(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出射光として可視光を出射する光出射面を有する可視光LED光源と、前記LED光源を覆って設けられた可視光透過性軸対称透明部材と、前記LED光源から離間して前記透明部材の内部に配置され、前記LED光源から前記透明部材を通って入射した可視光を散乱させて前記軸対称透明部材の外部に出射させる軸対称光散乱部材とを備え、
前記光散乱部材は、前記光出射面に向けて平行投影される投影像が前記光出射面の少なくとも一部に重なるように配置され、前記出射光は、380nmから780nmの波長領域において、下記関係式(I)を満足する連続した発光スペクトル分布を示し、
前記透明部材は、前記光散乱部材を囲包する部分が集光レンズを形成し、
前記軸対称透明部材は、前記LED光源から発光される発光光を実質的に全反射する側面と、基端側から先端側に向けて肉厚が漸次減少する肉厚変化部分とを有し、
前記肉厚変化部分は、基端側から先端側に向けて外径が徐々に縮小する外径縮小部と、前記外径縮小部に対応する前記軸対称透明部材の内部に形成され、基端側から先端側に向けて内径が徐々に拡大する中空部とを含み、
前記肉厚変化部分が前記集光レンズを形成することを特徴とするLEDモジュール。
関係式(I):
−0.15≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.15
(関係式(I)において、
P(λ):本発明の白色光源の発光スペクトル、
B(λ):白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトル、
V(λ):分光視感効率のスペクトル、
λmax1:P(λ)×V(λ)が最大となる波長、
λmax2:B(λ)×V(λ)が最大となる波長、
λは波長であり、380nm≦λ≦780nm)。
前記LED光源は、紫外または紫色領域に一次光を発する少なくとも1つ以上のLEDチップと、前記LEDチップからの一次光を吸収し、可視光領域に2次光を発する蛍光体層を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のLEDモジュール。
前記青色蛍光体が、下記化学式(A)で示されるユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、および下記化学式(B)で示されるユーロピウム付活アルカリ土類マグネシウムアルミン酸塩蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする請求項6に記載のLEDモジュール。
化学式(A):
(Sr1-x-y-x-zBaxCayEuz)5(PO4)3Cl
(ここで、0≦x<0.3、0≦y<0.1、0.005≦z<0.15)
化学式(B):
(Ba1-x-y-x-zSrxCayEuz)MgAl10O17
(ここで、x<0.5、y<0.1、0.05<z<0.4)。
前記緑色蛍光体が、下記化学式(D)で示されるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、および下記化学式(E)で示されるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする請求項6または7に記載のLEDモジュール。
化学式(D):
(Sr1-x-y-z-uBaxMgyEuzMnu)2SiO4
(ここで、0.2≦x≦0.6、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02)
化学式(E):
(Sr1-xEux)αSiβAlγOδNω
(ここで、0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22)。
前記黄色蛍光体が下記化学式(F)で示されるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、および下記式化学式(G)で示されるセリウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のLEDモジュール。
化学式(F):
(Sr1-x-y-z-uBaxMgyEuzMnu)2SiO4
(ここで、0≦x≦0.3、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02)
化学式(G):
(M1-xCex)2yAlzSi10-zOuNw
(ここで、0<x≦1、0.8≦y≦1.1、2≦z≦3.5、u≦1、1.8≦z−u、13≦u+w≦15、元素MはSrであり、Srの一部はBa、Ca、およびMgから選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい)。
前記赤色蛍光体が下記化学式(H)で示されるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、および下記化学式(I)で示されるユーロピウム付活カルシウムストロンチウム酸窒化物蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載のLEDモジュール。
化学式(H):
(Sr1-xEux)αSiβAlγOδNω
(ここで、0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15)
化学式(I):
(Ca1-x-ySrxEuy)SiAlN3
(ここで、0≦x<0.4、0<y<0.5)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態のLEDモジュールは、LED光源と、可視光透過性透明部材と、透明部材内部に設けられた光散乱部材を備え、可視光を出射する。そして、実施形態の照明装置は、実施形態のLEDモジュールを内包するグローブと、このグローブに接続されるとともに前記LEDモジュールと熱的に接続される放熱筐体と、前記放熱筐体に内包され交流を直流に変換する電源回路と、前記放熱筐体に接続され、外部からの電力が供給される口金を更に備える。
【0009】
白熱電球は、ガラスバルブ内のフィラメントのジュール熱による輻射を発光に利用しているが、発光の原理上放射光の分光分布が黒体輻射に近く、その波長分布は、おおよそ色温度2500〜3000Kの黒体輻射に近い形になっている。
【0010】
実施形態において、LED光源は、少なくとも1つのLEDチップと、その少なくとも1つのLEDチップを覆って形成された蛍光体層を備える。LEDチップ自体から出射される光(一次光)が、蛍光体層により波長変換され二次光としてLED光源から出射される。この二次光は、可視光の全波長領域(380nmから780nmの波長領域)に発光成分を含む連続スペクトルの白色光であり、その発光スペクトル形状は黒体輻射の発光スペクトルに近似していて、白熱電球に極めて近い発光を示す。
