特許第6407274号(P6407274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407274側鎖中にビニリデン二重結合を多く含有する高反応性ポリイソブチレン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407274
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】側鎖中にビニリデン二重結合を多く含有する高反応性ポリイソブチレン
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/10 20060101AFI20181004BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20181004BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08F10/10
   C08F8/00
   C08F2/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-526523(P2016-526523)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公表番号】特表2016-525165(P2016-525165A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014064402
(87)【国際公開番号】WO2015007553
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】13176789.9
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴェトリング
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒアシュ
(72)【発明者】
【氏名】マークス ブリューム
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴァイス
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−241992(JP,A)
【文献】 特開平04−288309(JP,A)
【文献】 特表平11−506492(JP,A)
【文献】 特表2001−509825(JP,A)
【文献】 特表2003−511492(JP,A)
【文献】 特開2010−043272(JP,A)
【文献】 米国特許第04832702(US,A)
【文献】 米国特許第05290873(US,A)
【文献】 米国特許第05880070(US,A)
【文献】 米国特許第05962604(US,A)
【文献】 国際公開第98/002468(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0274924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00 − 301/00
C07B 31/00 − 63/04
C07C 1/00 − 409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニリデン二重結合の総含有量50モル%超および数平均分子量(Mn)500〜10,000ダルトンを有するポリイソブチレンであって、ここで、該ポリイソブチレンのすべてのビニリデン二重結合の少なくとも10%が、ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素である前記ポリイソブチレン。
【請求項2】
ビニリデン二重結合の総含有量70モル%超および数平均分子量(Mn)900〜2500ダルトンを有するポリイソブチレンであって、ここで、該ポリイソブチレンのすべてのビニリデン二重結合の少なくとも12%が、ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素である、請求項1に記載のポリイソブチレン。
【請求項3】
ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素であるビニリデン二重結合が、それぞれα位で前記側鎖の遠位末端に配置されている、請求項1または2に記載のポリイソブチレン。
【請求項4】
1.05〜2.0の多分散度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリイソブチレン。
【請求項5】
重合装置内で、イソブテンまたはイソブテン含有C4炭化水素混合物を、2〜5つのイソブテン単位から構成されるイソブテンのオリゴマーからの混合物の存在下に、−100℃〜+100℃の温度で、ブレンステッド酸型またはルイス酸型重合触媒を用いて重合し、ここで、重合媒体中に存在しているイソブテンオリゴマー混合物に含まれるビニリデン二重結合と使用されたイソブテンモノマーの二重結合とのモル比が、少なくとも1:100であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンの製造方法。
【請求項6】
2〜5つのイソブテン単位から構成されるイソブテンのオリゴマーからなる混合物を別個に製造して、イソブテンまたはイソブテン含有C4炭化水素混合物の重合の前またはその間に重合媒体に導入することを特徴とする、請求項5に記載のポリイソブチレンの製造方法。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンの、燃料添加剤および潤滑剤添加剤として好適な誘導体を製造するための使用。
【請求項8】
一般式I
【化1】
[式中、
POLは、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンのn官能性の基を表し、
Aは、それぞれ1つまたは複数のアミノ官能基および/またはニトロ基および/またはヒドロキシル基および/またはメルカプタン基および/またはカルボン酸官能基またはカルボン酸誘導体官能基および/またはスルホン酸官能基またはスルホン酸誘導体官能基、および/またはアルデヒド官能基および/またはシリル基を含む極性基を意味し、ならびに
変数nは、1〜10の数を表し、ここで、n>1の場合、極性基Aは、同一または異なっていてよい]
のポリイソブチレン誘導体を製造するための方法であって、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンを、前記極性基Aまたは前記極性基Aの部分構造を導入する少なくともn当量の化合物と反応させて、部分構造との反応の場合、後続反応によって前記極性基Aの形成を完結することを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
一般式Iのポリイソブチレン誘導体において、前記極性基Aが、以下
(a)6個までの窒素原子を有するモノアミノ基またはポリアミノ基、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有している;
(b)ニトロ基、又はヒドロキシル基と組み合わされたニトロ基;
(c)ヒドロキシル基、又はモノアミノ基またはポリアミノ基と組み合わされたヒドロキシル基、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有している;
(d)カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(e)スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(f)ヒドロキシル基、モノアミノ基もしくはポリアミノ基によって末端化されており、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有しているか、またはカルバメート基によって末端化されているポリオキシ−C2〜C4アルキレン基;
(g)カルボン酸エステル基;
