(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御システムは、前記ミラーを操作して、前記走査作動中に、第1の値から第2の値に前記曲率半径を調整し、それによって、前記有効像視野における前記投影対物系の視野曲率を変化させるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載される装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、平坦でない基板面を有する基板上で高品質な結像を可能にするステップ・アンド・スキャン投影露光方法を提供することである。
本発明の別の目的は、結像されるパターンが平坦でないマスク面上に形成される場合に高品質な結像を可能にするステップ・アンド・スキャン投影露光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記及び他の目的に対処するために、本発明の一構成により、投影対物系の像面に配置された放射線感応基板の露光区域を投影対物系の物体面に配置されたマスクのパターンの少なくとも1つの像により、投影対物系の有効物体視野に対してマスクを、かつ同時に投影対物系の有効像視野に対して基板をそれぞれの走査方向に移動する段階を含む走査作動において露光する段階と、走査作動の開始と終了の間に投影対物系の少なくとも1つの収差を動的に変更するために、走査作動中に所定の時間プロフィールに従って投影対物系の結像特性を能動的に変更する段階とを含み、(i)投影対物系の少なくとも1つの結像特性を変更する段階が、投影ビーム経路内で投影対物系の視野面に光学的に近く配置された少なくとも1つの光学面を含む投影対物系の少なくとも1つの視野要素によって引き起こされる光学効果を空間分解方式で変更する段階を含み、(ii)少なくとも1つの視野要素が、投影ビーム経路内で視野面に光学的に近く配置された反射面を有するミラーであり、(iii)投影対物系の少なくとも1つの結像特性を変更する段階が、光学使用区域内でミラーの反射面の面プロフィールを変更することによってミラーの光学特性を変更する段階を含む投影露光方法を提供する。
【0012】
好ましい実施形態を従属請求項に提供している。全ての特許請求の表現は、本明細書に引用によって組み込まれている。
本発明者は、基板上への微細構造の合焦された結像を保証するための従来の方法が、正しく露光された基板の高い歩留りを保証し、それによって不合格率を低減するのに全ての場合に十分というわけではない可能性があることを認めた。具体的に不合格率が露光区域内の基板面の局所凹凸(非平坦度)によって大きく影響を受ける可能性があることが認められている。露光区域内の基板面の相対位置が露光区域にわたって許容範囲を超えるマグニチュードで変化する場合には、露光内で結像されるパターンの一部が、構造化される構成要素内で十分に形成されない場合があり、それによって構成要素の耐用寿命中の構成要素異常の確率が高まる。
【0013】
例えば、一般的に、45nmノードで像を印刷するように設計された投影システムの焦点深度が、一般的に、約100nmと約150nmの間の範囲に焦点深度を有することになるということを考えると、潜在的な問題を例証することができる。「国際半導体技術ロードマップ2006年改訂版」の表67aに公開されている仕様は、スキャナシステムの26mm×8mmの露光区域内のウェーハ基板のサイト平坦度SFQRに対する一般的な要件が、ディレクトランダムアクセスメモリ(DRAM)において関係するDRAM1/2ピッチ値に対応することを示している。例えば、これらの仕様は、印刷している構造が45nmのDRAM1/2ピッチによって特徴付けられる場合に、スキャナの露光区域内で45nmまでのサイト平坦度を有するウェーハを用いることを可能にする。基板面を投影対物系の焦点領域内に正確に配置するための従来の対策は、今後の走査システムにおける露光区域内の基板面の許容凹凸の値に対処するには十分ではない可能性があるように考えられている。
【0014】
本発明の一態様による投影露光方法では、走査作動中、すなわち、マスクパターンの一部を基板上に逐次印刷するように基板が投影対物系の有効像視野に対して移動される単一回の走査の開始時点と単一回の走査の終了時点の間の時間間隔中に投影対物系の結像特性の能動的操作が実施される。能動的操作は、投影対物系の少なくとも1つの収差特性を走査中の所定の時間プロフィールに従ってターゲット方式で動的に変化させる。この操作は、投影対物系の光学要素に作動的に接続した少なくとも1つの操作デバイスを作動させることによって行うことができ、それによってこの操作対象の光学要素の光学効果が能動的に変更され、その結果、投影対物系全体の結像特性も同じく能動的に変更される。
【0015】
実施形態は、投影対物系の視野曲率を走査作動中に所定の時間プロフィールに従って動的に変化させることによって特徴付けることができる。それによって投影対物系の結像特性を露光区域内の基板面形状及び/又は基板面位置の時間依存変化に適応させる非常に有効な手法が可能である。代替的又は追加的に、結像特性を投影対物系の物体側のパターンの面形状及び/又は面位置の変化に適応させる走査中の投影対物系の視野曲率の動的変更を用いることができる。それによって、例えば、重力、及び/又はマスクホルダ内のマスクに印加される力及びモーメントの影響によって引き起こされるマスク湾曲の効果を少なくとも部分的に補償することができる。
【0016】
時間と共に光学特性の緩やかなドリフトを受けるシステムでは、焦点位置のような光学特性は、1つの方向に緩慢に変化する可能性があり(小さい時定数で)、従って、1回の走査作動中には、光学特性は1つの方向だけに殆ど変化しない。それとは対照的に、非常に動的な補償を有する実施形態では、投影対物系の少なくとも1つの収差が、走査作動の開始と終了の間に2つの反対の方向に逐次変更される。言い換えれば、変更方向は、1回の走査作動中に1回又はそれよりも多くの回数変えることができる。そうすることにより、露光区域のサイズ程度の一般的なサイズを有するドーム状又は谷状の面の凹凸の悪影響が補償される。
一般的に、他の結像収差に影響を与えることなく独立した方式で1つの結像収差を変化させることは困難である場合がある。従って、他の収差、特に歪曲、コマ収差、非焦点視野プロフィール、非点収差、及びこれらの重ね合わせのような他の視野収差が、視野曲率を変化させる時に同期して変化する場合がある。
【0017】
一部の実施形態では、投影対物系の少なくとも1つの結像特性を変更する段階は、投影対物系の少なくとも1つの視野要素によって引き起こされる光学効果を空間分解方式で変更する段階を含む。本明細書に用いる「視野要素」という用語は、投影ビーム経路内で投影対物系の視野面に光学的に近く配置された少なくとも1つの光学面を含む光学要素に関する。視野要素によって引き起こされる光学効果を能動的に変更することにより、視野曲率及び歪曲のような視野収差に対して比較的大きい補正効果を及ぼし、同時に、非点収差、コマ収差、球面収差、及び高次の収差のような波面収差に対するこの変更の影響を小さく保つことが可能になる。従って、視野要素を操作する段階は、同時に寄生的な瞳収差を実質的に誘発することなく、視野収差をターゲット方式で変更するのに用いることができる。
【0018】
「視野面から光学的に近い」位置を特徴付けるには様々な方式がある。一般的に、レンズ又はミラーのような光学面の軸上位置をこの場合次式で定められる近軸部分口径比SARによって定めることは有用であると考えられる。
SAR=(CRHの符合)・(MRH/(|MRH|+|CRH|))
この定義では、パラメータMRHは、結像過程の近軸周辺光線高さを表し、パラメータCRHは、結像過程の近軸主光線高さを表している。この用途の目的では、「主光線」(「プリンシパル・レイ」としても公知である)という用語は、有効使用物体視野の最外側視野点(光軸から最も分離した)から入射瞳の中心へと延びる光線を表している。回転対称系では、主光線は、子午平面内の同等の視野点から選択することができる。物体側で基本的にテレセントリックな投影対物系では、主光線は、光軸に対して平行に又は極めて小さい角度で物体面から出射する。結像過程は、周辺光線の軌道によって更に特徴付けられる。本明細書に用いる「周辺光線」は、軸上物体視野点(光軸上の視野点)から開口絞りの縁部へと延びる光線である。周辺光線は、軸外有効物体視野が用いられる場合は口径食の理由から像形成には寄与しないものとすることができる。本明細書では、主光線及び周辺光線の両方を近軸近似において用いる。所定の軸上位置におけるそのような選択された光線と光軸の間の半径方向距離をそれぞれ「主光線高さ」(CRH)及び「周辺光線高さ」(MRH)で表している。光線高さ比RHR=CRH/MRHは、視野面又は瞳面からの近接性又は距離を特徴付けるのに用いることができる。