【0011】
より具体的には、実施形態の白色光源は、可視光波長領域、波長λが380〜780nmの領域において、下記関係式(I):
−0.15≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.15
を満たすことが好ましい。
【0012】
関係式(I)において、P(λ)は、白色光源の発光スペクトルであり、B(λ)は、白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトルであり、V(λ)は、分光視感効率のスペクトルであり、λmax1は、P(λ)×V(λ)が最大となる波長であり、λmax2は、B(λ)×V(λ)が最大となる波長である。
【0013】
関係式(I)において、[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]は、白色光源の発光スペクトルと、この白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトルとの差分スペクトルを表す。この差分スペクトル(以後、A(λ)で表記する)が−0.15以上、+0.15以下であることにより、白色LDE光源は、黒体輻射の発光スペクトルと近似した発光スペクトル形状を示すことになる。
【0014】
ここで、白色光源の発光スペクトルP(λ)は、JIS−C−8152に準じて積分球を使用した全光束測定で求めることができる。色温度(単位:ケルビン(K))は、発光スペクトルから計算により求めることができる。
【0015】
白色光源の色温度と同じ黒体輻射の発光スペクトルB(λ)は、プランク分布により求めることができる。プランク分布は、下記式(X)で表される。
【数1】
【0016】
式(X)において、hはプランク定数、cは光速、λは波長、eは自然対数の底、kはボルツマン定数、Tは色温度である。このうち、h、c、e、kは定数であるため、色温度Tが決まれば波長λに応じた発光スペクトルを求めることができる。従って、LEDモジュールもしくは照明装置より放射される白色光の色温度が決まると、色温度に応じた黒体輻射の発光スペクトル分布が計算され、同時にB(λ)×V(λ)も求められる。B(λ)×V(λ)は人間の眼を通して見た、黒体輻射の発光スペクトル分布を示すものである。
【0017】
分光視感効率は、人間の目の光に対する感度を視感度といい、CIE(国際照明委員会)は標準分光比視感度V(λ)として定めたものであり、分光視感効率と標準分光比視感度とは同じ意味である。この分光視感効率は、
図1で与えられるスペクトル分布で示される。
【0018】
人間の眼は黄色に高い感度をもち、紫色より短波長の紫外線や、深赤色より長波長の赤外線に対しては感度がゼロに等しい。このため、分光視感効率は、波長約550nmにピークを持ち、波長400nm以下、および波長700nm以上では相対発光強度がほぼゼロに近い分光分布を有している。
【0019】
また、本発明の白色光源は、黒体輻射の発光スペクトルにより一層近似した発光スペクトル形状を示すことが望ましく、そのためには下記関係式(II)を満たすことが、さらに望ましい。
【0020】
関係式(II):
−0.10≦A(λ)≦+0.10。
【0021】
さて、実施形態の白色光源は、上に述べたように、LEDチップから出射される一次光を蛍光体により波長変換し二次光としてLED光源から出射させる。
【0022】
蛍光体には様々な発光色や発光スペクトル形状を示す材料があり、いくつかの蛍光体材料を組み合わせることにより、黒体輻射の発光スペクトルを再現することができる。その場合、LEDチップとして、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲内にあるものを使用することが好ましい。通常の白色LED光源には、青色発光LEDチップに黄色発光や赤色発光の蛍光体を組み合わせて白色光を得るものがあるが、白色発光LEDは実施形態に使用することは好ましいとはいえない。一般にLEDチップの発光スペクトルは、シャープな形状を有しており、比較的ブロードな発光スペクトルを示す蛍光体と組み合わせると、両者間のピーク高さにギャップが生じる。このため白色発光の波長領域の中で、LEDチップの発光領域のみが突出して、黒体輻射のスペクトル形状をスムーズに再現することが困難となる。これに対し、波長が350〜420nmの範囲内にある紫外光や紫色光は、視感度が低いため、シャープな発光であったとしても、人間の眼には感知できないか、感知できても弱い発光であるため、スペクトル形状的にも、悪影響を及ぼすことが少ない。
【0023】
以上のことから明らかなように、実施形態においてLEDチップと組み合わせる蛍光体としては、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲内にあるLEDチップからの一次光により励起され、これを波長変換して波長が420〜780nmの範囲内の可視光を発する蛍光体が好ましい。その場合、1種類の蛍光体で、可視光領域全域の黒体輻射スペクトルを再現することは困難なため、通常、異なる4種類以上、さらには5種類以上の蛍光体が使用される。その場合、使用する4種以上の蛍光体は、互いに、ピーク波長が10〜100nm、さらには10〜50nmずれていることが好ましい。つまり、青色領域から赤色領域にかけて、4種以上、さらには5種以上の蛍光体を使ってピーク波長を10〜100nm毎ずらして組合せることにより、前記関係式(I)を満たす白色光源を得ることができる。
【0024】
ここで、実施形態に使用して好ましい蛍光体を以下に記載する。以下に記載する蛍光体は、それぞれ、発光色や発光強度等を考慮したもので、関係式(I)を満たすために最適の特性を示すものである。また、それぞれの蛍光体において、組成範囲が限定されているが、これは、各蛍光体において所望の効果を発揮できる発光スペクトル特性(ピーク波長、スペクトル形状)が得られる範囲を規定したものである。従って、以下に記載した組成範囲の蛍光体を数種類組み合わせることで、所望の色温度の白色光を得ることができる。基本的には、以下の青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体のそれぞれから、各1種類の蛍光体を選択し、組み合わせることで、本発明の白色発光蛍光体層を得ることが可能である。ただし、この基本的な組み合わせに限定する必要はなく、例えば赤色蛍光体の中から2種類の蛍光体を併用したり、中間色の青緑蛍光体を追加混合し、5〜6種類の組み合わせとしたりすることも可能である。
【0025】
<青色蛍光体>
・ユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体:
(Sr
1-x-y-x-zBa
