(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂積層体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂積層体は、中間層(A)と該中間層(A)の両側にそれぞれ存在する熱可塑性樹脂層(B)及び(C)とを少なくとも有する。言い換えると、本発明の樹脂積層体は、熱可塑性樹脂層(B)/中間層(A)/熱可塑性樹脂層(C)がこの順に積層された構成を少なくとも有する。
【0010】
中間層(A)は、該中間層(A)に含まれる全樹脂に基づいて、10〜90質量%の(メタ)アクリル樹脂及び90〜10質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含む。(メタ)アクリル樹脂の量が上記の下限より低い場合、十分な透明性が得られず、(メタ)アクリル樹脂の量が上記の上限より高い場合、十分な誘電率が得られない。フッ化ビニリデン樹脂の量が上記の下限より低い場合、十分な誘電率が得られず、フッ化ビニリデン樹脂の量が上記の上限より高い場合、樹脂積層体の耐久性や十分な透明性が得られない。
【0011】
中間層(A)は、誘電率を高め、樹脂積層体の透明性を高めやすい観点から、該中間層(A)に含まれる全樹脂に基づいて、30〜60質量%の(メタ)アクリル樹脂及び70〜40質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが好ましく、35〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び65〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことがより好ましく、37〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び63〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことがさらにより好ましく、38〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び62〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが特に好ましく、38〜43質量%の(メタ)アクリル樹脂及び62〜57質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが極めて好ましい。
【0012】
本発明の樹脂積層体の中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリルモノマーの共重合体、(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマー以外のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0013】
(メタ)アクリル樹脂は、樹脂積層体の硬度、耐候性、透明性を高めやすい観点から、メタクリル樹脂であることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステル(メタクリル酸アルキル)を主体とする単量体の重合体であり、例えば、メタクリル酸エステルの単独重合体(ポリアルキルメタクリレート)、2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体、50質量%以上のメタクリル酸エステルと50質量%以下のメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体などが挙げられる。メタクリル酸エステルとメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体としては、光学特性、耐候性を向上させやすい観点から、単量体の総量に対し、70質量%以上のメタクリル酸エステルと30質量%以下の他の単量体との共重合体が好ましく、90質量%以上のメタクリル酸エステルと10質量%以下の他の単量体との共重合体がより好ましい。
【0014】
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステル、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能単量体が挙げられる。
【0015】
単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化アルケニル;アクリル酸;メタクリル酸;無水マレイン酸;N−置換マレイミド;などが挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル樹脂には、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド及びメチルマレイミド等のN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中又は主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、若しくはグルタルイミド構造等が導入されていてもよい。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂は、樹脂積層体の硬度、耐候性、透明性を高めやすい観点から、具体的には、
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、及び/又は
(a2)共重合体を構成する全構造単位に基づいて50〜99.9質量%、好ましくは70.0〜99.8質量%、より好ましくは80.0〜99.7質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位、及び、0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の式(1):
【化2】
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。]
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位を含む共重合体
であることが好ましい。ここで、各構造単位の含有量は、得られた重合体を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、各単量体に対応するピーク面積を測定することにより算出できる。
【0018】
式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。炭素数2〜8のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。R
2は、耐熱性の観点から、炭素数2〜4のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
【0019】
中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと記すことがある。)は100,000〜300,000である。Mwが上記の下限より低いと、高温高湿環境下に暴露したときの透明性が十分でなく、Mwが上記の上限より高いと、樹脂積層体を製造する際の成膜性が得られない。(メタ)アクリル樹脂のMwは、高温高湿環境下に暴露したときの透明性を高めやすい観点から、120,000以上であることが好ましく、150,000以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂のMwは、樹脂積層体を製造する際の成膜性の観点から、250,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂は、3.8kg荷重、230℃で測定して、通常0.1〜20g/10分、好ましくは0.2〜5g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分のメルトマスフローレイト(以下、MFRと記すことがある。)を有する。MFRは上記の上限以下であることが、得られる膜の強度を高めやすいため好ましく、上記の下限以上であることが、樹脂積層体の成膜性の観点から好ましい。MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定することができる。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂は、耐熱性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらにより好ましくは102℃以上のビカット軟化温度(以下、VSTと記すことがある。)を有する。VSTの上限は、特に限定されないが、通常150℃以下である。VSTは、JIS K 7206:1999に準拠し、これに記載のB50法で測定することができる。VSTは、単量体の種類やその割合を調整することにより、上記の範囲に調整することができる。
