(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
上下方向を有し、肌側に位置する肌側シートと、非肌側に位置する非肌側シートと、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に位置する伸縮性不織布と、胴回り部のうちの少なくとも上端部よりも下方に設けられ、前記肌側シート、前記非肌側シート、及び前記伸縮不織布を接合する複数の溶着部と、を備え、前記胴回り部のうちの、前記複数の溶着部が点在している点在領域には、接着剤が存在しない使い捨ておむつであって、前記肌側シートのうちの、前記点在領域の少なくとも一部が、着用時に肌に当接することを特徴とする使い捨ておむつである。
【0010】
このような使い捨ておむつによれば、溶着部の厚みは、溶着によって密度が高くなり厚みも薄くなるが、溶着部と溶着部の間の領域は、溶着部よりも厚く、盛り上がった略山形状となる。そのため、着用者が使い捨ておむつを着用する際には、略山形状が着用者の肌に当接するため、着用者に柔らかい肌触りを与えることができる。更に、複数の溶着部が点在している点在領域に接着剤が存在せず、且つ、伸縮性がフィルムではなく不織布によって付与されているから、より一層柔らかい肌触りが実現できる。
【0011】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記上端部は、前記伸縮不織布を備えておらず、複数の糸ゴムを備えていることが望ましい。
【0012】
このような使い捨ておむつによれば、胴回り部の上端部より下方は、伸縮不織布を備えることで、腹部を伸縮不織布全面で緩やかにフィットさせることができるため、着用者の呼吸等による腹部の起伏にも対応することができる。一方、胴回り部の上端部には糸ゴムを備えることで、線状の糸ゴムによって使い捨ておむつがズレ落ちたりする恐れを軽減することができる。
【0013】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記非肌側シートは、上端から下方に向かって、前記肌側シート側に折り返されており、前記非肌側シートの上端は、前記肌側シートの上端より上方に設けられており、前記上下方向における前記非肌側シートの上端と前記肌側シートの上端との間に、前記複数の糸ゴムが配置されていることが望ましい。
【0014】
このような使い捨ておむつによれば、糸ゴムと非肌側シートとの間に肌側シートが設けられていないため、着用時のフィット性を向上させることができる。
【0015】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記上下方向と交差する横方向を有し、吸収性本体、前身頃部及び後身頃部を有し、前記前身頃部及び前記後身頃部とを接合する複数の端部接合部を有しており、前記複数の端部接合部が点在している端部接合領域が設けられており、前記吸収性本体の非肌側と、前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートとが接合された吸収性本体接合領域が設けられており、前記吸収性本体接合領域に位置する前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートには、前記複数の溶着部が点在している他の点在領域が設けられており、前記他の点在領域の単位面積当たりの前記複数の溶着部の面積の合計が、前記端部接合領域の単位面積当たりの前記端部接合部の面積の合計より小さいことが望ましい。
【0016】
このような使い捨ておむつによれば、他の点在領域の単位面積当たりの複数の溶着部の面積の合計を、端部接合領域の単位面積当たりの端部接合部の面積の合計より小さくすることにより、端部接合領域における接合強度の確保と、他の点在領域における通気性の確保を両立させることが可能となる。
【0017】
かかる使い捨ておむつにおいて、吸収性本体を有しており、前記吸収性本体の非肌側と、前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートとが接合された吸収性本体接合領域が設けられており、前記吸収性本体接合領域に位置する前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートには、前記複数の溶着部が点在している他の点在領域が設けられており、単位面積当たりの前記複数の溶着部の面積の合計は、前記点在領域の方が前記他の点在領域より小さいことが望ましい。
【0018】
このような使い捨ておむつによれば、単位面積当たりの複数の溶着部の面積の合計を、点在領域の方が他の点在領域より小さくすることにより、吸収体本体が横方向に縮むことを抑制しつつも、使い捨ておむつ全体として適切な通気性を確保することが可能となる。
【0019】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記点在領域には、前記複数の溶着部が均等な間隔で配置されていることが望ましい。
【0020】
このような使い捨ておむつによれば、肌側シートを着用者の肌に均等に当接させるため、着用者にとっての肌触りを向上させることができる。
【0021】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記胴回り部のうち、前記上端部と前記他の点在領域を除く領域には、全域に亘って均等な間隔で前記複数の溶着部が設けられていることが望ましい。
【0022】
このような使い捨ておむつによれば、点在領域がより広い範囲に設けられているため、使い捨ておむつの見栄えを向上させることができる。
【0023】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記伸縮不織布は、ポリオレフィン及びポリウレタンを含有していることが望ましい。
【0024】
このような使い捨ておむつによれば、伸縮不織布がポリオレフィンを含有することで、肌側シート及び非肌側シートとの溶着性を向上させ、ポリウレタンを含有することで、伸縮不織布の上下及び左右方向への伸縮性を向上させることができる。
【0025】
かかる使い捨ておむつにおいて、互いに隣接する前記溶着部の間における前記伸縮不織布の厚みは、それぞれの前記溶着部の中央位置における前記伸縮性不織布の厚みより大きいことが望ましい。
【0026】
このような使い捨ておむつによれば、着用時には、溶着部より先に着用者の肌に当接するため、より柔らかい肌触りにすることができる。
【0027】
かかる使い捨ておむつにおいて、互いに隣接する前記溶着部の間において、前記伸縮不織布の少なくとも一部は、前記肌側シート、又は前記非肌側シートに接触することが望ましい。
【0028】
