【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託研究:最先端PG(Mega−ton Water System)高効率エネルギー回収、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧する圧力変換チャンバーであって、前記圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、
前記チャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁と接続して給排水を行う第一の給排水ポートを、前記チャンバーの一端に設け、
前記給排水ポートの反対側の端部に、前記チャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁と接続して給排水を行う第二の給排水ポートを設け、
前記チャンバーの内部に、前記第一の給排水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記第二の給排水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、
前記二つの流れ抵抗器の間に前記チャンバー内の液体の流量を測定する流量計を設けたことを特徴とする圧力変換チャンバー。
海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧するエネルギー回収装置であって、
濃縮海水の圧力を海水の圧力に変換する複数の圧力変換チャンバーを設け、前記複数の圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、
前記圧力変換チャンバーの一端に濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートを設けるとともに、前記圧力変換チャンバーの他端に海水の給排水を行う海水ポートを設け、
前記濃縮海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の濃縮海水の給排水を行う切換弁を設けるとともに、前記海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の海水の給排水を行う切換弁を設け、
少なくとも1台の前記圧力変換チャンバーに、該チャンバー内の海水又は濃縮海水の流量または積算流量を測定する流量計を設けたことを特徴とするエネルギー回収装置。
前記チャンバーの内部に、前記濃縮海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、前記流量計は前記二つの流れ抵抗器の間に設置されてなることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー回収装置。
海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧するエネルギー回収装置であって、
濃縮海水の圧力を海水の圧力に変換する複数の圧力変換チャンバーを設け、前記複数の圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、
前記圧力変換チャンバーの一端に濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートを設けるとともに、前記圧力変換チャンバーの他端に海水の給排水を行う海水ポートを設け、
前記濃縮海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の濃縮海水の給排水を行う切換弁を設けるとともに、前記海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の海水の給排水を行う切換弁を設け、
前記チャンバーの内部に、前記濃縮海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、
少なくとも1台の前記圧力変換チャンバーに、前記二つの流れ抵抗器の間に前記チャンバー内の海水又は濃縮海水の流量または積算流量を測定する流量計を設けたことを特徴とするエネルギー回収装置。
前記流量計は、前記チャンバーの円筒外周面からチャンバー内の流速または流量を測定する一対の超音波受送信器およびセンサコントローラで構成される超音波流量計からなることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のエネルギー回収装置
前記流れ抵抗器は、少なくとも1以上の孔が形成された円板状部材であり、前記海水ポート側および前記濃縮海水ポート側にそれぞれ1以上配置され、いずれの流れ抵抗器も前記チャンバーの円筒軸に直交する平面に平行に板面が配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載のエネルギー回収装置。
内部形状が同形状の前記圧力変換チャンバーを複数備え、少なくとも1台の圧力変換チャンバーに前記流量計を設け、該流量計の測定値に基づいて、他のチャンバーへの濃縮海水と海水の給排水を制御することを特徴とする請求項9に記載の海水淡水化システムの制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を淡水化するシステムとして、海水を逆浸透膜分離装置に通水して脱塩する海水淡水化システムが知られている。この海水淡水化システムにおいては、取水された海水は、前処理装置により一定水質の条件に整えられたのち、高圧ポンプにより加圧され、逆浸透膜分離装置へと圧送される。逆浸透膜分離装置内で高圧海水の一部は、浸透圧に打ち勝って逆浸透膜を通過し、塩分が除去された淡水として取り出される。その他の海水は、塩濃度が高くなり濃縮された状態で逆浸透膜分離装置から濃縮海水(ブライン)として排出される。ここで、海水淡水化システムにおける最大の運転コストは電力費であり、それは、前処理後の海水を浸透圧に打ち勝てる圧力即ち逆浸透圧まで上昇させるためのエネルギー、つまり高圧ポンプによる加圧エネルギーに大きく依存する。
【0003】
海水淡水化プラントにおける電力費の半分以上は、高圧ポンプによる加圧に費やされることが多い。従って、逆浸透膜分離装置から排出される高塩濃度で高圧の濃縮海水が保有する圧力エネルギーを、海水の一部を昇圧するのに利用し、高圧ポンプの電力を削減することが行われている。そして、逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを海水の一部を昇圧するのに利用する手段として、円筒の筒内に移動可能に嵌装されたピストンによって円筒の内部を2つの空間に分離し、2つの空間の一方に濃縮海水の出入りを行う濃縮海水ポートを設け、もう一方に海水の出入りを行う海水ポートを設けたエネルギー回収チャンバーを備えたエネルギー回収装置がある。
【0004】
図19は、従来の海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。
図19に示すように、図示しない取水ポンプにより取水された海水は、前処理装置により浮遊物等が除去されて所定の水質条件に整えられたのち、フィードポンプ2を介してモータMが直結された高圧ポンプ3へ供給される。高圧ポンプ3で昇圧された海水は逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜分離装置4に供給される。逆浸透膜分離装置4は、海水を塩濃度の高い濃縮海水と塩濃度の低い淡水に分離し海水から淡水を得る。この時、逆浸透膜分離装置4から淡水が分離された残余の高圧濃縮海水が排出され、高圧濃縮海水は切換弁5を介して圧力変換チャンバー6の濃縮海水ポート7よりチャンバー内に供給される。
【0005】
一方、フィードポンプ2から高圧ポンプ3に送られる海水から一部を分岐して海水が取り出され、取り出された海水は方向切換弁8を介して圧力変換チャンバー6の海水ポート9よりチャンバー内に供給される。尚、方向切換弁8は、チャンバー内で加圧された海水をチャンバーから外にしか流さないチェック弁10と、海水をチャンバーに供給する方向にしか流さないチェック弁11とを備えたチェック弁ユニットから構成されている。
【0006】
圧力変換チャンバー6は、内部にピストン12を備え、ピストン12は圧力変換チャンバー内を二つの容積室に分離しながら移動可能に嵌装されている。切換弁5,方向切換弁8,圧力変換チャンバー6によってエネルギー回収装置1を構成している。エネルギー回収装置1は一点鎖線で囲む枠で示している。
圧力変換チャンバー6内の濃縮海水が切換弁5によりチャンバー外に排出されて大気圧まで減圧すると、海水ポート9からチャンバーに供給される海水がピストン12を押す。ピストンの位置が海水ポート側から濃縮海水ポート側に移動すると、ピストンの移動分の海水が圧力変換チャンバー内に充填される。次に、切換弁5,方向切換弁8を切り換えて高圧濃縮海水を圧力変換チャンバー6に供給すると、圧力変換チャンバー6に供給された高圧濃縮海水の圧力がピストン12を押すので、海水は加圧される。ピストンの位置が濃縮海水ポート側から海水ポート側に移動し、ピストンの移動分の海水が圧力変換チャンバー6から吐出される。