【0022】
(メタ)アクリル樹脂は、上記の単量体を、懸濁重合、バルク重合等の公知の方法により重合させることにより、調製することができる。その際、適当な連鎖移動剤を添加することにより、MFR、Mw、VSTなどを好ましい範囲に調整することができる。連鎖移動剤は、適宜の市販品を使用することができる。連鎖移動剤の添加量は、単量体の種類やその割合、求める特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0023】
本発明の樹脂積層体の中間層(A)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体が挙げられる。フッ化ビニリデン樹脂は、得られる樹脂積層体の透明性を高めやすい観点から、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体とフッ化ビニリデンとの共重合体、及び/又は、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)であることが好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることがより好ましい。
【0024】
中間層(A)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000〜500,000、より好ましくは150,000〜450,000、さらにより好ましくは200,000〜450,000、特に好ましくは350,000〜450,000である。Mwが上記の下限以上であることが、本発明の樹脂積層体を高温高湿の環境下(例えば60℃、相対湿度90%)に暴露したときに、樹脂積層体の透明性を高めやすいため好ましい。また、Mwが上記の上限以下であることが、樹脂積層体の成膜性を高めやすいため好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0025】
フッ化ビニリデン樹脂は、3.8kg荷重、230℃で測定して、好ましくは0.1〜40g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、さらにより好ましくは0.1〜25g/10分のメルトマスフローレイト(MFR)を有する。MFRは、より好ましくは0.2g/10分以上であり、さらにより好ましくは0.5g/10分以上である。また、MFRは、より好ましくは20g/10分以下であり、さらにより好ましくは5g/10分以下であり、特に好ましくは2g/10分以下である。MFRが上記の上限以下であることが、樹脂積層体を長期間使用したときの透明性の低下を抑制しやすいため好ましい。MFRが上記の下限以上であることが、樹脂積層体の成膜性を高めやすいため好ましい。MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定することができる。
【0026】
フッ化ビニリデン樹脂は、工業的には、懸濁重合法又は乳化重合法により製造される。懸濁重合法は、水を媒体とし、単量体を分散剤で媒体中に液滴として分散させ、単量体中に溶解した有機過酸化物を重合開始剤として重合させることにより実施され、100〜300μmの粒状の重合体が得られる。懸濁重合物は、乳化重合物に比較し製造工程が簡単で、粉体の取扱性に優れ、また乳化重合物のようにアルカリ金属を含む乳化剤や塩析剤を含まないため好ましい。
【0027】
フッ化ビニリデン樹脂は、市販品を使用してもよい。好ましい市販品の例としては、株式会社クレハの「KFポリマー(登録商標)T#1300、T#1100、T#1000、T#850、W#850、W#1000、W#1100及びW#1300」、Solvay社製の「SOLEF(登録商標)6012、6010及び6008」が挙げられる。
【0028】
中間層(A)は、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂とは異なる他の樹脂をさらに含んでもよい。他の樹脂を含有する場合、樹脂積層体の透明性を著しく損なわない限り、その種類は特に限定されない。樹脂積層体の硬度及び耐候性の観点から、他の樹脂の量は、該中間層(A)に含まれる全樹脂に基づいて、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらにより好ましい。他の樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルニトリル‐スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。中間層(A)が他の樹脂をさらに含んでもよいが、透明性の観点からは、他の樹脂の量は1質量%以下であることが好ましく、中間層(A)に含まれる樹脂が(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂のみであることがより好ましい。
【0029】
中間層(A)におけるアルカリ金属の含有量は、中間層(A)に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。中間層(A)におけるアルカリ金属の含有量が上記の上限以下であることが、樹脂積層体を高温高湿環境下で長期間使用したときの透明性の低下を抑制しやすいため好ましい。中間層(A)におけるアルカリ金属の含有量の下限値は0であり、樹脂積層体の透明性の低下を抑制しやすい観点からは、実質的に含まれないことが極めて好ましい。ここで、中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及び/又はフッ化ビニリデン樹脂中には、製造工程で使用した微量の乳化剤等が残留する。そのため、残留する乳化剤に由来してナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属が、例えば0.05ppm以上、中間層(A)に含まれる。特に中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及び/又はフッ化ビニリデン樹脂が乳化重合により得たものである場合、樹脂中に残留する乳化剤の量が多くなり、中間層(A)におけるアルカリ金属の含有量も高くなる。樹脂積層体の透明性の低下を抑制しやすい観点からは、中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂として、アルカリ金属の含有量が少ない樹脂を使用することが好ましい。
【0030】
樹脂中のアルカリ金属の含有量を上記範囲内にするためには、樹脂の重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去すればよい。アルカリ金属の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)により求めることができる。誘導結合プラズマ質量分析法としては、例えば、測定するサンプルペレットを、高温灰化融解法、高温灰化酸溶解法、Ca添加灰化酸溶解法、燃焼吸収法、低温灰化酸溶解法などの適宜の方法により、サンプルを灰化し、これを酸に溶解にさせ、この溶解液を定容して誘導結合プラズマ質量分析法でアルカリ金属の含有量を測定すればよい。
【0031】
本発明の樹脂積層体は、中間層(A)の両側にそれぞれ存在する熱可塑性樹脂層(B)及び(C)とを少なくとも有する。熱可塑性樹脂層(B)と熱可塑性樹脂層(C)とは、同一の層であってもよいし、互いに異なる層であってもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、成形加工性を高めやすい観点から、それぞれの熱可塑性樹脂層に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上の熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の量の上限は、100質量%である。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)と中間層(A)との接着性を高めやすい観点から、(メタ)アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、同一の熱可塑性樹脂を含んでもよいし、互いに異なる熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、同一の熱可塑性樹脂を含むことが、樹脂積層体の反りを抑制しやすい観点から好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)に含まれる熱可塑性樹脂は、樹脂積層体の耐熱性の観点から、好ましくは100〜160℃、より好ましくは102〜155℃、さらにより好ましくは102〜152℃であるビカット軟化温度を有する。ここで、上記のビカット軟化温度は、熱可塑性樹脂層が1種の熱可塑性樹脂を含む場合は、その樹脂のビカット軟化温度であり、熱可塑性樹脂層が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合は、複数の熱可塑性樹脂の混合物のビカット軟化温度である。熱可塑性樹脂層のビカット軟化温度は、JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠して測定される。ビカット軟化温度は、ヒートディストーションテスター(例えば、株式会社安田精機製作所製「148−6連型」)を用いて測定することができる。測定は、各原料を3mm厚にプレス成形した試験片を用いて行ってよい。