このような使い捨ておむつによれば、例えば、溶着部の間の部分が肌に触れた場合等に伸縮不織布がクッションとなるため、肌触りを向上させることが可能となる。
【0029】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記上下方向と交差する横方向を有し、前記上下方向に互いに隣接する一対の前記溶着部、及び前記横方向に互いに隣接する一対の前記溶着部に囲まれた領域に凸部を有しており、前記凸部は、それぞれ肌側及び非肌側に設けられていることが望ましい。
【0030】
このような使い捨ておむつによれば、肌側及び非肌側の両面にそれぞれ凸部を設けることで、より肌触りを良くすることができる。
【0031】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記伸縮不織布は、第1領域と、前記第1領域より繊維密度が高い第2領域とを有しており、
前記第1領域と前記第2領域は、所定方向に沿って交互に設けられていることが望ましい。
【0032】
このような使い捨ておむつによれば、伸縮不織布に繊維密度が高い領域を設けることで、より柔らかくなり、より肌触りを良くすることができる。
【0033】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記上下方向において、前記伸縮不織布の繊維密度は、前記胴回り部の中央部より、前記伸縮不織布の上端部の方が高いことが望ましい。
【0034】
このような使い捨ておむつによれば、伸縮不織布の上端部の繊維密度をより高くすることで、着用者が着用しようとする際に使い捨ておむつの上端部を引き上げても破れたりする等の破損する恐れを軽減することができる。一方、胴回り部の中央部の伸縮不織布の繊維密度をより小さくすることで、腹周りの通気性を向上させることができる。
【0035】
かかる使い捨ておむつにおいて、前記上下方向と交差する横方向を有し、前身頃部、後身頃部、前記前身頃部と前記後身頃部との間に位置する股下部を備え、前記前身頃部と前記股下部とが接合され、前記後身頃部と前記股下部とが接合されている外層シートと、前記前身頃部から前記後身頃部に亘って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、を備え、前記前身頃部の前記横方向における前身頃側縁と前記後身頃部の前記横方向における後身頃側縁が接合されており、前記股下部には、股下レッグギャザーが設けられ、前記股下レッグギャザーは、前記吸収性本体とは接合されておらず、前記前身頃部と前記股下部との接合部は、前記上下方向としての縦方向において、前記前身頃側縁の前記股下部側の端よりも前記股下部側に位置することが望ましい。
【0036】
このような使い捨ておむつによれば、内腿や腹部に対しての使い捨ておむつの着用感を向上させることができる。
【0037】
===本実施形態に係る使い捨ておむつについて===
図1は、本実施形態に係る使い捨ておむつの斜視イメージ図、
図2は、展開状態のおむつ1の平面図、
図3は、展開状態のおむつ1の断面図、
図4は、展開状態のおむつ1における胴回り部24及び股下パネル50の位置を示した平面図、
図5は、展開状態のおむつ1における前側接合部62、後側接合部66、及び、本体接合部70の位置を示した平面図、
図6は、
図1のおむつ1を前身頃部30側から正面視した図である。
【0038】
以下の説明では、
図1の状態(着用状態)のおむつ1は、「上下方向」と、上下方向と交差する「横方向」と、上下方向及び横方向と交差する「厚み方向」とを有する。また、
図2の状態(展開状態)でのおむつ1の長手方向を「長手方向」、おむつ1の長手方向における一端と他端をそれぞれ「上端」といい、長手方向におけるおむつ1の真ん中CLを「下端」ともいう。さらに、厚み方向のうち、着用者に接触する側を「肌側」、その反対側を「非肌側」という。
図2等におけるC−C線は、横方向中心を示している。なお、
図3は、C−C線における断面図であり、便宜上、溶着部39、49(後述)を省略している。また、各図において、溶着部39、49等は簡略化されており、縮尺等は必ずしも正確ではない。
図6においては、便宜上、後身頃部40の溶着部49a、49bは省略されている。
【0039】
本実施形態にかかる使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」と呼ぶ。)は、主に大人を着用対象としたパンツ型おむつであり、着用者の股間に配置される吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装シート20を有しており、胴回り開口部1aと一対の脚回り開口部1b、1bが形成されている。また、おむつ1の上端部25には、複数の糸ゴム30a、40aが設けられている。
【0040】
外層シート20は、前身頃部30、後身頃部40、前身頃部30と後身頃部40との間に位置する股下パネル50(「股下部」ともいう。)を有している。股下パネル50は、長手方向において、前身頃部30と後身頃部40との間に位置し、接着剤等により、前身頃部30と股下パネル50とが固定され、後身頃部40と股下パネル50とが固定されている。
【0041】
前身頃部30は、着用者の腹部に対応する部分、後身頃部40は、着用者の背部(尻部)に対応する部分、股下パネル50は、着用者の股下に対応する部分である。吸収性本体10は、前身頃部30、後身頃部40、股下パネル50と重なるように、前身頃部30から後身頃部40に亘って設けられ、接合部70で接着剤によって外層シート20に接合されている。
【0042】
おむつ1は、外観形状は平面視略H形状をなしており(
図2)、展開状態のおむつ1の真ん中CLを折り畳み位置として二つ折りして、端部接合領域Zで接合されて胴回り部24、胴回り開口部1a、及び一対の脚回り開口部1b、1bが形成される。端部接合領域Zは、前身頃側縁31の上端31aと後身頃側縁41の上端41aの位置を一致させ、前身頃側縁31の下端31bと後身頃側縁41の下端41bの位置を一致させて、前身頃側縁31と後身頃側縁41が上端31a(上端41a)から下端31b(下端41b)に亘って接合された領域である。
【0043】
端部接合領域Zには、複数の端部接合部29が設けられている(
図6)。端部接合部29は、前身頃部30と後身頃部40に超音波振動と圧力が加えられて超音波接合された部分であり、各端部接合部29は楕円形に形成され、均等な間隔で配置されている。なお、
図6の端部接合領域Z及び端部接合領域Zより横方向外側の溶着部39aは省略している。
【0044】
端部接合領域Zは、上下方向の長さは、最も上端に位置する端部接合部29の上端29uから、最も下端に位置する端部接合部29の下端29dまでであり、横方向の長さは、最も横方向外側に位置する端部接合部29の横端29eから、最も横方向内側に位置する端部接合部29の横端29iまでの、略矩形状であり、この面積をSzとする。