近軸周辺光線及び近軸主光線の定義は、例えば、Michael J.Kidger著「基礎光学設計」、「SPIE PRESS」、米国ワシントン州ベリンガム(第2章)から得ることができ、この文献は、本明細書に引用によって組み込まれている。
【0019】
本明細書で定める近軸部分口径比は、ある一定の位置の光路に沿ったそれぞれ視野平面又は瞳平面までの相対近接性を表す基準を与える符号付きの量である。上記で与えた定義では、近軸部分口径比は、−1と1の間の値に正規化され、視野平面では、条件SAR=0が成り立ち、SAR=−1からSAR=+1、又はSAR=+1からSAR=−1への急変を有する不連続点は瞳平面に対応する。従って、視野平面(物体面又は像面等)に光学的に近く位置決めされた光学面は、0に近い近軸部分口径比の値によって特徴付けられ、それに対して瞳面に光学的に近い軸上位置は、近軸部分口径比における1に近い絶対値によって特徴付けられる。近軸部分口径比の符号は、ある一定の平面の光学的に上流又は下流の平面の位置を示している。例えば、瞳面の上流の短い距離のところでの近軸部分口径比と瞳面の下流の短い距離のところでの近軸部分口径比は、同じ絶対値を有することができるが、主光線高さが瞳面を通過する時にその符号を変えるということに起因して反対の符号を有することができる。
【0020】
これらの定義を念頭に置き、視野要素は、光学的に瞳面よりも視野面の近くに配置された少なくとも1つの光学面を有する光学要素として定めることができる。視野面に光学的に近い好ましい位置は、光線高さ比の絶対値RHR=CRH/MRH>1によって特徴付けることができる。言い換えれば、「視野面に光学的に近い」一般的な光学面は、主光線高さCRHの絶対値が周辺光線高さMRHの絶対値を超える位置にある。
【0021】
別の表現では、「視野面に光学的に近い」面は、ゼロに近い近軸部分口径比SARの値によって特徴付けることができる。例えば、近軸部分開口SARは、視野要素の光学面において0と約0.4との間、又は0と0.2の間の範囲のものとすることができる。
一部の実施形態では、視野要素と最近接視野面の間にいかなる光学要素も配置されないように、視野要素は、次の視野面の直近に配置される。
視野要素は、投影対物系の光学要素とすることができる。視野要素を投影対物系の物体面と投影対物系の物体側入射面との間、又は投影対物系の像側出射面と像面の間に配置することができる。
【0022】
収差の操作に向けて設けられる視野要素は、投影ビーム経路内の透過光学要素とすることができる。この場合、透過光学要素の光学効果は、光学使用区域内の屈折力の空間分布を変更することによって空間分解方式で変化させるか、又は変更することができる(光学使用区域内の場所に依存して)。この目的のために、透過光学要素の透過材料の屈折率の2次元分布をターゲット方式で変更することができる。この変更は、例えば、透過材料のターゲット式局所加熱によって引き起こすことができる。例えば、WO2008/034636A2には可能で適切な構成が開示されており、この開示内容は、本明細書に引用によって組み込まれている。代替的又は追加的に、屈折力の局所分布は、透過光学要素の光学面の局所面曲率の空間分布を変更することによって変更することができる。この変更は、例えば、光学要素のターゲット式変形によって引き起こすことができる。マニピュレータの例は、例えば、US2003/0234918A1に示されている。屈折率を変更する段階と面曲率の局所分布を変更する段階との組合せを用いることができる。更に、操作は、EP0,851,304B1に示されているもののような補完形状を有する非球面面の相対変位によって行うことができる。電気光学マニピュレータを利用することもできる。従来のマニピュレータの構成及び作動は、十分な動力学特性を可能にするように修正する必要がある場合がある。
【0023】
透過光学視野要素は、その構成の各々において実質的な屈折力を有するレンズとして設計することができ、透過光学視野要素は、実質的にいかなる全体的屈折力も持たない平行平面プレートとして成形することができる。そのようなプレート状視野要素は、多くの種類の投影対物系に対して視野要素に近接して、例えば、物体面の近くに、又は少なくとも1つの実中間像を形成する投影対物系では中間像の近くに配置することができる。
【0024】
一部の実施形態では、少なくとも1つの視野要素は、投影ビーム経路内で視野面に光学的に近く配置された反射面を有するミラーである。ミラーの光学特性を変更する段階は、反射面の面プロフィールを光学使用区域内で変更する段階を含むことができる。ミラーマニピュレータは、視野ミラーに作動的に接続することができ、視野ミラーの反射面の形状を1又は2次元において変化させることを可能にするように構成することができる。
【0025】
投影対物系の結像特性を動的に変更するための自由度数は、規定の協調方式で互いに独立に操作することができる少なくとも2つの視野要素を設けることによって高めることができる。例えば、投影対物系は、各々が視野面に光学的に近い2つの反射視野要素(視野ミラー)を含むことができる。視野ミラーの各々には、視野ミラーの反射面の形状をターゲット方式で変化させるように構成されたミラーマニピュレータを割り当てることができる。
本出願人による特許US7,385,756は、2つの中間像、及び各々が中間像の近く、すなわち、視野面の比較的近くに配置された2つの凹ミラーを有する反射屈折インライン投影対物系を開示している。両方の凹ミラーをマニピュレータとして用いることができる。この文献の開示内容は、本明細書に引用によって組み込まれている。
【0026】
少なくとも1つの視野要素を物体面の近くに配置することができる。一部の実施形態では、透過視野要素は、視野要素の入射面が、投影対物系の入射面を形成するように、物体面の直後の投影対物系の最初の要素を形成する。それによって瞳収差に実質的に有意な程度の影響を与えずに、視野収差に対する強い作用を得ることができる。物体面と中間像面の間に少なくとも1つの実中間像を発生させる投影対物系では、視野要素は、中間像に光学的に近く配置することができる。一部の実施形態では、投影対物系は、少なくとも2つ、又は厳密に2つの中間像を有する。視野要素は、投影対物系の視野面である中間像面の各々に光学的に近く配置することができる。
【0027】
一般的な操作の動力学特性に関して、従来の走査システムは、例えば、約0.2m/sと約2m/sの間の走査速度で作動させることができる。走査速度は、700mm/sから800mm/s程度のものとすることができる。一般的な走査経路長は、数10mm程度(例えば、30mm〜40mm)のものとすることができる。それによって露光区域(ダイ)当たり数10ms(ミリ秒)程度の露光時間が可能になる。ダイ毎に約50msの走査時間という一般的な値を考えると、操作の動力学特性は、典型的な場合には、40Hz又はそれよりも大きく、60Hz又はそれよりも大きく、80Hz又はそれよりも大きく、100Hz又はそれよりも大きく、又は120Hz又はそれよりも大きいなどの20Hz又はそれよりも大きい程度のものとすることができる。
【0028】
操作の振幅に関しては、多くの高NAシステムにおいて±45nm程度の視野曲率の山から谷までの局所変更は、妥当な補償度を得るのに十分なものとすることができると考えられる。そのような高NAシステムは、NA=0.8又はそれよりも大きい、例えば、NA≧0.9,NA≧1,NA≧1.2,NA≧1.35程度の最大使用可能NAを有することができる。
相対的に見ると、現時点では、多くの場合に、十分な補償を得るのに10ms(ミリ秒)内の焦点深度(DOF)の10%程度の変化率を十分なものとすることができると考えられる。一部の実施形態では、視野曲率は、1msの時間間隔内に投影対物系の焦点深度(DOF)の約0.5%と約50%の間の変化率で変更される。
【0029】
基板の凹凸の悪影響を実質的に補償するように構成された実施形態では、方法は、露光区域内の基板の面プロフィールを表す基板面データを生成する段階と、基板面データに基づいてマニピュレータ制御信号を生成する段階と、投影対物系の結像特性を動的に適応させて露光区域内の面プロフィールによって引き起こされる結像収差を低減するために、マニピュレータ制御信号に応答して投影対物系の少なくとも1つの操作デバイスを駆動する段階とを更に含む。
【0030】
基板面データは、基板面のトポグラフィを露光区域を含む測定区域内で測定することによって生成することができる。代替的に、基板面データは、露光区域を含む測定区域内の基板面のトポグラフィを表すルックアップテーブル内に含まれるデータから導出することができる。ルックアップテーブルのデータは、予め実験的に収集することができ、又は最初の計算から収集することができる。例えば、視野曲率の補正は、先行する基板面トポグラフィ測定に基づいて実施することができ、それに対して補償概念は、ルックアップテーブル内に含まれるデータに基づくものとすることができる。
【0031】
