(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[エッチング処理装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態にかかるエッチング処理装置1について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるエッチング処理装置1の縦断面の一例を示す。本実施形態にかかるエッチング処理装置1は、チャンバ10内に載置台20とガスシャワーヘッド25とを対向配置した平行平板型のプラズマ処理装置(容量結合型プラズマ処理装置)である。載置台20は下部電極としても機能し、ガスシャワーヘッド25は上部電極としても機能する。
【0012】
エッチング処理装置1は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形のチャンバ10を有している。チャンバ10は、電気的に接地されている。載置台20は、チャンバ10の底部に設置され、半導体ウェハ(以下、単に「ウェハW」という。)を載置する。ウェハWは、エッチング対象である基板の一例であり、ウェハWには、シリコン酸化膜上にマスク膜が形成されている。
【0013】
載置台20は、たとえばアルミニウム(Al)やチタン(Ti)、炭化ケイ素(SiC)等から形成されている。載置台20の上面には、ウェハを静電吸着するための静電チャック106が設けられている。静電チャック106は、絶縁体106bの間にチャック電極106aを挟み込んだ構造になっている。チャック電極106aには直流電圧源112が接続され、直流電圧源112からチャック電極106aに直流電圧HVが印加されることにより、クーロン力によってウェハWが静電チャック106に吸着される。
【0014】
載置台20は、支持体104により支持されている。支持体104の内部には、冷媒流路104aが形成されている。冷媒流路104aには、冷媒入口配管104b及び冷媒出口配管104cが接続されている。チラー107から出力された例えば冷却水やブライン等の冷却媒体は、冷媒入口配管104b、冷媒流路104a及び冷媒出口配管104cを循環する。これにより、載置台20及び静電チャック106は冷却される。
【0015】
伝熱ガス供給源85は、ヘリウムガス(He)やアルゴンガス(Ar)等の伝熱ガスをガス供給ライン130に通して静電チャック106上のウエハWの裏面に供給する。かかる構成により、静電チャック106は、冷媒流路104aに循環させる冷却媒体と、ウエハWの裏面に供給する伝熱ガスとによって温度制御される。この結果、ウェハを所定の温度に制御することができる。
【0016】
載置台20には、2周波重畳電力を供給する電力供給装置30が接続されている。電力供給装置30は、第1周波数の第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力)を供給する第1高周波電源32と、第1周波数よりも低い第2周波数の第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)を供給する第2高周波電源34とを有する。第1高周波電源32は、第1整合器33を介して載置台20に電気的に接続される。第2高周波電源34は、第2整合器35を介して載置台20に電気的に接続される。第1高周波電源32は、例えば、40MHzの第1高周波電力を載置台20に印加する。第2高周波電源34は、例えば、0.3MHzの第2高周波電力を載置台20に印加する。なお、本実施形態では、第1高周波電力は載置台20に印加されるが、ガスシャワーヘッド25に印加してもよい。
【0017】
第1整合器33は、第1高周波電源32の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。第2整合器35は、第2高周波電源34の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。第1整合器33は、チャンバ10内にプラズマが生成されているときに第1高周波電源32の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように機能する。第2整合器35は、チャンバ10内にプラズマが生成されているときに第2高周波電源34の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように機能する。
【0018】
ガスシャワーヘッド25は、その周縁部を被覆するシールドリング40を介してチャンバ10の天井部の開口を閉塞するように取り付けられている。ガスシャワーヘッド25は、
