特許第6409302号(P6409302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409302
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】冷却水系の水処理方法及び水処理剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/14 20060101AFI20181015BHJP
   C02F 5/12 20060101ALI20181015BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20181015BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20181015BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C02F5/14 A
   C02F5/12
   C02F5/10 610Z
   C02F5/10 630
   C02F5/00 620B
   C02F5/10 620Z
   F28F19/00 501A
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-71669(P2014-71669)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-192939(P2015-192939A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】村野 靖
(72)【発明者】
【氏名】永井 直宏
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−005079(JP,A)
【文献】 特開2012−071272(JP,A)
【文献】 特開2010−221198(JP,A)
【文献】 特開2005−103526(JP,A)
【文献】 特開2001−048711(JP,A)
【文献】 米国特許第05658464(US,A)
【文献】 特開2004−321907(JP,A)
【文献】 特開昭54−056238(JP,A)
【文献】 特開昭50−033933(JP,A)
【文献】 特開昭64−004296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00− 5/14
F28F 11/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水系にスケール防止剤を添加する冷却水系の水処理方法において、該スケール防止剤がグルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする冷却水系の水処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記スケール防止剤を5〜20mg/Lの範囲で前記冷却水系に維持することを特徴とする冷却水系の水処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記冷却水系は食品、飲料水又は医薬品製造工場の冷却水系であることを特徴とする冷却水系の水処理方法。
【請求項4】
冷却水系のスケール防止用水処理剤であって、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする冷却水系の水処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系における炭酸カルシウムスケールを効果的に防止する冷却水系の水処理方法及び水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系のスケール抑制方法としては、スケール分散効果を持つカルボン酸系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、マレイン酸系ポリマー、或いは重合リン酸塩などを利用するものが挙げられる(特許文献1,2)。特許文献2には、ヘキサメタリン酸ナトリウムと分子量20000以下のアクリル酸系ポリマーとを0.1〜100ppm添加するスケール防止方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭62−27879
【特許文献2】特公昭58−11279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全性の高い冷却水処理剤を要望する食品、飲料水、医薬品等の製造工場においては、製品の製造に近いプロセスの冷却水には、万が一の混入に備え、冷却水処理薬剤を用いない場合が多く、スケール障害を生じたり、低濃縮運転のため水の使用量が多くなっている。
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決し、高い安全性が求められる冷却水系において、炭酸カルシウム系スケールを効果的に抑制することができる冷却水系の水処理方法及び水処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の食品添加物は炭酸カルシウム系スケールの防止効果を有することを見出した。
【0007】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、本発明の冷却水系の水処理方法は、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を該冷却水系に添加することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の冷却水系の水処理剤は、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を5〜20mg/Lの範囲で前記冷却水系に維持することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の食品添加物を用いて冷却水系の炭酸カルシウム系スケールを防止することができる。このスケール防止剤は、食品添加物であるから、安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
[スケール防止剤]
本発明では、冷却水系特に開放循環冷却水系に対し、炭酸カルシウム系スケール防止剤としてグルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、カゼインナトリウム、及びフィチン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を添加する。これらの化合物又は組成物はいずれも食品添加物である。これらのスケール防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0013】
[冷却水系の水質]
本発明における処理対象冷却水系は、好適には開放循環冷却水系であり、特に食品、飲料水、医薬品等の製造工場の開放循環冷却水系が好適である。この冷却水系の水質は、特に制限はないが、通常、カルシウム硬度30〜300mg−CaCO/L、pH7〜9程度である。
【0014】
[冷却水系の水処理方法]
本発明においては、上記のような水質の冷却水系に、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、カゼインナトリウム、及びフィチン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種よりなるスケール防止剤を添加してカルシウム系スケールを抑制する。このスケール防止剤は、水溶液として添加されるのが好ましい。
【0015】
このスケール防止剤の添加箇所にも特に制限はないが、冷却塔のピットに添加するのが好ましい。
【0016】
このスケール防止剤の添加量は、適用する冷却水系の水質に応じて適宜調整することができるが、水系中の濃度が5〜20mg/L、特に5〜10mg/Lを維持するように添加することが好ましい。この範囲よりもスケール防止剤の添加量が少ないと十分なスケール抑制効果を得ることができず、多くても添加量に見合う効果は得られず、経済的に不利である。
【0017】
[併用できる他の薬剤]
本発明においては、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、カゼインナトリウム、及びフィチン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種と共に、必要に応じて、他のスケール防止剤などを併用添加することができる。
【0018】
例えば、銅材質に対する防食効果を向上させるために、メルカプトベンゾチアゾール、2−メチルチオベンゾチアゾール、葉酸、クエン酸、酢酸2−(4−メチル−5−チアゾリル)エチル、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール、2−メチル-メチルチオピラジン、2−メチルチオチアゾール、2−エチル-メチルチオピラジン、チアゾール、ベンゾチアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、又はL−アスコルビン酸を併用添加してもよい。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0020】
[原水の調製]
超純水に10%カルシウム硬度水溶液(塩化カルシウム)と5%酸消費量(pH4.8)水溶液(炭酸水素ナトリウム)とを添加し、NaOH又は硫酸によりpH8.8とし、カルシウム硬度及び酸消費量(pH4.8)が300mgCaCO/Lの原水とした。
【0021】
[スケール抑制評価試験]
この原水500mLをねじ口瓶にとり、グルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、カゼインナトリウム、又はフィチン酸を10mg/L添加し、十分に撹拌した後、40℃の恒温槽で40h静置した。その後、0.1μmのフィルターで濾過し、カルシウム硬度を測定した。
【0022】
なお、対照のために、スケール防止剤を全く添加しないもの(ブランク)についても同様の試験を行った。
【0023】
試験結果を表1に示す。表1よりグルタミン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤゴム、L−アスコルビン酸、カゼインナトリウム及びフィチン酸はいずれも40h後の水中のカルシウム硬度がブランク(No.1)よりも高く、スケール析出が抑制されており、スケール防止効果が認められた。特にフィチン酸及びカゼインナトリウム、とりわけフィチン酸のスケール防止効果が高いことが認められた。
【0024】
【表1】