【0045】
このとき、単位面積当たりの複数の端部接合部29の面積の合計(Rz)を所定値以上とすることが好ましい。つまり、端部接合領域Zの面積(Sz)に対する、端部接合領域Zに設けられた端部接合部29の面積の合計(Tz)を、所定値以上、例えば15%以上とすることが好ましい(Rz=Tz/Sz≧15%)。端部接合領域Zは、着用時に前身頃部30と後身頃部40とが分離しないように必要十分な接合強度を確保する必要があるためである。本実施形態においては、Rzは約19%である。
【0046】
吸収性本体10は、尿等の排泄物を吸収するものであり、平面視略長方形状を有し、長辺がおむつ1の長手方向に沿っている。吸収性本体10は、吸収体11を有している(
図2)。
【0047】
吸収体11は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアであり、尿等の排泄物を吸収することができる。吸収体11は、パルプ繊維と吸収性ポリマー(SAP)等を有している。また、吸収体11は、不織布等の液透過性シートに包まれ、厚み方向において、不織布等の液透過性のトップシート12と、ポリエチレン(PE)等の液不透過性シートと不織布等の液透過性シートからなる2層構造のバックシート14とに挟まれている。
【0048】
前身頃部30は、前側胴回り部24a(胴回り部24)と、前側胴回り部24aよりも股下パネル50側に位置する前身頃股下側領域34とを有している。前側胴回り部24aは、
図4に示すように、平面視略長方形状であり、上下方向の長さは、上端31aから下端31bまでの長さであり、横方向の長さは、一方側の前身頃側縁31から他方側の前身頃側縁31までの長さであり、長辺が横方向に沿って、短辺が長手方向に沿っている。一方、前身頃股下側領域34は、平面視において等脚台形に類似した形状を有している。
【0049】
同様に、後身頃部40は、後側胴回り部24b(胴回り部24)と、後胴回り部24bよりも股下パネル50側に位置する後身頃股下側領域44とを有している、後側胴回り部24bは、平面視略長方形状であり、上下方向の長さは、上端41aから下端41bまでの長さであり、横方向の長さは、一方側の前身頃側縁41から他方側の後身頃側縁41までの長さであり、長辺が横方向に沿って、短辺が長手方向に沿っている。一方、後身頃股下側領域44は、平面視において等脚台形に類似した形状を有している。
【0050】
前身頃部30及び後身頃部40は、
図3に示すように、着用者の肌側に設けられた肌側シート32、42と、非肌側に設けられた非肌側シート33、43をそれぞれ備え、肌側シート32と非肌側シート33との間に設けられた伸縮性不織布38と、肌側シート42と非肌側シート43との間に設けられた伸縮不織布48を有している。
【0051】
肌側シート32、42及び非肌側シート33、43は、柔軟なシート部材であり、ポリプロピレン(PP)繊維のスパンボンド不織布である。肌側シート32と非肌側シート33との目付量の差、及び、肌側シート42と非肌側シート43との目付量の差は、それぞれ5g/m
2以内であることが好ましい。これによって、おむつ1の肌側と非肌側にそれぞれほぼ均等な皺が形成されるため、触感が良く、美観性も向上される。肌側シート32と非肌側シート33、肌側シート42と非肌側シート43は、それぞれ平面視同じ外形形状を有している。なお、ポリプロピレン繊維は、ホモポリマーでもよく、エチレンを共重合したコポリマーでもよい。また、スパンボンド繊維に限らず、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とを積層してなる所謂SMS不織布であってもよい。
【0052】
伸縮不織布38、48は、弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維であるポリウレタン系エラストマーと、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)とを有しており、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布である。この延伸処理により、伸縮不織布38、48は、上下方向及び横方向の伸縮性を有している。なお、延伸処理は、互いに直交する方向に延伸処理を行なうものであってもよいし、所定方向にのみ延伸処理を行なうものであってもよい。所定方向にのみ延伸処理を行なった場合、所定方向における伸縮性が発現されるが、すべての繊維の配向が所定方向に沿っているとは限らないため、所定方向と直交する方向にも伸縮性が発現される。
【0053】
図10は、伸縮不織布38(48)の断面を模式的に表した図である。伸縮不織布38(48)は、ギア延伸処理によって、部分aと部分bとが横方向に沿って交互に設けられている。
図10に示す部分aは、表面に凹凸を有するギアによる延伸処理がなされ、ギアの凸部に対応して伸ばされて繊維密度が低くなり、部分bは、ギアの凹部に対応した部分で部分aに対してより繊維密度が高くなっている。この伸縮不織布38(48)を用いることで、おむつ1をより柔らかく、より肌触りを良くすることができる。
【0054】
伸縮不織布38は、肌側シート32及び非肌側シート33とほぼ同じ外形形状を有しており、伸縮不織布48は、肌側シート42及び非肌側シート43とほぼ同じ外形形状を有している(
図2)。このとき、伸縮不織布38、48は、上下方向において、各伸縮不織布38、48の上端部、つまりおむつ1の上端部25により近い部分の繊維密度は、胴回り部24(24a、24b)の中央部より高い。これにより、着用者がおむつ1を着用しようとする際に、より繊維密度が高い上端部25を持って引き上げても、破れたりする等の破損の恐れを軽減することができる。一方、各伸縮不織布38、48のうち下端部側の領域の繊維密度をより低くすることで、湿気がこもりやすい胴回り部24の通気性を向上させることができる。
【0055】
前身頃部30及び後身頃部40の上端部25には、伸縮不織布38、48が配置されておらず、代わりに糸ゴム30a、40aが配置されている。前身頃糸ゴム30a、後身頃糸ゴム40aは、横方向に沿って伸縮する糸状の伸縮部材であり、おむつ1の胴回り開口1aに伸縮性を与えている。前身頃糸ゴム30aは、前身頃上端縁35に沿って前身頃上端縁35の一端部から他端部に亘って設けられており、後身頃糸ゴム40aは、後身頃上端縁45に沿って後身頃上端縁45の一端部から他端部に亘って設けられている。これによって、線状の糸ゴム30a、40aがおむつ1のズレ落ち等を防ぐことができる。一方、前身頃部30及び後身頃部40の上端部25より下側の領域には、伸縮不織布38、48を配置して、着用者の腹部を伸縮不織布38、48の全面で緩やかにフィットさせている。
【0056】
