(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の鋳造装置において、前記ガス吐出部移動装置が前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部の上面よりも下方となる位置であることを特徴とする鋳造装置。
キャビティとして、導入管部と前記導入管部よりも拡径された前記金属溶湯を受ける湯口カップ部とからなる湯口部、前記湯口部から供給された金属溶湯の流路を形成する湯道部、及び前記湯道部を通じて金属溶湯が充填される製品部を少なくとも有する通気性鋳型に、金属溶湯を重力注湯し、次いでガス吐出部を有するガス送気装置から前記通気性鋳型のキャビティにガスを送気して、前記金属溶湯を前記製品部のキャビティ部分に充填する鋳造物品の製造方法であって、
前記導入管部の直上であって前記金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させた前記ガス吐出部を、前記重力注湯終了後に前記湯口部に向けて下降させて前記導入管部に接続することを特徴とする鋳造物品の製造方法。
請求項10に記載の鋳造物品の製造方法において、前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部の上面よりも下方となる位置であることを特徴とする鋳造物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特開2007-75862号及び特開2010-269345号に記載される手法を実現化するための検討を行った。その結果、本手法においては、重力注湯段階からガス送気段階への切り替えが必須であることから、この切り替えのタイミングにおいて製品部に導入された溶湯が停滞して、湯境や照らされなどの不良を発生する可能性があることを認識した。このような溶湯の停滞における問題を解決するためには、製品部で溶湯の停滞をできるだけ起こさないように、前記切り替えをできるだけ早く行うことのできる鋳造装置が必要である。しかし、具体的な装置構成とその動作形態については提案はなされていなかった。
【0006】
従って本発明の目的は、重力注湯段階からガス送気段階へ速やかに切り替えが可能な鋳造装置及びそれを用いた鋳造物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、ガスを送気するためのガス吐出部を、少なくとも注湯終了までの間に湯口部を構成する導入管部の直上に配置させ、注湯終了後は単純に下降させる動作のみで湯口部に接続する構成とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の鋳造装置は、
金属溶湯を通気性鋳型に重力注湯して鋳造物品を得るのに用いられる鋳造装置であって、
キャビティとして、導入管部と前記導入管部よりも拡径された前記金属溶湯を受ける湯口カップ部とからなる湯口部、前記湯口部から供給された金属溶湯の流路を形成する湯道部、及び前記湯道部を通じて金属溶湯が充填される製品部を少なくとも有する通気性鋳型と、
前記湯口部に金属溶湯を重力注湯可能な注湯装置と、
前記湯口部に接続可能なガス吐出部を具備するガス送気装置と、
前記ガス吐出部を移動可能なガス吐出部移動装置と、
を有しており、
前記ガス吐出部移動装置は、前記導入管部の直上であって前記金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させた前記ガス吐出部を下降させて前記導入管部に接続するものであり、
前記ガス送気装置はガスを送気して前記製品部に前記金属溶湯を充填するものである鋳造装置である。
【0009】
前記ガス吐出部移動装置が前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部の上面よりも下方となる位置であるのが好ましい。
【0010】
前記ガス吐出部移動装置が前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部に滞留する溶湯に接触する位置であるのが好ましい。
【0011】
前記ガス吐出部は、前記導入管部に差し込んで接続可能な先細りのノズル状であるのが好ましい。
【0012】
本発明の鋳造装置において、前記注湯装置は、前記注湯装置から注湯される溶湯の流線を、前記導入管部直上又はその近傍から前記湯口カップ部の範囲であって前記導入管部直上又はその近傍から離間する位置に移動可能であることが好ましい。
【0013】
本発明の鋳造装置において、前記湯口カップ部は、前記導入管部から離間する一方向に延びた形状であるのが好ましい。
【0014】
本発明の鋳造装置において、前記導入管部から離間する一方向に延びた形状の湯口カップ部は、椀状の2つの窪みが連結した形状を有するのが好ましい。
【0015】
本発明の鋳造装置において、前記導入管部から離間する一方向に延びた形状の湯口カップ部は、前記導入管部から離間する方向に次第に浅くなるような形状を有するのが好ましい。
【0016】
本発明の鋳造装置は、前記湯口部に滞留する溶湯の湯面を検知可能であって、検知した信号を出力可能な湯面検知手段と、前記湯面検知手段から出力された信号を受信可能であって、前記信号に基づき前記ガス吐出部移動装置を駆動させることにより前記ガス吐出部を配置する位置を変更可能なガス吐出部位置制御手段とを具備するのが好ましい。
【0017】
鋳造物品を製造する本発明の方法は、
キャビティとして、導入管部と前記導入管部よりも拡径された前記金属溶湯を受ける湯口カップ部とからなる湯口部、前記湯口部から供給された金属溶湯の流路を形成する湯道部、及び前記湯道部を通じて金属溶湯が充填される製品部を少なくとも有する通気性鋳型に、金属溶湯を重力注湯し、次いでガス吐出部を有するガス送気装置から前記通気性鋳型のキャビティにガスを送気して、前記金属溶湯を前記製品部のキャビティ部分に充填する鋳造物品の製造方法であって、