圧力変換チャンバー6から吐出された海水は方向切換弁8を介してブースターポンプ13に供給される。ブースターポンプ13によって、海水は高圧ポンプ3の吐出ラインと同じレベルの圧力になるようにさらに昇圧され、バルブ19を経て高圧ポンプ3の吐出ラインに合流して逆浸透膜分離装置4に供給される。ブースターポンプ13の吐出ラインのバルブ19は、海水をブースターポンプ13から逆浸透膜分離装置側への方向しか流さないチェック弁であり、ブースターポンプ13に海水が逆流しないように設置されている。
【0007】
ここで、
図19に示すようなピストン12を備えた圧力変換チャンバー6によるエネルギー回収装置1では、ピストンの移動範囲を決めて往復させることができるので、ピストンを圧力変換チャンバー6内を同じ往復距離を移動させることで、海水の給排水の量を常に同一かつ一定にすることができる。
【0008】
一方、圧力変換チャンバー内にピストンを備えず、海水の圧力と逆浸透膜(RO膜)で処理された高圧の濃縮海水にかかる圧力の違いを利用して、チャンバー前後のバルブの開閉操作により、海水あるいは濃縮海水をチャンバー内で移動させることを繰り返して高圧の濃縮海水からエネルギーを回収する装置がある。
【0009】
図20は、そのようなピストンを備えていない圧力変換チャンバー6を用いたエネルギー回収装置を組み込んだ海水淡水化システムを示す模式図である。圧力変換チャンバー6内の海水を、逆浸透膜(RO膜)で処理された高圧の濃縮海水にて直接に加圧してブースターポンプ13に送る工程と、その後、圧力変換チャンバー6内に満たされた高圧の濃縮海水を、圧力変換チャンバー6の一端側から大気圧の外部にパージするとともに圧力変換チャンバー6の反対側から海水を圧力変換チャンバー6内に供給する工程を繰り返すことにより、逆浸透膜(RO膜)で処理された高圧の濃縮海水のエネルギーを海水によって回収する。
【0010】
このような、ピストンを持たない形態のエネルギー回収装置1においては、海水の圧力変換チャンバー6への給排水量の制御を、圧力変換チャンバー6に供給される高圧の濃縮海水によって排出される海水の第一の流量と、圧力変換チャンバー6に海水が供給される時に、圧力変換チャンバー6の外部にパージされる濃縮海水の第二の流量をそれぞれ測定し、両方の流量または積算流量をバランスさせるようにして行っている。従って、
図20に示すように、エネルギー回収装置1に各々の流量を測定する第一の流量計F1、第二の流量計F2の2台の流量計が必要になる。第一の流量計F1、第二の流量計F2はセンサコントローラ17に接続され、センサコントローラ17は装置コントローラ18に接続されている。
図20に示す海水淡水化システムのその他の構成は、
図19に示す海水淡水化システムと同様である。
【0011】
次に、2台の流量計を必要とする理由を説明する。すなわち、圧力変換チャンバー6の海水の吸込み量が少なくなっても、依然海水の吐出し量は、吸込み量が少なくなる前と同じ量であるとすると、ピストンによる仕切りがないので、高圧濃縮海水による塩濃度が濃い部分が海水に続いてエネルギー回収装置から吐出されてしまう。また、逆に海水の吸込み量が多くなっても、依然多くなる前と同じ量の海水を吐出すると、余分な海水を装置に吸込み、エネルギー回収装置からは増えた分は吐出されなくなる。
前者の状態となると、圧力変換チャンバー6に海水を吸込んだ量より濃縮海水を多く供給することになるため、逆浸透膜へ供給する海水の塩濃度が高くなり、逆浸透膜の特性により濃度の高い海水が供給されると、淡水の生産水量が減少してしまう。後者の状態になると、前処理した海水を無駄に消費してしまうことになり、淡水生産水量に対する前処理コストがアップすることになる。
このように、海水の吸い込み、吐出しの流量を監視し、その流量を同一かつ一定にすることは、ピストンを持たない形態のエネルギー回収装置では性能を維持する上で重要だからである。
【0012】
第一の流量計F1は、圧力変換チャンバー6から吐出される流体が約60気圧もの高圧であるため、高圧仕様が求められる。また、給排水を制御するために、第一の流量計は、別途設けた第二の流量計F2との測定誤差が小さいもの、すなわち測定精度が高い流量計が望ましい。
流量計には各種の方式があるが、現状は、最も精度が良いのは電磁流量計であるので、高圧仕様の電磁流量計が用いられている。
しかし、電磁流量計は他の種類の流量計と比べて高価であり、更に加えて、原理的に検出部を直接、測定対象の流体に接触させなければならないので、流量計の検出部を含む接液部は腐食性流体である海水に対して耐食性を備えた材料であることが必須である。更に、流量計は、高圧仕様にしなければならないので流路の耐圧に要する肉厚が嵩み、要するに、特殊で高価、かつ大きさ、重量とも嵩むということになる。
【0013】
一方、圧力変換チャンバーに海水が供給され、圧力変換チャンバーの濃縮海水が外部にパージされる時は、排出される濃縮海水の圧力は大気圧に近く低圧であるので、第二の流量計F2は、通常は高圧仕様ではない。即ち、第一、第二の流量計は仕様的に異なる場合が多いので、第一の流量計と第二の流量計の特性を考慮した、校正や補正が必要である。
【0014】
さらに、一般に流量計は測定の条件を一定にする必要があるので、流量計の検出部分の前後に流れの助走区間が必要とされる。助走区間の長さは、流量計の取り付けの前後の配管の配管口径をDとした場合、5×Dから10×Dである。したがって、流量計の前後に長い直管の配管を設ける必要がある。
このようにすれば、流量計の上流下流における配管の拡大縮小、曲げなどの影響で、流量計の検出部に生じる流れの乱れを低減して、測定誤差を少なくすることができるが、一方で配管設計への制約が生じ、直管部分を設けたレイアウトを設計しなければならない。長い直管部分は通常、エネルギー回収装置の外部にあるので、エネルギー回収装置を設置するプラントに応じて流量計の設置設計、配線設計、信号の取り合い、校正を行わなければならない。特に、複数台の圧力変換チャンバーを備える通常の海水淡水化システムでは次のように大きな影響がある。
【0015】
圧力変換チャンバーを用いる場合、造水量を増やすに従い、圧力変換チャンバーで処理する量も増やすことになる。しかし1個の圧力変換チャンバーの容積を大きくしたり、処理サイクルを短くしたりしても、その対応では限界がある。そこで、多くの場合、圧力変換チャンバーを並列に多段に並べて処理する方法が選ばれる。
図21は、ピストンを備えない圧力変換チャンバーを並列に複数台設置した場合の流量計の配置構成を示す模式図である。
図21に示すように、n台の圧力変換チャンバー6が並列して設置されており、n台の圧力変換チャンバー6から排出される海水,濃縮海水を集合配管にまとめてから、海水,濃縮海水の流量を各々第一の流量計F1、第二の流量計F2で計測するようにしている。この場合、第一の流量計F1と第二の流量計F2は各々1台ずつで良いが、チャンバーの台数が多く、処理流量が大きくなると流量計を取り付ける集合配管の径が大きくなるため、流量計の大きさも大きくする必要があり、また、流量計前後の助走区間となる配管の長さが長くなる。さらに、特に、高圧側の海水の流量を測定する第一の流量計F1は、耐圧の必要性から、大きく、重くなってしまう。従って、第一の流量計F1は特殊で高価なものとなる。また、流量計の故障時の交換は大掛かりなものになり、長時間のシステム全体の停止を引起してしまう恐れがある。これに対応するには、
図21に示すように、第一の流量計のバックアップラインF1’および第二の流量計のバックアップラインF2’を用意すれば良いが、それもまたスペース等の確保が大変である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上の背景技術に鑑み、ピストンを持たない形態のエネルギー回収装置の性能を維持するために鍵となる海水と濃縮海水の給排水制御において、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計に
1)腐食性流体である海水、濃縮海水による腐食の懸念が少ない、あるいは無いこと
2)エネルギー回収装置の処理流量増加に伴う、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計の容量の増加、ひいてはコストの増加が少ない、あるいは無いこと
3)エネルギー回収装置外のプラント設備側への計画、設計へ影響しないこと
、という課題がある。
本発明は、上記1)〜3)の課題のすべて、またはいずれかを満たすような流量計を備えたエネルギー回収装置および海水淡水化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するため、本発明の態様の圧力変換チャンバーは、海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧する圧力変換チャンバーであって、
前記圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、前記チャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁と接続して給排水を行う第一の給排水ポートを、前記チャンバーの一端に設け、前記給排水ポートの反対側の端部に、前記チャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁と接続して給排水を行う第二の給排水ポートを設け、前記チャンバーの内部に、前記第一の給排水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記第二の給排水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、前記二つの流れ抵抗器の間に前記チャンバー内の液体の流量を測定する流量計を設けたことを特徴とする。