図3に示すように、前身頃部30の上端は、肌触りの向上と耐久性の向上のために、非肌側シート33が、前身頃上端縁35を起点として、肌側の下方へ折り返されている。このとき、非肌側シート33の折り返された領域のうち最も下方に位置する部分は、肌側から順に非肌側シート33、肌側シート32、伸縮不織布38、非肌側シート33が重ねられている。一方、非肌側シート33の上端部、つまりおむつ1の上端部25は、非肌側シート33と非肌側シート33が重ねられており、2つの非肌側シート33の間に複数の前身頃側糸ゴム30aが配置されている。
【0057】
同様に、後身頃部40の上端は、非肌側シート43が、後身頃上端縁45を起点として、下方へ折り返されている。このとき、非肌側シート43の折り返された領域のうち最も下方に位置する部分は、肌側から順に非肌側シート43、肌側シート42、伸縮不織布48、非肌側シート43が重ねられている。一方、非肌側シート43の上端部、つまりおむつ1の上端部25は、非肌側シート43と非肌側シート43が重ねられており、2つの非肌側シート43の間に複数の後身頃側糸ゴム40aが配置されている。
【0058】
このとき、非肌側シート33、43が折り返されることで、非肌側シート33、43の上端33a、43aが肌側シート32、42の上端32a、42aより上方に設けられている。前身頃糸ゴム30aは、非肌側シート33の上端33aと肌側シート32の上端32aの間に設けられており、後身頃糸ゴム40aは、肌側シート43の上端43aと肌側シート42の上端42aの間に設けられている。これにより、各糸ゴム30a、40aと各非肌側シート33、43との間に肌側シート32、42が設けられていないため、各糸ゴム30a、40aの伸縮力を着用者に与えやすくなり、着用時のフィット性を向上させることができる。
【0059】
肌側シート32、伸縮不織布38、及び非肌側シート33は、複数の溶着部39で接合されて、前身頃部30を形成している。同様に、肌側シート42、伸縮不織布48、及び非肌側シート43は、複数の溶着部49で接合されて、後身頃部40を形成している。溶着部39、49の詳細については、後述する。
【0060】
さらに、前身頃部30及び後身頃部40にはレッグギャザー26が設けられている。レッグギャザー26は、前身頃下端縁36に沿って一端部から他端部に亘って連続した前側レッグギャザー37と、後身頃下端縁46に沿って一端部から他端部に亘って連続した後身頃部40と、股下パネル50の股下レッグギャザー54を有している。各レッグギャザー37、47、54は、協働しておむつ1の脚回り開口1bに伸縮性を与えている。前側レッグギャザー37は、肌側シート32と非肌側シート33との間に配置された複数の糸ゴムで、肌側シート32及び非肌側シート33に伸縮性を付与し、後側レッグギャザー47は、肌側シート42と非肌側シート43との間に配置された複数の糸ゴムで、肌側シート42及び非肌側シート43に伸縮性を付与している。
【0061】
股下パネル50は、2枚の不織布により構成されており、長手方向における略中央部分に、横方向における内側へ湾曲した湾曲部52を備えた平面視略砂時計形状を有している。湾曲部52において、股下パネル50の幅が最も狭くなっている(最狭部53)。一方で、股下パネル50の長手方向における両端部には、湾曲部52が設けられておらず、幅が最も広くなっている(最広部)。なお、
図5に示すように、前身頃部30と股下パネル50とが前側接合部62で接合され、後身頃部40と股下パネル50とが後側接合部66で接合されている。
【0062】
股下パネル50の2枚の不織布の間には、糸ゴムが配置されており、股下レッグギャザー54を構成している。股下レッグギャザー54は、湾曲部52に沿って連続して設けられて、湾曲部52を超えて、股下パネル50の長手方向における最広部まで延びている。湾曲部52に沿った股下レッグギャザー54を設けることで、内腿に対してのおむつ1の着用感をより一層向上させることができる。
【0063】
股下レッグギャザー54は、吸収性本体10とは接合されておらず、前側接合部62は、上下方向において、前身頃側縁31の股下パネル50側の端(下端31b)よりも股下パネル50側に位置している。これにより、内腿や腹部に対してのおむつ1の着用感を向上させることができる。
【0064】
湾曲部52を前身頃部30と重ねることで、湾曲部52を介して股下パネル50を前身頃部30にスムーズに繋げることが可能となる。
【0065】
前身頃部30と股下パネル50とが重なった重なり部分において、前側接合部62の他に、重なり部分の横方向の両端部には非接合部64が設けられているため、内腿に対してのおむつ1の着用感をより一層向上させることができる。また、股下レッグギャザー54が、非接合部64と重なることで、股下レッグギャザー54の可動領域が減ることを防止することができる。
【0066】
吸収性本体10の横方向における横方向両端部分のうちの、上下方向における上下方向端部においては、吸収性本体10が外装シート20に接合されている一方で、横方向両端部分のうちの、上下方向における上下方向非端部であって前側接合部62と重なっている部分においては、吸収性本体10が外層シート20に接合されていない。これによって、横方向両端部分のうち、上下方向端部、つまり、吸収性本体10の四隅については、しっかりと吸収性本体10を外層シート20に固定できる。
【0067】
股下パネル50の最狭部53からの前側接合部62の離間距離D1は、最狭部53からの後側接合部66の離間距離D2よりも小さい。これによって、前側接合部62で未然に皺を途切れさせつつ、後側でごわごわ感を緩和することが可能となる。
【0068】
吸収性本体10の横方向中央部分においては、吸収性本体10が、後身頃部40の股下パネル50側の端部と重なる部分を除いて、上下方向に沿って外層シート20に接合されている。これによって、吸収性本体10の横方向中央部分について吸収性本体10の固定すべきでない所(B)を固定せず、固定すべき所をしっかりと固定することが可能となる。
【0069】
===溶着部39、49について===
図7は、展開状態のおむつ1における点在領域X及び本体接合領域Yの位置を示した平面図である。
図8は、
図1における部分Aを説明する図である。
図9Aは、
図8におけるD−D断面図である。
図9Bは、
図8におけるE−E断面図である。
【0070】
前身頃部30のうち、上端部25と本体接合領域Yを除く領域と、後身頃部40のうち、上端部25と本体接合領域Yを除く領域には、点在領域Xが設けられている。点在領域Xは、
図7において、記号Xで指し示されている斜線と同じ傾きの斜線が施されている領域であり、溶着部39a(39)及び溶着部49a(49)がそれぞれ点在する領域である。なお、本実施形態においては、前身頃部30及び後身頃部40のうち、端部接合領域Zや端部接合領域Zより横方向外側にも溶着部39a、49aを設けている。これにより、前身頃部30及び後身頃部40のより広い範囲に溶着部39、49が設けられているため、おむつ1の外観的統一性を感じることができ、おむつ1の美観性を向上させることができる。
