特許第6406979号(P6406979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6406979ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いた絶縁電線・ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406979
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いた絶縁電線・ケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20181004BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20181004BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20181004BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20181004BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20181004BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20181004BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20181004BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08L23/08
   C08L25/10
   C08L91/00
   C08K9/04
   C08K5/3435
   C09K21/02
   H01B7/02 Z
   H01B7/18 H
   H01B3/44 M
   H01B3/44 P
   H01B3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-224852(P2014-224852)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-89027(P2016-89027A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅己
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084048(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/121295(WO,A1)
【文献】 特開2003−192846(JP,A)
【文献】 特開2003−082172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C09K 21/00− 21/14
H01B 3/00− 3/56
H01B 7/00− 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a1)〜(a4)を(A)成分とし、
(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体:(A)成分全体に対して40〜90質量%、
(a2)エチレン−αオレフィン共重合体(エチレン−αオレフィン共重合体ゴムを除く。)及び密度が0.900〜0.930g/cmのポリエチレンから選ばれた少なくとも1種:(A)成分全体に対して0〜30質量%、
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種:(A)成分全体に対して5〜30質量%、
(a4)鉱物油:(A)成分全体に対して5〜30質量%、
前記(A)成分の酢酸ビニル含有量を、前記(A)成分全体に対して8〜30質量%とし、
(B)無機系充填材を(A)成分100質量部に対して5〜105質量部(ただし、無機系充填材として、(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物を前記(A)成分100質量部に対して5〜100質量部含有する。)
(C)ヒンダードアミン系化合物を(A)成分100質量部に対して0.2〜1.5質量部含有することを特徴とするノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物が、脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物における前記脂肪酸がステアリン酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a2)中のポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(a3)中の前記エチレン−αオレフィン共重合体ゴムがエチレン−プロピレン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物が被覆材料
として被覆されていることを特徴とする絶縁電線・ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いた絶縁電線・ケーブルに関する。さらに詳しくは、例えば、低圧電源用ケーブルの被覆材料として使用することができ、機械的特性や難燃性、耐候性等、低圧電源用ケーブルとして必要な要求特性を満足し、ケーブル布設時に被覆材料の縦裂きが容易に実施可能なノンハロゲン難燃性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いた絶縁電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電線やケーブルの被覆材料(外被材料ないし絶縁被覆材料等)としては、低コストであり、耐熱性、耐湿性に加えて難燃性、耐摩耗性等の諸特性に優れるポリ塩化ビニル系樹脂が広く使用されてきた。一方、ポリ塩化ビニル系樹脂はハロゲンを含有するため、火災等で焼却した際の発煙量が多いことやハロゲンガス等の有害なガスや、燃焼の条件によってはダイオキシンを発生させて環境破壊の原因となってしまうという問題があった。
【0003】
かかる問題から、電線等の被覆材料としては、安全性を考慮して、火災時に煙の発生が少なく、ハロゲンガス等の有害ガスや、ダイオキシン、鉛等の有害物質の発生もない、ハロゲンを含有しない難燃性樹脂材料をベース材料として、これに金属水和物を添加した樹脂組成物を用いるのが一般的であり、また、かかる樹脂組成物はリサイクル性も良好で、環境負荷も低減することができる。そして、このような樹脂組成物としては、例えば、ハロゲンを含有しないオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水和物等を配合したノンハロゲン難燃性樹脂組成物が提供されていた(例えば、特許文献1ないし特許文献8を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−256004号公報
【特許文献2】特開2001−31903号公報
【特許文献3】特開2005−29605号公報
【特許文献4】特開2006−45349号公報
【特許文献5】特開2006−233126号公報
【特許文献6】特開2008−63458号公報
【特許文献7】特開2011−198507号公報
【特許文献8】特開2012−255077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気・電子機器の電線やケーブルの被覆材料には、一般に、機械的特性(例えば引張特性等)、耐寒性、難燃性、耐候性等の諸特性が要求されるが、例えば、低圧電源用ケーブルの場合、ケーブル布設時にナイフ等を用いて被覆材(シース)等を縦裂きし、内部の絶縁電線を取り出す作業が行われる場合があり、かかる作業の際に、被覆材が容易に縦裂きできる樹脂組成物が好ましかった。しかしながら、難燃性を満足させるために、ポリオレフィン系樹脂に金属水和物を添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、概してポリ塩化ビニル(PVC)よりも硬くなる傾向にあり、縦裂き特性が悪く、ケーブル布設が困難である問題を有していた。
【0006】
本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、ハロゲンを含まない被覆材料からなるため環境的にも問題がないとともに、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性に加えて、縦裂き特性にも優れ、低圧電源用ケーブルの被覆材料等に使用することができるノンハロゲン難燃性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を用いた絶縁電線・ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、
下記(a1)〜(a4)を(A)成分とし、
(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体:(A)成分全体に対して40〜90質量%、
(a2)エチレン−αオレフィン共重合体(エチレン−αオレフィン共重合体ゴムを除く。)及び密度が0.900〜0.930g/cmのポリエチレンから選ばれた少なくとも1種:(A)成分全体に対して0〜30質量%、
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種:(A)成分全体に対して5〜30質量%、
(a4)鉱物油:(A)成分全体に対して5〜30質量%、
前記(A)成分の酢酸ビニル含有量を、前記(A)成分全体に対して8〜30質量%とし、
(B)無機系充填材を(A)成分100質量部に対して5〜105質量部(ただし、無機系充填材として、(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物を前記(A)成分100質量部に対して5〜100質量部含有する。)
(C)ヒンダードアミン系化合物を(A)成分100質量部に対して0.2〜1.5質量部含有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、前記した本発明において、前記(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物が、脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、前記した本発明において、前記(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物における前記脂肪酸がステアリン酸であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、前記した本発明において、前記(a2)中のポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンであることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、前記した本発明において、前記(a3)中の前記エチレン−αオレフィン共重合体ゴムがエチレン−プロピレン共重合体ゴムであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る絶縁電線・ケーブルは、前記した本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物が被覆材料として被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、ハロゲンを含まない被覆材料からなるため環境的にも問題がないとともに、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性に加えて、縦裂き特性にも優れ、低圧電源用ケーブルの被覆材料等に使用することができる難燃性樹脂組成物となる。
【0015】
また、本発明に係る絶縁電線・ケーブルは、本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物が被覆材料として被覆されているので、前記した効果を享受し、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性に加えて、縦裂き特性にも優れるとともに、環境への適応性を兼ね備えた電線やケーブルとして広く利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様を説明する。本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物(以下、単に「難燃性樹脂組成物」とする場合もある。)は、(A)成分として、(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(a2)エチレン−αオレフィン共重合体及び密度が0.900〜0.930g/cmのポリエチレンから選ばれた少なくとも1種、(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種、(a4)鉱物油、(B)成分として、無機系充填材((b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物を含む。)、を必須成分として含有する(ただし、(a2)成分は含有しない(0質量%となる)場合がある。)。本発明は、これらの成分をバランスよく含有するので、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性、縦裂き特性にも優れる難燃性樹脂組成物となる。
【0017】
(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体:
本発明の難燃性樹脂組成物に(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有させることにより、難燃性を向上することができる。
【0018】
(A)成分に含有される酢酸ビニルの含有量は、樹脂成分((a1)、(a2)、(a3))及び鉱物油((a4))からなる(A)成分((a1)、(a2)、(a3)及び(a4)を指す。以下同じ。)全体(100質量%。以下同じ。)に対して、8〜30質量%である。酢酸ビニルの含有量をかかる範囲内とすることにより、機械的特性や難燃性を確保することができるとともに、縦裂き特性に優れることになる。一方、酢酸ビニルの含有量が8質量%より少ないと、難燃性等が低下する場合があり、含有量が30質量%を超えると、機械的特性や耐寒性(脆化特性)等が低下する場合がある。エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルは、(A)成分全体に対して10〜20質量%とすることが好ましい。なお、本発明にあって「縦裂き」とは、ケーブルないしは電線の長手方向に沿って被覆材(シースないしは絶縁層)を裂くことを指す。
【0019】
なお、(A)成分における酢酸ビニルの含有量は、以下の式(I)により求めることができる。式(1)中、「X」は酢酸ビニルの含有量(質量%、式(I)では(%)としている。)、「Ai」はエチレン−酢酸ビニル共重合体の配合量(質量%)、「Bi」はエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量(質量%)、をそれぞれ示している。
【0020】
【数1】
【0021】
(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(ASTM D−1238やJIS K 7210等に準拠して測定した値を指し、以下、単に「MFR」とする場合もある。)は、絶縁電線やケーブルを製造する際の成形性の点から0.1g/10分以上(例えば、190℃、2.16kg)が好ましく、成形性に加え機械的強度の点から0.1〜10g/10分であることが特に好ましい。
【0022】
本発明に係る難燃性樹脂組成物にあって、前記した(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、(A)成分全体に対して40〜90質量%とする。かかる含有量が40質量%より少ないと難燃性等が低下する場合がある。一方、含有量が90質量%を超えると耐寒性(脆化特性)等に劣る場合がある。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、50〜85質量%とすることが好ましく、65〜80質量%とすることが特に好ましい。
【0023】
なお、本発明に係る難燃性樹脂組成物に使用可能な(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体として、市販されているものとしては、例えば、「エバフレックス(登録商標)」(商品名:三井・デュポンポリケミカル(株)製)や「UBEポリエチレンEVA」(商品名、宇部丸善ポリエチレン(株)製)等を挙げることができる。
【0024】
(a2)エチレン−αオレフィン共重合体及び密度が0.900〜0.930g/cmのポリエチレンのうち少なくとも1種:
本発明の難燃性樹脂組成物に(a2)エチレン−αオレフィン共重合体や密度が0.900〜0.930g/cmのポリエチレン(以下、「所定密度のポリエチレン」とする場合がある。)を含有させることにより、難燃性や縦裂き特性を損なうことなく、機械的強度や伸び特性等を向上することができる。エチレン−αオレフィン共重合体と所定密度のポリエチレンは、その1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
エチレン−αオレフィン共重合体としては、例えば、エチレンと炭素数4〜12のαオレフィンとの共重合体が挙げられ、αオレフィンとしては、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらのエチレン−αオレフィン共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0026】
エチレン−αオレフィン共重合体の密度は、0.900〜0.930g/cmが好ましい。これによって、優れた機械的特性と縦裂き特性を両立できる。加えて、優れた耐寒性も得られる。密度は、0.910〜0.925g/cmとすることが特に好ましい。
【0027】
所定密度のポリエチレンとしては、密度が0.900〜0.930g/cmであれば特に制限がなく、従来公知のポリエチレンを使用することができ、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、メタロセン触媒存在下に合成されたLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等のポリエチレン樹脂等が挙げられる。
【0028】
また、例えば、いわゆる高圧法低密度ポリエチレンも使用することができる。高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)とは、約1000気圧以上の高圧下にラジカル重合で製造されたもので、エチル基等の短鎖分岐の他に長鎖分岐を含み、低密度化されている。高圧法低密度ポリエチレンは、難燃性樹脂組成物に対して適度な溶融張力を付与することができる。高圧法低密度ポリエチレンも含め、ポリエチレンとしては、密度が0.910〜0.925g/cm3の範囲にあるものが好ましい。また。これらのポリエチレンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0029】
(a2)成分として、2種以上の樹脂を混合させた場合の混合樹脂の密度は、2種以上のエチレン−αオレフィン共重合体や、1種または2種以上のエチレン−αオレフィン共重合体と所定密度のポリエチレンを混合して使用した場合であっても、0.900〜0.930g/cmが好ましく、0.910〜0.925g/cmとすることが特に好ましい。
【0030】
なお、(a2)成分として、2種以上の樹脂を混合させた場合の混合樹脂の密度は、例えば、下記の式(II)に従って算出すればよい。式(II)中、ρは混合樹脂の密度(g/cm)、Eは、(a2)を合計100質量%としたとき、エチレン−αオレフィン共重合体や所定密度のポリエチレンの個々の含有量(質量%)(Eiは、i番目のEを指す。)、Fは、エチレン−αオレフィン共重合体や所定密度のポリエチレンの個々の密度(g/cm)(Fiは、i番目のFを指す。)、をそれぞれ示す。
【0031】
【数2】
【0032】
例えば、(a2)として2種類の樹脂を使用し、2種の樹脂を樹脂1、樹脂2としたとき、樹脂1の密度が0.920g/cm、樹脂2の密度が0.900g/cmであり、樹脂1と樹脂2を60/40(樹脂1を(a2)全体に対して60質量%、樹脂2を(a2)全体に対して40質量%)でブレンドした場合は、密度ρ(g/cm)は、式(II)にこれらの値を代入し、下記の式により、0.912g/cmと算出される。
【0033】
【数3】
【0034】
(a2)成分のエチレン−αオレフィン共重合体、所定密度のポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜10g/10分(例えば、190℃、2.16kg)以上が好ましく、0.3〜2.0g/10分が特に好ましい。
【0035】
本発明に係る難燃性樹脂組成物にあって、前記した(a2)エチレン−αオレフィン共重合体及び所定密度のポリエチレンのうち少なくとも1種の含有量は、(a2)成分の合計量として、(A)成分全体に対して0〜30質量%とする。かかる含有量が30質量%を超えると、縦裂き特性等に劣る場合がある。エチレン−αオレフィン共重合体及び所定密度のポリエチレンのうち少なくとも1種の含有量は、(a2)成分の合計量として、(A)成分全体に対して0〜20質量%とすることが好ましく、5〜15質量%とすることが特に好ましい。
【0036】
(a2)成分のエチレン−αオレフィン共重合体としては、例えば、「ノバテック(登録商標)LL」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「NUC(登録商標)」(商品名、NUC(株)製)等を挙げることができる。また、(a2)成分のポリエチレンとして、高圧法低密度ポリエチレンとしては、例えば、「ノバテック(登録商標)LD」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「UBEポリエチレンLDPE」(商品名、宇部丸善ポリエチレン(株)製)等を挙げることができる。
【0037】
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種:
(a3)成分を含有させることにより、縦裂き特性等の向上を図ることができる。芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムのうち、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体としては、芳香族ビニル化合物と共益ジエン化合物を主体とするブロック共重合体やランダム共重合体を採用することができ、共重合体中、芳香族ビニル化合物を共重合体全体の5〜70質量%含むものが好ましく、10〜60質量%含むものがさらに好ましい。
【0038】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物(以下、「水添共重合体」という場合がある。)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンを選択することが好ましい。スチレン含有量に関して特に限定はないが、共重合体全体の10〜40質量%であることが好ましい。40質量%を超えると縦裂き特性が低下し、10質量%を下回ると引張強度が低下する場合がある。
【0039】
また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選択でき、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せを選択することが好ましい。
【0040】
前記した共重合体や水添共重合体としては、例えば、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEEPS、SEPS(水素化SIS)、HSBR(スチレン・ブタジエンランダムコポリマー)等を挙げることができる。また、水添共重合体としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成された、二元または三元の共重合体等を使用することができる。
【0041】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物としては、例えば、「セプトン(登録商標)」(商品名、(株)クラレ製)、「ダイナロン(登録商標)」(商品名、JSR(株)製)を挙げることができる。
【0042】
また、エチレン−αオレフィン共重合体ゴムについては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(後記するように狭義のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)に加えて、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)も含む。)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBM)、エチレン−オクテン共重合体ゴム(EOM)等を使用することができるが、縦裂き特性や耐寒性という点で、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを使用することが好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体ゴム中のエチレン成分の含有量は、共重合体ゴム全体に対して50〜75質量%が好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。
【0043】
エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPゴム、EPM)とは、エチレンとプロピレンのゴム状共重合体のことをいい、エチレン−プロピレン共重合体ゴムとはエチレン成分含量が通常40〜75質量%程度のものをいう。また、エチレン、プロピレン以外の第3成分として非共役ジエンモノマーや不飽和基等を有する繰返し単位を重合体に付加させたエチレン−プロピレンターポリマー(エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム)(EPDM)もあり、本発明ではかかるEPDMも含む。かかるEPM、EPDMはその1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
エチレン−プロピレン共重合体ゴム中のエチレン成分の含有量は、共重合体ゴム全体に対して50〜75質量%が好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。
【0045】
エチレン−プロピレン共重合体ゴムとしては、例えば、「三井EPT」(商品名、三井化学(株)製)、「ノーデル(NORDEL)(登録商標)」(商品名、ダウケミカル社製)を挙げることができる。
【0046】
本発明に係る難燃性樹脂組成物にあって、前記した(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物及びエチレン−プロピレン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種の含有量は、(a3)成分の合計量として、(A)成分全体に対して5〜30質量%とする。かかる含有量が5質量%より少ないと、縦裂き特性等に劣ることになり、かかる含有量が30質量%を超えると、機械的強度や難燃性等に劣る。芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物、エチレン−プロピレン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種の含有量は、(a3)成分の合計量として、(A)成分全体に対し10〜25質量%とすることが好ましい。
【0047】
(a4)鉱物油:
(a4)鉱物油の添加により、縦裂き特性等を向上させる。一般に、鉱物油としては、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の3成分の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖の炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系と呼び、ナフテン環の炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族の炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて定義されている。
【0048】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の(a4)成分として用いられる鉱物油は、前記した区分でパラフィン系及びナフテン系のものを用いることが好ましい。これらの鉱物油(パラフィン系オイルやナフテン系オイル)の性状としては、40℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC法)が180〜300℃を示すものが好ましい。
【0049】
本発明において、(a4)鉱物油の含有量は、(A)成分全体に対して5〜30質量%とする。かかる含有量が5質量%より少ないと、縦裂き特性等に劣ることになり、かかる含有量が30質量%を超えると、難燃性等が低下する場合がある。鉱物油の含有量は、(A)成分全体に対し10〜25質量%とすることが好ましい。
【0050】
鉱物油としては、例えば、「ダイアナプロセスオイル」(商品名、出光興産(株)製)や「コスモニュートラル」(商品名、コスモ石油ルブリカンツ(株)製)等を挙げることができる。
【0051】
なお、(a4)成分(鉱物油)は、ゴム用の鉱物油等としてはたらき、(a3)成分である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体、当該共重合体の水素添加物、エチレン−αオレフィン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種と組み合わせて使用することで、難燃性樹脂組成物の縦裂き特性等を向上させるものであるが、両成分のバランスを考慮して、(a3)成分と(a4)成分との配合比を、質量比で、(a3)/(a4)=1/2〜4/1とすることが好ましく、1/1〜2/1とすることが特に好ましい。
【0052】
(B)無機系充填材:
本発明に係る難燃性樹脂組成物に無機系充填材を添加することにより、難燃性等を向上させることができる。無機系充填材としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物や、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、カーボンブラック等の金属水和物以外の無機系充填材等を使用することができる。
【0053】
本発明にあっては、難燃性等を確実に向上させるという点で、無機系充填材として、(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物を必須の無機系充填材として含有する。金属水和物を表面するための脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましく、縦裂き特性の向上の点で、ステアリン酸が特に好ましい。また、脂肪酸で表面処理された金属水和物としては、脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウムを使用することが好ましく、これにより、難燃性等のさらなる向上や良好なケーブル製造性を期待することができる。
【0054】
脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、例えば、「マグシーズ(登録商標)N−6」(商品名、神島化学工業(株)製)、「キスマ(登録商標)5A」(商品名、協和化学工業(株)製)等を使用することができる。
【0055】
本発明に係る難燃性樹脂組成物における、(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜100質量部とする。含有量が5質量部より少ないと難燃性に劣り、100質量部より多いと機械的特性や耐寒性(脆化特性)等が低下する。脂肪酸で表面処理された金属水和物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜50質量部とすることが好ましい。
【0056】
金属水和物以外の無機系充填材としては、難燃性の向上に加えて、縦裂き特性の向上の観点から炭酸カルシウムやタルクを使用することが好ましく、炭酸カルシウムを使用することが特に好ましい。炭酸カルシウムとしては、例えば、「ソフトン」(商品名、備北粉化工業(株)製)等を使用することができる。
【0057】
(B)成分の含有量は、(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物を含めた総量((B)成分全体))して、(A)成分100質量部に対して、5〜105質量部とする。5質量部より少ないと難燃性等に劣り、100質量部より多いと機械的特性や耐寒性(脆化特性)等が低下する。(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜80質量部とすることが好ましい。
【0058】
なお、(B)成分である無機系充填材のうち、(b2)脂肪酸で表面処理された金属水和物以外の無機系充填材の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0〜100質量部とすることが好ましく、0〜70質量部とすることが特に好ましい。
【0059】
(C)ヒンダーアミン系化合物:
本発明に係る難燃性樹脂組成物には、さらに、(C)ヒンダードアミン系化合物を添加するようにしてもよい。ヒンダードアミン系化合物は、一般に、耐候安定剤、光安定剤等として使用され、ポリマーの結合が紫外線によって切断されても、修復するはたらきを有している。本発明に係る難燃性樹脂組成物に(C)ヒンダーアミン系化合物を使用することにより、耐候性等を向上させることができる。
【0060】
本発明に使用可能な(C)ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン重縮合物、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))等が挙げられる。これらのヒンダードアミン系化合物は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、「アデカスタブ(登録商標)LA」(商品名、(株)ADEKA製)、「チヌビン(TINUVIN)(登録商標)」(商品名、BASF社製)等を使用することができる。
【0062】
本発明に係る難燃性樹脂組成物において必要により添加される、(C)ヒンダードアミン系化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.05〜1.5質量部とすることが好ましい。含有量が0.05質量部より少ないと耐候性向上の効果が期待できず、1.5質量部より多いと、コストが上がるのみで大幅な耐候性の向上は見られない場合がある。ヒンダードアミン系化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.2〜1.0質量部とすることが特に好ましい。
【0063】
(D)任意成分:
本発明に係る難燃性樹脂組成物には、前記した(A)成分、(B)成分といった必須成分、(C)成分のほか、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤等を本発明の目的及び効果を損なわない範囲で適宜添加・配合することができる。
【0064】
かかる(D)任意成分としては、例えば、酸化防止剤として(d1)フェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。(d1)フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、「イルガノックス(登録商標)」(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0066】
本発明に係る難燃性樹脂組成物において必要により添加される、(d1)フェノール系酸化防止剤との含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜1.0質量部とすることが好ましく、0.05〜0.5質量部とすることがさらに好ましく、0.1〜0.3質量部とすることが特に好ましい。
【0067】
また、前記したフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤や金属不活性剤等も、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。前記したフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のアミン系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤等である。
【0068】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーンガム等が挙げられる。
【0069】
なお、本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で前記した添加物以外の成分や他の樹脂成分を、適宜添加・配合するようにしても問題はない。
【0070】
次に、本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法の一例を説明する。(A)成分、(B)成分、さらに必要に応じて(C)成分及び(D)任意成分及び他の添加物等を混合し、加熱混練する。混練温度や混練時間等の混練条件は、(A)樹脂成分の溶融温度以上で適宜設定できるが、混練温度は、例えば、130〜180℃とすることが好ましい。
【0071】
混練方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば満足に使用でき、装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダー等が用いられる。このような方法や装置を用いることにより、各成分が均一に分散された難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0072】
