【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記孔は、前記フェルールの上下方向であって、前記ガイド機構の併設方向と垂直な方向に角部が来るように形成され、前記バンドル構造が、前記孔に対して上下いずれかの方向に押しつけられた状態で前記孔に固定されることを特徴とする請求項1記載の多心光コネクタ。
前記フェルールの端面において、前記バンドル構造は、前記孔の下方向に押しつけられ、前記フェルールの後端から露出する前記バンドル構造は、押しつけるべき角部とは反対側の角部方向に曲げられた状態で、前記他の孔から充填された接着剤により、前記バンドル構造が前記孔に固定されることを特徴とする請求項3に記載の多心光コネクタ。
前記フェルールの端面において、前記バンドル構造の前記孔に対する押し付け方向とは逆の方向に、前記孔が、前記フェルールの中心からずれた位置に配置されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の多心光コネクタ。
前記孔は、前記フェルールに複数形成され、それぞれの前記孔に複数の前記バンドル構造がそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の多心光コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、マルチコアファイバの各コア部を、例えば、他の光ファイバ心線等に接続する場合には、マルチコアファイバの端面と個々の光ファイバ心線とで、互いにコア部同士を光学的に精密に接続する必要がある。しかしながら、通常、マルチコアファイバのコア部間隔は狭いため(例えば40〜50μm)、これと接続可能な光ファイバ心線は極めて細い。このため、このような光ファイバ心線は、取り扱い性が悪い。
【0008】
また、特にシングルモードファイバの場合には、接続部の位置ずれは1〜2μm以下とする必要があるため、非常に高い位置精度が必要となる。したがって、従来の光ファイバ心線同士の接続のように、容易に接続が可能なマルチコアファイバコネクタ及び、マルチコアファイバと容易に接続が可能な多心光コネクタが望まれている。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、他のマルチコアファイバとの接続が可能なマルチコアファイバコネクタを提供することを目的とする。なお、本発明において、多心光コネクタとは、一つのコネクタ中に複数のコアを有する光コネクタの事であり、複数のコアは、マルチコアファイバによるものでも良く(この場合特にマルチコアファイバコネクタと呼ぶ場合がある)、それぞれ別の光ファイバによるものでも良い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明は、多心光コネクタであって、複数の光ファイバ心線のバンドル構造が固定されるフェルールを具備し、前記フェルールには、前記バンドル構造が固定される孔と、前記孔の両側部に形成されるガイド機構と、が形成され、前記孔は、略正六角形であり、前記孔には、複数の光ファイバ心線が最密配置で略正六角形にバンドル化された前記バンドル構造が固定され、前記フェルールの端面において、前記孔の六角形のサイズは、前記バンドル構造の外接六角形のサイズよりも大きく、前記孔の内面と前記外接六角形との間には隙間が形成され、前記バンドル構造は、前記孔の六角形の任意の角部の方向に押しつけられた状態で、前記孔の内部に固定され
、前記フェルール内において、前記孔の中心軸は同一直線上にあり、前記フェルール内において、前記複数の光ファイバ心線は、前記孔の形成方向に対して略平行であることを特徴とする多心光コネクタである。
【0011】
前記孔は、前記フェルールの上下方向であって、前記ガイド機構の併設方向と垂直な方向に角部が来るように形成され、前記バンドル構造が、前記孔に対して上下いずれかの方向に押しつけられた状態で前記孔に固定されてもよい。
【0012】
この場合、前記フェルールの上面には、前記孔と連通する他の孔が形成されてもよい。
【0013】