前記導入管部の直上であって前記金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させた前記ガス吐出部を、前記重力注湯終了後に前記湯口部に向けて下降させて前記導入管部に接続する方法である。
【0018】
本発明の鋳造物品の製造方法において、前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部の上面よりも下方となる位置であるのが好ましい。
【0019】
本発明の鋳造物品の製造方法において、前記ガス吐出部を配置させる位置は、前記ガス吐出部のガス吐出口が前記湯口カップ部に滞留する溶湯に接触する位置であるのが好ましい。
【0020】
本発明の鋳造物品の製造方法は、前記注湯装置から注湯される溶湯の流線を、注湯初期において前記導入管部直上又はその近傍に位置させ、注湯後期において前記湯口カップ部の範囲であって前記導入管部直上又はその近傍から離間する位置に移動させるのが好ましい。
【0021】
本発明の鋳造物品の製造方法は、前記湯口部に滞留する溶湯の湯面の位置に対応して、前記ガス送気装置のガス吐出部を配置させる位置を制御するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、注湯終了後に湯口部にガス送気装置を速やかに接続して通気性鋳型のキャビティ内にガスを送気することが可能となる。これにより、溶湯が停滞することによる湯境や照らされなどの不良の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の鋳造装置の一例を示す模式断面図である。
【
図2(a)】鋳造装置の湯口カップ部の他の一例を示す平面図である。
【
図2(b)】鋳造装置の湯口カップ部の他の一例を示す断面図である。
【
図3(a)】鋳造装置の湯口カップ部の更に他の一例を示す平面図である。
【
図3(b)】鋳造装置の湯口カップ部の更に他の一例を示す断面図である。
【
図4(a)】鋳造装置の湯口カップ部の更に他の一例を示す平面図である。
【
図4(b)】鋳造装置の湯口カップ部の更に他の一例を示す断面図である。
【
図5(a)】本発明の鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図5(b)】本発明の鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図5(c)】本発明の鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図5(d)】本発明の鋳造装置の、キャビティにガスを送気している状態を示す模式断面図である。
【
図6】湯面検知手段及びガス吐出部移動装置の制御方法を説明する模式図である。
【
図7(a)】実施の形態1における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図7(b)】実施の形態1における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図7(c)】実施の形態1における鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図7(d)】実施の形態1における鋳造装置の、キャビティにガスを送気している状態を示す模式断面図である。
【
図8(a)】実施の形態2における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図8(b)】実施の形態2における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図9(a)】実施の形態3における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図9(b)】実施の形態3における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図9(c)】実施の形態3における鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図10(a)】実施の形態4における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図10(b)】実施の形態4における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図10(c)】実施の形態4における鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図11(a)】実施の形態5における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図11(b)】実施の形態5における鋳造装置の注湯期間中の状態を示す模式断面図である。
【
図11(c)】実施の形態5における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図11(d)】実施の形態5における鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図12(a)】実施の形態6における鋳造装置の注湯初期の状態を示す模式断面図である。
【
図12(b)】実施の形態6における鋳造装置の注湯期間中の状態を示す模式断面図である。
【
図12(c)】実施の形態6における鋳造装置の注湯後期の状態を示す模式断面図である。
【
図12(d)】実施の形態6における鋳造装置の注湯終了後に送気ノズルを接続した状態を示す模式断面図である。
【
