特許第6409670号(P6409670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6409670-溶媒抽出設備 図000002
  • 特許6409670-溶媒抽出設備 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409670
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】溶媒抽出設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   B01D11/04 101
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-95361(P2015-95361)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-209804(P2016-209804A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 泉
(72)【発明者】
【氏名】松本 智志
(72)【発明者】
【氏名】杉之原 真
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−078402(JP,A)
【文献】 特開昭62−042703(JP,A)
【文献】 特開2015−009218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/04
B01D 3/00
C02F 1/26
C22B 3/02
C23C 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有し、負圧となっている溶媒抽出装置と、
気密性を有し、前記溶媒抽出装置から排出された有機溶媒を貯留する貯留槽と、
前記溶媒抽出装置から前記貯留槽に液相の有機溶媒を排出する配管と、
前記溶媒抽出装置の気相部と前記貯留槽の気相部とを接続する均圧管と、を備える
ことを特徴とする溶媒抽出設備。
【請求項2】
前記均圧管は、
ヘッダー管と、
前記溶媒抽出装置の気相部と前記ヘッダー管とを接続する装置側配管と、
前記貯留槽の気相部と前記ヘッダー管とを接続する槽側配管と、を備え、
前記装置側配管および/または前記槽側配管の一部は逆U字形に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の溶媒抽出設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒抽出設備に関する。さらに詳しくは、揮発した有機溶媒に起因する臭気を抑制できる溶媒抽出設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不純物を含む粗硫酸ニッケル水溶液から不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得るために溶媒抽出法が用いられる。工業的な溶媒抽出は溶媒抽出設備を用いて行われる。一般に、溶媒抽出設備には複数の溶媒抽出装置が備えられている。溶媒抽出装置の一例としてミキサセトラ型の溶媒抽出装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ミキサセトラ型の溶媒抽出装置はミキサ部とセトラ部とを備えている。まず、工程液と有機溶媒とがミキサ部に供給される。ミキサ部では撹拌機により工程液と有機溶媒とが撹拌され混合液となる。混合液はセトラ部において静置され、水相と有機相とに分離される。セトラ部から水相と有機相とが排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−9218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶媒抽出設備では溶媒抽出装置から排出された有機溶媒を再生装置に移送し、不純物を除去して再利用する。有機溶媒を再生装置に移送する過程で、有機溶媒は一度貯留槽に貯留される。この貯留槽には排気のためのベント管が接続されている。また、ベント管の内部で生じた凝縮水を排出するため、ベント管にはドレン管が接続されている。
【0006】
