特許第6409140号(P6409140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6409140-電池膨れ検知システム及び方法 図000002
  • 特許6409140-電池膨れ検知システム及び方法 図000003
  • 特許6409140-電池膨れ検知システム及び方法 図000004
  • 特許6409140-電池膨れ検知システム及び方法 図000005
  • 特許6409140-電池膨れ検知システム及び方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409140
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】電池膨れ検知システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20181004BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H01M10/44 A
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-563071(P2017-563071)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公表番号】特表2018-523264(P2018-523264A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】KR2016009091
(87)【国際公開番号】WO2017047937
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0129551
(32)【優先日】2015年9月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェ−チャン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ギュヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,スリョン
【審査官】 古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−251261(JP,A)
【文献】 特開2010−015956(JP,A)
【文献】 特開2009−266563(JP,A)
【文献】 特開2000−123887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H01M 2/10
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池膨れ(swelling)検知システムであって、
バッテリーパックの一つ以上のバッテリーモジュールの各々に複数で備えられ、前記バッテリーモジュールのバッテリーセルから分岐するガスを検知する検知部、
前記検知部の各々の検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定し、前記レベルに基づいて周辺装置の動作を制御する制御部、及び
前記バッテリーパックと外部電源の連結経路上に提供され、前記制御部の信号に応じてオン及びオフ動作するスイッチ部を備えてなることを特徴とする、電池膨れ(swelling)検知システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記バッテリーモジュール内部の上下、左右、前後に散開して位置することを特徴とする、請求項1に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項3】
前記検知部の各々は、一酸化炭素検知センサ、二酸化炭素検知センサ及びメタン検知センサを備えてなり、
前記検知値は、一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値を一つのセット(set)にして構成されてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部の各々の検知値を所定の閾値と比較し、前記閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項5】
前記選定された検知値のレベルは、膨れ危険度に応じて、第1レベル、第2レベル及び第3レベルの何れか一つに決定されることを特徴とする、請求項4に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第1レベル、第2レベル及び第3レベルの何れか一つに決定された場合、前記レベルに基づく車両速度制御信号を車両のECU(Electronic Control Unit)に送信することを特徴とする、請求項5に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、所定時間の経過後に前記スイッチ部にオフ動作信号を送信することを特徴とする、請求項5又は6に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、車両に既に設けられたディスプレイ装置に所定の通知信号を送信することを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第2レベルに決定された場合、前記外部電源から前記バッテリーパックに流入する充電電流量を制御することを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載の電池膨れ検知システム。