図13】実施の形態7における鋳造装置の送気ノズルと湯口部との接続部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1] 鋳造装置
従来の重力注湯による鋳造においては、注湯時の重力のみで製品部が充填されるに必要な溶湯量を湯口部から供給するため、溶湯の停滞という問題は鋳造装置の異常等が起こらない限り発生しない。一方、特開2007-75862号及び特開2010-269345号に提案されるような重力注湯段階からガス送気段階への切り替えが必要な鋳造では、切り替えのタイミングにおいて、溶湯を全く停滞させないか、停滞の時間を品質に影響を及ぼさない程度の短い時間とすることが必要となる。
【0025】
このような課題に鑑み、本発明の鋳造装置は、少なくとも重力注湯の期間において湯口部の直上であって注湯装置に干渉しない位置に配置させたガス送気装置を、注湯終了後において速やかに湯口部に接続できるような構成を採用したものである。このような構成とすることにより、製品部に導入された溶湯の停滞時間を短くすることができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の鋳造装置は、
金属溶湯を通気性鋳型に重力注湯して鋳造物品を得るのに用いられる鋳造装置であって、
キャビティとして、導入管部と前記導入管部よりも拡径された前記金属溶湯を受ける湯口カップ部とからなる湯口部、前記湯口部から供給された金属溶湯の流路を形成する湯道部、及び前記湯道部を通じて金属溶湯が充填される製品部を少なくとも有する通気性鋳型と、
前記湯口部に金属溶湯を重力注湯可能な注湯装置と、
前記湯口部に接続可能なガス吐出部を具備するガス送気装置と、
前記ガス吐出部を鉛直方向、又は鉛直方向及び水平方向に移動可能なガス吐出部移動装置と、
を有しており、
前記ガス吐出部移動装置は、前記導入管部の直上であって前記金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させた前記ガス吐出部を下降させて前記導入管部に接続するものであり、
前記ガス送気装置はガスを送気して前記製品部に前記金属溶湯を充填するものである鋳造装置である。
【0027】
本発明の鋳造装置は、例えば
図1に示すように、送気ノズル1a(ガス吐出部)を有するガス送気装置1と、レードル2(注湯装置)と、鋳型3(通気性鋳型)とからなる。前記鋳型3は上枠3a及び下枠3bに型合わせされて定盤3cの上に配置される。鋳型キャビティ4は、溶湯流路を形成する湯口カップ部5a及び導入管部5bで構成される湯口部5と、湯道部6と、押湯部7と、製品部8とから構成される。実施の形態1において、金属溶湯を充填しようとする所望のキャビティ9は製品部8及び押湯部7で構成される。前記押湯部7は特に必要がなければ設けられなくてもよい。
【0028】
(1) 通気性鋳型
通気性鋳型は、金属溶湯を重力注湯して鋳造物品を得るための鋳型であって、キャビティとして、金属溶湯を注湯するための湯口部、前記湯口部から注湯した溶湯の流路を形成する湯道部、及び前記湯道部を通じて供給された溶湯が充填される製品部を少なくとも有し、必要に応じて押湯部のキャビティを有する。
【0029】
通気性鋳型は、生砂型、シェル型、自硬性型その他の砂粒子を用いて造型された鋳型が一般的であるが、セラミックス粒子や金属粒子を用いて造型された鋳型も適用できる。石膏などのほとんど通気性のない鋳型でも、通気性材料を混在させる、又は部分的に通気性材料を用いて十分な通気性を持たせることによって通気性鋳型として使用可能である。金型のように全く通気性のない材料を用いた鋳型であっても、ベントホール等その他の通気孔を設けて通気性を持たせた場合には通気性鋳型として使用可能である。
【0030】
湯口部は、湯道への流路となる導入管部と、注湯装置から流下された溶湯を受けるための、前記導入管部よりも拡径された湯口カップ部とを有する。すなわち、湯口カップ部は、導入管部よりも広い開口部を有する。このように拡径された湯口カップ部を有することで、注湯装置をガス送気装置の動作空間から退避させた場合でも、注湯装置から重力注湯された溶湯の流線が湯口部から外れにくくなり、注湯の終了時点まで湯口部に効率よく重力注湯することができる。湯口カップ部は、特に注湯初期の段階において、導入管部より流下する溶湯よりも注湯装置から注湯される溶湯の量が多い場合に一時的に溶湯を溜める役割を果たし、溶湯が鋳型外に溢出することを防止する効果がある。
【0031】
湯口カップ部は、導入管部よりも拡径された開口部を有する形状であれば、椀状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状等であってもよい。湯口カップ部の開口部が広ければ広いほど、注湯装置が退避できる空間が広くなるが、後述するように、注湯装置は一方向に退避することが最も簡便な装置であるため、例えば
図2(a)及び
図2(b)に示すように、湯口カップ部5cは、少なくとも導入管部5bから注湯装置が離間する前記一方向に延びた形状であるのが好ましい。
【0032】
湯口カップ部は、通常平板にU字状の縁面を形成した基材を回転して鋳型を切削する湯口カッターを用いて形成することができる。このような湯口カッターを使用する場合は、椀状(又は円錐状)又はこれらが延伸した形状に容易に形成することができる。例えば、導入管部上にカップ状の窪みを形成した後、湯口カッターを導入管部から離間する前記一方向に移動させることで、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、椀状(又は円錐状)の2つの窪み14a,14bが連結した形状の湯口カップ部5dを形成することができる。また、湯口カップ部は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、導入管部から離間する方向に次第に浅くなるように湯口カップ部5eを形成してもよい。このように形成することで、湯口カップ部での溶湯の滞留をより減らすことができる。
