特許第6408465号(P6408465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408465
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】薄い接着層を用いる接着方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20181004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09J5/06
   B32B27/00 D
   C09J201/00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524716(P2015-524716)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2015-530425(P2015-530425A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013065492
(87)【国際公開番号】WO2014019891
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】102012213397.6
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ゲオルク・キンツェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ギーアリングス
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/045833(WO,A1)
【文献】 特公昭44−008741(JP,B1)
【文献】 特開2012−184402(JP,A)
【文献】 特表2002−528308(JP,A)
【文献】 特開昭52−152434(JP,A)
【文献】 米国特許第06074755(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/00
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基材を接着的に結合するための方法であって、接着剤を2g/m未満の被覆重量にて第1基材上へ塗布し、該基材を熱可塑性プラスチックからなる第2フィルム成形基材と共に貼り合わせ、第2基材の表面を加熱により軟化状態へ変換し、および基材を前記加熱直後に加圧により互いに接着的に結合し、加熱することは、第2基材の軟化点から+/−40℃の範囲の温度において行うことを特徴とし、接着剤はポリウレタン、EVAまたはポリアクリレートに基づく、方法。
【請求項2】
第2基材は200℃未満の軟化点を有するプラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱することは、プラズマまたはレーザー処理、火炎、超音波、NIR放射またはIR放射を用いて行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
加熱することは、第2基材の軟化点から+/−20℃の範囲の温度において行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1基材は、加熱温度において熱可塑性プラスチック表面を有さないことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
2つのフィルム成形基材を接着的に結合することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
接着剤層は合計2g/m未満となることを特徴とする、請求項に記載の方法に従って製造された接着剤層で接着的に結合された少なくとも2つの基材を含む複合材料物体。
【請求項8】
接着剤層は合計1g/m未満となる、請求項に記載の複合材料物体。
【請求項9】
第2基材は柔軟熱可塑性プラスチックフィルムであり、第1基材は、紙、金属、プラスチックまたは多層基材から選択されることを特徴とする、請求項またはに記載の複合材料物体。
【請求項10】
複合材料物体は柔軟フィルムであることを特徴とする、請求項のいずれかに記載の複合材料物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合性接着剤層が薄い、柔軟基材を接着的に結合する方法に関する。本発明はさらに、2つの基材を薄い柔軟接着剤層により接合した複合材料基材に関する。
【背景技術】
【0002】