【請求項10】
電池膨れ(swelling)検知方法であって、
バッテリーパックの一つ以上のバッテリーモジュールの各々に複数で備えられる検知部が、前記バッテリーモジュールのバッテリーセルから分岐するガスを検知するステップ、
制御部が、前記検知部の各々の検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定し、前記レベルに基づいて周辺装置の動作を制御するステップ、及び
前記バッテリーパックと外部電源の連結経路上に提供されるスイッチ部が、前記制御部の信号に応じてオン及びオフ動作するステップを含むことを特徴とする、電池膨れ検知方法。
【請求項11】
前記検知部は、前記バッテリーモジュール内部の上下、左右、前後に散開して位置することを特徴とする、請求項10に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項12】
前記検知部の各々は、一酸化炭素検知センサ、二酸化炭素検知センサ及びメタン検知センサを備えてなり、
前記検知値は、一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値を一つのセット(set)にして構成されてなることを特徴とする、請求項10又は11に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項13】
前記制御するステップは、前記制御部が、前記検知部の各々の検知値を所定の閾値と比較し、前記閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定することを特徴とする、請求項10〜12の何れか一項に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項14】
前記選定された検知値のレベルは、膨れ危険度に応じて、第1レベル、第2レベル及び第3レベルの何れか一つに決定されることを特徴とする、請求項13に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項15】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第1レベル、第2レベル及び第3レベルの何れか一つに決定された場合、前記レベルに基づく車両速度制御信号を車両のECU(Electronic Control Unit)に送信するステップを含むことを特徴とする、請求項14に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項16】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、所定時間の経過後に前記スイッチ部にオフ動作信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項17】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、車両に既に設けられたディスプレイ装置に所定の通知信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14〜16の何れか一項に記載の電池膨れ検知方法。
【請求項18】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第2レベルに決定された場合、前記外部電源から前記バッテリーパックに流入する充電電流量を制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14〜17の何れか一項に記載の電池膨れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2015年09月14日付の韓国特許出願第10−2015−0129551号に基づいた優先権の利益を主張し、該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電池膨れ検知システム及び方法に関し、より具体的には、バッテリーモジュールの内部に検知部を散開させてバッテリーセルから分岐するガスを検知し、閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値にその大きさに応じたレベルを付与し、該レベルに基づいてバッテリー回路の動作及び車両の運行速度等を制御することにより、バッテリーセルの膨れ(swelling)現象によって発生しうる事故を予防できる電池膨れ検知システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリーは、製品群に応じた適用が容易であり、優れた保存性及び高いエネルギー密度等の特性を有している。また、化石燃料の使用を減少させることができるという一次的な長所だけでなく、エネルギー使用に応じた副産物が発生しないという点で、環境への優しさ及びエネルギー効率性の向上のためのエネルギー供給源として注目されている。
【0004】
このため、バッテリーは、携帯用機器をはじめとし、電気車両(Electric Vehicle;EV)及びエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System;ESS)等に普遍的に応用され、様々な産業の基盤になると同時に日常生活に便宜性を提供している。
【0005】
しかし、このようなバッテリーは使用環境により非正常的に駆動されうるし、例えば、バッテリーが過充電されるかまたは寿命が消尽する場合、バッテリーの内部で発生する電気的、化学的作用によって電池の膨れ(swelling)現象等が誘発される。
【0006】