【0071】
本体接合領域Yは、
図7において、記号Yで指し示されている斜線と同じ傾きの斜線が施されている領域であり、前身頃部30のうち吸収性本体10が重ねられた領域、及び後身頃部40のうち吸収性本体10が重ねられた領域であって、溶着部39bが点在する領域である。本実施形態において、点在領域Xに形成された溶着部39は、溶着部39a、49aであり、本体接合領域Yに形成された溶着部39、49は、溶着部39b、49bである。
【0072】
前身頃部30の複数の溶着部39aは、
図6等において黒塗りした部分であり、肌側シート32と伸縮性不織布38と非肌側シート33に超音波振動と圧力が加えられて超音波接合され、肌側シート32と伸縮性不織布38と非肌側シート33とが互いに溶融して固化した部分である。各溶着部39a(49a)は、ほぼ同じ大きさで円形状に形成され、例えば均一に分布されている。
【0073】
以下、
図8における2点鎖線で囲まれた領域F内の4つの溶着部39aを第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4として説明する。
図8に示すように、第1溶着部39a1と、第1溶着部39a1の下側で第1溶着部39a1に隣接する第2溶着部39a2と、上下方向において第1溶着部39a1と第2溶着部39a2の間に設けられ、横方向において一方側(左側)から第1溶着部39a1に隣接する第3溶着部39a3と、上下方向において、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2の間に設けられ、横方向において他方側(右側)から第1溶着部39a1に隣接する第4溶着部39a4とが設けられている。第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4は、それぞれひし形の頂点を形成するような配置である。
【0074】
このとき、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2を結ぶ直線Svは、上下方向に沿っており、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4を結ぶ直線Shは、横方向に沿っている。直線Svと直線Shとの交点を交点Nとすると、第1溶着部39a1の下端から交点Nまでの距離はd、第2溶着部39a2上端から交点Nまでの距離はdであり、第1溶着部39a1の下端から第2溶着部39a2上端までの距離は2dである。同様に、第3溶着部39a3の右端から交点Nまでの距離はe、第4溶着部39a4の左端から交点Nまでの距離はeであり、第3溶着部39a3の右端から第4溶着部39a4の左端までの距離は2eである。
【0075】
この第3溶着部39a3の右端から第4溶着部39a4の左端までの距離(2e)を、1.5〜5.0mmにすることが好ましい。また、第1溶着部39a1から第3溶着部39a3(第4溶着部39a4)までの距離、及び第2溶着部39a2から第3溶着部39a3(第4溶着部39a4)までの距離をそれぞれ1.0〜3.0mmとすることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5mmとすることが望ましい。各距離が短すぎる場合には、伸縮不織布38の伸縮力が発揮されず、皺が適切に形成されない恐れがあり、各距離が長すぎる場合には、形成される皺が大きくなりすぎてしまい、きめ細やかな皺を形成することができず、前身頃部30の外観的統一性が低下してしまう恐れがあるからである。
【0076】
このとき、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2との距離(2d)は、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4との距離の半分であるeより長く(2d>e)、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4との距離(2e)は、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2との距離の半分であるdより長い(2e>d)。
【0077】
第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4は、それぞれ複数設けられており、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2は、上下方向において、均等な間隔で配置されており、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4は、横方向において、均等な間隔で配置されている。つまり、点在領域X全域に亘って均等な間隔で配置されている。なお、領域F内の4つの溶着部39aを第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4として説明したが、任意の溶着部39aをそれぞれ第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4に設定することができる。例えば、領域F内の第2溶着部39a2の下方に位置する溶着部39aを第1溶着部39a1としてもよい。
【0078】
また、第1溶着部39a1、第2溶着部39a2、第3溶着部39a3、第4溶着部39a4は、それぞれ複数設けられることで、交点Nも複数設けられる。このとき、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2は、上下方向に均等な間隔で設けられており、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4は、横方向に均等な間隔で設けられていることで、交点Nの配置も、上下方向及び横方向にそれぞれ均等な間隔で配置されている。
【0079】
図9A及び
図9Bに示すように、点在領域Xには、肌側に肌側シート32、非肌側に非肌側シート33、肌側シート32と非肌側シート33の間に、伸縮不織布38が設けられており、溶着部39aで、溶着接合されている。溶着部の中央をcuとすると、中央cuの厚みは、溶着をしていない部分、つまり溶着部39a間の肌側シート32、伸縮不織布38、及び非肌側シート33の厚みの合計より小さくなっている。
【0080】
肌側シート32、伸縮不織布38、非肌側シート33の接合は、通常、伸縮不織布38を横方向に伸長させた状態で肌側シート32及び非肌側シート33をそれぞれ重ね合わせて溶着を行う。そのため、溶着後の自然長の点在領域Xは、
