは、上記周辺部の影響を受ける可能性が高い。したがって、太陽電池パネル90を使用状態で検査するためには、その周辺部についても連続光CWが照射されることが望ましい。また、連続光CWは、必ずしも局所的にスポット状に照射しなければならないものではなく、例えば、太陽電池パネル90全体に同時に照射されるようにしてもよい。
【0047】
また、照射条件変更部141は、連続光CWの光強度を変更する。太陽電池パネル90に照射される連続光CWの光強度を変更することで、発生する起電力の大きさを任意に変更することができる。これにより、発電状態に応じた太陽電池パネル90の検査を実現することができる。なお、連続光CWの強度を変更する手段としては、例えば遮光性のフィルタなどを用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。無論、連続光照射部14から出力される連続光CWの光強度が直接変更されるようにしてもよい。
【0048】
図1に示されるモーター15は、ステージ11を二次元平面内で移動させる不図示のX−Yテーブルを駆動する。モーター15は、このX−Yテーブルを駆動することによって、ステージ11に保持された太陽電池パネル90を、励起光照射部12に対して相対的に移動させる。検査装置100は、モーター15によって、太陽電池パネル90を2次元平面内で任意の位置に移動させることができる。検査装置100は、モーター15により、太陽電池パネル90の広い範囲(検査対象領域)にパルス光LP11を照射して検査することができる。モーター15を省略して、ステージ11をオペレータによって手動で移動するようにしてもよい。
【0049】
なお、太陽電池パネル90を移動させる代わりに、または、太陽電池パネル90を移動させると共に、励起光照射部12及び検出部13を2次元平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。これらの場合においても、太陽電池パネル90の各領域について、電磁波パルスLT1を検出することができる。また、パルス光LP11の光路をガルバノミラーなどによって変更することによって、太陽電池パネル90をパルス光LP11で走査するようにしてもよい。
【0050】
制御部16は、図示を省略するCPU、ROM、RAMおよび補助記憶部(例えばハードディスク)などを備えた一般的なコンピュータとしての構成を備えている。制御部16は、励起光照射部12のフェムト秒レーザ121、検出部13の遅延部131および検出器132、連続光照射部14および照射条件変更部141並びに、モーター15に接続されており、これらの動作を制御したり、これらからデータを受け取ったりする。
【0051】
また、制御部16は、時間波形復元部21、電磁波パルス解析部23、画像生成部25および補正部27を備えている。これらの処理部は、CPUが不図示のプログラムに従って動作することにより実現される機能である。ただし、これらの処理部の機能の一部または全部が、専用の演算回路によってハードウェア的に実現されるようにしてもよい。
【0052】
時間波形復元部21は、太陽電池パネル90において発生した電磁波パルスLT1について、検出部13(検出器132)にて検出される電場強度に基づいて、電磁波パルスLT1の時間波形を構築する。具体的には、遅延部131の折り返しミラー10Mを移動することによって、プローブ光LP12の光路長(第1光路の光路長)が変更され、プローブ光が検出器132に到達する時間が変更される。これによって、検出器132において電磁波パルスLT1の電場強度を検出するタイミングが変更される。すると、時間波形復元部21は、電磁波パルスLT1の電場強度を、異なる位相に検出して、時間軸上にプロットすることにより、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。
【0053】
電磁波パルス解析部23は、時間波形復元部21により復元された時間波形を解析する。電磁波パルス解析部23は、時間波形復元部21により復元された電磁波パルスLT1の時間波形における、電場強度のピーク検出、あるいは、フーリエ変換による周波数分析などを行う。これによって、太陽電池パネル90の特性が解析される。
【0054】
画像生成部25は、太陽電池パネル90の検査対象領域(太陽電池パネル90の一部または全部)に関して、パルス光LP11を照射したときに放射される電磁波パルスLT1の電場強度の分布を視覚化した画像(電磁波強度分布画像)を生成する。電磁波強度分布画像は、パルス光LP11の照射箇所毎に、検出された電磁波パルスLT1の電場強度に応じた色または模様を付した画像である。
【0055】
補正部27は、検出部13の検出器132によって検出された電磁波パルスLT1の強度を、太陽電池パネル90の温度、および、後述する温度相関情報291に基づいて補正する。太陽電池パネル90の温度は、後述する温度測定部33によって取得される。また、温度相関情報291は、制御部16に接続された記憶部29に保存された情報であって、太陽電池パネル90の温度と、その温度においてパルス光LP11の照射に応じて太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1の強度との相関に関する情報である。この温度相関情報291の詳細については、後に詳述する。