前記フェルールの端面において、前記バンドル構造は、前記孔の下方向に押しつけられ、前記フェルールの後端から露出する前記バンドル構造は、押しつけるべき角部とは反対側の角部方向に曲げられた状態で、前記他の孔から充填された接着剤により、前記バンドル構造が前記孔に固定されてもよい。
【0014】
前記フェルールの端面において、前記バンドル構造の前記孔に対する押し付け方向とは、逆の方向に、前記孔が、前記フェルールの中心からずれた位置に配置されてもよい。
【0015】
前記孔は、前記フェルールの内部において前記孔のサイズが変化するテーパ部を有し、前記孔の前記バンドル構造の挿入側から、前記孔の前記バンドル構造の端面の露出側に向かって、前記孔が縮径されてもよい。
【0016】
前記孔は、前記フェルールに複数形成され、それぞれの前記孔に複数の前記バンドル構造がそれぞれ配置されてもよい。
【0017】
本発明によれば、ガイド機構を有するいわゆるMTコネクタ(Mechanically Transferable Splicing Connector)として使用可能であり、従来のコネクタと同様に取り扱うことが可能である。したがって、取り扱い性に優れる。特に、MTコネクタと同様の構成は、例えば中心に配置されるマルチコアファイバやバンドル構造に対して、両側部の離れた位置に一対のガイド機構が形成されるため、ガイド機構における回転方向のずれによる影響が、中心部では小さくなる。したがって、このような構造は、精密な配置が要求されるマルチコアファイバに特に有利である。また、バンドル構造を有する多心光コネクタ同士や、マルチコアファイバを有する多心光コネクタ同士を接続することができる
【0018】
また、バンドル構造に対し、孔のサイズが大きいため、光ファイバ心線等の挿入性に優れる。また、バンドル構造は、最密配置された状態で、孔の所定の角部に押しつけられるため、フェルールに対して精度良く配置することができる。
【0019】
また、バンドル構造は、上下方向の角部に押しつけられる。この状態で、バンドル構造を孔に固定すればよいため、フェルールに対してバンドル構造を精度良く配置することができる。また、フェルールの上下方向にバンドル構造を押し付けるため、方向が分かりやすく作業性に優れる。
【0020】
また、接着剤の充填孔である他の孔をフェルール上面に形成することで、バンドル構造を孔に挿入した後、他の孔から、容易に孔内に接着剤を充填することができる。
【0021】
また、フェルールの後端から露出するバンドル構造を、押しつけるべき角部とは反対側の角部方向に曲げることで、フェルールの先端面から露出するバンドル構造を押しつけるべき角部に対して容易に押しつけることもできる
【0022】
また、孔を、フェルールの中心からバンドル構造の押し付け方向とは逆方向に僅かにずれた位置に配置することで、フェルールの中心にバンドル構造を配置することができる。
【0023】
また、孔の内部には、フェルールの後方から前方に向かって徐々に縮径するテーパ部が形成され、孔の後端部における内径が、バンドル構造に対して十分に大きければ、バンドル構造の挿入性に優れる。なお、バンドル構造を挿入する側の孔の内径は、バンドル構造を構成する全ての本数の光ファイバ心線(被覆部を含む)が挿入可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マルチコアファイバとの接続が可能であり、精度良く光ファイバ心線を配置可能な多心光コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態にかかる多心光コネクタ20について説明する。
図1は多心光コネクタ20を示す斜視図、
図2は正面図である。多心光コネクタ20は、フェルール23、マルチコアファイバ25、キャピラリ29等から構成される。
【0027】