それによって、例えば、ウェーハ面の凹凸によって誘発される結像収差を非常に効率的な手法で補償することができる。測定は、従来の方法によって実施することができる。ウェーハの凹凸は、例えば、H.W.van Zeijl、J.Su、J.Slabbekoorn、F.G.C.Bijnen著「基板移送処理におけるリソグラフィアラインメントオフセット補償」、STW/SAFE会報、オランダフェルドホーフェン、2005年、121〜126頁に説明されているように、例えば、基板移送処理によって導入することができる。
【0032】
例えば、重力によって誘発されるレチクル湾曲によって引き起こされるマスクの凹凸の悪影響を実質的に補償するように構成される実施形態では、方法は、マスク面データに基づいてマニピュレータ制御信号を生成する段階と、投影対物系の結像特性を動的に適応させてマスク区域内の面プロフィールによって引き起こされる結像収差を低減するために、マニピュレータ制御信号に応答して投影対物系の少なくとも1つの操作デバイスを駆動する段階とを更に含む。
【0033】
マスク面データは、マスク面のトポグラフィを露光区域に対応するマスク区域を含む測定区域内で測定することによって生成することができる。代替的に、マスク面データは、露光区域に対応するマスク区域を含む測定区域内のマスク面のトポグラフィを表すルックアップテーブル内に含まれるデータから導出することができる。ルックアップテーブルのデータは、予め例えば実験的に収集することができ、又は最初の計算から収集することができる。
それによって、例えば、マスク面の凹凸によって誘発される結像収差を非常に有効な手法で補償することができる。
以上の及び他の特性は、特許請求の範囲だけではなく、本明細書及び図面においても参照することができ、個々の特徴は、本発明の実施形態として及び他の分野で単独又は部分組合せのいずれにおいても用いることができ、個々に有利かつ特許性のある実施形態を表すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好ましい実施形態の以下の説明では、「光軸」という用語は、光学要素の湾曲中心を通過する直線又は一連の直線区画を指す。光軸は、光軸のその後の直線区画の間に角度が含まれるように、折り返しミラー(偏向ミラー)によって折り返すことができる。下記に提供する例では、物体は、集積回路の層のパターン又はいずれか他のパターン、例えば、格子パターンを担持するマスク(レチクル)である。物体の像は、基板として機能するウェーハ上に投影され、基板は、感光層で被覆されるが、液晶ディスプレイの構成要素又は光学格子のための基板のような他の種類の基板も利用可能である。
図に示している設計の仕様を開示するのに表を提供している場合には、1つ又は複数の表にそれぞれの図と同じ番号を振っている。理解を容易にするために、図内の対応する特徴部には、同様又は同一の参照識別記号を振っている。レンズを指定する場合には、識別記号L3−2は、第3の対物系部分における第2のレンズ(放射線伝播方向に見て)を表している。
【0036】
図1は、液浸リソグラフィをステップ・アンド・スキャンモードに用いて大規模集積半導体構成要素を製作するために準備されたウェーハスキャナWSの形態のマイクロリソグラフィ投影露光システムを略示している。投影露光システムは、1次放射線源Sとして、193nmの作動波長を有するエキシマレーザを含む。他の実施形態では、例えば、約248nm、157nm、又は126nmで放射する他の1次放射線源が用いられる。純反射(反射結像)光学系に関連して極紫外(EUV)スペクトル範囲における放射線源を利用することができる。光源の光学的に下流の照明系ILLは、その出射面ESに、大きく鮮明に範囲が定められた均一に照らされる照明視野IFを生成し、この照明視野は、下流の投影対物系POのテレセントリック要件に適応される。照明系ILLは、照明モードの選択のためのデバイスを有し、この例では、可変干渉度を有する従来の軸上照明と、軸外照明、特に環状照明(照明系の瞳面内にリング形の照明区域を有する)、及び双極又は四重極照明との間で変更を行うことができる。
【0037】
照明系の下流には、マスクMを担持し、操作するためのデバイスRSが配置され、マスク上に形成されたパターンが、投影対物系POの物体面OSと対応する照明系の出射面ESに位置するようにする。マスクを担持し、操作するための通常は「レチクル台」と呼ばれるデバイスRSは、マスクホルダを含み、更に走査作動中にマスクを投影対物系の物体面OSに対して平行、又は投影対物系及び照明系の光軸に対して垂直な走査方向(y方向)に移動することを可能にするスキャナデバイスを含む。
【0038】
縮小投影対物系POは、マスクによって与えられるパターン像をフォトレジスト層で被覆したウェーハW上に4:1の縮小スケールで結像するように設計される(倍率|β|=0.25)。他の縮小スケール、例えば、5:又は8:1が可能である。感光基板として機能するウェーハWは、フォトレジスト層を有する巨視的には平面である基板面SSが、投影対物系の平面像面ISと基本的に対応するように配置される。ウェーハは、ウェーハをマスクMと同期してマスクと平行に移動するためのスキャナ駆動体を含むデバイスWST(ウェーハ台)によって担持される。ウェーハ台は、光軸OAに対して平行に基板を上昇又は下降させるzマニピュレータ手段、及び光軸に対して垂直な2つの軸の回りに基板を傾斜させる傾斜マニピュレータ手段を含む。
【0039】
ウェーハWを担持するために設けられるデバイスWST(ウェーハ台)は、液浸リソグラフィにおける使用に向けて構成される。デバイスWSTは、スキャナ駆動体によって移動することができる底部がウェーハWを受け取るための平坦な凹部を有する容器デバイスRDを含む。周囲部は、液体の液浸媒体IMのための平坦な上向きに開いた液密容器を形成し、図示していないデバイスを用いて液浸媒体IMをこの容器内に導入することができ、そこから排出することができる。縁部の高さは、充填された液浸媒体が、ウェーハWの面SSを完全に覆うことができ、対物系の出射面とウェーハ面の間に正しく設定された作動距離が与えられた場合に、投影対物系POの出射側終端領域を液浸液内に液浸することができるように寸法が定められる。
【0040】
投影対物系POは、像面ISに最も近い最後の光学要素として平凸レンズPCLを有し、このレンズの平面出射面は、投影対物系POの最後の光学面である。投影露光システムの作動中には、最後の光学要素の出射面は、液浸液IM内に完全に浸漬され、液浸液IMによって湿潤される。
他の実施形態では、出射面は、投影対物系の出射面と基板面の間に気体が充填された間隙が置かれるように、ウェーハの基板面SSの上方数ミリメートルの作動距離のところに配置される(乾式システム)。
【0041】
図1の挿入図に略示しているように、照明系ILLは、矩形形状を有する照明視野を生成することができる。照明視野のサイズ及び形状は、投影対物系のマスク上のパターン像を像面内に投影するのに実際に用いられる投影対物系の有効物体視野OFのサイズ及び形状を決める。有効物体視野は、走査方向に対して平行に長さA
*を有し、走査方向に対して垂直で光軸を含まない(軸外視野)走査直交方向に幅B
*>A
*を有する。
【0042】
投影対物系POは、略示している複数のレンズ(典型的な数のレンズは、多くの場合に10よりも多く、又は15よりも多いレンズである)、及び適切な場合は他の透過光学構成要素を含むことができる。投影対物系は、純屈折結像のもの(レンズのみ)とすることができる。投影対物系は、レンズに加えて少なくとも1つの凹ミラーのような屈折力を有する少なくとも1つのミラーを含むことができる(反射屈折投影対物系)。
【0043】
マイクロリソグラフィ分野の多くの用途において、投影対物系の像側開口数はNA>0.6であり、多くの実施形態において、NAは、ほぼNA=0.65とNA=0.95の間にあり、これらの像側開口数は、乾式対物系によって得ることができる。液浸システムを用いると、NA≧1.1,NA≧1.2,NA≧1.3,NA≧1.4,NA≧1.5,NA≧1.6,又はNA≧1.7,又はそれよりも大きいなどのNA>1のNA値を得ることが可能になる。基本的に像側NAと放射線源の波長との組合せに依存して、約150nm、130nm、100nm、又は90nm又はそれ未満に至るまで細かい一般的な分解能も可能である。
投影対物系POは、物体面OSに配置された物体の像を物体面と光学的に共役な像面内に形成するように設計された光学結像システムである。結像は、中間像を形成することなく、又は1つ又はそれよりも多くの中間像、例えば、2つの中間像を通じて得ることができる。
【0044】
全ての光学系には、従来ペッツヴァル湾曲と呼ばれている一種の基本的な視野曲率が関連付けられ、次に、これに対して
図2Aを参照してより詳細に説明する。非点収差が存在しない場合には、サジタル像面とタンゼンシャル像面とは、互いに対応し、ペッツヴァル面上に位置する。正のレンズ(正の屈折力を有するレンズ)は、ペッツヴァル面の内向きの湾曲を系に導入し、負のレンズ(負の屈折力を有するレンズ)は、逆向きの湾曲を導入する。ペッツヴァル湾曲1/R