ところで、溶媒抽出装置から有機溶媒を排出するにあたり、溶媒抽出装置内の空気が有機溶媒に巻き込まれる。溶媒抽出装置内の空気には揮発した有機溶媒も含まれる。そのため、有機溶媒を含む蒸気が貯留槽に流入する。この蒸気はベント管を経てドレン管から排出される。これにより、ドレン管の周囲では揮発した有機溶媒に起因する臭気が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、揮発した有機溶媒に起因する臭気を低減できる溶媒抽出設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の溶媒抽出設備は、気密性を有し、負圧となっている溶媒抽出装置と、気密性を有し、前記溶媒抽出装置から排出された有機溶媒を貯留する貯留槽と、前記溶媒抽出装置から前記貯留槽に液相の有機溶媒を排出する配管と、前記溶媒抽出装置の気相部と前記貯留槽の気相部とを接続する均圧管と、を備えることを特徴とする。
第2発明の溶媒抽出設備は、第1発明において、前記均圧管は、ヘッダー管と、前記溶媒抽出装置の気相部と前記ヘッダー管とを接続する装置側配管と、前記貯留槽の気相部と前記ヘッダー管とを接続する槽側配管と、を備え、前記装置側配管および/または前記槽側配管の一部は逆U字形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、貯留槽内の有機溶媒を含む蒸気が均圧管を介して溶媒抽出装置に戻される。そのため、有機溶媒を含む蒸気が外部に排出されることを抑制でき、揮発した有機溶媒に起因する臭気を低減できる。
第2発明によれば、装置側配管および/または槽側配管は逆U字形部分を有するので、発生した凝縮水が溶媒抽出装置と貯留槽との間を行き来することがなく、有機溶媒のコンタミネーションを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る溶媒抽出設備1の説明図である。
図2】溶媒抽出装置10の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る溶媒抽出設備1は、複数台の溶媒抽出装置10(10a、10b、10c)と有機溶媒の貯留槽20とを備えている。溶媒抽出装置10の数は特に限定されず、1台でもよいし、2台以上でもよい。溶媒抽出装置10の形式は特に限定されないが、ミキサセトラ型の溶媒抽出装置が好適に用いられる。
【0012】
図2にミキサセトラ型の溶媒抽出装置10の縦断面図を示す。なお、図2において実線矢印は有機溶媒(有機相)の流れを示し、破線矢印は工程液(水相)の流れを示す。
溶媒抽出装置10は気密性を有する槽11を備えている。槽11は隔壁によりミキサ部12とセトラ部13とに分けられている。ミキサ部12には撹拌機14が設けられている。
【0013】
ミキサ部12には有機溶媒と工程液とが供給される。ミキサ部12において、有機溶媒と工程液とが撹拌機14により撹拌され混合液15となる。混合液15はセトラ部13に移送され、静置される。そうすると、有機溶媒16と工程液17とが上下に分離する。その後、セトラ部13から有機溶媒16と工程液17とが別々に排出される。
【0014】
以上の過程で、工程液中の目的成分を有機溶媒に移行させたり、その逆の操作が行われる。例えば、工程液として粗硫酸ニッケル水溶液を用いれば、粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物を有機溶媒に抽出して、高純度硫酸ニッケル水溶液を得ることができる。
【0015】
溶媒抽出装置10の上部空間は気相部となっている。この気相部には工程液中の水分が蒸発して生じた水蒸気のほか、揮発した有機溶媒が存在する。すなわち、気相部に存在する蒸気には揮発した有機溶媒が含まれている。
【0016】
図1に戻り説明する。一般に工業的な溶媒抽出は複数段の溶媒抽出装置10を用いて、有機溶媒と工程液とを向流させながら、混合、静置の操作を繰り返す。これにより、抽出率を上げている。
【0017】
図1において実線矢印は有機溶媒の流れを示す。工程液の流れは省略している。有機溶媒は、まず第1段の溶媒抽出装置10aに供給される。第1段の溶媒抽出装置10aから排出された有機溶媒は第2段の溶媒抽出装置10bに供給される。第2段の溶媒抽出装置10bから排出された有機溶媒は最終段の溶媒抽出装置10cに供給される。工程液は、最終段の溶媒抽出装置10c、第2段の溶媒抽出装置10b、第1段の溶媒抽出装置10の順に給排される。
【0018】