xCa
yEu
z)
5(PO
4)
3Cl …化学式(A)
ここで、0≦x<0.3、0≦y<0.1、0.005≦z<0.15
・ユーロピウム付活アルカリ土類マグネシウムアルミン酸塩蛍光体:
(Ba
1-x-y-x-zSr
xCa
yEu
z)MgAl
10O
17 …化学式(B)
ここで、x<0.5、y<0.1、0.05<z<0.4。
【0026】
<青緑色蛍光体>
ユーロピウム、マンガン付活アルカリ土類マグネシウムアルミン酸塩蛍光体:
(Ba
1-x-y-zSr
xCa
yEu
z)(Mg
1-uMn
u)Al
10O
17 …化学式(C)
ここで、x<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6。
【0027】
<緑色蛍光体>
・ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体:
(Sr
1-x-y-z-uBa
xMg
yEu
zMn
u)
2SiO
4 …化学式(D)
ここで、0.2≦x≦0.6、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02
・ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体:
(Sr
1-xEu
x)
αSi
βAl
γO
δN
ω …化学式(E)
ここで、0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22。
【0028】
<黄色蛍光体>
・ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体:
(Sr
1-x-y-z-uBa
xMg
yEu
zMn
u)
2SiO
4 …化学式(F)
ここで、0≦x≦0.3、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02
・セリウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体:
(M
1-xCe
x)
2yAl
zSi
10-zO
uN
w …化学式(G)
ここで、0<x≦1、0.8≦y≦1.1、2≦z≦3.5、u≦1、1.8≦z−u、13≦u+w≦15、元素MはSrであり、Srの一部はBa、Ca、およびMgから選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0029】
<赤色蛍光体>
・ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体:
(Sr
1-xEu
x)
αSi
βAl
γO
δN
ω …化学式(H)
ここで、0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15
・ユーロピウム付活カルシウムストロンチウム酸窒化物蛍光体:
(Ca
1-x-ySr
xEu
y)SiAlN
3 …化学式(I)
ここで、0≦x<0.4、0<y<0.5
・マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体:
αMgO・βMgF
2・(Ge
1-xMn
x)O
2 …化学式(J)
ここで、3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5。
【0030】
蛍光体は粉体の結晶粒子であるが、平均粒子径は5〜40μm程度が望ましい。平均粒径が5μm未満の場合には、結晶粒子の成長が不十分であるため、蛍光体の発光強度が低くなりやすい。一方、結晶粒子が40μmを超えて大きくなると、発光色の明るさには問題ないが、各蛍光体を均一に混合することが難しくなり、混合物を形成した場合に、均一な発光特性が得られなくなる。
【0031】
このような粒径を持つ蛍光体粉末は、透明樹脂材料と混ぜ合わされ、蛍光体層の形でLEDチップを覆う。LEDチップの周囲を蛍光体層で被覆することにより、LEDチップから出射された一次光が、蛍光体層で二次光(白色光)に変換され、LED光源の外部に放射される。蛍光体層はLEDチップの直上に塗布される場合もあれば、LEDチップの周囲に透明樹脂層を形成し、その外部に形成してもよい。どちらの構造を採用するかは、一長一短があり、目的に応じて使いわけられるが、LEDチップの周囲を隙間なく蛍光体層で被覆することが重要である。蛍光体層がLEDチップの周囲を完全に被覆することで、LEDチップからの一次光が発光装置外部に直接漏出することを防げるため、エネルギーの損失が少なく明るい発光装置が得られ、またLED光が紫外光の場合には、人体に有害な紫外光が発光装置の外部に漏出されるのを防止することができる。
【0032】
蛍光体と混合使用される樹脂材料としては、透明な(可視光透過性)材料であれば特に制限されることはない。たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂を使用することができるが、LEDチップとして紫外発光LEDチップを用いる場合には、紫外線に対する耐劣化特性の良好な、シリコーン樹脂等を用いることが望ましい。
【0033】
実施形態に係る白色光源を用いたLEDモジュールまたは照明装置(総称してデバイスという)は、特定の色温度の白色光を出射するものでもよいし、任意の色温度の白色発光を示すデバイスであってもよい。後者の様に、様々な白色光に調色可能なデバイスは、少なくとも2種類の色温度の白色LED光源を組み合わせた白色光源システムにより具体化することができる。例えば色温度が2600Kの白色光と、3600Kの白色光を出射するLED光源を任意の強度割合で混合することにより、2600Kを下限とし、3600Kを上限とする調色システムを得ることができる。このとき、両白色LED光源の発光スペクトルが、前記関係式(I)を満足し、同じ色温度の黒体輻射のスペクトルと近似していることにより、両白色LED光源からの白色光が混合した中間色温度の白色光もまた、前記関係式(I)を満足したものとなる。
【0034】
なお、このような白色光源システムにおいて、出射白色光を混合すべきLED光源からの白色光の色温度は、2種類以上であれば、いくつであってもよい。特に2種類の光源の色温度の差異が大きい場合は、3種類以上の光源を使用した方が、黒体輻射の発光スペクトルを、より忠実に再現できる。ただし、3種類以上の白色光を調整して、特定色の白色光を得るには、LED光源の発光強度を制御するための電子回路が複雑となるため、光源の種類を必要以上に増加させることは、発光装置の設計上の制約により好ましくない。
【0035】