Pは、ペッツヴァル面の曲率半径であるペッツヴァル半径R
Pの逆数であるペッツヴァル和1/R
Pによって与えられる。
【0045】
例えば、正のレンズでは、ペッツヴァル面の内向きの湾曲に応じて条件R
P<0が成り立つ。従って、平面物体の像は、放射線の方向に向けて凹になり、この条件は、一般的に、視野曲率の「補正不足」と呼ばれる。それとは対照的に凹ミラーでは、視野曲率の過補正に応じて条件R
P>0が成り立つ。平坦な物体の平坦な像はR
P=0を有する結像システムによって得られる。これらの条件を
図2Aの投影対物系POにおいて略示している。
【0046】
ペッツヴァル面と近軸像面とは光軸上で一致する。ペッツヴァル面の湾曲は、ペッツヴァル面が、光軸から遠く分離した視野点において理想的な像面から外れる状況で生じる場合がある。ペッツヴァル面が湾曲しているという事実は、像視野の外縁の(最大像視野高さy’の)視野点における像空間内で光軸に対して平行に測定された理想的な像面(通常は平坦な)からのペッツヴァル面の縦方向逸脱pに変換される。従来「像視野曲率」という用語は、最大像視野高さy’におけるそのような縦方向逸脱(又はサグ)を指す上で用いられ、像視野の曲率半径の逆数である「像視野の曲率」と混同されないようにすべきである。
【0047】
図2は全く概略的であり、この図に関連して解説した特徴のいかなるものにおいても正しい縮尺のものではないことに注意されたい。
次に、対物系の像側における条件を
図2Bに関連して説明する。本出願の論旨では、像視野サイズは、対物系の(円形)「設計像視野」の半径に対応する最大像視野高さy’によって特徴付けることができる。設計像視野IF
Dは、対物系の結像忠実性が、目標とするリソグラフィ処理に対して十分に良好である像面の全ての視野点を含む。言い換えれば、全ての結像収差は、最大像視野高さy’に等しいか又はそれよりも小さい半径方向座標内で目標とする用途に向けて十分に補正され、それに対して設計像視野IF
Dの外側の視野点では、1つ又はそれよりも多くの収差が必要な閾値よりも高くてもよい。
【0048】
一般的に、設計像視野IF
D内の全ての視野点がリソグラフィ処理に用いられるわけではない。露光は、全ての視野点ではなく、適度にサイズが定められた基板をリソグラフィ処理において露光することを可能にするほど十分にサイズが大きくなければならない有効像視野IFに位置する視野点のみを用いて実施される。対物系が十分に補正され、いかなる口径食も発生しない視野点のみを含めるために、有効像視野は、設計像視野IF
D内に収まる必要がある。対物系の設計に依存して、有効像視野を設計像視野内に収める様々な手法が存在する。
【0049】
走査作動に向けて設計された投影露光システムでは、スリット形の有効像視野IFが用いられる。
図2Bは、下記に例示的に解説する掩蔽のない反射屈折投影対物系の実施形態に関連して利用することができる矩形の有効軸外像視野IFの例を示している。より実際的な実施形態では、弓形形状の有効像視野(時によっては環状視野又はリング視野と記す)を用いることができる。一般的に、有効像視野のサイズは、走査方向に対して平行な長さA及び走査方向に対して垂直な幅B>Aに基づいて説明することができ、それによってアスペクト比AR=B/A>1が定められる。多くの実施形態では、アスペクト比は、例えば、2:1から10:1の範囲にあるものとすることができる。
【0050】
従来の走査投影露光システムには、基板テーブルを光軸に対して平行に移動し(z操作)、更に、ウェーハテーブルを光軸に対して垂直な2つの互いに垂直な軸の回りに傾斜させる(x傾斜及びy傾斜)ことを可能にするウェーハ台を装備することができる。このシステムは、基板面の過去の測定値に基づいて、投影対物系の焦点領域に対する基板面の位置を調節するために、露光段階の間にウェーハテーブルをシフト及び/又は傾斜させるように作動させることができる(US6,674,510B1を参照されたい)。
【0051】
しかし、これらのシステムは、露光領域内の基板面の局所凹凸に完全に対処することができるわけではない。むしろ一般的には、投影対物系の焦点領域に対して劣悪な基板面位置しか得られないことになる。一方、本発明者は、露光区域内の平坦でない面プロフィールが、結像処理の品質の劣化を引き起こす場合があり、それによって例えば微細構造半導体素子の製造において高い不合格率が生じることを確認した。
【0052】
図3は、光軸に対して平行に基板面を上昇又は下降させる(z操作)ことができるウェーハ台を用いた従来の補正原理を略示している。
図3Aでは、平坦でない基板面SSは、z=0における投影対物系の焦点位置の完全に外側に位置する。従って、
図3Bに見られるように、焦点FOCの場所はウェーハWの基板面の上方に位置する。ウェーハ台が所定の量(z−MAN)だけ軸線方向に上昇された場合には、露光区域の少なくとも一部が焦点内にあり、非焦点収差が低減するように(3C)、平坦でない基板面を最良の焦点の領域内に持ってくることができる。しかし、焦点深度によっては、露光区域の一部が、許容閾値を超えて依然として焦点外にあることが生じる場合があり、それによってコントラストが、露光区域の少なくとも一部において大きく低下する場合がある。
【0053】
以下では、基板面の凹凸は、リソグラフィ結像処理における外乱として処理することになる。
図4Aは、例示目的で、レチクルによって1つずつ逐次照射される隣接ダイの網目状に配置された多数の矩形露光区域ES(又はダイ)へと再分割された基板面SSを有する半導体ウェーハWの軸線方向の図を示している。各露光区域は、投影対物系の有効像視野の走査直交方向(x方向)の幅に対応する幅EAX、及びEAXに等しいか、EAXよりも大きいか、又は小さいとすることができる有効像視野の高さAよりも実質的に大きい長さEAYを有する。
図4Bは、多様に湾曲した基板面SSを示す基板を通じた垂直断面(x−z断面)を示している。基板全体の軸上位置及び傾斜角の全体的調節の後に、基板面の局所凹凸は、少なくとも第一近似ではx方向に基本的に放物(2次)視野プロフィールを有する面プロフィールを生じるように考えている。平面基準面からの偏差量は、本明細書では露光区域内の最低プロフィール高さと最高プロフィール高さの間の差として定められるそれぞれの区域における山から谷までの値pvによって定量化することができる。更に、基板面SSの直交するy方向(走査方向)の湾曲をスリット形の有効像視野の高いアスペクト比(例えば、4<AR<6)に起因して無視することができるように考えている。従って、基板の平坦でない面プロフィールは、少なくとも第一近似では、非焦点の2次視野プロフィール、及び同時に投影対物系の高い像側開口数に起因する球面収差の2次視野プロフィールを誘発することになる。これらの収差は投影対物系の光学設計から独立におり、投影対物系の像側NAにのみ依存することに注意されたい。
【0054】
以下では、投影システムによって引き起こされ、及び/又は外部条件によって誘発される波面収差を多項式の線形組合せによって表している。光学分野では、収差を説明するのにいくつかの種類の多項式が利用可能であり、以下では、収差を特徴付ける上で、例えば、ザイデル多項式又はゼルニケ多項式を用いる。
光学面が真球面であることからの逸脱を発生源とする波面収差を説明するのにゼルニケ項を用いる技術は、従来の技術である。また、異なるゼルニケ項が非焦点、非点収差、コマ収差、及びより高次の収差に至る球面収差を含む異なる収差現象を表すことは十分に認められている。収差は、選択された数のゼルニケ多項式の線形組合せとして表すことができる。ゼルニケ多項式は、単位円上に定められた1組の完全な直交多項式である。例えば、ρが正規化半径であり、θが方位角である極座標が用いられる。波面収差W(ρ、θ)は、ゼルニケ多項式内でゼルニケ項とそれぞれの重み係数との積の和として展開することができる(例えば、H Gross編「光学系ハンドブック」第2巻、「物理的像形成」、「Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA」、第20章2項、2005年を参照されたい)。ゼルニケ表現では、ゼルニケ多項式Z1,Z2,Z3等は、全体収差へのそれぞれの寄与を識別するある一定の意味を有する。例えば、Z1=1は、定数項(又はピストン項)に対応し、Z2=ρcosθは、x方向の歪曲に対応し(又はx方向の波面傾斜)、Z3=ρsinθは、y方向の歪曲(又はy方向の波面傾斜)に対応し、Z4=2ρ
2−1は、非焦点(放物状部分)に対応し、Z5=ρ
2cos2θは、3次の非点収差に対応する等である。
【0055】
ゼルニケ多項式は、レンズ面又はミラー面のような光学面の名目上の表面、例えば、球面表面からの偏差を特徴付けるのに用いることができる。
図5は、露光区域内で山から谷までの値PV=100nmによって特徴付けられる基板面の凹凸に対して、露光区域内のx方向の基本的に2次の面プロフィールの効果を表すゼルニケスペクトルを示している。凹凸が、基本的に非焦点(ゼルニケ係数Z4)及び球面収差(1次球面収差Z9、2次球面収差Z16等)に影響を与え、同時に、平坦でない(非平面)面プロフィールによって誘発される他の収差のレベルが比較的小さいことが明らかである。