【0056】
制御部16には、モニター17および操作入力部18が接続されている。モニター17は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、オペレータに対して各種画像情報を表示する。モニター17には、可視カメラ80で撮影された太陽電池パネル90の受光面91Sの画像、時間波形復元部21によって復元された電磁波パルスLT1の時間波形、電磁波パルス解析部23による解析結果が表示される。また、モニター17には、画像生成部25が生成した電磁波強度分布画像が表示される。また、モニター17には、検査の条件などを設定するために必要なGUI(Graphical User Interface)画面が適宜表示される。
【0057】
操作入力部18は、マウスおよびキーボードなどの各種入力デバイスで構成されている。オペレータは、操作入力部18を介して検査装置100に対して各種操作入力を行うことができる。なお、モニター17がタッチパネルとして構成されることによって、モニター17が操作入力部18として機能するようにしてもよい。
【0058】
温度変更部31は、太陽電池パネル90における、パルス光LT11が照射される部分の温度を加温及び冷却する。温度変更部31は、例えば、ステージ11に埋め込まれたペルティエ素子等で構成することができる。なお、温度変更部31は、パルス光LT11が照射される部分のみを局所的に加温または冷却するように設けられていてもよいが、太陽電池パネル90の全体を加温または冷却するように設けられていてもよい。本実施形態では、温度変更部31は、太陽電池パネル90のデバイス温度を例えば−20℃〜+80℃の範囲で変更可能に構成される。
【0059】
温度測定部33は、太陽電池パネル90における、パルス光LT11が照射される部分の温度を測定する。温度測定部33は、好ましくは、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する放射温度計で構成される。この放射温度計によると、非接触で太陽電池パネル90の温度を測定できるため、太陽電池パネル90の汚染を抑制できると共に、短時間で温度測定が可能となる。放射温度計を使用する場合、太陽電池パネル90固有の放射率を設定することで、温度測定を精密に行うことができる。なお、放射温度計の代わりに接触式の温度計等を使用することも可能である。
【0060】
結露氷結防止手段35は、太陽電池パネル90を冷却したときに、太陽電池パネル90が結露または氷結することを防止する。結露氷結防止手段35としては、例えば、太陽電池パネル90における温度が変更される部分に、乾燥したガス(N
2、Ar、He、Kr、Xeガス、または、これらの混合ガス)をエアーカーテン状に供給するものが挙げられる。なお、結露氷結防止手段35が太陽電池パネル90の周囲を減圧することによって、太陽電池パネル90の結露または氷結を防止することも考えられる。
【0061】
<1.2. 太陽電池パネルの検査>
次に、検査装置100において実行可能な太陽電池パネル90の検査例を説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、検査装置100の各動作が制御部16による制御下のもとに行われるものとする。また、各工程の内容に応じて、複数の工程が並列に実行されたり、複数の工程の実行順序が適宜変更されたりしてもよいものとする。
【0062】
<1.2.1. 検査例1>
図6は、太陽電池パネル90の検査例1の流れ図である。この検査例1では、フォトデバイスである太陽電池パネル90の温度依存特性が検査される。
【0063】
検査例1においては、ステージ11に試料である太陽電池パネル90が設置される(
図6:ステップS101)。このとき、上述したように、受光面91S(すなわち、太陽電池パネル90が使用される状態において、太陽光を受光する側の主面)に向けて、パルス光LP11が照射されるように、太陽電池パネル90が設置される。
【0064】
太陽電池パネル90がステージ11に設置されると、太陽電池パネル90の裏面電極92および受光面電極96に逆バイアス電圧印加回路99が接続され、逆バイアス電圧が印加される。なお、逆バイアス電圧を印加しない場合は、このステップを省略することも可能である。
【0065】
太陽電池パネル90が設置されると、加温・冷却システムが稼働される(
図6:ステップS102)。詳細には、温度変更部31が稼働される。これによって、太陽電池パネル90の温度変更が可能となる。そして、太陽電池パネル90の温度測定が行われる(
図6:ステップS103)。詳細には、温度測定部33によって、太陽電池パネル90の温度が測定される。
【0066】
太陽電池パネル90のデバイス温度の変更を伴った電磁波計測が行われる(
図6:ステップS104)。詳細には、例えば−20℃〜+80℃の範囲の各温度に加温または冷却された太陽電池パネル90に対して、パルス光LP11が照射され、電磁波計測が行われる。太陽電池パネル90の温度を変更する際には、適宜結露氷結防止手段35が駆動される。
【0067】
このステップS104においては、電磁波パルスLT1の時間波形を復元するための電磁波計測と、イメージングを行うための電磁波計測のうち、少なくとも一方が行われる。