実施形態のLEDモジュールにおいて、可視光透過性透明部材は、軸対称をなし、LED光源を覆って設けられている。LED光源から出射される可視光を案内するものである。可視光透過性透明部材は、通常、円柱状をなす。透明部材は、可視光を透過するものであれば、無機材料および有機材料のいずれでも形成することができる。無機材料としては、例えば、ガラスおよび透明セラミックスが挙げられる。有機材料としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などから選択される透明樹脂が挙げられる。
【0036】
軸対称光散乱部材は、透明部材の内部に配置され、LED光源からの透明部材内を通って入射した白色光を散乱させて透明部材の外部に放射させる。すなわち、透明部材は、基端側が中実であるが、先端側は中空であり、軸対称光散乱部材は、この透明部材の中空部の内面に塗布された薄い塗布膜であり得る。この塗布膜は、透明樹脂に分散された光散乱性微粒子を含む。微粒子としてはチタニア等の白色顔料を例示することができる。
【0037】
いうまでもなく、光散乱部材は、LED光源の光出射面に向けて平行投影されるその投影像が該光出射面の少なくとも一部に重なるように配置される。また、色温度が異なる白色光を発光する2種以上のLED光源を用いた場合、前記投影像は、それぞれの光出射面の少なくとも一部に重なるように、光散乱部材が配置される。
【0038】
透明部材は、光散乱部材を囲包する部分が集光機能を有するように、すなわちレンズを構成するように、形成されていることが好ましい。そのために、透明部材は、前記中空部を形成する部分において、基端側から先端側に向かって段階的に外径を減少させるように形成する。これとは逆に、中空部は、基端側から先端側に向かって段階的に内径を増加させる。かくして、透明部材は、光散乱部材を囲包する部分において基端側から先端側に向かって肉厚が減少し、かかる肉厚変化部分がレンズ機能(集光機能)を示す、すなわちレンズを構成する。かくして、LED光源からの出射光(可視光)は透明部材により導かれ、光散乱部材に到達した光は光散乱部材内で反射等を繰り返し、散乱部材全面が発光するように見える。光散乱部材から上方に向かった光は、そのまま外部に放出されるが、側面や下面に向かった光は、上記レンズにより集光され、仮想光源(例えば、中空部の底面)に向かって光が集中する結果、あたかも仮想光源から光が発生しているように見えるようになる。
【0039】
なお、実施形態にかかるLED光源からの出射光の発光スペクトルは、そのLED光源を備えるLEDモジュールからの出射光の発光スペクトルと、さらにはそのLEDモジュールを組み込んだLED照明装置からの出射光の発光スペクトルと、同じである。
【0040】
図2および
図3に、1つの実施形態に係る照明装置1を示す。
【0041】
照明装置1は、球状ガラスからなるグローブ2と、グローブ2内に組み込まれたLEDモジュール10を備える。グローブ2の開口部は、口金3によって封止されている。照明装置1は、全体の形状と大きさが従来の白熱電球に似た形状になるように構成され、LED電球と呼ぶことができる。
【0042】
LEDモジュール10は、発光面18を有するLED光源13を有する。LED光源13は、チップオンボード(COB)の技術を用いて基板11上に実装され、中空部4cを有する円筒状のヒートシンク4により基板11ごと支持されている。
【0043】
放熱筐体を構成するヒートシンク4は、例えばアルミニウムのような熱伝導性に優れた金属材料でつくられている。ヒートシンク4の基端部4bは、環状突起を形成し、これに口金3をかしめることにより口金3に固定されている。
【0044】
一方、ヒートシンク4の先端部4aは、穴あきキャップ状のレンズ押え部材6を介して軸対称透明部材14を支持している。すなわち、ヒートシンク先端部4aはヒートシンク本体より少し直径が小さい縮径部を形成し、この縮径部の上端にLED光源13が複数のネジ5で締結されている。レンズ押え部材6はヒートシンクの縮径部の外周に被せられている。そして、軸対称透明部材14はレンズ押え部材6の開口部内に挿入され、LED光源13の発光面18に接合されている。レンズ押え部材6により透明部材14を支持する支持構造が補強されている。
【0045】
ヒートシンク4の中空部4cには点灯回路42が設けられている。点灯回路42は内部配線によって口金3の両極および基板11上の各LED光源13の発光回路にそれぞれ接続されている。点灯回路42は、交流を直流に変換する交直変換機能および発光回路に給電してLED光源13を発光させる点灯機能を備えている。
【0046】
LEDモジュール10は、
図3および
図4に最もよく示されているように、LED光源13と軸対称透明部材14および軸対称光散乱部材15を組み合わせてなるものである。LED光源13は、既述のように、基本的に、少なくとも1つのLEDチップ(図示せず)と、このLEDチップを覆う蛍光体層12とにより構成される。図示の例ではLEDチップは、例えばアルミナ基板上にLED発光回路が形成されたチップオンボード(COB)である基板11に組み込まれている。一つの実施形態において、蛍光体層12の厚さt
1(平均)は、400〜2000μmである。
【0047】
軸対称光透明部材14は、LED光源の発光面18の全部を覆うように基板11に取り付けられている。この実施形態では、軸対称光透明部材14は、全体の形状が円柱状をなし、配光対称軸axに対して実質的に軸対称に形成されている。同様に、軸対称光散乱部材15も配光対称軸axに対して実質的に軸対称に形成されている。軸対称透明部材14は、基端側が中実であり、先端側が中空である。透明部材の中空部14hの内面には光散乱粒子17を含む塗布膜が形成され、軸対称光散乱部材15を構成している。
【0048】
軸対称透明部材14は、Z軸に沿って基端側から先端側に向かって段階的に外径が減少している。すなわち、軸対称透明部材14において、円柱状の基端部14aより円錐台状の第1の中間部14bのほうが外径が小さく、第1の中間部14bより第2の中間部14cのほうがさらに外径が小さく、第2の中間部14cより先端部14dのほうがさらに外径が小さくなっている。
【0049】
これとは逆に、透明部材の中空部14hは、透明部材14の基端側から先端側に向かって段階的に径が増加し、それゆえに光散乱部材15の内径も同様に増加する。すなわち、軸対称透明部材14において、基端側の底面14nより第1の中間部14mのほうが内径が大きく、第1の中間部14mより第2の中間部14lのほうが内径がさらに大きく、第2の中間部14lより第3の中間部14kのほうが内径がさらに大きく、第3の中間部14kより先端部14jのほうが内径がさらに大きくなっている。なお、中空部の底面14nは、平面を構成し、従って光散乱部材15の底面15eも平面を構成している。
【0050】