【0019】
このようにすることで、ピストンの無い形態の圧力変換チャンバーを備えた海水淡水化システムなどに向けた好適な圧力変換チャンバーを提供することができる。
すなわち、当該圧力変換チャンバーを用いれば、給排水両方の流れを1個の流量計で測定でき、すなわち1個の流量計で圧力変換チャンバーへの給排水の流量、流速あるいは積算流量を測定することができる。従って2個の流量計の校正や補正が不要となる。また、チャンバーの内部に配置される流れ抵抗器によって各ポートからチャンバー内へ流入する流れが整流されるので、一般に流量計の前後に必要とされる、流れを整えるための助走区間として直管部を設ける必要がなくなって、コンパクトな装置周りで精度の良い測定ができるようになる。
従って、エネルギー回収装置の処理流量増加に伴う、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計の容量の増加を抑え、ひいてはコストの増加が少なくできるような圧力変換チャンバーを提供することができる。
【0020】
また、上述の目的を達成するため、本発明の態様のエネルギー回収装置は、海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧するエネルギー回収装置であって、濃縮海水の圧力を海水の圧力に変換する複数の圧力変換チャンバーを設け、
前記複数の圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、前記圧力変換チャンバーの一端に濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートを設けるとともに、前記圧力変換チャンバーの他端に海水の給排水を行う海水ポートを設け、前記濃縮海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の濃縮海水の給排水を行う切換弁を設けるとともに、前記海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の海水の給排水を行う切換弁を設け、少なくとも1台の前記圧力変換チャンバーに、該チャンバー内の海水又は濃縮海水の流量または積算流量を測定する流量計を設けたことを特徴とする。
【0021】
このようにすることで、従来、ピストンの無い形態の圧力変換チャンバーを備えたエネルギー回収装置では、圧力変換チャンバーの低圧側と高圧側に2個の流量計を備えていたが、本発明によれば、給排水両方の流れを1個の流量計により測定でき、すなわち1個の流量計により圧力変換チャンバーへの海水の充填、吐出の流量、流速あるいは積算流量を測定することができる。すなわち、切換弁により、濃縮海水と海水が交互に圧力変換チャンバー両端からチャンバー内に供給及び排出されるので、チャンバー内の流体の流れの向きは、交互に入れ替わりながら整然と流れ、その結果、海水又は濃縮海水の流量または積算流量を測定することができる。
尚、2つの異なる流量計を用いていた場合には必要であった2個の流量計の校正や補正が不要となる。
更に、複数台の圧力変換チャンバーによって構成される海水淡水化システムの場合は、少なくとも1台の圧力変換チャンバーに流量計を備えることでシステムの制御に対応ができ、大口径の集合配管に適合した大口径の流量計や、長い助走区間が不要になるので、圧倒的にコストが安価になる。
従って、エネルギー回収装置の処理流量増加に伴う、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計の容量の増加を抑え、ひいてはコストの増加が少なくできる。
【0022】
本発明のより好ましい態様のエネルギー回収装置は、前記チャンバーの内部に、前記濃縮海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、前記流量計は前記二つの流れ抵抗器の間に設置されてなることを特徴とする。
このようにすると、チャンバーの内部に濃縮海水ポート側に配置される流れ抵抗器と、海水ポート側に配置される流れ抵抗器とを備えるので、流れ抵抗器によって各ポートからチャンバー内へ流入する流れが整流される。従って、一般に流量計の前後に必要とされる、流れを整えるための助走区間として直管部をチャンバー外部に設ける必要がなくなり、コンパクトな装置周りで精度の良い測定ができるようになる。
従って、エネルギー回収装置の処理流量増加に伴う、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計の容量の増加を抑え、ひいてはコストの増加がより少なくできる。
【0023】
本発明の別の態様のエネルギー回収装置は、海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、逆浸透膜分離装置から排出される濃縮海水の圧力によって海水を昇圧するエネルギー回収装置であって、
濃縮海水の圧力を海水の圧力に変換する複数の圧力変換チャンバーを設け、
前記複数の圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、前記圧力変換チャンバーの一端に濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートを設けるとともに、前記圧力変換チャンバーの他端に海水の給排水を行う海水ポートを設け、
前記濃縮海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の濃縮海水の給排水を行う切換弁を設けるとともに、前記海水ポートに接続して高圧あるいは低圧の海水の給排水を行う切換弁を設け、前記チャンバーの内部に、前記濃縮海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設けるとともに、前記海水ポート側に流れを整流する流れ抵抗器を設け、少なくとも1台の前記圧力変換チャンバーに、前記二つの流れ抵抗器の間に前記チャンバー内の海水又は濃縮海水の流量または積算流量を測定する流量計を設けたことを特徴とする。
【0024】
このようにすることで、ピストンの無い形態の圧力変換チャンバーを備えたエネルギー回収装置を好適に運転制御できる。
すなわち、従来、ピストンの無い形態の圧力変換チャンバーを備えたエネルギー回収装置では、圧力変換チャンバーの低圧側と高圧側に2個の流量計を備えていたが、本発明によれば、給排水両方の流れを1個の流量計により測定でき、すなわち1個の流量計で圧力変換チャンバーへの海水の充填、吐出の流量、流速あるいは積算流量を測定することができる。
また、チャンバーの内部に配置される流れ抵抗器によって各ポートからチャンバー内へ流入する流れが整流されるので、一般に流量計の前後に必要とされる、流れを整えるための助走区間として直管部を設ける必要がなくなって、コンパクトな装置周りで精度の良い測定ができるようになる。
更に、複数台の圧力変換チャンバーによって構成される海水淡水化システムの場合は、少なくとも1台の圧力変換チャンバーに流量計を備えることでシステムの制御に対応ができ、大口径の集合配管に適合した大口径の流量計や、長い助走区間が不要になるので、圧倒的にコストが安価になる。
従って、エネルギー回収装置の処理流量増加に伴う、海水と濃縮海水の給排水の流量を測定する流量計の容量の増加を抑え、ひいてはコストの増加が少なくできるような圧力変換チャンバーを提供することができる。
【0025】
本発明のさらに好ましい別の態様のエネルギー回収装置は、前記流量計は、前記チャンバーの円筒外周面からチャンバー内の流速または流量を測定する一対の超音波受送信器およびセンサコントローラで構成される超音波流量計からなることを特徴とする。
【0026】
このようにすると、超音波流量計は、電磁流量計ほどの性能はないが、チャンバーの円筒外周面からチャンバー内の流速または流量を測定する超音波流量計を備えたので、以下に列挙する効果を奏する。
(1)流量計内部を高圧の海水や濃縮海水を通過させて測定する電磁流量計などの従来の測定器に比べて、海水や濃縮海水とは接触する部分がないので腐食せず、耐食仕様とする必要がない。
(2)従来、圧力変換チャンバーで高圧化した海水をブースターポンプに供給するラインの圧力は高圧であるので、そこに取り付ける流量計は高圧仕様とする必要があったが、チャンバーの外側から超音波流量計の受送信器を取り付ける場合は、チャンバー自体が耐圧容器であるので、高圧仕様とする必要がない。従って、よりコンパクトにすることができる。
また、海水淡水化システムで複数の圧力変換チャンバーを用いる場合は、各チャンバーの海水や濃縮海水を合流させる集合配管方式では、集合配管に流量計が設置されていたので、流量計が大口径かつ高圧仕様となり、また大口径に応じた助走区間が流量計の前後に必要であった。それゆえ高価となり、かつ設置スペースを割く必要があったが、本発明によれば、集合配管に流量計を取り付ける必要がないのでそれらの問題は解決する。
(3)また、流量計の故障時などでの交換は、外付けであるので、配管の接続を取り外すことなく、即ち、内部の液体を開放することなくエネルギー回収装置を停止することなく簡単に行える。
【0027】