【0068】
<時間波形復元>
時間波形復元のための電磁波計測では、遅延部131が調整されることによって、検出器132の電磁波パルスLT1の検出タイミングが変更される。そして、変更された複数の検出タイミングでの電磁波パルスLT1の強度が測定される。このようにして、放射される電磁波パルスLT1の強度を、検出タイミングを変更して検出することによって、電磁波パルスLT1の位相毎の強度を計測することができる。このため、電磁波パルスLT1の時間波形を復元することが可能となる。電磁波パルスLT1の計測が行われる場所は、太陽電池パネル90上の1地点だけであってもよいし、複数の地点としてもよい。
【0069】
時間波形復元部21は、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。時間波形が復元されると、電磁波パルス解析部23によって電磁波パルスLT1の解析が必要に応じて行われる。
【0070】
<イメージング>
イメージングのための電磁波計測では、太陽電池パネル90の所定の検査対象領域がパルス光LT11で走査される。そして、検査対象領域の各地点で放射された電磁波パルスLT1の電磁波強度が検出される。さらに、画像生成部25が、検出された電磁波強度のデータに基づき、電磁波強度分布画像を生成する。このようにして、電磁波強度分布を画像化するイメージングが行われる。
【0071】
電磁波測定が完了すると、電磁波強度データがモニター17に表示される(
図6:ステップS105)。詳細には、ステップS15Aにて検出された電磁波強度から復元された時間波形、電磁波パルスの解析結果、または、イメージングの画像(電磁波強度分布画像)等がモニター17に表示される。
【0072】
例えば、ステップS105において、デバイス温度が異なる2つの電磁波強度分布画像の差分画像を画像生成部25が生成し、該差分画像をモニター17に表示してもよい。この差分画像によると、太陽電池パネル90における、温度依存特性が顕著な領域を容易に特定することができる。
【0073】
以上のように、検査例1によると、太陽電池パネル90を低温状態から高温状態まで変化させて、電磁波パルスLT1の検出が行われる。このため、太陽電池パネル90の温度依存特性を検査することができる。
【0074】
<1.2.2. 検査例2>
図7は、太陽電池パネル90の検査例2の流れ図である。この検査例2では、デバイスの温度変化が、電磁波強度に与える影響を考慮して、太陽電池パネル90が高精度に検査される。
【0075】
詳細には、まず、ステージ11に試料である太陽電池パネル90が設置される(
図7:ステップS10)。そして、加温・冷却システムが稼働される(
図7:ステップS11)。さらに、太陽電池パネル90の温度測定が行われる(
図7:ステップS12)。
【0076】
加温・冷却システムの稼働及びデバイス温度測定が完了すると、太陽電池パネル90のデバイス温度が測定用温度(例えば、室温)に調整される(
図7:ステップS13)。これによって、太陽電池パネル90の温度が、測定用温度に変更され、維持される。
【0077】
デバイス温度が変動すると、熱によって励起されるキャリアの量も変動してしまう虞がある。そこで、デバイス温度を一定に保つことによって、温度に依存したキャリアの変動成分を取り除くことができる。これによって、太陽電池パネル90から放射された電磁波パルスLT1のうち、パルス光LT11の照射に依存した成分を、より正確に測定することが可能となる。
【0078】
デバイス温度の調整が完了すると、電磁波計測が行われる(
図7:ステップS14)。このステップS14においても、電磁波パルスLT1の時間波形を復元するための電磁波計測と、イメージングを行うための電磁波計測のうち、少なくとも一方が行われる。
【0079】
ステップS14にて、所望の検査内容に応じた電磁波計測が行われると、温度相関情報291の取得が行われる(
図7:ステップS15)。このステップS15では、温度変更部31によって太陽電池パネル90の温度を変更しつつ、各温度で太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1の電磁波強度を収集することによって得られる。なお、ステップS15の工程は、ステップS13,S14よりも先に実行されてもよい。
【0080】
図8は、温度相関情報291の一例を示す図である。
図8に示されるように、温度相関情報291には、太陽電池パネル90を、5℃から40℃まで5℃ずつステップ状に変化させ、各温度において放射された電磁波の強度が含まれている。また、温度相関情報291には、デバイス温度が20℃の電磁波強度を「100」として、各温度の電磁波強度を相対化した相対強度も含まれている。
【0081】
この温度相関情報291は、太陽電池パネル90上の1地点を代表点とし、その代表点に励起光であるパルス光LP11を照射したときに放射される電磁波パルスLT1を検出することによって得られる。もちろん、複数の地点で測定したものを、利用することも可能である。また、温度相関情報291は、遅延部131が固定されることによって、電磁波パルスLT1が特定の検出タイミングで検出される。なお、複数の地点で電磁波強度を測定し、同じ温度で測定された複数の電磁波強度を平均したものを温度相関情報としてもよい。この場合、電磁波強度の測定誤差を小さくすることができる。