(h)無水コハク酸またはヒドロキシ基および/もしくはアミノ基および/もしくは四級化アミノ基および/もしくはアミド基および/もしくはイミド基を有する無水コハク酸に由来する基であって、前記POLの基礎をなすポリイソブチレンの内部二重結合およびビニリデン二重結合を、無水マレイン酸を用いて熱またはハロゲン触媒作用によりマレイン化して製造された、ならびに前記ヒドロキシ基および/もしくはアミノ基および/もしくは四級化アミノ基および/もしくはアミド基および/もしくはイミド基を有する無水コハク酸に由来する基の場合、相応の後続反応によって製造された前記無水コハク酸または前記無水コハク酸に由来する基、
ここで、結果として生じるカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体は、さらに、さらなる反応によって少なくとも1つのC2〜C12無水ジカルボン酸、少なくとも1つのC2〜C4アルキレンカーボネートおよび/またはホウ酸で変性されてよい;
(j)POLで置換されたフェノールと、アルデヒドと、モノアミンまたはポリアミンとのマンニッヒ反応によって生成された基;
(k)フェノール基、アルキルフェノール基または(ヒドロキシアルキル)フェノール基;
(I)ヒドロキシメチル基;
(m)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のエポキシド化、および引き続き
(i)加水分解して1,2−ジオールにする、
(ii)チオールまたはポリチオールと反応させる、
(iii)アンモニア、モノアミンまたはポリアミンと反応させる、
(iv)ボランと反応させてホウ酸エステルにして、該ホウ酸エステルを酸化分解して1,3−ジオールにする、
(v)アルデヒドに変換する、
(vi)アルデヒドに変換して、該アルデヒドをオキシムに変換して、該オキシムを還元してアミンにする、
(vii)アルデヒドに変換して、該アルデヒドをアゾメチンカチオンに変換して、加水分解してアミンにする、
(viii)アルデヒドに変換して、該アルデヒドをアルコールに変換するか、または
(ix)アルデヒドに変換して、該アルデヒドをシッフ塩基もしくはエナミンに変換して、該シッフ塩基もしくは該エナミンを還元してアミンにする
ことによって生成された基;
(n)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のヒドロホウ素化、および後に続く最初のヒドロホウ素化生成物の酸化によって生成された基;ならびに
(o)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のヒドロシリル化によって生成された基
から選択される、一般式Iのポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンを、好適な触媒を使用して一酸化炭素および水素の存在下にヒドロホルミル化し、続いて少なくともn当量のアンモニアまたはモノアミンまたはポリアミンの存在下に還元的アミノ化することを特徴とする、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンを、好適な活性化剤で処理し、続いてn当量のアンモニアまたはモノアミンまたはポリアミンと反応させることを特徴とする、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンを、エチレン性不飽和C4〜C12ジカルボン酸またはその反応性誘導体と熱またはハロゲン触媒作用により反応させることを特徴とする、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリイソブチレンを、エチレン性不飽和C4〜C12ジカルボン酸またはその反応性誘導体と熱またはハロゲン触媒作用により反応させ、続いてモノアミンもしくはポリアミンによって相応のカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体に変換し、ここで、結果として生じるカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体は、さらに、さらなる反応によって少なくとも1つのC2〜C12無水ジカルボン酸、少なくとも1つのC2〜C4アルキレンカーボネートおよび/もしくはホウ酸で変性されてよいことを特徴とする、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から4に記載のポリイソブチレンを、フェノールによって相応のアルキルフェノールに変換し、続いて該アルキルフェノールを、アルデヒドと第一級アミンまたは第二級アミンとの反応によって相応のマンニッヒ付加物にすることを特徴とする、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖中にビニリデン二重結合を多く含有する新規の高反応性ポリイソブチレンに関する。さらに、本発明は、そのようなポリイソブチレンの製造方法、燃料添加剤および潤滑剤添加剤として好適な誘導体を製造するためのその使用、ならびにそのような誘導体の製造方法に関する。
【0002】
高反応性ポリイソブチレンとは、いわゆる低反応性ポリマーとは異なり、好ましくは末端に配置されたエチレン性ビニリデン二重結合を多く含有する、つまり50モル%超、詳しく言うと、実際にはたいてい少なくとも60モル%、特に少なくとも70モル%、殊に少なくとも80モル%含むポリイソブチレンであると理解される。
【0003】
本願の範囲では、ビニリデン二重結合とは、式>C=CH2のモノ置換または二置換二重結合であって、前記式中、左の炭素原子の2つの自由原子価のうちの1つが、直接または低分子のアルキレン基もしくはアルケニレン基を介してポリマー主鎖および別の低分子の炭化水素基、例えば、メチル基[結果:−C(CH3)=CH2]もしくは水素原子[結果:−CH=CH2]に結合している前記二重結合であると理解される。ビニリデン二重結合の結合は、ポリマー主鎖の末端で行われるか、またはその連続方向においてさらに内部で行われてよい(前者の場合、分子中でビニリデン二重結合の大部分の割合を占める末端ビニリデン二重結合(「α−二重結合」)が存在しており、後者の場合、側鎖にビニリデン二重結合が存在している(この側鎖はポリマー主鎖の残部と一緒になって、分子中で最も長い鎖を形成しないことが前提とされる))。
【0004】
前記ビニリデン二重結合は、例えば、立体的に要求の高い反応相手、例えば、無水マレイン酸への熱付加において最も高い反応性を示すが、高分子のさらに内部に存在している二重結合は、たいていの場合、官能基化反応では反応性を示さないか、または比較的わずかな反応性しか示さない。そのような高反応性ポリイソブチレンは、特に、潤滑剤および燃料のための添加剤を製造するための中間生成物として使用され、このことは、例えば、DE−A2702604に記載されている。
【0005】
そのような高反応性ポリイソブチレンは、例えば、特許文献DE−A2702604C2(1)の方法による、触媒として純粋な三フッ化ホウ素の存在下に液相中でイソブテンをカチオン重合することによって得られるものである。末端ビニリデン二重結合の割合が同じく高く、かつ比較的狭い質量分布を有するポリイソブチレンは、特定の酸素含有有機化合物、例えば、アルコールまたはエーテルまたはそれらの化合物の混合物により不活性化された三フッ化ホウ素触媒の存在下に重合が行われることによって得られるものであり、例えば、WO93/10063またはEP−A0628575に記載されている。
【0006】
先行技術から公知の高反応性ポリイソブチレンから、燃料添加剤または潤滑剤添加剤として用いられる通常の誘導体を製造する場合、そのような誘導体の性能特性は改善の必要があることがしばしば認められる。したがって、本発明の課題は、高反応性ポリイソブチレンであって、上述の誘導体と比べて改善された性能特性、特に、オットーエンジンの吸気弁および噴射ノズルにおいて改善された洗浄作用および清浄維持作用(Reinhaltungswirkung)を有する誘導体を製造することができる高反応性ポリイソブチレンを提供することであった。
【0007】