上記部位14a,14b,14c,14d,14j,14k,14l,14m,14nのテーパー角度は、LEDモジュール全体の光学的な特性と解析手法を用いてそれぞれ決めることができる。具体的には、基端側から先端側にいくに従って光散乱部材15を取り囲む透明部材14の部分の肉厚が徐々に薄くなっている。このような肉厚変化部分16がレンズ機能(集光機能)を備える。既述のように、光は透明部材14により導かれ、光散乱部材15に到達した光は光散乱部材15内で反射等を繰り返し、光散乱部材15の全面が発光するように見える。光散乱部材15から先端側に向かった光は、そのまま外部に放出されるが、側面14sや基端側に向かった光は、レンズ状の肉厚変化部分16により集光され、仮想光源(例えば中空部の底面14n)に向かって光が集中する結果、あたかも仮想光源から光が発生しているように見える。
【0051】
本実施形態においては、LEDチップからの配光分布は、配光対称軸axを有するものであって、この配光対称軸axに対して対称に近い分布である。配光分布としては、例えばランバーシアンが挙げられるが、これに限定されない。配光対称軸axは、例えばLEDチップの発光面内の中心付近を通るものとすることができるが、これに限定されず、LED光源の発光面18と同一面内のいずれの点を通ってもよい。
【0052】
この透明部材の屈折率nと全反射角θcとは下式(A)の関係がある。
【数2】
【0053】
軸対称光散乱部材15は、軸対称透明部材14の内部に配置され、LED光源13からの白色光を散乱させる光散乱粒子を含有している。光散乱部材14の平均厚さは50〜100μmの範囲内にすることが好ましい。
【0054】
一般的には、光散乱部材の吸収係数μ(1/mm)は、厚さh(mm)の平板状の光散乱部材に対し、平板に直交方向にコリメートされた平行光線を照射した際の透過量を用いて定義することができる。平行光線の入射強度をI
0とし、透過強度をI
Tとすると、吸収係数μは下式(B)で与えられる。
【数3】
【0055】
なお、光散乱部材15とLED光源13との最近接距離L
2を明確にするために、
図5では便宜的に透明部材14は基板11に接しないように示しているが、実際には透明部材14は基板11に接している。
【0056】
軸対称透明部材14の対称軸は、LED光源13の配光対称軸axと実質的に一致し、また、軸対称光散乱部材15の対称軸も配光対称軸axと実質的に一致している。なお、LED光源の配光対称軸axの製品ばらつきの範囲内であれば、対称軸が実質的に一致するものとみなすことができる。
【0057】
最近接距離L
2と発光面18の面積Cとは下式(1)の関係を満たすことが好ましい。
【数4】
【0058】
また、光散乱部材の長さL
1と光散乱部材の吸収係数μ(1/mm)とが下式(2)の関係を満たすことが好ましい。
【数5】
【0059】
さらに、光散乱部材の底面15eの直径d
1と最近接距離L
2と透明部材の屈折率nとが、下式(3)の関係を満たすことが好ましい。
【数6】
【0060】
長さL
1と吸収係数μが上式(2)の関係を満たすことにより、LED光源からの光が光散乱部材15を通過することなくLED電球1から外部に漏れ出さなくなる。
【0061】
また、上記(3)の関係により次の効果も得られる。LED光源13からの光は、光散乱部材の底面15eで散乱される一部の光を除いて、透明部材の側面14sによって全反射され、光散乱部材の各部15a〜15dにおいてそれぞれ散乱される。このように光は反射と散乱を繰り返した後に外部に放出されるため、光散乱部材15の全面が発光しているように見える。
【0062】
光散乱部材15の対称軸に対して直交する断面は、この断面を含む平面内の透明部材14の断面に含まれる。すなわち、対称軸に直交する平面において、光散乱部材15の周囲は透明部材14で確実に覆われている。さらに、透明部材14を光源の発光面18に平行投影した面は発光面18の全部を覆う。換言すると、透明部材14の最大直径の断面は、光源の発光面18より大きい。
【0063】
また、軸対称透明部材の中実部の直径d
0と、軸対称光散乱部材の底面の直径d
1と、軸対称光散乱部材の長さL
1と、LED光源の発光面と前記光散乱部材との最近接距離とL
2が下記式(4)を満足することが好ましい。
【数7】
【0064】
上記の条件を満たすことにより、低損失および低発熱であるのに加えて、コンパクトな白色LED照明装置が得られる。
【0065】
ところで、上に、少なくとも2種類の色温度の白色LED光源を組み合わせることができることを記載した。その組合せの一例を、3種の色温度の白色LED光源の組合せを例にとって
図6を参照して説明する。
【0066】
図6に示すLEDモジュール10は、光源として3つの白色光源13a,13b,13cを備える。これら3つの白色光源13a,13b,13cは、それぞれ異なる発光スペクトルをもつ白色光、すなわち異なる色温度の白色光をそれぞれ発光するように構成されている。これらのうち第1の光源13aは、図中にて発光面18の中央エリアに配置され、最も高い色温度(第1の色温度)の白色光を発光するように、LEDチップ群21を有する発光回路と蛍光体層12aとが組み合わせられている。また、第2の光源13bは、
図6において発光面18の右側エリアに配置され、中間の色温度(第2の色温度)の白色光を発光するように、LEDチップ群22を有する発光回路と蛍光体層12bとが組み合わせられている。また、第3の光源13cは、
図6において発光面18の左側エリアに配置され、最も低い色温度(第3の色温度)の白色光を発光するように、LEDチップ群23を有する発光回路と蛍光体層12cとが組み合わせられている。
【0067】
これら3つの蛍光体層12a,12b,12cは、
図6に示すように、環状の隔壁20aと2本の線状の隔壁20b,20cにより周囲を取り囲まれ、他の蛍光体層から区画されている。隔壁20a,20b,20cは、3つのLED光源隔壁13a,13b,13cの相互間において一次光の吸収を低減するために、隣り合う蛍光体層12a,12b,12cの間に設けられる光の遮蔽物である。隣り合う蛍光体層12a,12b,12cの相互間に隔壁20a,20b,20cを設け、隔壁20a,20b,20cにより蛍光体層12a,12b,12c同士が接触しないように分けている。隔壁20a,20b,20cは、波長450〜780nmの光を最大98%まで反射できる高反射率の無機微粒子を含むことが好ましい。
【0068】
ここで、いうまでもなく、光散乱部材は、蛍光体層の発光面に向けて平行投影されるその投影像が各発光面の少なくとも一部に重なるように配置される。
【0069】
次に、
図7を参照して
図6に示す本実施形態によるLED光源の発光回路を説明する。
【0070】
3つの光源13a,13b,13cは、それぞれ複数個のLEDチップ24,25,26からなるLEDチップ群21,22,23を備えている。
【0071】
第1の光源13aの発光回路は、4つのLEDチップ24を順方向に直列に接続して直列接続回路を形成し、この直列接続回路を4つ並列に接続することにより形成されたLEDチップ群21を有する。第1光源のLEDチップ群21は、全部で16個のLEDチップ24を含むことになる。
