(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)で表される電解重合性化合物が(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、スチレン化合物またはビニル化合物であり、前記式(2)で表される電解重合性化合物がアセチレン化合物であり、前記式(3)で表される電解重合性化合物がチオフェン化合物、フラン化合物またはピロール化合物であり、前記式(4)で表される電解重合性化合物がアニリン化合物、チオフェノール化合物またはフェノール化合物であり、前記式(5)で表される電解重合性化合物がシクロプロパン化合物またはシクロブタン化合物である請求項1に記載の全固体二次電池。
前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記無機固体電解質層の少なくとも1層がさらにバインダーを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の全固体二次電池を少なくとも1回以上充電または放電することにより電解重合性化合物を電解酸化重合または電解還元重合させてなる全固体二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層、無機固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池であって、正極活物質層、無機固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が、式(1)〜(5)のいずれかで表される、電解酸化重合または電解還元重合可能な電解重合性化合物と、無機固体電解質を有する。
以下、その好ましい実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側から順に述べると、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を有する。各層は互いに接触して、積層した構造をとっている。このような構造により、充電時には、負極側に電子(e
−)が供給され、そこにリチウムイオン(Li
+)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li
+)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を例示しているが、放電によりこれが点灯するようにされている。本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層の成形材料として用いることが好ましく、中でも、負極活物質層または正極活物質層の成形に用いることが好ましい。
【0029】
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されないが、一般的な電池の寸法を考慮すると1,000μm以下が好ましく、1〜1,000μmがより好ましく、3〜400μmがさらに好ましい。
【0030】
以下、本発明の全固体二次電池の製造に好適に用いることができる、固体電解質組成物から説明する。
本発明の固体電解質組成物は、電解酸化重合または電解還元重合可能な、後述の式(1)〜(5)のいずれかで表される分子量が1000未満の電解重合性化合物と、無機固体電解質を有する。
本発明の固体電解質組成物は、全固体二次電池における固体電解質用に好ましく用いられ、無機固体解質用により好ましく用いられる。
【0031】
<固体電解質組成物>
(無機固体電解質)
無機固体電解質とは、無機物質からなる固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。この観点から、後述の電解質塩(支持電解質)であるリチウム塩との区別を考慮し、イオン伝導性の無機固体電解質と呼ぶことがある。
【0032】
無機固体電解質は、有機物(炭素原子)を含まないことから、有機固体電解質、PEO(ポリエチレンオキサイド)などに代表される高分子電解質、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)などに代表される有機電解質塩とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離している無機電解質塩(LiPF
6、LiBF
4、LiFSI〔リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〕、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属を含み、この金属イオン(好ましくはリチウムイオン)の伝導性を有するものであれば特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0033】
本発明に用いられる無機固体電解質は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する。上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。
【0034】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質(以下、単に硫化物固体電解質とも称す)は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。例えば下記式(A)で示される組成式を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
【0035】
Li
a1M
b1P
c1S
d1 式(A)
【0036】
式(A)中、Mは、B、Zn、Si、Cu、GaおよびGeから選択される元素を表す。a1〜d1は各元素の組成比を表し、a1:b1:c1:d1は、それぞれ1〜12:0〜1:1:2〜9を満たす。
【0037】
式(A)において、Li、M、PおよびSの組成比は、好ましくはb1が0であり、より好ましくはb1=0でかつa1、c1およびd1の組成が、a1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0でかつa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0038】
硫化物系固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。
【0039】
Li−P−S系ガラスおよびLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、Li
2SとP
2S
5との比率は、Li
2S:P
2S
5のモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜75:25である。Li
2SとP
2S
5との比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高くすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10
−2S/m以上、より好ましくは0.1S/m以上とすることができる。
【0040】
具体的な化合物例としては、例えばLi
2Sと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。
より具体的には、例えば、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−GeS
2、Li
2S−GeS
2−ZnS、Li
2S−Ga
2S
3、Li
2S−GeS
2−Ga
2S
3、Li
2S−GeS
2−P
2S
5、Li
2S−GeS
2−Sb
2S
5、Li
2S−GeS
2−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2、Li
2S−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−LiI、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
10GeP
2S
12が挙げられる。なかでも、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−GeS
2−Ga
2S
3、Li
2S−GeS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4からなる結晶質およびまたは非晶質の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。
このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法は、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができる。なかでも、常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるため、メカニカルミリング法が好ましい。
【0041】
硫化物固体電解質は、例えば、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献等を参考にして合成することができる。
【0042】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質(以下、単に酸化物系固体電解質とも称す)は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属を含み、イオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
【0043】
具体的には、例えば、Li
xaLa
yaTiO
3〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、Li
7La
3Zr
2O
12(LLZ、ランタンジルコン酸リチウム、)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi
3.5Zn
0.25GeO
4、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi
2P
3O
12、Li
1+xb+yb(Al,Ga)
xb(Ti,Ge)
2−xbSi
ybP
3−ybO
12(ただし、0≦xb≦1、0≦yb≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLi
7La
3Zr
2O
12が挙げられる。
またLi、PおよびOを含むリン化合物も好ましい。例えば、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸リチウムの酸素原子の一部を窒素原子で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれる少なくとも1種を示す)が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれる少なくとも1種を示す)等も好ましく用いることができる。
その中でも、Li
1+xb+yb(Al,Ga)
xb(Ti,Ge)
2−xbSi
ybP
3−ybO
12(ただし、0≦xb≦1、0≦yb≦1である)は、高いリチウムイオン伝導性を有し、化学的に安定で取り扱いが容易なため、好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
酸化物系固体電解質のリチウムイオン伝導度は、1×10
−4S/m以上が好ましく、1×10
−3S/m以上がより好ましく、5×10
−3S/m以上がさらに好ましい。
【0045】
無機固体電解質の平均粒子径は特に限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。上限としては、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。無機固体電解質の平均粒子径は、後述の実施例の項で示した方法により測定する。
【0046】
無機固体電解質の固体電解質組成物中での濃度は、電池性能と界面抵抗の低減もしくは維持効果の両立を考慮したとき、固形成分100質量%において、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において固形成分とは、170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分を言う。典型的には、後記分散媒体以外の成分を指す。
【0047】
(電解重合性化合物)
本発明に用いられる電解重合性化合物は、電解酸化重合または電解還元重合可能な、下記式(1)〜(5)のいずれかで表される分子量が1000未満の化合物である。ただし、電解重合性化合物はラジカル化合物ではない。
【0048】
ここで、電解重合性化合物とは、全固体二次電池の充放電時に、電解酸化重合または電解還元重合される化合物であり、好ましくは、全固体二次電池の充放電時に負極活物質層において、1.5V以上の充放電電位(Li/Li
+基準)から還元重合が開始されて重合体を生成する化合物であるか、全固体二次電池の充放電時に正極活物質層において、4.5V未満の充放電電位(Li/Li
+基準)から酸化重合が開始されて重合体を生成する化合物である。
【0049】
具体的には、後述する実施例の試験No.101の二次電池用電極シートまたは全固体二次電池において、正極層、固体電解質層負極層に含有する本発明の電解重合性化合物A−1、A−2を確認したい化合物に置き換えた二次電池用電極シートまたは全固体二次電池を作製し、1回の充電または1回の放電を行った後、全固体二次電池から正極層、固体電解質層負極層を取り出し、各層の硬化度を測定し、充電もしくは放電前の硬化度と比較するか、または
1H−NMR、
13C−NMR等の機器分析を行うことで確認できる。
本発明では、後述する実施例で作製した試験No.101〜110の二次電池用電極シートまたは全固体二次電池に使用した電解重合性化合物は、いずれも電解重合していることを確認している。
【0051】
式(1)〜(5)中、R
11〜R
14、R
21、R
22、R
31〜R
34、R
41〜R
45およびR
51〜R
54は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、ホルミル基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。X
1は酸素原子、硫黄原子またはNR
35を表す。R
35は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。X
2は、OR
46、SR
47またはNR
48R
49を表す。R
46〜R
49は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。X
3はメチレン基またはエチレン基を表す。
R
11とR
12、R
13とR
14、R
11とR
13、R
12とR
14、R
21とR
22、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、X
1とR
31、X
1とR
34、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
44とR
45、X
2とR
41、X
2とR
45およびX
3とR
51は互いに単結合または連結基を介して環を形成しても良い。また、R
11〜R
14、R
21、R
22、R
31〜R
35、R
41〜R
49およびR
51〜R
54の置換基はさらに置換基を有しても良い。
【0052】
ここで、R
11〜R
14、R
21、R
22、R
31〜R
35、R
41〜R
49およびR
51〜R
54の置換基が有してもよい置換基とは、置換基における1つの水素原子を、単結合またはヘテロ原子を含有してもよい多価の連結基に置き換え、その先に、式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物が結合する置換基を意味する。
また、後述の置換基Tを有する置換基でもよい。
【0053】
R
11〜R
14、R
21、R
22、R
31〜R
34、R
41〜R
45およびR
51〜R
54における置換基について、以下に説明する。
【0054】
アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル、ステアリル、が挙げられる。