【0082】
フォトデバイスにおいては、温度が高まるにつれて、熱によってキャリアが励起される。このキャリアは、暗電流と呼ばれ、フォトデバイスの内部電界を弱める。このため、温度相関情報291に示されるように、デバイス温度上昇とともに、電磁波強度が弱まることとなる。
【0083】
図7に戻って、温度相関情報291が取得されると、連続光照射部14が連続光CWを太陽電池パネル90に照射する(
図7:ステップS16)。これによって、パルス光LP11が照射される部分に連続光CWが重ねて照射される。
【0084】
連続光CWが照射された状態で、電磁波計測が行われる(
図7:ステップS17)。このステップS17における電磁波計測は、連続光CWが照射される点以外は、ステップS14における電磁波計測とほぼ同様である。すなわち、ステップS14において行われた時間波形復元のための電磁波計測、または、イメージングのための電磁波計測が、連続光CWの照射を行いながら再び行われる。なお、連続光CWの照射条件は、検査の目的に応じて適宜に設定される。照射条件変更部141は、その設定された条件に合わせて、連続光CWの照射条件を変更する。
【0085】
図9は、太陽電池パネル90から放射された電磁波パルスLT1を復元した時間波形61,63を示す図である。
図9中、横軸は時間を示しており、縦軸は電磁波強度を示している。時間波形61は、連続光CWを照射せずに、パルス光LP11の照射に応じて太陽電池パネル90から放射された電磁波パルスLT1に対応する。また、時間波形63は、連続光CWが照射された状態で、パルス光LP11を照射したときに放射される電磁波パルスLT1に対応する。
【0086】
図9に示されるように、2つの時間波形61,63を比較すると、連続光CWが照射されることによって、電磁波パルスLT1の振幅が相対的に小さくなっている。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、連続光CWが照射されることによって、光励起キャリアが励起され、伝導帯に充満した状態となる。すると、パルス光LP11によって発生する光励起キャリアの電流変化が、相対的に弱められる。その結果、発生する電磁波パルスLT1の電界強度も弱められると考えられる。ただし、連続光CWの照射条件によっては、電磁波パルスLT1の振幅が相対的に大きくなる場合も起こり得る。
【0087】
図7に戻って、ステップS17の電磁波計測が完了すると、補正部27によって、電磁波強度の補正処理が行われる(
図7:ステップS18)。補正部27は、ステップS17にて取得された電磁波強度を、ステップS15にて取得された温度相関情報291に基づき補正する。
【0088】
本実施形態では、温度変更部31によって、デバイス温度を所定の温度(ここでは20℃)に維持するように構成されている、このため、デバイス温度に変動が生じ難い構成となっている。しかしながら、環境温度の変化、連続光CWまたは励起光の照射等によって、デバイス温度に変動が生じる可能性がある。そこで、デバイス温度の変動に依存した、電磁波強度の変動を取り除くために、補正処理が行われる。
【0089】
図10は、補正電磁波強度293の一例を示す図である。
図10に示される補正電磁波強度293は、デバイス温度が25℃で測定された電磁波強度を、20℃で観測した場合の電磁波強度に補正したものである。温度相関情報291によると、デバイス温度が25℃の場合、デバイス温度が20℃のときに比べて、電磁波強度が、98.4%となることが分かる。そこで、25℃で測定された電磁波強度を、それぞれ1.016(=100/98.4)倍することによって、補正値を得ることができる。
【0090】
図11は、補正後の時間波形631を示す図である。時間波形631は、時間波形63を補正したものである。このように電磁波強度を補正することによって、温度条件を揃えた比較を行うことができる。また、時間波形631は、時間波形63に比べて、ピークが大きくなっており、S/N比が向上している。
【0091】
図7に戻って、補正処理が完了すると、電磁波強度データがモニター17に表示される(
図7:ステップS19)。詳細には、補正処理された電磁波強度から復元された時間波形、または、補正処理された電磁波強度に基づくイメージング画像(電磁波強度分布画像)等がモニター17に表示される。
【0092】
連続光CWを照射することによって、太陽電池パネル90を使用状態に近い状態での計測を行うことが可能となる。このとき、温度変更部31によって、太陽電池パネル90自体の温度変化を抑制し、さらには、補正部27によって、検出された電磁波強度におけるデバイス温度変動に由来する成分を除去することによって、太陽電池パネル90の特性をより精密に検査することができる。また、検査装置100によると、太陽電池パネル90が設置される空間内の温度を厳密に制御する場合よりも、低コストで太陽電池パネル90を検査することができる。
【0093】
なお、検査例1においても、検査例2と同様に、太陽電池パネル90に連続光CWを照射しながらパルス光LP11を照射して、電磁波パルスLT1を検出するようにしてもよい。
【0094】
<2. 第2実施形態>