【0033】
(2) 注湯装置
注湯装置には、レードル、注湯管、注湯樋及びその他の注湯手段が適用できる。重力注湯段階からガス送気段階への切り替えを高速化するためには、注湯終了後の早い段階で、後述するガス吐出部が遅滞なく下降して前記湯口部の前記導入管部に接続可能な構成とすればよい。そのためには、少なくとも前記導入管部への接続段階において注湯装置がガス吐出部の導入管部への接続を妨げない状態となっていること、すなわち、少なくとも注湯終了の前までに注湯装置を前記ガス吐出部の動作空間から退避させるのが好ましい。注湯装置は、注湯開始前から退避、すなわち注湯期間の全てにわたって前記ガス吐出部の動作空間外に位置させるのがより好ましい。
【0034】
注湯装置からの溶湯の注湯は、例えば、(a)注湯期間の全てにわたって導入管部の直上又は直上近傍に流下させて行ってもよいし、(b)注湯初期には導入管部の直上又は直上近傍に流下させ、注湯後期には導入管部直上又は直上近傍から離間した位置に流線を移動させて行ってもよいし、(c)注湯初期から導入管部直上から離間した位置に流下させ、拡径された湯口カップ部で溶湯を受けるようにして行ってもよい。これらの溶湯の流下位置の調節操作は、例えば注湯装置としてレードルを用いた場合は、注湯における傾動角を適宜調整することによっても可能であるが、後述の注湯装置移動手段を用いて行うことも可能である。
【0035】
(a)の構成は、最も効率よく溶湯が導入管部に流下できるが、ガス吐出部を注湯期間に導入管部に接近させた場合は、注湯の流線に衝突しやすいため、周囲に溶湯が飛散して作業安全上好ましくないだけでなく、必要な溶湯量が導入管部に流下されないおそれもある。(c)の構成とした場合は、ガス吐出部を早い段階で導入管部に接近させておくことが可能であるが、導入管部への溶湯の流下の効率が(a)及び(b)の構成に対して劣り、また注湯初期から湯口カップ部の内周面に溶湯の全量が接触することになるので、溶湯による湯口カップ部の損傷が増大し、異物の巻き込み、溶湯の酸化等の点で不利である。このため、導入管部への溶湯の流下の効率を確保でき、かつガス吐出部を導入管部に接近させた際に注湯の流線に衝突しにくい(b)の構成が好ましい。
【0036】
(3)注湯装置移動手段
前述のように、少なくとも注湯終了の前までに注湯装置を前記ガス吐出部の動作空間から退避させる手段、及び/又は注湯初期においては、溶湯の流線を導入管部直上部又はその近傍に位置させ、注湯後期においては、湯口カップ部の開口部の範囲であって、前記導入管部直上又はその近傍から離間する位置に適切に移動させる手段として、注湯装置移動手段を有するのが好ましい。この注湯装置移動手段によって、注湯終了の前までに注湯装置をガス送気装置の動作空間から退避させることができるので、注湯終了後速やかにガス吐出部を下降させて導入管部に接続することが可能となるとともに、注湯時の流線とガス吐出部との衝突による溶湯の飛散、溶湯による湯口カップ部の損傷、異物の巻き込み、溶湯の酸化等の発生を抑制することができる。
【0037】
注湯装置の退避は、注湯装置を導入管部から離間する一方向(水平方向)に移動させる方法によるのが簡便であるため好ましい。
【0038】
(4) ガス送気装置
ガス送気装置はガス流束の発生手段と、前記湯口部に接続するための接続部を有するガス吐出部とを有する。ガス吐出部は、注湯期間において、後述するガス吐出部移動装置によって、前記ガス吐出部は導入管部の直上であって注湯装置に干渉せず、前記金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置され、注湯終了後に前記位置から下降させて導入管部に接続される。次いで、ガス流束の発生手段によって発生させたガスを送気し溶湯を押し込み、製品部に溶湯を充填する。
【0039】
ガス流束の発生手段としては、ファンやブロワ等による旋風、コンプレッサー等による圧縮ガス等の手段が挙げられ、より加圧状態で溶湯を均一に押すことができる点でコンプレッサー等による圧縮ガスを用いるのが好ましい。
【0040】
ガス送気装置を湯口部に接続するためにガス送気装置全体を移動させる形態としてもよいが、後述するガス吐出部移動装置によって、ガス送気装置の一部であるガス吐出部のみを移動させる形態であることが好ましい。このことによって、ガス送気装置全体を移動させるよりも低エネルギーでかつ短時間に湯口部に接続でき、ガス送気装置で発生させ送気されたガスを鋳型内に導入し、鋳型内に注湯された溶湯を所望のキャビティに効率よく充填することができる。
【0041】
ガス送気装置のガス吐出部はノズル状とすることが好ましい。ノズル状とすることで、ノズルを湯口部に嵌め合わせること、言い換えれば、差し込むことで迅速にかつ送気漏れし難い接続ができる。前記ノズルは、テーパ状側面を有する、すなわち先細りのノズル状であるものが嵌め合わせ易いので好ましい。更に湯口部にもテーパ状壁面を形成しておけば、ノズルと湯口部とを確実に嵌め合わせることが可能となる。
【0042】
前記ガス吐出部は溶湯の高温熱に曝されやすいことから、耐火性の材料、黒鉛、アルミナグラファイト、窒化ケイ素、サイアロン等で構成するのが好ましい。
【0043】
本発明に適用するガスの種類は特に制限されないが、コスト面からは空気を使用してもよく、溶湯の酸化防止という面からは非酸化性ガスであるアルゴン、窒素、二酸化炭素等を使用してもよい。ガスに加えて冷却を促進するミスト等の冷却媒体を供給したり、湯道を遮断するため特開2010-269345号に示されるような耐火物粒子等の固形物を供給したりしても良い。
【0044】
(5) ガス吐出部移動装置