なお、後述の置換基Tで置換されたアルキル基としては、カルボキシ置換アルキル基(8−カルボキシオクチルなど)や、ハロゲン化アルキル基(置換するハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましく、例えば、トリフルオロメチル)が挙げられる。
【0055】
アルケニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。具体的には、ビニル、アリル、オレイル、1,3−ジブテニル、スチリル、リノレニルが挙げられる。
【0056】
アルキニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。具体的には、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル、2−ピリジニルエチニルが挙げられる。
【0057】
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。具体的には、フェニル、1−ナフチル、トリル、キシリル、アントラセニル、ピレニルが挙げられる。
なお、後述の置換基Tで置換されたアリール基としては、アルコキシアリール基(4−メトキシフェニルなど)や、ハロゲン化アリール基(置換するハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましく、例えば、2,4,6−トリフルオロフェニル)が挙げられる。
【0058】
ヘテロアリール基は、環構成原子に、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有する5員環また6員環が好ましく、炭素数は1〜10が好ましい。ヘテロアリール環は、具体的には、ピロール、ピリジン、フラン、ピラン、チオフェン挙げられる。また、ベンゼン環やヘテロ環が縮環していてもよい。
【0059】
アルキルカルボニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。具体的には、アセチル、プロピオニルが挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。具体的には、アセトキシが挙げられる。
アルキルオキシカルボニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。具体的には、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニルが挙げられる。
【0060】
カルバモイル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。具体的には、カルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイルが挙げられる。
アシルアミノ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。具体的には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチノイルアミノが挙げられる。
【0061】
アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシが挙げられる。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。具体的には、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシが挙げられる。
【0062】
アミノ基の炭素数は、0〜10が好ましく、0〜8がより好ましく、0〜6がさらに好ましい。具体的には、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−エチニルアミノ、アニリノ、4−ピリジルアミノが挙げられる。
【0063】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0064】
R
11〜R
14は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、カルボキシ基、シアノ基またはハロゲン原子がより好ましい。
R
21およびR
22は、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、シアノ基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、カルボキシ基、シアノ基またはハロゲン原子がより好ましい。
【0065】
R
31〜R
34は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましい。
R
41〜R
45は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基またはアミノ基がより好ましい。
R
51〜R
54は、水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基またはハロゲン原子がより好ましい。
【0066】
R
35におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、具体的には、ベンジル、ドデシル、ステアリルが挙げられる。
アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜12がさらに好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニルが挙げられる。
【0067】
R
35は、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ステアリルまたはベンジルが好ましく、オクチル、ドデシル、ステアリルまたはベンジルがより好ましく、ベンジルまたはドデシルがさらに好ましい。
X
1は硫黄原子またはNR
35(R
35は水素原子またはアルキル基が好ましい)が好ましく、硫黄原子がより好ましい。
【0068】
R
46〜R
49におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、具体的には、ベンジル、メチル、エチル、オクチルが挙げられる。
アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜12がさらに好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニルが挙げられる。
【0069】
R
46〜R
49は、水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
X
2はOH、SHまたはNH
2が好ましく、NH
2がより好ましい。
【0070】
R
11とR
12、R
13とR
14、R
11とR
13、R
12とR
14、R
21とR
22、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、X
1とR
31、X
1とR
34、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
44とR
45、X
2とR
41、X
2とR
45およびX
3とR
51が互いに結合して形成する環は、ヘテロ原子を含有しても良い5員環または6員環であり、例えば、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキサノン環、シクロペンタン環、シクロペンタノン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロピレン環、エチレンカーボネート環が挙げられ、エチレンカーボネート環、ベンゼン環、シクロヘキサン環が好ましく、ベンゼン環、シクロヘキサン環がより好ましい。
環を形成する場合に介する連結基は、後述の連結基Lが挙げられ、2価の有機基、なかでもアルキレン基、カルボニル基が好ましい。
なお、環を形成する際に、単結合を介することが好ましい。
【0071】
本発明に用いられる電解重合性化合物は、架橋点を増やし、全固体二次電池における活物質と無機固体電解質との高い結着性を付与する点で、下記式(1a)〜(5a)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0073】
式(1a)〜(5a)中、R
11a〜R
13a、R
21a、R
31a、R
41aおよびR
51a〜R
53aはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、ホルミル基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。X
11は酸素原子、硫黄原子またはNR
35aを表す。R
35aは水素原子、アルキル基、アリール基または−L
1−Qを表す。X
21は、OR
46a、SR
47aまたはN(R
48a)(R
49a)を表す。R
46a〜R
49aはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または−L
1−Qを表す。X
31はメチレン基またはエチレン基を表す。R
11aとR
12a、R
11aとR
13a、X
11とR
31a、X
21とR
41aおよびX
31とR
51aは互いに単結合または連結基を介して環を形成しても良い。R
31a、R
41aが複数存在する場合には、互いに単結合または連結基を介して環を形成しても良い。L
1は単結合または2価の連結基を表し、Qは単結合または2価〜8価の有機基を表す。nは2〜8の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、pは0〜5の整数を表し、qは0または1を表し、rは0または1を表す。ただし、q=0の場合、X
11がNR
35aであって、かつR
35aが−L
1−Qであり、r=0の場合、R
46a、R
47a、および、R
48aまたはR
49aが−L
1−Qである。
【0074】
なお、R
35aおよびR
46a〜R
49aにおける−L
1−Qは、上記式(3a)および(4a)に記載の−L
1−Qと同様に、Qを介してn付き大括弧[]で表される構造と結合する。例えば、式(3a)において、X
11がN(−L
1−Q)である場合、以下の構造を取ることができる。
【0076】
上記構造において、R
31a、L
1、Q、nおよびmは、式(3a)におけるR
31a、L
1、Q、nおよびmと同義である。
【0077】
R
11a〜R
13a、R
21a、R
31a、R
41aおよびR
51a〜R
53aにおける置換基は、式(1)〜(5)のR
11〜R
14、R
21、R
22、R
31〜R
34、R
41〜R
45およびR
51〜R
54における置換基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0078】
R
35aおよびR
46a〜R
49aにおけるアルキル基およびアリール基は、式(1)〜(5)のR
35およびR
46〜R
49におけるアルキル基およびアリール基と同義であり、好まし範囲も同じである。
【0079】
X
11〜X
31は、式(3)〜(5)のX
1〜X
3と同義であり、好まし範囲も同じである。
【0080】
L
1における2価の連結基は、後述の連結基Lが挙げられ、アルキレンオキシ基、アルキレンカルボニル基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルバミド基、アルキレン基またはアリーレン基が好ましく、アルキレン基またはアリーレン基がより好ましい。
【0081】
L
1は、なかでも単結合、アルキレン基が好ましく、アルキレン基は、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基がより好ましい。
Qは、2価〜8価の有機基が好ましく、3価〜6価の有機基がより好ましい。
【0082】
Qにおける有機基は、炭素数1〜12のアルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル)、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基(ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましく、好ましくはジフルオロメチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)、炭素数6〜12のアリール基(好ましくはフェニル、ナフチル)、炭素数1〜20のヘテロアリール基(好ましくは、環構成原子に、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有する5または6員環のヘテロアリール基で、具体的なヘテロアリール環は、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、シアヌル酸環、ベンゾイミダゾール環で、ベンゼン環、ヘテロ環が縮環していてもよい)、炭素数7〜12のアラルキル基(好ましくはベンジル、フェネチル)、炭素数1〜20のアルコキシ基(好ましくはメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ)、炭素数1〜10のアシル基(好ましくはホルミル、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル、ニコチノイル)、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基(好ましくはメタンスルホニル、エタンスルホニル、トルフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル)、炭素数6〜12のアリールスルホニル基(好ましくはベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(好ましくはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、炭素数7〜13のアリールオキシカルボニル基(好ましくはフェノキシカルボニル)、炭素数2〜12のアルケニル基(好ましくはアリル)から水素原子を1つ以上除いた残基またはこれらの残基の組み合わせが好ましい。
【0083】
これらの残基の組み合わせとしては、アルキル基とアリール基の組み合わせ構造、アルキル基とアルコキシ基の組み合わせ構造、アリール基とアルコキシ基の組み合わせ構造またはアルキル基とアリール基とアルコキシ基の組み合わせ構造が好ましく、アルキル基とアリール基の組み合わせ構造がより好ましい。
【0084】
X
11は硫黄原子またはNR
35a(R
35aは水素原子またはアルキル基が好ましい)が好ましく、硫黄原子がより好ましい。
X
21はOH、SHまたはNH
2が好ましく、NH
2がより好ましい。
【0085】
R
11aとR
12a、R
11aとR
13a、X
11とR
31aおよびX
21とR
41aが互いに結合して形成する環は、フェニルが挙げられ、好ましい。
複数存在するR
31aとR
41aが互いに結合して形成する環は、例えば、ベンゼン環が挙げられ、好ましい。
【0086】
nは2〜6の整数が好ましい。
mは0〜1の整数が好ましく、pは0〜2の整数が好ましい。
【0087】
Qは、例えば、以下に示す母核構造Q
1の多価連結基を用いることができる。なお、本発明は以下に示す母核構造Q
1の多価連結基に限定されない。
ここで、下記構造におけるYは、式(1a)〜(5a)における連結基L
1と連結するための連結部(Qに含まれ、L
1と結合する部位)を示し、単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を示す。
ヘテロ原子を含む2価の連結基は、例えば、−O−、−NR
N−、−S−、−SO−、−SO
2−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−NR
N−、−C(=O)−NR
N−、−O−C(=O)−NR
N−、−NR
N−C(=O)−O−、−NR
N−C(=O)−、−C(=O)−NR
N−、−NR
N−C(=O)−NR
N−、−SO
2−NR
N−、−NR
N−SO
2−が挙げられる。ここで、R
Nは水素原子または置換基を表す。
なお、複数存在するYは同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0088】
Yは、単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−が好ましく、単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−〔Q
1−O−C(=O)−である〕がより好ましい。