【0034】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、熱可塑性樹脂層の強度や弾性等を高める目的で、熱可塑性樹脂以外の他の樹脂(例えばフィラーや樹脂粒子などの熱硬化性樹脂)をさらに含んでもよい。この場合、他の樹脂の量は、それぞれの熱可塑性樹脂層に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。他の樹脂の量の下限は0質量%である。
【0035】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、成形加工性が良好であり、中間層(A)との密着性を高めやすい観点から、好ましくは(メタ)アクリル樹脂層又はポリカーボネート樹脂層である。
【0036】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)が(メタ)アクリル樹脂層である本発明の一態様について以下に説明する。この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は1種以上の(メタ)アクリル樹脂を含む。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、表面硬度の観点から、それぞれの熱可塑性樹脂層に含まれる全樹脂に基づいて好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上の(メタ)アクリル樹脂を含む。
【0037】
(メタ)アクリル樹脂としては、中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂について記載した樹脂が挙げられる。中間層(A)について記載した好ましい(メタ)アクリル樹脂は、特記しない限り、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)に含まれる(メタ)アクリル樹脂としても同様に好ましい。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)に含まれる(メタ)アクリル樹脂と、中間層(A)に含まれる(メタ)アクリル樹脂とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、成形加工性が良好であり、力学強度を高めやすい観点から、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは70,000〜250,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0039】
この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)はさらに、1種以上の(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでもよい。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体(例えば電気化学工業製「レジスファイ」)やメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体(例えばアルケマ製「アルトグラスHT121」)、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点から、JIS K 7206:1999に準拠して測定して好ましくは115℃以上、より好ましくは117℃以上、さらにより好ましくは120℃以上のビカット軟化温度を有することが好ましい。なお、耐熱性及び表面硬度の観点から、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、実質的にフッ化ビニリデン樹脂を含まないことが好ましい。
【0040】
この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の鉛筆硬度は、耐傷つき性を高める観点から、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらにより好ましい。
【0041】
次に、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)がポリカーボネート樹脂層である本発明の別の一態様について以下に説明する。この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は1種以上のポリカーボネート樹脂を含む。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、耐衝撃性の観点から、それぞれの熱可塑性樹脂層に含まれる全樹脂に基づいて好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上のポリカーボネート樹脂を含む。
【0042】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又は、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体が挙げられ、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0043】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0044】
これらは単独又は2種以上を混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0045】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0046】
上記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂として、イソソルバイトと芳香族ジオールから合成されるポリカーボネートが挙げられる。該ポリカーボネートの例として、三菱化学製「DURABIO(商標登録)」が挙げられる。
【0047】
ポリカーボネート樹脂として市販品を使用してもよく、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー(登録商標)301-4、301-10、301-15、301-22、301-30、301-40、SD2221W、SD2201W、TR2201」などが挙げられる。
【0048】
この態様において、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐衝撃性及び成形加工性を高めやすい観点から、好ましくは20,000〜70,000であり、より好ましくは25,000〜60,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0049】
この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)に含まれるポリカーボネート樹脂は、温度300℃及び荷重1.2kgの条件で測定して、好ましくは3〜120cm
3/10分、より好ましくは3〜80cm
3/10分、さらにより好ましくは4〜40cm
3/10分、特に好ましくは10〜40cm
3/10分のメルトボリュームレイト(以下、MVRとも言う。)を有する。MVRが上記の下限より高いと、流動性が十分高く、溶融共押出成形などにおいて成形加工しやすく、外観不良が生じにくいため好ましい。MVRが上記の上限より低いと、ポリカーボネート樹脂層の強度等の機械特性を高めやすいため好ましい。MVRは、JIS K 7210に準拠し、1.2kgの荷重下、300℃の条件にて測定することができる。
【0050】