図1に示すように電気的に接地してもよい。また、可変直流電源を接続してガスシャワーヘッド25に所定の直流(DC)電圧が印加されるようにしてもよい。
【0019】
ガスシャワーヘッド25には、ガスを導入するガス導入口45が形成されている。ガスシャワーヘッド25の内部にはガス導入口45から分岐したセンタ側の拡散室50a及びエッジ側の拡散室50bが設けられている。ガス供給源15から出力されたガスは、ガス導入口45を介して拡散室50a、50bに供給され、拡散室50a、50bにて拡散されて多数のガス供給孔55から載置台20に向けて導入される。
【0020】
チャンバ10の底面には排気口60が形成されており、排気口60に接続された排気装置65によってチャンバ10内が排気される。これにより、チャンバ10内を所定の真空度に維持することができる。チャンバ10の側壁にはゲートバルブGが設けられている。ゲートバルブGは、チャンバ10からウェハWの搬入及び搬出を行う際に搬出入口を開閉する。
【0021】
エッチング処理装置1には、装置全体の動作を制御する制御部100が設けられている。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)105、ROM(Read Only Memory)110及びRAM(Random Access Memory)115を有している。CPU105は、これらの記憶領域に格納された各種レシピに従って、後述されるエッチング処理及び除電処理等の所望の処理を実行する。レシピにはプロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種ガス流量、チャンバ内温度(上部電極温度、チャンバの側壁温度、静電チャック温度など)、チラー107の温度などが記載されている。なお、これらのプログラムや処理条件を示すレシピは、ハードディスクや半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピは、CD−ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶領域の所定位置にセットするようにしてもよい。
【0022】
エッチング処理時には、ゲートバルブGの開閉が制御され、ウェハWがチャンバ10に搬入され、載置台20に載置される。直流電圧源112からチャック電極106aに直流電圧HVが印加されることにより、クーロン力によってウェハWが静電チャック106に吸着され、保持される。
【0023】
次いで、エッチング用のガス、高周波電力がチャンバ10内に供給され、プラズマが生成される。生成されたプラズマによりウェハWにプラズマエッチング処理が施される。
【0024】
エッチング処理後、直流電圧源112からチャック電極106aにウェハWの吸着時とは正負が逆の直流電圧HVを印加してウェハWの電荷を除電し、ウェハWを静電チャック106から剥がす。ゲートバルブGの開閉が制御され、ウェハWがチャンバ10から搬出される。
【0025】
[エッチング処理]
次に、かかる構成の本実施形態のエッチング処理装置1において実行されるシリコン酸化膜(SiO
2)のエッチング処理について説明する。シリコン酸化膜に高アスペクト比のホールや溝を形成する場合、例えば、C
4F
8/C
4F
6/Ar/O
2のガス系を使用し、かつウェハの温度を高温にしてホールの開口に極力反応生成物を付着させないでホールをエッチングする方法がある。
【0026】
しかしながら、高アスペクト比のホールや溝では、エッチングが進むに従いデプスローディングが生じる。また、デプスローディングは、アスペクト比が高くなるほど発生し易い。このため、今後、よりアスペクト比の高いホールをエッチングする場合には前記方法ではエッチングが進まない状況が生じ得る。
【0027】
そこで、本実施形態にかかるエッチング処理装置1は、デプスローディングを抑え、シリコン酸化膜のエッチングレートを上げるエッチング処理方法を提案する。
【0028】
[実験1]
本実施形態にかかるエッチング処理では、水素含有ガス及びフッ素含有ガスをチャンバ10内に供給し、チラー107の制御温度が−20℃以下の極低温プロセスにてシリコン酸化膜をエッチングする。実験1では、フッ素含有ガスの一例としてCF
4ガス、水素含有ガスの一例としてH
2ガスが用いられた。
【0029】
図2は、本実施形態にかかるエッチング処理による実験1の結果を示す。
図2には、チラー107から供給される冷却媒体の温度を−20℃に設定する極低温プロセスと、−60℃に設定する極低温プロセスと、チラーの温度を20℃に設定する常温プロセスの結果が示されている。いずれの場合も、CF