【0089】
また、化合物中のa〜fは、括弧内の構造の繰返し数を表し、それぞれ任意の0以上の整数である。
【0093】
本発明においては、電解重合性化合物として、液LIB(液体リチウムイオン電池)電解液用添加剤として通常使用される有機SEI(Solid Electrolyte Interphase)剤を使用することもできる。
【0094】
例えば、特開2000−199489号公報に記載のアニオン付加重合性モノマー(イソプレン、スチレン、2−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、N−ビニルピロリドン、けい皮酸エチル、けい皮酸メチル、イオノンおよびミルセン等)、特開2004−103372号公報に記載の炭素炭素二重結合部位を置換基に有する芳香族化合物(スチレン系化合物等)、特開2005−142141号公報に記載のアニオン重合性モノマー(イソプレン、2−ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、スチレンおよびブタジエン等)、特開2006−216276号公報に記載の電解酸化重合性モノマー(ピロール、アニリン、チオフェンおよびその誘導体等)および電解還元重合性モノマー(アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、メチレンマロン酸エステル、α−シアノアクリル酸エステル、ニトロエチレンおよびビニレンカーボネート等)が挙げられ、好ましく用いることができる。
【0095】
例えば、有機SEI剤として使用される上記ビニレンカーボーネートは、本発明における式(1)においてR
12およびR
14が水素原子であり、R
11およびR
13がメトキシ基(またはヒドロキシ基)であり、さらにR
11およびR
13が連結基(2価の有機基であるカルボニル基)で連結された構造〔すなわち、R
11とR
13が結合して、−O−C(=O)−O−となる〕で示される。
【0096】
ここで、上記式(1)または(2)で表される電解重合性化合物が不飽和炭素化合物、上記式(3)で表される電解重合性化合物が複素芳香族化合物、上記式(4)で表される電解重合性化合物がヘテロ置換芳香族化合物、上記式(5)で表される電解重合性化合物が環式飽和炭素化合物に、それぞれ分類される。
【0097】
なかでも、式(1)で表される電解重合性化合物が(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、スチレン化合物またはビニル化合物であり、式(2)で表される電解重合性化合物がアセチレン化合物であり、式(3)で表される電解重合性化合物がチオフェン化合物、フラン化合物またはピロール化合物であり、式(4)で表される電解重合性化合物がアニリン化合物、チオフェノール化合物またはフェノール化合物であり、式(5)で表される電解重合性化合物がシクロプロパン化合物またはシクロブタン化合物であることが好ましい。
【0098】
特に、式(1a)で表される電解重合性化合物が(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、スチレン化合物またはビニル化合物であり、式(2a)で表される電解重合性化合物がアセチレン化合物であり、式(3a)で表される電解重合性化合物がチオフェン化合物、フラン化合物またはピロール化合物であり、式(4a)で表される電解重合性化合物がアニリン化合物、チオフェノール化合物またはフェノール化合物であり、式(5a)で表される電解重合性化合物がシクロプロパン化合物またはシクロブタン化合物であることが好ましい。
【0099】
化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0100】
1)不飽和炭素系化合物
[(メタ)アクリル酸化合物]
・1置換体
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、α−シアノアクリル酸、α−シアノアクリル酸メチル、α−シアノアクリル酸エチル、α−シアノアクリル酸プロピル、α−シアノアクリル酸ブチル、α−シアノアクリル酸イソブチル、α−シアノアクリル酸ペンチル、α−シアノアクリル酸ヘキシル、α−シアノアクリル酸ヘプチル、α−シアノアクリル酸オクチル、α−シアノアクリル酸ノニル、α−シアノアクリル酸デシル、α−シアノアクリル酸ドデシル、α−シアノアクリル酸ステアリル、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸プロピル、ケイ皮酸ブチル、ケイ皮酸イソブチルケイ皮酸ペンチル、ケイ皮酸ヘキシル、ケイ皮酸ヘプチル、ケイ皮酸オクチル、ケイ皮酸ノニル、ケイ皮酸デシル、ケイ皮酸ドデシル、ケイ皮酸ステアリル
【0101】
・2置換体
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート
【0102】
・多置換体
エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート
【0103】
[(メタ)アクリルアミド化合物]
・1置換体
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド
・2置換体
N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド
・多置換体
特開2012−214561号公報の段落番号0018〜0027に記載のアクリルアミド多置換体を好適に用いることが出来る。
【0104】
[スチレン化合物]
・1置換体:
スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン
・2置換体
p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン
【0105】
[ビニル化合物]
・1置換体
ビニレンカーボネート、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、、イオノン、ミルセン、14−クロロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン−ドデセン、1−オクタデセン、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ブタン酸アリル、ヘキサン酸アリル、オクタン酸アリル、デカン酸アリル、ドデカン酸アリル、ステアリン酸アリル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル
【0106】
・2置換体
ジビニルエーテル、コハク酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ジアリルエーテル、コハク酸ジアリル、グルタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、ピメリン酸ジアリル、スベリン酸ジアリル、アゼライン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル
【0107】
・多置換体
ブタジエン、イソプレン、酢酸ファルネシル
【0108】
[アセチレン化合物]
・1置換体
1−ドデシン、1−ヘキサデシン、1−オクタデシン、エチニルベンゼン、プロパルギルアルコール、プロパルギルメチルエーテル、プロパルギル酸メチル、2−(2−プロピニルオキシ)エチルアミン、ベンジル−2−プロピニルエーテル
【0109】
・2置換体
2,4−ヘプタデカジイン酸、2,4−ペンタデカジイン酸、10,12−ペンタコサジイン酸、10,12−ペンタコサジイン−1−オール、4,6−ノナデカジイン−1−オール、1−ブロモ−4,6−ノナデカジイン、1−ブロモ−10,12−ペンタコサジイン、10,12−ノナコサジイン酸、m−ジエチニルベンゼン、p−ジエチニルベンゼン、ジエチレングリコールビス(2−プロピニル)エーテル、エチレングリコール1,2−ビス(2−プロピニル)エーテル、1,3−ビス(2−プロピニルオキシ)ベンゼン
【0110】
2)複素芳香族系化合物
[チオフェン化合物]
・1置換体
チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−ブチルチオフェン2−メチルチオフェン、3−ペンチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ビニルチオフェン、3−シアノチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−ヘキシルチオフン、3−n−オクチルチオフェン、3−アセチルチオフェン2,5−ジメチルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−(2−エチルヘキシル)チオフェン、チオフェン−3−アセトニトリル、3−ウンデシルチオフェン、3,4−ジブロモチオフェン、3−エチニルチオフェン、3−ヘキサデシルチオフェン、3−テトラデシルチオフェン、3,4−ジヘキシルチオフェン、2,5−ジクロロチオフェン、2,5−ジブロモチオフェン、2,5−ジヨードチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、2−チオフェンカルボキシアルデヒド、2−メトキシチオフェン、テトラブロモチオフェン、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン、cis−1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)エテン、trans−1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)エテン
【0111】
・2置換体
ビチオフェン、3,4’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、4,4’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、4,4’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、3,3’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、3,3’,5,5’−テトラブロモ−2,2’−ビチオフェン、4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン、2,3,5,6−テトラブロモチエノ[3,2−b]チオフェン
【0112】
・多置換体
α−クアテルチオフェン、α−キンキチオフェン、α−セキシチオフェン、α−セプチチオフェン、α−オクチチオフェン
2,5−ジ(2−チエニル)チエノ[3,2−b]チオフェン、3’−ブロモ−2,2’:5’,2’’−ターチオフェン、1,3,5−トリ(2−チエニル)ベンゼン、3,5−ジブロモジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン
【0113】
[フラン化合物]
・1置換体
フラン、3−メチルフラン、2,5−ジブロモフラン、2,5−ジフェニルフラン
・2置換体
ジフルフリルジスルフィド、ビス(2−メチル−3−フリル)ジスルフィド
・多置換体
トリ(2−フリル)ホスフィン
【0114】
[ピロール化合物]
・1置換体
ピロール、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−ブチルピロール、1−ヘキシルピロール、1−オクチルピロール、1−ドデシルピロール、1−オクタデシルピロール、1−ビニルピロール、1−ベンジルピロール、3−アセチル−1−メチルピロール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロール、1−(3−ブロモプロピル)ピロール、3−(1−ピロリルメチル)ピリジン、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、
【0115】
3)ヘテロ置換芳香族化合物
[アニリン化合物]
・1置換体
アニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン
【0116】
・2置換体
4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、m−トリジン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,6−ジアミノピレン、1,8−ジアミノピレン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ジアミノピレン、3,3’−ジメチルナフチジン、1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,6−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン
【0117】
・多置換体
3,3’−ジアミノベンジジン
【0118】
[チオフェノール化合物]
・1置換体
チオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、2,6−ジメチルチオフェノール、3,5−ジメチルチオフェノール、2−メトキシチオフェノール、3−メトキシチオフェノール
・2置換体
4,4’−チオビスベンゼンチオール
【0119】
[フェノール化合物]
・1置換体
フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール
・2置換体
ビスフェノールA、ビスフェノールC
【0120】
4)環式飽和炭素化合物
[シクロプロパン化合物]
・1置換体
シクロプロパン、1,1,2,2−テトラメチルシクロプロパン、シクロプロパンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸クロリド、シクロプロパンカルボニトリル、ブロモシクロプロパン、シクロプロパンカルボキシアルデヒド、(クロロメチル)シクロプロパン、シクロプロパンアセチレン、シクロプロピルアミン、シクロプロピルメチルケトン、シクロプロパンメタノール、1−シクロプロピルエタノール、1−シクロプロピルメチルアミン、シクロプロパンカルボン酸メチルエステル、シクロプロパンカルボキシアミド、7,7−ジクロロビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1−メチルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル、シクロプロパンスルホンアミド、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸ジメチルエステル、ツジョン、3−シクロプロピル−3−オキソプロピオン酸メチル、2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸、(+)−3−カレン、シクロプロピルフェニルスルフィド、1−シクロプロピルピペラジン、α−シクロプロピルベンジルアルコール、3−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン、シロマジン、2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパン−1−カルボン酸エチル、6,6−ジメチル−5,7−ジオキサスピロ[2.5]オクタン−4,8−ジオン、カロン酸無水物、シクロプロピル2−チエニルケトン
・2置換体
ジシクロプロピルケトン
【0121】
[シクロブタン化合物]
・1置換体
シクロブタン、1,1,2,2−テトラメチルシクロブタン、シクロブタンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸クロリドシクロブタンカルボニトリル、ブロモシクロブタン、シクロブタンカルボキシアルデヒド、(クロロメチル)シクロブタン、シクロブタノール、アミノシクロブタン、シクロブタンメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、(−)−β−ピネン、シクロブタンカルボン酸エチルエステル、1,1−シクロブタンジカルボン酸、(1S,2S,3R,5S)−(+)−2,3−ピナンジオール、(1R,2R,3S,5R)−(−)−2,3−ピナンジオール、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、(1R,2R,5R)−(+)−2−ヒドロキシ−3−ピナノン、(1S,2S,5S)−(−)−2−ヒドロキシ−3−ピナノン、β−カリオフィレン、(1S)−(−)−α−ピネン 、(1R)−(+)−α−ピネン、シクロブチルフェニルケトン、(−)−ベルベノン、ベンゾシクロブテン、α−ピネンオキシド、1−フェニルシクロブタンカルボニトリル、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.4.0.0