図12は、第2実施形態に係る検査装置100Aが備える励起光照射部12Aおよび検出部13Aの概略構成図である。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る検査装置100の構成要素と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図12に示されるように、検査装置100Aにおいては、ビームスプリッタB1によって分割されたパルス光LP11が、透明導電膜基板(ITO)19を透過して、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直にパルス光LP11に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて、太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1のうち、受光面91S側に放射される電磁波パルスLT1が、透明導電性基板19を反射した後、レンズによって集光されて、検出器132に入射する。
【0096】
検査装置100Aによっても、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1を検出することができる。また、温度変更部31及び温度測定部33を設けることによって、太陽電池パネル90の温度依存特性を考慮した検査を実行することができる。
【0097】
<3. 第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係る検査装置100Bが備える励起光照射部12Bおよび検出部13Bの概略構成図である。検査装置100Bにおいては、ビームスプリッタB1によって分割されたパルス光LP11が、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて、太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1のうち、太陽電池パネル90の裏面側に放射される(すなわち透過する)電磁波パルスLT1が、放物面鏡M1,M2などを介して、検出器132に入射する。
【0098】
検査装置100Bによっても、太陽電池パネル90から放射される電磁波パルスLT1を検出することができる。また、温度変更部31及び温度測定部33を設けることによって、太陽電池パネル90の温度依存特性を考慮した検査を実行することができる。
【0099】
<4. 第4実施形態>
図14は、第4実施形態に係る検査装置100Cが備える励起光照射部12Cおよび検出部13Cの概略構成図である。検査装置100Cにおいては、一対の波長可変レーザ121A,121Aから、発振周波数がわずかに異なる2つのレーザ光が出射される。そして、これらのレーザ光を、光導波路である光ファイバなどで形成されたカプラ123によって重ね合わせることで、差周波に対応する光ビート信号が生成される。差周波数は、波長可変レーザ121Aの発振周波数を可変にすることで、任意に調整することが可能とされている。波長可変レーザ121Aとしては、例えば温度制御によって、出射するレーザ光の波長をほぼ連続的(例えば、2nm毎)に変更可能とされる分布帰還型(DFB)レーザなどを利用することができる。
【0100】
波長可変レーザ121A,121Aから出射されるレーザ光の波長は、例えば、300nm(ナノメートル)〜2μm(マイクロメートル)とされるが、検査対象であるフォトデバイスのバンドギャップの大きさ等に応じて適宜設定される。
【0101】
2つの波長可変レーザ121A,121Aから、例えば、波長779nm、781nmのレーザ光を出射した場合、カプラ123によって、これらの差周波である約1THzの光ビート信号を生成することができる。そして混合光L13が検査対象物である太陽電池パネル90に照射されると、光励起キャリア発生領域にて光キャリアが発生し、内部電界によって加速されることで、光ビート信号の周波数に応じた電磁波(テラヘルツ波)が放射される。
【0102】
また、ビームスプリッタB1によって分割された混合光L13は、ミラーなどを経由して、光伝導スイッチ(光伝導アンテナ)で構成されている検出器132に入射される。検出器132はこの入射された混合光L13が持つ光ビート信号の周波数に同期して電磁波を検出する。検出器132に電磁波が入射すると、電磁波の電場強度に応じた電流が発生し、その電流量がI/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして検出部13Cは太陽電池パネル90から放射された電磁波の電場強度を検出する。
【0103】
このように、検査装置100Cによっても、太陽電池パネル90から放射される電磁波を検出可能であるまた、温度変更部31及び温度測定部33を設けることによって、太陽電池パネル90の温度依存特性を考慮した検査を実行することができる。
【0104】
また、本実施形態では、励起光の光源として、波長可変レーザ121Aが用いられている。しかしながら、連続光を出射する光源であって、レーザ光源とは異なるものを用いることも可能である。
【0105】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたることができる。