特許第6407066号(P6407066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407066
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】光デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20181004BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 T
   H01L21/78 B
   H01L21/78 F
   B23K26/53
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-44228(P2015-44228)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-164908(P2016-164908A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】荒川 太朗
(72)【発明者】
【氏名】中野 鉄馬
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−093445(JP,A)
【文献】 特開2005−101416(JP,A)
【文献】 特開2008−130886(JP,A)
【文献】 特開2005−064231(JP,A)
【文献】 特開2009−039755(JP,A)
【文献】 特開2014−226685(JP,A)
【文献】 特開2007−318168(JP,A)
【文献】 特開2007−258321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に設定され互いに交差する複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ発光層を含む光デバイスが形成された光デバイスウェーハを、該分割予定ラインに沿って分割して複数の光デバイスチップを製造する光デバイスチップの製造方法であって、
光デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を光デバイスウェーハの裏面に対して斜めに照射し、該分割予定ラインに直交する断面の形状がV字状である一対のレーザー加工溝を該分割予定ラインに沿って光デバイスウェーハの裏面側に形成するレーザー加工溝形成ステップと、
該レーザー加工溝形成ステップを実施した後、該一対のレーザー加工溝の間の領域に存在する光デバイスウェーハを切削ブレードで破砕して除去し、該一対のレーザー加工溝の形状に対応したV字状のV溝を形成するV溝形成ステップと、
該V溝形成ステップを実施した後、該V溝の内壁面を研磨する研磨ステップと、
該研磨ステップを実施した後、光デバイスウェーハに外力を付与して該V溝と該分割予定ラインとの間に亀裂を生じさせ、光デバイスウェーハを各分割予定ラインに沿って個々の光デバイスチップへと分割する分割ステップと、を含むことを特徴とする光デバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該V溝形成ステップでは、光デバイスウェーハと該切削ブレードとが接触する加工点において光デバイスウェーハの内部から裏面へと向かう方向に該切削ブレードが回転するアップカットを実施することを特徴とする請求項1記載の光デバイスチップの製造方法。
【請求項3】
該研磨ステップでは、先端の形状が該V溝に対応するV字状の切削ブレードで該V溝を切削して該V溝の内壁面を研磨することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光デバイスチップの製造方法。
【請求項4】
該レーザー加工溝形成ステップを実施する前に、光デバイスウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を光デバイスウェーハに照射して、該分割ステップにおいて該亀裂を案内するガイド改質層を該分割予定ラインに沿って形成するガイド改質層形成ステップを更に含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光デバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光型の光デバイスチップを製造する際に適用される光デバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の光デバイスチップを製造する際には、サファイアやSiC等でなる結晶成長用の基板の表面に、エピタキシャル成長等の方法で発光層が形成される。発光層が形成された基板(光デバイスウェーハ)は、分割予定ライン(ストリート)に沿って複数の光デバイスチップへと分割される。
【0003】
光デバイスウェーハの分割方法としては、光デバイスウェーハに対する吸収性が高いパルスレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射し、アブレーションによるレーザー加工溝を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。レーザー加工溝が形成された光デバイスウェーハに外力を付与することで、このレーザー加工溝に沿って光デバイスウェーハを分割できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような発光型の光デバイスチップでは、光取り出し効率をできるだけ高めることが重要になる。しかしながら、例えば、従来の方法によって製造される光デバイスチップでは、発光層の裏面側(基板側)に射出された後に基板の側面で全反射して内部で減衰してしまう光の割合を必ずしも低く抑えることができず、光取り出し効率に改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光デバイスチップの光取り出し効率を高めることができる光デバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、表面に設定され互いに交差する複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ発光層を含む光デバイスが形成された光デバイスウェーハを、該分割予定ラインに沿って分割して複数の光デバイスチップを製造する光デバイスチップの製造方法であって、光デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を光デバイスウェーハの裏面に対して斜めに照射し、該分割予定ラインに直交する断面の形状がV字状である一対のレーザー加工溝を該分割予定ラインに沿って光デバイスウェーハの裏面側に形成するレーザー加工溝形成ステップと、該レーザー加工溝形成ステップを実施した後、該一対のレーザー加工溝の間の領域に存在する光デバイスウェーハを切削ブレードで破砕して除去し、該一対のレーザー加工溝の形状に対応したV字状のV溝を形成するV溝形成ステップと、該V溝形成ステップを実施した後、該V溝の内壁面を研磨する研磨ステップと、該研磨ステップを実施した後、光デバイスウェーハに外力を付与して該V溝と該分割予定ラインとの間に亀裂を生じさせ、光デバイスウェーハを各分割予定ラインに沿って個々の光デバイスチップへと分割する分割ステップと、を含むことを特徴とする光デバイスチップの製造方法が提供される。
【0008】
本発明において、該V溝形成ステップでは、光デバイスウェーハと該切削ブレードとが接触する加工点において光デバイスウェーハの内部から裏面へと向かう方向に該切削ブレードが回転するアップカットを実施することが好ましい。
【0009】
また、本発明において、該研磨ステップでは、先端の形状が該V溝に対応するV字状の切削ブレードで該V溝を切削して該V溝の内壁面を研磨することが好ましい。
【0010】
また、本発明において、該レーザー加工溝形成ステップを実施する前に、光デバイスウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を光デバイスウェーハに照射して、該分割ステップにおいて該亀裂を案内するガイド改質層を該分割予定ラインに沿って形成するガイド改質層形成ステップを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光デバイスチップの製造方法では、断面の形状がV字状のV溝を分割予定ラインに沿って光デバイスウェーハの裏面側に形成してから、光デバイスウェーハに外力を付与して個々の光デバイスチップへと分割するので、完成した光デバイスチップの裏面側の側面は、表面側に形成された発光層を含む光デバイスに対して傾斜する。
【0012】
これにより、例えば、表面側から光を取り出す光デバイスチップにおいて、光デバイスの裏面側(基板側)に射出された光を光デバイスチップの表面側から取り出し易くなる。つまり、光デバイスの裏面側に射出された後に光デバイスチップの内部で減衰する光の割合を低く抑えて、光デバイスチップの光取り出し効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る光デバイスチップの製造方法では、光デバイスチップの裏面側の側面となるV溝の内壁面を研磨するので、光デバイスチップの光取り出し効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】レーザー加工溝形成ステップを模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、第1のレーザー加工溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図2(B)は、第2のレーザー加工溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図2(C)は、一対のレーザー加工溝を拡大した断面図である。
図3】V溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
図4】研磨ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
図5】分割ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
図6】変形例に係る研磨ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
図7】ガイド改質層形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る光デバイスチップの製造方法は、レーザー加工溝形成ステップ(図1図2(A)、図2(B)、及び図2(C)参照)、V溝形成ステップ(図3参照)、研磨ステップ(図4参照)、及び分割ステップ(図5参照)を含む。
【0016】
レーザー加工溝形成ステップでは、光デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射して、分割予定ラインに沿う一対のレーザー加工溝を光デバイスウェーハの裏面側に形成する。このレーザー加工溝形成ステップにおいて、一対のレーザー加工溝は、分割予定ラインに直交する断面の形状がV字状となるように形成される。
【0017】
V溝形成ステップでは、一対のレーザー加工溝の間に存在する光デバイスウェーハを切削ブレードで破砕して除去し、一対のレーザー加工溝の形状に対応したV字状のV溝を形成する。研磨ステップでは、V溝形成ステップで形成したV溝の内壁面を研磨する。
【0018】
分割ステップでは、光デバイスウェーハに外力を付与してV溝と分割予定ラインとの間に亀裂を生じさせ、光デバイスウェーハを各分割予定ラインに沿って複数の光デバイスチップへと分割する。以下、本実施形態に係る光デバイスチップの製造方法について詳述する。
【0019】
まず、断面の形状がV字状である一対のレーザー加工溝を光デバイスウェーハの裏面側に形成するレーザー加工溝形成ステップを実施する。図1は、レーザー加工溝形成ステップを模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る光デバイスウェーハ11は、例えば、円盤状に形成されたサファイア、SiC等でなる基板によって構成されている。
【0020】
光デバイスウェーハ11の表面(下面)11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画されており、各領域には、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)となる光デバイス13が形成されている。各光デバイス13は、エピタキシャル成長等の方法で形成された発光層を含んでいる。
【0021】
光デバイスウェーハ11の表面11a側には、光デバイスウェーハ11より大径のダイシングテープ15が貼着されている。ダイシングテープ15の外周部分は、環状のフレーム17に固定されている。すなわち、光デバイスウェーハ11は、ダイシングテープ15を介してフレーム17に支持されている。
【0022】
本実施形態に係るレーザー加工溝形成ステップでは、上述した光デバイスウェーハ11の裏面(上面)11b側にレーザー光線を照射して、断面の形状がV字状である一対のレーザー加工溝を形成する。このレーザー加工溝形成ステップは、例えば、図1に示すレーザー加工装置2で実施される。
【0023】
レーザー加工装置2は、光デバイスウェーハ11を保持するチャックテーブル(不図示)を備えている。このチャックテーブルは、モータ等の回転駆動源と連結されており、鉛直方向(Z軸方向)に平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブルの下方には、移動機構が設けられており、チャックテーブルは、この移動機構によって水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動する。
【0024】
チャックテーブルの上面は、ダイシングテープ15を介して光デバイスウェーハ11の表面11a側を保持する保持面となっている。この保持面には、チャックテーブルの内部に形成された流路を通じて吸引源の負圧が作用し、光デバイスウェーハ11を吸引する吸引力が発生する。チャックテーブルの周囲には、環状のフレーム17を把持する複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0025】
チャックテーブルの上方には、レーザー加工ユニット4が配置されている。レーザー加工ユニット4と隣接する位置には、光デバイスウェーハ11を撮像するためのカメラ6が設置されている。
【0026】
レーザー加工ユニット4は、レーザー発振器(不図示)でパルス発振されたレーザー光線L1を集光して、チャックテーブル上の光デバイスウェーハ11に照射する。レーザー発振器は、光デバイスウェーハ11に吸収され易い波長(吸収性を有する波長)のレーザー光線L1を発振できるように構成されている。
【0027】
また、レーザー加工ユニット4の下部には、レーザー光線L1を反射するミラー(不図示)が設けられている。このミラーにより、光デバイスウェーハ11の裏面11bに対してレーザー光線L1を傾けることができる。
【0028】
本実施形態に係るレーザー加工溝形成ステップでは、まず、光デバイスウェーハ11の表面11aとチャックテーブルの保持面とがダイシングテープ15を介して対面するように、光デバイスウェーハ11及びダイシングテープ15をチャックテーブルに載置する。
【0029】
次に、環状のフレーム17をクランプで固定し、保持面に吸引源の負圧を作用させる。これにより、光デバイスウェーハ11は、裏面11b側が上方に露出した状態でチャックテーブルに保持される。
【0030】
光デバイスウェーハ11をチャックテーブルで保持した後には、傾斜した第1のレーザー加工溝を形成する第1のレーザー加工溝形成ステップを実施する。図2(A)は、第1のレーザー加工溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0031】
第1のレーザー加工溝形成ステップでは、まず、チャックテーブルを移動、回転させて、レーザー加工ユニット4を加工開始位置(例えば、加工対象となる分割予定ラインの端部)に位置付ける。
【0032】
次に、レーザー加工ユニット4から光デバイスウェーハ11の裏面11bに向けてレーザー光線L1を照射させつつ、チャックテーブルを加工対象の分割予定ラインと平行な方向(図2(A)では、X軸方向)に移動させる。ここで、レーザー光線L1は、光デバイスウェーハ11の裏面11bに対して傾けた状態で(斜めに)照射される。
【0033】
より具体的には、図2(A)に示すように、加工対象の分割予定ラインに直交する断面内で、レーザー光線L1を鉛直方向(裏面11bに対して垂直な方向)から傾ける。これにより、光デバイスウェーハ11の裏面11b側を加工対象の分割予定ラインに沿ってアブレーションさせ、裏面11bに対して傾斜した第1のレーザー加工溝19aを形成できる。
【0034】
上述の手順を繰り返し、例えば、全ての分割予定ラインに沿って第1のレーザー加工溝19aが形成されると、第1のレーザー加工溝形成ステップは終了する。なお、この第1のレーザー加工溝形成ステップでは、任意に選択された分割予定ラインにのみ第1のレーザー加工溝19aを形成しても良い。
【0035】
第1のレーザー加工溝形成ステップを実施した後には、第1のレーザー加工溝19aとは反対の方向に傾斜した第2のレーザー加工溝を形成する第2のレーザー加工溝形成ステップを実施する。図2(B)は、第2のレーザー加工溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0036】
第2のレーザー加工溝形成ステップの基本的な手順は、第1のレーザー加工溝形成ステップと同じである。ただし、第2のレーザー加工溝形成ステップでは、レーザー光線L1を、光デバイスウェーハ11の裏面11bに対して第1のレーザー加工溝形成ステップとは反対の方向に傾けた状態で(斜めに)照射する。
【0037】
より具体的には、図2(B)に示すように、加工対象の分割予定ラインに直交する断面内で、レーザー光線L1を鉛直方向(裏面11bに対して垂直な方向)から第1のレーザー加工溝形成ステップとは反対の方向に傾ける。これにより、光デバイスウェーハ11の裏面11b側を加工対象の分割予定ラインに沿ってアブレーションさせ、裏面11bに対して第1のレーザー加工溝19aとは反対の方向に傾斜した第2のレーザー加工溝19bを形成できる。
【0038】
上述の手順を繰り返し、例えば、第1のレーザー加工溝19aが形成された全ての分割予定ラインに沿って第2のレーザー加工溝19bが形成されると、第2のレーザー加工溝形成ステップは終了する。
【0039】
図2(C)は、第1のレーザー加工溝19a及び第2のレーザー加工溝19b(一対のレーザー加工溝19)を拡大した断面図である。図2(C)に示すように、第1のレーザー加工溝19a及び第2のレーザー加工溝19bは、分割予定ラインに直交する断面の形状がV字状となるように形成される。
【0040】
第1のレーザー加工溝19a及び第2のレーザー加工溝19bの深さは任意だが、例えば、光デバイスウェーハ11の厚さの半分程度にすると良い。また、第1のレーザー加工溝19aと第2のレーザー加工溝19bとで挟まれる領域11cには、光デバイスウェーハ11の一部が残存する。
【0041】
なお、本実施形態では、第1のレーザー加工溝19a及び第2のレーザー加工溝19bを、互いの下端が接触しない態様で形成している。ただし、レーザー光線L1のパワーやスポット径等を調整し、第1のレーザー加工溝19a及び第2のレーザー加工溝19bの下端を接触させても良い。
【0042】
レーザー加工溝形成ステップを実施した後には、一対のレーザー加工溝19の間の領域11cに存在する光デバイスウェーハ11を切削ブレードで破砕して除去し、一対のレーザー加工溝19の形状に対応したV字状のV溝を形成するV溝形成ステップを実施する。図3は、V溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0043】
V溝形成ステップは、例えば、図3に示す切削装置8で実施される。切削装置8は、光デバイスウェーハ11を保持するチャックテーブル(不図示)を備えている。このチャックテーブルは、モータ等の回転駆動源と連結されており、鉛直方向に平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブルの下方には、加工送り機構が設けられており、チャックテーブルは、この加工送り機構によって加工送り方向に移動する。
【0044】
チャックテーブルの上面は、ダイシングテープ15を介して光デバイスウェーハ11の表面11a側を保持する保持面となっている。この保持面には、チャックテーブルの内部に形成された流路を通じて吸引源の負圧が作用し、光デバイスウェーハ11を吸引する吸引力が発生する。チャックテーブルの周囲には、環状のフレーム17を把持する複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0045】
チャックテーブルの上方には、光デバイスウェーハ11を切削する切削ユニット10が配置されている。切削ユニット10は、回転可能に支持されたスピンドル12と、スピンドル12の一端側に装着された切削ブレード14とを備えている。スピンドル12の他端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル12に装着された切削ブレード14は、この回転駆動源の回転力で回転する。
【0046】
切削ブレード14は、光デバイスウェーハ11を適切に加工できるように構成されている。例えば、光デバイスウェーハ11の主成分がサファイアの場合には、切削ブレード14として、♯400〜♯1000のメタルボンドブレードを用いることができる。
【0047】
切削ユニット10は、昇降機構(不図示)によって支持されており、鉛直方向に移動(昇降)する。また、昇降機構の下方には、割り出し送り機構(不図示)が設けられており、切削ユニット10は、この割り出し送り機構で割り出し送り方向に移動する。
【0048】
V溝形成ステップでは、まず、光デバイスウェーハ11の表面11aとチャックテーブルの保持面とがダイシングテープ15を介して対面するように、光デバイスウェーハ11及びダイシングテープ15をチャックテーブルに載置する。
【0049】
次に、環状のフレーム17をクランプで固定し、保持面に吸引源の負圧を作用させる。これにより、光デバイスウェーハ11は、裏面11b側が上方に露出した状態でチャックテーブルに保持される。
【0050】
次に、チャックテーブルを移動、回転させて、切削ブレード14を加工開始位置(例えば、加工対象となる領域11cの端部)に位置付ける。そして、回転させた切削ブレード14の下端(先端)を加工対象となる領域11cに切り込ませつつ、加工対象となる領域11cに対応した方向(図3では、方向D1)にチャックテーブルを移動(加工送り)させる。
【0051】
これにより、一対のレーザー加工溝19の間の領域11cに存在する光デバイスウェーハ11を切削ブレード14で破砕して除去し、一対のレーザー加工溝19の形状に対応したV字状のV溝21を形成できる。
【0052】
V溝21は、一対のレーザー加工溝19に対応した深さに形成される。例えば、一対のレーザー加工溝19の深さを光デバイスウェーハ11の厚さの半分程度にしているのであれば、V溝21の深さも光デバイスウェーハ11の厚さの半分程度になる。
【0053】
なお、このV溝形成ステップでは、切削ブレード14を、光デバイスウェーハ11と切削ブレード14とが接触する加工点において光デバイスウェーハ11の内部から裏面11bへと向かう方向に回転させる(アップカット)ことが好ましい。これにより、領域11cに存在する光デバイスウェーハ11を確実に除去してV溝21を形成できる。上述の手順を繰り返し、一対のレーザー加工溝19が形成された全ての分割予定ラインに沿ってV溝21が形成されると、V溝形成ステップは終了する。
【0054】
V溝形成ステップを実施した後には、V溝の内壁面を研磨する研磨ステップを実施する。図4は、研磨ステップを模式的に示す一部断面側面図である。研磨ステップは、例えば、図4に示す切削装置16で実施される。切削装置16の基本的な構成は、V溝形成ステップで使用される切削装置8と同様である。
【0055】
すなわち、切削装置16は、光デバイスウェーハ11を保持するチャックテーブル(不図示)を備えている。チャックテーブルの上方には、光デバイスウェーハ11を切削する切削ユニット18が配置されている。切削ユニット18は、回転可能に支持されたスピンドル20と、スピンドル20の一端側に装着された切削ブレード22とを備えている。
【0056】
切削ブレード22は、光デバイスウェーハ11を適切に研磨できるように構成されている。例えば、光デバイスウェーハ11の主成分がサファイアの場合には、切削ブレード22として、♯800〜♯3000のメタルボンドブレード、ビトリファイドボンドブレード、電鋳ボンドブレード等を用いることができる。
【0057】
また、切削ブレード22の先端は、図4に示すように、V溝に対応するV字状に形成されている。この切削ブレード22をV溝21に僅かに切り込ませ、加工対象となるV溝21に対応した方向(図4では、方向D2)にチャックテーブルを移動(加工送り)させることで、V溝21を切削して内壁面を研磨できる。
【0058】
なお、本実施形態では、切削ブレード22を、加工点において光デバイスウェーハ11の裏面11bから内部へと向かう方向に回転させている(ダウンカット)が、切削ブレード22を、内部から裏面11bへと向かう方向に回転させても良い(アップカット)。上述の手順を繰り返し、全てのV溝21の内壁面が研磨されると、研磨ステップは終了する。
【0059】
研磨ステップを実施した後には、光デバイスウェーハ11に外力を付与して複数の光デバイスチップへと分割する分割ステップを実施する。図5は、分割ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0060】
分割ステップは、例えば、図5に示すブレーキング装置24で実施される。ブレーキング装置24は、光デバイスウェーハ11を支持する一対の支持刃26,28と、支持刃26,28の上方に配置された押圧刃30とを備える。押圧刃30は、支持刃26と支持刃28との間に位置付けられており、押圧機構(不図示)で鉛直方向に移動(昇降)する。
【0061】
分割工程では、まず、表面11a側を上方に位置付けるように、光デバイスウェーハ11を支持刃26,28上に載置する。なお、光デバイスウェーハ11の裏面11b側には、あらかじめ、保護テープ23を貼着しておく。
【0062】
次に、光デバイスウェーハ11を支持刃26,28に対して移動させ、支持刃26と支持刃28との間にV溝21を位置付ける。すなわち、図5に示すように、V溝21を押圧刃30の直下に移動させる。
【0063】