図9Aに示すように、横方向について、伸縮不織布38の伸縮性及び繊維の柔らかさや不規則性によって、厚み方向に膨らんだ状態となり、肌側シート32がより肌側に湾曲して、非肌側シート33が非肌側に湾曲する。つまり、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4の間(溶着部39a間)の伸縮不織布38の厚みは、溶着部39の中央cuにおける伸縮不織布38の厚みより大きい。そのより厚みが大きくなった伸縮不織布38が、肌側シート32をより肌側へ湾曲させ、非肌側シート33をより非肌側へ湾曲させる。この結果、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4の間(溶着部39a間)は、厚みが大きくなり、肌側及び非肌側に突出した凸形状を形成し、特に溶着部39間の横方向の中央である交点Nの厚みが最も大きくなる。
【0081】
伸縮不織布38は、上下方向にも伸縮性を有しているため、溶着後の自然長の点在領域Xは、
図9Bに示すように、上下方向について、伸縮不織布38の伸縮性及び繊維の柔らかさや不規則性によって、厚み方向に膨らんだ凸状態となり、肌側シート32が肌側に湾曲し、非肌側シート33が非肌側に湾曲する。つまり、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2の間(溶着部39a間)の伸縮不織布38の厚みは、溶着部39の中央cuにおける伸縮不織布38の厚みより大きい。その厚みが大きくなった伸縮不織布38が、肌側シート32をより肌側へ湾曲させ、非肌側シート33をより非肌側へ湾曲させる。この結果、第1溶着部39a1と第2溶着部39a2の間(溶着部39a間)は、厚みが大きくなり、肌側及び非肌側に突出した凸形状を形成し、特に溶着部39間の上下方向の中央である交点Nの厚みが最も大きくなる。なお、上下方向の伸縮性が、横方向の伸縮性より小さい場合には、
図9Bに示す凸形状の突出量は、
図9Aに示す凸形状の突出量よりも小さくなる。
【0082】
単位面積当たりの溶着部39aの面積の合計(Ra)を所定値以下とすることが好ましい。つまり、前身頃部30の点在領域Xの面積(Sx)に対する、点在領域Xに設けられた複数の溶着部39aの面積の合計(Ta)を所定値以下とすることが好ましい(Ta/Sx≦所定値)。このTa/Sxは、約2〜7%程度が好ましい(Ta/Sx≒2〜7%)。Ta/Sxを7%より大きくすると、前身頃部30(おむつ1)の通気性が低下してしまう恐れがあり、2%より小さくすると、肌側シート32と伸縮不織布38と非肌側シート33との接合がはがれてしまう恐れがあるためである。
【0083】
続いて、溶着部39bについて説明する。溶着部39bは、肌側シート32、伸縮性不織布38、非肌側シート33を接合しつつ、伸縮不織布38の伸縮を抑制して、吸収性本体10が伸縮不織布38によって不必要に縮んで、排泄物が漏れたりする恐れを防いでいる。
【0084】
前身頃部30の複数の溶着部39bは、
図6等において黒塗りした部分であり、肌側シート32と伸縮不織布38と非肌側シート33に超音波振動と圧力が加えられて超音波接合された部分である。各溶着部39bは、ほぼ同じ大きさで、略矩形状に形成されており、直立の長方形を45度傾けたものと、−45度傾けたものがそれぞれ規則正しく配置されている。なお、
図6においては、便宜上、後身頃部40の溶着部49bは、省略されている。
【0085】
このとき、前身頃部30の本体接合領域Yの面積(Sy)に対する、本体接合領域Yに設けられた複数の溶着部39bの面積の合計(Tb)は、端部接合領域Zの面積(Sz)に対する、端部接合領域Zに設けられた端部接合部29の面積の合計(Tz)より小さい(Tb/Sy<Tz/Sz)ことが好ましく、Tb/Syを7〜14%程度とすることが好ましい。つまり、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)は、単位面積当たりの端部接合領域29の面積の合計(Rz)より小さい(Rb<Rz)。
【0086】
上述のように、端部接合領域Zは、前身頃部30と後身頃部40とが分離しないように必要十分な接合強度を確保する必要があるため、所定の面積(Rz)の端部接合部29を形成する必要がある。仮に、本体接合領域Yにおいて、面積(Rz)で溶着部39bを設けると、溶着部39bによって、過度に通気性が阻害されてしまう懸念がある。
そのため、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)を、単位面積当たりの端部接合領域29の面積の合計(Rz)より小さくして(Rb<Rz)、端部接合領域Zにおける接合強度の確保と、本体接合領域Yにおける通気性の確保を両立させている。
【0087】
また、前身頃部30の点在領域Xの面積(Sx)に対する、点在領域Xに設けられた複数の溶着部39aの面積の合計(Ta)は、前身頃部30の本体接合領域Yの面積(Sy)に対する、本体接合領域Yに設けられた複数の溶着部39bの面積の合計(Tb)より小さい(Ta/Sx<Tb/Sy)。つまり、単位面積当たりの溶着部39aの面積の合計(Ra)は、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)より小さい(Ra<Rb)。
【0088】
本体接合領域Yにおいては、通気性を確保する必要がある一方で、吸収性本体10が伸縮不織布38によって横方向に縮むことを抑制するために、ある程度の面積(Rb)の溶着部39bを設ける必要がある。仮に、汗やムレ等の問題を生じやすい胴回り部24においては、通気性が重要であり、点在領域Xにおいて、本体接合領域Yと同じ面積(Rb)で溶着部39aを設けると、溶着部39aが必要以上に通気性を阻害してしまう懸念がある。
そのため、単位面積当たりの溶着部39aの面積の合計(Ra)を単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)より小さくすることで(Ra<Rb)、吸収性本体10が横方向に縮むことを抑制しつつも、おむつ1全体として適切な通気性を確保することができる。
【0089】
以上、前身頃部30の肌側シート32、伸縮性不織布38、非肌側シート33、及び溶着部39a、39bについて説明したが、後身頃部40の肌側シート42、伸縮性不織布48、非肌側シート43、及び溶着部49a(49)、49b(49)についても同様である。
【0090】
===その他の有効性について===
従来の使い捨ておむつにおいては、伸縮性シートと非伸縮性シート(肌側シート、非肌側シート)とを接着剤を用いて接合して、前身頃部及び後身頃部を形成していたため、接着剤の固化によって、肌触りが低下していた。また、伸縮性シートに弾性力を有する伸縮フィルムを用いた場合には、伸縮方向が一方向(例えば横方向)のみであるため、伸縮フィルムによって形成される非伸縮性シートの皺は、肌触りが悪い部分が生じたり、フィルム特有のカサカサとした感触を生じさせてしまったりする恐れがあった。