このような電池の膨れ現象は、バッテリーの寿命短縮、容量低下だけでなく、発火及び爆発のような事故につながるため、注意深い監視と適切な制御を通じたバッテリーの安定的な使用が求められている。
【0007】
このため、電池の膨れ現象の検知及びバッテリーの保護と関連した様々な研究開発が行われてきており、一例として圧力測定手段を用いて膨れに応じたバッテリーセルの体積変化を検知し、それを通じて電流を遮断する技術が公知されている。
【0008】
しかし、このようなバッテリーセルの物理的な体積膨張は膨れが十分に進行しなければ発生しないため、バッテリーセルの膨れ現象を初期に検知して対応するには困難があり、電流が遮断されたとしても十分な膨れの進行によって発火が引き起こされる危険性が大きい。
【0009】
また他の例として、膨れ現象によるバッテリーセルの膨張力がバスバー、タップ等の部材を破断させることにより、電流を遮断する技術も提示されてきた。
【0010】
しかし、このような技術もバッテリーセルの膨れ現象に対する初期対応が容易でなく、一部部材の破断時に発生しうるスパークが点火源として作用して発火のまた他の原因になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために導き出されたものであり、本発明の目的は、バッテリーセルから分岐するガスをリアルタイムで検知して検知値のレベルを決定し、該レベルに基づいてバッテリーモジュールへの電源供給、充電電流量等を制御することにより、バッテリーセルの膨れ(swelling)現象によって発生しうるバッテリーの機能問題を解決することができる電池膨れ検知システム及び方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、バッテリー回路の動作制御だけでなく、検知値のレベルに応じて車両の運行速度を適切に制御することにより、バッテリー及び車両の爆発、発火等の事故を予防して車両の搭乗者の安全を確保することができる電池膨れ検知システム及び方法を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、バッテリーセルが非正常的な環境に置かれる場合、空冷式ファン(fan)及び水冷式冷却バルブ(cooling valve)等のような周辺装置の運用が中断されるように制御することにより、周辺装置の不要な駆動に応じた電力消費を防止することができる電池膨れ検知システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態による電池膨れ検知システムは、バッテリーパックの一つ以上のバッテリーモジュールの各々に複数で備えられ、該バッテリーモジュールのバッテリーセルから分岐するガスを検知する検知部、前記検知部の各々の検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定し、該レベルに基づいて周辺装置の動作を制御する制御部、及び前記バッテリーパックと外部電源の連結経路上に提供され、前記制御部の信号に応じてオン及びオフ動作するスイッチ部を含んで構成される。
【0015】
前記検知部は、前記バッテリーモジュール内部の上下、左右、前後に散開して位置してもよい。
【0016】
前記検知部の各々は、一酸化炭素検知センサ、二酸化炭素検知センサ及びメタン検知センサを含んでもよい。
【0017】
前記検知値は、一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値を一つのセット(set)にして構成されてもよい。
【0018】
前記制御部は、前記検知部の各々の検知値を所定の閾値と比較し、前記閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定してもよい。
【0019】
前記選定された検知値のレベルは、膨れ危険度に応じて第1レベル、第2レベル及び第3レベルのうち一つに決定されてもよい。
【0020】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第1レベル、第2レベル及び第3レベルのうち一つに決定された場合、該レベルに基づく車両速度制御信号を車両のECU(Electronic Control Unit)に送信してもよい。
【0021】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、所定時間の経過後に前記スイッチ部にオフ動作信号を送信してもよい。
【0022】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、車両に既に設けられたディスプレイ装置に所定の通知信号を送信してもよい。
【0023】
前記制御部は、前記選定された検知値のレベルが前記第2レベルに決定された場合、前記外部電源から前記バッテリーパックに流入する充電電流量を制御してもよい。
【0024】
本発明の一実施形態による電池膨れ検知方法は、バッテリーパックの一つ以上のバッテリーモジュールの各々に複数で備えられる検知部が、該バッテリーモジュールのバッテリーセルから分岐するガスを検知するステップ、制御部が、前記検知部の各々の検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定し、該レベルに基づいて周辺装置の動作を制御するステップ、及び前記バッテリーパックと外部電源の連結経路上に提供されるスイッチ部が、前記制御部の信号に応じてオン及びオフ動作するステップを含んで構成される。
【0025】
前記検知部は、前記バッテリーモジュール内部の上下、左右、前後に散開して位置してもよい。
【0026】
前記検知部の各々は、一酸化炭素検知センサ、二酸化炭素検知センサ及びメタン検知センサを含んでもよい。