【0056】
以下の例は、走査リソグラフィ装置の露光区域内で平坦でない基板面によって誘発される結像収差を如何にして大きく低減することができるかを示している。概略
図6Aは、走査作動中の2つの異なる時点における平坦でないウェーハ面上の矩形露光区域EAを示している。第1の時点t
1では、投影対物系のスリット形の照明有効像視野IFは、露光区域の下側縁部の近くに位置決めされる。走査が進行する時に、ウェーハは、静止した投影対物系に対して走査方向(y方向)に移動し、それによって照明有効像視野は、その後の時点t
2において第1の位置から離間した異なる位置にくる。走査速度において一般的な値(例えば、約0.2m/sと2m/sとの間)、及び1センチメートル又はそれよりも大きい程度、例えば、20mmと40mmの間の一般的な縁部長さを有する露光区域サイズでは、1回の走査作動で照明像視野によって露光区域全体を網羅するのに必要とされる時間間隔Δtは、例えば、一般的に、約10msと200msの間の範囲に及ぶものとすることができる。
【0057】
図6Bは、走査方向に対して垂直なx−z平面内のそれぞれの基板断面を示している。各場合に、投影対物系POの像側終端部を示しており、投影対物系の出射側は、基板の平坦でない基板面SSから作動距離だけ離間する。基板面は、t
1において凸面形状を有し、それに対して後の時間t
2>t
1では、投影ビームが横断する離間領域内で凹に湾曲する。
各場合の破線は、投影対物系のペッツヴァル面PSを表し、この面PSは、平坦でない基板面によって引き起こされる結像収差を低減することを可能にするように、有効像視野内の基板の面トポグラフィと共形であるように適応される。この例では、投影対物系は、時点t
1では視野曲率に対して若干補正不足であり、補正状態は、時点t
2における若干過補正された状況へと動的に変更される。結像システムの像視野曲率のこの有意な変化は、走査速度に適応されて数分の1秒以内に動的に起こされる。この変化は、下記により詳細に説明するように、走査作動に先行して実施された面トポグラフィ測定に基づいて達成される。
【0058】
ダイ毎に約50msの走査時間という一般的な値を考えると、操作の動力学特性は、例えば、20Hz又はそれよりも大きい程度のものとすることができる。
相対的に見ると、現時点では、多くの場合に、十分な補償を得るのに、10ms(ミリ秒)内の焦点深度(DOF)の10%程度の変化率を十分なものとすることができると考えられる。一部の実施形態では、非焦点は、1msの時間間隔以内の投影対物系の焦点深度(DOF)の約0.5%と約50%の間の変化率で変更される。
投影対物系の1つ又はそれよりも多くの光学要素の能動的操作によって引き起こされる視野曲率及び/又は歪曲のような結像収差の変化率は、環境圧力及び/又は温度、及び/又はシステムの加熱によって誘発される変化によって引き起こされる投影システムの使用中に発生する場合がある時間依存変化よりも速い程度のものとすることができる。
【0059】
次に、それぞれの視野面の比較的近くに置かれた投影対物系の1つ又はそれよりも多くの光学要素(視野要素)のターゲット式操作の効果をNA>1における液浸リソグラフィに適応された反射屈折投影対物系の作動例を用いてより詳細に以下に説明する。それぞれの露光システムには、マスク及び/又はレチクルを光軸に対して平行に移動し、マスク及び/又はウェーハを光軸に対して垂直な1つ又はそれよりも多くの傾斜軸の回りに傾斜させるための従来のマニピュレータを装備することができる。更に、露光システムには、それぞれの投影対物系の色補正のステータスに適応された操作範囲Δλ内でシステムの中心波長λをシフトさせる波長マニピュレータを装備することができる。
各場合に、下記により詳細に説明するように、基板面の凹凸及び/又はレチクルの凹凸の効果に対処するために1つ又はそれよりも多くの付加的なマニピュレータが特定的に準備される。
【0060】
図7は、第1の実施形態の反射屈折投影対物系700の2つの軸断面を示している。4:1という縮小結像スケール(β=−0.25)の場合には、投影対物系は物体側でテレセントリックであり、像側は、像側開口数NA=1.35を有する。有効像視野サイズは26mm×5.5mmである。この仕様を表7,7Aに提供する。
図7Aは、x−z平面における断面を示しており、それに対して
図7Bは、x−z平面に対して垂直なy−z平面におけるそれぞれの断面を示している。このシステムに対する仕様データは、US2008/0174858A1の
図3に示す実施形態から引用したものである。対応する開示内容は、本明細書に引用によって組み込まれている。
【0061】
投影対物系700は、平面物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターンの像を厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を発生させながら平面像面IS(像平面)内に縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。矩形の有効な物体視野OF及び像視野IFは、軸外、すなわち、光軸OAの完全に外側にある。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内に設けられたパターンを第1の中間像IMI1へと結像するように設計される。第2の反射結像(純反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:(−1)に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に強い縮小比で結像する。
【0062】
投影対物系700は、各々が結像システムとして構成され、中間像を通じて連結された複数のカスケード対物系部分を有し、放射線経路において先行する結像システムによって生成された像(中間像)が、放射線経路内のその後の結像システムにおける物体として機能する「連結」投影対物系の例である。その後の結像システムは、更に別の中間像を生成することができるか(第2の対物系部分OP2の場合のように)又は投影対物系の像平面に「最終」像視野を生成する投影対物系の最後の結像システムを形成する(第3の対物系部分OP3のように)。
【0063】
投影ビームのビーム経路を辿るのを容易にするために、
図7Bには軸外物体視野OFの外側視野点の主光線CRの経路を示している。
3つの互いに共役な瞳面P1,P2,及びP3は、主光線CRが光軸と交差する位置に形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分内で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0064】
第2の対物系部分OP2は、物体側に向く凹ミラー面を有する第1の凹ミラーCM1、及び像側に向く凹ミラー面を有する第2の凹ミラーCM2を含む。ミラー面の使用部分、すなわち、ミラー面の作動中に照らされる区域は、両方共に連続的又は途切れのないものであり、すなわち、ミラーは、照明領域内に穴又は孔を持たない。互いに相対するミラー面は、凹ミラーによって形成される湾曲面によって囲まれたミラー間空間とも表す反射屈折空洞を形成する。中間像IMI1、IMI2は、両方共に反射屈折空洞内でミラー面から十分に離間して置かれる。
【0065】
対物系700は回転対称であり、全ての屈折光学構成要素及び反射光学構成要素に共通の1つの真っ直ぐな光軸OAを有する(インラインシステム)。いかなる折り返しミラーも存在しない。偶数回の反射が発生する。物体面と像面とは平行である。凹ミラーは、小さい直径を有し、これらの凹ミラーを互いの近くに配置し、これらの凹ミラーの間に位置する中間像の比較的近くに配置することを可能にする。凹ミラーは両方共に、軸対称面の軸外区画として構成され、かつ照らされる。光ビームは、光軸に向く凹ミラー縁部付近を口径食なしに通過する。両方の凹ミラーは、瞳面から光学的に遠隔にあり、次の中間像の比較的近くに位置決めされる。対物系は、光軸に中心を置く掩蔽のない円形瞳を有し、従って、マイクロリソグラフィのための投影対物系としての使用を可能にする。
【0066】
両方の凹ミラーCM1,CM2は、周辺光線高さMRH、主光線高さCRH、光線高さ比RHR、及び部分口径比SARに関するデータを提供している以下の表Aによって示しているように、次の中間像によって形成される視野面に光学的に近く配置される。
【0068】