それに応じて、ビニリデン二重結合の総含有量50モル%超、好ましくは60モル%超、特に70モル%超、殊に80モル%超、および数平均分子量(Mn)500〜10,000ダルトン、好ましくは650〜5,000ダルトン、特に750〜3,500ダルトン、殊に900〜2,500ダルトンを有するポリイソブチレンであって、ここで、このポリイソブチレンのすべての二重結合の少なくとも10%、好ましくは少なくとも11%、特に少なくとも12%、殊に12〜15%が、ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素である前記ポリイソブチレンが見出された。
【0008】
好ましい実施態様では、このポリイソブチレンは、ビニリデン二重結合の総含有量70モル%超および数平均分子量(Mn)900〜2,500ダルトンを同時に有しており、ここで、このポリイソブチレンのすべてのビニリデン二重結合の少なくとも10%は、ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素である。
【0009】
分子中の最も長い炭素鎖は、ポリイソブチレン主鎖と見なされる。このポリイソブチレン主鎖の末端に配置されたビニリデン二重結合(「α−二重結合」、つまり、主鎖に関してα位)は、分子中のビニリデン二重結合の比較的大きな割合を占めている。このポリイソブチレン主鎖は、イソブテンモノマー単位の連続的な組み込みに由来しており、規則的に繰り返すメチル側鎖の他に、少なくとも2個、特に少なくとも3個、殊に少なくとも4個の炭素原子からの最小数の側鎖を有しており、前記側鎖には、さらなるビニリデン二重結合が含まれる。通常、前記側鎖はいずれもビニリデン二重結合を含んでいる。前記側鎖は、主に、モノマーのイソブテンおよび/または低級イソブテンオリゴマー(大部分がイソブテン単位5つまでのもの)の組み込みによって、成長するポリイソブチレン主鎖の末端ではない位置に形成されると推測されるため、この側鎖は、通常、大多数が4個、8個、12個、16個または20個の炭素原子を有している。しかし、イソブテンもしくはイソブテンオリゴマーの組み込みの他に、通常、使用されるイソブテン中に比較的少量で不純物として存在しているか、もしくは工業用C4炭化水素流の使用において出発流成分として存在している1,3−ブタジエン単位および/もしくは1−ブテン単位の組み込み、または成長する高分子における転移反応による前記側鎖の形成も考えられ、ここで、形成された側鎖は、その場合、上記値4個、8個、12個、16個および20個とは異なる炭素原子数を有していてもよい。
【0010】
先行技術から公知の高反応性ポリイソブチレンは、しばしば、前記ビニリデン二重結合の含有量がすでに少ない側鎖も有しているが、その割合は、それぞれ分子中でビニリデン二重結合の総含有量に対して8%未満、多くの場合約2〜約7.5%である。しかし、このポリイソブチレンから製造される燃料添加剤誘導体および潤滑剤添加剤誘導体の性能特性は、改善の必要がある。側鎖中のビニリデン二重結合の主鎖中の末端ビニリデン二重結合に対する本発明による比較的高い比が、本発明によるポリイソブチレンから製造された燃料添加剤誘導体および潤滑剤添加剤誘導体の驚くほどにより優れた性能特性の原因になっている。側鎖中のビニリデン二重結合の比較的高い含有量に関連しているのは、より鎖長の長い側鎖に関して分子全体の比較的高い分岐鎖度である。
【0011】
好ましい実施態様では、本発明によるポリイソブチレンの場合、ポリイソブチレン主鎖に対する、少なくとも2個、特に少なくとも3個、殊に少なくとも4個、特に好ましくは、大多数が4個、8個、12個、16個もしくは20個の炭素原子からの1つまたは複数の側鎖の構成要素であるビニリデン二重結合は、それぞれ(この側鎖に関して)α位で前記側鎖の遠位末端に配置されている、つまり、前記ビニリデン二重結合は、前記側鎖の最も外側に位置しており、大部分が(前記ポリイソブチレン主鎖の末端ビニリデン二重結合の構造に類似の)特別な反応構造−C(CH3)=CH2を有している。
【0012】
本発明による高反応性ポリイソブチレンは、主鎖の末端および側鎖中の前記ビニリデン二重結合の他に、比較的少ない割合の、比較的高度に置換された(つまり、三置換および四置換)、さらに内部のエチレン性二重結合も有しており、この二重結合は、後続の誘導体化反応では実質的にあまり反応性がない。したがって、その含有量は、前記ビニリデン二重結合と比べて可能な限り少ないのが望ましい。β位の三置換二重結合の含有量は、本発明によるポリイソブチレン中では、通常、それぞれ分子中ですべてのオレフィン性二重結合の総含有量に対して5〜45モル%、特に8〜35モル%、殊に12〜25モル%であり、大部分がγ位の四置換二重結合の含有量は、本発明によるポリイソブチレン中で、通常、それぞれ分子中ですべてのオレフィン性二重結合の総含有量に対して1〜10モル%、特に2〜8モル%、殊に3〜6モル%である。主鎖の末端および側鎖中のビニリデン二重結合の含有量、β位の三置換二重結合の含有量、ならびに大部分がγ位の四置換二重結合の含有量の合計は、いずれの場合も100モル%である。
【0013】
本発明によるポリイソブチレンにおける主鎖の末端および側鎖中のビニリデン二重結合の含有量、ならびに三置換および四置換二重結合の含有量も、通常、1H−NMR分光法を用いて測定される。
【0014】
本発明によるポリイソブチレンは、それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された数平均分子量(Mn)を500〜10,000ダルトン、好ましくは650〜5,000ダルトン、特に750〜3,500ダルトン、殊に900〜2,500ダルトン有している。多分散度は、一般的に2.5未満、好ましくは2.0以下、特に1.05〜2.0である。多分散度は、得られたポリマー鎖の分子量分布の基準であり、質量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnの商に相当する(PDI=Mw/Mn)。
【0015】
本発明の対象は、本発明によるポリイソブチレンの製造方法でもあって、重合装置内で、イソブテンまたはイソブテン含有C4炭化水素混合物を、2〜5つのイソブテン単位の実質的にイソブテンオリゴマーからの混合物の存在下に、−100℃〜+100℃の温度で、ブレンステッド酸型またはルイス酸型重合触媒を用いて重合し、ここで、重合媒体中に存在しているイソブテンオリゴマー混合物に含まれるビニリデン二重結合対使用されたイソブテンモノマーの二重結合のモル比は、少なくとも1:100、好ましくは1.2:100、特に1.2:100〜2.5:100である。
【0016】
前記重合媒体中に存在しているイソブテンオリゴマー混合物は、大部分が、2〜5つのイソブテン単位を有するオリゴマー、ならびに少量の残留イソブテンおよび6つ以上のイソブテン単位を有する高級オリゴマーからなる。前記2〜5つのイソブテン単位を有するオリゴマーは、通常、前記イソブテンオリゴマー混合物の少なくとも60質量%、特に少なくとも75質量%、殊に少なくとも90質量%の割合を占めている。前記イソブテンオリゴマー混合物は、通常は、個々のオリゴマー種の分布を有しており、ここで、3つおよび4つのイソブテン単位を有するオリゴマーが最も多く存在している。単離されて存在している個々のイソブテンオリゴマーも、本発明によるポリイソブチレンの形成をもらしうるものである。
【0017】
前記イソブテンオリゴマー混合物は、好適な措置によってin situで、重合媒体中で生成させることができる。好ましい実施態様では、本発明によるポリイソブチレンは、2〜5つのイソブテン単位の実質的にイソブテンオリゴマーからの混合物を別個に製造して、イソブテンまたはイソブテン含有C4炭化水素混合物の重合の前またはその間に重合媒体に導入することによって製造する。
【0018】
イソブテンの重合それ自体は、原則的に当業者に通常および公知の方法で実施することができる。
【0019】
イソブテンのための重合触媒として、ブレンステッド酸またはルイス酸のクラスの均一系または不均一系触媒が使用される。特に、この触媒は、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯体、例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、または三フッ化ホウ素アルコール錯体、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールもしくはsec−ブタノールによるものである。四塩化スズも、単独または助触媒として無機酸もしくはアルキルハロゲン化物、例えば、tert−ブチルクロリドと一緒に、ならびに無水塩化アルミニウムも重合触媒として使用されてよい。