図9Cは、伸縮フィルムを用いた場合の胴回り部の一部の断面図である。
図9Cに示すように、従来の使い捨ておむつには、肌側から順に、肌側シート92、伸縮フィルム98、非肌側シート93が設けられている。伸縮フィルム98の厚みはほぼ均一であるため、肌側シート92と伸縮フィルム98との間、非肌側シート93と伸縮フィルム98との間にそれぞれ空隙が生じる。したがって、例えば、着用時に肌に接触した場合に、
図9C中の矢印で示した部分のように肌側シート92又は非肌側シート93がそれぞれ伸縮フィルム98側へ簡単に凹んでしまう恐れがある。
【0091】
これに対し、本実施形態においては、
図9A及び
図9Bに示すように、伸縮不織布38は、縮む作用によって、溶着部39の間の繊維が厚み方向に膨らんだ状態になる。溶着部39の間で伸縮不織布38の厚みが増しているため、着用時に肌に接触しても、伸縮不織布38がクッションとなって、簡単に凹んでしまうことを軽減することができる。これにより、着用時におむつ1の柔らかさを感じることができる。
【0092】
さらに、本実施形態においては、互いに隣接する溶着部39の間において、伸縮不織布38の少なくとも一部は、肌側シート32、又は非肌側シート33に接触することが望ましい。これにより、より肌触りを向上させることが可能となる。
【0093】
さらに、本実施形態においては、伸縮性を伸縮フィルムではなく、伸縮不織布によって付与しているため、フィルムのような無機質な感触ではなく、肌に接触する部分全域に亘って柔らかい感触を与えることができる。また、伸縮不織布38、48は、上下方向及び横方向の複数の方向に伸縮性を有しているため、着用時において、多方向に伸縮性を有する伸縮不織布38、48によって肌側シート32、42が多方向から肌に接することができ、着脱時には、多方向へ向かって肌側シート32、42が肌から離間させることができるため、着用者が感じる肌触りを滑らかなものにすることができる。特に、おむつ1のようにパンツ型おむつの場合には、肌側シート32、42と非肌側シート33、43の両面を掴んだ状態で引き上げるため、おむつ1の手で触れる部分が不織布で形成されているため、柔らかさを実感することができる。特に、人は、比較で触感を感じることがあるため、両面が同じように柔らかさを有していることで、おむつ1の柔らかさを実感することができる。
【0094】
また、肌側シート32、42のうちの、少なくとも点在領域Xが位置する部位が、着用時に肌に当接するため、使用者は柔らかい肌触りを感じることができる。つまり、
図9A及び
図9Bに示すように、溶着部39(49)は、溶着によって繊維密度が高くなり、肌側シート32(42)と伸縮不織布38(48)と非肌側シート33(43)の厚みの合計も薄くなるが、溶着部39間の領域は、溶着部39より肌側シート32と伸縮不織布38と非肌側シート33の厚みの合計が大きくなり、盛り上がった略山形形状となる。着用者は、着用時に、まず盛り上がった略山形形状の部分に肌が当接するため、柔らかい肌触りを感じることができる。
【0095】
さらに、胴回り部24のうちの、複数の溶着部39、49が点在している点在領域Xには、接着剤を用いていないため、接着剤の固化によって生じる肌触りの低下を防ぐことができる。
【0096】
さらに、本実施形態においては、点在領域Xには、複数の溶着部39、49が均等な間隔で配置されている。これによって、盛り上がった略山形形状の部分が均等に近い状態に形成されるため、肌側シート32、42の使用者の肌に当接する略山形形状の部分が均等に当接して、使用者が感じる肌触りの良さを向上させることができる。
【0097】
さらに、本実施形態においては、胴回り部24のうち、おむつ1の上端部25と本体接合領域Yを除く領域には、全域に亘って均等な間隔で点在領域Xが設けられている。これによって、より広い範囲に溶着部39、49を形成することで、略山形形状がより広い範囲に形成されることになり、肌触りを向上させるだけでなく、おむつ1の美観も向上させることができる。
【0098】
さらに、本実施形態においては、伸縮不織布38、48が、ポリオレフィンを含有することで、肌側シート32、42、及び非肌側シート33、43との溶着性を向上させることができる。特に、本実施形態においては、肌側シート32、42、及び非肌側シート33、43がそれぞれポリオレフィン系の繊維であるPP繊維の不織布であり、伸縮不織布に含有されているポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)であるため、溶着時の溶融において、より強固に溶着される。また、伸縮不織布38、48が、ポリウレタンを含有することで、伸縮不織布に上下方向及び横方向への伸縮性を与えることができる。
【0099】
さらに、本実施形態においては、互いに隣接する溶着部39、49の間における伸縮不織布38、48の厚みは、それぞれの溶着部39、49の中央位置cuにおける伸縮性不織布38、48の厚みより大きい。
図9A及び
図9Bに示すように、伸縮不織布38の厚みは、溶着部39の厚みがより小さくなっており、特に溶着部39の中央位置cuの位置が小さい。伸縮不織布38は、ギア延伸等により伸縮処理が施されているため、自然長状態においては、厚み方向に膨らんだ状態の略山形形状となる。しかし、溶着部39において、溶着がなされることによって、厚み方向に固定がなされて、溶着部39の厚みが薄くなる。その結果、溶着部39の間における伸縮不織布38は、伸縮力によって膨らもうとするため、溶着部39よりも厚みが大きくなる。特に、交点Nにおいては、最も厚みが大きくなりやすい。また、伸縮不織布38の膨らみによって、肌側シート32及び非肌側シート33を上下方向へそれぞれより湾曲させることができる。これにより、着用時には、溶着部39より、溶着部39の間における膨らんだ部分が先に肌に当接するため、より肌触りを向上させることができる。
【0100】
さらに、本実施形態においては、上下方向に互いに隣接する一対の溶着部39、49、及び横方向に互いに隣接する一対の溶着部39、49に囲まれた領域に凸部を有しており、凸部は、それぞれ肌側及び非肌側に設けられている。つまり、上下方向に隣接する第1溶着部39a1と第2溶着部39a2の間には肌側及び非肌側に突出した凸部である略山形形状を有しており(
図9A)、横方向に隣接する第3溶着部39a3と第4溶着部39a4の間には肌側及び非肌側に突出した凸部である略山形形状を有している(