視野面に光学的に近い位置は、それぞれの面における投影ビームの形状によって特徴付けることができる。光学面が視野面に光学的に近い場合には、投影ビームの断面形状は、一般的に、瞳面内又はその周りで見られる円形形状から大きく逸脱する。この場合には、「投影ビーム」という用語は、物体面内の有効物体視野から像面内の有効像視野に向けて延びる全ての光線束を表している。視野面に光学的に近い面位置は、ビームの伝播方向に対して直交する2つの互いに垂直な方向の投影ビームのビーム直径が互いから50%よりも大きく、又は100%よりも大きく、又はそれよりも大きく逸脱する場合がある位置として定めることができる。一般的に、視野面に光学的に近い光学面上の照明区域は、円形端部から大きく逸脱する形状を有することになり、走査リソグラフィ投影装置において好ましい視野形状に対応する高アスペクト比の矩形に似ている。下記の
図9から、第1及び第2の凹ミラーの両方が、基本的に丸められた端部を有する矩形であり、この矩形が、ほぼ有効物体視野及び有効像視野のアスペクト比ARを有することが分る。有効物体視野OFの矩形形状は、
図7Aと
図7Bとの比較から捉えることができ、
図7Aでは、物体視野は、長手側(x方向)に沿った切断部であり、それに対して
図7Bでは、物体視野は、走査方向に対して平行な、すなわち、矩形の有効物体視野の短手の縁部に対して平行な切断部である。
【0069】
2つの凹ミラーCM1及びCM2の主な機能は、ペッツヴァル和に過補正寄与を与えることによってペッツヴァル和を補正し、レンズの正の屈折力の補正不足の影響を相殺することである。視野曲率への凹ミラーの寄与は、所定の空間及び時間プロフィールに従って反射面の面曲率を変更することによって動的に変更することができる。この目的のために、第1及び第2の凹ミラーの各々は、ミラーマニピュレータMM1,MM2それぞれに関連付けられ、これらのミラーマニピュレータの両方は、関連付けられた凹ミラーの走査作動中の2次元の変形(2次元において空間分解能を有する変形)に向けて構成される。ミラーマニピュレータは、構成が等しいか又は異なるものとすることができる。
【0070】
この例では、凹ミラーの各々は、ミラー基板の可撓性部分上に高反射(HR)コーティングを有する。ミラーマニピュレータMM1又はMM2のいくつかのアクチュエータ(矢印で表している)は、可撓性部分の背側に作動的に結合される。アクチュエータは、投影露光装置の中央制御ユニットの一体部分とすることができるミラー制御ユニットMCUによって制御される。ミラー面の望ましい変形を表す信号を受信するために、マニピュレータ制御ユニットが接続される。ミラーマニピュレータ及び対応する制御ユニットは、基本的に、本出願人の特許出願US2002/0048096A1又はUS2005,0280910A1(WO03/98350A2に対応する)に開示するように設計することができる。対応する開示内容は、本出願に引用によって組み込まれている。
【0071】
上述の代わりに、瞳ミラーマニピュレータのいずれか適切な構成、例えば、圧電要素のような電気機械アクチュエータ、流体の圧力変化に応答するアクチュエータ、電気アクチュエータ、及び/又は磁気アクチュエータを用いるマニピュレータを用いることができる。これらのアクチュエータは、連続的な(途切れのない)ミラー面を上述のように変形するのに用いることができる。ミラーマニピュレータは、ミラーの局所温度変化を起こしてミラー面の望ましい変形を生じる1つ又はそれよりも多くの加熱要素及び/又は冷却要素を含むことができる。この目的のために、抵抗加熱器又はペルチェ素子を用いることができる。
【0072】
走査作動中の第1及び第2の凹ミラーCM1,CM2の両方の2次元の変形の効果は、
図4Bに略示しているように、走査直交方向(x方向)に最高高さと最低高さの間に45nmの差を有する(山から谷までが45nmの)凹放物プロフィールを有する平坦でない基板面を有するウェーハ基板に対して模擬された。3つの補正シナリオSC1,SC2,及びSC3を模擬した。
第1のシナリオSC1では、基板の凹凸を基本的に
図3に関連して上述したように従来の方式でウェーハのz位置及びウェーハの傾斜ステータスの能動的操作によって補正した。第2のシナリオSC2では、上記に加えて、光軸に対して平行なレンズの相対変位及びレンズの傾斜を含む光学要素に対するいくつかの能動的操作を実施した。
【0073】
第3のシナリオSC3では、基板面の凹凸によって引き起こされる収差を低減するために、第1及び第2の凹ミラーCM1,CM2の両方の面形状を走査作動中に時間依存方式で2次元において変形した。
図8は、上述の3つのシナリオSC1,SC2,SC3において2次凹凸(PV=45nm)によって誘発された収差の比較図を示している。誘発された全体収差をゼルニケ係数によって説明される寄与に分解し、これらを
図8の横座標上の値として示している。縦座標は、走査した収差SCAをnmで示している。収差を低減するために各々が視野面(中間像)に光学的に近い2つのミラーを走査作動中に動的に変形した場合には、走査された収差の有意な改善を即座に判別することができる。非焦点収差(Z4)及び波面傾斜収差(Z2/3)の両方を標準のシナリオSC2及び第1のシナリオSC1の両方に対して大きく低減することができ、軸上位置及び傾斜に関するウェーハ位置の最適化しか用いない第1のシナリオSC1に対しては、より大幅に低減することができる。標準のシナリオSC2に対して非焦点(Z4)及び波面傾斜(Z2/3)の両方を約90%低減することができ、それに対して純ウェーハシナリオSC1に対しては約95%の更に良好な改善が得られる。例えば、非焦点収差Z4は、2つの凹ミラーの動的な変形により、約12nmから約0.6nmへと低減することができる。同様に、非点収差(Z5/6)においても有意な改善が得られ、この収差は、標準のシナリオSC2に対して約90%低減することができる。
これらの値は、視野要素の動的な変形が、焦点割り当てに対する現在優勢な寄与のうちの1つである基板面の凹凸の寄与を大きく低減することを示している。それによってリソグラフィ処理における処理許容範囲の有意な改善が得られる。同時に、焦点誤差に関連する要件をレンズ加熱などのような他の寄与効果に関して緩和することができる。
【0074】
図9は、改善を得るために第1の凹ミラーCM1に対して印加された補正変形(
図9A)、及び第2の凹ミラーCM2に対して印加された補正変形(
図9B)を略示している。各場合に、反射面の山から谷までの(PV)変形は比較的小さく、例えば、200nmよりも小さい領域内のものとすることができる。この特定の場合には、PV変形は、CM1において約80nmであり、CM2において約160nmである。更に、図は、基板面の走査直交方向の長いうねりの2次変形によって引き起こされる収差を低減するのに、比較的長いうねりの変形が有効であることを例示的に示す。これは、ミラーの凹基調のプロフィールの偏差が、多くの場合にそれ程複雑である必要がなく、従って、それぞれのミラーマニピュレータの構成を比較的単純にすることができることを示している。一般的には、各場合にマルチ・ゼルニケ・ミラーマニピュレータを用いることができ、例えば、Z2とZ49の間のように高次の値に至るゼルニケ係数に分解することができる反射面のターゲット式変形が可能になる。多くの場合に、上述の代わりにそれ程複雑ではない構造を有する変形で十分とすることができ、それ程複雑ではないミラーマニピュレータの使用が可能になる。
【0075】
走査作動の開始と終了の間に投影対物系の少なくとも収差を動的に変更するために、上述の補償機構は、投影対物系の1つ又はそれよりも多くの光学要素に関連付けられた1つ又はそれよりも多くのマニピュレータを有する投影対物系を含む投影露光装置において、所定のプロフィールに従って走査作動中に投影対物系の結像特性を能動的に変更するように構成された制御システム内にこれらのマニピュレータを統合することによって実施することができる。光学要素に関連付けられたマニピュレータは、操作対象の光学要素の光学効果のそれぞれの変化を発動するマニピュレータ制御信号を生成する制御ユニットに接続することができる。マニピュレータ制御信号は、異なる手法で生成することができる。一部の実施形態では、露光区域を含む測定区域内の基板面の面トポグラフィを測定することを可能にする測定システムが準備される。代替的に、基板面データは、露光区域を含む区域内の基板面の測定又は計算されたトポグラフィを表すルックアップテーブル内に含まれるデータから導出することができる。
【0076】
システムが、マスクの非理想的な面形状によって引き起こされる他の収差の歪曲の補償を可能にするように構成される場合には、レチクルの非平坦面形状に対処するために、対応する対策を実施することができる。露光区域に対応するマスク区域内のマスクの面プロフィールを表す対応するマスク面データは、例えば、測定又はルックアップテーブルからのデータのいずれかに基づいて生成することができる。マスク面データは、マニピュレータ制御信号を生成する制御ユニットによって処理することができ、その後、この制御信号は、マスク区域内の面プロフィールによって引き起こされる結像収差を低減する補償手法において、投影対物系の結像特性を動的に適応させるために、投影対物系内の少なくとも1つの操作デバイスを制御するのに用いられる。
【0077】