以上説明した本発明に係るノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性に加えて、縦裂き特性にも優れ、低圧電源用ケーブルの被覆材料等に使用することができる難燃性樹脂組成物となる。
【0073】
加えて、被覆材料がハロゲン成分を含まないため、燃焼時にハロゲンガスやダイオキシン等の有毒なガスが発生せず、火災時における有毒ガスの発生や二次災害等を防止することができ、かつ、廃却時に問題なく焼却処分を行うことができる、環境にも優しい難燃性樹脂組成物となり、絶縁電線やケーブルの被覆材料(絶縁被覆材料ないし外被(シース)材料等。)として最適である。
【0074】
本発明の難燃性樹脂組成物が被覆材料として被覆された絶縁電線やケーブルは、前記した難燃性樹脂組成物における効果を享受し、機械的特性、耐寒性、難燃性、耐候性に加えて、縦裂き特性にも優れるとともに、環境への適応性を兼ね備えた電線やケーブルとして広く利用することができる。
【0075】
本発明は、低圧電源用ケーブル等の被覆材料に使用することができる。低圧電源用ケーブルは、主に住宅やその他建築物の屋内配線として用いられ、前記したように、ケーブル布設時にナイフ等を用いて被覆材等を縦裂きし、内部の絶縁電線を取り出す場合があるが、本発明にあっては、縦裂き特性に優れるので、難燃性付与のために金属水和物を添加しているにもかかわらず、ポリ塩化ビニル(PVC)等と比較しても硬くならず、難燃性を縦裂き特性等を併有し、ケーブル布設を良好に実施することができるものとなる。なお、「ケーブル」とは、所定の伝送媒体をコアとして、本発明の難燃性樹脂組成物をシース材料として被覆したものを含むものとする。
【0076】
本発明の難燃性樹脂組成物を用いて成形された絶縁電線等の絶縁層の厚さは、特に制限はなく、所望の厚さとして形成することができるが、0.6〜2.0mmとすることが好ましく、0.8〜1.0mmとすることが特に好ましい。
【0077】
また、所定の伝送媒体をコアとしてシースとする場合には、シースの厚さは、特に制限はなく、所望の厚さとして形成することができるが、0.8〜5.0mmとすることが好ましく、1.0〜2.0mmとすることが特に好ましい。
【0078】
本発明の難燃性樹脂組成物を金属導体やコア等の周囲に被覆して絶縁電線やケーブル等を得るには、例えば、汎用の押出成形機を用いて、押出成形により、金属導体やコアの周囲に押出被覆することにより製造することができる。このときの押出成形機の温度は、樹脂の種類、導体等の引取り速度の諸条件にもよるが、シリンダー部で約120〜180℃、クロスヘッド部で約180〜220℃程度にすることが好ましい。
【0079】
また、金属導体については、絶縁層の被覆前に、金属導体をあらかじめ50〜100℃程度に加熱させておいてもよいし、加熱をしなくても問題はない。金属導体としては、軟銅や銅合金、アルミ等の単線や撚線等を用いることができる。また、裸線のほかに、錫メッキ等によりメッキされたものを用いてもよい。
【0080】
本発明の難燃性樹脂組成物を用いて導体に被覆された絶縁電線・ケーブルは、被覆層が多層構造であってもよい。例えば、本発明の難燃性樹脂組成物を用いて成形された絶縁層のほかに、本発明の樹脂組成物からなる絶縁被覆材料と導体の間に、他の樹脂組成物等からなる中間層を別途設ける等、絶縁層が多層構造となるようにしても問題はない。
【0081】
このようにして得られた絶縁電線・ケーブルは、住宅等の屋内配線に使用される配線材として使用することができる。また、本発明の難燃性樹脂組成物は絶縁電線・ケーブル用の被覆材として用いることが好ましいが、他の樹脂成形体とすることにより、前記した優れた効果を享受する樹脂成形体を提供することができる。かかる樹脂成形体の形状には特に制限はなく、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート等を挙げることができる。これらの樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を押出成形方法や射出成形方法等の従来公知の成形方法により成形加工することにより得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
[実施例1〜実施例9、参考例10、実施例11、参考例12、比較例1〜比較例7]
表1の実施例1〜実施例9、参考例10、実施例11、参考例12、表2の比較例1〜比較例7に示す各ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を、容量が2Lのバンバリーミキサーを用いて溶融・混練した後、ペレット化して難燃性樹脂組成物のコンパウンドを得た。
【0084】
次に、得られた難燃性樹脂組成物のコンパウンドを、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=25として、スクリュー直径がφ25mmの電線用押出成形機を用いて、下記押出温度条件により、φ0.8mmの導体(軟銅線)の上に絶縁厚さが0.8mmとなるように押出被覆して電線サンプルを製造した。
【0085】
また、後記する「脆化温度(耐寒性)」及び「縦裂き特性」の評価のため、同じ押出成形機を用いて幅20mm、厚さ2mmのテープ状サンプルを製造した。なお、押出条件(温度)は、押出成形機のシリンダー部分における温度制御について、フィーダー側からダイス側に向けて3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを170℃、C2ゾーンを190℃、C3ゾーンを200℃、ダイス温度を200℃に、設定した。線速は10m/分に設定した。
【0086】
なお、表1及び表2において、各成分の値(含有量)は、(A)成分である(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)については、(A)成分全体((a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の全体)を100質量%とした場合の質量%であり、(B)((b1)及び(b2)及び(C)は、(A)成分の合計を100質量部とした場合の質量部である(「合計」も質量部。)。
【0087】
表1及び表2に示す組成の各成分としては、以下のものを用いた。
【0088】
(A)樹脂成分:
(a1)エチレン−酢酸ビニル共重合体:
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル(VA)含有量 20質量%、MFR
1.0g/10分(JIS K 7210(190℃、2.16kg)による。以下、