【0020】
さらに、イソブテンのための重合触媒として、三ハロゲン化アルミニウム、例えば、三塩化アルミニウムもしくはハロゲン化アルキルアルミニウム、またはハロゲン化鉄、例えば、塩化鉄(III)と供与体、例えば、カルボン酸アルキルエステルまたは特にジアルキルエーテル、例えば、ジブチルエーテルとの錯体が、場合によって開始剤、例えば、アルコール、フェノールまたは水の存在下に使用されてもよい。ルイス酸、例えば、三塩化アルミニウムまたは塩化鉄(III)と供与体、例えばジブチルエーテルからの錯体が、開始剤である有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸の存在下に、イソブテンのための重合触媒として適することが示されている。
【0021】
前記重合触媒は、通常、それぞれ使用されたイソブテンの量に対して0.001〜10質量%、特に0.01〜1質量%の量で使用される。
【0022】
前記イソブテンの重合は、通常、−100〜+100℃、特に−50〜+25℃、殊に−35〜+5℃の温度で実施される。目的に応じて、10〜5000kPaの圧力で操作される。
【0023】
重合に使用されるイソブテンは、原則的に、純粋イソブテンとして使用されてよいものである。しかし、工業用C4炭化水素流から、その中に含まれているイソブテンを適切に重合することによって(場合により、この流の洗浄および/または濃縮後に)、本発明によるポリイソブチレンの製造方法が比較的有利に得られる。このC4流は、一般的に、イソブテンの他に、比較的大量の1−ブテンおよび2−ブテン、ならびに比較的少量の1,3−ブタジエンを含んでおり、その他に、相当な割合のブタンがしばしば含まれる。そのようなイソブテンを含むC4炭化水素流は、その流中に含まれている1,3−ブタジエンがほぼ除去されている限り、例えばC4ラフィネート、例えば「ラフィネート2」、特に「ラフィネート1」、イソブタン脱水素化からのC4カット、スチームクラッカーからおよびFCCクラッカー(fluid catalysed cracking)からのC4カットである。FCC製油装置からのC4炭化水素流は、「b/b」流としても公知である。さらなる好適なイソブテンを含むC4炭化水素流は、例えば、プロピレン−イソブタン共酸化の生成物流またはメタセシス装置からの生成物流であり、これは、通常、一般に行われている精製および/または濃縮後に使用される。好適なC4炭化水素流は、通常、3000質量ppm以下のブタジエンを含んでいる。1−ブテンならびにcis−2−ブテンおよびtrans−2−ブテンの存在は、イソブテンを適切に重合する場合全く重要ではない。
【0024】
一般的に、前記C4炭化水素流中のイソブテンの濃度は、30〜60質量%の範囲である。例えば、ラフィネート1は、通常、実質的に、イソブテン30〜50質量%、1−ブテン10〜50質量%、cis−2−ブテンおよびtrans−2−ブテン10〜40質量%、ブタン2〜35質量%、ならびにブタジエン20〜2000質量ppmからなる。ラフィネート1を使用する重合法では、非分岐鎖のブテンは、好適な反応条件下に、通常、実質的に不活性に挙動して、イソブテンだけが重合される。
【0025】
前記詳述した重合法は、不連続的または連続的に行われてよい。
【0026】
前記重合反応は、目的に応じて、水または過剰量の塩基性材料、例えば、気体もしくは水性アンモニアまたは水性アルカリ金属水酸化物溶液、例えば、苛性ソーダ液を添加することによって中断される。未反応のC4モノマーの分離後に、粗重合生成物は、付着している無機成分を除去するために、通常、蒸留水または脱イオン水で複数回洗浄される。高純度を達成するため、または不所望の低分子および/もしくは高分子の含分を分離するために、前記重合生成物は、真空で分別蒸留されてよい。
【0027】
本発明による重合法によって、所望の高いビニリデン二重結合含有量を有する、ならびにビニリデン二重結合の側鎖中対主鎖の末端の所望の比を有する実質的にハロゲン不含のポリイソブチレンが得られる。通常、(使用される重合触媒に応じて)フッ化物または塩化物として存在しているハロゲンの残留含有量は、たいてい150質量ppm未満、好ましくは80質量ppm未満、特に50質量ppm未満、殊に15質量ppm未満である。
【0028】
本願の対象は、本発明によるポリイソブチレンの、燃料添加剤および潤滑剤添加剤として好適な誘導体を製造するための使用でもある。
【0029】
このような燃料添加剤および潤滑剤添加剤として好適な誘導体を生成するために、目的に応じて、一般式I
【化1】
[式中、
POLは、本発明によるポリイソブチレンのn官能性の基を表し、
Aは、それぞれ1つまたは複数のアミノ官能基および/またはニトロ基および/またはヒドロキシル基および/またはメルカプタン基および/またはカルボン酸官能基またはカルボン酸誘導体官能基、特に、無水コハク酸官能基またはコハク酸誘導体官能基、および/またはスルホン酸官能基またはスルホン酸誘導体官能基、および/またはアルデヒド官能基および/またはシリル基を含む低分子の極性基を意味し、ならびに
変数nは、1〜10の数、好ましくは1〜3の数、特に1または2の数、殊に1の数を表し、ここで、n>1の場合、変数Aは、同一または異なっていてよい]
のポリイソブチレン誘導体を製造するための方法であって、
本発明によるポリイソブチレンを、前記低分子の極性基Aまたは前記低分子の極性基Aの部分構造を導入する少なくともn当量の化合物と反応させて、部分構造との反応の場合、後続反応によって低分子の極性基Aの形成を完結することを特徴とする前記方法が用いられる。
【0030】
ポリイソブチレン誘導体(I)を製造するためのこの方法の好ましい実施態様では、前記低分子の極性基Aは、以下
(a)6個までの窒素原子を有するモノアミノ基またはポリアミノ基、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有している;
(b)ニトロ基、場合により、ヒドロキシル基と組み合わされたニトロ基;
(c)ヒドロキシル基、場合により、モノアミノ基またはポリアミノ基と組み合わされたヒドロキシル基、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有している;
(d)カルボキシル基またはそのアルキル金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(e)スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
(f)ヒドロキシル基、モノアミノ基またはポリアミノ基によって末端化されており、ここで、少なくとも1個の窒素原子は塩基特性を有しているか、またはカルバメート基によって末端化されているポリオキシ−C2〜C4アルキレン基;
(g)カルボン酸エステル基;
(h)無水コハク酸またはヒドロキシ基および/もしくはアミノ基および/もしくは四級化アミノ基および/もしくはアミド基および/もしくはイミド基を有する無水コハク酸に由来する基であって、前記POLの基礎をなすポリイソブチレンの内部二重結合およびビニリデン二重結合を、無水マレイン酸を用いて熱またはハロゲン触媒作用によりマレイン化して製造された、ならびに前記ヒドロキシ基および/もしくはアミノ基および/もしくは四級化アミノ基および/もしくはアミド基および/もしくはイミド基を有する無水コハク酸に由来する基の場合、相応の後続反応により製造された前記無水コハク酸または前記無水コハク酸に由来する基、
ここで、結果として生じるカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体は、さらに、さらなる反応によって少なくとも1つのC2〜C12無水ジカルボン酸、少なくとも1つのC2〜C4アルキレンカーボネートおよび/またはホウ酸で変性されてよい;
(j)POLで置換されたフェノールと、アルデヒドと、モノアミンまたはポリアミンとのマンニッヒ反応により生成された基;
(k)フェノール基、アルキルフェノール基または(ヒドロキシアルキル)フェノール基;
(I)ヒドロキシメチル基;
(m)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のエポキシド化、および引き続き