図10は、異なる設計による約λ=193nmにおける液浸リソグラフィのための第2の実施形態の反射屈折投影対物系1000を示している。4:1という縮小結像スケール(β=−0.25)の場合には、投影対物系は物体側でテレセントリックであり、像側は、像側開口数NA=1.32を有する。有効像視野サイズは26mm×5.5mmである。この仕様を表10,10Aに提供する。
図10Aは、x−z平面における断面を示しており、それに対して
図10Bは、x−z平面に対して垂直なy−z平面におけるそれぞれの断面を示している。このシステムに対する仕様データは、US2008/0174858A1の
図7に示す実施形態から引用したものである。対応する開示内容は、本明細書に引用によって組み込まれている。
【0078】
投影対物系1000は、平面物体面OS(対物面)に配置されたレチクル上のパターンの像を厳密に2つの実中間像IMI1,IMI2を発生させながら平面像面IS(像平面)内に縮小スケール、例えば、4:1で投影するように設計される。矩形の有効な物体視野OF及び像視野IFは、軸外、すなわち、光軸OAの完全に外側にある。第1の屈折対物系部分OP1は、物体面内に設けられたパターンを第1の中間像IMI1へと結像するように設計される。第2の反射屈折(屈折/反射)対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと1:(−1)に近い倍率で結像する。第3の屈折対物系部分OP3は、第2の中間像IMI2を像面IS上に強い縮小比で結像する。
【0079】
投影対物系1000は、各々が結像システムとして構成され、中間像を通じて連結された複数のカスケード対物系部分を有し、放射線経路において先行する結像システムによって生成された像(中間像)が、放射線経路内のその後の結像システムにおける物体として機能する「連結」投影対物系の別の例である。順序は、屈折−反射屈折−屈折(R−C−R)である。
投影ビームのビーム経路を辿るのを容易にするために、
図10Bには、軸外物体視野OFの外側視野点の主光線CRの経路を太線で示している。
3つの互いに共役な瞳面P1,P2,及びP3は、主光線CRが光軸と交差する位置に形成される。第1の瞳面P1は、第1の対物系部分内で物体面と第1の中間像の間に形成され、第2の瞳面P2は、第2の対物系部分内で第1の中間像と第2の中間像の間に形成され、第3の瞳面P3は、第3の対物系部分内で第2の中間像と像面ISの間に形成される。
【0080】
第2の対物系部分OP2は、第2の瞳面P2に置かれた単一の凹ミラーCMを含む。物体面から到着する放射線を凹ミラーCMの方向に反射するように、光軸OAに対して45°の角度で第1の中間像IMI1に光学的に近く第1の平面折り返しミラーFM1が配置される。第1の折り返しミラーの平面ミラー面に対して直角に整列した平面ミラー面を有する第2の折り返しミラーFM2は、凹ミラーCMから到着する放射線を物体面に対して平行な像面の方向に反射する。折り返しミラーFM1,FM2の各々は、最近接中間像に光学的に近いが、短い距離を置いて位置する。従って、折り返しミラーは、視野ミラーである。以上により、放射線が反対方向に2度通過する二重通過領域が、幾何学的に偏向ミラーFM1,FM2と凹ミラーCMの間に形成される。2つの負のレンズを有する負の群NGが、凹ミラーの近くの大きい周辺光線高さを有する領域内に凹ミラーと同軸で配置され、それによって放射線は、負の群を反対方向に2度通過する。負の群と凹ミラーの間にはいかなる要素も配置されない。
【0081】
物体面OSの直近の第1の光学要素は、物体視野に近接して配置された透過平行平面プレートPPである。以下の表Bは、プレートPPの入射面1及び出射面2の周辺光線高さMRH、主光線高さCRH、光線高さ比RHR、及び部分口径比SARに関するデータを提供している。
【0083】
このプレートは、操作デバイスMANに関連付けられ、電気信号に応答してプレート材料の屈折率の2次元分布を短い時間スケールにおいて高い空間分解能で変更することを可能にする。マニピュレータの構成は、本明細書に引用によって組み込まれているWO2008/034636A2に開示されているワイヤグリッドマニピュレータシステムに基づくものとすることができる。動力学特性を高め、急速な温度変更を可能にするために、透過マニピュレータ要素を能動的に冷却するための冷却システムを設けることができる。
【0084】
更に、操作は、例えば、EP0,851,304B1に示されているもののような補完形状を有する非球面面の相対変位によって行うことができる。視野要素として、1対の非球面を物体面の直近に配置することができる。電気光学マニピュレータを利用することもできる。更に、マニピュレータは、互いに対して回転させることができ(例えば、EP0,660,169B1を参照されたい)、物体面のような視野面の近くに配置された円柱レンズ要素を含むように構成することができる。
【0085】
第1の実施形態と同様に、3つの補正シナリオSC1,SC2,及びSC3を比較のために模擬した。第1のシナリオSC1では、基板の凹凸は、基本的に
図3に関連して上述したように従来の方式でウェーハのz位置及びウェーハの傾斜ステータスの能動的操作によって補正した。第2のシナリオSC2では、上記に加えて、上述のように光学要素に対するいくつかの能動的操作を実施した。
第3のシナリオSC3では、走査作動中に投影対物系の視野曲率及び他の視野収差を動的に最適化するために、平面プレートPP内で時間依存の横方向屈折率不均一性を適用した。屈折率の2次元(空間)分布は、例えば、ゼルニケ係数Z2からZ49で説明することができる。
【0086】
図11は、上述の3つのシナリオSC1,SC2,SC3において2次凹凸(PV=45nm)によって誘発された収差の比較図を示している。誘発された全体収差をゼルニケ係数によって説明される寄与に分解し、これらを
図11の横座標上の値として示している。縦座標は、走査された収差をnmで示している。収差を低減するためにプレート状光学要素PPを走査作動中に動的に作動させた場合には、走査した収差の有意な改善を即座に判別することができる。非焦点収差(Z4)及び波面傾斜収差(Z2/3)の両方を標準のシナリオSC2及び第1のシナリオSC1の両方に対して大きく低減することができ、軸上位置及び傾斜に関するウェーハ位置の最適化しか用いていない第1のシナリオSC1に対しては、より大幅に低減することができる。標準のシナリオSC2に対して非焦点(Z4)及び波面傾斜(Z2/3)の両方を約90%低減することができ、それに対して純ウェーハシナリオSC1に対しては、約93%の更に良好な改善が得られる。例えば、非焦点収差Z4は、プレートPPにおける屈折率分布の動的修正により、約12nmから約0.8nmへと低減することができる。同様に、非点収差(Z5/6)においても有意な改善が得られ、この収差は、標準のシナリオSC2に対して約90%低減することができる。寄生非点収差Z2/3は、0.7nm(シナリオSC2における)からシナリオSC3における0.3nmへと低減した。
これらの値は、視野プレートPPにおける屈折力分布の動的修正が、焦点割り当てに対する現在優勢な寄与のうちの1つである基板面の凹凸の寄与を大きく低減することを示している。それによってリソグラフィ処理における処理許容範囲の有意な改善が得られる。同時に、焦点誤差に関連する要件をレンズ加熱などのような他の寄与効果に関して緩和することができる。
【0087】
これらの実施形態は、露光される基板面が露光区域内で完全に平坦ではない場合に、走査作動中の投影対物系の視野曲率のような結像特性の動的変より、露光処理全体における収差レベルを大きく改善することができることを示している。しかし、露光される基板面の非平坦性は、1回の走査作動中に投影対物系の結像特性のターゲット式変更を可能にする操作手段を投影露光システムに設けることによって解決又は誘発される場合がある多くの問題の1つに過ぎない。改善された構造及び機能によって対処することができる別の問題は、一般的に、「レチクル湾曲」と呼ばれる問題である。
【0088】
典型的な露光システムでは、一般的に、投影対物系は、重力方向の光軸に整列する。更に、パターンを担持するマスクは、光軸に対して垂直に水平平面に配向される。その結果、レチクル(マスク)は、重力に起因してサグを起こす場合があり、サグは、基本的にレチクルの種類、及びレチクルをレチクルホルダ内に固定する装着技術に関連する。一般的に、パターンの平面整列からの2次元における偏差は、先験的に把握することができず、判断することが困難である場合がある。サグの結果、結像されるレチクル上の個々の場所は、その望ましい位置(完全に平面のレチクルにおいて与えられる)から先験的に完全には予想することができないような方式で変位する場合があり、この変位の方向及び長さは、一般的に、レチクル上の場所の関数である。起こり得るレチクルサグの更に別の原因は、装着技術の装着対象のレチクルの形状に対する直接的な影響である。一般的に、ベアリング及び/又はクランプによって引き起こされるレチクルに対して作用する力及びモーメントは、露光中にレチクルの複雑な変形状態に寄与する場合がある。これらの影響は、先験的に完全には把握することができず、レチクル毎に異なる場合があるが、レチクルの種類に関して等しい可能性もある。レチクル湾曲から生じる問題は、例えば、本出願人によるWO2006/01300A2又はUS2003/0133087A1に説明されているもののような様々な手法で多くの場合に対処されている。