【0027】
前記検知値は、一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値を一つのセット(set)にして構成されてもよい。
【0028】
前記制御するステップは、前記制御部が、前記検知部の各々の検知値を所定の閾値と比較し、前記閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて前記選定された検知値のレベルを決定してもよい。
【0029】
前記選定された検知値のレベルは、膨れ危険度に応じて第1レベル、第2レベル及び第3レベルのうち一つに決定されてもよい。
【0030】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第1レベル、第2レベル及び第3レベルのうち一つに決定された場合、該レベルに基づく車両速度制御信号を車両のECU(Electronic Control Unit)に送信するステップを含んでもよい。
【0031】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、所定時間の経過後に前記スイッチ部にオフ動作信号を送信するステップをさらに含んでもよい。
【0032】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第3レベルに決定された場合、車両に既に設けられたディスプレイ装置に所定の通知信号を送信するステップをさらに含んでもよい。
【0033】
前記制御するステップは、前記選定された検知値のレベルが前記第2レベルに決定された場合、前記外部電源から前記バッテリーパックに流入する充電電流量を制御するステップをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一側面によれば、バッテリーセルから分岐するガスをリアルタイムで検知して検知された検知値の大きさに応じてレベルを決定し、該レベルに基づいてバッテリー回路の動作を制御することにより、膨れ(swelling)現象によって発生しうる事故の危険性は低減させ、単純なバッテリーの運用中断は排除し、バッテリー運用の効率性を高めることができるという効果がある。
【0035】
この時、分岐するガスを検知する検知部は各々のバッテリーモジュール内部に複数で散開して備えられ、それによってガスの検知感度を高めることができ、複数のバッテリーモジュールのうち膨れ現象が発生する該当バッテリーモジュールのみを部分的に交替することができるため、維持補修の便宜と費用節減の長所を有する。
【0036】
また、検知値のレベルに応じてバッテリーを駆動エネルギーにして運行される車両の速度を制御することにより、バッテリーセルの膨れの発生時、過速度運行によって誘発される事故を予防し、車両の搭乗者の安定性を確保できるという効果がある。
【0037】
さらに、膨れ現象が発生する場合、バッテリーパックへの電源供給の遮断だけでなく、空冷式ファン(fan)及び水冷式冷却バルブ(cooling valve)等のような周辺装置の運用を中断させ、周辺装置の不要な駆動に応じた電力消費を防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態による電池膨れ検知システム及び方法が適用される電気車両を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態による電池膨れ検知システムの回路図を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態による電池膨れ検知システムの検知部がバッテリーモジュールの内部に備えられる形状を概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態による電池膨れ検知システムの制御部で行われるアルゴリズムを説明するために概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態による電池膨れ検知方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を添付図面を参照して詳細に説明すれば以下のとおりである。ここで、繰り返される説明、本発明の要旨を不要に濁す恐れのある公知機能及び構成に関する詳細な説明は省略する。本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。よって、図面での要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0040】
明細書の全体にかけて、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0041】
また、明細書に記載された「...部」という用語は一つ以上の機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアやソフトウェアまたはハードウェア及びソフトウェアの結合で実現されることができる。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態による電池膨れ検知システム及び方法が適用される電気車両1を概略的に示す図である。
【0043】
但し、本発明の一実施形態による電池膨れ検知システム及び方法は、電気車両(electric vehicle)1の他にもバッテリーが適用される様々な技術分野に応用できる。
【0044】
図1を参照すれば、電気車両1は、バッテリー10、BMS(Battery Management System)20、ECU(Electronic Control Unit)30、インバータ40及びモータ50を含んで構成されることができる。