ガス吐出部移動装置は、ガス吐出部を移動可能に構成されており、少なくとも注湯期間において前記導入管部の直上であって注湯装置に干渉せず、金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させたガス吐出部を、注湯終了後に前記配置位置から下降させて導入管部に接続するものである。ここで、ガス吐出部が湯口部に接続されるまでの動作は、例えば、(i) ガス吐出部を注湯装置に干渉せず、金属溶湯の重力注湯を妨げない位置であって湯口部の導入管部の直上に位置させる動作、(ii) ガス吐出部を湯口部に接近させる動作、及び(iii) ガス吐出部を導入管部に接続する動作の3つに区分できる。重力注湯段階からガス送気段階へ速やかに切り替えるためには、(i)〜(iii)の各々の動作時間をできるだけ短くすることが有効である。
【0045】
注湯期間において、例えば
図1に示すように、導入管部の直上であって注湯装置に干渉しない、すなわち金属溶湯の重力注湯を妨げない位置にガス吐出部を配置させることが必要であるが、少なくとも注湯が終了するまでの間に前記位置に配置させれば良く、注湯開始の前又は注湯期間の初期には、例えば、
図5(a)に示すように、湯口部5の導入管部5bから水平方向に離間した位置に待機させておき、注湯終了までの間に、
図5(b)に示すように、導入管部
5bの直上であって金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に移動させて配置させればよい。
【0046】
ここで、ガス吐出部を導入管部5bの直上に配置させるとは、導入管部5bの開口部より鉛直上向きの任意の位置にガス吐出部の送気ノズル1aを位置させることであって、ガス吐出部の送気ノズル1aを一定期間停止させる場合だけでなく、一瞬だけ停止させる場合(水平方向から鉛直方向への方向転換、鉛直上下の移動方向の転換等も含む)や、微動(溶湯の湯面位置に追従させる場合など)させる場合も含まれる。以後、この態様を、単に配置という場合がある。
【0047】
すなわち、注湯開始の前又は注湯期間の初期にガス吐出部(送気ノズル1a)が湯口部5の導入管部5bから水平方向に離間した位置にある場合、送気ノズル1aを湯口部5に接続するためには、前述の通り、注湯期間中にガス吐出部(送気ノズル1a)を導入管部5bの直上であって金属溶湯の重力注湯を妨げない位置に配置させて(
図5(b))、注湯終了後に下降させて前記湯口部5の導入管部5bに接続する(
図5(c))。
【0048】
一方、
図1に示すように、注湯開始の前において既にガス吐出部(送気ノズル1a)が湯口部5の導入管部の直上であって、かつ注湯装置が送気ノズル1aの下降を干渉しない位置に配置されている場合は、注湯終了後に前記位置から直接に下降させて前記湯口部5の導入管部5bに接続する。また、前記位置からの下降動作は注湯期間中であってもよい。これらの動作の場合、ガス吐出部(送気ノズル1a)は鉛直下向きに下降するのみなので、上記(i)から(ii)の動作としては最も単純であり、時間短縮を図りやすい形態である。
【0049】
上記(ii)の動作、すなわちガス吐出部を湯口部まで接近させる動作に要する時間を短縮するために、ガス吐出部のガス吐出口が湯口カップ部の上面よりも下方に位置するようにガス吐出部を配置させるのが好ましい。これによりガス送気装置のガス吐出部と導入管との距離が短くなり、ガス吐出部を導入管に接続するまでの時間が短縮される。この場合は、注湯期間中の湯口カップ部に溜まった溶湯が導入管より流下するのに伴う溶湯面の低下に追従するように、ガス送気装置のガス吐出部を配置させる位置を下げてもよい。
【0050】
ガス吐出部が湯口部の導入管部の直上から水平方向に離間する位置にある場合には、注湯期間中に、ガス吐出部を一旦水平方向に移動して湯口部の導入管部の直上に配置して、次いでガス吐出部のガス吐出口が湯口カップ部の上面よりも下方に位置するように配置してもよいし、水平方向に離間する位置から直接的にガス吐出部のガス吐出口が湯口カップ部の上面よりも下方の位置になるように移動させて配置させてもよい。
【0051】
なお、本発明でいう注湯期間とは、注湯装置から湯口部に注湯を開始してから、注湯装置からの溶湯が湯口カップ部に流下し終える段階を経て、湯口カップ部に溜まった溶湯が導入管部に流下し終えるまでの期間をいう。ここで、湯口カップに溜まった溶湯が導入管部に流下し終えるとは、少なくとも製品部のキャビティが充填されるに足る量の溶湯が導入管部に流下し終えるという意味であって、この限りにおいては湯口カップ部に溶湯が残留していてもよい。
【0052】
ガス吐出部のガス吐出口が湯口カップ部に滞留する溶湯に接触する位置にガス吐出部を配置させることで、ガス吐出部から導入管までの距離をより短くでき、上記(ii)に要する時間を更に短縮できるのでより好ましい。この場合はガス吐出部の下端部が溶湯面に接触し、ガス吐出口が湯口カップ部の溶湯に浸没してもよい。このときガス吐出口からガス吐出部内へ溶湯が浸入することを防止するために、注湯期間中であってもガス送気装置からガスを送気してもよい。
【0053】
ガス吐出部を湯口カップ部に滞留する溶湯に接近する位置に配置させる動作の際に、湯口部の溶湯の湯面を検知可能で検知した信号を出力可能な湯面検知手段と、前記湯面検知手段から出力された信号を受信可能であって、前記信号に基づきガス吐出部移動装置を駆動させることによりガス吐出部の配置位置を変更可能なガス吐出部位置制御手段とを具備するのが好ましい。このように湯面検知手段とガス吐出部位置制御手段とを備えることにより、特に複数の通気性鋳型に連続して重力注湯する量産ラインに適用する場合に生じやすい、湯口カップ部に滞留する溶湯の湯面位置のバラツキに対しても、ガス吐出部の位置の自動制御が可能となり、ガス吐出部の溶湯との距離を適度に保つことができる。
【0054】
前記ガス吐出部位置制御手段としては、例えば、