DE102005028661は、熱可塑性物質の二層フィルムを連続的に製造することができる方法を記載する。これらは、より厚いフィルムおよび同一の物質からできたより薄い第2フィルムを含む。2つのフィルムは、定義された比率で2つのフィルムを加熱され、表面が柔らかくなり、溶融する。その直後に互いに接合する。物質を接合する接着剤の使用は記載されていない。
【0003】
EP1465959は、反応性ポリウレタンホットメルト接着剤をフィルム表面へ適用する、成形要素上にフィルムを積層する方法を記載する。その後、フィルムは加熱することにより活性化され、成形要素へ接着的に結合される。
【0004】
EP0659829は、多層フィルムを2つの異なったフィルム層からカレンダーローラーを用いて加熱しながら積層および刻印により製造する担体基材への積層性フィルムの接合が記載されている。これらの2層装飾フィルムを低温硬化性接着剤によりプラスチックプロファイル上へ積層する。
【0005】
DE4419414A1は、まずプラスチックフィルムに積層剤を具備させ、次いで紙をプラスチックフィルムに対して例えば圧力下ローラーラミネーターにおいて積層する、プラスチックフィルムを有する紙類を製造する方法を記載する。プラスチックフィルムは、ポリプロピレンまたはポリエステル、即ち熱可塑性物質で作られ得る。例となる実施態様によれば、積層剤を3〜8g/mの間の量で適用する。例えば水性分散体接着剤、樹脂またはホットメルト、溶媒含有または溶媒不含有接着剤は1または2成分接着剤の形態で使用され得る。水性分散体を積層剤として用いる場合には、紙中に存在する水の十分な量は熱処理により蒸発される。この熱処理は積層後に行われ、接着結合する直前、接着結合する間または接着結合した後にプラスチックフィルムを柔軟にする働きをしない。まず接着剤が紙上へ適用され、次に加熱した熱可塑性プラスチックと共に貼り合わせる方法は記載されていない。
【0006】
DE102005023280A1は、物体の剥離可能な保持用の接触接着剤フィルムを記載する。接触接着剤フィルムは、ポリマー接着剤を用いて接合することができるポリマー系フィルム層を含む。フィルムは熱可塑性物質から作られ得る。しかしながら、特別な互いに適合した特性を有するポリマーフィルムだけが適当である。これらの特性としては、例えば異なった伸長性値、異なったピール能力、封止および非封止能力、および異なったVicat軟化温度が挙げられる。ポリマー接着層の層厚みは好ましくは0.5〜5μm、特に1〜3μmである。積層体を製造する方法は記載されていない。
【0007】
DE102009045395A1は、接着剤化合物で被覆されたキャリア層から作られた両側接触接着テープを記載する。キャリア輸送層は、積層接着層によって互いに接続された少なくとも2つの皮膜層から構築される積層体である。フィルム層は押出可能なまたはキャスト可能なポリマーから作られる。良好な化学アンカーのために、これらは例えばコロナ、プラズマまたは火炎処理により、およびエッチング、化学プライマーでの処理またはUV光開始剤により物理的におよび/または化学的に予備処理することができる。積層接着剤の層厚みは、少なくとも2μm(約2g/m)、より良好には少なくとも3μm(約3g/m)であるといわれるが、特に10μm(10g/m)よりかなり大きくてもよく、50μm(約50g/m)より大きくてもよく、むしろ100μm(約100g/m)を超えてもよい。例となる実施態様は、少なくとも5g/mのUV硬化性ラミネート接着剤と互いに接続する2つのコロナ予備処理PETフィルムから作られた担体層を記載する。単体層を製造するために、2つのフィルムの1つがその用途のためにブレードを用いて接着剤で被覆され、他のフィルムに対して積層され、およびそのフィルムはUV放射線下で互いに接着的に結合される。接着結合する直前、接着結合する間または接着結合した後にプラスチックフィルムを軟化する熱処理は記載されていない。
【0008】
接着剤層なしで互いに接合されるフィルムを製造する方法は知られている。フィルム材料の特別の選択、および相応して協調された方法がこれに必要である。対応する接着接合を達成するために、接合すべき基材の表面および材料は互いに調整されなければならない。更に固体プラスチックあるいは金属基材上へ軟質フィルム基材を適用することはさらに知られている。これは接着剤を用いて行われるが、この場合、通常、十分な厚みの接着剤層は適用される。
【0009】
粗い表面を有する基材を用いる場合、完全に表面を覆う接着剤の量を導入することが必要である。この条件でのみ、完全被覆接着結合が可能である。これは、水、耐候性または他の影響により層間剥離を回避することが意図される。欠陥は多くの場合泡であることが明らかである。この種の視認性の欠陥は望ましくない。この理由について、接着剤の多くの量が適用されなければならないことが知られている。
【0010】