溶媒抽出後の有機溶媒は、再生装置に移送され、不純物を除去して再利用される。そのため、最終段の溶媒抽出装置10cから排出された有機溶媒は、一度貯留槽20に貯留される。その後、有機溶媒は貯留槽20から再生装置に移送される。貯留槽20は気密性を有するタンクである。
【0019】
最終段の溶媒抽出装置10cから有機溶媒を排出するにあたり、溶媒抽出装置10c内の空気が有機溶媒に巻き込まれる。前述のごとく、溶媒抽出装置10c内の空気には揮発した有機溶媒が含まれている。そのため、有機溶媒を含む蒸気が貯留槽20に流入する。
【0020】
最終段の溶媒抽出装置10cは、気密構造であり、内部の空気が有機溶媒とともに排出されるため、その内部は負圧となっている。溶媒抽出装置10cから貯留槽20への有機溶媒の移送はオーバーフローにより行われる。溶媒抽出装置10cの液面と貯留槽20の液面との間には大きな高低差があるため有機溶媒の流れが強くなる。そのため、有機溶媒に空気が巻き込まれる。
【0021】
なお、最終段以外の溶媒抽出装置10a、10bの内部はほぼ大気圧に維持されている。溶媒抽出装置10a、10b、10cの間の有機溶媒の移送もオーバーフローにより行われるが、溶媒抽出装置10a、10b、10cの液面は高低差が小さいため、有機溶媒の流れが空気を巻き込むほど強い流れとはならないからである。
【0022】
本実施形態の溶媒抽出設備1は、以下の構造を有する均圧管30を備えるところに特徴を有する。
均圧管30は、ヘッダー管31と、装置側配管32と、槽側配管33と、ドレン管34とからなる。装置側配管32は各溶媒抽出装置10の気相部とヘッダー管31とを接続している。槽側配管33は貯留槽20の気相部とヘッダー管31とを接続している。したがって、均圧管30により各溶媒抽出装置10の気相部と貯留槽20の気相部とが接続されている。また、ヘッダー管31にはドレン管34が接続されている。ドレン管34の開放端はピット40に導かれている。
【0023】
各装置側配管32はその一部が逆U字形に形成されている。また、槽側配管33の一部も逆U字形に形成されている。なお、装置側配管32と槽側配管33のいずれか一方のみが逆U字形部分を有する構成としてもよい。
【0024】
前述のごとく、最終段の溶媒抽出装置10cは負圧となっている。そのため、貯留槽20内の空気は均圧管30を介して溶媒抽出装置10cに吸引される。これにより、従来外部に排出されていた有機溶媒を含む蒸気が溶媒抽出装置10cに戻される。その結果、有機溶媒を含む蒸気が外部に排出されることを抑制でき、揮発した有機溶媒に起因する臭気を低減できる。
【0025】
また、臭気が発生している場合には、わずかではあるものの有機溶媒が系外に排出されているといえる。本実施形態では揮発した有機溶媒が外部に排出されることを抑制できることから、高価な有機溶媒を系外にロスすることがない。そのため、操業コストを低減できる。
【0026】
貯留槽20から排出された蒸気のうち、溶媒抽出装置10cに戻らなかった一部の蒸気はドレン管34を介して外部に排出される。しかし、溶媒抽出装置10cが完全に気密構造である場合には、貯留槽20から排出された蒸気のほぼ全量が溶媒抽出装置10cに戻る。この場合には、ドレン管34から蒸気が排出されることはない。そのため、ドレン管34を設けない構成としてもよい。
【0027】
最終段以外の溶媒抽出装置10a、10bの内部はほぼ大気圧に維持されているため、貯留槽20から排出された蒸気はほぼ全量が最終段の溶媒抽出装置10cに戻される。そのため、最終段以外の溶媒抽出装置10a、10bには装置側配管32を接続しない構成としてもよい。
【0028】
装置側配管32および槽側配管33は逆U字形部分を有する。この逆U字形部分は気体の流通を許容するが、液体の流通を阻害する。均圧管30の内部で蒸気が冷却されて生じた凝縮水は、逆U字形部分を乗り越えて流通することがない。そのため、発生した凝縮水が溶媒抽出装置10と貯留槽20との間を行き来することがない。なお、均圧管30の内部で生じた凝縮水はドレン管34を介してピット40に排出される。
【0029】
凝縮水には蒸気の発生源(溶媒抽出装置10または貯留槽20)に由来する有機溶媒が含まれている。逆U字形部分により、溶媒抽出装置10と貯留槽20との間で有機溶媒のコンタミネーションを防止できる。また、各溶媒抽出装置10a、10b、10cの間においても有機溶媒のコンタミネーションを防止できる。
【符号の説明】
【0030】
1 溶媒抽出設備
10 溶媒抽出装置
20 貯留槽
30 均圧管
31 ヘッダー管
32 装置側配管
33 槽側配管
34 ドレン管
40 ピット
図1
図2