第1のフェルールであるフェルール23には孔21が形成される。また、マルチコアファイバ25は、キャピラリ29に固定される。孔21の形状は、キャピラリ29の外形に対応し、孔21にはキャピラリ29に固定されたマルチコアファイバ25が固定される。また、フェルール23の端面において、マルチコアファイバ25の両側部にはガイド機構であるガイド穴27が形成される。したがって、接続対象のコネクタ等に形成されるガイドピンと接続時に位置決めをすることができる。また、ガイド穴27には、図示を省略したガイドピンを挿入することもできる。また、フェルール23の上面(側面)には、孔21と連通する孔24が形成される。
【0028】
なお、キャピラリ29と孔21の固定は、例えば接着剤によって接着すればよい。この場合、孔21の内面に予め接着剤を塗布しておき、キャピラリ29を孔21に挿入してもよいが、キャピラリ29を孔21に挿入した後、接着剤の充填孔である孔24あるいはキャピラリ29と孔21の隙間から、孔21内に接着剤を充填してもよい。
【0029】
マルチコアファイバ25は、複数のコアが所定の間隔で配置され、周囲をクラッドで覆われたファイバである。なお、マルチコアファイバ25は、例えば図示したように全部で7つのコアを有し、マルチコアファイバ25の中心と、その周囲に正六角形の各頂点位置に配置される。すなわち、中心のコアと周囲の6つのコアとは全て一定の間隔となる。また、周囲の6つのコアにおいて、隣り合う互いのコア同士の間隔も同一となる。
【0030】
フェルール23の先端面には、マルチコアファイバ25(および、これを保持するキャピラリ29)の端面が露出する。なお、マルチコアファイバ25(キャピラリ29)の端面は、フェルール23の端面と一致するようにフラットに研磨されてもよく、または球面研磨されてもよい。例えば
図3(a)に示すように、フェルール23の端面に球面研磨されたマルチコアファイバ25(キャピラリ29)が、露出するようにしても良い。この場合には、マルチコアファイバ25(キャピラリ29)の端面とフェルール23の端面位置は、略一致する。
【0031】
また、
図3(b)に示すように、マルチコアファイバ25(キャピラリ29)の先端を、フェルール23の先端に突出させても良い。なお、この場合には、キャピラリ29をフェルールとして機能させ、フェルール23をフランジ部として機能させることができるが、本発明では、キャピラリ29がフェルール23の端面に突出するものとして説明する。
【0032】
マルチコアファイバ25の各コアは、フェルール23に対して、所定の位置に配置される。すなわち、フェルール23のガイド穴27を基準として、マルチコアファイバ25の回転方向の位置が決められる。
【0033】
多心光コネクタ20において、マルチコアファイバ25の回転方向の位置決めを行うためには、多心光コネクタ20の正面から、拡大カメラでコアの配置を確認するか、または、他のマルチコアファイバ等と光接続させた状態で検出光が最大となるように調心すればよい。具体的には、
図4(a)に示すように、キャピラリ29を孔21に挿通した状態で、キャピラリ29を回転させることで(図中F方向)、マルチコアファイバ25の回転調心を行うことができる。
【0034】
また、
図4(b)に示す多心光コネクタ20aのように、フェルール23の一部に、溝31を設けても良い。溝31は、フェルール23の上面であって、フェルール23の幅方向に渡って形成される。フェルール23の上面からの溝31の深さは、フェルール23の上面から孔21までの距離よりも深い。したがって、溝31を横切るように、キャピラリ29の一部が露出する。
【0035】
多心光コネクタ20aにおいては、マルチコアファイバ25の回転調心を、溝31に露出したキャピラリ29で行うことができる。すなわち、溝31に露出したキャピラリ29の一部を回転させることで(図中F方向)、マルチコアファイバ25の回転調心を行うことができる。
【0036】
なお、キャピラリ29の半径は、マルチコアファイバ25のコアピッチの2倍以上であることが望ましい。例えば、コアピッチが50μmのマルチコアファイバ25に対して、キャピラリ29の外径が200μm(半径100μm)とすると、キャピラリ29の外周面の移動距離1μmに対し、コアの移動距離が0.5μmとなる。したがって、倍の精度で回転位置の調整が可能である。
【0037】