本発明のさらに好ましい別の態様のエネルギー回収装置は、前記流量計は、電磁流量計からなることを特徴とする。
本発明に、従来の電磁流量計を用いることで、従来の電磁流量計の優れた性能をそのまま維持して、1台の電磁流量計で装置側の必要条件に対応することができる。電磁流量計は海水、濃縮海水と接触する検出部が接液するが、これを2台から1台にできるので、腐食による検出不良などの不具合確率を低くすることができる。
【0028】
本発明のさらに好ましい別の態様のエネルギー回収装置は、前記流れ抵抗器は、少なくとも1以上の孔が形成された円板状部材であり、前記海水ポート側および前記濃縮海水ポート側にそれぞれ1以上配置され、いずれの流れ抵抗器も前記チャンバーの円筒軸に直交する平面に平行に板面が配置されていることを特徴とする。
このようにすると、圧力変換チャンバー内の超音波流量計による流量または流速の測定箇所が整流されるため、計測が安定且つ再現よく測定することができるので、精度高く流量制御が実現できる。
【0029】
次に、前述の目的を達成するため、本発明の態様の海水淡水化システムは、海水を昇圧するフィードポンプと、前記フィードポンプから吐出された海水を昇圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプで昇圧された海水を淡水と濃縮海水に分離する逆浸透膜分離装置と、前記フィードポンプから吐出された海水を充填し、濃縮海水の圧力によって海水を昇圧して吐出する複数の圧力変換チャンバーを具備するエネルギー回収装置と、前記エネルギー回収装置から吐出される海水を昇圧するブースターポンプと、前記圧力変換チャンバーへの濃縮海水の供給・排出を切り換える切換弁とを備え、
前記複数の圧力変換チャンバーはピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーであり、前記エネルギー回収装置は、濃縮海水および海水を収容する空間を有する円筒形状をなして円筒の軸を垂直に配置した少なくとも1台の圧力変換チャンバーと、前記少なくとも1台の圧力変換チャンバーに設けられ該チャンバーの内部の海水と濃縮海水の流量を計測する流量計と、前記流量計の計測情報に基づいて前記切換弁への動作信号を出力する装置コントローラとを備え、前記装置コントローラと接続されたコントローラであって、前記フィードポンプ、前記高圧ポンプ、前記ブースターポンプを制御するシステムコントローラを備えたことを特徴とする。
【0030】
このようにすると、前処理装置により海洋から取水した海水を逆浸透膜分離装置に適した水質に調整するので、膜の劣化や目詰まり等がなく、海水淡水化システムを長期間正常に稼動することができる。
また、エネルギー回収装置の海水と濃縮海水の充填量と吐出量を、超音波流量計によって圧力変換チャンバーの外側で計測する測定値を利用して制御するので、海水腐食や耐圧への配慮が少ない信頼性のあるシステムとすることができる。
また、圧力変換チャンバーへ設置した超音波流量計により海水の充填量と吐出量の両方の状態を測定できるので、流量計が1台で済む。
また、従来のエネルギー回収装置のように外部に流量計を配置することなく、装置内に流量計および装置コントローラを備えるので、エネルギー回収装置内で充填量と吐出量の制御が完結でき、プラント側への配管や制御仕様の取り決めが少なくすることができる。
さらに、フィードポンプ、高圧ポンプ、ブースターポンプやプラントの自動弁等を制御するシステムコントローラと装置コントローラを接続したので、システムコントローラからの指令や情報に従ってエネルギー回収装置の制御を行うことができる。
また、圧力変換チャンバーの円筒の軸を垂直に配置したので、濃縮海水と海水の比重によりチャンバー内部の流れの均一性が、超音波流量計の測定方向に対して維持され、超音波流量計による流量または流速の測定が安定且つ再現よく測定することができるので、精度高く流量制御が実現できる。
【0031】
更に、前述の目的を達成するため、本発明の態様の海水淡水化システムの制御方法は、海水を逆浸透膜分離装置により淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムの制御方法
であって、ピストンを備えていない形態の圧力変換チャンバーを有したエネルギー回収装置を備えた海水淡水化システムの制御方法において
、高圧の濃縮海水を
前記エネルギー回収装置の
前記圧力変換チャンバーの一端側から供給するとともに、該チャンバー内に満たされていた海水を昇圧しつつ該チャンバーの反対側の端面に向けて移動させる第一の工程と、海水を前記チャンバーの反対側の端面から供給するとともに、該チャンバー内に満たされていた濃縮海水を前記チャンバーの一端側に向けて移動させる第二の工程とを備え、前記第一および第二のいずれの工程においても、前記チャンバー内を移動する海水および濃縮海水を、該チャンバー内に備えられた流れ抵抗器を通して整流させたあと、該チャンバーに備えられた流量計に通して流速または流量または積算流量を計測し、前記計測で得られた計測値に基づいて前記圧力変換チャンバーへの海水と濃縮海水の給排水流量を制御することを特徴とする。
【0032】
さらにより好ましい本発明の態様は、内部形状が同形状の前記圧力変換チャンバーを複数備え、少なくとも1台の圧力変換チャンバーに前記流量計を設け、該流量計の測定値に基づいて、他のチャンバーへの濃縮海水と海水の給排水を制御することを特徴とする。
このようにすると、1台の圧力変換チャンバーを規範とし、他の圧力変換チャンバーをその規範をもとにして制御することにより、簡易にかつ精度よく制御することができる。また、超音波流量計を設置する個数が少なくできるので、システムを安価に構成することができる。
【0033】
さらにより好ましい本発明の態様は、前記流量計により測定した流速または流量の計測値から、前記圧力変換チャンバーへの海水の充填量と、濃縮海水により昇圧して海水を押し出す吐出量を演算し、演算結果に基づいて充填量と吐出量を調整する切換弁による給排水時間および切換弁の開度を決定する操作信号を生成して充填量と吐出量を制御することを特徴とする。
このようにすると、圧力変換チャンバーへの海水の充填量とチャンバーからの海水の吐出量を等しくすることができ、充填量、吐出量の一方が過大になることがない。この作用により、海水をチャンバー容積より多く充填し、または海水をチャンバー容積より多く吐出することがない。海水をチャンバー容積より多く充填した場合、海水が濃縮海水排水側から排出されるため、前処理装置によって水質調整した海水を無駄に排出することになるが、本発明によれば、前処理された海水の無駄をなくすことができ、ひいては安価な淡水を提供することができる。
【0034】
また、海水をチャンバー容積より多く吐出すると、エネルギー回収装置から高濃度の濃縮海水が吐出され、逆浸透膜分離装置に高濃度の海水が供給されることがなく、淡水の生産水量の低下や、逆浸透膜分離装置への海水供給圧力を昇圧する必要がなく、ひいては安価な淡水を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、ピストンを持たない形態のエネルギー回収装置に関し、以下に列挙する効果が得られる。
1)圧力変換チャンバーに1台の流量計を取り付けるので、圧力変換チャンバー単体の付属としての流量計も、複数の圧力変換チャンバーによるシステムとしての流量計の配置もコンパクトにすることができる。特に、接液部のない超音波流量計を圧力変換チャンバーに外付けすれば、高圧対応仕様、耐食仕様が不要となり、高価にならない。
圧力変換チャンバーに取り付けられた1台の流量計で、海水の流量と濃縮海水の流量の測定を共用でき、2個の流量計の校正、補正は不要となる。また、圧力変換チャンバーまわり配管スペースは、流量計前後の助走区間の用意が不要になりコンパクトになる。
複数台のチャンバーからなるシステムの場合は、圧力変換チャンバー1台にだけ流量計を取り付けるだけで済ますことができるので、集合配管における大口径の流量計を用意する必要がなくなる。
2)圧力変換チャンバーまわりに、集合配管接続の流量計や、助走区間の配管が不要になり、圧力変換チャンバーに流量計を取り付けるので、設備の設置や、流量計の故障時の交換作業などは簡単になる。
更に、圧力変換チャンバーに外付けで超音波流量計を取り付けて用いれば、チャンバー容器内部を大気開放することなく流量計の交換が行え、装置を止めないで済ませられる。複数の圧力変換チャンバーによるシステムとしての流量計の配置がシンプルになり、メインテナンスが簡便で、流量計の検知情報に応じてコントローラによる複数の圧力変換チャンバーの切換弁の制御も簡単になる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る海水淡水化システムおよびエネルギー回収装置の実施形態を
図1乃至
図18を参照して説明する。
図1乃至
図18において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の圧力変換チャンバーを用いた海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。ここで、海水淡水化システムおよびエネルギー回収装置1は
図20で説明した従来の構成および作用と概略同一である。但し、海水淡水化システムおよびエネルギー回収装置には、システムの海水吸込ラインおよび海水吐出ライン上に、チャンバーの給排水用の流量計を備えられておらず、代わりに圧力変換チャンバーに流量計を備えているところが従来構成と異なるところである。