(i)加水分解して1,2−ジオールにする、
(ii)チオールまたはポリチオールと反応させる、
(iii)アンモニア、モノアミンまたはポリアミンと反応させる、
(iv)ボランと反応させてホウ酸エステルにして、このホウ酸エステルを酸化分解して1,3−ジオールする、
(v)アルデヒドに変換する、
(vi)アルデヒドに変換して、このアルデヒドをオキシムに変換して、このオキシムを還元してアミンにする、
(vii)アルデヒドに変換し、このアルデヒドをアゾメチンカチオン(Azomethinkation)に変換して、加水分解してアミンにする、
(viii)アルデヒドに変換して、このアルデヒドをアルコールに変換するか、または
(ix)アルデヒドに変換して、このアルデヒドをシッフ塩基またはエナミンに変換して、このシッフ塩基またはエナミンを還元してアミンにする
ことによって生成された基;
(n)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のヒドロホウ素化、および後に続く最初のヒドロホウ素化生成物の酸化によって生成された基;ならびに
(o)前記POLの基礎をなすポリイソブチレンのビニリデン二重結合のヒドロシリル化によって生成された基
から選択されるものである。
【0031】
上記低分子の極性基Aの例として、以下が挙げられる:
モノアミノ基またはポリアミノ基(a)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、例えば、EP−A244616によれば、ヒドロホルミル化およびアンモニア、モノアミンまたはポリアミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンまたはテトラエチレンペンタミンによる還元的アミノ化により得られる。ポリイソブチレン誘導体(I)の製造において、比較的高い割合の内部二重結合(大部分がβ位およびγ位)を有するポリイソブチレンを出発点とする場合、塩素化およびそれに続くアミノ化によって、または前記二重結合を空気もしくはオゾンによって酸化してカルボニル化合物もしくはカルボキシル化合物にして、続いて還元的(水素化)条件下にアミノ化することによる製造経路も考えられる。ここで、アミノ化のために、アミン、例えば、アンモニア、モノアミンまたはポリアミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、またはテトラエチレンペンタミンが使用されてよい。
【0032】
さらなる好ましいモノアミノ基(a)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、平均重合度Pが5〜100であるポリイソブチレンと、窒素酸化物または窒素酸化物と酸素とからの混合物との反応生成物の水素化生成物であり、例えば、特に、WO−A−97/03946に記載されている。
【0033】
さらなる好ましいモノアミノ基(a)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、ポリイソブテンエポキシドから、アミンとの反応ならびに後に続くアミノアルコールの脱水および還元により得られる化合物であり、例えば、特に、DE−A−19620262に記載されている。
【0034】
ニトロ基(b)、場合によりヒドロキシル基と組み合わされたニトロ基を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、好ましくは、平均重合度Pが5〜100または10〜100であるポリイソブチレンと、窒素酸化物または窒素酸化物と酸素とからの混合物との反応生成物であり、例えば、特に、WO−A−96/03367およびWO−A−96/03479に記載されている。これらの反応生成物は、通常、純粋なニトロポリイソブチレン(例えば、α,β−ジニトロポリイソブチレン)および混合されたヒドロキシニトロポリイソブチレン(例えば、α−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブチレン)の混合物である。
【0035】
モノアミノ基またはポリアミノ基と組み合わされたヒドロキシル基(c)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、特に、ポリイソブチレンから得られるポリイソブテンエポキシドと、アンモニア、モノアミンまたはポリアミンとの反応生成物であり、例えば、特に、EP−A−476485に記載されている。モノアミノ基またはポリアミノ基を有していない、ヒドロキシル基(c)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、例えば、ポリイソブテンエポキシドと水との反応生成物(加水分解)、またはアルコール、例えば、メタノールもしくはエタノールとの反応生成物、またはエポキシド官能基の、例えば、リチウムアルミニウム水素化物を用いる還元の生成物である。
【0036】
カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(d)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、通常、1つまたは複数のカルボキシル基が、例えば、無水マレイン酸との反応により導入されたポリイソブチレンであり、それにしたがって、前記カルボキシル基は、全体または部分的にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩になり、カルボキシル基の残留基は、アルコールまたはアミンと反応する。
【0037】
スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(e)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、通常、1つまたは複数のスルホン酸基が導入されたポリイソブチレンであり、それにしたがって、スルホン酸基は、全体または部分的にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩になり、カルボキシル基の残留基は、アルコールまたはアミンと反応する。類似のスルホコハク酸アルキルエステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、EP−A−639632に記載されている。そのような化合物は、主に、弁の摩耗を防止するために用いられ、有利には、通常の燃料洗剤、例えば、ポリ(イソ)ブチレンアミンまたはポリエーテルアミンと組み合わされて使用することができる。
【0038】
ポリオキシ−C2〜C4アルキレン基(f)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、好ましくはポリエーテルまたはポリエーテルアミンであり、これらは、ヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリイソブチレンと、ヒドロキシル基またはアミノ基1個あたり1〜30モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応により、および(ポリエーテルアミンの場合)、それに続くアンモニア、モノアミンまたはポリアミンによる還元的アミノ化により得られるものである。C2〜C60アルカノール、C6〜C30アルカンジオール、モノ−C2〜C30アルキルアミンまたはジ−C2〜C30アルキルアミン、C1〜C30アルキルシクロヘキサノールまたはC1〜C30アルキルフェノールと、ヒドロキシル基またはアミノ基1個あたり1〜30モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの類似の反応生成物は、EP−A−310875、EP−A−356725、EP−A−700985およびUS−A−4877416に記載されている。
【0039】