【0072】
第2の光源13bの発光回路は、3つのLEDチップ25を順方向に直列に接続して直列接続回路を形成し、この直列接続回路を2つ並列に接続することにより形成されたLEDチップ群22を有する。第2光源のLEDチップ群22は、全部で6個のLEDチップ25を含むことになる。さらに、第2光源13bの発光回路の負極側には可変抵抗R1を挿入している。抵抗R1はLEDチップ群22に直列に接続されている。
【0073】
第3の光源13cの発光回路は、2つのLEDチップ26を順方向に直列に接続して直列接続回路を形成し、この直列接続回路を2つ並列に接続することにより形成されたLEDチップ群23を有する。第3光源のLEDチップ群23は、全部で4個のLEDチップ26を含むことになる。さらに、第3光源13cの発光回路の負極側には可変抵抗R2を挿入している。抵抗R2はLEDチップ群23に直列に接続されている。
【0074】
また、第1〜第3のLEDチップ群21,22,23の直列数を変えた場合であっても挿入抵抗R1,R2の値を変えることにより、両電流−電圧特性線の交点位置を調整することができるため、白色LED照明装置の発光特性線を白熱電球の発光特性線に近づけることが可能である。
【0075】
さらに
図7を参照して、3つの光源13a,13b,13cの発光回路に電力を供給するための給電回路について説明する。
【0076】
第1〜第3の光源13a,13b,13cの発光回路は、正極側が一括して共通の電極27dに接続されている。この正極側の共通電極27dは、点灯回路42の正極端子42aに接続されている。
【0077】
一方、第1の光源13aの発光回路は、負極側が個別の電極27aに接続されている。また、第2の光源13bの発光回路は、負極側が個別の電極27bに接続されている。また、第3の光源13cの発光回路は、負極側が個別の電極27cに接続されている。これらの負極側の電極27a,27b,27cは、それぞれ点灯回路42の負極端子42bに接続されている。
【0078】
電球型の照明装置1を外部電源40となる商用交流電源用ソケットに取り付けると、照明装置内の点灯回路42に外部電源40(商用交流電源)から電流が流れ、点灯回路42が作動して、3つの光源13a,13b,13cの発光回路にそれぞれ電力が供給され、各光源のLEDチップ群21,22,23がそれぞれ発光する。
【0079】
3つの光源13a,13b,13cからそれぞれ発光される白色光は、異なる発光スペクトル(すなわち、異なる色温度)を有している。これら3種の異なる色温度の白色光は、透明部材14を通って光散乱部材15に至り、そこで散乱されることにより混ざり合い、白熱電球近い光となって外部に出射される。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を記載する。
【0081】
実施例1
この実施例では、
図4、5に示す構造を有するLEDモジュールを作製した。このモジュールにおいて、中空部14hを有する透明部材14は、透明アクリル樹脂(屈折率約1.5)で形成した。そして、透明部材14の最上面の直径は6.2mmであり、透明部材の中実部分の直径は10.2mmであり、透明部材全体の高さL
0は25.4mmであり、光散乱部材15とLED光源13との最近接距離L
2は14.8mmであった。
【0082】
透明部材14の中空部14hの内面に、透明ニトロセルロースバインダーにチタニア顔料を含有させた塗料(武蔵塗料(株)プラエースA7161)を塗布し、乾燥させて厚さが μmの光散乱部材(光散乱層)15を形成した。
【0083】
LEDチップとしては、発光ピーク波長が410nmの紫色LEDチップを用いた。
【0084】
蛍光体としては、以下に示す4種類の蛍光体(粉末)を下記の量で混ぜ合わせて、混合蛍光体粉末を得た。
【0085】
青色蛍光体:(Sr
0.72Ba
0.2Ca
0.01Eu0.07)
5(PO
4)
3Cl 74重量部
緑色蛍光体:(Sr
0.24Ba
0.55Mg
0.1Eu
0.1Mn
0.01)
2SiO
4 4重量部
黄色蛍光体:(Sr
0.769Ba
0.15Mg
0.03Eu
0.05Mn
0.001)
2SiO
4 7重量部
赤色蛍光体:(Sr
0.9Eu
0.1)
2Si
8Al
3ON
13 15重量部
得られた混合蛍光体粉末65重量部と、透明シリコーン樹脂35重量部をよく混ぜ合わせて樹脂スラリーを得、これを上記LEDチップ上に塗布し、乾燥させて厚さ550μmで直径が9.8mmの円盤状蛍光体層を形成した。
【0086】
こうしてLEDモジュールを作製した。このLEDモジュールを組み込んで
図1、
図2に示す白色発光LED電球を製造した。このLED電球を駆動電圧48Vで駆動させ、白色光を射出させた。なお、作製したLEDモジュールは、式(1)〜(4)のすべての関係を満たすことが算出された。
【0087】
得られたLED電球から外部に出射された白色光は、色温度2032Kを示した。
【0088】
得られた発光スペクトルを
図8(A)に示す。図中、曲線aは本実施例で作製したLEDモジュールの白色光源の発光スペクトルを示し、他方、曲線bは、同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルを示す。
図8(A)中での比較により、可視光領域における両曲線は互いによく近似していることがわかる。また、本実施例で作製したLED光源の各波長における、黒体輻射の発光スペクトルに対する差分スペクトルを、
図8(B)に示す。本実施例での発光スペクトルは、
−0.1≦A(λ)≦+0.1
の関係を満たし、光源として望ましい特性を示すことがわかる。
【0089】
実施例2〜10
表1−1〜表1−4に示す蛍光体を用いた以外は実施例1と同様にしてLEDモジュールおよびLED電球を作製した。
【0090】
得られた白色LEDモジュールからの出射光の色温度を表1−1〜表1−4に示す。なお、実施例1についての結果を表1−1に併記する。
【表1-1】
【0091】
【表1-2】
【0092】
【表1-3】
【0093】
【表1-4】
【0094】
実施例2〜10で作製したLED光源の発光スペクトルおよび差分スペクトルA(λ)を
図9〜
図17に示す。これら図において、(A)は、LED光源の発光スペクトルを、(B)は差分スペクトルA(λ)をそれぞれ示す。
図9〜
図17の各(A)図において、曲線aは、蛍光体層より出射される白色光源の発光スペクトルを示し、曲線bは、同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルを示す。
【0095】
図9〜
図17の差分スペクトル(各(B)図)からもわかるように、実施例2〜10で作製したLED光源の発光スペクトルは、いずれも、関係式(II)の関係を満たしていた。
【0096】