4ガス及びH
2ガスがチャンバ10内に供給される。CF
4ガスに対するH
2ガスの分圧を高めていったときのシリコン酸化膜のエッチングレートを測定するために、実験1では、CF
4ガスの流量を一定にした状態でH
2ガスの流量を増やしたときのエッチングレートが示される。
【0030】
実験1の結果によれば、チラーの温度を−20℃と−60℃に設定した極低温プロセスの場合、CF
4ガスに対するH
2ガスの分圧を上げると所定の分圧まではエッチングレートが上がる。他方、静電チャック106の温度を20℃に設定した常温プロセスの場合、CF
4ガスに対するH
2ガスの分圧を上げる程エッチングレートは下がる。
【0031】
よって、本実施形態にかかるエッチング処理では、H
2ガス及びCF
4ガスを使用し、CF
4ガスに対して適正なH
2ガスの分圧を設定し、かつ、チラーの温度を−20℃以下の極低温にてエッチングを行う。これにより、エッチングレートを高めることができる。特に、変曲点が−60℃付近でよりエッチングレートが高くなり、−60℃より低い温度付近においては更にエッチングレートが高くなると推測される。
【0032】
なお、極低温プロセスの場合、H
2ガスの分圧を上げるとエッチングレートは途中までは上昇し、途中から下降する。これは、H
2ガスの量に対するCF
4ガスのFの量が減少するためエッチングが進行しにくい状態となりエッチングレートが下がると考えられる。
【0033】
(現象の分析)
本実施形態にかかるエッチング処理では、水素含有ガスの一例としてH
2ガスが供給され、フッ素含有ガスの一例としてCF
4ガスが供給される。ガスに含まれるH
2ガスによるシリコン酸化膜のエッチングの結果、H
2Oが反応生成物として発生する。
図3の蒸気圧曲線に示すように、H
2Oは飽和蒸気圧が低い。
図3の実線は飽和蒸気圧の実験値であり、破線は計算値である。蒸気圧曲線上は液体と気体とが混在した状態である。
【0034】
エッチング時の圧力を8.0Pa(60mTorr)に保持し、チラーの温度を−20℃の低温、好ましくは−60℃程度の極低温にすると、飽和してシリコン酸化膜の表面のH
2Oは、液体の状態で存在していると考えられる。
【0035】
シリコン酸化膜の表面に存在する液体には、反応生成物の水の他に、CF
4ガスから反応して生成されたHF系ラジカルも含有されている。このため、HF系ラジカルと水とによってフッ化水素酸(HF)が発生する。これにより、シリコン酸化膜の表面で水に溶けているフッ化水素酸によって主に化学反応によるエッチングが促進され、エッチングレートが特異的に上昇する。本実施形態にかかるエッチング処理では、静電チャック106の温度以外のプラズマ条件は変えていない。よって、シリコン酸化膜の表面に存在するフッ化水素酸の液体の作用により主に化学反応によってエッチングレートが向上していると考えられる。
【0036】
[実験2]
図4には、本実施形態にかかるエッチング処理の実験2の結果として、アスペクト比とシリコン酸化膜のエッチングレートとの関係が示されている。実験2では、本実施形態にかかるエッチング処理における極低温プロセス条件は、チラーの温度が−60℃でガス種がCF
4ガス/H
2ガスである。比較例の常温プロセスの条件は、チラーの温度が20℃でガス種がC
4F
8/C
4F
6/Ar/O
2である。
【0037】
これによれば、アスペクト比が高くなっても本実施形態にかかる極低温プロセスでは、常温プロセスに比べてエッチングレートが2倍以上となることがわかる。この理由としては、本実施形態にかかるエッチング処理に使用されるCF
4ガスは低分子ガスであり、比較例に使用されるC
4F
8ガスやC
4F
6ガス等の高分子ガスよりもホールの奥までラジカルが到達し易いことが挙げられる。
【0038】
また、前述したように本実施形態にかかるエッチング処理では、シリコン酸化膜の表面での化学反応により、ホールの開口に反応生成物が堆積し難く、ホールの開口が閉塞されにくい状態でエッチングが進行することが挙げられる。これらの理由から、本実施形態にかかるエッチング処理では、高アスペクト比のホールを形成することができる。
【0039】
図5は、実験2のエッチング処理の結果形成されたホールのエッチング形状の縦断面の一例である。
【0040】