【0038】
すなわち、
図1に示すように、取水ポンプにより取水された海水は、前処理装置により浮遊物等が除去されて所定の水質条件に整えられたのち、フィードポンプ2を介してモータMが直結された高圧ポンプ3へ供給される。高圧ポンプ3で昇圧された海水は逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜分離装置4に供給される。逆浸透膜分離装置4は、海水を塩濃度の高い濃縮海水と塩濃度の低い淡水に分離し海水から淡水を得る。この時、逆浸透膜分離装置4から淡水が分離された残余の高圧濃縮海水が排出され、高圧濃縮海水は切換弁5を介して圧力変換チャンバー6の濃縮海水ポート7よりチャンバー内に供給される。
【0039】
一方、フィードポンプ2から高圧ポンプ3に送られる海水から一部を分岐して海水が取り出され、取り出された海水は方向切換弁8を介して圧力変換チャンバー6の海水ポート9よりチャンバー内に供給される。尚、方向切換弁8は、チャンバー内で加圧された海水をチャンバーから外にしか流さないチェック弁10と、海水をチャンバーに供給する方向にしか流さないチェック弁11とを備えたチェック弁ユニットから構成されている。
【0040】
本発明の圧力変換チャンバー6は、内部にはピストンを備えない。圧力変換チャンバー6は、チャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁5と接続して給排水を行う第一の給排水ポートをチャンバーの一端に備え、その給排水ポートのある側からチャンバーの反対側の端部に、同じくチャンバーの外部に設けられた高圧あるいは低圧の液体供給の切換弁と接続して給排水を行う第二の給排水ポートを備えている。そして、第一の給排水ポートと濃縮海水の供給、排出を行う切換弁5と接続させることで、濃縮海水ポート7となし、第二の給排水ポートと海水の供給、排出を行う切換弁8と接続させることで、海水ポート9となしている。
【0041】
また、圧力変換チャンバー6の内部に、第一の給排水ポート側に位置して供給される濃縮海水の流れを整流する流れ抵抗器14と、第二の給排水ポート側に位置して供給される海水の流れを整流する流れ抵抗器15を備え、更に、これら二つの流れ抵抗器の間に圧力変換チャンバー内の流体の流量を測定する流量計16を備えている。流量計16は、従来からその精度、応答性で信頼される電磁流量計でも良いが、後述する超音波流量計が好適である。流れ抵抗器14,15で流れが整流されるので、二つの流れ抵抗器の間のチャンバーの形状は電磁流量計,超音波流量計のいずれを適用する場合も円筒形状で中空であるほうが好ましい。
【0042】
圧力変換チャンバー内の濃縮海水が切換弁5によりチャンバー外に排出されて大気圧まで減圧されると、海水ポート9から方向切換弁8を経由して海水がチャンバーに供給される。海水ポート9から供給された海水は、流れ抵抗器15で整流され均一な流れとなって濃縮海水を押し出しながら移動し流量計16を通過する。流量計16の計測情報は、流量計16あるいはセンサコントローラ17を介して装置コントローラ18に伝えられ、所定の流量あるいは積算流量をカウントしたとき、それに従い装置コントローラ18によって切換弁、例えば濃縮海水を排水していた切換弁5が制御されて、排水が停止される。
【0043】
次に、逆浸透膜分離装置4から供給される高圧の濃縮海水を圧力変換チャンバー6に供給するように、切換弁5を切り替える。圧力変換チャンバー6に供給された高圧の濃縮海水は、流れ抵抗器14で整流され均一な流れとなって海水を加圧して押し出しながら移動し、流量計16を通過する。流量計16の計測情報は、流量計16あるいはセンサコントローラ17を介して装置コントローラ18に伝えられ、所定の流量あるいは積算流量をカウントしたとき、それに従い装置コントローラ18によって切換弁、例えば濃縮海水を供給していた切換弁5が制御されて、供給が停止される。このように、切換弁5は、圧力変換チャンバーに濃縮海水の供給と、圧力変換チャンバーから濃縮海水の排出を行うよう動作を繰り返す。
【0044】
尚、濃縮海水の給排水の切換弁5と海水の給排水の方向切換弁8は、装置コントローラ18による制御信号等で両方を操作するように構成してもよい。また、圧力変換チャンバー6は、チャンバーの内部形状が、円筒形状であり、長手方向の端部に濃縮海水ポートと海水ポートがあることが望ましい。圧力変換チャンバーが複数の場合は、さらに加えて、どのチャンバーの内部形状も同じであることが好ましい。そして、圧力変換チャンバーは長手方向を鉛直に配置することが好ましい。圧力変換チャンバーの下方から比重のより大きい濃縮海水をチャンバー内に供給排出し、圧力変換チャンバーの上方から比重のより小さい海水をチャンバー内に供給排出することで、濃縮海水と海水の互いの攪拌混合を少なくし、海水と濃縮海水の給排水量をバランスさせながら、エネルギー回収装置から吐出される海水の塩濃度が高くなる、いわゆるミキシングを抑制することができる。
【0045】
濃縮海水によって加圧された海水は海水ポート側に移動し、移動分の海水が圧力変換チャンバー6から吐出される。圧力変換チャンバー6から吐出された海水は方向切換弁8を介してブースターポンプ13に供給される。ブースターポンプ13では、海水は高圧ポンプ3の吐出ラインと同じレベルの圧力になるようにさらに昇圧され、昇圧された海水はバルブ19を経て高圧ポンプ3の吐出ラインに合流して逆浸透膜分離装置4に供給される。
【0046】
以上のように、従来、エネルギー回収装置の外付けで低圧側、高圧側に2個の流量計を備えていたが、本発明によれば、圧力変換チャンバー6に流量計16を設置することにより、給排水両方の流れを1個の流量計で測定できる。すなわち、1個の流量計で圧力変換チャンバーへの海水の充填、吐出の流量、流速あるいは積算流量を測定することができる。さらに、2つの異なる流量計を用いていた場合には必要であった2個の流量計の校正や補正が不要となる。
なぜなら、エネルギー回収チャンバーへの海水の充填と吐出の絶対流量値の正確性は、充填量と吐出量の制御に大きく影響しないからである。例えば、100L充填し100L吐出するのが理想とした場合、実際には流量測定の誤差で99L充填し99L吐出していたとしても、99Lどうしであればよく、1つの流量計を使うことにより誤差が相殺される。尚、従来のように流量計を2つに分離した場合、それぞれの絶対流量が異なると、充填と吐出のバランスが崩れて制御ができなくなる。
また、チャンバー内の二つの流れ抵抗器の間に流量計が配置されるので、濃縮海水と海水とも均一に流れ、濃縮海水が海水を、あるいは海水が濃縮海水を押し出す体積、即ち体積流量を流量計により正確に測定できる。これまで流量計の前後の助走区間として設けていた配管が不要になる。
【0047】
尚、ここで「均一な流れ」とは、チャンバー内のある断面での流速の方向と大きさが一様であることを意味する。チャンバー内のある断面内の流速(スカラー)と方向(ベクトル)が断面内のどの位置においても同一に分布していることを完全に均一流れという。すなわち、
図2に示すように、ある断面内の任意の点Pn、Pmにおける流れは、流れの大きさがそれぞれVn,Vmである矢印で示される。この場合、矢印と断面上の補助線X,Y(XとYは直交している)とのなす角度(α、β)が同一である(αn=αm、βn=βm)とき、点Pn、Pmにおける流れは均一な流れであり、断面内のどの位置においても角度α、βが同一であるとき完全に均一な流れとする。このような状態により近いことを以後、均一な流れとする。特に、断面が、外周壁を有する円筒状のチャンバーあるいはチャンバーの軸線と垂直な位置関係として存在する場合には、断面は水平断面である。この場合、流れは角度α、βがともに直角になるほど均一な流れとなる。
【0048】
図3及び
図4は、流量計を超音波流量計とした本発明の海水淡水化システム及びエネルギー回収装置の構成例を示す模式図である。ここで、海水淡水化システムおよびエネルギー回収装置は
図1で説明した構成および作用と概略同一である。
但し、
図3及び
図4に示す海水淡水化システムは、ともに2台の圧力変換チャンバー6を用いた場合で、使用する圧力変換チャンバー6はピストンを備えない。
図3及び
図4に示すように、2台の圧力変換チャンバー6のうち1台の圧力変換チャンバーに超音波流量計16が設置されている。
図3は圧力変換チャンバーに流れ抵抗器が用いられていない場合の実施例であり、
図4は圧力変換チャンバーに流れ抵抗器が用いられている場合の実施例である。
【0049】
図5は、
図3に示したエネルギー回収装置に適用される本発明に係る超音波流量計を備えた圧力変換チャンバーの概略断面図である。
図3に示すエネルギー回収装置に用いる2台の圧力変換チャンバーは、流量計の有無を別にすれば、同一の構成である。すなわち、
図5に示すように、圧力変換チャンバー6は、長尺の円筒形状のチャンバー本体21と、チャンバー本体21の両開口端を閉塞する端板22,22を備えており、内部は中空である。一方の端板22に濃縮海水ポート7が形成され、他方の端板22に海水ポート9が構成され、これらのポートからチャンバー内部へ海水および濃縮海水の給排水を行う。
【0050】
図3および