実施例11
この実施例では、
図6に示す3種類の白色LED光源をもつLEDモジュールを作製し、これをグローブ内に組み込んでLED電球を得た。
【0097】
白色顔料としてチタニアをシリコーン樹脂溶液に所定の比率で混合・撹拌し、得られたスラリーを塗布装置によりLED回路基板の所定エリアに線状に塗布し、隔壁を形成した。形成した隔壁は、平均高さを0.5mm、平均幅を1.2mmとした。
【0098】
上記基板の第1の発光エリアに実施例3の蛍光体混合物スラリーを塗布し、乾燥させて厚さ480μmの蛍光体層12aを形成した。
【0099】
また、上記基板の第2の発光エリアに実施例2の蛍光体混合物スラリーを塗布し、乾燥させて厚さ720μmの蛍光体層12bを形成した。
【0100】
次に、上記基板の第3の発光エリアに実施例1の蛍光体混合物スラリーを塗布し、乾燥させて、厚さ630μmの蛍光体層12cを形成した。
【0101】
図6中の各サイズを下記に示す。
幅W2:9.8mm
幅W3:4.7mm
幅W4:2.55mm
その他の構成は、実施例1と同じであった。
【0102】
図7に示す発光回路にLEDチップを組み込み、これに300mAの電流を流したときにCOB駆動電圧3.1Vを印加し、各LEDチップから発光波長400〜410nmの一次光を発光させた。その結果、電球全体が均等に明るく、色ムラなく見えた。
【0103】
比較例1
比較例1として、市販の蛍光灯と普及型白色LEDの発光特性を示す。
【0104】
蛍光灯は市販の製品で、昼白色発光の照明製品を比較例として採用した。蛍光灯ではガラス管内に充満された水銀ガスから紫外線が出射され、前記紫外線を蛍光体が吸収して、白色光を出射する仕組みとなっている。数種類の蛍光体を組み合わせて白色発光を示す様に設計されており、蛍光体発光を利用する点で、実施形態の発光装置と類似した構成となっている。しかし蛍光灯の発する白色光の発光スペクトルは、
図18(A)の曲線aで示す通り、本発明と大きく異なっている。蛍光灯の発光のスペクトルは、青色、緑色、赤色波長域に鋭い発光ピークを有し、ピーク間の発光強度は低いために、全体として凹凸の激しい発光スペクトル形状である。一方、
図18(A)の曲線bで示される黒体輻射のスペクトル形状はなだらかな曲線を示しており、両者間には大きな相違点があることがわかる。両者の差分スペクトルA(λ)を計算すると、
図18(B)に示す通りであり、
−1.0≦A(λ)≦+0.1
の関係にあった。従って実施礼1〜11の白色LED照明装置が白熱電球同様の発光色を示したのに対し、比較例1の蛍光灯は、白熱電球の発光色と比較して、見かけ上の発光色は類似しているものの、実質的には程遠い特性の白色光を示すものであった。つまり、実施例1〜11の照明装置を用いた照明では、照明対象物が太陽光に照らされた場合と同様に、自然な物体色を示すのに対し、比較例1の照明では、その様な効果の乏しいものであった。
【0105】
比較例2
比較例2として、普及型の白色LED製品の発光特性を示す。普及型白色LEDでは、青色発光のLEDと、黄色発光の蛍光体を組み合わせて、白色発光を示す仕組みとなっている。つまりLEDから青色光が出射され、出射された青色光の一部を蛍光体が吸収して黄色光に変換し、LED光の一部の青色光と、蛍光体からの黄色光が組み合わされて、白色光を発する仕組みである。最近では黄色蛍光体に加えて、赤色蛍光体や橙色蛍光体を追加して、白色光を示す製品も増えてきたが、いずれにしても現在市販の白色LED製品の殆どは、青色発光のLEDと1〜3種程度の蛍光体を組み合わせた白色発光装置である。この様な白色発光装置の発光スペクトルは、
図19(A)の曲線aで示した通り、LEDによる強い青色発光スペクトルと、蛍光体によるなだらかな黄色発光スペクトルが重なっており、全体として凹凸の激しい発光スペクトルを示すものである。当然ながら黒体輻射の発光スペクトル(曲線b)とは大きく相違しており、両者の差分スペクトルは下記の関係を示した:
−0.3≦A(λ)≦+0.1
従って、実施例1〜11の照明装置が白熱電球同様の発光色を示したのに対し、比較例2の普及型白色LEDは、白熱電球の発光色と比較して、見かけ上の発光色は類似しているものの、実質的には程遠い特性の白色光を示すものであった。つまり、実施例1〜11の照明装置を用いた照明では、照明対象物が太陽光に照らされた場合と同様に、自然な物体色を示すのに対し、比較例2の照明では、その様な効果の乏しいものであった。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]出射光として可視光を出射する光出射面を有する可視光LED光源と、前記LED光源を覆って設けられた可視光透過性軸対称透明部材と、前記LED光源から離間して前記透明部材の内部に配置され、前記LED光源から前記透明部材を通って入射した可視光を散乱させて前記軸対称透明部材の外部に出射させる軸対称光散乱部材とを備え、前記光散乱部材は、前記光出射面に向けて平行投影される投影像が前記光出射面の少なくとも一部に重なるように配置され、前記出射光は、380nmから780nmの波長領域において、連続した発光スペクトル分布を示すことを特徴とするLEDモジュール。
[2]前記透明部材は、前記光散乱部材を囲包する部分が集光レンズを形成することを特徴とする[1]のLEDモジュール。
[3]前記軸対称透明部材は、前記LED光源から発光される発光光を実質的に全反射する側面と、基端側から先端側に向けて肉厚が漸次減少する肉厚変化部分とを有し、
前記肉厚変化部分は、基端側から先端側に向けて外径が徐々に縮小する外径縮小部と、前記外径縮小部に対応する前記軸対称透明部材の内部に形成され、基端側から先端側に向けて内径が徐々に拡大する中空部とを含み、
前記前記肉厚変化部分が前記集光レンズを形成することを特徴とする[2]のLEDモジュール。
[4]前記軸対称光散乱部材は、前記中空部の周壁に塗布形成されていることを特徴とする[3]のLEDモジュール。
[5]前記発光スペクトルが下記関係式(I)を満足することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかのLEDモジュール。
関係式(I):
−0.15≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.15
(関係式(I)において、
P(λ):本発明の白色光源の発光スペクトル
B(λ):白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトル
V(λ):分光視感効率のスペクトル
λmax1:P(λ)×V(λ)が最大となる波長
λmax2:B(λ)×V(λ)が最大となる波長
λは波長であり、380nm≦λ≦780nm)。
[6]
前記発光スペクトルが下記関係式(II)を満足することを特徴とする[1]乃至[4]いずれかのLEDモジュール。