MFRについて同じ。))(商品名:UBEポリエチレンEVA VF120S、宇部丸善ポリエチレン(株)製)
【0089】
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル(VA)含有量 41質量%、MFR
0.3g/10分)(商品名:エバフレックス(登録商標)V9000、三井・デュポンポリケミカル(株)製)
【0090】
(a2)エチレン−αオレフィン共重合体:
(3)エチレン−1ブテン共重合体(商品名:NUC(登録商標)G7540、(株)NUC製)(密度 0.922g/cm、MFR 0.6g/10分)
【0091】
(a2)ポリエチレン:
(4)高圧法低密度ポリエチレン(商品名:ノバテック(登録商標)HE−30、日本ポリエチレン(株)製)(密度 0.920g/cm、MFR 0.3g/10分)
【0092】
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とする共重合体:
(5)スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)(商品名:セプトン(登録商標)4077、(株)クラレ製、スチレン含有量30質量%)
【0093】
(a3)エチレン−αオレフィン共重合体ゴム:
(6)エチレン−プロピレン共重合体ゴム(商品名:三井EPT3092PM、三井化学(株)製)
【0094】
(a4)鉱物油:
(7)パラフィン系鉱物油(商品名:コスモニュートラル500、コスモ石油ルブリカンツ(株)製)
【0095】
(B)無機系充填材:
(b1)脂肪酸で表面処理された金属水和物:
(8)脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウム(商品名:マグシーズ(登録商標)N−6(ステアリン酸で表面処理)、神島化学工業(株)製)
【0096】
(b2)脂肪酸で表面処理された水酸化マグネシウム以外の無機系充填材(表1、表2では単に「無機系充填材」とする。):
(9)炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1200、備北粉化工業(株)製)
【0097】
(C)ヒンダードアミン系化合物:
(10)ヒンダードアミン系化合物(商品名:チヌビン(登録商標)111FDL、BASF社製)
【0098】
[試験例1]
得られた実施例1〜実施例9、参考例10、実施例11、参考例12、比較例1〜比較例7の電線サンプル及びテープ状サンプルについて、下記に示した試験方法を用いて、「(1)引張強度(機械的強度)」、「(2)脆化温度(耐寒性)」、「(3)難燃性(60度傾斜難燃試験)」、「(4)耐候性」及び「(5)縦裂き特性」の各試験を実施して、比較・評価した。結果を表1(実施例及び参考例)及び表2(比較例)に示した。
【0099】
(1)引張強度(機械的強度):
JIS C 3005に基づき引張強度の試験を行った。得られた電線サンプルから導体を引き抜き、管状サンプルを採取した後、標点間距離20mm、引張速度200mm/分で引張強度(破断強度)(MPa)を測定した。引張強度が10MPa以上のものを「○」(合格)とし、10MPa未満のものを「×」(不合格)とした。合格のうち、特に、引張強度が12MPa以上のものを「◎」、14MPa以上のものを「☆」とした。
【0100】
(2)脆化温度(耐寒性):
脆化温度を耐寒性の指標として評価した。前記のテープ状サンプルを用いて、JIS C 3005に基づき脆化温度を測定した。クラック発生温度が−40℃以下であるものを「○」(合格)とし、−40℃を超えるものを「×」(不合格)とした。合格のうち、特に、クラック発生温度が−50℃以下であるものを「◎」、−60℃以下であるものを「☆」とした。
【0101】
(3)難燃性(60度傾斜難燃試験):
得られた電線サンプルの60度傾斜難燃試験をJIS C 3005に準拠した方法で行った。電線サンプルを4秒間着火させ、60秒以内に自己消火したものを「○」(合格)とし、自己消火するのに60秒を超えたものを「×」(不合格)とした。合格のうち、
特に、10秒以内に自己消火したものを「◎」、5秒以内に自己消火したものを「☆」とした。
【0102】
(4)耐候性:
水銀灯を備え、75℃に加温した恒温槽の中に、(1)で用いたものと同様な管状サンプルを200時間、1000時間及び1500時間投入した。各時間経過し恒温槽から取り出し後、標点間距離20mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、伸びを計測した。200時間後の管状サンプルで伸びが50%以上のものを「○」(合格)、200時間後の管状サンプルの伸びが50%未満のものを「×」(不合格)とした。合格のうち、特に、1000時間後の管状サンプルの伸びが50%以上のものを「◎」、1500時間後の管状サンプルの伸びが50%以上のものを「☆」とした。なお、表1及び表2では、「200時間」等を「200h」等と示している。
【0103】
(5)縦裂き特性:
前記のテープ状サンプルを、ケーブル加工用ナイフを用いて速度200mm/分で長手方向(縦方向)に切り裂いて、切裂き力(縦裂き特性)を確認した。切裂き力の最大値が6N/mm以下のものを「○」(合格)とし、6N/mmを超えるものを「×」(不合格)とした。合格のうち、特に、切裂き力の最大値が5N/mm以下のものを「◎」、4N/mm以下のものを「☆」とした。
【0104】
(実施例及び参考例
【表1】
【0105】
(比較例)
【表2】
【0106】
表1に示すように、実施例1〜実施例9、参考例10、実施例11、参考例12については、全ての項目に対して合格(「○」以上の結果)であった。
【0107】
一方、表2に示すように、比較例1((a1)が少なく、VA含有量も少ない)は難燃性が悪く、比較例2((a1)が多く、(a3)、(a4))が少ない)は脆化温度(耐寒性)及び縦裂き特性が悪く、比較例3((a1)が少なく、(a3)(a4)が多い)は機械的強度、難燃性が悪く、比較例4((a2)が多い)は縦裂き特性が悪く、比較例5(脂肪酸表面処理水酸化マグネシウムなし)は難燃性が悪く、比較例6(脂肪酸表面処理水酸化マグネシウムが多い)は機械的強度、脆化温度(耐寒性)が悪く、比較例7((B)が多い)は機械的強度、脆化温度(耐寒性)が悪く、全ての項目について合格(「○」以上の結果)となったものはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、低圧電源用ケーブルの被覆材料等として使用することができ、産業上の利用可能性は高いものである。