柔軟基材を接着的に結合する場合、一方では、接着層は、完全被覆接着結合を確保することが意図されることが知られている。しかしながら、他方では、この層はあまりに厚くてはならず、接着的結合複合材料基材は柔軟性を有する。次いでこれは接着剤層におけるクラックおよび層間剥離を生じさせ得る。多くの目的のために、接着剤層はまたフィルム基材間で検出されてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005028661号明細書
【特許文献2】欧州特許第1465959号明細書
【特許文献3】欧州特許第0659829号明細書
【特許文献4】独国特許第4419414号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102005023280号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、フィルムを異なった基材、例えば固体基材、柔軟基材上へ接着的に結合することができる方法を利用可能にすることである。接着剤は少量のみ適用される。完全被覆接着接合が更に確保される。本発明の方法のさらなる局面は、迅速な接合が本発明の手順により得られ、得られる接着接合基材の更なる加工が促進されることでる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、接着剤を2g/m未満の被覆重量で1つの基材上へ塗布し、基材を熱可塑性プラスチックからできた第2フィルム成形基材と共に貼り合わせ、第2基材の表面を加熱により軟化状態へ変換し、および基材を、加熱する前、加熱する間、加熱直後、加圧により互いに接着的に結合する、2つの基材を接着的に結合する方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
複数の異なった材料は、本発明による方法のための基材として用いることができる。これらは、固形材料、例えば木製材料、金属、例えばアルミニウム、鉄または亜鉛、熱硬化性プラスチックまたは熱可塑性プラスチック、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリエステルまたはポリアミド等、有機ポリマー、例えばセロハン等;紙、板紙あるいは他の材料であってよいが、柔軟フィルム成形材料もまた第1基材として用いることもできる。多層基材を選択することができるが、表面は例えば金属、オキシドまたはプラスチック被覆物で被覆し、刻印し、着色し、または化学変性してよい。そのような材料は例えば第1基材として適当である。しかしながら、基材はまた、第2基材として適当な材料から選択してもよい。
【0015】
軟質フィルム材料、例えばフィルム形態での熱可塑性プラスチックからできた軟質フィルム材料、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン(LDPE、LLDPE、メタロセン触媒PE、HDPE)またはポリプロピレン(PP、CPP、OPP);ポリ塩化ビニル(PVC);エチレンコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリレートコポリマー(EMA)、EMMA、EAA;ポリエステル;PLA、ポリアミドあるいはアイオノマー、例えばエチレン/アクリル酸コポリマー等は、第2基材として適当である。フィルム材料は例えば官能基でプラスチック表面を変性することにより変性してよいし、または更なる成分、例えば顔料、染料をフィルムに含有させてよい。これらの熱可塑性プラスチックは、200℃未満、特に150℃未満の軟化点(DSCにより測定)を有する。複合材料基材もまた第2基材として可能であるが、接着的に接合する表面は熱可塑性的に被覆される。フィルムは通常、着色、無色または透明であってよい。ポリオレフィンおよび他のエチレンコポリマーは、ポリマーとして特に適当である。「柔軟フィルム」は通常、例えば包装フィルム、装飾フィルム、テープとして、または同様の形態で知られている薄いウェブ成形基材として理解される。
【0016】
軟化点は、DIN EN ISO標準11357−3:2001に従って10K/分の加熱速度にて決定することができる融点(溶融ピーク温度Tpm)である。
【0017】
基材の表面の予備処理を行うことができる。プラスチック表面を清潔にし、および接着接合する前に物理的、化学、または電気化学的予備処理を任意に行ってもよい。
【0018】