図4に示す海水淡水化システムにおいて、2台の圧力変換チャンバー6,6内の濃縮海水が各切換弁5によりチャンバー外に排出されて大気圧まで減圧されると、方向切換弁8を経由して海水が海水ポートから各々のチャンバーに供給される。海水ポートから供給された海水は、各チャンバー内の濃縮海水を押し出しながら移動する。このとき、流量計16を備えた圧力変換チャンバー6では、流量計16がチャンバー内を通過する液体の流量を計測する。流量計で計測された情報は、流量計から直接、あるいはセンサコントローラ17を介して装置コントローラ18に伝えられ、所定の流量あるいは積算流量をカウントしたとき、それに従い装置コントローラ18によって各圧力変換チャンバー6の切換弁、例えば濃縮海水を排水していた切換弁5が制御されて、排水が停止される。
【0051】
次に、各圧力変換チャンバー6に逆浸透膜分離装置4から分離された高圧の濃縮海水を供給するように各切換弁5を切り替える。圧力変換チャンバー6に供給された高圧の濃縮海水は、海水を加圧して押し出しながら移動する。このとき、流量計16を備えた圧力変換チャンバー6では、流量計がチャンバー内を通過する液体の流量を計測する。流量計16の計測情報は、流量計16から直接あるいはセンサコントローラ17を介して装置コントローラ18に伝えられ、所定の流量あるいは積算流量をカウントしたとき、それに従い装置コントローラ18によって各圧力変換チャンバー6の切換弁、例えば濃縮海水を供給していた切換弁5が制御されて、供給が停止される。このように、各切換弁5の動作により、圧力変換チャンバー6への濃縮海水の供給と、圧力変換チャンバー6からの濃縮海水の排出が繰り返される。
【0052】
エネルギー回収装置1において、圧力変換チャンバー6は2台とも長手方向を縦置きに設置されている。濃縮海水と海水の比重差の影響を考慮し、チャンバーを縦配置とし比重の重い濃縮海水のポートを下側に、比重の軽い海水のポートを上に配置している。すなわち、長尺の円筒形状のチャンバー本体21は、チャンバーの長手方向(軸方向)が垂直方向に配置されており、濃縮海水ポート7はチャンバーの下側で濃縮海水を給排水するように設けられ、海水ポート9はチャンバーの上側で海水を給排水するように設けられている。
【0053】
図5に示すように、超音波流量計16を備えた方の圧力変換チャンバー6は、チャンバー本体21の円筒外周面に超音波流量計16のセンサヘッドSH1およびセンサヘッドSH2が取り付けられている。これらセンサヘッドSH1,SH2は、超音波の受送信部をチャンバーの円筒外周面から内側に向けて取り付けるだけのクランプオン型で、海水、濃縮海水に接液しない。チャンバーの円筒外周面からセンサヘッドSH1がチャンバーの壁面に対して所定の角度で超音波を発信し、反対側のチャンバー壁面で反射した信号をセンサヘッドSH2が受信する。同時にセンサヘッドSH2がチャンバーの壁面に対して所定の角度で超音波を発信し、反対側のチャンバー壁面で反射した信号をセンサヘッドSH1が受信する。この時、チャンバー内に流れる流体によりそれぞれの波に伝播時間の遅れが発生し、その遅れからセンサヘッド間を流れる流体の流速、流量を検出するのが超音波流量計の流量、流速測定原理である。2個のセンサヘッドの距離は、測定する配管径、配管材料、測定対象の流体の種類などによって決定し、2個のセンサヘッドSH1,SH2は距離Lだけ離間させてチャンバー壁面へ固定する。場合によっては、超音波の反射を利用せず、センサヘッドSH1の面と反対側のチャンバー壁面にセンサヘッドSH2をおく位置関係もありうる。また、測定方式も、パルスドップラー式でも伝播時間差式でもどちらでも良い。
【0054】
超音波流量計16はセンサヘッドSH1、センサヘッドSH2、センサコントローラ17から構成され、センサコントローラ17とセンサヘッドSH1,SH2はケーブル23により接続されている。センサコントローラ17は2個のセンサヘッドSH1,SH2の超音波発信/受信をコントロールするとともに、流速、流量を計算し、流速や流量を表示し、アナログ信号や通信によって測定値を出力信号として外部へ出力する。センサコントローラ自体に積算流量を算出する機能を備えるものもあり、その機能を利用する場合は積算のタイミングをセンサコントローラに送り、測定値として積算値が出力信号として外部へ出力される。
センサコントローラ17から外部へ出力される信号はエネルギー回収装置1を制御する装置コントローラ18に入力され、装置コントローラ18は、センサから受けたチャンバー内を流れる流速、流量、積算流量データに基づいて、濃縮海水の供給および排出の切換えを行う切換弁5の切換えタイミングや開度を制御する。
【0055】
図6に示す圧力変換チャンバー6は、
図5に圧力変換チャンバーに加えて、濃縮海水ポート側に位置して、供給される濃縮海水の流れを整流する流れ抵抗器14と、海水ポート側に位置して供給される海水の流れを整流する流れ抵抗器15を備えている。
図6に示す圧力変換チャンバー6では、
図5に示す圧力変換チャンバー6の濃縮海水ポート及び海水ポートに比べて、濃縮海水ポート7も海水ポート9も圧力変換チャンバーの内径に比してより小径である場合で、小径の各ポートからチャンバーに供給される濃縮海水及び海水が、チャンバー内で局部的な大きな速度分布を有する流体の流れとなるので、その流れを流れ抵抗器14,15によってチャンバーの直径方向に分散させて、チャンバーの断面で均一な流れに整流し、海水と濃縮海水の界面が水平に維持された状態として二流体を押し引きすることで、チャンバー内において塩濃度の異なる海水と濃縮海水との混合を少ない状態に維持しながらエネルギー伝達を行うものである。
【0056】
流れ抵抗器は、高速に流入する各ポートからの流れに、適切な流れ抵抗を与え、チャンバー内の流れを一様な流れに整流する。この流れ抵抗器により、濃縮海水と海水が直接接触する境界領域の乱れを無くす作用が得られ、圧力変換チャンバー内での濃縮海水と海水の混合を抑制する効果を奏する。この作用効果に加え、超音波流量計の流速、流量測定において、チャンバー中央部の測定箇所の流れが一様になり、測定精度、および再現性が向上する。
【0057】
ここで、流れ抵抗器の実施例としては、少なくとも1以上の孔が形成された円板状部材であり、圧力変換チャンバー内の海水ポート側および濃縮海水ポート側にそれぞれ1以上の流れ抵抗器が配置され、いずれの流れ抵抗器もチャンバーの円筒軸に直交する平面に平行に板面が配置されているものが、簡便かつ充分な整流効果が得られ、好ましい。
図7Aおよび
図7Bは、流れ抵抗器の構成例を示す平面図である。
図7Aに示す流れ抵抗器14(または15)はチャンバーの内径とほぼ同一の外径(φD)を有する円板状をなし、全面に直径φdk1の小径の孔hが空けられている。
図7Bに示す流れ抵抗器14(または15)はチャンバーの内径とほぼ同一の外径(φD)を有する円板状をなし、中央部の円形部分(直径φdcの部分)だけ閉塞され、中央部の円形部分以外の外周部に直径φdk1の小径の孔hが空けられている。
図7Aおよび
図7Bに示す板状の流れ抵抗器は、圧力変換チャンバー内の海水ポート側および濃縮海水ポート側にそれぞれ1以上配置する。
図7Bに示すように中央部の円形部分だけ閉塞された流れ抵抗器は、海水ポートおよび濃縮海水ポートがチャンバー径に対して小径であり、各ポートから高速な流れがチャンバーに流入する場合に採用すると効果的である。また、
図7Bに示す中央部の円形部分だけ閉塞された流れ抵抗器を各ポート近くに配置し、
図7Aに示す全面に小径の孔が空けられている流れ抵抗器をチャンバー中央側に配置して、流れ抵抗器を各ポート側に2枚あるいはそれ以上配置してもよい。
【0058】
尚、
図3から
図6において、濃縮海水ポートと海水ポートは圧力変換チャンバーに各々一つずつ設けられ、それらのポートに切換弁または方向切換弁が接続されている実施例を例示した。ところで、濃縮海水ポートと海水ポートについて、各々供給専用のポートと排出専用のポートを備え、さらにポートごとに開閉バルブを接続して、これまで説明した動作を行えることは言うまでもない。
また、2台の圧力変換チャンバーのうち、1台に流量計を備える例を示したが、2台とも流量計を備えたとしても、本発明の課題のいくつかの対応ができる。同じく、後述する
図14に示す電磁流量計を用いた圧力変換チャンバーとしても、本発明の課題のいくつかの対応ができる。
【0059】
図8Aおよび
図8Bは、エネルギー回収装置の動作における超音波流量計による測定値の一例を示すグラフである。
図8Aは海水吐出時の流量を示し、
図8Bは海水吸込時の流量を示している。
図8Aおよび
図8Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は流量値を示している。
海水吸込時と海水吐出時の流れは向きが逆向きになるが、1台の圧力変換チャンバーに取り付けた1組の超音波流量計によって両方向の流れを計測することができる。
図8Aおよび
図8Bに示したデータは、双方向の流れの流量を別々に表現するために、それぞれ片側向き(海水吐出時、または海水吸込時)を計測したデータを示している。
図8Aに示すように、海水吐出側は山が低くて幅が広い波形となっている。これは複数のチャンバーから吐出される海水吐出量を一定にするため、あるチャンバーの流れが途切れる波形の山の裾野部分(時間)に対応する吐出流量を別なチャンバーの吐出流れと重合するように流れを制御し、2本のチャンバーから同時に海水を吐出させるためである。
【0060】
図8Bに示すように、海水吸込側は海水吐出の時間に対して吸込の時間が短いために、チャンバーへ吸い込む海水の容積を吐出側の海水の容積と一致させるために、短時間で同量の海水を吸い込む必要があるので、山が高くて幅が狭い波形となっている。