レチクル湾曲によって引き起こされる収差の問題は、走査作動中に投影対物系の結像特性を動的に変更するように構成された露光装置の実施形態を用いて動的な方式で対処することができる。
【0089】
図12は、多様に湾曲したレチクル面の変形を斜視図で定性的に示している。レチクルが支持体によって枠上に担持される場合には、変形は、例えば、WO2006/013100A2に示すように、実質的に放物形状をもたらす場合がある。レチクルが、レチクルの周辺領域内の3つ又はそれよりも多くの点で係合するクランプ締め技術によって装着される場合には、鞍形の変形が生じる場合があり、この変形は、重力によって誘発される変形の上に重ね合わされる。
図12には、そのような鞍形の変形を4つのコーナ位置でクランプ締めされたレチクルにおいて示している。レチクル湾曲は、レチクルの中心領域の縁領域に対する10分の1マイクロメートル又はそれよりも大きい程度の変位を生じる場合がある。系統的なレチクル湾曲効果に対処することは、投影対物系がある一定量のレチクル湾曲に広域的に対処する所定の非ゼロ視野曲率を有するような投影対物系の調節中の相殺対策によって可能であると考えられる。しかし、異なるレチクルを用いることによって引き起こされ、及び/又は作動中に殆ど予測することができない温度によって誘発される変形によって引き起こされる非系統的寄与は、投影対物系の対応する調節によって予め完全には対処することができない。これらの予測不能な効果は、焦点割り当てに大きく寄与する場合があり、標準の操作では対応する収差効果に完全に対処することが可能ではない場合がある。しかし、走査作動中の少なくとも1つの視野要素の動的な方式での能動的操作により、収差レベルをより小さい値に向けて大きく改善することができる。
【0090】
図13は、2つの補正シナリオの比較図を示している。この図は、マニピュレータの調節の後の残存収差を示している。棒グラフは、レチクルの中心において400nmのPV変形を有するレチクルのアナモフィック(鞍形)変形に対する標準シナリオSC2における残存誤差(走査した収差)を示している。上記との比較において、実線SC3は、
図7の実施形態の2つの凹ミラーCM1,CM2(視野ミラー)のターゲット式変形を含む補正シナリオにおけるそれぞれの値を示している。非焦点値Z4は、補正なしのシステムでは約7nmに達する。標準シナリオSC2では、非焦点誤差を約3.5nmへと低減することができる。ミラーCM1,CM2の凹反射面の付加的なターゲット式変形により、約1桁から約0.3nmで非焦点を更に低減することができる。同時に、この補正によって誘発される寄生誤差は、図示のように0.5nmよりも小さいなどのように一般的に小さい。
【0091】
類似の調査をマニピュレータに結合された透過視野PP要素を用いて、プレート内の屈折率の2次元分布における変更を可能にする第2の実施形態に対して実施した。
図14は、3つの補正シナリオの比較図を示している。標準補正を用いることにより、焦点の残存誤差(Z4)を約7nmから約6nmへと低減することが可能になる。物体面に近い視野要素に対して作用する2次元マニピュレータを用いることにより、これらの誤差を大きく低減することが可能になる。特に、寄生視野収差を限界レベルを上回って導入することなく、非焦点収差を約6nmから約0.4nmへと低減することができる。更に、傾斜誤差Z2/3は、シナリオSC1(ウェーハ操作のみ)における約16.8nmから、物体面の近くに配置された2Dマニピュレータによって約0.6nmへと低減したことが分る。
【0092】
図15は、視野面に光学的に近く配置されたミラーの1つ又はそれよりも多くの反射面を湾曲させることによって走査中に投影対物系の光学特性を操作する別の選択肢の例を示している。
図15は、全ての光学要素が
図10A、10Bに関連して説明したものと同じ仕様を有する投影対物系を通した子午断面の詳細を示している。従って、
図15に部分的に示している光学系の仕様は、表10,表10Aに提供しているものと同じである。上述のように、第2の対物系部分OP2は、第1の中間像IMI1(屈折性の第1の対物系部分によって生成される)と、第3の屈折対物系部分によって像面内に像を形成するように最終的に結像される第2の中間像IMI2との光学的中間に置かれた投影対物系の第2の瞳面P2の近くに置かれた凹ミラーCMを含む。第1の折り返しミラーFM1は、第1の中間像に光学的に近く配置され、第1の対物系部分OP1によって供給される放射線を凹ミラーCMに向けて反射する。第1の折り返しミラーFM1に対して90°に配置された第2の折り返しミラーFM2は、第2の中間像IMI2に光学的に近く配置され、凹ミラーCMから到着する放射線を像面に向けて反射する。第1及び第2の折り返しミラーの両方の反射面は、その公称作動状態で実質的に平坦(平面)であり、いかなる屈折力も持たず、その唯一の機能は、その上に入射する放射線を偏向することである。下記の表Cは、第1の折り返しミラーFM1及び第2の折り返しミラーFM2それぞれの周辺光線高さMRH、主光線高さCRH、光線高さ比RHR、及び部分口径比SARに関するデータを提供している。特に、部分口径比から、両方の折り返しミラーが視野面に近接して置かれている(ゼロに近いSAR)ことが容易に分る。
【0094】
この実施形態では、反射ミラーコーティングを担持する折り返しミラーの基板の一部分は、ある一定の程度まで外部の力に応じて反射面区域を湾曲することができるように一定限度まで可撓性である。第1の折り返しミラーFM1に関連付けられた第1のミラーマニピュレータMM1及び第2の折り返しミラーFM2に関連付けられた第2のミラーマニピュレータMM2のいくつかのアクチュエータ(矢印によって表している)は、それぞれのミラーの可撓性部分の背側に作動的に結合される。アクチュエータは、投影露光装置の中央制御ユニットの一体部分とすることができるミラー制御ユニットMCUによって制御される。ミラー制御ユニットは、それぞれのミラー面の望ましい変形又は変形の不在を表す信号を受信するように接続される。各ミラーマニピュレータは、関連付けられた反射面を1つの次元においてのみ湾曲させるか(例えば、円筒形ミラー面形状)、又は2次元において湾曲させるか(例えば、実質的に凹又は凸の球面又は非球面ミラー面形状)のいずれかを行うように構成される。
【0095】
片方又は両方の折り返しミラーの内向き及び/又は外向きの方向の湾曲操作により、特に視野収差に関して投影対物系の光学性能を操作する様々な自由度が可能になる。基板面の凹凸によって引き起こされる収差のような望ましくない収差を低減するために、ミラー面は、走査作動中に時間依存方式で変形させることができる。互いに独立に作動させることができる2つのマニピュレータが存在するので、異なる収差を互いから独立に補正することができる。更に、単一のミラーの操作が、ある一定の収差を補償するのに必要な操作範囲を与えるのに十分とはならない場合に、付加的な操作範囲を得ることができる。折り返しミラーを操作することによって得ることができる効果は、
図7A、
図7Bに関連して上述したように、中間像の近くに配置された凹ミラーを操作することによって得ることができるものと類似である。従って、上記説明を参照されたい。更に、別の自由度を与えるために、
図10Bの平面プレートPPによって形成される透過マニピュレータMANのような他のマニピュレータに加えて、能動的に変形可能な反射面を有する1つ又はそれよりも多くの折り返しミラーを設けることができる。他の実施形態は、上述の方式で操作することができる平面プレートを持たない。
走査投影露光装置における走査作動中の視野曲率のような視野収差の実時間補正が、基板面及び/又はパターン面の理想的な平面形状からの逸脱によって誘発される場合がある結像収差を大きく低減することができることを様々な実施形態で示した。特に、走査露光システムにおけるウェーハ面の凹凸及び/又はレチクル湾曲の悪影響を大きく低減することができる。
【0096】
好ましい実施形態の以上の説明は、例示的に提供したものである。当業者は、提供した開示内容から本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法への明らかな様々な変更及び修正も見出すであろう。従って、全ての変更及び修正が、特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まることを求めるものである。
全ての特許請求の範囲の内容は、引用によって本明細書の一部とされる。