2,7]ドデカン−1,8:2,7−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジイミド
・2置換体
ジシクロブチルケトン
【0122】
本発明においては、正極活物質層を形成する固体電解質組成物(以下、単に正極用組成物とも称す)に酸化重合しやすい電解重合性化合物を、負極活物質層を形成する固体電解質組成物(以下、単に負極用組成物とも称す)に還元重合しやすい電解重合性化合物を、それぞれ用いることがより好ましい。
上記構成からなる全固体二次電池を充放電することにより、イオン伝導度およびサイクル特性に優れた全固体二次電池が得られるため、好ましい。
【0123】
正極用組成物に好ましく用いられる酸化重合しやすい電解重合性化合物は、初期の充放電電解時に発生するラジカルカチオンを安定化しうる基を有することが好ましい。
例えば、電子豊富な不飽和結合(電子供与性基が置換した不飽和結合も含む)や、電子供与性のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子)が反応点近傍に存在することが好ましい。
ただし、式(1)、(2)、(1a)、(2a)のような不飽和結合を有する化合物の場合は、酸化重合されやすいことから、R
11〜R
14、R
21、R
22、R
11a〜R
13a、R
21a、−L
1−Qが、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基のような電子求引性基でも構わず、むしろ、好ましい。
【0124】
具体的には、電子供与性の置換基を有する式(1)または(1a)で表される不飽和炭素化合物、式(3)または(3a)で表される複素芳香族化合物、式(4)または(4a)で表されるヘテロ置換基を有する芳香族化合物などが挙げられる。
なお、電子供与性基とは、ハメットのσpが負の値の基である。
【0125】
ここで、式(1)のR
11〜R
14または式(1a)のR
11a〜R
13aにおける電子供与性の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、電子供与性基が置換したアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはアミノ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。
【0126】
式(1)のR
11〜R
14および式(1a)のR
11a〜R
13a、−L
1−Qにおいて、少なくとも1つの置換基が電子供与性基、アリール基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基であることが好ましい。残りの置換基は、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0127】
式(2)のR
21、R
22および式(2a)のR
21aにおける置換基としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基がより好ましい。
【0128】
式(3)のR
31〜R
34および式(3a)のR
31aにおける置換基としては、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基またはハロゲン原子がより好ましい。
X
1は、酸素原子、硫黄原子またはNR
35であるが、硫黄原子またはNR
35が好ましい。X
11は、酸素原子、硫黄原子またはNR
35aであるが、硫黄原子またはNR
35aが好ましい。R
35およびR
35aは、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0129】
式(4)のR
41〜R
45および式(4a)のR
41aにおける置換基としては、水素原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基がより好ましく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基がさらに好ましい。
X
2は、OR
46、SR
47またはNR
48R
49であるが、OR
46、NR
48R
49が好ましい。X
21は、OR
46a、SR
47aまたはNR
48aR
49aであるが、OR
46a、NR
48aR
49aが好ましい。R
46〜R
49およびR
46a〜R
49aは、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0130】
電子供与性の置換基を有する式(1)または(1a)で表される不飽和炭素化合物としては、アルコキシビニル化合物、アルキルカルボニルオキシビニル化合物などが挙げられ、式(3)または(3a)で表される複素芳香族化合物としては、チオフェン化合物、ピロール化合物、フラン化合物などが挙げられ、式(4)または(4a)で表されるヘテロ置換基を有する芳香族化合物としては、アニリン化合物、フェノール化合物、チオフェノール化合物などが挙げられる。
なお、各化合物は、上述の具体例で示した化合物が好ましく挙げられる。
【0131】
一方、負極用組成物に好ましく用いられる還元重合しやすい電解重合性化合物は、初期の充放電電解時に発生するラジカルアニオンを安定化しうる基を有することが好ましい。
たとえば、電子不足の不飽和結合や電子吸引性のカルボニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基が反応点近傍に存在することが好ましい。
【0132】
具体的には、電子吸引性の置換基を有する式(1)または(1a)で表される不飽和炭素化合物、式(2)または(2a)で表される電子不足の不飽和炭素化合物などが挙げられる。なお、電子吸引性の置換基とは、ハメットのσpが0以上の基である。
【0133】
ここで、式(1)のR
11〜R
14または式(1a)のR
11a〜R
13a、−L
1−Qにおける電子吸引性の置換基としては、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、ハロゲン化アリール基またはアルキルカルボニル基が挙げられ、シアノ基、ハロゲン化アルキル基またはアルキルオキシカルボニル基が好ましい。
なかでも、式(1)のR
11〜R
14および式(1a)のR
11a〜R
13a、−L
1−Qにおいて、少なくとも1つの置換基が電子吸引性基であることが好ましい。電子吸引性基ではない残りの置換基は、電子不足な不飽和結合を形成する限り特に限定されるものではないが、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0134】
式(2)のR
21およびR
22ならびに式(2a)のR
21aは、水素原子、アルキル基、カルボキシ置換アルキル基が好ましい。
【0135】
電子吸引性の置換基を有する式(1)または(1a)で表される不飽和炭素化合物としては、(メタ)アクリル酸化合物、(トリフルオロメチル)アクリル酸化合物、シアノアクリル酸化合物、式(2)または(2a)で表される電子不足の不飽和炭素化合物としては、アセチレン化合物などが挙げられる。
なお、各化合物は、上述の具体例で示した化合物が好ましく挙げられる。
【0136】
また、式(5)または(5a)で表される環式飽和炭素化合物は、正極用組成物にも負極用組成物にも好適に用いることができる点から、好ましい。
【0137】
式(5)のX
3および式(5a)のX
31は、メチレン基が好ましい。
式(5)のR
51〜R
54および式(5a)のR
51a〜R
53aは、水素原子、アルキル基がより好ましい。また、式(5)のX
3とR
51および式(5a)のX
31とR
51aが互いに結合して環を形成するものもより好ましく、この場合、形成される環はシクロヘキサン環またはシクロペンタン環が好ましい。
【0138】
本発明に用いられる電解重合性化合物は、前述の母核構造Q
1を有するものがより好ましく、具体的には以下のような組み合わせが挙げられる。
なお、下記表においては、式(1)〜(5)または(1a)〜(5a)で表される構造において、電解重合に寄与する構造を電解重合部位として記載した。また、電解重合部位に記載する破線は、連結基L
1との結合位置を示す。
また、ヘテロ原子Yにおいて、連結する原子が複数の場合に示した結合手「−」は、「−」の部分と連結基L
1が結合することを示す。例えば、O−C(=O)−は、「O−C(=O)」までが、Qであり、Q
1に結合する部分が、左側のO(酸素原子)であり、Q
1−O−C(=O)−L
1−電解重合部位となる。
【0142】
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、上記化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。
【0143】
本明細書において置換もしくは無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、特段に断りがない限り、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換もしくは無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。また、単に「置換基」と称した場合、置換基Tが参照される。
【0144】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、環構成原子に、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5または6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、
【0145】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニルオキシ基、例えば、ビニルオキシ、アリルオキシ、オレイルオキシ等)、アルキニルオキシ基((好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニルオキシ基、例えば、エチニルオキ、フェニルエチニルオキシ等)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキルオキシ基、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、4−メチルシクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−エチニルアミノ、アニリノ、4−ピリジルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基、シクロアルカノイル基、アリーロイル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1〜23のアシル基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ステアロイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、オレオイル、プロピオロイル、シクロプロパノイル、シクロペンタノイルン、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ニコチノイル、イソニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルカノイルオキシ基、アルケノイルオキシ基、アルキノイルオキシ基、シクロアルカノイルオキシ基、アリーロイルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1〜23のアシルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、オレオイルオキシ、プロピオロイルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロペンタノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ、ニコチノイルオキシ、イソニコチノイルオキシ等)、
【0146】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましく炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基(アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基を含み、好ましくは炭素数1〜20のスルホンアミド基、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ベンジルジメチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のリン酸基、例えば、−OP(=O)(R
P)
2)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R
P)
2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R
P)
2)、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記の置換基Tがさらに置換していてもよい。例えば、アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基や、アルキル基にハロゲン原子が置換したハロゲン化アルキル基である。
【0147】
連結基Lとしては、炭化水素からなる連結基〔炭素数1〜10のアルキレン基(より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは1〜3)、炭素数2〜10のアルケニレン基(より好ましくは炭素数2〜6、さらに好ましくは2〜4)、炭素数2〜10のアルキニレン基(より好ましくは炭素数2〜6、さらに好ましくは2〜4)、炭素数6〜22のアリーレン基(より好ましくは炭素数6〜10)、またはこれらの組合せ〕、ヘテロ原子を含む連結基〔カルボニル基(−CO−)、チオカルボニル基(−CS−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NR
N−または=NR
N)、アンモニウム連結基(−NR
N2+−)、ポリスルフィド基(好ましくはS原子の連結数が2〜8個)、炭素原子にイミノ結合が置換した連結基(R
N−N=C<、−N=C(R
N)−)、スルホニル基(−SO
2−)、スルフィニル基(−SO−)、リン酸連結基(−O−P(OH)(O)−O−)、ホスホン酸連結基(−P(OH)(O)−O−)、またはこれらの組合せ〕、またはこれらを組み合せた連結基が好ましい。なお、置換基や連結基が縮合して環を形成する場合には、上記炭化水素からなる連結基が、二重結合や三重結合を適宜形成して連結していてもよい。形成される環として好ましくは、5員環または6員環が好ましい。5員環としては含窒素の5員環が好ましく、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、インドリン環、カルバゾール環などが挙げられる。6員環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環などが挙げられる。
なお、アリール環、ヘテロ環等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、同様に置換されていても無置換でもよい。
【0148】
ここで、R
Nは水素原子または置換基を表す。置換基としては、上記の置換基Tが挙げられるが、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)が好ましい。
【0149】
R
Pは水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシ基以外の置換基を表す。置換基としては、上記の置換基Tが挙げられるが、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニルオキシ基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニルオキシ基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキルオキシ基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、が好ましい。