【0045】
バッテリー10はモータ50に駆動力を提供して電気車両1を駆動させる電気エネルギー源であり、モータ50及び/又は内燃機関(図示せず)の駆動に応じてインバータ40によって充電または放電される。
【0046】
BMS20は、バッテリー10の状態を推定し、このような状態情報を用いてバッテリー10の充放電電流を制御し、さらには接触器の開閉動作を制御することができる。
【0047】
ECU30は電気車両1の状態を制御する電子的制御装置であり、例えば、アクセラレータ(accelerator)、ブレーキ(break)、速度等の情報に基づいてトルクの程度を決定し、モータの出力がトルク情報に合うように制御することができる。
【0048】
インバータ40はECU30の制御信号に基づいてバッテリー10が充電または放電されるようにし、モータ50はバッテリー10の電気エネルギーとECU30から伝達される制御情報に基づいて電気車両1を駆動させることができる。
【0049】
上述したように、電気車両1において、バッテリー10は駆動力を提供する核心要素であり、バッテリー10の状態が非正常な場合、電気車両1の故障及び各種の事故が引き起こされる。
【0050】
例えば、バッテリー10が過充電、短絡等の環境に置かれるか、または寿命が全て消尽する場合、バッテリー10の内部で電気的、化学的作用によりガスが発生してバッテリー10の内圧が上昇し、これはバッテリー10の膨れ(swelling)現象につながって爆発及び発火のような事故を誘発しうる。
【0051】
したがって、バッテリー10の状態を監視し、状況によって適切に保護することは、バッテリー10の安定的な運用において重要で、且つ、バッテリー10の非正常的な駆動による各種事故を未然に防止して搭乗者の安全を確保できる対策であり、以下では図2図5を参照して本発明に係る電池膨れ検知システム及び方法について説明する。
【0052】
図2は、本発明の一実施形態による電池膨れ検知システム100の回路図を簡略に示す図である。
【0053】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による電池膨れ検知システム100は、複数の検知部120、制御部130及びスイッチ部140を含んで構成されることができる。
【0054】
但し、図2に示された電池膨れ検知システム100は一実施形態によるものであって、その構成要素が図2に示された実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて一部の構成要素が付加、変更または削除できることに留意する。
【0055】
また、以下に記述するバッテリーは一つ以上のバッテリーパック110を含む概念であって、各々のバッテリーパック110も一つ以上のバッテリーモジュール111を含み、それと同様に各々のバッテリーモジュール111は一つ以上のバッテリーセル112を含んで構成されることに留意する。
【0056】
先ず、検知部120は、一つ以上のバッテリーセル112のうち任意のバッテリーセル112に膨れ現象が発生する場合、分岐するガスを検知する役割をすることができる。
【0057】
この時、検知部120は、図3に示すようにバッテリーモジュール111内部の上下、左右、前後側に複数で散開して位置し、これは、検知部120が単一に構成される場合に発生しうる検知エラーを防止するためであると共にガスの検知感度を高めるためである。
【0058】
通常、バッテリーセルに膨れ現象が発生する場合、分岐するガスの主成分は一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等であり、それに基づき、検知部120の各々は一酸化炭素検知センサ、二酸化炭素検知センサ、メタン検知センサを含むことができる。
【0059】
したがって、各々の検知部120により測定される検知値も一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値、メタン検知値を含めて一つのセット(set)に構成されることができ、各々の検知値セットは電気的または通信的ルートを通して後述する制御部130に提供されることができる。
【0060】
制御部130は、各々の検知部120から検知値、具体的には一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値からなる検知値セットを受信し、特定の検知値セットを選定してレベルを決定する役割をすることができる。また、選定された検知値のレベルに基づいて周辺装置の動作を制御することもできる。
【0061】
この時、選定された検知値のレベルはバッテリーセル112の膨れ危険度に基づいて差分範囲(differential range)に設定された複数のレベルのうち一つに決定されることができ、例えば、複数のレベルはバッテリーセル112の膨れ程度が警戒レベルの第1レベル、危険レベルの第2レベル及び深刻レベルの第3レベルで構成されることができる。
【0062】
このような制御部130はBMS(図1の20)そのもので実現されるか、またはBMSに含まれて実現されてもよく、制御部130には制御部130の動作実行のためのアルゴリズムが設定されていてもよい。
【0063】
制御部130の動作実行については後述する図4に基づいてさらに具体的に説明する。
【0064】
図4は、制御部で行われるアルゴリズムを説明するために概略的に示す図である。
【0065】
アルゴリズムの各ステップを見てみると、先ず、制御部は各々の検知部から検知値を受信して(S410)所定の閾値と比較する。
【0066】
ここで、閾値とはバッテリーセルの膨れ現象時に分岐するガス量に対する閾値であり、一酸化炭素閾値、二酸化炭素閾値及びメタン閾値をセットにして構成され、使用者によって設定可能である。