図6に示すように、湯面検知手段100からの信号をデジタル化するAD変換器、デジタル化された情報、各種設定値及び演算処理用のプログラム等を記憶する記憶装置(メモリ)、プログラムに基づき各種情報を演算処理する演算装置(CPU)等で構成されたコンピュータ101と、前記コンピュータ101により制御され、電気モータ、油圧、空気圧等により駆動するガス吐出部移動装置11とからなるロボットが挙げられる。前記湯面検知手段100としては、可視光又は赤外線カメラによる画像、レーザー変位計等の非接触式の検知手段、又は湯面検知棒等の接触式の検知手段を用いることができる。湯面検知手段100で得られた湯面位置信号は、コンピュータ101に転送され、その湯面位置情報を基にして、ガス送気装置(送気ノズル1a)の適切な位置を求め、前記ガス吐出部位置制御手段により送気ノズル1aを適切な位置に配置させる。
【0055】
更に本発明の鋳造装置が前記湯面検知手段と前記ガス吐出部位置制御手段とを具備することで、例えば以下の形態の動作を自動的に行うことができるので好ましい。ただしこれらの形態に限らない。
【0056】
その一例は、湯口カップ内の溶湯面の検知位置を導入管部の直上にしておき、溶湯面が導入管部の開口部の位置より低位になったときにガス吐出部を自動的に下降させて導入管部に接続する形態である。
【0057】
他の一例としては、ガス吐出部のガス吐出口を、注湯期間において湯口
カップ部の溶湯面に接触しない程度に近接させた距離を保ちつつ、溶湯面の低下に追従させる形態がある。特に本形態は、ガス吐出部は高温の溶湯との直接の接触を避けながら、導入管部の開口部直上の極めて近い位置に配置させることが可能となり、注湯終了後は極めて短時間で湯口部に接続することができて好ましい。
【0058】
[2] 実施の形態
(1)実施の形態1
実施の形態1の鋳造装置は、
図7(a)に示すように、送気ノズル1a(ガス吐出部)を有するガス送気装置1と、前記送気ノズル1aを鉛直方向及び水平方向に移動可能なガス吐出部移動装置11と、レードル2(注湯装置)と、鋳型3(通気性鋳型)とからなる。前記鋳型3は上枠3a及び下枠3bに型合わせされて定盤3cの上に配置される。鋳型キャビティ4は、溶湯流路を形成する湯口カップ部5a及び導入管部5bで構成される湯口部5と、湯道部6と、押湯部7と、製品部8とから構成される。実施の形態1において、所望のキャビティ9は製品部8及び押湯部7で構成される。前記押湯部7は特に必要がなければ設けられなくてもよい。なお前記送気ノズル1aは、ストレートな側面、すなわちテーパのない側面を有し、鋳型3は通気性鋳型である生砂型であり、湯口カップ部5aは導入管部5bの中心軸から拡径された椀状である場合を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
注湯初期においては、
図7(a)に示すように、レードル2は送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲外にある。レードル2からは溶湯Mが、流線2aを形成しつつ湯口カップ部5aの内壁に流下した後、導入管部5b、湯道部6、押湯部7を経て製品部8へと導入される。一方、送気ノズル1aは、導入管部5bの直上であって注湯装置2に干渉せず、溶湯Mの重力注湯を妨げない位置に配置されている。ここで、流線2aを導入管部5b直上又はその近傍に位置させることによって、湯口カップ部5aの内壁での溶湯の飛散を抑制でき、また効率よく短時間に導入管部5bに溶湯Mを流下させることができる。送気ノズル1aをこのような位置に配置させる時期は注湯期間中、すなわち注湯が終了するまでの間であればよく、注湯初期段階から配置させるものに限らず、注湯初期段階は更に別の場所に位置させていても良い(以下、実施の形態2〜実施の形態6も同様である。)。
【0060】
図7(b)は、注湯後期であって、レードル2からの溶湯Mの流下が終了した後も、溶湯Mが導入管部5bに完全に流下せず、湯口カップ部5aに溜まった状態を示す。
【0061】
重力注湯の終了直後、すなわち、湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わった直後、
図7(c)に示すように、ガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを湯口部5に向けて下降させて、導入管部5bに嵌合して接続する。
【0062】
送気ノズル1aを導入管部5bに接続した後、
図7(d)に示すように、溶湯Mの凝固が開始する前に、ガスG(複数の矢印線で示す)を送気装置1から送気ノズル1aを経て鋳型キャビティ4に送気して、このガスGの送気圧によって溶湯Mが製品部8を含むキャビティ9に押し込まれて充填される。
【0063】
実施の形態1においては、送気ノズル1aを、導入管部5bの直上であって溶湯Mの重力注湯を妨げない位置に配置させることで、送気ノズル1aを単純に下降させる動作のみで速やかに湯口部5に接続することができる。
【0064】
(2)実施の形態2
実施の形態1では、注湯初期においてレードル2が送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲外にあったが、実施の形態2では、レードル2の一部が送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲内にある例を示す。
【0065】
図8(a)に示すように、レードル2の一部が送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲内にある場合、
図8(b)に示すように、注湯後期において少なくとも注湯終了の前までに、すなわち、レードル2からの溶湯Mの流下が終了した後、湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わるまでの間に、レードル2が送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲外になるように、レードル2の傾斜角の調節及び/又はレードル2の水平方向への移動を行う。