ここでは、アモルファスカーボンレイヤー(ACL)をマスク膜としてシリコン酸化膜がエッチングされる。エッチングの結果、チラーの温度を−60℃に設定した極低温プロセスの場合、常温プロセスと比較してエッチングレート(E/R)が高くなり、マスク選択比(Sel)も顕著によくなっている。よって、本実施形態に係るエッチング処理方法によれば、デプスローディングを抑えつつ、エッチングレートを向上させることがわかる。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態に係るエッチング処理によれば、ガス種にCF
4ガス/H
2ガスを用い、チラーの温度が−20℃以下(より好ましくは−60℃以下)の極低温プロセスを実行することで、デプスローディングが改善され、エッチングレートを上げることができ、マスク選択比を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態に係るエッチング処理は、3D NANDフラッシュメモリ等の三次元積層半導体メモリの製造において、シリコン酸化膜のエッチングに適用できる。この場合にも、デプスローディングを抑えつつエッチングレートを高めて、シリコン酸化膜やシリコン酸化膜を含む積層膜に高アスペクト比のホールや溝を形成することができる。その他、本実施形態に係るエッチング処理は、酸化膜と窒化膜との積層構造や、酸化膜とポリシリコン膜との積層構造にも適用することができる。
【0043】
なお、水素含有ガスの一例としてH
2ガスを供給し、フッ素含有ガスの一例として三フッ化窒素(NF
3)ガスを供給し、ハイドロフルオロカーボン(HFC)による極低温プロセスのエッチング処理が実行されるようにしてもよい。
【0044】
[除電処理]
次に、本実施形態にかかるエッチング処理が実行された後、処理済のウェハWを搬出する際の除電処理について、
図6を参照して説明する。
【0045】
本実施形態にかかるエッチング処理では、チラー107の温度を−20℃〜−60℃の極低温にしてシリコン酸化膜をエッチングする。このため、処理済のウェハWは低温になっており、エッチング処理装置1から搬出され、フープまで搬送されるまでの間に大気に暴露され、この間に表面に結露が生じる。
【0046】
ウェハWに結露が発生することを防止する方法としては、ウェハWをロードロック室(LLM)に数分間放置した後に搬出する、又は別途ヒータを設けて昇温させてからフープまで搬出する等が考えられる。
【0047】
しかしながら、ウェハWを数分間放置する場合、処理全体のスループットが低下する。また、ヒータを設けてウェハWを昇温させる場合、スループットの低下に加えてヒータの設置が必要になりコストが高くなる。
【0048】
そこで、本実施形態にかかるエッチング処理装置1では、エッチング処理終了後の除電処理においてチャンバ10内で高速にウェハWを昇温させる。
【0049】
図6の(a)は、除電処理の比較例を示す。
図6の(b)は、本実施形態にかかるエッチング処理装置1において実行される除電処理の一例を示す。
【0050】
図6の(a)及び(b)において、エッチング処理(Process)が終了すると、除電処理(T1,T2)が行われる。
【0051】
図6の(a)に示す除電処理では、エッチング処理終了時に第1高周波電力HF及び第2高周波電力LFの供給が停止される。次に、
図6の(a)の除電処理では、T1の経過後のT2において300W等の比較的パワーの弱い第1高周波電力HF(周波数は例えば13.56MHz)を供給して弱いプラズマを発生させ、この弱いプラズマをウェハWに作用させる。これにより、ウェハWの表面の電荷をプラズマ側に放電させることができる。
【0052】
その後、直流電圧源112からチャック電極106aにウェハWの吸着時とは正負が逆のマイナスの直流電圧HV(−3000V)を印加して除電し、ウェハWを静電チャック106から剥がす。除電処理T2の経過後、第1高周波電力HF及び直流電圧HVの印加を停止し、除電処理を終了する。
【0053】
図6の(b)に示す本実施形態にかかる除電処理においても、エッチング処理終了時に第1高周波電力HF及び第2高周波電力LFの供給が停止される。次に、
図6の(b)の除電処理では、T1経過後のT2において300W等の比較的パワーの弱い第1高周波電力HFを載置台2に印加して弱いプラズマを発生させ、ウェハWに作用させてウェハWの表面の電荷をプラズマ側に放電させる。ここまでの処理は、
図6の(a)の除電処理と同じである。
【0054】
この後、
図6の(b)の除電処理では、500Wの第2高周波電力LFを載置台20に印加する。これにより、ウェハWを静電チャック106から剥がすことと同時にウェハWを昇温することができる。つまり、本実施形態では、ウェハWを静電チャック106から剥がすときに第1高周波電力HFの印加のみならず第2高周波電力LFを印加することでウェハWへのイオンの入射量を高めて高速にウェハWを昇温する。