また、上述した例では、マルチコアファイバ25をキャピラリ29に挿入して固定した例を示したが、キャピラリ29は必ずしも必要ない。例えば、マルチコアファイバ25の外周に被覆部が形成されていれば、当該被覆部をフェルール23に固定してもよい。この場合であっても、被覆部の半径はコアピッチの2倍以上であることが望ましい。また、フェルール23の端面において被覆が除去されたマルチコアファイバ25を固定する事も可能であり、この場合、より精密な位置決めが可能となる。
【0038】
以上、本実施の形態によれば、フェルール23にはガイド穴27が形成されるため、MTコネクタタイプの多心光コネクタ20を得ることができる。したがって、当該コネクタと接続可能な構造を有すれば、マルチコアファイバなどの多心コネクタと接続が容易である。
【0039】
次に、多心光コネクタ20と接続が可能な多心光コネクタ1について説明する。
図5は多心光コネクタ1を示す図であり、
図5(a)は多心光コネクタ1の斜視図、
図5(b)は
図5(a)のA−A線断面図である。
【0040】
フェルール5には、孔7が設けられる。孔7は、略正六角形の形状であり、フェルール5を前後方向に貫通する。孔7の内部にはバンドル構造9が挿入され、バンドル構造9は孔7の内面に固定される。すなわち、バンドル構造9がフェルール5に固定される。また、フェルール5の上面(側面)には、孔7と連通する孔6が形成される。
【0041】
なお、バンドル構造9と孔7の固定は、例えば接着剤によって接着すればよい。この場合、孔7の内面に予め接着剤を塗布しておき、バンドル構造9を孔7に挿入してもよいが、バンドル構造9を孔7に挿入した後、接着剤の充填孔である孔6から、孔7内に接着剤を充填してもよい。
【0042】
バンドル構造9は、複数の光ファイバ心線3によって構成される。
図5(b)に示すように、フェルール5の孔7には、後方から光ファイバ心線3が挿入される。なお、光ファイバ心線3は被覆部を有するが、光ファイバ心線3の端部においては、当該被覆部が除去される。したがって、バンドル構造9は、被覆部が除去された領域で形成される。
【0043】
孔7の内部には、フェルール5の後方から前方に向かって徐々に縮径するテーパ部が形成される。すなわち、光ファイバ心線3の挿入側は、孔7の径が大きく、先端側に行くにつれて、孔7の径が小さくなる。孔7の後端部における内径は、バンドル構造9に対して十分に大きい。したがって、バンドル構造9(または光ファイバ心線3)の挿入性に優れる。なお、バンドル構造9を挿入する側の孔7の内径は、バンドル構造9を構成する全ての本数の光ファイバ心線3(被覆部を含む)が挿入可能である。したがって、フェルール5の内部において、被覆部の端部(被覆除去部との境界)を配置することができる。
【0044】
なお、図示した例では、7本の光ファイバ心線3で構成されたバンドル構造9を示すが、本発明はこれに限られない。光ファイバ心線3を略六角形に最密配置することが可能であれば、全19本など光ファイバ心線3の本数は問わない。また、中心に配置する光ファイバの径と外周に配置する光ファイバの径を適宜調整する事で、例えば、1本の光ファイバの周囲に9本の光ファイバを密着して配置した10本のバンドル構造を得ることも可能である。
【0045】
フェルール5の先端面には、バンドル構造9(すなわち、これを構成する全ての光ファイバ心線3)の端面が露出する。この際、バンドル構造9の端面は、フェルール5の先端面と同一面上に形成される。
【0046】
フェルール5の先端面において、孔7の両側部には、ガイド機構であるガイド穴11が形成される。したがって、接続対象のコネクタ等に形成されるガイドピンと接続時に位置決めをすることができる。また、ガイド穴11には、図示を省略したガイドピンを挿入することもできる。
【0047】
図6(a)は、多心光コネクタ1の正面図である。
図6(a)に示すように、本実施形態においては、孔7は、六角形状の対向する一対の角部が、左右方向(ガイド穴11の併設方向)に向くように形成される。
【0048】
図6(b)は、
図6(a)のB部拡大図である。