【0066】
このように、実施の形態2においては、注湯終了の前までにレードル2の傾斜角を調節及び/又はレードル2の水平方向への移動を行ってレードル2を送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲から退避させることにより、ガス送気装置1を速やかに湯口部5に接続することができる。
【0067】
(3)実施の形態3
実施の形態3は、実施の形態1の注湯後期において、注湯終了の前までに送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aの上面よりも下方となる位置になるよう送気ノズル1aを配置させる例である。
【0068】
注湯初期においては、
図9(a)に示すように、レードル2は送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲外にあるので、注湯後期においては、
図9(b)に示すように、レードル2からの溶湯Mの流下が終了した直後、溶湯Mが導入管部5bに完全に流下せず、湯口カップ部5aに溜まった状態の間に、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aの上面よりも下方となる位置になるようガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを配置させる。
【0069】
重力注湯の終了直後、すなわち、湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わった直後、
図9(c)に示すように、ガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを湯口部5に向けて下降させて、導入管部5bに嵌合して接続する。
【0070】
このように、重力注湯が終了するまでの間に、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)が湯口カップ部5aの上面よりも下方となるように送気ノズル1aを配置させることにより、送気ノズル1aと導入管部5bとの距離が短くなり、送気ノズル1aを導入管部5bに接続するまでの時間を短縮することができる。
【0071】
(4)実施の形態4
実施の形態4は、実施の形態1の注湯後期において、注湯終了の前までに送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置に送気ノズル1aを配置させる例である。
【0072】
注湯初期においては、
図10(a)に示すように、レードル2は送気ノズルの動作空間10(二点鎖線で囲まれた領域)の範囲外にあるので、送気ノズル1aはレードル2に干渉することなく、湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置にガス吐出部移動装置11によって配置させることができる。このとき、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mの湯面の下に浸没させてもよい。
【0073】
図10(b)は、注湯後期のレードル2からの溶湯Mの流下が終了した直後の状態であり、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)が、導入管部5bに完全に流下せず湯口カップ部5aに滞留した溶湯Mに接触する位置にある。このとき、湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mが導入管部5bに流下するのに伴って溶湯面が低下するので、送気ノズル1aを、前記溶湯面の低下に追従させるように配置させてもよい。
【0074】
重力注湯の終了直後、すなわち、湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わった直後、
図10(c)に示すように、ガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを湯口部5に向けて下降させて、導入管部5bに嵌合して接続する。
【0075】
このように、重力注湯が終了するまでの間に、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置に送気ノズル1aを配置させることにより、送気ノズル1aと導入管部5bとの距離が短くなり、送気ノズル1aを導入管部5bに接続するまでの時間を短縮することができる。更に送気ノズル1aを、前記溶湯面の低下に追従させるように配置させることにより、送気ノズル1aを導入管部5bに接続するまでの時間をより短縮することができる。
【0076】
(5)実施の形態5
実施の形態5は、実施の形態1の注湯期間中において、注湯される溶湯Mの流線を導入管部5bの直上(又はその近傍)から湯口カップ部5aの開口部の範囲であって導入管部5bの直上(又はその近傍)から離間する位置に配置させ、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aの上面よりも下方となる位置になるよう送気ノズル1aを配置させる(又は、送気ノズル1aの先端を湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置に送気ノズル1aを配置させる)例である。
【0077】
実施の形態5の鋳造装置は、
図11(a)に示すように、レードル2を移動又は溶湯Mの流線位置を調節することのできる注湯装置移動手段12を有している以外は、実施の形態1(
図7(a)を参照)と同様である。注湯装置移動手段12は、レードル2を動作空間10外に移動させること、及び導入管部5b直上(又はその近傍)にある溶湯Mの流線を、導入管部5b直上(又はその近傍)から離間する位置に移動させることが可能である。