1つの山波形がバルブ切換の1サイクルであり、この1サイクルの流量の積算値が海水吐出と海水吸込が同じになるように制御されている。すなわち、海水吐出と海水吸込の山波形の面積が、チャンバーからの吐出容積、吸込容積であり、海水吐出と海水吸込の山波形の面積が一致するように制御している。
【0061】
図9は、切換弁の動作と流量データを模式的に示すグラフである。
図9に基づいて切換弁の制御と流量データを説明する。
図9のグラフ上図は、横軸を時間、縦軸を弁開度とし、弁開度は閉を中心として上方が海水吐出側の開度、下方が海水吸込側の開度を示している。
図9に示すような、台形波状に弁を海水吐出側に開くと、チャンバーに濃縮海水が流入し、それによって海水がチャンバーから外部に吐出される。その流量は弁の開開始時刻に僅かな時間遅れdT後に現れ、弁開度が所定の開度になると流量も一定になる。この時の流量を時間積分し、その積分値と予め装置コントローラに設定された容積目標値を比較し、少ない場合は次のサイクルで開開始から閉開始までの時間Tcを増加させる。
図9に示すようにTcをTc’に長くすると、次のサイクルにおける流量の積分値はTcが増加した分だけ増加する。流量のグラフにおいて破線と実線で囲まれた面積分の容積dVp分が前サイクルより多く吐出される。このように、予めコントローラに設定した設定値を容積目標値とし、海水吐出側の流量積分値すなわち海水吐出量が容積目標値と一致するように、吐出時間を増減させて制御している。
【0062】
次に、海水吸込側は、弁開度が海水吸込側に開くと、チャンバーに海水が流入し、それによって濃縮海水がチャンバー外部に押し出され、海水がチャンバーに充填される。その流量は同じ超音波流量計によって計測される。その流量は弁の開開始時刻に僅かな時間遅れdT後に現れ、弁開度が所定の開度になると流量も一定になる。この時の流量を時間積分し、その積分値と直前に算出した吐出側の積分値とを比較し、多い場合は次のサイクルの弁開度を減少させる。
図9に示すように前サイクルの弁開度より次サイクルの弁開度を小さくすると、次のサイクルにおける流量の積分値は弁開度が絞られて減少する。流量のグラフにおいて破線と実線で囲まれた面積分の容積dVn分が前サイクルより少なく吸い込まれる。このように、海水吸込側の流量積分値を直前の海水吐出容積と比較し、吐出量と吸込量が一致するように、弁開度を制御している。
【0063】
図10は、本発明の海水淡水化システム及びエネルギー回収装置の構成例を示す模式図である。ここで、海水淡水化システムおよびエネルギー回収装置は
図3、
図4で説明した構成および作用と概略同一である。但し、
図10は、並列して設置された複数の圧力変換チャンバーと、それに各々付属する切換弁、方向切換弁を備えたエネルギー回収装置の実施形態である。
図10においては、圧力変換チャンバーはn台(nは2以上の整数)で構成されている。
また、システムを構成する主要機器、即ちフィードポンプ2、高圧ポンプ3、ブースターポンプ13の運転監視を行うシステムコントローラ30があり、エネルギー回収装置1の圧力変換チャンバー6の給水排水量を測定した流量情報を受けて圧力変換チャンバー6の給水排水を行う切換弁の運転を制御するエネルギー回収装置1の装置コントローラ18は、このシステムコントローラ30と通信、信号等のやりとりをしている。主要機器およびエネルギー回収装置の起動、停止はこのシステムコントローラ30の指示によりなされ、各機器の運転情報は、システムコントローラ30に集中する。各機器の情報をもとに、システムコントローラ30は海水淡水化システムの最適な運転制御を行っている。
【0064】
図10では、n台の圧力変換チャンバーはピストンを備えない。そしてn台の圧力変換チャンバーのうち1台だけに、圧力変換チャンバーの外周部に超音波流量計16を設置している。超音波流量計16のセンサヘッドSH1,SH2は一対の送信器、受信器で構成され、それぞれケーブルでセンサコントローラ17に接続されている。センサコントローラ17から外部へ出力される信号はエネルギー回収装置1を制御する装置コントローラ18に伝送され、装置コントローラ18は、チャンバー内を流れる流速、流量、積算流量データに基づいて、濃縮海水を制御する切換弁5の切換えタイミングや開度を制御する信号演算を行う。装置コントローラ18は切換弁5と電源および前述の制御信号を与えるケーブルで接続されている。
【0065】
1台の流量計(センサ)16によって、圧力変換チャンバー内部の流れの状態、すなわち流速、流量、積算流量を計測する。そして、流速または流量の測定値に基づいて、あるいは積算流量がセンサコントローラ17で演算されて出力される場合は積算流量値そのものを利用して、チャンバーの海水吐出側の流量積分値を決定し、予めコントローラに設定した設定値を目標値とし、流量積分値と目標値から吐出時間を演算する。その演算値を他のセンサを取り付けていない圧力変換チャンバーの制御に適用する。すなわち、No.2、No.3…No.nの圧力変換チャンバーに、No.1の圧力変換チャンバーの演算値を適用する。その次のNo.1の圧力変換チャンバーの動作時に再び積算流量から吐出時間を演算し、すべての圧力変換チャンバーの制御を行っていくことで、吐出量が目標値と一致するように制御する。
【0066】
海水吸込側の流量も同様にNo.1の圧力変換チャンバーの流量積分値の演算を行い、その演算値に基づいてNo.2、No.3…No.nの圧力変換チャンバーの弁開度を変更し、次のNo.1の圧力変換チャンバーの動作時に再び海水吸込流量積算値を演算し、各圧力変換チャンバーに対応する切換弁の動作制御を同様に行うことで、吐出量と吸込量が一致するように制御する。すなわち、1台の圧力変換チャンバーの流量を規範として測定し、他の圧力変換チャンバーのバルブ切換制御をその測定された流量に基づいて従属して制御することができる。
尚、濃縮海水の給排水の切換弁と海水の給排水の切換弁は、装置コントローラによる制御信号等で両方を操作するように構成してもよい。また、各圧力変換チャンバーは、
図1、
図5、
図6における実施例で説明した圧力変換チャンバーが好ましい。
【0067】
図11は、
図10に示すシステムに更に、超音波流量計をNo.1およびNo.2の2台の圧力変換チャンバーだけに設置した実施形態を示す模式図である。
1台の(例えばNo.1の)圧力変換チャンバーに取り付けた超音波流量計で計測した流速、流量、流量積分値を利用して、n台の圧力変換チャンバーの制御もその計測値に基づいて制御するのは
図10で説明した制御方法と同様である。他の1台(No.2)に取り付けた超音波流量計の測定値による制御演算は、装置コントローラ内部で、前者(No.1)に取り付けた超音波流量計の測定値による制御演算と同じ演算を行う。装置の制御は、いずれか一方の制御演算に基づいて制御を行うのであるが、制御に利用している側の超音波流量計のセンサが故障した場合、他の1台に切り換えて運転を継続するようにする。すなわち、もう一台をバックアップとして利用する。センサコントローラの故障は、ケーブル切断などセンサコントローラに備える異常出力機能を利用して検出することができる。
また、1台に取り付けた超音波流量計の測定値および他の1台に取り付けた超音波流量計の測定値を取り込み、それぞれの測定値に基づいて同じ制御方法により装置コントローラ内部で制御演算計算を行うようにする。2台の超音波流量計の測定値および積算流量値、制御演算の結果はほぼ同じであるはずであるが、制御に利用している1台とバックアップであるもう1台の測定値や制御演算の結果が大きく違う場合には、装置の異常として検出することもできる。このように、センサコントローラに備えられている異常出力機能に頼らずに、2台の超音波流量計による測定値を装置コントローラで装置の異常状態検知に利用することができる。
【0068】
図12は、
図10に示すシステムに更に、超音波流量計をNo.1からNo.nの全ての圧力変換チャンバーに設置した実施形態を示す模式図である。
図12に示す実施形態においては、それぞれのチャンバーに取り付けた超音波流量計16で計測した流速、流量、流量積分値を利用して、チャンバーの制御を行う。海水の充填と吐出について、1サイクルからn−1サイクルの充填量と吐出量を計算し、充填量と吐出量の平均を取り、次のサイクルで算出した圧力変換チャンバーの切換弁の切換時間、弁開度を補正していくやり方である。この制御方式によれば、センサへの突発的なノイズなどへの応答が鈍くできるので、装置の制御が外乱を受けにくくなる。
【0069】
図13は、
図10に示すシステムに更に、超音波流量計をNo.1の圧力変換チャンバーと任意の圧力変換チャンバーに設置した実施形態を示す模式図である。
図13においては、No.1とNo.nの圧力変換チャンバーに超音波流量計16を設置している。エネルギー回収装置の処理する流量が大きくなると、圧力変換チャンバーの設置数が多く必要になり、海水や濃縮海水を多数の圧力変換チャンバーに供給するために、海水および濃縮海水とも集合配管からそれぞれの圧力変換チャンバーに分岐管により分配されるが、この集合配管に供給される海水や濃縮海水の供給口の位置と、集合配管に接続する分岐管の接続位置の関係が、近いか遠いかにより、圧力変換チャンバーに供給される流量に僅かな流量差が生じる。分岐管上流は複数のチャンバーへ供給される流れが通過するために集合配管内の流量が多く流速は早くなるため、集合配管の上流側の圧力が下流側の圧力より低くなり、上流側にある分岐管に配置したチャンバーへの流量は下流に比べて少なくなり、下流側にある分岐管に配置したチャンバーへの流量は上流に比べて多くなる。すなわち、No.nの圧力変換チャンバーへの流量は、No.1の圧力変換チャンバーへの流量に比べて多くなる。