カルボン酸エステル基(g)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸とヒドロキシル基含有ポリイソブテンとからのエステルであるのが好ましい。長鎖アルコールまたはポリオールと、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸との類似の反応生成物は、DE−A−3838918に記載されている。モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸として、脂肪族酸または芳香族酸が使用されてよい。そのようなエステルの一般的な代表物質は、相応のアジピン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステルおよびトリメリット酸エステルである。
【0040】
無水コハク酸(h)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、特に、ポリイソブテニル無水コハク酸であり、これは、ポリイソブチレンと無水マレイン酸とを、熱または相応して塩素化されたポリイソブチレンにより反応させて得られるものである。ここで、使用されるポリイソブチレンは、1当量(「モノマレイン化(Monomaleinierung)」)と、2当量の無水マレイン酸と(「ビスマレイン化(Bismaleinierung)」)、または1<k<2の当量の無水マレイン酸、例えば、1.05〜1.3当量の無水マレイン酸と反応しうる。
【0041】
ヒドロキシ基および/またはアミノ基および/または四級化アミノ基および/またはアミド基および/またはイミド基を有する無水コハク酸に由来する基(h)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、好ましくはポリイソブテニル置換された無水コハク酸の相応の誘導体、および特に、ポリイソブテニル無水コハク酸の相応の誘導体であり、これらは、比較的高い割合の内部二重結合を有するポリイソブチレンと無水マレイン酸とを、熱または塩素化されたポリイソブチレンにより反応させて得られるものである。ここで、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールまたはポリエーテルを有する誘導体が特に重要であり、この誘導体は、前記低分子アルコールのC2〜C4アルキレンオキシドによるアルコキシル化によって製造されたものである。ヒドロキシ基、場合により、四級化アミノ基、アミド基および/またはイミド基を有する前記基は、例えば、アミド官能基の他にさらに遊離アミン基を有しているカルボン酸基、モノアミンの酸アミド、ジアミンもしくはポリアミンの酸アミド、酸官能基およびアミド官能基を有するコハク酸誘導体、モノアミンを有するカルボン酸イミド、イミド官能基の他にさらに遊離アミン基を有しているジアミンもしくはポリアミンを有するカルボン酸イミド、またはジアミンまたはポリアミンと2つのコハク酸誘導体との反応により形成されるジイミドである。このような化合物は、燃料添加剤としてUS−A−4849572に記載されている。
【0042】
四級化アミノ基を有する無水コハク酸に由来する基を含むポリイソブチレン誘導体(I)とは、特に四級化窒素化合物であって、無水物と反応性の酸素または窒素を含有する少なくとも1個の基と、さらに、少なくとも1個の四級化可能なアミノ基とを含む化合物の、ポリイソブテニル無水コハク酸への付加、および後に続く四級化、特にエポキシドによる四級化によって、特に遊離酸の非存在下に得られる前記四級窒素化合物であると理解され、例えば、WO2012/004300に記載されている。無水物と反応性の酸素または窒素を含有する少なくとも1個の基、およびさらに、少なくとも1個の四級化可能なアミノ基を有する化合物として、特に、少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基および少なくとも1個の第三級アミノ基を有するポリアミンが好適である。そのような四級化窒素化合物は、例えば、40℃で得られるポリイソブテニル無水コハク酸の反応生成物であり、ここで、ポリイソブテニル基は、一般的に、Mnを1000有しており、ポリイソブテニルコハク酸半アミドである3−(ジメチルアミノ)−プロピルアミンによって、およびそれに続いてスチレンオキシドによって、遊離酸の非存在下に70℃にて四級化される。
【0043】
基(h)において結果として生じるカルボン酸アミド誘導体およびカルボン酸イミド誘導体は、特に潤滑剤配合物中で使用する場合、例えば前記誘導体またはそれを含む潤滑剤配合物と接触するモーター、連結機械または装置のシーリングに組み込まれているエラストマーの膨張挙動(Quellverhalten)を向上させるために、さらに、少なくとも1つのC2〜C12無水ジカルボン酸、例えば無水マレイン酸もしくは無水フタル酸で、少なくとも1つのC2〜C4アルキレンカーボネート、例えば炭酸エチレンもしくは炭酸プロピレンで、および/またはホウ酸で変性されてよい。
【0044】
置換されたフェノールと、アルデヒドと、モノアミンまたはポリアミンとのマンニッヒ反応によって生成された基(j)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、ポリイソブチル置換されたフェノールと、アルデヒド、例えばオリゴマーもしくはポリマーの形態として、例えばパラホルムアルデヒドとして使用されてもよいホルムアルデヒドと、モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンもしくはモルホリン、またはポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンもしくはジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物であるのが好ましい。Mnが300〜5000である高反応性ポリイソブテンをベースにするこのような「ポリイソブテンマンニッヒ塩基」は、EP−A−831141に記載されている。
【0045】
フェノール基、アルキルフェノール基または(ヒドロキシアルキル)フェノール基(k)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、特に、ポリイソブチレンと、1つまたは複数の相応のフェノールとの反応、場合により、後に続くアルデヒドとの反応によって形成される基(j)中のポリイソブチレンマンニッヒ塩基に対する前駆体である。そのために、ポリイソブチレンは、例えば、置換されていないフェノール、o−クレゾール、m−クレゾールまたはp−クレゾール、キシレノール、ヒドロキノン、ピロカテキンまたはレゾルシノールと反応させることができる。そのようにして形成されたポリイソブチル置換されたフェノールは、例えばさらに、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはパラアルデヒドによって、ポリイソブチル置換されたヒドロキシアルキルフェノール、特に、ポリイソブチル置換されたヒドロキシメチルフェノール、例えば1−ヒドロキシメチル−4−ポリイソブチルフェノールに変換することができる。
【0046】
ヒドロキシメチル基(I)を含むポリイソブチレン誘導体(I)は、特に、EP−A244616による高反応性ポリイソブテンの、一酸化炭素および水素の存在下での、好適なヒドロホルミル化触媒、例えば、ロジウム触媒またはコバルト触媒を用いる、80〜200℃の温度および600barまでのCO/H2圧力でのヒドロホルミル化における中間生成物である。ここで、そのようにして生成されたヒドロキシメチルポリイソブチレンは、混合生成物として、アルデヒド基を含むポリイソブチレンと一緒に生じうる。
【0047】
ポリイソブチレン誘導体(I)に含まれていてよい、(i)〜(ix)で得られる基(m)に挙げられた基およびその生成は、ポリイソブチレンエポキシドの後続反応の範囲において、例えば、WO2007/025700に詳細に記載されており、以下に表される。
【0048】
前記エポキシドは、例えば、水と加水分解して1,2−ジオールになるか、またはチオールもしくは第一級アミンもしくは第二級アミンと反応させることができ、ここで、特に、グリコールチオエーテルおよびアミンが得られる。
【0049】
1分子あたり平均して少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.9のエポキシ基を有するポリイソブチレンと、ポリオールまたは特にポリチオール、例えば、トリメチロールプロパン−トリス(3−メルカプトプロピオネート)またはペンタエリトリトール−テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、またはポリアミン、例えば、ジエチレントリアミンとの反応によって、弾性特性および減衰特性のゆえに有利である網目構造が得られる。