本発明の手順にしたがって、接着剤を第1基材上へ適用する。この接着剤は、既知の手順、例えば噴霧、ブレード、ローラー塗布、印刷または他の既知の方法を用いて塗布することができる。本発明によれば、接着剤は薄層厚みにて塗布する。この基材は固体基材であってよいが、フィルム成形柔軟基材であってもよい。適用する接着剤は接着接合要件へ適合することができる。水性接着剤を用いる場合には、水を表面から取り除く場合に有用である。溶媒含有接着剤を選択する場合、表面は含有溶媒について適当でなければならない。ホットメルト接着剤を選択する場合、表面は可能な熱入力により悪影響を受けるべきでない。反応性接着剤は、基材へ改善された接着を任意に生じさせることができる。放射線架橋性接着剤を用いる場合、接着剤層の照射は好ましくは、架橋を得るために、基材をともに連結する前に行うことができる。
【0019】
方法手順としては、接着剤へ適合するために、必要に応じて乾燥ゾーン、加熱ゾーンまたは他の支援手段を含んでよい。第1基材上への適当な接着剤の塗布後、第2基材を第1基材と共に貼り合わせ、接着的に接合する。
【0020】
本発明によれば、第2基材を、基材の接着接合直前、接着接合中または接着接合後に、接着接合する表面において加熱することは必要である。加熱は好ましくは表面だけを加熱するように行い、第2基材の機械特性についてできるだけ小さい悪影響しか及ぼさない。加熱は接着的に結合される表面上で直接行うことができるが、非接触加熱法を用いることも可能である。
【0021】
基材を加熱する方法は知られている。これは、例えば熱い物体で加熱することにより行ってよく、例えば熱ローラーを基材上へ通過させてよい。別の実施態様は熱ガスの通過により表面を加熱し、火炎処理してよく、プラズマ処理を行ってよい。更なる実施態様は、無線周波数領域、特にIR放射線またはNIR放射線において電磁放射線を用いる。更なる実施態様は超音波による加熱を用いる。表面を加熱するための装置は、当業者に原理上知られている。
【0022】
加熱が速く生じる場合、および接着結合する表面の領域のみを加熱する場合に有用である。これにより、悪影響が第2基材の機械的特性にほとんどあるいはまったくないことを確保することが可能である。さらに、形状を維持するために第2基材の裏側上に支持体を供給することもさらに可能である。第1実施態様では、2つの基材を共に貼り合わせ、加熱直後に接着接合する。第2基材の表面は、基材を接着接合する前に加熱した後に、あまり冷却しすぎないことを確保するために、基材を好ましくは10秒未満、より好ましくは1秒未満、特に0.1秒未満、第2基材の加熱後に共に貼り合わせることとなる。
【0023】
特に超音波により加熱する場合のために、最初に2つの基材を集め、次に接着接合表面の加熱をフィルム基材より行う場合に有用である。この場合、加熱は、基材を合わせた後、特に接着剤がまだ硬化していない間に行う。利用可能な最大時間は、用いる接着剤に依存する。しかしながら、加熱は好ましくは、2つの基材を合わせた後1時間以内に、より好ましくは10分以内に、特に1秒以内に行う。
【0024】
更なる実施態様では、基材は、接着接合する第2基材の表面を加熱により軟化状態とする間に加圧により互いに接着接合する。
【0025】
加熱は、好ましくは熱可塑性プラスチック基材の軟化温度へほぼ対応する温度へ表面にて行う。例えば、第2基材の表面は好ましくは、表面においてポリマーの難化温度(DSCにより測定の軟化温度)から温度+/−40℃、特に好ましくは+/−20℃へ加熱する。これらの温度においては、基材の表面は、柔軟で、および任意に流動性または加圧下で変形性となる。ポリマーが狭い軟化点、例えば融点を有することがあるが、材料が軟化状態にある軟化領域もまた存在してもよいことは当業者に知られている。
【0026】
好ましい実施態様では、第1基材は、加熱温度において熱可塑性表面を有さないことを意図する。したがって、第1基材の表面は、加熱温度において軟化されないことを意図する。これは、第1基材として非熱可塑性基材を選択する場合、または十分に高い軟化温度を有する熱可塑性基材を用いる場合のいずれかである。
【0027】
任意の理論への先入観を持たずに、基材表面の表面粗さは加熱により、および接着剤被覆第1表面に対する圧縮により減少すると考えられる。これは基材間で塗布された接着剤について特に薄い層厚みを可能にする。表面が平滑化され、僅かな接着剤しか接着剤接合に要求されないと考えられる。
【0028】
塗布する接着剤の量は、2g/m未満、好ましくは1g/m未満、特に0.5g/m未満となる。記載したこれらの3つの範囲の各々について、塗布する接着剤の量は、好ましくは0.05g/mを超え、特に0.2g/m以上である。塗布する最適量は、基材の表面粗さまたは不規則性に従って選択される。不規則性は、例えば基材の刻印から、および印刷パターンに応じておよび塗布する印刷インキの量に応じて生じることがある。圧力下での接着接合は、少量の接着剤にもかかわらず平面接合を生じさせる。
【0029】
貼り合わせおよび接着接合のために通常の装置を用いることができる。例えばスタンプ、ローラー、ロール、板を用いて、特に基材を共に加圧または回転することにより基材を貼り合わせることができる。回転により貼り合わせる場合に生じる基材上への圧力は、例えば0.2〜15バールであってよい。2つのフィルム基材の接着接合の特定の実施態様では、このような積層装置は当業者に一般に知られている。