このため、圧力変換チャンバーの中で、最も多い海水の充填量、吐出量のもの(例えばNo.n)に超音波流量計16を設置し、それに合わせて、他の圧力変換チャンバーを制御するようにする。
図13において、超音波流量計16を設置したNo.1およびNo.nの圧力変換チャンバーは、例えば2系統ある集合管のそれぞれ最下流にあるチャンバーというふうに流量計を設置するチャンバーを決定する。尚、超音波流量計を設置する圧力変換チャンバーは、ユニットの配置、レイアウト、集合配管と各ユニットへの分岐位置によって個々に異なるので、設備の特性ごとに決定する。
【0070】
以上、
図10乃至
図13に示した複数台の圧力変換チャンバーに関する実施例では、流量計を圧力変換チャンバーに外付けできる超音波流量計を用いるので、流量計を耐圧仕様や耐食仕様にする必要がなく、一つの流量計で圧力変換チャンバーに供給される流量、排出する流量を測定するので、2個の流量計の校正や補正の必要がない。
また、
図1、
図5、
図6に示す実施例で説明した圧力変換チャンバーで、全てのチャンバーを同じ形状にそろえるので、少なくとも一つのチャンバーに流量計を備えることで、流量計を備えていないチャンバーの制御が精度よく行え、従って、各チャンバーの給排水をまとめる大口径の集合配管に大口径の流量計を接続させる必要がなくなる。それゆえ、流量計の前後の助走区間も不要になる。
さらに、バックアップの流量計については、従来の大口径の流量計のバックアップのように大規模な配管系を用意する必要はなく、本発明により通常は超音波流量計だけの交換か、圧力変換チャンバーの交換か、または、
図11,
図12に示す実施例のように、別の圧力変換チャンバーに1台以上の超音波流量計を取り付けることでバックアップに簡単に対応ができる。
【0071】
図3から
図13に示す実施例においては、超音波流量計を用いた例を示したが、超音波流量計を電磁流量計に置き換えても、従来に比べて大きな効果が得られる。
図14は、電磁流量計16EMFを備えた圧力変換チャンバーおよび電磁流量計を備えていない圧力変換チャンバーを比較のために示す模式図である。
図14の右側に、標準の圧力変換チャンバー、左側に電磁流量計を備えた圧力変換チャンバーを表し、両者を対比して示している。標準の圧力変換チャンバーは、内径がφDの円筒形状で長手方向の内のり(内側の長さ)はLcである。
図14の左右の圧力変換チャンバー6は、長尺の円筒形状のチャンバー本体21と、チャンバー本体21の両開口端を閉塞する端板22,22を備えており、内部は中空である。一方の端板22に濃縮海水ポート7が形成され、他方の端板22に海水ポート9が構成され、これらのポートからチャンバー内部へ海水および濃縮海水の給排水を行う。各端面からL1の距離のところに流れ抵抗器14,15が各々配置されている。
【0072】
図14の左側に示す、電磁流量計16EMFが組み込まれた圧力変換チャンバー6のチャンバー本体21は、電磁流量計16EMFを組み込むために3つのピース31,32,33に分かれている。第一のピース31は中央部にある電磁流量計16EMFである。電磁流量計の流路自体が圧力変換チャンバーの円筒部を構成するφDの内径の短管となっており、短管の両端面にフランジ34が備えられて、被測定流体の導入排出のインターフェイスとなっている。電磁流量計16EMFは、短管外周から海水や濃縮海水の移動方向に垂直に磁場をかけ、海水や濃縮海水の移動により、その移動方向と磁場の方向に垂直に発生する誘導電流を測定することにより流量を計測している。測定と外部通信に関する制御はセンサコントローラ17が行っており、センサコントローラ17の測定状況などの情報は、装置コントローラ18に送られ装置全体の制御に供される。
【0073】
第2のピース32は、第3のピース33と同じ形状であり、同じ構造である。第2,第3のピース32,33は、内径がφDの円筒の短管で、一端が端板22で覆われ、端板22にはポートが備えられている。第2,第3のピース32,33には、それぞれ端板22の端面からL1に流れ抵抗器14,15が配置されている。短管の別の端部には、フランジ34が備えられて電磁流量計16EMFと接続できるようになっている。これら第2,第3のピース32,33はポートが付いたキャップ状なので、ポート付きキャップと呼ぶ。
図14に示すように3つのピースを、真ん中に電磁流量計16EMFを構成するピース31、それを挟むように2個のポート付きキャップ32,33を配置してフランジ34で接続すると、一端を海水ポート9、もう一端を濃縮海水ポート7とした内部が円筒形状の圧力変換チャンバーができあがり、その内部の形状は、標準の圧力変換チャンバーと同じ形状になる。
【0074】
このような、電磁流量計16EMFを備えた圧力変換チャンバーにより、
図3から
図13に示す実施例と同様の構成が実現でき、圧力変換チャンバーは高圧対応仕様、耐食仕様が必要ではあるが、高応答性、高精度な性能・機能を極力維持するとともに、以下の4つの効果が実現できる。
1)圧力変換チャンバー自体に1台の流量計を取り付けるので、海水の流量と濃縮海水の流量の測定を共用できる。海水の流量と濃縮海水の流量の測定を共用でき、2個の流量計の校正や補正は不要となる。また、複数台のチャンバーからなるシステムの場合は、圧力変換チャンバー1台にだけ流量計を取り付けるだけで済ますことができるので、流量計の台数を減らすことができる。
2)標準的な圧力変換チャンバーの形状に合わせて流量計を取り付けるので、流量計の点検や交換などは、大きなフランジから外すのではなく、圧力変換チャンバーの流路の小さくなったポート部分からチャンバーと一体で取り付け取り外しをすれば良いので簡便である。
3)圧力変換チャンバーに流量計を取り付けるので、圧力変換チャンバー単体の付属としての流量計も、複数の圧力変換チャンバーによるシステムとしての流量計の配置もコンパクトにすることができる。
4)複数の圧力変換チャンバーによるシステムとしての流量計の配置がシンプルになり、メインテナンスが簡便で、流量計の検知情報に応じてコントローラによる複数の圧力変換チャンバーの切り替えバルブの制御も簡単になる。
【0075】
また、
図10から
図13に示す実施例における作用と効果の一部は、複数の圧力変換チャンバーを備え、各チャンバーの内部形状が同一の円筒形状であり、円筒の端部に海水ポートと濃縮海水ポートをもち、各端部から一定の距離のところに流れ抵抗器を備えることにより得られるもので、
図1や
図14に示したものであるが、このような圧力変換チャンバーを用いる場合には、圧力変換チャンバーに流量計を備えなくても、1台の圧力変換チャンバーの外部にある供給、排出の配管に流量計を備えることでも対応できる。
【0076】
図15乃至
図18は、使用する複数の圧力変換チャンバー6は、ピストンを備えず、各チャンバーの内部形状が同一の円筒形状であり、円筒の端部に海水ポート9と濃縮海水ポート7をもち、各端部から一定の距離のところに流れ抵抗器14,15を備えた実施形態を示す模式図である。しかし、流量計は、従来のように、圧力変換チャンバーから海水が出るラインと圧力変換チャンバーから濃縮海水が出るラインに配置されている。すなわち、
図15乃至
図18に示すように、圧力変換チャンバー6から海水が出るラインに第一の流量計F1が配置され、圧力変換チャンバー6から濃縮海水が出るラインに第二の流量計F2が配置されている。このようにしても、
図15に示す実施形態は前述の
図10に示す実施形態と同様に、
図16に示す実施形態は
図11に示す実施形態と同様に、
図17に示す実施形態は
図12に示す実施形態と同様に、
図18に示す実施形態は
図13に示す実施形態と同様に、作動でき、同様の効果もある程度得られる。
【0077】
従って、海水と濃縮海水の集合配管に大口径の耐圧仕様で耐食仕様の電磁流量計を用意することなく、圧力変換チャンバー単体の海水が出るラインと圧力変換チャンバーから濃縮海水が出るラインに付けられる程度の小型の流量計で、流量を計測することで、全ての圧力変換チャンバーの動作制御を行うことができる。
【0078】
更に言えば、ピストンを備えない複数の圧力変換チャンバーを備え、各チャンバーの内部形状が同一の円筒形状であり、円筒の端部に海水ポートと濃縮海水ポートをもち、各端部から一定の距離のところに流れ抵抗器を備えたものであれば、圧力変換チャンバー単体でチャンバー内を海水や濃縮海水の進行状況を検知することにより、
図10から
図13に示した実施例が実現できる。
【0079】
例えば、濃度スイッチをある圧力変換チャンバーの両端部近傍に配置し、チャンバー内部の濃度の変化に応じてスイッチの入り切りがなされるように構成すれば、入り切りの情報をセンサコントローラあるいは装置コントローラが受けて、残りの圧力変換チャンバーの運転動作の制御が行えるので、
図10から
図13の実施例における操作が行える。そして、少なくとも海水と濃縮海水の集合管に大口径の耐圧仕様で耐食仕様の電磁流量計を用意することなく、濃度スイッチのある圧力変換チャンバー内の海水や濃縮海水のチャンバー内の移動状態に応じて、他の圧力変換チャンバーの動作制御を行うことができる。
【0080】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。