図6(b)に示すように、バンドル構造9は、接着剤13によって孔7に固定される。ここで、前述のように、光ファイバ心線3は、最密配置で略六角形に配置される。すなわち、バンドル構造9には、バンドル構造9の外周に配置された全ての光ファイバ心線3の外面と接するような外接正六角形15が想定される。
【0049】
フェルール5の先端面における孔7の略正六角形状の大きさは、外接正六角形15よりもわずかに大きい。したがって、孔7の内面と外接正六角形15との間には隙間が形成される。バンドル構造9は、正面視において、孔7を構成する六角形の所定の角部の方向に押しつけられた状態で孔7に固定される。例えば、
図6(b)に示す例では、右下方向(図中矢印C方向)の角部にバンドル構造9が押しつけられた状態で孔7に固定される。したがって、孔7に対する押し付け方向とは逆側の角部において、孔7の内面と外接正六角形15との間の隙間が最も大きくなる。
【0050】
ここで、バンドル構造9の孔7に対する押し付け方向を一定の方向に決めて、これに応じて、フェルール5における孔7の配置をあらかじめ設定しておけば、フェルール5に対するバンドル構造9の端面の配置を一定にすることができる。すなわち、孔7は、フェルール5の中心からバンドル構造9の押し付け方向とは逆方向に僅かにずれた位置に配置される。したがって、バンドル構造9を所定の方向に押し付けた状態で孔7に固定することで、フェルール5の中心にバンドル構造9を配置することができる。したがって、フェルール5に対して、バンドル構造9を構成する各光ファイバ心線3のコアの位置を精度よく配置することができる。
【0051】
なお、バンドル構造9を所定の方向の角部に押し付けるには、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、フェルール5の先端面からバンドル構造9が突出した状態において、フェルール5の先端面から露出するバンドル構造9とフェルール5の後端から露出する光ファイバ心線3とを、孔7の形成方向に対して平行に維持する。この状態で、押しつけるべき角部の方向にバンドル構造9および光ファイバ心線3の全体を移動させればよい。
【0052】
また、フェルール5の後端から露出する光ファイバ心線3を、押しつけるべき角部とは反対側の角部方向に曲げることで、フェルール5の先端面から露出するバンドル構造9を押しつけるべき角部に対して押しつけることもできる。いずれにしても、バンドル構造9を所定の角部に押し付けた状態で、バンドル構造9を孔7に固定すればよい。
【0053】
次に、バンドル構造9の構築方法の一例を示す。なお、バンドル構造9は、光ファイバ心線3の端部が互いに接触するように最密に配置した状態を確保できれば、いずれの方法で形成してもよい。
【0054】
まず、所定本数の光ファイバ心線3の被覆を除去し、フェルール5(または他のキャピラリ等)に挿入する。この際、フェルール5の端部からは、光ファイバ心線3の先端がそれぞれ同一長さだけ出るように(例えば10mm程度)、光ファイバ心線3をフェルール5に挿入する。なお、フェルール5には光ファイバ心線3を仮固定する。
【0055】
フェルール5の端部から突出する光ファイバ心線3の先端は、あらかじめ容器に溜められた接着剤17に浸けられる。なお、接着剤17の接着力は弱くてもよいが、例えば100cps以下のごく低粘度のものが望ましい。また、接着剤としては、水ガラス(ゾルゲルガラス)等を用いる事も可能である。
【0056】
図7は接着剤17の表面張力による光ファイバ心線3同士の接着状態を示す概念図で、
図7(a)は正面図(簡単のため光ファイバ心線3は2本のみ示す)、
図7(b)は断面図である。
【0057】
複数の光ファイバ心線3は、単に束ねられたのみでは、光ファイバ心線3同士の間に隙間が形成される場合がある。しかし、光ファイバ心線3の端部を接着剤17に接触させることで、表面張力(毛細管現象)によって接着剤17が光ファイバ心線3同士の隙間に吸い上げられる。この際、互いの表面張力によって光ファイバ心線3同士が密着される(図中矢印D方向)。
【0058】
すなわち、