この態様において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、さらに、1種以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでよい。ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましく、芳香環又はシクロオレフィンを構造中に有するメタクリル樹脂がさらにより好ましい。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)がポリカーボネート樹脂及び上記の(メタ)アクリル樹脂を含有することが、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の表面硬度を、ポリカーボネート樹脂のみを含む場合と比較してより高くすることができるため好ましい。
【0051】
本発明の樹脂積層体において、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層は、樹脂積層体を表示装置等に使用する際に、表示装置に含まれる偏光板等の他の部品を保護する目的で、320〜400nmに吸収極大を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する。樹脂積層体の紫外線吸収能を高めやすい観点から、上記紫外線吸収剤の含有量は、該紫外線吸収剤を含有する各層に含まれる全樹脂に基づいて0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤の含有量の上限は、層からのブリードアウトを抑制しやすく、層の黄色化を回避しやすい観点から、紫外線吸収剤を含有する各層に含まれる全樹脂に基づいて好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.75質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下である。樹脂積層体の紫外線吸収能を高めやすい観点からは、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層が320〜400nmに吸収極大を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有することが好ましく、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)のいずれもが320〜400nmに吸収極大を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有することがより好ましい。
【0052】
320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤としては、特に限定されず、従来公知の種々の紫外線吸収剤を使用してよい。例えば、320〜400nmに吸収極大を有するトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤として、これらの紫外線吸収剤の1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0053】
320〜400nmに吸収極大を有するトリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0054】
320〜400nmに吸収極大を有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2、2′―ジヒドロキシ―4−メトキシ―ベンゾフェノンが挙げられる。
【0055】
320〜400nmに吸収極大を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0056】
320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤として、市販品を使用してもよく、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−F70(2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン)」(吸光度0.6)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G(2,2′−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)」(吸光度0.2)、ケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb279(2,2′−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)」(吸光度0.1)などが挙げられる。例示した紫外線吸収剤の吸光度は、クロロホルムに濃度が10mg/Lとなるように、紫外線吸収剤を溶解し、HITACHI製分光光度計U−4100にて380nmにおける数値を測定した。
【0057】
本発明の樹脂積層体において、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層は、表示装置に含まれる偏光板等の他の部品を紫外線から保護する効果をより高めやすい観点から、上記の320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤に加えて、200〜320nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤をさらに含んでよい。
【0058】
200〜320nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤としては、特に限定されず、従来公知の種々の紫外線吸収剤を使用してよい。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外吸収剤として、これらの紫外線吸収剤の1種又は2種以上と、上記320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤とを組み合せて、使用してよい。
【0059】
200〜320nmに吸収極大を有するトリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,6−ジフェニル−4−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノールが挙げられる。
【0060】
200〜320nmに吸収極大を有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンが挙げられる。
【0061】
200〜320nmに吸収極大を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ―3,5−ジ―tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0062】
200〜320nmに吸収極大を有するベンゾエート系紫外線吸収剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。
【0063】
200〜320nmに吸収極大を有するシアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレートが挙げられる。
【0064】
200〜320nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤として、市販品を使用してもよく、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、ケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb102(2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ―4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)」(吸光度0.1)、「アデカスタブLA−46(2―(4,6―ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノール)」(吸光度0.05)、BASFジャパン株式会社製の「チヌビン1577(2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)」(吸光度0.1)などが挙げられる。例示した紫外線吸収剤の吸光度は、380nmにおける吸光度である。これは、10mg/Lの濃度で紫外線吸収剤をクロロホルムに溶解させ、分光光度計(例えばHITACHI製分光光度計U−4100)を用いて測定することができる。
【0065】