関係式(II):
−0.10≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.10
(関係式(II)において、
P(λ):本発明の白色光源の発光スペクトル
B(λ):白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトル
V(λ):分光視感効率のスペクトル
λmax1:P(λ)×V(λ)が最大となる波長
λmax2:B(λ)×V(λ)が最大となる波長
λは波長であり、380nm≦λ≦780nm)。
[7]前記LED光源は、紫外または紫色領域に一次光を発する少なくとも1つ以上のLEDチップと、前記LEDチップからの一次光を吸収し、可視光領域に2次光を発する蛍光体層を備えることを特徴とする[1]乃至[6]いずれかのLEDモジュール。
[8]色温度の異なる白色光を発する少なくとも2種類のLED光源を含むことを特徴とする[1]乃至[7]いずれかのLEDモジュール。
[9]前記蛍光体層は、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体の少なくとも4種類の蛍光体からなることを特徴とする[7]または[8]のLEDモジュール。
[10]前記青色蛍光体が、下記化学式(A)で示されるユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、および下記化学式(B)で示されるユーロピウム付活アルカリ土類マグネシウムアルミン酸塩蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする[9]のLEDモジュール。
化学式(A):
(Sr1-x-y-x-zBaxCayEuz)5(PO4)3Cl
(ここで、0≦x<0.3、0≦y<0.1、0.005≦z<0.15)
化学式(B):
(Ba1-x-y-x-zSrxCayEuz)MgAl10O17
(ここで、x<0.5、y<0.1、0.05<z<0.4)。
[11]前記緑色蛍光体が、下記化学式(D)で示されるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、および下記化学式(E)で示されるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする[9]または[10]のLEDモジュール。
化学式(D):
(Sr1-x-y-z-uBaxMgyEuzMnu)2SiO4
(ここで、0.2≦x≦0.6、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02)
化学式(E):
(Sr1-xEux)αSiβAlγOδNω
(ここで、0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22)。
[12]前記黄色蛍光体が下記化学式(F)で示されるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、および下記式化学式(G)で示されるセリウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする[9]乃至[11]いずれかのLEDモジュール。
化学式(F):
(Sr1-x-y-z-uBaxMgyEuzMnu)2SiO4
(ここで、0≦x≦0.3、0.020≦y≦0.105、0.01≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02)
化学式(G):
(
M1-xCex)2yAlzSi10-zOuNw
(ここで、0<x≦1、0.8≦y≦1.1、2≦z≦3.5、u≦1、1.8≦z−u、13≦u+w≦15、元素MはSrであり、Srの一部はBa、Ca、およびMgから選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい)。
[13]前記赤色蛍光体が下記化学式(H)で示されるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、および下記化学式(I)で示されるユーロピウム付活カルシウムストロンチウム酸窒化物蛍光体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることを特徴とする[9]乃至[12]いずれかのLEDモジュール。
化学式(H):
(Sr1-xEux)αSiβAlγOδNω
(ここで、0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15)
化学式(I):
(Ca1-x-ySrxEuy)SiAlN3
(ここで、0≦x<0.4、0<y<0.5)。
[14]前記LED光源は、面積Cの発光面を有し、この発光面に実質的に直交する配光対称軸のまわりに実質的に対称な配光分布を持ち、
前記軸対称透明部材は、前記LED光源の前記配光対称軸に実質的に一致する第1の対称軸を有し、この第1の対称軸に対して対称であり、
前記軸対称光散乱部材は、前記LED光源の前記配向対称軸に実質的に一致する第2の対称軸を有し、底面の直径d1および前記第2の対称軸に沿った長さL1をもって前記第2の対称軸に対して対称であり、前記LED光源と前記軸対称光散乱部材と最近接距離L2と、前記LED光源の前記発光面の面積Cとは、下記式(1)で表わされる関係を満たし、
【数8】
前記第2の対称軸に沿った前記軸対称光散乱部材の長さL1と、前記軸対称光散乱部材の吸収係数μ(1/mm)とは下記式(2)の関係を満たし、
【数9】
前記軸対称光散乱部材の底面の直径d1と、前記最近接距離L2と、前記軸対称透明部材の屈折率nとは、下記式(3)の関係を満たし、
【数10】
前記第2の対称軸に直交する前記軸対称光散乱部材の断面は、この断面における前記軸対称透明部材の断面に含まれ、
前記第2の対称軸に沿って、前記軸対称透明部材を前記LED光源の発光面に向けて投影した投影像は、前記LED光源の発光面に重なることを特徴とする[1]乃至[13]いずれかのLEDモジュール。
[15]前記軸対称透明部材は円柱状であることを特徴とする[1]乃至[14]いずれかのLEDモジュール。
[16]前記軸対称透明部材の直径d0と、前記軸対称光散乱部材の底面の直径d1と、前記第2の対称軸に沿った前記軸対称光散乱部材の長さL1と、前記LED光源の発光面と前記光散乱部材との最近接距離とL2が、下記式(4)の関係を満たすことを特徴とする[15]の白色LEDモジュール。
【数11】
[17][1]乃至[16]いずれかのLEDモジュールを内包するグローブに接続されるとともに前記LEDモジュールと熱的に接続される放熱筐体と、前記放熱筐体に内包され交流を直流に変換する電源回路と、前記放熱筐体に接続され、外部からの電力が供給される口金を更に備えた照明装置。