図7(b)に示すように、光ファイバ心線3同士の間に多少不均一な隙間が形成されていても、その隙間には接着剤17が吸い上げられて、光ファイバ心線3同士が密着される。この際、光ファイバ心線3同士が確実に最密配置となる。このような効果は、本発明のように極めて微細な光ファイバ心線3(例えばΦ50μm以下)に対して特に有効である。
【0059】
次に、バンドル化された光ファイバ心線3を孔7に接着剤13(
図6(b))で接着する。接着剤13によって、孔7とバンドル構造9との隙間およびファイバ心線同士の隙間が埋められ、バンドル構造9と孔7とが接着される。次いで、フェルール5より突出する光ファイバ心線3およびフェルール5先端面の一部を研磨する。以上により多心光コネクタ1が形成される。
【0060】
なお、本実施例では先に複数の光ファイバ心線3をフェルール5に挿通する手順としたが、本発明はこれに限られない。例えば、本実施例と同様の方法により複数の光ファイバ心線3を密着して固定し、しかる後にフェルール5に挿入し接着剤で固定しても良い。この場合、複数の光ファイバ心線3を筒状の仮配列部材に挿入した状態で接着剤17に浸す事で、確実に細密構造に固定する事が可能となる。
【0061】
以上、本実施の形態によれば、フェルール5にはガイド穴11が形成されるため、MTコネクタタイプの多心光コネクタ1を得ることができる。したがって、当該コネクタと接続可能な構造を有すれば、マルチコアファイバとも接続が容易である。
【0062】
また、バンドル構造9に対し、孔7のサイズが大きいため、光ファイバ心線等の挿入性に優れる。特に、孔7が、挿入側から端面側に向かって縮径するように、内部にテーパ部を有するため、光ファイバ心線等の挿入作業性に優れるとともに、挿入後の端面におけるバンドル構造9の位置精度も高い。また、バンドル構造9は、最密配置された状態で、孔7の所定の角部に押しつけられるため、フェルール5に対して精度良く配置することができる。
【0063】
次に、バンドル構造を用いた他の実施の形態について説明する。
図8は、多心光コネクタ1aを示す図であり、
図8(a)は正面図、
図8(b)は、
図8(a)のE部拡大図である。なお、以下の説明において、多心光コネクタ1と同様の機能を奏する構成については、
図5〜
図6と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
多心光コネクタ1aは、多心光コネクタ1と略同様の構成であるが、フェルール5aに対する孔7の向きが異なる。多心光コネクタ1aでは、孔7は、フェルール5aの上下方向(ガイド穴11の併設方向とは垂直な方向)に対向する角部がそれぞれ向くように配置される。すなわち、多心光コネクタ1における孔7の向きに対し、多心光コネクタ1aにおける孔7の向きは30°回転した向きとなる。
【0065】
前述の通り、バンドル構造9の外接正六角形に対し、孔7の略正六角形はわずかに大きい。したがって、バンドル構造9の外接正六角形と、孔7の内面には隙間が形成される。
【0066】
本実施形態では、バンドル構造9は、孔7の上下方向(図では下方向であって、矢印E方向)に押しつけられる。すなわち、バンドル構造9は、上下方向の角部に押しつけられる。この状態で、バンドル構造9を孔7に固定すればよい。
【0067】
多心光コネクタ1aによれば、多心光コネクタ1と同様の効果を得ることができる。また、フェルール5aの上下方向であって、所定の方向にバンドル構造9を押し付けることで、フェルール5aに対してバンドル構造9を精度良く配置することができる。また、フェルール5aの上下方向にバンドル構造9を押し付けるため、方向が分かりやすく作業性に優れる。
【0068】
なお、多心光コネクタ1、1aでは、接続対象となる前述したマルチコアファイバ25に対応するバンドル構造9が形成される。すなわち、バンドル構造9は、接続対象となるマルチコアファイバ25のコア数の光ファイバ心線3からなる。また、バンドル構造9は、接続対象となるマルチコアファイバ25のコアピッチに対応して光ファイバ心線3が配置される。
【0069】