【0055】
更に、
図6の(b)に示すように、第2高周波電力LFの印加時、イオン入射量の増加だけでなく、第1高周波電力HFを300Wから500Wに増加させることで、イオンエネルギーを増加させる。つまり、本実施形態では、第2高周波電力LFの印加によりウェハWへのダメージが大きくなることを考慮して、第2高周波電力LFの印加時に第1高周波電力HFを増加させる。これによりイオンエネルギーを高めることで、ウェハWへのイオン入射量を必要以上に大きくしないようにすることで、ウェハWへのダメージを最小限にすることができる。なお、第2高周波電力LFの印加時、第1高周波電力HFは300Wのままでもよい。
【0056】
これによれば、特別に新しいパーツや新しい機能を搭載することなく、スループットを維持したままウェハWを高速に昇温させることが可能である。これに加えて、搬送中のウェハWの結露を防止するためには、チャンバ内の空隙(大気にさらされている部分)にドライエアーを吹き付けることが好ましい。
【0057】
[静電チャックの材質]
次に、本実施形態にかかるエッチング処理装置1に用いられる静電チャックについて、
図7〜
図10を参照して説明する。
図7及び
図8は、装置A(
図1のエッチング処理装置1と同一構成)及び装置B(
図1のエッチング処理装置1のチャンバ外に磁石が設けられ、プラズマを制御する構成)を用いてエッチング処理が実行された結果の一例を示す。
図7及び
図8においてエッチング対象膜は、マスク膜(ポリシリコン膜)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸化膜(SiO)の積層膜である。本実施形態にかかるエッチング処理により、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜に高アスペクト比のホールが形成される。
【0058】
図7の装置A及び装置Bでは、静電チャック106はアルミニウムで形成されている。
図7は、比較例に係る高温プロセスのエッチング処理の結果の一例であり、例えば、装置A及び装置Bのプロセス条件は以下である。
・エッチング処理のプロセス条件
<装置A>
ガス種 C
4F
8/CH
2F
2/O
2
チラーの温度 60℃
圧力 15mTorr(2.0Pa)
<装置B>
ガス種 C
4F
6/CH
2F
2/O
2
チラーの温度 60℃
圧力 15mTorr(2.0Pa)
図8の装置A及び装置Bでは、静電チャック106はアルミニウム又はチタンで形成されている。
図8は本実施形態にかかる極低温プロセスのエッチング処理の結果の一例を示す。例えば、装置A及び装置Bのプロセス条件は以下である。
・エッチング処理のプロセス条件
<装置A>
ガス種 CF
4/H
2
チラーの温度 −60℃
圧力 60mTorr(8.0Pa)
なお、装置Aの右側のエッチング結果は、チタンの静電チャックであり、ヘリウムHeの伝熱ガス40Torr(5332Pa)が供給されている。装置Aの左側のエッチング結果は、チタンの静電チャックであり、伝熱ガスが供給されていない。
<装置B>
ガス種 CF
4/H
2
チラーの温度 −60℃
圧力 60mTorr(8.0Pa)
なお、装置Bの右側のエッチング結果はチタンの静電チャックであり、装置Bの左側のエッチング結果はアルミニウムの静電チャックである。いずれも伝熱ガスは供給されていない。
【0059】
この結果、
図8に示す本実施形態にかかる極低温プロセスのエッチング処理では、
図7に示す高温プロセスのエッチング処理よりも、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜のエッチングの深さ(SiN + Ox Depth)が深くなっていることがわかる。よって、本実施形態にかかる極低温プロセスのエッチング処理では、
図7に示す高温プロセスのエッチング処理よりもデプスローディングを抑え、高アスペクト比のエッチングが可能である。
【0060】
また、
図8に示すように、アルミニウムの静電チャックの場合、チタンの静電チャックよりもエッチングレートが高い。この結果に関して更に分析するために、チタンの静電チャックとアルミニウムの静電チャックとを用いて、本実施形態の極低温プロセスのエッチング処理を行ったときのウェハWの温度を測定した。その結果を
図9に示す。このときのエッチング処理のプロセス条件は以下である。
ガス種 CF
4/H
2
チラーの温度 25℃
圧力 60mTorr(8.0Pa)
図9には、エッチング処理中のウェハWの温度を複数点測定した結果を示す。