【0050】
好ましい後続反応では、エポキシドをアルデヒドに転位させ、これは、例えば、触媒下に、アルモシリケート、例えば、ゼオライト、酸性の酸化アルミニウム、ルイス酸、例えば、アルミニウム塩または亜鉛塩、例えば、臭化亜鉛、またはプロトン酸、例えば、硫酸を用いて行うことができる。アルデヒドは、その側で、非常に有益な生成物のための多様な出発材料である。ポリイソブチレンエポキシドのアルデヒドへの変換は、例えば、WO90/10022およびUS6,303,703またはOrganikum、20th edition、1999、Wiley−VCH、615ページに記載されている。
【0051】
アルデヒドをアンモニアまたは第一級アミンによりイミンに変換させて、このイミンをアミンに還元し、特に触媒作用により水素化することができる。好適な第一級アミンは、例えば、ジエチレントリアミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、トリ(メチルエチレン)テトラミン、トリ(エチルエチレン)テトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、アルキル置換されたo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンおよびp−フェニレンジアミン、ジメチルアミノメチルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジメチルアミノヘプチルアミン、ジエチルアミノメチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノアミルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、メチルプロピルアミノアミルアミン、プロピルブチルアミノエチルアミン、ジメチレントリアニリン、メチレンジアニリン、ポリメチレンアニリンおよびポリアルキルメチレンアニリンである。アルデヒドと第一級アミンとの反応、および得られたイミンを水素化してポリイソブテニルアミンにすることは、WO90/10022に記載されている。
【0052】
アルデヒドをオキシムに変換して、このオキシムをアミンに還元することもできる。ヒドロキシルアンモニウム塩の中和により得られるヒドロキシルアミンが目的に応じて使用される。このヒドロキシルアミンは、アルデヒドと反応してオキシムになる。次に、このオキシムを触媒による水素化によりアミンに還元する。この水素化は、好適な温度及び圧力で水素化触媒の存在下に行われる。好適な触媒は、例えば、ラネーニッケル、ニッケル担持ケイソウ土、銅クロム、白金担持カーボン、パラジウム担持カーボンなどである。前記反応は、例えば、US6,303,703に記載されている。
【0053】
さらなる好ましい実施態様では、アルデヒドはロイカート反応においてアゾメチンカチオンに変換される。ロイカート反応を実施するためには種々の試薬が好適であり、ギ酸アンモニウムが好ましい。次に、前記アゾメチンカチオンは、加水分解によってアミンに変換することができる。この加水分解は、好適な方法で希釈された塩酸によって適度に高められた温度で実施されてよい。ここで、相間移動触媒、例えば、硝酸トリカプリルメチルアンモニウムが使用されるのが好ましい。前記反応は、例えば、US6,303,703に記載されている。
【0054】
前記エポキシドは、さらに、ボランと反応させ、続いて、形成されたホウ酸エステルを酸化分解して、1,3−ジオール、例えば、2−ポリイソブテニル−1,3−プロパンジオールに変換することができる。好適なボランは、例えば、ジボラン(B26)ならびにアルキルボランおよびアリールボランである。このようなボランが、in situでも水素化ホウ素および酸、多くの場合BF3エーテラートから製造できることは当業者によく知られている。ボランとの反応は、好適には、ボラン配位溶媒中で行われる。その例は、開鎖エーテル、例えば、ジアルキルエーテル、ジアリールエーテルまたはアルキルアリールエーテル、ならびに環状エーテル、例えば、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンであるが、トルエン、シクロヘキサンおよび塩化メチレンの溶媒も好適である。1,3−ジオールへの酸化分解は、例えば、過酸化水素を用いて塩基の存在下に、例えば50〜75℃に温めながら行われてよい。そのための好適な溶媒は、エーテルまたはエーテルと炭化水素との混合物である。
【0055】
ポリイソブチレン誘導体(I)に含まれていてよい、ヒドロホウ素化反応から結果として生じる基(n)およびその生成は、例えば、WO2004/067583に詳細に記載されている。ヒドロホウ素化の一般的な根拠は、J.March、Advanced Organic Chemistry、4th edition、Verlag J.Wiley&Sons、783〜789ページに記載されている。
【0056】
前記好適なボラン源には、特に、ボラン(BH3)それ自体が含まれ、これは、通常、その二量体の形態(B26)で現れる。前記ボランは、目的に応じて、in situで好適な前駆体、特に、BH4アニオンのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、三ハロゲン化ホウ素との反応により生成される。ここで、一般的に、水素化ホウ素ナトリウムおよび三フッ化ホウ素エーテラートが使用される。
【0057】
前記ポリイソブチレンのビニリデン二重結合のための好ましいヒドロホウ素化試薬は、ボラン源の反応生成物であり、例えば、in situでBH4アニオンのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から、三ハロゲン化ホウ素によって生成されたボランと、ボラン1モルあたり、分子量250未満のアルケン0.5〜1.8当量、例えば、2−メチル−2−ブテンまたは1−メチルシクロヘキセンとの反応生成物である。
【0058】
後に続く、最初のヒドロホウ素化生成物の酸化は、一般的に、アルカリ性の過酸化水素によって行われて、好ましくは、不飽和イソブテンポリマーの逆マルコフニコフ−水和反応生成物に形式上相当するアルコールが得られる。代替的に、最初のヒドロホウ素化生成物として得られるポリイソブチルボランは、水酸化物イオンの存在下に臭素との酸化反応に供されて、臭化物を得ることができる。
【0059】
ポリイソブチレン誘導体(I)に含まれていてよい、ヒドロシリル化反応から結果として生じる基(o)およびその生成は、例えば、WO2003/074577に詳細に記載されている。そのために、ポリイソブチレンをシリル化触媒の存在下にシランと反応させて、少なくとも部分的にシリル基が官能基化されたポリイソブチレンを得ることができる。シリル化ポリイソブチレンは、さらにまた、新規の生成物にするための後続反応のための、例えば、そのガラス接着性が重要である湿分硬化性シーリング材および配合物のための非常に有益な出発材料である。
【0060】
好適なヒドロシリル化触媒は、特に、遷移金属触媒であり、ここで、遷移金属は、Pt、Pd、Rh、RuおよびIrから選択され、例えば、微細分散した白金、塩化白金、ヘキサクロロ白金酸、テトラメチルジビニルジシロキサン−白金錯体、RhCl[P(C6533、RhCl3、RuCl3またはIrCl3である。好適なヒドロシリル化触媒は、さらに、ルイス酸、例えば、三塩化アルミニウムまたは四塩化チタンならびに過酸化物である。
【0061】
好適なシランは、例えば、ハロゲン化シラン、例えば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシランおよびトリメチルシロキシジクロロシラン、アルコキシシラン、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチル−1,1−ジメトキシテトラシロキサンならびにアシルオキシシランである。
【0062】