【0150】
連結基Lを構成する原子の数は、1〜36が好ましく、1〜24がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜6が特に好ましい。連結基の連結原子数は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。下限としては、1以上である。
なお、上記の連結基Lを構成する原子の数(連結原子数)とは、所定の構造部間を結ぶ経路に位置し連結に関与する最少の原子数を言う。例えば、−CH
2−C(=O)−O−の場合、連結基を構成する原子の数は6となるが、連結原子数は3となる。
【0151】
具体的に連結基の組合せとしては、以下のものが挙げられる。オキシカルボニル結合(−OCO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、アミド結合(−CONR
N−)、ウレタン結合(−NR
NCOO−)、ウレア結合(−NR
NCONR
N−)、(ポリ)アルキレンオキシ結合(−(Lr−O)x−)、カルボニル(ポリ)オキシアルキレン結合(−CO−(O−Lr)x−)、カルボニル(ポリ)アルキレンオキシ結合(−CO−(Lr−O)x−)、カルボニルオキシ(ポリ)アルキレンオキシ結合(−COO−(Lr−O)x−)、(ポリ)アルキレンイミノ結合(−(Lr−NR
N)x)、アルキレン(ポリ)イミノアルキレン結合(−Lr−(NR
N−Lr)x−)、カルボニル(ポリ)イミノアルキレン結合(−CO−(NR
N−Lr)x−)、カルボニル(ポリ)アルキレンイミノ結合(−CO−(Lr−NR
N)x−)、(ポリ)エステル結合(−(CO−O−Lr)x−、−(O−CO−Lr)x−、−(O−Lr−CO)x−、−(Lr−CO−O)x−、−(Lr−O−CO)x−)、(ポリ)アミド結合(−(CO−NR
N−Lr)x−、−(NR
N−CO−Lr)x−、−(NR
N−Lr−CO)x−、−(Lr−CO−NR
N)x−、−(Lr−NR
N−CO)x−)などである。xは1以上の整数であり、1〜500が好ましく、1〜100がより好ましい。
【0152】
Lrはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が好ましい。Lrの炭素数は、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい(ただし、アルケニレン基、アルキニレン基は、炭素数の下限は2以上)。複数のLrやR
N、R
P、x等は同じである必要はない。連結基の向きは上記の記載の順序により限定されず、適宜所定の化学式に合わせた向きで理解すればよい。例えば、アミド結合(−CONR
N−)は、カルバモイル結合(−NR
NCO−)である。
【0153】
本発明に用いられる電解重合性化合物は、電解重合部位を分子内に2個以上有することが、架橋点を増やし、活物質と無機固体電解質との高い結着性を付与する点でも好ましい。
【0154】
本発明に用いられる電解重合性化合物の分子量は1000未満であり、300以上1000未満であることがより好ましい。
なお、分子量は、MS(Mass Spectrometer、質量分析装置)により測定することができる。
【0155】
本発明に用いられる電解重合性化合物は、常圧における融点が80℃未満であり、かつ常圧における沸点が200℃以上であることが好ましい。
ここで、常圧とは、1気圧であり、標準気圧の101,325Paである。
常圧における融点が低いほど電解重合の効率が高まるため、40℃未満がより好ましく、0℃未満がさらに好ましい。
また、常圧における沸点は、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。常圧における沸点が高いほど、固体電池製造中に揮発する量が少なく、固体電池中に残存することで電解重合され、十分な性能を発揮できるためである。
【0156】
ここで、融点はDSC(Differential scanning calorimetry、示差走査熱量測定)、沸点はガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0157】
本発明に用いられる電解重合性化合物は、全固体二次電池の充放電時に、電解酸化重合または電解還元重合され、重合体が形成される。
具体的には、電解重合性化合物は、全固体二次電池の充放電時に負極活物質層において、1.5V以上の充放電電位(Li/Li
+基準)から還元重合が開始されて重合体を生成する。還元重合が開始される充放電電位は、1.7V以上がより好ましく、1.9V以上がさらに好ましい。
また、電解重合性化合物は、全固体二次電池の充放電時に正極活物質層において、4.5V未満の充放電電位(Li/Li
+基準)から酸化重合が開始されて重合体を生成する。酸化重合が開始される充放電電位は、4.3V未満がより好ましく、4.2V未満がさらに好ましい。
【0158】
充放電電位はそのピークから特定してもよい。電位のピークは、動作電極、参照電極、対電極からなる3極式セルを作成し、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)を行うことにより特定することができる。3極式セルの構成および電気化学測定の測定条件は以下のとおりである。
【0159】
<3極式セルの構成>
・作動電極:ゾルゲル法またはスパッタリング法により白金電極上に作成した活物質電極
・参照電極:リチウム
・対電極 :リチウム
・希釈メディア:EC/EMC=1/2 LiPF
6 1M、キシダ化学社製
ここで、ECはエチレンカーボネート、EMCはエチルメチルカーボネートを表す。
【0160】
<測定条件>
・走査速度:1mV/s
・測定温度:25℃
【0161】
充放電時の正極電位(Li/Li
+基準)は
(正極電位)=(負極電位)+(電池電圧)
である。負極としてチタン酸リチウムを用いた場合、負極電位は1.55Vとする。負極として黒鉛を用いた場合は負極電位は0.1Vとする。充電時に電池電圧を観測し、正極電位を算出する。
【0162】
また、硫化物系固体電解質を用いる場合には、硫化物系固体電解質と水との反応による硫化水素の発生を抑制し、イオン伝導度の低下を抑制する観点等から、電解重合性化合物の含水率は100ppm以下が好ましい。
含水率は、80℃で真空乾燥した後の電解重合性化合物を試料とし、カールフィッシャー液アクアミクロンAX(商品名、三菱化学(株)製)を用い、カールフィッシャー法により試料中の水分量(g)を測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
【0163】
固体電解質組成物中における電解重合性化合物の含有量は、上記無機固体電解質(活物質を用いる場合はこれを含む)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上限としては、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
固体電解質組成物に対しては、その固形分中、電解重合性化合物が0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上が特に好ましい。上限としては、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0164】
電解重合性化合物を上記の範囲内で用いることにより、一層効果的に活物質と無機固体電解質の結着性と界面抵抗の抑制性とを両立して実現することができる。
なお、本発明の固体電解質組成物は、上記特定の電解重合性化合物以外に、後述のバインダーや各種の添加剤を組み合わせて用いてもよい。上記の含有量は電解重合性化合物の総量として規定しているが、本発明に用いられる電解重合性化合物およびバインダーならびに各種の添加剤の総量に読み替えてもよい。
【0165】
以下に、本発明に用いられる電解重合性化合物が、電解酸化重合または電解還元重合されることにより高分子量化されたポリマー(以下、電解重合ポリマーと称する)について説明する。
【0166】
(電解重合ポリマー)
本発明に用いられる電解重合性化合物は、電解重合により形成される電解重合ポリマーが、以下に記載する物性を有するように調整して用いることが好ましい。
【0167】
電解重合ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、50℃未満が好ましく、−100℃以上50℃未満がより好ましく、−80℃以上30℃未満がより好ましく、−80℃以上0℃未満が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内にあることで、良好なイオン伝導度が得られる。
【0168】
ガラス転移温度は、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(商品名、SII・ナノテクノロジー(株)製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で2回実施し、2回目の測定結果を採用する。
【0169】
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
【0170】
電解重合ポリマーの質量平均分子量は、10,000以上500,000未満が好ましく、15,000以上200,000未満がより好ましく、15,000以上150,000未満がさらに好ましい。
ポリマーの質量平均分子量が上記範囲内にあることで、より良好な結着性が発現する。
【0171】
電解重合ポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって下記の標準試料換算で計測した値を採用する。測定装置および測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とすることを許容する。ただし、ポリマー種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)およびそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。
【0172】
(条件1)
測定機器:EcoSEC HLC−8320(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM−H(商品名、東ソー社製)を2本つなげる
キャリア:10mM LiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
標準試料:ポリスチレン
【0173】
(条件2)
測定機器:同上
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、
TOSOH TSKgel Super HZ4000、
TOSOH TSKgel Super HZ2000(いずれも商品名、東ソー社製)
をつないだカラムを用いる
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
標準試料:ポリスチレン
【0174】
なお、電解重合ポリマーは、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0175】
活物質周辺に形成される電解重合ポリマーは、電子やイオンの伝導を阻害しにくいものがより好ましい。電子やイオンの伝導を阻害すると抵抗が上昇し十分な電池電圧が得られない。このような意味でも、形成される電解重合ポリマーは電子絶縁性よりも電子導電性であることが好ましい。
電解重合によって電子導電性が得られる電解重合性化合物としては、一般的に導電性ポリマーとして知られるポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレンこれらのモノマー体が挙げられる。すなわち、チオフェン化合物、アニリン化合物、ピロール化合物、アセチレン化合物は、得られる電解重合ポリマーが絶縁性ではなく、低抵抗、高電圧が得られるため好ましい。
【0176】
(バインダー)
本発明における全固体二次電池は、正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層の少なくとも1層が、さらにバインダーを含有することも好ましい。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
【0177】
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)などが挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0178】
バインダーの含有量は、固体電解質100質量部(活物質を用いる場合はこれを含む)に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上限としては、20質量部以下好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0179】
正極活物質層および負極活物質層を形成するための固体電解質組成物において、バインダーの含有量は、電解重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。上限としては、100質量部以下好ましく、90質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0180】
また、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物において、バインダーの含有量は、電解重合性化合物100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が特に好ましい。上限としては、500質量部以下好ましく、400質量部以下がより好ましく、350質量部以下がさらに好ましい。
【0181】
(重合開始剤)
本発明における全固体二次電池は、正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層の少なくとも1層が、さらに重合開始剤を含有することも好ましい。
重合開始剤は正極活物質、負極活物質、導電助剤、集電体といった電子の移動が起こりうる部分において、1電子酸化または1電子還元によって分解し、ラジカルまたはカチオンを発生するものが好ましく、本発明では、これを電解重合開始剤と称す。このような電解重合開始剤としては任意の光重合開始剤が同様の効果を奏する。
【0182】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、α−アミノケトン化合物およびアルキルアミン化合物が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の例としては、特開2006−085049号公報の段落番号0135〜0208に記載されたラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0183】
光ラジカル重合開始剤としては、重合速度に優れる点から、アシルフォスフィンオキサイド化合物、ケトオキシムエステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物およびα−アミノケトン化合物からなる群より選択される光ラジカル重合開始剤が好ましく、α−アミノケトン化合物およびアシルフォスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される光ラジカル重合開始剤がより好ましい。なお、光ラジカル重合開始剤として、α−アミノケトン化合物およびアシルフォスフィンオキサイド化合物の両方を含有することが、重合速度の点で特に好ましい。
【0184】
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
アシルフォスフィンオキサイド化合物は、任意の市販品を用いてもよく、市販品の例としては、BASF社製のイルガキュア(登録商標)シリーズ、ダロキュア(登録商標)シリーズの、例えばイルガキュア819、イルガキュア1800、イルガキュア1870、ダロキュアTPO(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0185】
ケトオキシムエステル化合物としては、例えば、特表2006−516246号公報、特開2001−233842号公報、特開2004−534797号公報、特開2005−097141号公報、特開2006−342166号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0186】
炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、トリアジン化合物が挙げられ、例えば、特開平8−269049号公報、特表2005−503545号公報、非特許文献J.Am.Chem.Soc.,1999,121,p6167〜6175等に記載の化合物を挙げることができる。
【0187】
α−アミノケトン化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
α−アミノケトン化合物は、任意の市販品を用いてもよく、市販品の例としては、BASF社製のイルガキュア(登録商標)シリーズ(例えば、イルガキュア907、369、379等)が挙げられる。
【0188】
また、光重合開始剤としては光カチオン重合開始剤も好ましく用いることができる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、放射線の照射により分解してカチオンを発生する、アンモニウム塩、ピリリウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物を挙げることができる。
本発明の全固体二次電池に用いることができる光カチオン重合開始剤の種類、具体的化合物および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号0066〜0122に記載の化合物を挙げることができる。
【0189】
光カチオン重合開始剤のなかでも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩およびピリリウム塩がより好ましい。
【0190】
本発明の全固体二次電池に用いることができる光カチオン重合開始剤は、下記式(I)で表されるスルホニウム塩が特に好ましい。本発明の固体電解質組成物と、下記式(I)で表されるスルホニウム塩とを併用することで、より高い電解重合性が得られ、全固体二次電池の電池電圧およびサイクル特性が向上する。
【0192】
式(I)中、A
−は、陰イオンを表す。Zは水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表す。
【0193】
A
−で表される陰イオン(アニオン)としては、例えば、スルホン酸アニオン(例えば、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン)、ベンゾイルギ酸アニオン、PF
6−、SbF
6−、BF
4−、ClO
4−、カルボン酸アニオン(例えば、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオン)、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、ボレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン、ハロゲンアニオン、ポリマー型スルホン酸アニオン、ポリマー型カルボン酸アニオン、テトラアリールボレートアニオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。
【0194】
これらの中でも、非求核性アニオンであることが好ましい。
非求核性アニオンとは、求核反応を発現する能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。すなわち、−20℃〜60℃で本発明の固体電解質組成物、電池用電極シートおよび全固体二次電池を保存している際に、自発的に分子内求核反応を起こさないアニオンである。
非求核性アニオンとしては、例えば、PF
6−、SbF
6−、BF
4−、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン、テトラアリールボレートアニオンが挙げられ、好ましい。
【0195】
電解重合開始剤の含有量は、電解性重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上限としては、50質量部以下好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0196】
(リチウム塩)
本発明における全固体二次電池は、正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層の少なくとも1層が、さらにリチウム塩を含有することも好ましい。
本発明に用いることができるリチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0197】
(L−1)無機リチウム塩
例えば、下記の化合物が挙げられる。
LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6等の無機フッ化物塩
LiClO
4、LiBrO
4、LiIO
4等の過ハロゲン酸塩
LiAlCl
4等の無機塩化物塩等。
【0198】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩
例えば、下記の化合物が挙げられる。
LiCF
3SO
3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩
LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩
LiC(CF
3SO
2)
3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩
Li[PF
5(CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
3)
3]、Li[PF
5(CF
2CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
2CF
3)
3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0199】
(L−3)オキサラトボレート塩
例えば、下記の化合物が挙げられる。
【0200】
リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
これらのなかで、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6、LiClO
4、Li(Rf
1SO
3)、LiN(Rf
1SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、及びLiN(Rf
1SO
2)(Rf
2SO
2)が好ましく、LiPF
6、LiBF
4、LiN(Rf
1SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、及びLiN(Rf
1SO
2)(Rf
2SO
2)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf
1およびRf
2はそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を表す。
【0201】
なお、リチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0202】
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して0質量部を超えることが好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0203】
(分散媒体)
本発明の固体電解質組成物においては、上記の各成分を分散させる分散媒体を用いてもよい。分散媒体は、例えば、水溶性有機溶媒が挙げられる。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
【0204】
アルコール化合物溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0205】
エーテル化合物溶媒は、例えば、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンが挙げられる。
【0206】
アミド化合物溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドが挙げられる。
【0207】
ケトン化合物溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0208】
芳香族化合物溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。
【0209】
脂肪族化合物溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンが挙げられる。
【0210】
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、吉草酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ヘプタンなどが挙げられる。
【0211】
カーボネート化合物溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0212】
ニトリル化合物溶媒は、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。
【0213】
本発明においては、なかでも、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒、エステル化合物溶媒を用いることが好ましく、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒を用いることがより好ましい。分散媒体は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、固体電解質組成物における分散媒体の量は、固体電解質組成物の粘度と乾燥負荷とのバランスで任意の量とすることができる。一般的に、固体電解質組成物中、20〜99質量%であることが好ましい。
【0214】
(正極活物質)
本発明の固体電解質組成物には、正極活物質を含有させてもよい。正極活物質を含有する固体電解質組成物は、正極材料用の組成物として用いることができる。正極活物質には遷移金属酸化物を用いることが好ましく、中でも、遷移元素M
a(Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素)を有することが好ましい。また、混合元素M
b(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなど)を混合してもよい。
遷移金属酸化物は、例えば、下記式(MA)〜(MC)のいずれかで表されるものを含む特定遷移金属酸化物、またはその他の遷移金属酸化物としてV
2O
5、MnO
2等が挙げられる。正極活物質には、粒子状の正極活性物質を用いてもよい。
具体的に、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できる遷移金属酸化物を用いることができ、上記特定遷移金属酸化物を用いることが好ましい。
【0215】
遷移金属酸化物は、上記遷移元素M
aを含む酸化物等が好適に挙げられる。このとき混合元素M
b(好ましくはAl)などを混合してもよい。混合量としては、遷移金属の量に対して0〜30mol%が好ましい。Li/M
aのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
【0216】
〔式(MA)で表される遷移金属酸化物(層状岩塩型構造)〕
リチウム含有遷移金属酸化物としては中でも下記式(MA)で表されるものが好ましい。
【0217】
Li
aaM
1O
bb ・・・ 式(MA)
【0218】
式(MA)中、M
1は上記M
aと同義であり、好ましい範囲も同じである。aaは0〜1.2(0.2〜1.2が好ましい)を表し、0.6〜1.1が好ましい。bbは1〜3を表し、2が好ましい。M
1の一部は上記混合元素M
bで置換されていてもよい。
式(MA)で表される遷移金属酸化物は典型的には層状岩塩型構造を有する。
【0219】
式(MA)で表される遷移金属酸化物は、下記の各式で表されるものがより好ましい。
【0220】
式(MA−1) Li
gCoO
k
式(MA−2) Li
gNiO
k
式(MA−3) Li
gMnO
k
式(MA−4) Li
gCo
jNi
1−jO
k
式(MA−5) Li
gNi
jMn
1−jO
k
式(MA−6) Li
gCo
jNi
iAl
1−j−iO
k
式(MA−7) Li
gCo
jNi
iMn
1−j−iO
k
【0221】
ここで、gは上記aaと同義であり、好ましい範囲も同じである。jは0.1〜0.9を表す。iは0〜1を表す。ただし、1−j−iは0以上になる。kは上記bbと同義であり、好ましい範囲も同じである。
これらの遷移金属化合物の具体例としては、LiCoO
2(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi
2O
2(ニッケル酸リチウム)LiNi
0.85Co
0.01Al
0.05O
2(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi
0.5Mn
0.5O
2(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
【0222】
式(MA)で表される遷移金属酸化物は、一部重複するが、表記を変えて示すと、下記で表されるものも好ましい例として挙げられる。
【0223】
(i)Li
gNi
xcMn
ycCo
zcO
2(xc>0.2,yc>0.2,zc≧0,xc+yc+zc=1)
代表的なもの:
Li
gNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2
Li
gNi
1/2Mn
1/2O
2
【0224】
(ii)Li
gNi
xdCo
ydAl
zdO
2(xd>0.7,yd>0.1,0.1>zd≧0.05,xd+yd+zd=1)
代表的なもの:
Li
gNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2
【0225】
〔式(MB)で表される遷移金属酸化物(スピネル型構造)〕
リチウム含有遷移金属酸化物としては中でも下記式(MB)で表されるものも好ましい。
【0226】
Li
ccM
22O
dd ・・・ 式(MB)
【0227】
式(MB)中、M
2は上記M
aと同義であり、好ましい範囲も同じである。ccは0〜2を表し、0.2〜2が好ましく、0.6〜1.5がより好ましい。ddは3〜5を表し、4が好ましい。
【0228】
式(MB)で表される遷移金属酸化物は、下記の各式で表されるものがより好ましい。
【0229】
式(MB−1) Li
mmMn
2O
nn
式(MB−2) Li
mmMn
ppAl
2−ppO
nn
式(MB−3) Li
mmMn
ppNi
2−ppO
nn
【0230】
mmはccと同義であり、好ましい範囲も同じである。nnはddと同義であり、好ましい範囲も同じである。ppは0〜2を表す。
これらの遷移金属化合物は、例えば、LiMn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4が挙げられる。
【0231】
式(MB)で表される遷移金属酸化物は、さらに下記の各式で表されるものも好ましい例として挙げられる。
【0232】
式(a) LiCoMnO
4
式(b) Li
2FeMn
3O
8
式(c) Li
2CuMn
3O
8
式(d) Li
2CrMn
3O
8
式(e) Li
2NiMn
3O
8
【0233】
高容量、高出力の観点で上記のうちNiを含む電極がさらに好ましい。
【0234】
〔式(MC)で表される遷移金属酸化物〕
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウム含有遷移金属リン酸化物が好ましく、なかでも下記式(MC)で表されるものも好ましい。
【0235】
Li
eeM
3(PO
4)
ff ・・・ 式(MC)
【0236】
式(MC)中、eeは0〜2(0.2〜2が好ましい)を表し、0.5〜1.5が好ましい。ffは1〜5を表し、1〜2が好ましい。
【0237】
M
3はV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1種以上の元素を表す。M
3は、上記の混合元素M
bの他、Ti、Cr、Zn、Zr、Nb等の他の金属で置換していてもよい。具体例としては、例えば、LiFePO