本発明の樹脂積層体において、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層は、上記の市販品を組み合わせて含有してもよく、例えば、ケミプロ化成の「Kemisorb102」と、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−F70」、「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G」の少なくとも一方との組合せ、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−46」と、「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G」及び「アデカスタブLA−F70」の少なくとも一方との組合せ、又は、BASFジャパン株式会社製の「チヌビン1577」と、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−F70」及び「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G」の少なくとも一方との組合せなどが挙げられる。使用できる紫外線吸収剤は例示した限りではない。
【0066】
中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層に含まれ得る紫外線吸収剤は、樹脂積層体の紫外線吸収能を高めやすい観点から、吸収極大の波長におけるモル吸光係数が、10L/mol・cm以上であることが好ましく、15L/mol・cm以上であることがより好ましい。紫外線吸収剤のモル吸光係数が上記の下限以上であることで、本発明の樹脂積層体の紫外線吸収能はより優れるものとなり、樹脂積層体の少なくとも1つの層における紫外線吸収剤の含有量を少なくすることができる。
【0067】
上記の紫外線吸収剤は、好ましくは500〜1000、より好ましくは550〜800の重量平均分子量を有する。紫外線吸収剤の重量平均分子量が上記の下限以上であることが、成形過程での発煙を抑制しやすいため好ましい。また、紫外線吸収剤の重量平均分子量が上記の上限以下であることが、紫外線吸収剤を含有する層に含まれる樹脂との相溶性を高めやすいため好ましい。
【0068】
本発明の樹脂積層体において、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の膜厚の平均値をそれぞれ、T
A、T
B及びT
C(μm)とし、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)における紫外線吸収剤の含有量をそれぞれ、W
A、W
B及びW
C(質量%)としたとき、次の式:
【数2】
により算出されるXは、0.01以上0.25以下であることが好ましい。Xが上記の下限以上であると、紫外線からの偏光子の保護効果を高めやすい。同様の観点から、Xは好ましくは0.015以上、より好ましくは0.02以上、さらにより好ましくは0.025以上である。Xが上記の上限以下であると、樹脂積層体自体のYIを低くし、良好な外観を得やすい。同様の観点から、Xは好ましくは0.245以下、より好ましくは0.24以下、さらにより好ましくは0.235以下である。
【0069】
本発明の樹脂積層体における中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、重合抑制剤、難燃助剤、補強剤、核剤、ブルーイング剤等の着色剤などが挙げられる。
【0070】
着色剤としては、アントラキノン骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アントラキノン骨格を有する化合物が、耐熱性の観点から好ましい。
【0071】
中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の少なくとも1つの層が着色剤をさらに含む場合、各層における着色剤の含有量は、目的、着色剤の種類等に応じて適宜選択することができる。着色剤としてブルーイング剤を用いる場合、その含有量は、ブルーイング剤を含有する各層に含まれる全樹脂に基づいて、0.01〜10ppm程度とすることができる。この含有量は、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらにより好ましくは0.1ppm以上であり、また好ましくは7ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらにより好ましくは4ppm以下、特に好ましくは3ppm以下である。ブルーイング剤は、公知のものを適宜使用することができ、例えば、それぞれ商品名でマクロレックス(登録商標)ブルーRR(バイエル社製)、マクロレックス(登録商標)ブルー3R(バイエル社製)、Sumiplast(登録商標) Viloet B(住化ケムテックス社製)及びポリシンスレン(登録商標)ブルーRLS(クラリアント社製)、Diaresin Violet D、Diaresin Blue G、Diaresin Blue N(以上、三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0072】
本発明の樹脂積層体は、樹脂積層体の膜厚の平均値が100〜2000μmであり、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の膜厚の平均値がそれぞれ10〜200μmであることが、本発明の樹脂積層体の反りを抑制しやすい観点から好ましい。
【0073】
本発明の樹脂積層体の膜厚の平均値は、樹脂積層体の剛性の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらにより好ましくは300μm以上である。また、透明性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらにより好ましくは1000μm以下である。樹脂積層体の膜厚は、デジタルマイクロメーターにより測定される。上記測定を樹脂積層体の10点において行った平均値を膜厚の平均値とする。
【0074】
本発明の樹脂積層体において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の膜厚の平均値は、表面硬度を高めやすい観点から、それぞれ、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらにより好ましくは50μm以上である。また、誘電率の観点からは、それぞれ、好ましくは200μm以下、より好ましくは175μm以下、さらにより好ましくは150μm以下である。熱可塑性樹脂層の膜厚の平均値の測定方法は、上記に述べたとおりである。
【0075】
本発明の樹脂積層体において、中間層(A)の膜厚の平均値は、誘電率の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらにより好ましくは300μm以上である。また、透明性の観点から、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1200μm以下、さらにより好ましくは1000μm以下である。中間層(A)の膜厚の平均値は、熱可塑性樹脂層の膜厚の平均値の測定と同様の方法で測定することができる。
【0076】
本発明の樹脂積層体は、タッチパネル等の表示装置において使用するに十分な機能を得る観点から、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.1以上の誘電率を有する。誘電率の上限値は特に限定されないが、通常20である。誘電率は、本発明の樹脂積層体の中間層(A)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂の種類や量を調整したり、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの高誘電率化合物を添加することにより、上記の範囲に調整することができる。誘電率は、JIS K 6911:1995に準拠し、本発明の樹脂積層体を23℃で相対湿度50%の環境下に24時間静置し、この環境下で、自動平衡ブリッジ法にて、3V、100kHzで測定した値である。測定には、市販の機器を使用してよく、例えば、アジレント・テクノロジー株式会社製の「precision LCR meter HP4284A」を使用してよい。
【0077】
本発明の樹脂積層体は、目視で観察した場合に透明であることが好ましい。具体的には、本発明の樹脂積層体は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定して好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらにより好ましくは90%以上の全光線透過率(Tt)を有する。全光線透過率の上限は100%である。60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体がなお、上記の範囲の全光線透過率を有することが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂積層体は、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体を用いて、JIS K7136:2000に準拠して測定して、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.8%以下、さらにより好ましくは1.5%以下のヘーズ(曇価)を有する。また、本発明の樹脂積層体は、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体を用いて、JIS Z 8722:2009に従って測定して、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、さらにより好ましくは1.3以下の黄色度(Yellow Index:YI値)を有する。上記のヘーズ及び黄色度を有する本発明の樹脂積層体は、高温高湿等の環境下で使用しても反りが生じにくいことに加えて、透明性を維持し、黄色化を抑制しやすいことから好ましい。