図9のアルミニウムの静電チャックの場合、エッチング処理時のウェハWの温度は概ね40℃であった。チラーの温度が25℃であるからウェハWの温度は約15℃高くなっている。この結果から、チラーの温度が−60℃の場合、ウェハWの温度は、−45℃程度になると推定される。
【0061】
同様にして、
図9のチタンの静電チャックの場合、エッチング処理時のウェハWの温度は概ね80℃であった。チラーの温度が25℃であるからウェハWの温度は約55℃高くなっている。この結果から、チラーの温度が−60℃の場合、ウェハWの温度は、−5℃程度になると推定される。
【0062】
以上の結果から、
図8に示すアルミニウムの静電チャックの場合、チタンの静電チャックよりもエッチングレートが高くなったのは、アルミニウムの静電チャックの場合のウェハWの温度は−45℃程度に制御できたためである。つまり、アルミニウムの静電チャックの場合、チラーの温度が−60℃であれば本実施形態の極低温プロセスが実行され、デプスローディングを抑制し、エッチングレートを上げる効果が得られる。
【0063】
一方、チタンの静電チャックの場合、チラーの温度が−60℃でもウェハWの温度は−5℃程度になるため、本実施形態の極低温プロセスが実行されず、エッチングレートは上がらなかったと考えられる。よって、チタンの静電チャックを用いて本実施形態にかかるエッチング処理を行う場合には、チラーの温度を−100℃程度に制御することが好ましい。その場合、チラーの冷却媒体(ブライン)の限界値は約−80℃であるため、チタンの静電チャックを用いて本実施形態にかかるエッチング処理を行うためには、冷却媒体に液体窒素を使用することが好ましい。本実施形態にかかるエッチング処理を−100℃程度の極低温にて行う場合、静電チャックにチタンを使用することが好ましい。
【0064】
[伝熱ガスの圧力依存性]
更に、
図8には、チタンを静電チャックに使用した場合であって伝熱ガスを供給すると伝熱ガスを供給しない場合よりエッチングレートが高くなる結果となった。これは、伝熱ガスの作用によりウェハWの熱を静電チャック側に伝える効果が高まり、ウェハWの温度が下がったためである。
【0065】
最後に、本実施形態にかかる極低温のシリコン酸化膜をエッチング処理において、ウェハWの裏面に供給する伝熱ガスの圧力依存を分析するための実験を行った。チラーの温度は25℃に設定した。その結果を
図10に示す。
図10の左図は、チタンの静電チャックを使用した場合であって伝熱ガス(He)を2000Pa(15Torr)の圧力で供給した場合のウェハWの温度を示す。各線はウェハの複数の位置におけるエッチング時間の経過に伴う温度変化を示す。
【0066】
これによれば、伝熱ガスを2000Pa(15Torr)の圧力で供給した場合、及び5332Pa(40Torr)の圧力で供給した場合においてウェハWの温度の面内均一性を改善できることがわかる。また、伝熱ガスを5332Pa(40Torr)の圧力で供給した場合、伝熱ガスを2000Pa(15Torr)の圧力で供給した場合よりもウェハWの温度が低くかつウェハWの温度の面内均一性がよいことがわかる。
【0067】
よって、本実施形態にかかる極低温プロセスのエッチング処理では、チタンの静電チャックを用いた場合、シリコン酸化膜をエッチング処理する間にウェハWの裏面に供給する伝熱ガスの圧力を2000Pa(15Torr)以上に制御することが好ましい。
【0068】
以上、エッチング処理方法及びエッチング処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明にかかるエッチング処理方法及びエッチング処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0069】
例えば、本発明に係るエッチング処理及び除電処理は、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)装置だけでなく、その他のエッチング処理装置に適用可能である。その他のエッチング処理装置としては、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ラジアルラインスロットアンテナを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance Plasma)装置等であってもよい。
【0070】
また、本発明にかかる半導体製造装置により処理される基板は、ウェハに限られず、例えば、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display)用の大型基板、EL素子又は太陽電池用の基板であってもよい。