4、Li
3Fe
2(PO
4)
3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP
2O
7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO
4等のリン酸コバルト類、Li
3V
2(PO
4)
3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
【0238】
なお、Liの組成を表す上記aa、cc、g、mm、ee値は、充放電により変化する値であり、典型的には、Liを含有したときの安定な状態の値で評価される。式(a)〜(e)では特定値としてLiの組成を示しており、これも同様に電池の動作により変化するものである。
【0239】
本発明の全固体二次電池で使用する正極活物質の平均粒子径は特に限定されない。なお、0.1μm〜50μmが好ましい。正極活性物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の平均粒子径は、後述の実施例の項で示した無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定する。
【0240】
正極活物質の濃度は特に限定されない。なお、固体電解質組成物中、固形成分100質量%において、20〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。なお、正極層が他の無機固体(例えば固体電解質)を含むときには、上記の濃度はそれを含むものとして解釈する。
【0241】
(負極活物質)
本発明の固体電解質組成物には、負極活物質を含有させてもよい。負極活物質を含有する固体電解質組成物は、負極材料用の組成物として用いることができる。負極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。このような材料は、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタンおよびリチウムから選択される原子を少なくとも1種を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0242】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛およびPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0243】
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素材料と黒鉛系炭素材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報に記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報に記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
【0244】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、結晶性の回折線を有さないことがさらに好ましい。
【0245】
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜第15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの1種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドがさらに好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga
2O
3、SiO、GeO、SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
2O
3、Pb
2O
4、Pb
3O
4、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
4、SnSiO
3、GeS、SnS、SnS
2、PbS、PbS
2、Sb
2S
3、Sb
2S
5、SnSiS
3などが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li
2SnO
2であってもよい。
【0246】
負極活物質の平均粒子径は、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、よく知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、後述の実施例の項で示した無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定する。
【0247】
上記焼成法により得られた化合物の組成式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0248】
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵および放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
【0249】
負極活物質はチタン原子を含有することが好ましい。より具体的には、Li
4Ti
5O
12がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。特定の負極と更に特定の電解液を組合せることにより、様々な使用条件においても二次電池の安定性が向上する。
【0250】
本発明の全固体二次電池においては、Si元素を含有する負極活物質を適用することも好ましい。一般的にSi負極は、現行の炭素負極(黒鉛、アセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、質量あたりのLiイオン吸蔵量が増加するため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点があり、車用のバッテリー等への使用が今後期待されている。一方で、Liイオンの吸蔵、放出に伴う体積変化が大きいことが知られており、一例では、炭素負極で体積膨張が1.2〜1.5倍程度のところ、Si負極では約3倍になる例もある。この膨張収縮を繰り返すこと(充放電を繰り返すこと)によって、電極層の耐久性が不足し、例えば接触不足を起こしやすくなったり、サイクル寿命(電池寿命)が短くなったりすることも挙げられる。
本発明に係る固体電解質組成物によれば、このような膨張もしくは収縮が大きくなる電極層においてもその高い耐久性(強度)を発揮し、より効果的にその優れた利点を発揮しうるものである。
【0251】
負極活物質の濃度は特に限定されないが、固体電解質組成物中、固形成分100質量%において、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。なお、負極層が他の無機固体(例えば固体電解質)を含むときには、上記の濃度はそれを含むものとして解釈する。
【0252】
なお、上記の実施形態では、本発明に係る固体電解質組成物に正極活物質ないし負極活物質を含有させる例を示したが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
例えば、上記特定の電解重合性化合物でない一般のバインダーを用いて正極活物質ないし負極活物質を含むペーストを調製してもよい。ただし、本発明においては、上述したとおり、上記特定の電解重合性化合物を正極活物質や負極活物質と組み合わせて用いることが好ましい。
また、正極および負極の活物質層には、適宜必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。一般的な導電助剤としては、電子伝導性材料として、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属粉、金属繊維、ポリフェニレン誘導体などを含ませることができる。
【0253】
<集電体(金属箔)>
正もしくは負極の集電体は、化学変化を起こさない電子伝導体が好ましい。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
【0254】
上記集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
上記集電体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0255】
<全固体二次電池の作製>
全固体二次電池の作製は常法によればよい。具体的には、本発明の固体電解質組成物を集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成した電池用電極シートとする方法が挙げられる。
例えば、正極集電体である金属箔上に正極材料となる組成物を塗布後、乾燥し、正極活物質層を形成する。次いでその電池用正極シート上に、固体電解質組成物を塗布後、乾燥し、固体電解質層を形成する。さらに、その上に、負極材料となる組成物を塗布後、乾燥し、負極活物質層を形成する。その上に、負極側の集電体(金属箔)を重ねることで、正極層と負極層の間に、固体電解質層が挟まれた全固体二次電池の構造を得ることができる。なお、上記の各組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、正極活物質層をなす組成物、無機固体電解質層をなす組成物(固体電解質組成物)、及び負極活物質層をなす組成物のそれぞれの塗布の後に、乾燥処理を施しても良いし、重層塗布した後に乾燥処理をしても良い。乾燥温度は特に限定されないが、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。上限は、本発明に用いられる電解重合性化合物の揮発を抑制する点から、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態とさせることができる。このようにして作製した全固体二次電池を、以下に記載するように重合させることで、良好なイオン伝導性およびサイクル特性を示す全固体二次電池を得ることができる。
【0256】
<充放電により電解重合性化合物を重合させてなる全固体二次電池の作製>
本発明の全固体二次電池は、電解酸化重合または電解還元重合により重合体を形成する電解重合性化合物を含有する。それゆえ、上記の方法により製造した全固体二次電池を少なくとも1回以上充電または放電することにより、電解重合性化合物を重合させてなる全固体二次電池を得ることができる。
電解重合ポリマーは、電子による酸化還元の作用により形成されるので、電子パスとなる正極活物質層または負極活物質層中の活物質表面や導電助剤表面に形成される。具体的には、正極活物質層または負極活物質層中に無機固体電解質と共に含有される電解重合性化合物を、電池組み立て後に電極表面上で重合することにより、電解重合ポリマーが形成される。また、電地の初回の充放電前に電圧を印加することで、意図的に電解重合性化合物を重合させても良いし、電池の充放電の過程で形成させることもできる。
【0257】
ポリマーを含有する固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池に比べ、電解重合性化合物を含有する固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を作製し、充放電することで電解重合を行い、ポリマー化させた全固体二次電池は、生成した電解重合ポリマーの化学構造が同じであっても、電池電圧が高く(抵抗が低く)、サイクル特性に優れる。
理由は明らかではないが、前者の全固体二次電池ではポリマーが電極に一様に存在するのに対し、後者の全固体二次電池では活物質や導電助剤といったイオンおよび電子活性粒子表面の局所部位に電解重合ポリマーが高密度で形成されるため、イオン伝導を阻害せず結着力が優れると推定される。
また、無機固体電解質と活物質の間に酸化皮膜または還元皮膜が形成されることで、活物質と無機固体電解質間での副反応や分解が抑制され、この酸化皮膜または還元皮膜により、結着性も向上する。さらに、電解重合ポリマーが電気伝導性を有するため導電助剤としても機能し、電子伝導性が向上する。結果、サイクル特性に優れ、高い電圧出力が得られる全固体二次電池を提供することができる。
さらに、硫化物系無機固体電解質を用いた場合には、特に、水による無機固体電解質の分解を効果的に抑制することができる。
【0258】
ここで、良好な無機固体電解質の保護、結着性および電子伝導性の向上効果を有する電解重合ポリマーを得るには、以下の条件を満たすことも好ましく適用される。
すなわち、電解重合性化合物の添加量は、少ないほど薄膜化されるため好ましく、活物質と接触する電解重合ポリマーの面積は大きいほど好ましい。また、正極または負極用組成物のボールミル混合時間は、長いほど電解重合性化合物と活物質との相互作用が向上するため好ましい。
【0259】
<全固体二次電池の用途>
本発明に係る全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0260】
なかでも、高容量且つ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用されることが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い信頼性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の信頼性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0261】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下のような各応用形態が導かれる。
(1)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含んでいる固体電解質組成物(正極または負極の電極用組成物)
(2)上記固体電解質組成物を金属箔上に製膜した電池用電極シート
(3)正極活物質層と負極活物質層と固体電解質層とを具備する全固体二次電池であって、上記正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層の少なくともいずれかを上記固体電解質組成物で構成した層とした全固体二次電池
(4)上記固体電解質組成物を金属箔上に配置し、これを製膜する電池用電極シートの製造方法
(5)上記電池用電極シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法
(6)上記全固体二次電池を少なくとも1回以上充電または放電することにより、電解重合性化合物を電解酸化重合または電解還元重合させてなる全固体二次電池
【0262】
また、本発明の好ましい実施形態においては、全固体二次電池を製造した後の充放電により電解重合ポリマーを形成することで、無機固体電解質の保護、結着性および電子伝導性の向上効果を同時に奏する全固体二次電池を、容易に製造することができる。
【0263】
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−SやLLT、LLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質粒子のバインダーとして高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−SやLLT、LLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
【実施例】
【0264】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において「部」および「%」というときには、特に断らない限り質量基準である。
【0265】
〔本発明の電解重合性化合物の合成〕
(例示化合物40の合成)
500mL3つ口フラスコにグリセリン9.2gを加え、ジメチルアセトアミド100mLに溶解した。氷浴下、撹拌している溶液に、内温を10℃以下に保ちながら、シクロプロパンカルボン酸クロリド33.1gを30分間かけて加え、室温でさらに3時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル500mLに加え、飽和食塩水で3回水洗した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、粗体を31.1g得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、例示化合物40に示す電解重合性化合物を10.8g(淡黄色オイル)得た。