図9B)。上下方向及び横方向におけるそれぞれ中央が交点Nであり、交点Nを中央とする第1溶着部39a1と第2溶着部39a2、第3溶着部39a3と第4溶着部39a4で囲まれた領域は、肌側及び非肌側にそれぞれ凸部となっている。これによって、着用時には、溶着部39a、49aより先に凸部が肌に当接するため肌触りを良くしているとともに、着用しようとする際には、肌側シート32、42、及び非肌側シート33、43の両面を掴んで引き上げるため、肌側シート32、42、及び非肌側シート33、43の両方の肌触りを良くすることで、着用者におむつ1の柔らかさを印象づけることができる。
【0101】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0102】
上述の実施形態においては、溶着部39、49、及び端部接合部29は、それぞれ超音波接合により複数のシート等を接合することとしたが、これに限られない。熱溶着や融着等のその他の熱や圧力を加える手段によって接合を行ってもよい。
【0103】
上述の実施形態においては、上端部25に配置する伸縮部材を、複数の糸ゴム30a、40aとし、不織布38、48を設けないことにしたが、これに限られない。上端部25に配置する弾性部材を不織布38、49と複数の糸ゴム30a、40aの両方にしてもよく、不織布38、48のみにしてもよい。但し、上端部25に糸ゴム30a、40aを配置することで、おむつ1がズレ落ちたりする恐れを軽減することができる。
【0104】
上述の実施形態においては、非肌側シート33、43は肌側へ折り返されて、非肌側シート33、43の上端は、肌側シート32、42の上端より上方に設けられているが、必ずしも非肌側シート33、43が折り返されていなくてもよい。また、肌側シート32、42の上端と非肌側シート33、43の上端とが同じ位置に設けられていてもよい。さらに、肌側シート32、42が非肌側へ折り返されていてもよい。ただし、本実施形態のように、糸ゴム30a、40aと、着用者の肌との間に配置されたシートが1つ(非肌側シート33、43)だけにすることによって、糸ゴム30a、40aの伸縮力を着用者の腹部に伝えやすくなり、おむつ1がズレ落ちる恐れをより軽減することができる。
【0105】
上述の実施形態においては、単位面積当たりの溶着部39aの面積の合計(Ra)は、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)より小さく、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)は、単位面積当たりの端部接合領域29の面積の合計(Rz)より小さくしたが(Ra<Rb<Rz)、これに限られない。単位面積当たりの溶着部39aの面積の合計(Ra)、単位面積当たりの溶着部39bの面積の合計(Rb)、単位面積当たりの端部接合領域29の面積の合計(Rz)はそれぞれ任意の割合で設けてもよい。
【0106】
上述の実施形態においては、溶着部39、49を均等な間隔で配置されていることにしたが、これに限られない。溶着部39、49は不均等な間隔で配置されても、何らかの模様を表す形状であってもよい。
【0107】
上述の実施形態においては、前身頃部30及び後身頃部40のうち、上端部25と本体接合領域Yを除く領域を点在領域Xとしたが、これに限られない。点在領域Xは、前身頃部30及び後身頃部40の一部に設けるものであってもよい。つまり、前身頃部30及び後身頃部40の胴回り部24の一部に点在領域Xを設けていれば、点在領域X以外の領域は、溶着部39、49が形成されていない領域であってもよく、接着剤を用いた領域であってもよい。前身頃部30及び後身頃部40の一部に点状領域Xが設けられた場合であっても、溶着部39、49同士の間の領域は、略山形状となる。そのため、着用時には、略山形状が肌に当接して、着用者に柔らかい肌触りを与えることができる。但し、前身頃部30及び後身頃部40の横方向においては、一端側の端部から他端側の端部までの領域に点在領域Xを設けることがより好ましい。これによって、おむつ1の外観上の統一感を呈し、きめ細やかな皺が形成されるため、布のような形状や質感を実現することができ、おむつ1の美観を向上させることができる。
【0108】
上述の実施形態においては、伸縮不織布38、48を表面に凹凸を有するギア延伸処理によって伸縮力を発現させたが、これに限られない。表面に凹凸を有さないドラム等による延伸によって伸縮力を発現させるもの等であってもよい。ただし、表面に凹凸を有するギアを用いるギア延伸処理を行うことによって、
図10に示すような繊維密度の異なる領域を形成することができるため、より肌触りを向上させることができる。
【0109】
上述の実施形態においては、肌側シート32、42、非肌側シート33、43は、PP繊維のスパンボンド繊維を用いたがこれに限られない。ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリアミド等の繊維からなるスパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を用いてもよい。繊維の構造については、単一の熱可塑性樹脂からなる単独繊維に限るものではなく、例えば、芯材がPPで鞘材がPEの芯鞘構造の複合繊維であってもよく、これら以外の構造の繊維であってもよい。ただし、単一繊維からなる不織布であることが好ましく、肌側シート32、42、非肌側シート33、43、及び伸縮不織布38、48に用いる熱可塑性樹脂繊維が同じ繊維であることが最も好ましい。同じ成分からなる繊維が溶融されて固化されることによって、溶着がより強固になるからである。
【0110】
上述の実施形態においては、伸縮不織布38、48について、弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維として、ポリウレタン系エラストマーを用い、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維として、PPを用いたがこれに限られない。弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維としてポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等であってもよく、非弾性を有する熱可塑性樹脂繊維として、PE、エチレン―αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を含む繊維であってもよい。
【0111】
上述の実施形態においては、伸縮不織布38、48の上端部の繊維密度を、より高くすることにしたが、これに限られない。伸縮不織布38、48の繊維密度は、全域に亘って均一であってもよい。しかし、伸縮不織布38、48の上端部の繊維密度を、より高くすることで、着脱におけるおむつ1の破損の恐れをより軽減することができる。
【0112】
上記実施の形態に係るおむつ1は、大人を着用対象としたが、これに限定されるものではなく、新生児、乳児、幼児等の子供を着用対象としてもよい。