ヒドロシリル化での反応温度は、好ましくは0〜140℃の範囲、特に40〜120℃である。前記反応は、通常、標準圧で実施されるが、しかし、高められた圧力、例えば、1.5〜20barまたは減圧、例えば200〜600mbarで行われてもよい。前記反応は、溶媒を使用せずに行われるか、または好適な不活性溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフランもしくはクロロホルムの存在下に行われてよい。
【0063】
好ましい実施態様では、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む低分子の極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための本発明による方法は、本発明による高反応性ポリイソブチレンを、好適な触媒を使用して一酸化炭素および水素の存在下にヒドロホルミル化し、続いて少なくともn当量のアンモニアまたはモノアミンまたはポリアミンの存在下に還元的アミノ化するようにして実施される。
【0064】
高反応性ポリイソブテンの前記ヒドロホルミル化および前記還元的アミノ化は、EP−A244616に記載されている。ここで、前記ヒドロホルミル化は、一酸化炭素および水素の存在下に、通常、好適なヒドロホルミル化触媒、例えば、ロジウム触媒またはコバルト触媒を用いて、80〜200℃の温度および600barまでのCO/H2圧力で実施される。それに続く、前記得られたオキソ生成物(ヒドロキシメチルポリイソブテン、または炭素数が同じヒドロキシメチルポリイソブテンとポリイソブテンアルデヒドとの混合生成物)の還元的アミノ化は、通常、80〜200℃の温度および600barまで、特に80〜300barの水素圧で行われる。
【0065】
さらなる好ましい実施態様では、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む低分子の極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための本発明による方法は、本発明による高反応性ポリイソブチレンを、好適な活性化剤、特に塩素で処理して、続いてn当量のアンモニアまたはモノアミンまたはポリアミンと反応させるようにして実施される。
【0066】
さらなる好ましい実施態様では、一般式I[式中、Aは、カルボン酸誘導官能基(Carbonsaeurederivatfunktion)、特に、カルボン酸イミド官能基を含む低分子の極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための本発明による方法は、本発明による高反応性ポリイソブチレンとエチレン性不飽和C4〜C12ジカルボン酸またはその反応性誘導体、特に無水マレイン酸とを熱またはハロゲン触媒作用により反応させ、場合により、続いてモノアミンもしくはポリアミンによって相応のカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体に変換するようにして実施され、ここで、結果として生じるカルボン酸アミド誘導体またはカルボン酸イミド誘導体は、さらに、さらなる反応によって少なくとも1つのC2〜C12無水ジカルボン酸、少なくとも1つのC2〜C4アルキレンカーボネートおよび/またはホウ酸で変性されてよい。
【0067】
さらなる好ましい実施態様では、一般式I[式中、Aは、アミノ官能基を含む低分子の極性基を意味する]のポリイソブチレン誘導体を製造するための本発明による方法は、本発明による高反応性ポリイソブチレンをフェノールによって相応のアルキルフェノールに変換し、続いてこれをアルデヒドと、第一級または第二級アミンとの反応によって相応のマンニッヒ付加物にするようにして実施される。
【0068】
側鎖中にビニリデン二重結合を多く含有する新規の本発明によるポリイソブチレンは、驚くほどにより優れた性能を有する、燃料添加剤および潤滑剤添加剤として好適な誘導体の生成を可能にするものである。特に、この高反応性ポリイソブチレンから、慣用の高反応性ポリイソブテンから生成された相応の誘導体と比べて改善された性能特性、特に、オットーエンジンの吸気弁および噴射ノズルにおいて改善された洗浄作用および清浄維持作用を有している誘導体を製造することができる。
【0069】
以下の例は、本発明を説明するものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
例1:本発明によるポリイソブチレンの製造
連続運転式重合装置であって、容量が800mlであり、機械的撹拌器を備えるジャケット冷却式管型反応器、出発材料の予備冷却器を備える出発材料供給管、気体状の三フッ化ホウ素のための導入管、アルコール成分のための滴下漏斗および反応内容物を連続的に排出するための吸引コネクション(Ansaugstutzen)からなる前記重合装置に、下記組成のイソブテン含有出発材料流であって、前記反応器に供給する前に下記組成のイソブテンオリゴマー流100g/hが添加された前記出発材料流9.0l/h、三フッ化ホウ素8.0g/h、およびメタノール50体積%とイソプロパノール50体積%とからの混合物8.0g/hを計量供給した。重合は、反応器内部温度−17℃〜−20℃で実施した。流量(=出発材料供給量=粗生成物排出量)は、約9.06l/hであった。
【0071】
ラフィネート1として分類される出発材料流(密度:0.6g/l)の組成は、以下の通りである:
【表1】
【0072】
前記イソブテンオリゴマー流の組成(平均分子量:202.6g/mol)は、以下の通りである:
【表2】
【0073】
ここで、重合媒体中に存在しているイソブテンオリゴマー混合物に含まれるビニリデン二重結合対使用されたイソブテンモノマーの二重結合のモル比は、1.2:100であった。
【0074】
後処理のために、まず、まだ常温の反応排出物を70℃の高温の過剰量の精製水で処理して強く混合した。ここで、水の量は、前記2つの相の混合温度が20℃であるように選択した。ここで、前記溶媒の一部がすでに蒸発した。20分の滞留時間の後、上側の有機相を分離して、分析のために、ロータリーエバポレーターで生成物試料から残りの溶媒を除去した(油浴温度:真空30mbarで150℃、30分間)。
【0075】
GPCによって測定した数平均分子量(Mn)975ダルトンおよび多分散度1.83を有するポリイソブチレンが得られた。ビニリデン二重結合の総含有量は、81.8モル%であり、そのうち、末端ビニリデン二重結合(ポリマー主鎖の末端のα−二重結合)の含有量は、71.8モル%であり、側鎖中のビニリデン二重結合の含有量は、10.0モル%であった(それぞれ1H−NMRを用いて測定);それによって、すべてのビニリデン二重結合の12.2%は、側鎖で位置が確認された。残りの18.2モル%の二重結合は、三置換二重結合(14.1モル%)および四置換二重結合(4.1モル%)に分類することができた。
【0076】
例2:本発明によらないポリイソブチレンの製造
上記例1を、前記イソブテンオリゴマー流を10g/hのみ供給して実施し、GPCによって測定した数平均分子量(Mn)993ダルトンおよび多分散度1.85を有するポリイソブチレンが生じた。ビニリデン二重結合の総含有量は、83.9モル%であり、そのうち、末端ビニリデン二重結合(ポリマー主鎖の末端のα−二重結合)の含有量は、78.3モル%であり、側鎖中のビニリデン二重結合の含有量は5.6モル%であり(それぞれ1H−NMRを用いて測定)、それによって、すべてのビニリデン二重結合の7.2%は、側鎖で位置が確認された。
【0077】
前記重合媒体中に存在しているイソブテンオリゴマー混合物に含まれているビニリデン二重結合対使用されたイソブテンモノマーの二重結合のモル比は、0.1:100であった。
【0078】
例3:本発明によらないポリイソブチレンの製造
上記例1を、別個のイソブテンオリゴマー流を供給せずに実施し、GPCによって測定した数平均分子量(Mn)1017ダルトンおよび多分散度1.86を有するポリイソブチレンが生じた。ビニリデン二重結合の総含有量は、84.3モル%であり、そのうち、末端ビニリデン二重結合(ポリマー主鎖の末端のα−二重結合)の含有量は79.8モル%であり、側鎖中のビニリデン二重結合の含有量は4.5モル%であり(それぞれ1H−NMRを用いて測定)、それによって、すべてのビニリデン二重結合の5.3%は、側鎖で位置が確認された。