【0030】
接着剤の薄い層はまた、加熱した表面と貼り合わせることにより加熱することもできる。これは接着のより速い構築、およびより速い架橋を生じさせる。
【0031】
本発明による方法に適した接着剤は、液体である場合に塗布することができる接着剤から選択されることとなる。これらは水性分散体であってよく、溶媒含有非反応性または反応性接着剤であってよく、溶媒不含液体または固体溶融性接着剤を使用することができる。これらは1成分系または2成分系であってよい。
【0032】
適当な接着剤の例は、熱可塑性ポリマー、例えばポリウレタン、EVA、ポリアクリレート等に基づく接着剤;溶媒含有接着剤、例えばアクリレート接着剤、1成分または2成分ポリウレタン接着剤、シラン架橋性接着剤など;反応性溶融接着剤、例えば1成分ポリウレタン接着剤等;または溶媒不含1成分または2成分ポリウレタン接着剤、シラン系あるいは放射架橋性接着剤である。
【0033】
本発明に従えば、接着剤が低粘度を有する場合に有用である。塗布の際に適当な接着剤の粘度は、例えば10000mPasまで、好ましくは5000mPasまで(ブルックフィールド粘度計で測定;ISO2555:2000)である。測定温度を塗布温度に適合させる。室温にて液体である接着剤については、粘度は例えば20〜40℃において決定され、ホットメルト接着剤については、測定温度は100〜150℃であってよい。より高い粘度の接着剤については、40〜100℃を測定することも可能である。水性または溶媒不含接着剤は、500mPasまでの低粘性を有する場合が多く、ホットメルト接着剤は1000mPasを超える粘度を有する場合が多い。
【0034】
本発明による方法に従えば、接着剤接合は、塗布の広い範囲にわたり行うことができる。固体基材をフィルム状基材へ接着的に接合する場合、接着剤を(任意に予備処理した)固体基材上に接着剤を塗布する。この方法により被覆された表面上へ、熱可塑性ポリマーからなる表面を有するフィルムを第2基材として塗布する。熱可塑性フィルムの表面の加熱により、表面において軟化し始める。接着剤に圧力を適用することにより、接着的接合される熱可塑性基材の特に平滑な表面が得られることを確保することが可能となる。泡と層間剥離は観察されない。別の態様は、接着剤を薄い層に適用する柔軟第1基材と共に働く。この表面上へ、その後、熱可塑性ポリマーを表面層上で含む第2フィルム基材を加圧下で同様に適用する。ここで、同様に、最初の基材に加熱し連結することは、第2基材の特に表面平滑な表面を得ることを確保する。
【0035】
接合することは、例えば圧力により支援することができる。圧力は、プレッシャーローラーに例えば合計0.2〜16バール働いてよい。本発明によれば、薄い接着剤塗布重量での基材の完全被覆接着接合を得ることが可能となる。
【0036】
さらに、本発明の対象は、第1基材、熱可塑性ポリマーからなる表面を有する第2基材、およびその間に位置する接着剤層から構成された複合材料基材であり、前記接着剤層は、好ましくは0.05〜2μmの厚みを有する。
【0037】
層厚みは、面積についての接着剤の塗布重量、例えば0.05〜2g/mにより決定することができる。第1基材は、硬質または固体基材、例えば種々の材料からなる成形要素であってよい。これらは、表面粗さがほとんどないことが意図される。更なる実施態様として、第1基材は柔軟基材からなってよく、この場合、材料およびこの柔軟基材の特性は、広い範囲内で可変である。材料はまた、第2基材として同一のものであってよいが、とりわけ、2つの基材は異なっている。第1基材は、任意に処理または刻印されてもよい。第1基材の表面は、薄い接着剤層の適用により影響を受けない。塗布接着剤の可能な含水量、有機溶媒含有量または低い熱含有量を選択して、第1基材の表面の特性が実質的に分解されない。
【0038】
少なくとも接着的に結合される表面上において、熱可塑性プラスチックポリマーからなる基材は、本発明による複合材料物体の第2基材として選択される。これは単層フィルムであってよく、多層フィルムを選択してもよい。本発明による複合材料基材は、2つの異なった基材を共に連結し、圧縮することによりを得られる。
【0039】
本発明による複合材料基材は、接着的に結合した個々の基材において高い強度を示す。接着剤層の薄い層厚みは、接着剤の高い密着を確保する。基材の薄い層厚みは、接着剤層について改善された柔軟性を更に生じさせる。したがって、本発明による複合材料基材は弾性変形に関して高水準の安定性を示すことができる。
【0040】
本発明による方法、およびその上に製造された合成素子の一層の利点は、可視の変更が表面においてほとんどないということである。接着剤層が薄いので、それは視覚的に無色である。複合材料物体の視覚的な特性は改善されるかまたは保持される。