【0067】
すなわち、比較ステップでは、一酸化炭素検知値と一酸化炭素閾値を比較し、二酸化炭素検知値と二酸化炭素閾値を比較し、それと同様にメタン検知値とメタン閾値を比較して、一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値の全てが対応する閾値を超過してこそ、検知値(セット)が閾値(セット)を超過することに判断する(S420)。
【0068】
仮に閾値を超過する検知値が複数で存在する場合、その中で大きさの最も大きい検知値を選定し(S430)、ここで、大きさとは一酸化炭素検知値、二酸化炭素検知値及びメタン検知値の平均であってもよい。
【0069】
次に、差分範囲に既に設定された第1レベル、第2レベル及び第3レベルに基づいて選定された検知値のレベルが決定される(S440)。換言すれば、選定された検知値の大きさが警戒範囲に含まれる場合には選定された検知値のレベルは第1レベルに決定され、危険範囲に含まれる場合には第2レベルに、深刻範囲に該当する場合には第3レベルに決定される。
【0070】
選定された検知値のレベルが第1レベルに決定される場合(S450)、制御部は車両のECUに第1レベルに対応する車両速度(例えば、80km以下)制御信号を送信(S451)する。
【0071】
この時、信号の送信はCAN(Controller Area Network)通信を利用することができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、ジグビー(zigbee)通信、ワイ・ファイ(wifi)、RF(Radio Frequency)通信、BLE(Bluetooth Low Energy)通信など、様々な方式の通信が適用できる。
【0072】
選定された検知値のレベルが第2レベルに決定される場合にも(S460)、車両のECUに第2レベルに対応する車両速度(例えば、50km以下)制御信号を送信(S461)する。
【0073】
また、バッテリーパックと外部電源の連結経路上に備えられる可変抵抗器(図示せず)を制御して、外部電源からバッテリーパックに流入する充電電流量を制御することもできる。このような構成は、バッテリーパックの過充電の進行を防止してバッテリーセルからのガス分岐量を最小化させるためである。
【0074】
最後に、選定された検知値のレベルが第3レベルに決定されれば(S470)、同様に車両のECUに第3レベルに対応する車両速度(例えば、10km以下)制御信号を送信(S471)し、ナビゲーション(navigation)、車両用モニター等のようなディスプレイ装置に通知信号を送信(S473)する。
【0075】
この時、通知は所定の警報音、警報メッセージ等のように視聴覚的に構成され、車両の搭乗者にバッテリーセルの膨れ現象の発生を認知させることができる。
【0076】
特に第3レベルに決定された場合、所定時間の経過後にバッテリーパックと外部電源の連結経路上に備えられるスイッチ部(図1の140)にオフ(off)動作信号を送信することができる。
【0077】
ここで、スイッチ部は電界効果トランジスタ(field effect transistor)及びリレー(relay)のうち一つ以上で構成されることができるが、スイッチ部を構成する接触器の種類は限定されるものではなく様々である。
【0078】
また、所定時間とは、最小限の車両運行を確保する概念であって、例えば、約10kmの走行に必要な時間であり、このような構成は、電気車両の場合、突然のバッテリーパックと外部電源の連結遮断がかえって事故を誘発しうるため、それを考慮したものである。
【0079】
なお、スイッチ部にオフ動作信号を送信すると共に空冷式ファン(fan)及び水冷式冷却バルブ(cooling valve)等のような周辺装置の運用が中断されるように制御することもでき、それにより、周辺装置の不要な駆動に応じた電力消費を防止することができる。
【0080】
このように、制御部130では、既に設定されたアルゴリズムによって閾値を超過する検知値のうち大きさが最も大きい検知値のレベルを決定し、該レベルに基づいてバッテリー回路の動作及び周辺装置の動作を制御することができる。
【0081】
図5は、本発明の一実施形態による電池膨れ検知方法を説明するためのフローチャートである。
【0082】
本発明の一実施形態による電池膨れ検知方法が開始されれば、各々のバッテリーモジュールの内部に散開して位置した複数の検知部の各々においてバッテリーセルから分岐するガスを検知し、それを制御部に提供する(S510)。
【0083】
制御部では各々の検知値を閾値と比較して閾値を超過する検知値の存在有無を判断する(S520)。仮に閾値を超過する検知値が複数で存在する場合、大きさが最も大きい検知値を選定し、選定された検知値の大きさに応じて選定された検知値のレベルを決定する(S530)。
【0084】
その後、選定された検知値のレベルに基づいて車両の運行速度の制御、バッテリーパックに流入する充電電流量の制御、スイッチ部のオフ動作の制御等のようにバッテリー回路の動作及び周辺装置の動作を制御する(S540)。
【0085】
以上、本発明の特定実施形態を図示し説明したが、本発明の技術思想は添付された図面と上記説明内容に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲内で様々な形態の変形が可能であるということは本分野の通常の知識を有する者にとって明らかなことであり、このような形態の変形は本発明の精神に違背しない範囲内で本発明の特許請求の範囲に属するとみなすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5