多心光コネクタ20と多心光コネクタ1、1aとは互いに対応する形態を有する。すなわち、フェルール23は、フェルール5に対応し、一対のガイド穴27は、フェルール5におけるガイド穴11と対応する。したがって、ガイド穴11とガイド穴27とは、例えばガイドピン等によるガイド機構によって、接続時に、互いのフェルール5、23の位置を正確に合わせることができる。
【0070】
また、フェルール23に対するマルチコアファイバ25の配置とバンドル構造9とは予め調心される。例えば、中心コアの位置が調心されるとともに、中心コアに対する周囲のコア(図では6個)の配置として、対向する2つのコアが上下方向(ガイド穴27の併設方向と垂直な方向)に向くように配置される。
【0071】
以上のように、バンドル構造9を有する多心光コネクタ1、1aと、マルチコアファイバ25を有する多心光コネクタ20を接続することで、容易にマルチコアファイバ25と光ファイバ心線3とを接続することができる。この際、多心光コネクタ1、1aおよび多心光コネクタ20は、従来から使用されるMTコネクタと同様にして用いることができる。したがって、取り扱い性に優れる。
【0072】
また、バンドル構造9は、フェルール5に対して精度良く配置することができるため、マルチコアファイバ25をフェルール23に対して調心すれば、マルチコアファイバ25とバンドル構造9とを精度よく接続することができる。すなわち、接続作業性に優れ、精度良く接続可能な光コネクタ接続構造を得ることができる。
【0073】
なお、バンドル構造9を有する多心光コネクタ1同士や、マルチコアファイバ25を有する多心光コネクタ20同士を接続することができることは言うまでもない。
【0074】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、多心光コネクタ1、1aでは、フェルール5に対して一つの孔7が形成されたが、本発明はこれに限られない。
図9は多心光コネクタ1bを示す図である。
【0076】
図9に示した多心光コネクタ1bでは、フェルール5bに対して孔7が複数配置される。孔7には、それぞれバンドル構造9が固定される。なお、孔7の個数は、図示した例に限られない。また、孔7の配置は、ガイド穴11の併設方向に一列に配置してもよく、複数列に配置してもよい。
【0077】
多心光コネクタ1bによれば、より多くの光ファイバ心線3を固定することができる。このため、高密度に光ファイバ心線3を保持することができる。なお、この場合には、接続対象となるマルチコアファイバを有する多心光コネクタにおいても、同様に複数のマルチコアファイバを配置すればよい。
【0078】
また、本発明の多心光コネクタにおけるガイド機構は、ガイド孔等によるものに限られない。例えば、
図10(a)に示す多心光コネクタ1cのように、略矩形のフェルール5cを用いれば、その側面(またはこの上下面)が、ガイド機構19aとして機能する。すなわち、他のコネクタ等との接続の際、互いのフェルール5cにおける側面または上下面の向きを一致させることで、内部のバンドル構造9の回転方向の位置を決めることができる。
【0079】
同様に、
図10(b)に示す多心光コネクタ1dのように、略円形のフェルール5dの一部が切欠かれて、平坦部が形成されてもよい。この場合には、この切欠き部がガイド機構19bとなる。ガイド機構19bによっても、多心光コネクタ1dの回転方向の位置を決めることができる。
【0080】
また、
図11(a)に示す多心光コネクタ1eのように、略円形のフェルール5eの一部が切欠かれて、キー溝が形成されてもよい。この場合には、このキー溝がガイド機構19cとなる。ガイド機構19cによっても、多心光コネクタ1eの回転方向の位置を決めることができる。
【0081】
また、
図11(b)に示す多心光コネクタ1fのように、略円形のフェルール5fの一部に突起が形成されてもよい。この場合には、この突起がガイド機構19dとなる。ガイド機構19dによっても、多心光コネクタ1fの回転方向の位置を決めることができる。
【0082】
なお、前述の例で示したバンドル構造9を用いた各多心光コネクタに対し、バンドル構造9に代えて、マルチコアファイバ25(キャピラリ29)を配置してもよい。
【0083】