【0079】
本発明の樹脂積層体は、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の他に、さらに、少なくとも1つの機能層を有してよい。機能層は、熱可塑性樹脂層(B)及び/又は(C)の、中間層(A)とは反対側の表面に存在することが好ましい。機能層としては、例えばハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層及び指紋防止層などが挙げられる。これらの機能層は、粘着剤層を介して本発明の樹脂積層体に積層されていてもよいし、コーティングにより積層されたコーティング層であってもよい。機能層として、例えば特開2013−86273号公報に記載されているような硬化被膜を用いてもよい。機能層は、例えば、ハードコート層、防眩層、帯電防止層及び指紋防止層からなる群から選択される少なくとも1つの機能層の片面又は両面に、コート法、スパッタ法、真空蒸着法等により反射防止層がさらにコーティングされた層であってもよいし、上記少なくとも1つの機能層の片面又は両面に反射防止性のシートが貼合された層であってもよい。
【0080】
機能層の厚みは、各機能層の目的に応じて適宜選択してよいが、機能を発現しやすい観点から好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらにより好ましくは5μm以上であり、機能層の割れを防止しやすい観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらにより好ましくは70μm以下である。
【0081】
本発明の樹脂積層体は、中間層(A)を与える樹脂組成物(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)をそれぞれ与える樹脂組成物(B)及び(C)から製造することができる。なお、本明細書において、樹脂組成物(B)及び(C)は、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を与える樹脂を少なくとも含んでいればよく、樹脂と任意の添加剤などの2種以上の成分を含む組成物であってもよいし、単に1種類の樹脂であってもよい。
【0082】
樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを、通常、混練することにより得られる。混練は、例えば、150〜350℃の温度にて、10〜1000/秒の剪断速度で溶融混練する工程を含む方法により実施できる。
【0083】
溶融混練を行う際の温度は、150℃以上であることが、樹脂を十分に溶融させることができるため好ましく、350℃以下であることが、樹脂の熱分解を抑制しやすいため好ましい。さらに、溶融混練を行う際の剪断速度が10/秒以上であることが、樹脂を十分に混練しやすいため好ましく、1000/秒以下であることが、樹脂の分解を抑制しやすいため好ましい。
【0084】
各成分がより均一に混合された樹脂組成物を得るために、溶融混練は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の温度で行われ、好ましくは20〜700/秒、より好ましくは30〜500/秒の剪断速度で行われる。
【0085】
溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機や混練機を用いることができる。具体的には、一軸混練機、二軸混練機、他軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミルなどが挙げられる。また、剪断速度を上記範囲内で大きくする場合には、高剪断加工装置等を使用してもよい。
【0086】
樹脂組成物(B)及び(C)も、樹脂組成物(A)と同様にして、例えば上記の温度及び剪断速度下での溶融混練等により製造することができる。また、例えば熱可塑性樹脂層(B)及び(C)が1種類の熱可塑性樹脂を含む場合、予め溶融混練することなく、後述する溶融押出を行い樹脂積層体を製造してもよい。
【0087】
中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)が添加剤を含有する場合、添加剤は各層に含まれる樹脂にあらかじめ含まれていてもよく、樹脂の溶融混練の際に添加してもよく、樹脂を溶融混練後に添加してもよく、樹脂組成物を用いて樹脂積層体を作製する際に添加してもよい。
【0088】
中間層(A)と、中間層(A)の両側にそれぞれ存在する熱可塑性樹脂層(B)及び(C)とを少なくとも有する本発明の樹脂積層体は、例えば溶融押出成形法、溶液流延製膜法、熱プレス法、射出成形法などにより樹脂組成物(A)〜(C)から各層(A)〜(C)を別々に作製し、これらを例えば粘着剤や接着剤を介して貼合することにより製造してもよいし、樹脂組成物(A)〜(C)を溶融共押出成形により積層一体化させることにより製造してもよい。貼合により樹脂積層体を製造する場合、各層の作製に射出成形法及び溶融押出成形法を用いることが好ましく、溶融押出成形法を用いることがより好ましい。本発明の樹脂積層体は、樹脂組成物(A)〜(C)を溶融共押出成形することにより製造することが、貼合により製造された樹脂積層体と比較して、通常、二次成形しやすい樹脂積層体が得られるため好ましい。
【0089】
溶融共押出成形は、例えば、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)及び(C)とを、2基又は3基の一軸又は二軸の押出機に、別々に投入して各々溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して、樹脂組成物(A)から形成される中間層(A)と熱可塑性樹脂層(B)及び(C)とを積層一体化し、押出す成形法である。樹脂組成物(B)及び(C)が同一の組成物である場合、1つの押出機内で溶融混練させた1つの組成物をフィードブロックダイ等を介して2つに分けて、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成させてもよい。得られた膜は、例えば、ロールユニット等により冷却、固化されることが好ましい。
【0090】
本発明の樹脂積層体は、上記のようにして製造した積層体から切り出して得た、例えば幅500〜3000mm、長さ500〜3000mmの大きさを有する樹脂積層体の形態で流通される。
【0091】
本発明の樹脂積層体は、さまざまな表示装置において使用することができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。本発明の樹脂積層体はこれら表示装置において、例えば前面板又は透明電極として、好適に使用される。
【0092】
本発明の樹脂積層体をタッチパネル等における透明電極として使用する場合、本発明の樹脂積層体の少なくとも一方の表面に透明導電膜を形成させて透明導電シートを製造し、該透明導電シートから透明電極を製造することができる。
【0093】
本発明の樹脂積層体の少なくとも一方の表面に透明導電膜を形成させる方法としては、本発明の樹脂積層体の表面に透明導電膜を直接形成させてもよいし、予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムを本発明の樹脂積層体の表面に積層させてもよい。
【0094】
予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムのフィルム基材としては、透明なフィルムであって透明導電膜を形成することができる基材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物等が挙げられる。また、透明導電膜を形成させる前に、表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記フィルムにコーティングを施しておいてもよい。
【0095】