【0041】
本発明による方法のさらなる利点は、製造工程におけるより低い応力である。溶媒、あるいは水の低濃度に起因して、または本発明に従って適当な接着剤の低い熱含量に起因して、各種基材の特性は害されない。例えば小量の水は紙基体にとって有利である。産業衛生とは離れて、小量の溶媒もまた、溶媒に敏感であり得る基材に有用である。薄い層厚みにより、第1基材の表面はまた、ホットメルト接着剤の塗布により僅かな熱応力を受ける。第2基材の簡潔な加熱はまた、第1基材上で応力がないことを意味する。
【0042】
本発明による方法は、このように僅かな接着剤だけを用いる必要のある多層複合材料要素の接着剤結合のための方法を利用可能にする。改善された接着剤的に結合した基材を更に得る。
【実施例】
【0043】
接着剤1(NCO末端ポリエステルウレタン):
芳香族および脂肪族ジカルボン酸およびポリアルキレンジオールからなるポリエステルポリオールを過剰の4,4’−MDIと反応させる。
【0044】
接着剤は、固体を基準に3.4重量%NCOのNCO含有量を有する。
固体:接着剤1に基づく酢酸エチル中に50の重量%。
粘度:140mPas(ブルックフィールドLVT、20℃、スピンドル2、剪断速度30rpm、ISO2555にて)
【0045】
接着剤2:
ポリエステルプレポリマーを実施例1の手順を用いて製造する。
【0046】
接着剤は、固体を基準に4.0重量%NCOのNCO含有量を有する。
固体:接着剤2に基づく酢酸エチル中に60重量%。
粘度:300mPas(ブルックフィールドLVT、20℃、スピンドル2、剪断速度30rpm、ISO2555にて)
【0047】
基材1:PETフィルム(12μm)。
【0048】
基材2:LLDPEフィルム、60μm(融点:114℃、DIN EN ISO 11357−3:2011によるDSC;加熱速度:10K/分)
【0049】
接着結合方法:
【0050】
方法1:基材1上にブレードで接着剤を塗布する。
IRラジエーター(1.5〜1.8μm波長;10cm間隔)で基材2を加熱する。
その直後、基材を手動で接着的に結合する。
【0051】
方法2:希釈接着剤(約10重量%固形分)を基材1上にスクリーンローラーを用いて機械的に10m/分のウェブ速度にて塗布する。
3ゾーンドライヤーにおいて溶媒を取り除く。
60℃にて積層ユニットを用いて接着的に結合する。
基材1から5mm間隔にて複合材料を超音波処理(20kHz)する。
【0052】
方法3:希釈接着剤(約10重量%固形分)を基材1上にスクリーンローラーを用いて機械的に60m/分のウェブ速度にて塗布する。
3ゾーンドライヤーにおいて溶媒を取り除く。
基材2をIRラジエーター(上記参照)で進行方向に沿って1mの長さにわたり40kW加熱する。
60℃にて積層ユニットを用いて接着的に結合する。
【0053】
接着的に結合したフィルムおよび溶媒で清潔にしたフィルムを計量することにより塗布重量を決定する。
【0054】
DIN53278、2×90°により計測した結合性接着(15mm幅条片、100mm/分についての剥離試験)。
【0055】
DIN53278、2×90°により計測したシール接着(15mm幅条片、100mm/分についての剥離試験)。
【0056】
煮沸試験:4日間の貯蔵後、接着的に結合したサンプルについて沸騰水中での煮沸試験を行った。これについて、試料をまず裁断し(30cm×16cm)、次いでそれにLLDPEフィルムを配置し、積層体の長い方向が半分になるように折り畳んだ(15cm×16cm)。2つの短い側(15cm)を、1cmの幅にわたり、150°にて1秒間、50N/cmの圧力下で2つの加熱シーリングジョーを有する実験室作業用シーリングユニットで封止する。このように製造した一方の側が開いたポーチに100mLの水を充填し、開いた16cmの長い側もまた1cmの幅にわたり上記の通り封止した。その後、封止ポーチを30分間、沸騰水中で加熱する。
【0057】
【表1】
【0058】
基材2に熱処理を施し、および2つのフィルムを互いに接着的に結合した積層体は全て視覚的に問題がなかった(透明、気泡なし)。
【0059】
これらの接着的に結合されたフィルムは煮沸後もなお層間剥離することなく強く結合していた。結合性接着は変化しなかった(剥離試験では材料破壊が生じた)。
【0060】
基材2を加熱したが接着剤を省いた積層体は、結合性接着を示さなかった。
【0061】
フィルムを接着的に結合したが基材2を加熱しなかった積層体は、ほとんどまたは全く結合性接着を示さなかった。
【0062】
さらに基材2を加熱することなく製造した積層体において、視覚的な欠陥が起こる場合があることが観察された。塗布した接着剤の量がより少ないほど、むしろその欠陥が生じた。