【0078】
注湯期間において、実施の形態1と同様、
図11(a)に示すように、溶湯Mの流線2aが導入管部5b直上又はその近傍に位置するようにレードル2が位置している。流線2aを導入管部5b直上又はその近傍に位置させることによって、湯口カップ部5aの内壁での溶湯の飛散を抑制でき、また効率よく短時間に導入管部5bに溶湯Mを流下させることができる。
【0079】
レードル2からの溶湯Mの流下が終了するまでの間に、
図11(b)に示すように、溶湯Mの流線2aが導入管部5b直上(又はその近傍)から離間する位置になるように、注湯装置移動手段12によってレードル2を移動させるとともに、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aの上面よりも下方となる位置になるよう送気ノズル1aを配置させる。
【0080】
更にレードル2からの溶湯Mの流下が終了した直後、溶湯Mが導入管部5bに完全に流下せず、湯口カップ部5aに溜まった状態の間に、
図11(c)に示すように、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置に配置させる。このとき、湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mが導入管部5bに流下するのに伴って溶湯面が低下するので、送気ノズル1aを、前記溶湯面の低下に追従させるように配置させてもよい。
【0081】
重力注湯の終了直後、すなわち、湯口カップ部5aに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わった直後、
図11(d)に示すように、ガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを湯口部5に向けて下降させて、導入管部5bに嵌合して接続する。
【0082】
このように、レードル2からの溶湯Mの流下が終了するまでの間に、溶湯Mの流線2aを導入管部5b直上(又はその近傍)から離間する位置に移動させることにより、注湯期間中であっても、送気ノズル1aの先端を湯口カップ部5aの上面よりも下方となる位置に配置することが可能である。そのため、レードル2からの溶湯Mの流下が終了した直後、速やかに送気ノズル1aを湯口カップ部5aに滞留する溶湯Mに接触する位置に配置させることができ、実施の形態3及び実施の形態4で説明したように、送気ノズル1aを導入管部5bに接続するまでの時間を短縮することができる。
【0083】
(6)実施の形態6
実施の形態6は、実施の形態5における鋳造装置の湯口カップ部
5aの形状を変更した例、すなわち、湯口カップ部5eを、
図12(a)〜
図12(d)に示すように、導入管部5bから離間する一方向に延びた形状に形成した例を示す。
【0084】
実施の形態6は、実施の形態5と同様、
図12(a)に示すように、レードル2を移動又は溶湯Mの流線位置を調節することのできる注湯装置移動手段12を有している以外は、実施の形態1(
図7(a)を参照)と同様である。
【0085】
注湯期間において、実施の形態5と同様、
図12(a)に示すように、溶湯Mの流線2aが導入管部5b直上又はその近傍に位置させるようにレードル2が位置している。
【0086】
レードル2からの溶湯Mの流下が終了するまでの間に、
図12(b)に示すように、溶湯Mの流線2aが導入管部5b直上(又はその近傍)から離間する位置になるように、注湯装置移動手段12によってレードル2を移動させるとともに、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5eの上面よりも下方となる位置になるよう送気ノズル1aを配置させる。
【0087】
このとき、湯口カップ部5eが、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、導入管部5bから離間する一方向(矢印線で示す一方向A)に延びた形状に形成されているので、レードル2を一方向Aに移動させても溶湯Mの流線が湯口カップ部5eの範囲内に十分に収まり、湯口外への溶湯の飛散を抑制できる。更に湯口カップ部5eの底に、導入管部5bに向かって低くなるように傾斜がつけられているので、注湯した溶湯Mが効率よく導入管部5bへ流下される。このような湯口カップ部5eの形状は、椀状の窪み14aを形成する湯口カッターを、上傾斜角をもって一方向Aに椀状の窪み14bの位置まで移動させて鋳型31を削除することによって容易に形成できる。
【0088】
更にレードル2からの溶湯Mの流下が終了した直後、溶湯Mが導入管部5bに完全に流下せず、湯口カップ部5eに溜まった状態の間に、
図12(c)に示すように、送気ノズル1aの先端(ガス吐出口)を湯口カップ部5eに滞留する溶湯Mに接触する位置に配置させる。このとき、湯口カップ部5eに滞留する溶湯Mが導入管部5bに流下するのに伴って溶湯面が低下するので、送気ノズル1aを、前記溶湯面の低下に追従させるように配置させてもよい。
【0089】
重力注湯の終了直後、すなわち、湯口カップ部5eに溜まった溶湯Mが全て導入管部5bに流下し終わった直後、
図12(d)に示すように、ガス吐出部移動装置11によって送気ノズル1aを湯口部5に向けて下降させて、導入管部5bに嵌合して接続する。
【0090】
(7)実施の形態7
実施の形態7は、実施の形態1の注湯装置における送気ノズル1aと湯口部5との接続部の他の一例を示す。実施の形態7に示す例では、
図13に示すように、先端近傍にテーパ状壁面15が形成された送気ノズル1bを、同様のテーパ面を形成した導入管部5dに嵌合させて接続する。このような送気ノズルの形状と導入管部の形状とすることによって、導入管部に対する位置合わせをより容易に行うことができるため、重力注湯完了からガスを送気開始するまでの期間を更に短縮できる。