予め透明導電膜が形成されたフィルムを本発明の樹脂積層体の表面に積層する方法は、気泡等がなく、均一で、透明なシートが得られる方法であればいかなる方法でもよい。常温、加熱、紫外線又は可視光線により硬化する接着剤を使用して積層する方法を用いてもよいし、透明な粘着テープにより貼り合わせてもよい。
【0096】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等が知られており、必要とする膜厚に応じて、これらの方法を適宜用いることができる。
【0097】
スパッタリング法の場合、例えば、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、必要により、基板に直流、交流、高周波等のバイアスを印加してもよい。透明導電膜に使用する透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0098】
また、透明導電膜を形成する方法として、透明導電性被膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を本発明の樹脂積層体の表面に塗布し、熱又は紫外線等の電離放射線を照射することによりコーティングを硬化させる方法等も適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0099】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、透明導電性の金属酸化物を使用する場合、通常50〜2000Å、好ましくは70〜000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0100】
透明導電シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。
【0101】
本発明の樹脂積層体をディスプレイパネル面板として使用し、本発明の樹脂積層体から製造した透明導電シートをタッチスクリーン等の透明電極として使用し、タッチセンサーパネルを製造することができる。具体的には、本発明の樹脂積層体をタッチスクリーン用ウインドウシートとして使用し、透明導電シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチスクリーンの電極基板として使用することができる。このタッチスクリーンを液晶表示装置や有機EL表示装置等の前面に配置することでタッチスクリーン機能を有する外付型のタッチセンサーパネルが得られる。
【0102】
本発明は、本発明の樹脂積層体を含む表示装置も提供する。本発明の表示装置は、例えば上記において述べた表示装置であり得る。
【0103】
本発明は、本発明の樹脂積層体及び偏光板が積層された樹脂積層体付き偏光板、ならびに、該樹脂積層体付き偏光板を含む表示装置も提供する。本発明の樹脂積層体付き偏光板において、本発明の樹脂積層体は、例えば接着剤及び粘着剤などの光学粘接着剤を介して偏光板に積層されている。接着剤又は粘着剤としては、適宜公知のものを使用すればよい。
【0104】
図2に、本発明の樹脂積層体を含む液晶表示装置の好ましい一形態を断面模式図で示す。本発明の樹脂積層体10は、光学粘着層12を介して、偏光板11に積層され、この積層体は、液晶セル13の視認側に配置され得る。液晶セル13の背面側には、通常、偏光板11が配置される。液晶表示装置14は、このような部材から構成される。なお、
図2は、液晶表示装置の一例であり、本発明の表示装置はこの構成に限られるものではない。
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
〔ビカット軟化温度〕
JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠して測定した。ビカット軟化温度は、ヒートディストーションテスター〔株式会社安田精機製作所製の“148−6連型”〕で測定した。その際の試験片は、各原料を3mm厚にプレス成形して測定を行った。
【0107】
〔アルカリ金属の含有量〕
誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。
【0108】
〔MFR〕
JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定した。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0109】
〔MVR〕
ポリカーボネート系の材料については、JIS K 7210に準拠している株式会社東洋精機製作所製「セミオートメルトインデックサ2A」で、1.2kg荷重下、300℃の条件にて測定した。
【0110】
〔全光線透過率及びヘーズ〕
JIS K 7361-1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に準拠したヘーズ透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製「HR-100」)で測定した。
【0111】
〔YI値〕
日本電色工業株式会社製の「Spectrophotometer SQ2000」で測定した。
【0112】
〔膜厚の平均値〕
樹脂積層体の膜厚は、デジタルマイクロメーターによって測定した。上記測定を任意の10点において行った平均値を樹脂積層体の膜厚の平均値とした。
中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の各層の膜厚の測定は、樹脂積層体を面方向に対して垂直に切断し、断面をサンドペーパーを用いて研磨した後、マイクロ・スクェア製マイクロスコープで観察することによって測定した。上記測定を任意の10点において行った平均値を各層の膜厚の平均値とした。
【0113】
〔製造例1〕
メタクリル酸メチル97.7質量部及びアクリル酸メチル2.3質量部を混合し、連鎖移動剤(オクチルメルカプタン)0.05質量部及び離型剤(ステアリルアルコール)0.1質量部を加えて単量体混合液を得た。また、メタクリル酸メチル100質量部に重合開始剤〔1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〕0.036質量部を加えて開始剤混合液を得た。単量体混合液と開始剤混合液との流量比が8.8:1になるように完全混合型重合反応器に連続供給し、平均滞留時間20分、温度175℃で平均重合率54%まで重合し、部分重合物を得た。得られた部分重合物を200℃に加熱してベント付き脱揮押出機へ導き、240℃で未反応の単量体をベントから脱揮すると共に、脱揮後の重合体は溶融状態で押出し、水冷後、裁断してペレット状のメタクリル樹脂(i)を得た。
【0114】
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、以下に示す条件で熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルに対応する各ピーク面積を測定した。その結果、メタクリル樹脂(i)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.0質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が3.0質量%であった。
【0115】
〔熱分解ガスクロマトグラフィーによる構造単位の含有量〕
(熱分解条件)
試料調製:メタクリル樹脂組成物を精秤(目安2〜3mg)し、樋状にした金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んで両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP-22(日本分析工業株式会社製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業株式会社製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
【0116】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC−14B(株式会社島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 3.2m×3.1mmφ(株式会社島津製作所製)
充填剤:FAL−M(株式会社島津製作所製)
キャリアーガス:Air/N2/H2=50/100/50(kPa)、80ml/分
カラムの昇温条件:100℃で15分保持後、10℃/分で150℃まで昇温し、150℃で14分保持
INJ温度:200℃
DET温度:200℃
【0117】
上記熱分解条件でメタクリル樹脂組成物を熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a1)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b1)を測定した。そして、これらピーク面積からピーク面積比A(=b1/a1)を求めた。一方、メタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比がW