その後、押圧刃30を下降させて、光デバイスウェーハ11を裏面11b側から押圧刃30で押圧する。光デバイスウェーハ11は、支持刃26,28によってV溝21の両側を下方から支持されている。このため、光デバイスウェーハ11を押圧刃30で押圧すると、V溝21の近傍に下向きの曲げ応力が加わり、表面11aの分割予定ラインと裏面11b側のV溝21との間に亀裂25が生じる。
【0064】
このように、分割予定ラインに沿って形成されたV溝21の近傍に曲げ応力を加えることで、亀裂25を生じさせて光デバイスウェーハ11を分割できる。V溝21が形成された全ての分割予定ラインに沿って光デバイスウェーハ11が分割され、各光デバイス13に対応する複数の光デバイスチップが形成されると、分割ステップは終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る光デバイスチップの製造方法では、断面の形状がV字状のV溝21を分割予定ラインに沿って光デバイスウェーハ11の裏面11b側に形成してから、光デバイスウェーハ11に外力を付与して個々の光デバイスチップへと分割するので、完成した光デバイスチップの裏面側の側面(V溝21の内壁面)は、表面側に形成された発光層を含む光デバイス13に対して傾斜する。
【0066】
これにより、例えば、表面側から光を取り出す光デバイスチップにおいて、光デバイス13の裏面側(基板側)に射出された光を光デバイスチップの表面側から取り出し易くなる。つまり、光デバイス13の裏面側(基板側)に射出された後に光デバイスチップの内部で減衰する光の割合を低く抑えて、光デバイスチップの光取り出し効率を高めることができる。
【0067】
また、本発明に係る光デバイスチップの製造方法では、光デバイスチップの裏面側の側面となるV溝21の内壁面を研磨するので、光デバイスチップの光取り出し効率を更に高めることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、切削ブレード22でV溝21を研磨しているが、本発明の研磨ステップには、サンドブラスト(ショットブラスト)等の方法を適用することもできる。図6は、変形例に係る研磨ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0069】
変形例に係る研磨ステップは、例えば、図6に示すサンドブラスト装置32で実施される。図6に示すように、サンドブラスト装置32は、ノズル34を備えている。このノズル34から研磨材36を吹き付けることで、上記実施形態の研磨ステップと同様にV溝21の内壁面を研磨できる。
【0070】
また、光デバイスウェーハ11に一対のレーザー加工溝19を形成する前に、亀裂25を案内するためのガイド改質層を形成しても良い。図7は、ガイド改質層形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0071】
ガイド改質層形成ステップは、例えば、図7に示すレーザー加工装置38で実施される。レーザー加工装置38の基本的な構成は、レーザー加工溝形成ステップで使用されるレーザー加工装置2と同様である。
【0072】
すなわち、レーザー加工装置38は、レーザー発振器(不図示)でパルス発振されたレーザー光線L2を集光して、チャックテーブル上の光デバイスウェーハ11に照射するレーザー加工ユニット40を備えている。ただし、レーザー加工装置38のレーザー発振器は、光デバイスウェーハ11に吸収され難い波長(透過性を有する波長)のレーザー光線L2を発振できるように構成されている。
【0073】
ガイド改質層形成ステップでは、まず、光デバイスウェーハ11を保持したチャックテーブルを移動、回転させて、レーザー加工ユニット40を加工開始位置(例えば、加工対象となる分割予定ラインの端部)に位置付ける。
【0074】
次に、レーザー加工ユニット40から光デバイスウェーハ11の裏面11bに向けてレーザー光線L2を照射させつつ、チャックテーブルを加工対象の分割予定ラインと平行な方向に移動させる。ここで、レーザー光線L2は、表面11aの分割予定ラインとV溝21の底となる領域との間に集光させる。
【0075】
これにより、加工対象の分割予定ラインに沿って、分割予定ラインとV溝21の底となる領域との間に、多光子吸収によるガイド改質層27を形成できる。V溝21が形成される予定の全ての分割予定ラインに沿ってガイド改質層27が形成されると、ガイド改質層形成ステップは終了する。
【0076】
上述のようなガイド改質層27を形成すれば、分割ステップにおいて亀裂25を適切に案内できるので、光デバイスウェーハの分割不良を防止できる。その他、上記実施形態に係る構成、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0077】
11 光デバイスウェーハ
11a 表面
11b 裏面
11c 領域
13 光デバイス
15 ダイシングテープ
17 フレーム
19 レーザー加工溝
19a 第1のレーザー加工溝
19b 第2のレーザー加工溝
21 V溝
23 保護テープ
25 亀裂
27 ガイド改質層
L1,L2 レーザー光線
2 レーザー加工装置
4 レーザー加工ユニット
6 カメラ
8 切削装置
10 切削ユニット
12 スピンドル
14 切削ブレード
16 切削装置
18 切削ユニット
20 スピンドル
22 切削ブレード
24 ブレーキング装置
26,28 支持刃
30 押圧刃
32 サンドブラスト装置
34 ノズル
36 研磨材
38 レーザー加工装置
40 レーザー加工ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7