【0266】
(例示化合物44の合成)
500mL3つ口フラスコにα,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン(東京化成(株)製)10.2gを加え、ジメチルアセトアミド100mLに溶解した。これに炭酸カリウム10gとプロパルギルブロミド(東京化成(株)製)3.5gを加えて室温下で2時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル500mLに加え、飽和食塩水で3回水洗した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、粗体を10.9g得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で精製し、例示化合物44に示す電解重合性化合物を8.8g(淡黄色オイル)得た。
【0267】
ここで、実施例で使用した電解重合性化合物の分子量、常圧における沸点、融点を下記表4にまとめて記載する。
なお、融点はDSC(Differential scanning calorimetry、示差走査熱量測定)、沸点はガスクロマトグラフィーにより測定した。表中の>350は350℃より高いことを意味する。
【0268】
【表4】
【0269】
硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)の合成
本発明の硫化物固体電解質は、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして合成した。
【0270】
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li
2S、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P
2S
5、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、Li
2SおよびP
2S
5はモル比でLi
2S:P
2S
5=75:25とした。メノウ製乳鉢上において、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物固体電解質材料(Li−P−S系ガラス)6.20gを得た。
【0271】
<実施例1>
固体電解質組成物の製造
(1)固体電解質組成物(K−1)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質LLZ(Li
7La
3Zr
2O
12 ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)9.0g、バインダーとしてPVdF0.3g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステルA−DPH」)0.1g、分散媒体としてトルエン15.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−1)を製造した。
【0272】
(2)固体電解質組成物(K−2)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、バインダーとしてPVdF0.3g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「A−DPH」)0.1g、分散媒体としてヘプタン15.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−2)を製造した。
【0273】
(3)固体電解質組成物(K−3)〜(K−10)および(HK−1)の製造
下記表5に記載の構成に変えた以外は、上記固体電解質組成物(K−1)および(K−2)と同様の方法で、固体電解質組成物(K−3)〜(K−10)および(HK−1)を製造した。
【0274】
下記表5に、固体電解質組成物の構成をまとめて記載する。
ここで、固体電解質組成物(K−1)〜(K−10)が本発明の固体電解質組成物であり、固体電解質組成物(HK−1)が比較の固体電解質組成物である。
なお、「−」は、未使用か、それに基づき、0質量部であることを意味する。
【0275】
【表5】
【0276】
<表5の注>
LLZ:Li
7La
3Zr
2O
12 ランタンジルコン酸リチウム(平均粒子径5.06μm、(株)豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
PVdF:ポリビニレンジフルオリド
SBR:スチレンブタジエンゴム
PVdF−HFP:ポリビニレンジフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(モル比は、PVdF:HEP=90:10)
【0277】
(無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定)
無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行った。無機粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて1質量%の分散液を調製した。この分散液試料を用い、「レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920」(商品名、HORIBA社製)を用いて、無機固体電解質粒子の体積平均粒子径を測定した。
【0278】
二次電池正極用組成物の製造
(1)正極用組成物(U−1)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質LLZ(Li
7La
3Zr
2O
12 ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)2.7g、バインダーとしてPVdF0.3g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)社製、商品名「NKエステルA−TMMT」)0.5g、分散媒体としてトルエン12.3gを投入した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃℃、回転数300rpmで2時間機械分散を続けた後、活物質としてLCO(LiCoO
2 コバルト酸リチウム、日本化学工業(株)製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け正極用組成物(U−1)を製造した。
【0279】
(2)正極用組成物(U−2)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス2.7g、バインダーとしてPVdF0.3g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)社製、商品名「NKエステルA−TMMT」)0.5g、分散媒体としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合を続けた後、活物質としてNMC(Li(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)O
2 ニッケル、マンガン、コバルト酸リチウム、日本化学工業(株)製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け、正極用組成物(U−2)を製造した。
【0280】
(3)正極用組成物(U−3)〜(U−10)および(HU−1)の製造
下記表6に記載の構成に変えた以外は、上記正極用組成物(U−1)および(U−2)と同様の方法で、正極用組成物(U−3)〜(U−10)および(HU−1)を製造した。
【0281】
下記表6に、正極用組成物の構成をまとめて記載する。
ここで、正極用組成物(U−1)〜(U−10)が本発明の正極用組成物であり、正極用組成物(HU−1)が比較の正極用組成物である。
なお、「−」は、未使用か、それに基づき、0質量部であることを意味する。
【0282】
【表6】
【0283】
なお、正極用組成物U−10には、表6に示す組成に加えて、電解重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヨージド(東京化成(株)製))0.01質量部を添加した。
【0284】
<表6の注>
LLZ:Li
7La
3Zr
2O
12 ランタンジルコン酸リチウム(平均粒子径5.06μm、(株)豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
LCO:LiCoO
2 コバルト酸リチウム
NMC:Li(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)O
2 ニッケル、マンガン、コバルト酸リチウム
PVdF:ポリビニレンジフルオリド
SBR:スチレンブタジエンゴム
PVdF−HFP:ポリビニレンジフルオリド−フルオロプロピレン共重合体(モル比は、PVdF:HEP=90:10)
【0285】
二次電池負極用組成物の調製
(1)負極用組成物(S−1)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質LLZ(Li
7La
3Zr
2O
12 ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)5.0g、バインダーとしてPVdF0.3g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステルA−DPH」)0.5g、分散媒体としてトルエン12.3gを投入した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間機械分散を続けた後、アセチレンブラック7.0gを容器に投入し、同様に、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け、負極用組成物(S−1)を製造した。
【0286】
(2)負極用組成物(S−2)の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス5.0g、バインダーとしてPVdF0.3g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステルA−DPH」)0.5g、分散媒体としてヘプタン12.3gを投入し。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合を続けた後、活物質としてアセチレンブラック7.0gを容器に投入し、同様に、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け、負極用組成物(S−2)を製造した。
【0287】
(3)負極用組成物(S−3)〜(S−10)および(HS−1)の製造
下記表7に記載の構成に変えた以外は、上記負極用組成物(S−1)および(S−2)と同様の方法で、負極用組成物(S−3)〜(S−10)および(HS−1)を製造した。
【0288】
表7に、負極用組成物の構成をまとめて記載する。
ここで、負極用組成物(S−1)〜(S−10)が本発明の負極用組成物であり、負極用組成物(HS−1)が比較の負極用組成物である。
なお、「−」は、未使用か、それに基づき、0質量部であることを意味する。
【0289】
【表7】
【0290】
なお、負極用組成物S−10には、表7に示す組成に加えて、電解重合開始剤(ジフェニルヨードニウムヨージド(東京化成(株)製))0.01質量部を添加した。
【0291】
<表7の注>
LLZ:Li
7La
3Zr
2O
12(ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
PVdF:ポリビニレンジフルオリド
SBR:スチレンブタジエンゴム
PVdF−HFP:ポリビニレンジフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(モル比は、PVdF:HEP=90:10)
AB:アセチレンブラック
【0292】
二次電池用正極シートの製造
上記で製造した二次電池正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔上に、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、塗布溶媒を乾燥した。その後、ヒートプレス機を用いて、任意の密度になるように加熱および加圧し、二次電池用正極シートを製造した。
【0293】
二次電池用電極シートの製造
上記で製造した二次電池用正極シート上に、上記で製造した固体電解質組成物を、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱した。その後、上記で製造した二次電池負極用組成物を、乾燥した固体電解質組成物上にさらに塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱した。負極層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、任意の密度になるように加熱および加圧し、下記表8に記載の二次電池電極シートの試験No.101〜110およびc11を製造した。二次電池用電極シートは
図1の構成を有する。正極層、負極層および固体電解質層は、それぞれ下記表8に記載の膜厚を有する。
【0294】
全固体二次電池の製造
上記で製造した二次電池用電極シート15を直径14.5mmの円板状に切り出し、スペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケース14に入れ、
図2に示した試験体を用いて、コインケース14の外部から拘束圧(ネジ締め圧:8N)をかけ、下記表8に記載の試験No.101〜110およびc11の全固体二次電池を製造した。なお、
図2において、11が上部支持板、12が下部支持板、Sがネジである。
上記で製造した試験No.101〜110およびc11の全固体二次電池について、以下の評価を行った。
【0295】
<電池電圧の評価>
上記で製造した全固体二次電池の電池電圧を充放電評価装置「TOSCAT−3000」(商品名、東洋システム(株)製)により測定した。
充電は、電流密度2A/m
2で電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vに到達後は、電流密度が0.2A/m
2未満となるまで、定電圧充電を実施した。放電は、電流密度2A/m
2で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。これを繰り返し、3サイクル目の5mAh/g放電後の電池電圧を読み取り、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0296】
(評価基準)
A:4.0V以上
B:3.9V以上4.0V未満
C:3.8V以上3.9V未満
D:3.8V未満
【0297】
<サイクル特性の評価>
上記で製造した全固体二次電池のサイクル特性を、充放電評価装置「TOSCAT−3000」(商品名、東洋システム(株)製)により測定した。
充放電は、上記電池電圧評価と同様の条件で行った。3サイクル目の放電容量を100とし、放電容量が80未満となったときのサイクル数から、以下の基準で評価した。なお、評価「B」以上が本試験の合格レベルである。
【0298】
(評価基準)
A:50回以上
B:40回以上50回未満
C:30回以上40回未満
D:30回未満
【0299】
下記表8に、二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の構成および評価結果をまとめて記載する。
ここで、試験No.101〜110が本発明に用いられる電解重合性化合物を使用した二次電池用電極シートおよび全固体二次電池であり、試験No.c11が比較のポリマーを使用した二次電池用電極シートおよび全固体二次電池である。
なお、下記表8において、電池電圧は電圧と省略して記載した。
【0300】
【表8】
【0301】
本発明に用いられる電解重合性化合物を正極活物質層、負極活物質層、無機固体電解質層に含有する本発明の全固体二次電池は、高いイオン伝導性(高い電池電圧)およびサイクル特性を示した。
【0302】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0303】
本願は、2015年2月12日に日本国で特許出願された特願2015−025075に基づく優先権を主張するものであり、これをここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。