0(既知)であるメタクリル樹脂の標準品を上記熱分解条件で熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a
0)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b
0)を測定し、これらピーク面積からピーク面積比A
0(=b
0/a
0)を求めた。そして、前記ピーク面積比A
0と前記重量比W
0とから、ファクターf(=W
0/A
0)を求めた。
前記ピーク面積比Aに前記ファクターfを乗じることにより、前記メタクリル樹脂組成物に含まれる共重合体におけるメタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比Wを求め、該重量比Wから、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計に対するメタクリル酸メチル単位の比率(質量%)と前記合計に対するアクリル酸エステル単位の比率(質量%)を算出した。
【0118】
〔製造例2〕
メタクリル酸メチルを98.9質量部、アクリル酸メチル1.1質量部、連鎖移動剤を0.16質量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂(ii)を得、構造単位の含有量を測定した。メタクリル樹脂(ii)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.5質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が2.5質量%であった。
【0119】
製造例1及び2で得たメタクリル樹脂(i)及び(ii)の物性を表1に示す。
【表1】
【0120】
〔製造例3〕
ブルーイング剤をマスターバッチ(MB)化するために、製造例1で得たメタクリル樹脂(i)99.99質量部と、着色剤0.01質量部とをドライブレンドし、40mmφ一軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)で、設定温度250〜260℃で溶融混合させ、着色されたマスターバッチペレット(MB(i))を得た。着色剤としては、ブルーイング剤(住化ケムテックス株式会社製の「Sumiplast(商標登録)Violet B」)を使用した。
【0121】
〔製造例4〕
紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂層に含有させるために、表2に示す組成であらかじめ紫外線吸収剤を含有させたメタクリル樹脂(iii)〜(viii)を製造した。具体的には、上記メタクリル樹脂(ii)と、320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤である株式会社ADEKA製「LA−31RG」とを、表2に示す組成で240〜250℃で溶融混練した。
【表2】
【0122】
〔製造例5〕
【0123】
実施例及び比較例において、次に示す市販品をポリカーボネート樹脂として使用した。樹脂の物性を表3に示す。
ポリカーボネート樹脂(i):住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー(登録商標)301−30」
【表3】
【0124】
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量はGPCで測定した。分子量分布が狭く分子量が既知の昭和電工株式会社製のメタクリル樹脂を標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをテトラヒドロフラン(THF)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置として、東ソー株式会社製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0125】
ポリカーボネート樹脂(i)に、表4に示す組成であらかじめ紫外線吸収剤及び着色剤を含有させ、ポリカーボネート樹脂(ii)及び(iii)を製造した(以下において、それぞれPC(ii)及び(iii)とも称する)。具体的には、上記ポリカーボネート樹脂(i)と、320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤である株式会社ADEKA製「LA−31RG」と、ブルーイング剤(住化ケムテックス株式会社製の「Sumiplast(商標登録)Violet B」)を、表4に示す組成で250〜260℃で溶融混練した。
【表4】
【0126】
実施例において、表5に示す物性を有する市販のフッ化ビニリデン樹脂を使用した。
フッ化ビニリデン樹脂(i):懸濁重合により製造されたポリフッ化ビニリデン
フッ化ビニリデン樹脂(ii):乳化重合により製造されたポリフッ化ビニリデン
【表5】
【0127】
フッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。ポリスチレンを標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをN−メチルピロリドン(NMP)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置として、東ソー株式会社製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0128】
〔樹脂組成物A1の製造〕
メタクリル樹脂(i)39質量部、フッ化ビニリデン樹脂(i)60質量部、製造例3で得たマスターバッチペレットMB(i)1質量部を、表4に示す割合で混合し、中間層(A)を形成するための樹脂組成物A1を得た。
【0129】
〔樹脂組成物A2の製造〕
メタクリル樹脂(i)39質量部、フッ化ビニリデン樹脂(ii)60質量部、製造例3で得たマスターバッチペレットMB(i)1質量部を、表4に示す割合で混合し、中間層(A)を形成するための樹脂組成物A2を得た。
【0130】
〔実施例1〜8及び比較例1〜3の樹脂積層体の製造〕
中間体層(A)を形成するための樹脂組成物として、実施例1〜7及び比較例1〜3では樹脂組成物A1を使用し、実施例8では樹脂組成物A2を使用した。
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成するための樹脂組成物(B)及び(C)として、表6に示す樹脂を使用した。これらの樹脂組成物から、
図1に示す装置を用いて樹脂積層体を製造した。具体的には、樹脂組成物(A)を65mmφ一軸押出機2〔東芝機械株式会社製〕で、樹脂組成物(B)及び(C)を45mmφ一軸押出機1及び3〔日立造船株式会社製〕で、それぞれ溶融させた。次いで、これらを設定温度230〜270℃のフィードブロック4〔日立造船株式会社製〕を介して上記のB層/A層/C層で表される構成となるように積層し、マルチマニホールド型ダイス5〔日立造船株式会社製、2種3層分配〕から押し出して、フィルム状の溶融樹脂6を得た。なお、本実施例において、B層とC層は同一組成の層である。そして、得られたフィルム状の溶融樹脂6を、対向配置した第1冷却ロール7と第2冷却ロール8との間に挟み込み、次いで第2ロール8に巻き掛けながら第2ロール8と第3ロール9との間に挟み込んだ後、第3冷却ロール9に巻き掛けて、成形・冷却し、各層が表4に示す膜厚の平均値を有する3層構成の樹脂積層体10を得た。得られた樹脂積層体10は、いずれも約800μmの総膜厚を有し、目視で観察したところ無色透明であった。
【0131】
【表6】
【0132】
実施例1〜8及び比較例1〜3の樹脂積層体において、中間層(A)におけるアルカリ金属(Na及びK)含量は、実施例1〜7及び比較例1及び3では0.3ppmであり、比較例2では0.5ppmであり、実施例8では100ppmであった。
【0133】
実施例1〜8及び比較例1〜3の樹脂積層体において、誘電率は、実施例1及び5では5.2、実施例2〜4、6及び7では5.3、実施例8では4.9、比較例1〜3では5.1であった。いずれの樹脂積層体もタッチパネル等の表示装置において使用するに十分な誘電率を有することが確認された。
【0134】
実施例1〜8及び比較例1〜3の樹脂積層体を用いて、全光線透過率(Tt)及びヘーズ(Haze)の測定を行った。得られた結果を表7に示す。さらに、実施例1〜7及び比較例1〜3の樹脂積層体を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露して、耐久試験後の樹脂積層体についても同様に全光線透過率及びヘーズの測定を行った。
【表7】
【0135】
実施例1〜8に示す本発明の樹脂積層体は、380nmにおける透過率が低く、高い紫外線防御効果を有すると共に、黄色化が抑えられた樹脂積層体であり、高い透明性を有することが確認された。