また、多心光コネクタ20等において、キャピラリ29をフェルール23の先端まで設けなくてもよい。例えば、
図12(a)に示すように、マルチコアファイバ25(被覆部付)の先端部の被覆部を除去し、露出したマルチコアファイバ25をキャピラリ29に挿通して固定する。この際、マルチコアファイバ25は、キャピラリ29の先端から突出する。
【0084】
すなわち、マルチコアファイバ25の被覆部の除去長さが、キャピラリ29の長さよりも長くなるようにする。したがって、キャピラリ29の端部は、フェルール23内部に位置し、キャピラリ29の端部は、フェルール23の端面に露出しない。なお、マルチコアファイバ25の端面は、クリーバによって平面にカットされる。
【0085】
フェルール23の内部には、キャピラリ29の外径とマルチコアファイバ25の外径に対応した段差付の孔が設けられる。すなわち、孔は、フェルール23の光接続側(図中左側)の前端面側にマルチコアファイバ25の外径に対応した第1部分と、フェルール23の後端面側(図中右側)にキャピラリ29の外径に対応した第2部分とを有する。なお、キャピラリ29に代えてマルチコアファイバ25の被覆部であってもよく、また、マルチコアファイバ25に代えてバンドル構造としてもよい。
【0086】
なお、
図12(a)に示す例では、フェルール23の後端側にキャピラリ29が突出しているが、キャピラリ29の一部が、フェルール23の上下面または側面から露出し、回転が可能であれば、必ずしもキャピラリ29は、フェルール23の後端側に突出させなくてもよい。例えば、孔(第2部分)に達するように、フェルール23の外周面に溝を形成して、溝から内部のキャピラリ29等を露出させてもよい。マルチコアファイバ25の回転調芯後、紫外線硬化樹脂等によってマルチコアファイバ25をフェルール23に固定すればよい。
【0087】
このような形態にする事で、マルチコアファイバ25の位置をガイド機構に対してより精密に位置決めする事が可能となる。
【0088】
また、マルチコアファイバ25の端面は、フェルール23の端面と一致させてキャピラリ29の回転調芯を行ってもよく、または、マルチコアファイバ25の端面をフェルール23の端面から突出させた状態で、キャピラリ29の回転調芯を行ってもよい。マルチコアファイバ25の端面を突出させた場合には、マルチコアファイバ25の固定後に、突出したマルチコアファイバ25の端部を、切断または研磨すればよい。
【0089】
また、マルチコアファイバ25の端面を、フェルール23の端面からわずか(2μm〜10μm)突出させた状態とすることで、マルチコアファイバ同士をPC接続することが可能となる。
【0090】
本実施例において、キャピラリ29を用いずに、被覆付きのマルチコアファイバをフェルール後端部に露出させ、被覆部をキャピラリと同様の役割で使用しても良い。この場合、フェルールの端面においては被覆が除去されたマルチコアファイバを配置させ、フェルールの後端部においては被覆付きのマルチコアファイバを露出させ、この被覆部を回転して回転調心を行う。このとき、被覆の半径がマルチコアファイバのコアピッチの2倍以上であれば、キャピラリを用いた場合と同様の効果を得る事が可能である。
【0091】
さらに、
図4(b)で図示したものと同様に、フェルール23に溝(図示しない)を設けて溝部から露出するキャピラリまたは被覆部を回転しても良い。この場合、フェルール23に設けられる溝は段差付孔の後端部側に設けられることは言うまでもない。
【0092】
また、
図12(b)に示すように、バンドル構造9を用いてもよい。例えば、マルチコアファイバ25をキャピラリ29に挿通して固定し、キャピラリ29をフェルール23に対して回転調芯後固定する。また、キャピラリ33に複数の光ファイバ心線3を挿通し、例えば最密配置した状態で固定し、ファイババンドル35を形成する。その後、端面を研磨したキャピラリ33とキャピラリ29とを対向させて、ファイババンドル35とマルチコアファイバ25とを回転調芯する。この際、他のMTタイプコネクタとフェルール23と接合することで、回転調心時の光パワーのモニターが容易となる。